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No.5527の一覧
[0] 東方結壊戦 『旧題 ネギま×東方projectを書いてみた』【習作】[BBB](2010/01/05 03:43)
[1] 1話 落ちた先は?[BBB](2012/03/19 01:17)
[2] 1.5話 幻想郷での出来事の間話[BBB](2009/02/04 03:18)
[3] 2話 要注意人物[BBB](2010/01/05 03:46)
[4] 3話 それぞれの思惑[BBB](2012/03/19 01:18)
[5] 4話 力の有り様[BBB](2012/03/19 01:18)
[6] 5話 差[BBB](2010/11/16 12:49)
[7] 6話 近き者[BBB](2012/03/19 01:18)
[8] 6.5話 温度差の有る幻想郷[BBB](2012/03/19 01:19)
[9] 7話 修学旅行の前に[BBB](2012/03/19 00:59)
[10] 8話 修学旅行の始まりで[BBB](2012/03/19 00:59)
[11] 9話 約束[BBB](2012/03/19 01:53)
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[5527] 6.5話 温度差の有る幻想郷
Name: BBB◆e494c1dd ID:bbd5e0f0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/19 01:19

「っと」

 一人の少女が、幻想郷の一角にある迷いの竹林で、竹篭に目一杯詰め込まれた竹炭を背負う。
 その大量の竹炭は少女の自製、己が覚えた妖術にて焼き上げた竹炭。
 竹篭を支える帯に髪を巻き込まないように払い、なおかつ竹炭がこぼれない様しっかり担ぎ上げる。
 そうして少女は竹林の開けたところに作られた、炭焼き用土窯がある場所を後にする。

「ん?」

 いざ飛び立とうとして疑問の声を上げつつ、少女が軽く右腕を振っただけで火炎が巻き起こり、突っ込んできた毛玉とも呼ばれる精霊を飲み込み燃やし尽くした。
 それが目前で行われようと関係なく二十体ほどが連続して突っ込んでくるが、やはり右腕の一振りによる火炎で燃え尽きた。

「妙に騒がしいね」

 いつもの精霊ならただ宙に浮いて、あるいは飛んでいるだけ。
 間違っても攻撃を仕掛けてくるような存在ではない、異変時を除けばだが。
 その例外が起こっていると言うことは、どこかの誰かが異変を起こしているって事でしょうと適当に考える。
 『永夜異変』の時のように、巻き込まれる形でなければ自分には関係ない事と飛んでくる毛玉のような精霊を燃やしながら、迷いの竹林を抜ける為に飛び立った。





「……異変、ね」

 その少女が向かう人里で、思考に埋没しながら一番大きな通りを歩く存在。
 胸の谷間が見える位に広がる胸元、その胸元で結ばれた赤いリボンと裾が広がるスカートの内側にフリルを付けた青いドレス。
 白い袖は肘まで届かず、赤いリボンが大きく青く角ばった帽子を被っている。
 白を基調として青が少々混じる腰まで伸びた髪を揺らし、思案する女性の名は『上白沢 慧音』、人里の寺子屋で子供たちに勉強を教えている教師。
 ただ一つの案件に悩むのは生真面目故か、渋い顔を作って歩き続ける。

「真か偽か、満月まで時があるし……」

 呟きながら歩く、言葉の意味は彼女の特異能力。
 事彼女の特異能力は珍しく二つ持ち、その一つが『歴史を食べる程度の能力』。
 過去から現在まで繋がる過程、『歴史』を隠し改ざんしてしまう能力。
 無論言葉通りに取れば神如き能力だが、やはりそれほどの力は無く、一時的、一定時間しか維持出来ない。
 その時が来れば否が応にも改ざんされた歴史は元に戻り、改ざんされる前の正しい歴史に戻る。

 もう一つ、満月の日限定の能力、それは『歴史を創る程度の能力』。
 これに関しては言葉通り神如き能力、外の世界の、時の皇帝すら求め止まなかった力。
 現在から未来へと続く過程、『存在しない歴史』を思うがままに作り上げる能力。
 本人は人間相手に来る厄災の事を諭し、危険から回避させたり、幻想郷の歴史を編纂する時位にしか使わないが。
 その他二次的な効果でありとあらゆる知識を持ち、幻想郷の事で分からないことが一つも無くなる。

 つまりは幻想郷の歴史が分かるのは満月の変化した時だけ、通常の能力では聞いた噂が真か嘘かは確かめられない。
 元より噂の情報源が天狗の新聞なのだから、信じようと言う方がおかしい。
 ある事ない事、あったとしても大きく誇張されていたりなど信用するに値しないゴシップ紙。
 だが真実であったなら大変所ではない、幻想郷が辿って来た歴史の中で最も巨大で、最も避けねばならない異変。
 強力な妖怪が暴れたとか、支配しようとか、そう言った出来事を容易く凌駕する異変。

「……自分で調べたほうが早いでしょうね」

 もしそうなら博麗の巫女より前に、幻想郷を作り上げた妖怪の賢者たちが直々に出張るだろう。
 でもどこにいるのか分からない者を探すより、異変事を相手取る博麗の巫女に聞いたほうが早いだろうと見切りを付ける。
 そう決定付けて、早速調べに行こうと人里の外へと向かう。
 歩いて人里の内と外、厳格に決められた境界を跨ぎ人里の外へ出て、いざ飛んでいこうとすれば。

「ん? 妹紅じゃない」

 空から降りてきたのは少女。
 踵にも届く白い髪を靡かせ、お札にも似た大きな赤と白のリボンを後頭部に一つ、それの小さなリボンを髪の至る所に結び束ねている。
 上着には長袖の白のブラウスに、サスペンダー付きの紅いもんぺ、模様はリボンと同じ物で飾られている。
 その少女の名は『藤原 妹紅』、迷いの竹林に住む人間だった。
 上白沢 慧音は背中に担ぐ竹篭を見て、竹炭を持ってきたのかと判断する。

「あれ、慧音? どこか行くの?」

 そう語りかけてくる声はどこか不思議そうな物だった。
 妹紅の疑問に答えるべく、口を開く。

「ああ、ちょっと博麗神社に行こうと思ってます」
「あの怖い巫女さんの所に?」
「……良くない噂を聞いたから」
「異変でも起こったのね? 道理で毛玉や妖精がざわついてる訳だ」
「人里にはこれといって影響は出ていないけど、どこか辺鄙な所で起こってるのかもしれないでしょうから」
「良くない噂って?」

 重々口を開く、非常に良くない噂。
 今は人間たちに伝わってはいないようだが、伝わったとすれば皆不安に陥る代物。

「幻想郷が攻撃されたと」

 発した言葉、意図せずに声が抑えられていた。

「……誰に?」
「それはわかりません、情報源が天狗の新聞ですから」
「それじゃあ信じられないわね」
「だが、もしも真実なら……」
「たしかにね、事実だったら……どこの馬鹿? 死にたいんだろうか」

 幻想郷に住む全ての存在に喧嘩を売っている、人間など千単位で殺せる妖怪が数千と居て。
 人間を千単位で殺せる妖怪を一方的に殺せる妖怪が数百と居て、その妖怪を殺しつくせる妖怪を赤子の手をひねる様に殺せる強大な妖怪が居て。
 そんな強大な妖怪すら一瞬で塵も残さず消滅させるだけの力がある妖怪や、神々が住むこの幻想郷に攻撃を仕掛ける。
 馬鹿とか命知らずとか、そう言ったレベルではない愚か者が居るという。

 ……いや、もしかしたら攻撃してきた者は、その者ら相手に対等に戦える存在なのかもしれない。
 どちらにしろ真実なら幻想郷の危機に変わりはない。

「異変と言うなら博麗の巫女が動いているでしょうし、だから確かめにいくんですよ」
「居ないなら動いてる、居たら話でも聞けばいい。 どっちにしろ分かりそう、付いていくよ」
「良いのですか? 竹炭を持ってきたんでしょう?」
「良いよこれ位、異変の方が気になるし」

 ニコッと笑いながらも発火の前兆、妹紅から滲み出る熱。
 偽りの話でも許せないのか、熱で白い髪がゆらゆら揺れていた。

「妹紅、これはまだ確定した話じゃないですから。 そう熱り立たないで」
「ん? あらごめんなさい」

 窘めればすぐにそれは収まる。
 窘めたはしたが、これは悪いことじゃない。
 無意識とは言え妹紅が幻想郷を愛してくれているという事、そして守ろうとしている事が嬉しい。

「慧音? 何笑いながら頷いてるの?」
「笑っていましたか? ちょっと嬉しい事がありまして」
「良くない噂とちょっと嬉しいことがあった? どっちか片方にした方がいいよ」
「そうですね、まずは良くない噂の真相を確かめましょう」

 その言葉に妹紅が頷き、二人は空へと飛び上がった。





 時間にして数十分ほどだろうか、人里から飛び立って博麗神社を目指す。
 本来ならもっと早くつけたのだが、妹紅が竹炭を背負っているのでスピードを抑えてからここまできた。
 だからだろう、目的地である博麗神社がある方角から凄まじい力の波が届いてきたのが。
 その力の波を感じ取った後に爆発音、単発から連発、長くても数秒ほどしか途切れない音。

「これは凄いね、大物じゃないの?」

 肌に感じる圧力、大きな力と力のぶつかり合いで起きる現象。
 妹紅は何てことないと言った感じで喋っているが、私からすれば結構きつい。
 圧倒的強者同士の弾幕ごっこなど早々目に出来るものじゃない、起こるとすれば異変を起こした者と異変解決者との弾幕ごっこくらいだ。

「すみませんが妹紅、少し急いでも?」
「良いよ、何の問題もない」

 そうして速度を上げる、それから数分と経たずに遠くに博麗神社が小さく見え始める。
 その上空から力の波と音、そして視覚に訴える力と力のぶつかり合いも見え始める。

「うん、やっぱり大物だね」

 博麗神社の上空、凄まじい数の弾幕が犇き合い、高速で翔け、時には繊細に、時には大胆に弾幕の隙間を縫っていく影が二つ。
 そのうちの一つ、周囲に浮く石から紅く強烈なレーザーを四方八方に撃ち出しながら、応射の弾幕の隙間をすり抜け手に持った揺らめく紅い刀身の剣で切りかかる。
 もう一方の影は、紅いレーザーから身を反らしながら数千もの球体弾幕で返し、すり抜け振り下ろされた剣を右手を覆う茶色い棒のようなもので受け止める。

「……いや、まさか。 あれが異変の首謀者?」
「どうだろ、相手はあの怖い巫女さんじゃないし」

 言った通り異変の首謀者なら、博麗の巫女が相手取っているはずだ。
 今弾幕ごっこに興じているのは全くの別妖怪。

 一つは腰下まで伸びた青色の髪に、頭に乗っけただけのような黒く丸い帽子に瑞々しい桃と葉を乗せ。
 白の半袖ブラウスに首元の赤いリボン、青いスカートと腰に大きくスカートと同色のリボンで結んだ白い前掛け、端にひし形をした虹色の装飾。
 不敵な笑みを浮かべて、手に持った紅色とも橙色とも取れる剣でさらに切りかかる。

 一つは膝下まで伸びた黒色の髪に、それを束ねる後頭部の緑色のリボン。
 上着に半袖の白いブラウスを着ているが、胸元には妖怪の瞳のような紅い何かが付いている。
 スカートは緑で三角マークが連なった模様が螺旋状に入っていて、背中からは2メートルは超えるだろう大きな黒の翼と羽織る長く白いマント。
 そのマントの内側には夜空が広がっている、そして右手に木で出来ているような茶色い棒を付け、右足には足首まで覆っている鉄色の靴のような物を履き、左足首には光る輪が回っていた。

「大物ですね……」

 どちらからも強い力を感じる、異変の首謀者にも成れるくらいの力を持っている妖怪でしょう。
 近づけば近づくほど、その力の圧力は増し、弾幕も激しくなっている。

「どっちもかなり強いと思うけど、青い娘が負ける」

 そう断言する妹紅、それが事実だと言う事がすぐに分かった。
 何度か切り結ぶが、一発たりとも当たらずに時間だけが過ぎていく。
 そんな中で事態が動く、切り結ぶことに業を煮やしたのか、黒髪の、多分鳥の妖怪だろう少女が青髪の少女が振り下ろした剣を打ち止め、力尽くでなぎ払う。
 予想以上だったのか、青髪の少女が大きく弾き飛ばされ、すぐにも体勢を立て直すも向けられた茶色い棒から烈光が放たれた。
 強烈の一言、霧雨 魔理沙が使うような強烈なレーザーが放たれ、青髪の少女を襲う。

「ほら、終わったね」

 衣服を焦がしながらも間一髪にそれを避けた青髪の少女、だが黒髪の少女はスペルカードを放り投げながら両腕を広げ、全身に眩い光を纏って爆ぜるように凄まじいスピードで翔けた。
 それは単純な体当たり、そのスピードは恐ろしいほどに速いが為、青髪の少女が避けきれず跳ね飛ばされる。
 一度だけでは終わらない、高速故に曲がりきれず大きく弧を描いて反転してくるが、やはり速いが為にすぐに戻ってきて跳ね飛ばした青髪の少女を再度跳ね飛ばす。
 さらにもう一度、大きく弧を描いて往復、三度青髪の少女を跳ね飛ばして弾幕ごっこが終わった。





 跳ね飛ばされ半ば墜落するように、博麗神社の境内に着地する青髪の少女。
 服は衝撃で一部破れているが問題にする所はそこではなく、弾幕ごっこにて自身を打ち負かした存在。
 そうして見上げるのは大きく広げた翼で悠然と空に浮かび、見下ろす黒髪の鳥妖怪。

「ちょっと頭が足りないけどね、力は絶大だ。 お前さんが負けても何の不思議じゃないよ」

 見上げる後ろで、手に持つ赤い盃に杯に注がれた酒を一息で飲む鬼。
 ぷはーと気持ちよさそうに息を吐き、盃を隣に座っている小鬼に渡す。

「んー、後天的とは言え半神半妖だからねぇ。 単純な力なら鬼にも勝るね」

 渡された盃を受け取り、渡した酒の入った瓢を傾けられる。
 これまた同じように一息で飲み干す。

「天人でも届かない者は居るさ、それを見抜いておきながら喧嘩を売ると言うのも度胸があっていいけどね」

 わははははー、と笑う鬼二人。
 一匹は頭の左右から二本の角を生やす小柄な鬼と、もう一匹は額から赤い一本の角を生やす鬼。
 二本角の鬼は伊吹 萃香、一本角の鬼は『星熊 勇儀』、遠くの昔に妖怪の山の四天王と言われた鬼のうちの二角が揃っていた。
 その二匹の鬼は博麗神社の賽銭箱の上に座って酒を飲みあっていた。

「うるさい! 好き勝手言って!」
「本当のことだから仕様が無いだろう? 嘘だと思うならお空に勝ってみな」

 そう言った鬼、金髪紅眼の、白く厚手の半袖で首周りや袖に赤い線が入った上着に。
 川を流れる青白い紅葉をあしらった柄の青い半透明のスカート、それのひだに赤いラインが入って縁取りされたスカートを履く鬼。
 星熊 勇儀が開いている右手で天を、笑みを浮かべて空中に留まる『霊烏路 空』を指差した。

「おくうー、まだやるってよー」
「そう! まだまだ反応したいと暴れているわ! さあ天人さん! もっと遊びましょ!」

 大気が震える、凄まじいまでの力の波動を撒き散らしながらも宇宙を背負う。
 そうして見下ろし不敵な笑み、今の弾幕ごっこも屁ではない黒髪の鳥妖怪、『霊烏路 空』にとって本当にお遊び。
 苛烈を極め、美しさを花開かせる弾幕ごっこ。
 生半可な妖怪から見れば、絶大な力を持つ者たちのお遊び。

 そうして青髪の少女、『比那名居 天子』は緋想の剣の柄を強く握りなおす。
 半神半妖? 神の力を持っている? だからなんだと言うの。

「……良いじゃない、あの鳥妖怪倒してそれが偽りだと証明してあげるわ!」

 立ち上がりを飛び上がりに、要石を呼び出し激しく回転させる。

「見てるが良い! 偽りが真へと変わる瞬間を!」





「元気だねぇ」
「暇で力を持て余してるからね、あの子にとって天の下はいい所じゃないかな」

 やはり酒を飲みながら上空で行われる弾幕ごっこをつまみに盃を傾ける。
 弾幕ごっこの質から見ればどちらも粗暴、中の下と言った所。
 どちらも力を荒々しく振るう程度の弾幕ごっこ、当たった当たらなかったの本当の意味で子供の遊びに近い。

「ほらほらー! もっと無駄を凝らすんだよー!」
「真っ直ぐ過ぎる、心の現われかねぇ」

 そう言いながら盃を勇儀に渡す萃香、その代わりに瓢を勇儀から受け取り盃に注ぐ。

「それで、お前さんたちは何の用だい?」

 酒を飲み終えた勇儀から盃を受け取りつつ、降りてきた二つの影を見る。

「博麗の巫女は居られるか」
「いんや、いにゃいよ」

 グイっと盃を傾け、波々注がれた酒を呷る。

「まぁ深刻そうな顔だ、異変の事でも聞きに来たかい?」
「……やはり異変が起こっているのですか」
「起こってるよ、だから巫女が居ない。 お前さんたちはどこまで聞いてる?」

 勇儀に渡した盃に酒を注ぎつつ、人里の守護者と蓬莱の人の型に言う。

「幻想郷が攻撃されていると」
「攻撃はもう終わっているよ。 っとと、紫が付け入る隙を潰したし、今は首謀者を捕まえに行っているのさ」
「……つまりもう案ずる必要が無いと?」
「そうそう、お前さんたちは人里と竹林でお守りをしてれば良いよ」
「妹紅、一つ私と弾幕ごっこでもやらないか」
「嫌」

 足を立てて座る勇儀が盃を向けて言うが。
 よいしょ、と背中の竹篭を下ろしながら即答をする妹紅。

「つれないねぇ」
「つれたくない」
「ゆうぎぃ、私が話してるんだからさぁー」
「なに、もう終わったんだろう? 重要な事は話したし、そっちの二人の心配事は無くなった。 ほら、もう話は終わっているだろ?」
「ん? それもそうか」

 そうして勇儀と見合い、大口を開けて笑う。
 一方の慧音は眉を潜めた様な顔、妹紅はあきれた表情。

 そんな藤原 妹紅にとって星熊 勇儀との弾幕ごっこに良い思い出はない。
 事は地底の異変後に行われた宴会中に起こった。
 博麗 霊夢や霧雨 魔理沙との弾幕ごっこで気を良くした勇儀が、萃香に誘われるまま博麗神社の境内で行われる宴会に出席した。
 人妖入り混じる月下の境内で出会ったのは月の姫、話に聞く月人との弾幕ごっこに思いを馳せながら彼女の声に耳を傾け、勇儀は笑った。

『ほら、あそこに白髪の赤いもんぺを履いた女がいるでしょ? あれ、殺してきてくれない?』

 不老不死だから、やり過ぎても生き返るから殺してきてよ。
 と平然と殺害を教唆。

『不老不死とは言え、弱い奴とやるのもねぇ』

 あんたが相手をしてくれないかい? と視線を向け渋れば。

『少なくとも鬼である貴女が満足できる位には強いわよ』

 それを聞いて勇儀は声を漏らす。
 月人と言えばとてつもなく強いと噂に聞く、例に漏れず蓬莱山 輝夜も秘める力が強大だと感じ取る勇儀。
 ならば実力を認めるような発言が気になる、言われるだけの事は有って強いんじゃないだろうかと。

『弾幕ごっこ、やらないか』

 そうして蓬莱山 輝夜に唆された勇儀は、妹紅との弾幕ごっこを望み、執拗なプッシュによって押し負けしぶしぶ弾幕ごっこを行う。
 勇儀は始めに霊夢や魔理沙と同じように制限を付けて戦ったが、すぐにそれは破られる事となった。
 妹紅は早く終わらせようと強力なスペルカードで攻撃し、勇儀はそれを避ける為に激しく動いた。
 そうして盃から酒が零れて、勇儀は本気で弾幕ごっこに興じる。

『話通りじゃないか、気に入った!』

 急激に激しくなる弾幕を前に、炎の翼を広げた妹紅も当たるまいと避け続けた。
 無論避けるだけではない、不死鳥の翼で羽ばたきながらも火炎弾の弾幕をばら撒き撃つ。

『ハハハハハ! 楽しいねぇ!!』

 勇儀は笑いながらも迫り来る火炎の飛鳥に対して突っ込んでいく。
 鳴きはしないが羽ばたきはする、燃え盛る炎で羽ばたきながらも燃やし尽くさんと翔る。
 高速だ、羽ばたく姿が見えた時には到達している火炎の飛鳥は事無げもなく勇儀と交差した。
 そうなれば予想されるのは火達磨になった人型だろう、ただの人間ならばと言う前提が付くが。
 つまりは当たらない、限界ギリギリで羽ばたく火炎の飛鳥を避けて振り払うように腕を広げる勇儀。

『こいつはどうだい!?』

 太極図を模した青と白で構成された陰陽玉と、赤と白で構成された陰陽玉。
 同色の五つの光が高速で回転するそれをばら撒き、青白陰陽玉は青いレーザーを。
 赤白陰陽玉は赤いレーザーを全方位に放つ、一つの陰陽玉で約百は有ろうかと言う射線。
 その百前後のレーザーを放つ陰陽玉は二十個ずつ、計四千ものレーザーが前後左右上下、全方位に向かって放たれる。

『ああ、見掛け倒し』

 視界を埋め尽くすほどのレーザー、だが視覚的な妨害ばかりで実際に身を狙って走るレーザーは五十もない。
 と言っても視界は赤と青で埋まり、向かってくるレーザーをまともに視認するのは難しい。
 だが妹紅も猛者、蓬莱人として生きてきた半分近くを数多の妖怪を相手にしてなぎ払ってきた。
 中には大妖と謳われる者たちさえも力尽くで滅ぼし、地上の妖怪では相手にならないだろう月人相手に殺し合える。
 それは紛う事なき強者、幻想郷の中でも特に強いと言われる鬼とぶつかっても後塵を拝する事はない。

『あ、やば』

 しかしながらも弾幕ごっこに全ては反映される訳ではない。
 本気の殺し合いで圧倒的な力を発揮しても、その身にわずかばかりの傷を負えばその時点で負けが決まるのが弾幕ごっこ。
 ゆっくりと舞い落ちる木の葉でも、身を焼くような高速のレーザーでも、当たってもまったく傷が付かない攻撃でも『身に触れた時点で負け』。
 さらには提示したスペルカードが尽き、引き分けとなっても勝敗が決まる。
 異変以外で観客無しの一対一で勝負をすることは少なく、起こる弾幕ごっこの9割以上が観客付き。
 どちらも弾幕に当たらずスペルカードが尽きれば、観客が弾幕の美しさで判定を下す。

 故に結びつかない、例え妹紅が正面から勇儀を打ち倒せるにしても、弾幕ごっこならば『どちらが負けてもおかしくはない』。

『そうくるか!』

 二人は恐れなく突っ込む、体の芯から放たれる弾幕を捉えながら。
 眼球が忙しなく動き、絶対に存在する『隙間』を見抜こうと視線を走らせる。
 空を蹴り、身を捻り、僅かばかりに存在する弾幕の隙間へと体を捻じ込み、そうして起死回生<グレイズ>。

『あら、こんばんは』

 高密度の弾幕を抜ければお互い至近距離、目と鼻の先に顔があった。
 手を伸ばせば十分に届く距離、それほどの距離となれば自然に硬く握った拳や一点を打つ鋭い蹴りが出る。
 岩をも砕く拳打と、岩をも熱し溶かす蹴りが同時に出てぶつかる。

『あいたたた!』

 だが岩が溶ける熱でも鬼の拳を溶かすことは出来ず、交差すると同時に妹紅が吹き飛ぶ。
 大きく吹き飛ぶ妹紅に右足は、脛からへし折られて使い物にならなくなっていた。
 痛がりながらも妹紅の体が崩れるように空間に消え、すぐにもその場で元通り。

 魂が本体である蓬莱人にとって肉体は付随する道具。
 本体たる魂が肉体を放棄すれば崩れる砂山の如く消滅し、魂が望めばその場で完全で健全な状態で肉体が復元する。
 つまり足が折れようが、腕が千切れようが、頭が吹き飛ぼうが死なない蓬莱人にとって『些細な事』。
 にしても人間と同じく神経が通っているために、痛いものは痛いのだが。

『こりゃあ……、梃子摺るってもんじゃないね』

 結果から言えば蓬莱人にとって『怪我した状態が続く』のは有り得ない。
 妹紅が今行ったように、指一本動かせない大怪我を負ってもその場で肉体を完全な状態で復元できるからだ。
 蓬莱人の代名詞、『不老不死』たる永遠で不滅を体現する者である。
 ゆえに負けない、出発点を持ちながら終着点が存在しない、終わらない存在に『終焉』を齎す事は出来ない。

『勘違いだね、私は今『負けてる』んだから』

 それは殺し合い、相手の死を持って終了とする戦いの話であり。
 今行っているのは弾幕ごっこ、不老不死だろうがなんだろうが勝利と敗北が等しく存在する遊び。
 その弾幕ごっこの定義で言えば、お互い攻撃を繰り出し、勇儀が打ち勝ち妹紅が打ち負けた。
 それは弾幕ごっこの『被弾』にあたり、妹紅は負け越している。

『他の人ならそれでも良かったんだけどね、あいつからの『送り者』なら負けてはやらない』

 炎が犇く、妹紅が背負う不死鳥の翼が胎動。
 瞬間、妹紅の姿が紅く染まる。



──フェニックス再誕



 業火、燃えに燃えて妹紅が燃え上がり火炎を纏う。
 夜空に赤く光る火の鳥、燃え盛る太陽のように辺りを照らすほどの光を放ち燃え上がる人型。

『こりゃマズい』

 妹紅が背負う不死鳥の翼が一回り大きくなり、姿が歪んで見えるほどの熱を発している。
 本気だ、遠慮無しの『遊びの本気』。
 それに気が付いた勇儀は笑っていた、口端がつり上がり、心の底まで恭悦で染め上げられた笑み。
 血が滾り、心が躍る。
 ああ、あの月人の話に乗って良かった。



──四天王奥義 『三歩必殺』



 本気には本気で、そうでないと失礼だ。
 その考えによって妖気所か鬼気迫る凄まじい圧力を生み出す。
 山の四天王とまで言われ鬼の一角が、本気を出した。

 鬼の頑丈な肌さえも火炎で焼き焦がす熱量を持つ人型。
 それを見上げながらも力を漲らせ、高速で回転する六芒星の魔法陣を足元に作り出す。
 ゆっくりと妹紅は左腕を上げて指を天へと指す。
 両の手を開いていた勇儀はゆっくりと閉じる。
 その光景は一触即発、見る者に緊張を与える間。

『あいずがほしいかそらやるぞ、ってな』

 弾幕ごっこを眺めていた霧雨 魔理沙は進まないと判断して、空高く一つのビンを放り投げた。
 妹紅と勇儀、二人が浮かぶ空よりさらに高くビンが舞い上がり。

 ボンッ。

 ビンが破裂して星屑が一瞬だけ瞬いた。
 腕を振り下ろすように指先を勇儀に向ける妹紅、指先を向けられたまま静止し続ける勇儀。
 指先、ではなく妹紅が纏う火炎の中から火の鳥が飛び出し高速で羽ばたく。
 鳴き声を上げぬ火の鳥に向かって『一歩』踏み出す、最小回避<グレイズ>。
 すれ違うと同時に弾幕を撃ち出す、まるで勇儀を覆い隠すような密集して、妹紅との距離を半分ほど詰めて静止する青い弾幕。

 分厚い弾幕の壁にかまわず二撃、妹紅が燃え上がる右腕を振るう。
 妖術で作り上げられた赤く燃える匕首、それを全方位に向けて撃ち出し。
 同時に一列に飛び出すのは五匹の火の鳥、匕首を追い越しながら一匹一匹が勇儀の位置を認識して最短距離を直進してくる。

『当たると思ったかい!』

 速度はあれどただ直線にしか進まない弾幕など取るに足らない。
 足場の無い空中で足を踏み鳴らす『二歩』、一歩の弾幕をさらに弾幕を積み上げながらも妹紅へと迫る水色の弾幕。
 当たるまいと妹紅が身を引けば、今居た場所の手前で弾幕が止まる。
 広範囲かつ高密度の弾幕の壁に、お互いの姿が確認できなくなるが、お互いそこに居ると言うのはしっかりと理解できていた。

『さあ! 後一歩だ! 後一歩でお前さんの喉元を食いちぎるよ!』

 拳を向けて必殺の弾幕宣言、撃てば撃墜すると自信を持って言い放つ。

『言ったでしょう? 負けてあげないって』

 見下ろしながら言う妹紅、撃てば必ず当たる弾幕などスペルカードルールでは存在しない。
 存在すればそれはルール違反であり、勇儀の負けとなってしまうが。
 無論勇儀もそう言った意味で発したわけではない。

『まぁ……』
『やってみれば……』



 分かる!!



『避けてみな!』
『そっちがね!』

 『三歩』目を踏み出す勇儀と、腕を突き出す妹紅。
 火の鳥の連飛、複数の火の鳥が扇状に飛び出し、壁の如き弾幕へ突っ込んでいく。
 一転、三歩目の足で空を踏みしめて飛び上がる。
 後方回転をしながらも上昇し、一羽、二羽と奔る炎に脇腹やスカートの衣服を燃やして避ける。

 勇儀が火の鳥を避ける一方で、妹紅はゆっくりと迫ってくる弾幕を見つめる。
 それはまるで壁の如き、勇儀の弾幕が内から外へと移動している。
 少しずつ膨らんでいく風船とでも言えばいいのか、隙間が見当たらないそれを前に確実に後ろへ下がる必要が出る。
 負けてやらないと宣言した以上妹紅は弾幕を避けるために下がらなければならない。
 一度不死鳥の翼を羽ばたかせて後退する妹紅、そうして勇儀の弾幕の真髄を味わう事となる。

『押しつぶす気?』

 妹紅と勇儀、二人を包むのは球状に置かれた弾幕。
 一歩目の弾幕と二歩目の弾幕、そして妹紅の背後に隙間無く密集する三歩目の弾幕。
 三歩目の弾幕で後退を防ぎ、迫る一歩目と二歩目の弾幕で押しつぶす。
 星熊 勇儀が放つ渾身の弾幕、四歩目が無い、『三歩目で必ず殺す』弾幕。
 進む道など一つしかありえない、生き方にしても弾幕にしても、前に進むしかないのだ。

 弾かれた様に飛ぶ、軌跡に火の粉を散らして弾幕へと突っ込む。
 高密度の弾幕、まっすぐには進めないほどの、半身に構えてなお限界ギリギリの隙間。
 起こる事は弾幕の中を進む事と衣服の削れ<グレイズ>だけ、常に限界に挑み、弾幕を僅かばかりにも触れさせはしない。
 視界を埋め尽くす水色、カリカリと衣服が削れ続いてまたも水色。
 進む速度を緩めてはいけない、相対的に見れば進んでいようとも実際に後退すれば弾幕に挟まれ被弾する。

 それは望む所ではないし、被弾して負ければあのにっくき輝夜は笑いこけるだろう。
 罷り間違ってもあいつのしたり顔など見たくも無い、見てしまったら即殺し合いに移行する。
 その輝夜の顔をちょこっとだけ想像してしまったから、より妹紅は燃え上がる。

『やらせてなるものか! 見てなるものか!!』

 身を尖らせ、針に糸を通す精度で潜り潜って潜り抜ける。
 さらに深く、水色を抜けて青へと突き進む。
 半身に構えるだけでは通り抜けられない、この弾幕は三歩目の弾幕付近で回避する事を想定したもの。
 踏み込んで避ける事は出来ないとは言わないが、この避け方は弾幕攻略の難度を跳ね上げる。

『やるねぇ!』

 高密度の弾幕を進む妹紅を、弾幕越しに感じる勇儀。
 燃え盛る炎の匕首を避け、弾幕を突き抜けて飛んでくる火の鳥を避ける。

『おっと!』

 炎の匕首と単発の火の鳥、代わり映えしない弾幕。
 しかしながら油断はしない、月の姫の事を語った時の圧力は本物だ。
 不老不死とは言え人間がこれほどまでの圧力を放つのはとんでもない。

『いやぁ、楽しいねぇ』

 縦に、横に、斜めに縦横無尽。
 互いのスペルカードを攻略しあう、避けて撃ってせめぎ合う。
 実力のある者同士だとより緊張が高まる、高難度のスペルカードだと自分がいつ落とされても不思議ではないから。

『いや、楽しいね!』

 鬼の象徴である角が天へと向ける。

『楽しすぎるよ! 藤原 妹紅!』

 息巻きながら再度『一歩目』を踏む。
 それと同時に妹紅が火炎を纏ったまま弾幕を抜けてくる。

『そうだ、そうでなくちゃつまらないよ!』

 不死鳥と化した妹紅が腕を振るえば炎の匕首と火の鳥が飛び出す、しかも先ほどより数が増えて弾幕の密度が上がる。
 全方位の匕首に、勇儀を中心として時間差で扇状に放たれる火の鳥。
 刻一刻と変化し難度が上がっていく弾幕、先程の弾幕を避けきるパターンが通用しなくなっている。
 タイミングのズレ、弾幕速度の上昇、そして弾幕密度。
 どれもが敗北を帰するに十分な変化、より熾烈になる弾幕。

 より避けにくくなり、より難しくなる。
 時間経過に依る難度上昇、強いと言われる者たちが必ずと言って良い程付随させているそれ。
 勇儀も妹紅も、例に漏れず時間経過の弾幕密度の上昇。
 勇儀は大笑いしながらも二歩目を踏もうとして、顔色を変えた。

『いっ! そりゃ有りかい!?』
『有りでしょう?』

 平然と答える妹紅、勇儀の三歩必殺を前に大体がその密度を前に引くと言う選択肢を取ると言うのに、妹紅は一歩目の弾幕にくっつく様な形で目前に留まる。
 妹紅が選んだ道は近距離での集中砲火、お互いが避け切った弾幕をさきほどの半分以下の距離で繰り出される。

『また避けて見せてよ』

 その一言と同時に、火炎が勇儀を蹂躙した。





 燃える鬼、物理的に炎に包まれる勇儀。
 それを見ながら妹紅は一言。

『これでやっと分けに……』
『私の負けだ!』

 言い終わる前に大声、声を発したのは炎に包まれている勇儀だった。
 燃え上がる勇儀から放たれる妖気が炎をかき消した。
 現れるのはやはり勇儀、ただ先程と違うのは何も纏っていない所か。
 そして鬼ゆえの剛毅さか、全裸でありながらも何一つ恥らいを見せない。

『いやはや、流石だねぇ。 月の姫が認めるだけのことは有ったね』
『……そんな事言われても嬉しくないけどね』

 随分と嬉しそうに勇儀は笑い、妹紅に肩を組む。

『もうそんなのいいけどさ、何か着てよ』

 同じ鬼の伊吹 萃香とは反対に、星熊 勇儀は中々凹凸が激しい体をしていた。
 女らしいと言えば女らしい体、そして鬼らしい体とも言える。
 戦いに悦を見出だす鬼故、その体に刻まれた幾つもの傷跡。
 誇りなのだろう、恥ずかしがって隠す所か見せつけてなお惜しまないと言った感じだった。
 だとしても裸に変わりなく、見ているこちらが恥ずかしくなってくるから困る。

『おっと悪いね』

 と言いながら身を翻せば着物、青い宇宙に青白い雲と黄色い星々を散りばめられ彩られた薄手の着物。
 はだける着物を腰の赤い帯で大雑把に結び、思い切り着崩している。
 風に着物が煽られる度に胸元や太ももがさらけ出されるが、何も着てないだけよりましだろうと考え妹紅は溜息を吐く。

『……はぁ、何でこんなにぼろぼろに……』

 妹紅の衣服はボロボロ、上着ももんぺも穴だらけ。
 流石に他人に見せたくない部分はしっかりと隠せるが、修繕するより新しいのを作った方が速いレベルの破れ。

『ほら! 勝者に祝杯だ!』

 一着駄目になったと落ち込んでいれば、勇儀は素知らぬ顔で赤い杯を差し出してくる。

『いや、いらないよ。 それ鬼の酒でしょう? アルコール中毒で死にたくないんだけど』

 いつの間に持ってきたのか訝しげに見ながらも断るが。
 『そんなこと言わずに』『いやいやいらないから』と盃の押し付け合いに発展。
 そんな押し問答をしていれば衣服がボロボロの妹紅を見て笑う輝夜、それを見てしまって燃え上がって突っ込む妹紅など。
 血みどろの殺し合いを見て騒ぎ囃し立てる妖怪連中や、境内が吹き飛んだりして怒り狂う巫女が全方位に夢想天生をぶっ放したり。
 そう言った事もあり、妹紅としては良い記憶ではなかった。





「ハッ!?」
「妹紅? どうしたの?」
「……なんでもない」

 場面は戻り、境内で慧音は萃香へ問う。
 ちなみに空の上ではいまだ比那名居 天子と霊烏路 空が弾幕ごっこを繰り広げている。

「此方としては異変のことを詳しく知っておきたいのですが」
「教えてあげるけどね、人間に言いふらしちゃ駄目だよ」

 萃香は視線をまっすぐ慧音へと向ける。

「何故?」
「せっかく安定している物を態々乱すこともないだろう? 知ればみーんな不安になるよ」
「……確かに、ですが幻想郷に住む全ての存在は知る権利があると思うのです」
「無いね、そんなものは無い。 人間が知って何とする? 精々騒ぐだけ騒いで足を引っ張るだけ、それを治めるのも労力が要るんだよ。 それともなんだ……」

 胡坐、足を組み替えて見据える。

「お前さんが人間どもを全て抑えて、一言も喚かせずにすると言うんかね?」
「出来なくはありません、稗田の当主や大店の……」
「駄目駄目、てんで話にならないね」
「何故です? やってみなくては分からないことも有るでしょう?」
「分かってるから取り合わないんじゃないか」

 持っていた盃を勇儀が受け取り、それに酒を注ぐ。

「教えてやんなよ萃香、一歩間違っていたらどうなっていたか」

 そう言いながら賽銭箱の上に座り直して酒を飲む勇儀。

「紫がその一歩を間違えるなんて早々無いけどね」
「……それほどまでに危なかったのですか」
「紫の予想じゃ幻想郷に住むモノの九割は消えていたそうだね」
「……想像以上でした」
「そう、もうばらばらだ。 蓬莱人や神様連中なら死にゃあしないだろうけどね、中堅所の妖怪でも一発で消滅、さらに弱い人間なんて欠片も残らないそうだよ」 

 結界が消えれば生き残った妖怪や神様連中でも何れ消えちゃうか、と追加して言っておく。

「分かるだろう? もう一度結界が壊れるような攻撃をされたらどうなるのかって、そう思うだろう奴らの不安を煽る様な真似は認められないね」
「そりゃあ確かに、文句を垂れる連中も出てくるだろうね」

 人間が暴動を起こす? いやいやそれは無いね。
 結界を管理しているのが人間であれば起こったかもしれないがね、面倒を見ているのは紫だ。
 結界を作ろうと提案したのが紫、結界を作ったのも紫、今は式神の藍にやらせてるけど結界を管理しているのも紫だと言うのは人間はみな知っている。
 人間に『妖怪と言えば?』と聞けば、十中八九八雲 紫の名前が挙がるだろう。
 有名所の鬼や天狗を差し置いてだ、幻想郷の中で八雲 紫の存在はそれほどまでに人間たちに知れ渡っているんだ。

「だからこそ不満を内に溜めるだけ、ある意味平和の幻想郷の内情を乱す火種になりかねないのさ。 口を閉じるだけじゃない、心の内にも溜めるのは良くないのさ」

 いつ崩れるか分からない家に住み続けるなんて、豪胆な人間じゃないと無理だからねぇ。

「それは、確かに……」
「無知は罪だったかね、だけど知らない方が幸せな事もある。 まあ結界が壊れてたら一瞬で全部吹き飛んでたんだから、苦しむ暇無く終わってたらしいけど」
「まさかこれほどまでとは思いも……」
「教えたら教えたで、紫はちょっとしたパフォーマンスもしなきゃいけなくなるしね」
「パフォーマンス? 何する気だったの?」
「なにって、結界を攻撃した奴の処刑でしょ?」

 結界を攻撃して我々を殺そうとした奴はこうして捕らえました、我々を殺そうとしたのでこうして殺してやりましょう。

「なんてどうだい? 犯人を捕らえて目の前で引き裂いてやれば、人間たちも不満が収まるかもしれないよ?」
「そんなこと!」

 拳を握って、怒りが滲む表情で萃香に顔を向ける慧音。

「まぁ人間どもの前でやるかやらないかって話だけどね」
「なるほど、そう言う事ね。 捕まえたら妖怪の内で引き裂いて回るんだ」
「うん、そうだよー」
「犯人はどう言った……」
「たぶん人間、お前さんが人間側でも今回だけは決して譲れぬ。 それほどまでに妖怪たちは怒り猛っているんだよ」
「人間どもは良い、結界の外に出ても生きていけるのだからね」

 最後の楽園、幻想が存在していける土地。
 それが無くなると言う事は、幻想が夢幻の彼方に消えると言う事。
 世界がそれを望み、誰の手にも因らない崩壊が始まれば座して待ち受け入れよう。
 だが今回の話はそれとはまったく違う、外の者たちによる意図的な攻撃。
 ひっそりと暮らす事すら許さぬと言うのか、それがどれほど傲慢な事か。

「妖怪どころか神だって許しはしない、誰もが許せぬのさ。 お前さんはどうだい? まともに、何百何千年と住んでも不可解に思われない土地が消えてなくなると言うのは」
「……そうなるのはとても残念な事だね、まるで悪夢のような話」
「妹紅……」
「そんな話を聞いちゃ放っては置けないよ」
「お前さんの天敵も似たような考えらしいよ?」
「げ……」

 嫌そうな顔、やっぱり天敵は天敵だったようで。

「それで、お前さんはどう動くんだい? 人里で触れ回るのかい? それとも口を閉じて何事も無かったかのように過ごしていくのかい?」
「………」

 その表情は葛藤、伝える事の是か非か。
 迷いも数瞬、人間側の上白沢 慧音はやはり人間側。

「……そう言う話を持ち出されては、伝えるわけにはいきません」
「当たり前だよ、そうなるよう仕向けたんだから」

 一瞬驚きで目を丸めるが、すぐに視線が鋭くなる。

「勘違いしちゃあ困るね、わたしゃ嘘は言ってないよ? 起こり得る一番を語っただけ、お前さんが怒る道理がどこにある?」
「ならば言い方にも物があるでしょう、そういう言い方をするのはからかっている様にしか聞こませんよ」
「まあねぇ」

 グイっと盃を傾ける。

「ふぃー、方針も決まった事だし、どうする?」
「どう、とは?」
「静観するもよし、協力するもよし。 どうする?」
「輝夜たちも協力してるんでしょ?」
「他には吸血鬼や亡霊姫、妖怪の山全体が協力してるよ。 地底の者たちも概ね協力する意思はあるそうで、必要ならば使うって程度だけど」
「有名所は軒並みですか」
「一部除き個人でも団体さんでもおっけー、でも人里は勘弁ね!」
「その話乗った!」

 大声が聞こえると同時に、神社を正面から見て鳥居から一直線の石畳のすぐ左。
 何かが、と言うかお空が落ちてきた。

「あー! 服が破けちゃった! せっかくさとり様に直してもらったのにー」

 とたいした怪我も無く、服が破けた事に気を病むお空。
 そのお空の石畳を挟んで反対側に優雅に降り立つ天子、お空よりも服の破れがひどいが変わらず元気そうだった。
 まぁこの様子じゃお空に勝ったんだろう。

「聞いてたら中々凄い事になっているじゃないの」

 緋想の剣をすぐ前の地面に突き刺し、その柄の上に両手を乗せる。

「幻想郷が無くなる? 随分とふざけた真似じゃない」
「お前さんが言える言葉じゃないよ、多分大事な神社を壊したんだから」
「改良と言って欲しいわね、新築になって綺麗じゃないの」
「神社を家系に持ってるくせにねぇ」

 博霊神社は結界の境目に位置している、無闇矢鱈に壊せば結界に何らかの影響が出る……かもしれない。
 そっち方面は明るくないんで、紫にでも聞かないと分からないけど。

「妖怪の山の神社は怖くて手が出せなかったんだろう? 二柱とも武闘派な神様だし、お前さんの御眼鏡には適わないしねぇ」
「向こうは色々手間が掛かるわ、だからこっちにしただけよ」
「はは、そう言う事にしとこうか」

 腰に手を当て違うと主張するが、そんな事はまぁどうでも良かった。

「それは置いておきましょう、話しても意味の無い事だし。 本題はそっちの話よ、幻想郷が無くなるとか大きな話じゃない」
「そうだね、忘れ去られた幻想を知り、なお壊そうとする者が居るってのはつまらない話さ」
「それなら私も協力してあげましょう、幻想郷に住む者の責務でしょうから」
「何言ってんだい、お前さんは駄目に決まってるだろう」
「なぜ?」
「紫に嫌われているのもう忘れたのかい? お前さんがそう言ってきたら悉くぶちのめせって言われたよ」
「あんな妖怪の言いなりになる必要なんて無いわ、私は私がやりたいように動くだけよ」

 だから私もあそ……協力するわ! と本音が出た天子。

「今度こそ紫に叩き潰されても知らないよ」
「この前は負けてあげたけどね、次は負けないわよ」

 本気を出してこてんぱんにやられておいて、何言ってるんだか。

「ま、一応忠告しとくよ。 敵さんの邪魔をするならいいけどね、こっちの邪魔になるようなら本気で排除するから覚えておくんだね」
「ふん、私が出張ればすぐに解決ね」
「枯れ木も山の賑わいって事かなぁ」
「蝸牛角上の争い、今は小事になんてかまってる暇はあるの?」
「お前さんが小事なんだけどねぇ」

 まぁ紫も言って来ることを予想したし、居ても居なくてもどうでもいいか。

「そういえば二人はお初だったね、こいつは少し前に異変を起こした馬鹿者だよ」
「確かに高尚とは言えないかも知れないけどね。 そっちは人里のワーハクタクに、そっちは竹林の蓬莱人でしょ? 何度か見た事があるわ」
「流石暇人だ!」
「暇人じゃない! 天人よ!」
「なんか色々あるのね」
「……そろそろ帰りましょうか」

 笑う鬼に怒る天人、唸る蓬莱人に疲れる半獣。
 もう一匹の鬼は地獄烏に饅頭を放り投げていた。

「おっと待ちな、人里に帰る前に香霖堂へ寄っておいき。 場所は知っているよね?」
「香霖堂? 森近も協力しているのですか?」
「してるよー、道具作成もなんとかかんとか」
「……道具とは?」
「これ」

 萃香が手のひらを天へと向けて腕を差し出せば。

「これで繋がるのさ」

 白と黒の二色で構成された玉、陰陽玉が萃香の手のひらの上に現れた。

「なにそれ」
「確か博霊の巫女が使っていたような……」

 ふわりと浮かび、妹紅と慧音の前まで飛んできて空中で留まる。

「触ってみな、言うより早い」

 これで何がどう繋がるのか、懸念を他所に妹紅が遠慮無く陰陽玉に触れる。

「……なるほど、目と耳が繋がるのね」
「紫が使って良いって許可出せば、触れている者を模した人形を操れるよ」
「……これは本当に良いのですか? 下手をすれば外の世界の……」
「もちろんやって良い事と悪い事があるさ、こっちの邪魔をしない、外の世界の出来事をこっちで軽々しく口にしない、外の世界の物を持ち込んだりしちゃいけない、これは紫か紫の式神に許可貰えば持ってこれるけど」

 そうして萃香は天子を見る。

「最低でもこれだけは守ってもらわなきゃ、絶対に守れると言うなら協力させてあげても良いよ」

簡単じゃない、協力してあげるわ」

 自信満々にそう言い切り、歩いて妹紅と慧音の前にある陰陽玉に触れようとすれば。

「……ちょっと!」

 触れる直前に陰陽玉は掻き消えて、天子の腕は空を切る。

「お前さんは悪戯が過ぎるからね、協力させてやるかどうかは紫に決めてもらった方が良さそうだ」
「散々その権限があるような言い方をしておいて!」
「軽く考えているだろう? 事はお前さんが考えているより遥かに重大だ。 協力している者たちは全てが真剣に考えてるんだ、ふざけた真似されると色々と面倒だからね」
「面倒? どうする訳?」
「ん? 殺すよ? スペルカードルールなんて一切関係ない、紫も私も。 協力してる皆一切の容赦無くお前さんを殺すよ」

 事無げも無くさらっと、まるで大して見る所が無い日常会話のように言う。

「お空、大福もあるが食べるかい?」
「食べる!」

 隣の勇儀はそんな話を聞いていないかのように空に大福を投げ渡し、空は大福を受け取って口一杯に頬張る。

「邪魔に成ると言うなら幻想郷に必要でない限り本気で消す事になる、協力する事となったら覚えておきな」

 グイっと一気に盃を傾け酒を飲み干す萃香。
 天子は腕組みをして萃香へと鋭い視線を向けている。
 向けられた萃香はどうと言うことが無くないつも通りの表情でそれを受け止める。

「……良いわ、そこまで言うなら本気で協力してあげる」
「ま、その意気が通じるかどうか知らないけどね」

 そうして終わる話、聞いていた慧音は話の大きさを改めて認識する。
 この異変は間違いなく皆の怒りに触れている、結界への攻撃を画策した首謀者は間違いなくただではすまないと考える。

「……事情は分かりました。 どれほどお役に立てるかわかりませんが、必要なら最大限手をお貸ししましょう」
「知識人が居ると色々と捗りそうだ」
「香霖堂に行けばいいのですね?」
「うん、店主に一言言えば貰えるからね。 説明はそっちで受けてね」
「わかりました、それでは失礼します」

 妹紅が置いていた竹篭を背負いなおし、慧音と一緒に人里方面へと飛び立っていく。
 それを見送りながら瓢を盃へと傾ける。

「日ごろの行いさ」

 天子が起こした異変がこれ以前に起こった異変と同じようなものならば、紫もあそこまで怒りはしなかっただろう。
 地震によって倒壊した博霊神社を秘密裏に改造して建て直し、いわゆる別荘のようにしようとしたのが原因。
 結局それを紫に見抜かれ、弾幕ごっこでこっぴどく天子は紫に叩きのめされた。
 天人特有の上から目線もずいぶんと鼻に付き、それも原因で手酷く鼻を折られた。

「ふん、そんなモノすぐにでも変えて見せるわ」

 なのに一向に挫けては居ない、根性<残機>だけはかなりあるようだった。

「そら、桃と丹だけじゃ味気無いだろう?」

 盆にまだ残っていた饅頭を放り投げる。

「精神一到何事か成らざらん。 まあ、確かに軽く見てたかもしれないわ」

 饅頭を受け取り、口に含む。

「ん? 意外に美味しいじゃない」
「すぐに帰ってくるわけじゃないから、腐る前に私らで処分しておこうってね」

 それは『とっておき』、霊夢が楽しみにしていた饅頭と大福。
 舌鼓を打ちながら神社に居る4人で食べる。
 幻想郷に戻ってきて勝手に食べられた事を知った霊夢は激怒して、同じように美味しい饅頭と大福を持ってこさせるのは後の話。





 その饅頭や大福を食べる四人を他所に、上白沢 慧音と藤原 妹紅は一旦人里へと戻る。
 背負い続ける竹炭が入った竹篭が邪魔になってきたから、先に納める事になった。

「いっつも助かるよ」
「まぁこれくらいね」

 いつもの如く、人里に炭を降ろす業者に竹炭を渡す。

「まだあるから、後で持ってくるよ」
「すぐ必要ってわけじゃないから、ゆっくりでいいよ」
「うん」

 そうして暖簾を潜る。

「お待たせ」

 外で待っていた慧音に手を上げて詫びる。

「それじゃあ行きましょうか」
「そう言えば道具貰えるって言ってたけど、二つなのかな」
「……どうでしょうね、恐らくは二つも『こんにちは』、貰えると思いますが『あまりはしゃぎすぎ無いように』、出来るなら個別に貰った方が良いでしょう」

 すれ違う人里の人々と挨拶や注意を促しながら進む。
 何ども挨拶をされることから、慧音の人徳が見て取れる。

「そうだね、できれば二つ貰っておきたいね」

 妹紅の言葉に頷く慧音。
 肩を並べて歩く姿はなんとなく姉妹に見えてもおかしくはない。

「そろそろ飛びましょうか、時間を掛け過ぎるのも良くないでしょうから」
「そうだね」

 話しながら歩いていれば人里の端、飛べるからと言って無闇矢鱈に往来で飛び上がったり降りてきたりするのも良くはない。
 わざわざ歩いて人里の端から飛ぶのも一つのルールだった。





「森近はご在宅でしょうか?」
「いらっしゃいませ、間違ってはいないがこちら側は店だ。 店主は居るか、と言った方が合っていると思うけどね」

 香霖堂の扉を開けて一言目での応答。

「それで、珍しいお客様は何をご所望しているのかな」
「私達も協力することになりまして、神社の鬼が道具に付いてはここで聞けと」
「なるほど、道理だ」

 一度頷き、勘定台の下へと手を伸ばしてある物を取り出した。

「使い方は簡単だ、これに手を乗せて魔力なり霊気なり妖力なり、弾幕を発生させる時の力を込めれば良い」
「それだけで良いのですか?」
「それ以外には必要ないよ、人形を操るときも同様だ。 自分の動かしたい姿を思い浮かべれば良い」
「わかった、ありがとう」
「お安い御用だよ、今回のは誰もが関係する話だからね」

 勘定台に置かれた二つの、神社で見た同じ陰陽玉が置かれている。
 違うところといえば複数の違う大きさのがあるくらいか。

「サイズは好きなものを持っていくといい、個人であれば一番小さいのがお薦めだが」

 手のひらサイズから人の頭程も有る大玉まで。

「邪魔になりそうだし小さいのもらっていくよ」
「私も小さいのにしておきます」

 手のひらサイズの、10センチほどしかない陰陽弾を手に取る。

「やっぱり別々で助かるよ」
「材料だけは余分にもらってるからね、これに付いては不足する事はないだろう。 おっと、別に持ち歩かなくて良いよ、一度触れれば邪魔にならないよう後に付いてくるから」

 そう言われ、手放せば浮き上がり、見えなくなる。

「これもまた思えば良い、そうすれば……」
「なるほど、これは便利ですね」

 見えなくなっていた陰陽玉が目の前に浮かび上がる。
 これならば置き場所などを気にしなくて良いだろう。

「ああ、一つ注意を。 外の世界で人形を動かすに当たって、人形は使っている本人を真似るんだ」
「模倣でしょうか?」
「そうだよ、まぁ真似るだけで本人たちのようには動かない、特に力の強い存在はね」
「……つまりは、完璧でないと?」
「本人、本妖怪は完璧だ、なんと言ったって本物だからね。 だけど人形は違う、姿形能力を模写しただけ、つまりは偽者だ。 人形を介しての本気や全力は出せないと思っていてくれ」
「それは結構厄介なんじゃないの?」
「確かにね、だけど同じことを八雲 紫に質問したら『力不足を解消するのもまた本人たちの力、それはそれで面白いですけど。 そうそう、この陰陽玉の材料費ってかなりお高いんですのよ』、と言われたよ」
「最後の方関係ないんじゃ?」
「僕に請求はしないでくれと言っておいた、そういう訳でかなり頑丈だけど壊さないようにしておいた方が良いと思う」
「……そうする、それじゃあ戻るとします」
「ああ、気を付けて」

 色んな意味で、と森近 霖之助が後付けした様に聞こえた二人は、香霖堂を後にした。
 そうして妹紅と慧音が香霖堂を去ってから1時間程の経った後、博麗神社の近くから恐ろしいほどの鬼気と轟音が聞こえてきたと言う。
 それを感じ取った博麗神社近くの花畑に来ていたとある妖怪が、嬉々としてその戦いに割り込んだのも後の話だった。



















 この話の前半はおまけに近い、と言うか練習。
 弾幕ごっこを文章にすると拙い、スペルカード一枚でこんなに長くなってしまうから。
 こんな感じに一通り表現すると間違いなくかるく50kb突破する、と言う事で今後の弾幕ごっこは6話の別荘レイマリ弾幕ごっこのように一つ一つ軽くか。
 今回のように一枚を深く描写するか、どちらかになるかと。
 EXキャラだとスンゴイ事になるから絶対に一枚か二枚になるだろうなぁ。


 さて、今回の登場キャラは星熊 勇儀に藤原 妹紅に上白沢 慧音に比那名居 天子に霊烏路 空だけ、お空とセット的な火焔猫 燐は後ほど。
 次回、7話はネギま側になるのでどっさりネギまキャラが出るはず。
 あと慧音の喋り方、ゲームではなかなか勇ましいですが、書籍版文花帖では射命丸 文に大して丁寧語で話してます。
 小説版儚月抄でも妹紅に対しても丁寧語らしいです、6.5話を書いて投稿した時点では小説版儚月抄を持っていないので、届いて話し方が大分違うようなら話し方のみ書き直します。

 ところで慧音より妹紅の方が背が高いって本当だろうか、永夜抄のスペルカード立ち絵だと妹紅の方が高いが……。
 背が低いなら低いでありだと思うのですがね。


 森近 霖之助さんからの陰陽玉の説明、東方側は霊夢と魔理沙と紫を除き全力全開出せません。
 特異能力の方は悩み中。


 追記、慧音の話し方を書き換えました。
 儚月抄を読んでみたらめちゃくちゃ違う、何この堅物と言うほど固い喋り方。
 書き換え前とかなり違いますので、書き換え前を読んだ方には随分と違う印象になると思います。
 あと小説版儚月抄の表紙の輝夜が可愛すぎる、超おすすめ。


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