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No.5527の一覧
[0] 東方結壊戦 『旧題 ネギま×東方projectを書いてみた』【習作】[BBB](2010/01/05 03:43)
[1] 1話 落ちた先は?[BBB](2012/03/19 01:17)
[2] 1.5話 幻想郷での出来事の間話[BBB](2009/02/04 03:18)
[3] 2話 要注意人物[BBB](2010/01/05 03:46)
[4] 3話 それぞれの思惑[BBB](2012/03/19 01:18)
[5] 4話 力の有り様[BBB](2012/03/19 01:18)
[6] 5話 差[BBB](2010/11/16 12:49)
[7] 6話 近き者[BBB](2012/03/19 01:18)
[8] 6.5話 温度差の有る幻想郷[BBB](2012/03/19 01:19)
[9] 7話 修学旅行の前に[BBB](2012/03/19 00:59)
[10] 8話 修学旅行の始まりで[BBB](2012/03/19 00:59)
[11] 9話 約束[BBB](2012/03/19 01:53)
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[5527] 9話 約束
Name: BBB◆e494c1dd ID:83e86ad6 前を表示する
Date: 2012/03/19 01:53
「わあああぁぁぁ!」

 ぽーんと脱衣所から何かが飛び出してきて、露天風呂へと放物線を描き落ちて水しぶきが上がる。
 投げられたのはネギで、投げたのは魔理沙。
 浴衣の時と同じように、裸で肩にタオルを掛けた状態で堂々と脱衣所から出てくる。

「誰か居ないか確かめてからにしなさいよ」

 霊夢も霊夢で手に手拭いを一枚持っただけで脱衣所を出てくる。

「終わった事はどうしようもないな」

 はははと笑う魔理沙と呆れながらの霊夢。
 二人は脱衣室から出て湯船に向かう、その先には先客。

「ん? どっかで見たことがあるな」

 足を止め悩む魔理沙、霊夢は気にせず通り過ぎて桶を手に取り、湯を汲み体に流す。

「プハァ! いきなり投げ飛ばすなんてひどいじゃないですかー!」

 水飛沫を上げて露天風呂から顔を出すネギ、両手で顔に流れるお湯を拭いながら言う。
 それを見ていた先客、桜咲 刹那が湯船の中から立ち上がって刀を手に取り露天風呂から上がった。

「あわ! あわわわ!」

 ネギは顔に滴るお湯を拭い瞼を開けば少女たちの裸体、イギリス紳士たる者女性の肢体を凝視するなんて破廉恥な真似など出来ない。
 変な声を出しながら、クルリと湯船の中で百八十度体ごと視線をそらして鼻近くまで湯船に浸かる。
 その隣で足をばたばたさせながら湯船に浮かぶカモは、ムフフと笑いながらその光景を見ていた。

「ああ、そうだ。 霊夢がなんとかと戦った時に居たな」

 右手をあごに置いて首をかしげていた魔理沙。
 見られる刹那な何事も無く二人の隣を通り過ぎて更衣室へと向かって擦れ違い、そうだと魔理沙は握った右手で開いた左手に軽く叩く。

「エバンジョリンの後だったな」
「そうだっけ?」

 思い出したら用は無い。
 そう言わんばかりに魔理沙は肩にタオルを乗っけて、堂々を浴場を闊歩して湯船に近づき、置いてある桶を取って湯を注ぐ。

「くっそー、やっぱり魅力的だな」

 悔しそうな声だったが笑みを浮かべて体に流し、さっさと体を洗って湯船に浸かる魔理沙。
 霊夢も同じように体を洗って湯船に浸かり、巻き上げた髪の上に折り畳んだタオルを乗せる。

「神社のは余り広くないからね」

 霊夢は呟きながら魔理沙の隣に座る浸かる。

「おー、萃香よ」
『まあやっとくかね、暇そうだし』
「こう、開けた感じってのはいい感じだと思わないか?」
「景色によるわね」
『はいはい、善処するよ』

 他者には聞こえない三人目と話す二人、同じ湯船に浸かって距離も近いネギやカモも聞こえはするが意味を掴めない。

「全く、こういう体験は悪くないがな」
「向こうから出向いてきてくれないかしら」

 それだと手っ取り早いのに、と霊夢が溜息のように吐いた。

「まあ何事もあるんだろうし、なあネギ」
「え? な、なにがですか?」

 魔理沙に聞かれて振り返ろうとしたネギは、どう言う状況か思い出して動きを止めて聞き返す。

「何がって、何か有るんだから私たちもここに連れてこられたんだぜ? 何もなけりゃ私らはここに居ない、簡単だろ?」
「……それはそうですね、でも……」

 むむむ、とそれ以上口にしないネギ。

「ん? なんだ? やっぱりなんか話せない理由でもあるのか? カマかけて正解だな」
「え? えっと、今はちょっと……」

 ネギは今この場では話すのは難しいと、それに補足するため短い足で魔理沙のもとに泳いできたのはカモ。

「姐さん姐さん、魔法ってのは一般人にバレちゃならねーですし、魔法を知らないこのか姉さんもいやすし」

 ひそひそとカモが魔理沙に耳打ち。

「そういやそうだったな」

 やっぱりめんどくさいな、両手を頭の後ろにやってさらに深く湯船に浸かる魔理沙。
 あまり興味がない霊夢は湯船に浸かり、瞼を閉じて温泉を堪能していた。

「世知辛い世の中ですぜ、そっちの方も似たような?」
「いんや、人間より妖怪の方が多いからな」

 魔法は幻想郷でメジャーか? と聞かれればそうでもない。
 魔法や魔法使いと言う言葉は知っていても、それが一体どういうモノか理解している人間はかなり少ない。
 その点、妖怪が使う妖術や人里に住む退魔師などの妖怪退治屋が使う陰陽術などの方が知られている。
 身近にあり恩恵をあずかる事の方が覚えやすいし記憶に残りやすい、そう言う話。
 妖怪次第ではあるが、妖術も学ぼうと思えば学べる可能性もそこそこある。
 そんな訳で外の世界のように知られちゃいけない、と言う訳ではない結構オープンな世界である。

「ま、覚えようとする奴は珍しいがな」
「なーるほど、魔法世界とも違った感じなんですなぁ」

 ふむふむ、とカモが頻りに頷く。

「そうだ、聞いた所によると魔法世界ってところは──」

 魔理沙がカモに話題を振ると同時に、脱衣所の引き戸が開く。
 出てきたのは明日菜と木乃香、どこか気落ちした木乃香に付き添うように連れたって露天風呂へと進む入ってくる。

「天界みたいに地面が浮いてる場所もあるんだろ? こっちもそうだがどうやって浮いてるのかイマイチ分からないんだが」

 浮いてる理由わかるか? と明日菜と木乃香の事に気がついていないかのように平然と魔法関係の言葉を口にする。

「あ、姐さん! 声が大きいっすよ!」

 温泉の中でバタ足しながら魔理沙にカモは注意する。

「あん?」

 魔理沙は振り向き、明日菜と木乃香を見る。

「なんだ、てっきり知ってるかと思ってたが」

 なんだか窮屈でつまらんと、魔理沙にとって普通の会話が出来なくて面白くなさそうにため息を吐く。

「世知辛い世の中だぜ、ところでなんで魔法を教えちゃいけないんだ?」
「ダ、ダメですよ!」
「おいおい、それもダメなのか? 世知辛いどころか息苦しいぜ」
『向こうの建前は「悪い奴らが魔法を覚えたら大変だから教えたくない」とか、もう突っ込むことさえ今更なドロドロ具合なのにね』 
「本末転倒? お前が言うなってことだな」
「……? まりささん?」

 魔理沙が聞き、パチュリーが答え、ネギが首を傾げる。

「何の話ししてるんー?」

 体を流し、湯船に浸かるのは明日菜と木乃香。
 話が聞こえていなかったのか木乃香が問い掛け、魔理沙はずり落ちてきたタオルを元の位置に戻しながら。

「魔法」

 その一言にネギと明日菜は表情を引きつらせた。

「ところであんた誰だ? そっちのは見たことあるけど」
「うち? うちは近衛 木乃香、よろしゅうー」

 桜咲 刹那とのやり取りで落ち込んだ気分を見せず、いつものように接する木乃香。

「私は霧雨 魔理沙、こっちが霊夢。 ん? 近衛? と言うことはコノエモンの孫ってところか?」
「じいちゃんを知っとるん?」
「知らなきゃここに居ないな、と言うかおかしくないか?」
「お、おかしいって何がよ」

 魔理沙はじっと木乃香を見つめた後。

「気にしない方がよさそうだな」
「?」

 本当に血縁なのか考えても無駄そうなので問いかけるのを止めた魔理沙。

「で、このえ このかさんよ」
「なんやー?」
「あんたは何の魔法を使えるんだ?」

 ビシリとネギと明日菜が凍る、魔理沙はさらりとと魔法の事を知らない木乃香へと聞いた。

「まほー? うちまほーなんかつかえへんで?」
「そんな魔力垂れ流しでか? 勿体無いな」
「魔力?」
「あ、あはは! 何言ってんのよ、魔法なんてあるわけ無いじゃない。 ねえネギ?」
「そ、そうですよ!」

 二人してぎこちなく笑いながら魔法なんてあるわけがないとフォローを入れる。

「あー、そうなのか」

 白々しいと言っていいネギと明日菜の言葉に、納得がいった魔理沙。

「あのなコノカ、魔法ってのは種も仕掛けもない手品って奴だ」

 湯船の水面に上げた右手、その右手の人差し指を立ててポンっと黄色い星が現れる。

「これが種も仕掛けもない手品って言う魔法だ」
「わー、どこから出したん?」

 人差し指の上でくるくる回りだした黄色い星、突然現れた僅かに光を放つ星に木乃香は驚いて星に見入る。

「どこからって、種も仕掛けもない手品だからな」

 魔理沙が人差し指を木乃香へと向ければ、星が木乃香の口の中に飛び込んだ。

「むぐっ……、甘い?」
「別に良いんじゃないか? コノエモンの孫なんだろ? 遺伝子とか関係無いようだが」
「何言ってるんですか! 良いわけ無いですよ!」
「ちょ、ネギ!」

 魔理沙の言葉に反応し、ネギは声を荒げて駄目だというが。

「ネギくん?」
「コノカよ、葱坊主も種も仕掛けもない手品を使えるんだぜ? 見たくないか? 種も仕掛けも……めんどいからもう魔法でいいや」
「ほんとなん? ネギくん?」
「そ、それは……」

 キラキラとした瞳で木乃香はネギを見て、見られるネギはもごもごと口に出せず小さくなる。

「ちょっと! 魔法なんてあるわけ無いじゃない!」

 あんまりな魔理沙の言動に明日菜が怒り食って掛かるが。

「めんどくさいな、なあコノカ」
「なんや?」
「魔法は魔法を知らない人に知られちゃいけないことらしいんだが、コノカは言いふらしたりするか?」
「なんで知ったらあかんの?」
「それはわからん、問題はコノカが言いふらすか言いふらさないかって事だ」
「よーわからんけど、うち言いふらしたりせーへんよ?」
「じゃあ問題ないな、それじゃあ葱坊主はどんな魔法が得意なんだ?」

 そういった魔理沙と、言いふらさないと言った木乃香はネギを見る。

「……うう、仮免没収……オコジョ……」

 ぐすぐすと目尻に涙を溜めてネギは小声で泣いていた。

「ちょっと! いい加減にしなさいよ!!」

 そんなネギを見て本気で怒った明日菜は魔理沙を睨みつけ。

「あんた何がしたいのよ! こんな──」

 魔理沙の言動に明日菜が声を荒げようとした時、パキッとガラスにひびが入ったような音が耳に入った。

「え?」
「……? なんや今の音?」

 音に顔を上げたネギも怒っていた明日菜も魔法に興味津々の木乃香も、三人とも音を耳にして辺りを見回した。
 しかし露天風呂の中には鏡やガラスのような物はない、だがはっきりと近くで聞こえた。

「大胆だな、そんなに乙女の裸体を見たいのか」
「……違うっぽそうね、魔理沙も向こうも」

 奇怪な音を前になんてこと無いと悠然に湯船に浸かり続ける二人。
 何が起こっているのか理解しているような素振りを見せる二人に、ネギたち三人が視線を向けた時にさらなる異音が響いた。

「割れた音?」

 それはガラスが割れ砕け散ったような甲高い音、すぐ近くで起こった奇妙な音は怪奇を怪訝させた。
 柵の向こう側で光が上がり、露天風呂の柵を飛び越えて降り立ったのは三つの影。
 一つは三メートルを超える頭に二本の角を生やした筋骨隆々の鬼。
 一つは顔に嘴と背中に翼を持つ、長い鉄棍を肩に担いだほそ長い烏族。
 一つは顔の上半分を狐の面で覆った、袖や裾が短い着物を着流した長い黒髪の女。
 それぞれが人とは違う気配を放って五人を見下ろしていた。

「おっと、悪いがここは貸切だ。 露天風呂に入りたかったら後にしてくれ、その方がお互いのためだぜ」

 しかし明らかに人間ではない存在を前に、魔理沙は平然と嘯く。
 霊夢は一つため息を吐き、ネギたち三人は現れた怪異を呆然と見上げていた。

「確かに風呂に入りながら一杯といきたいとこやが、目的は別にあるんやが」
「露天風呂より優先されるとはどんな目的だ?」

 それを聞いて狐面の女が口角を釣り上げて。

「そこなお嬢様をいただきに」

 狐面の女が木乃香を見る。
 久しぶりに呼ばれたと思ったら随分と楽な仕事だ、そう考えて楽観視でもしたのか余裕のある態度。

「なんですって!?」
「そんな事させません!」

 木乃香を攫うとの宣言を聞いて、我に返った明日菜は庇うように木乃香の前に移動して。
 ネギは練習用の杖を取り出して、何時でも詠唱できるよう態勢を整える。
 そんな一触即発の空気が出来上がっていき、所在無さそうに魔理沙が口を開く。

「こういう場合ってどうすりゃ良いんだろうか」
「いつも通りでいいんじゃない?」
「そういうもんか?」
「そういうもんでしょ」
「そうか、じゃあいつも通りにいくか」

 その行動にわずかに反応するだけで、妨害する程度ではないと判断したのか動かない大鬼たち。

「ほう、何する気だ?」

 鳥族がニヤリと笑みを作り、魔理沙の行動を面白可笑しく見る。

「何って決まってるだろ?」

 この状況でそれ以外の何のあるんだろうか、口角を釣り上げた魔理沙は瞬時に魔力を練り上げ湯船の中から右腕を上げ。

「動くと撃つ!」

 言い終わると同時に手のひらから星の魔弾が放たれ、露天風呂の柵を巻き込んで真ん中の大鬼を消し飛ばした。

「なっ」
「にぃ!?」

 声を上げた時には決着は付き、残る二体の人にあらざる者も還っていく。
 魔理沙の攻撃に紛れて霊夢も妖怪バスターを放ち、鳥族と狐面の女の額を撃ち抜いて仕留めていた。
 大鬼は消し飛び残る二体も立ち上る煙となって消え、脅威ではない脅威が無くなって。

「おいおい、動くと撃つって言ったろ?」
「普通は相手のことだと思うわよねぇ」

 弾幕ごっこの前に会話が入ることが多い幻想郷、それぞれが他人など関係ない思惑で動いて会話が成り立たない事もままある。
 中には会話の途中と思える所で唐突に弾幕ごっこに突入する、言ってしまえば会話の途中でどちらかが攻撃態勢に入ったら即弾幕ごっこになる。
 今の魔理沙の言動は相手に向かって言った攻撃宣言、相手を制止させるものではなく魔理沙が動くから撃つと言う宣言であった。

「あー? 私は間違ったことは言ってないぜ」
「はいはい」

 ふぅーっと一息ついて、柵が壊れて外から丸見えになった景色を見る二人。
 
「ところでコノカ、今見たこと忘れてくれ。 言いふらしたりしたら葱坊主が大変なことになるらしいんで黙っといてくれると助かるな、主にネギが」

 思い出したように魔理沙が木乃香を見て言う。

「今のすごいなー、何したん?」
「魔法だよ、魔法」

 そんな魔理沙と木乃香を見て、明日菜も火消しに動いた。

「……あのねこのか、今さっきの事は誰にも言わないでほしいんだけど……」
「と言うか、結界張ってたの誰だ?」
「私じゃないわよ」

 式神が居たとは言え木乃香の目の前で遠慮無く魔法を使った魔理沙、むしろその前にあっさりと魔法をばらしたことで木乃香と向き合う明日菜。
 魔法のことがバレるとネギがかくかくしかじかでおこじょにされてしまうと説明。

「ほら、ネギも!」
「このかさん! お願いします!」

 隣の肘で小突かれたネギもハッとして、湯船に顔をつけそうな勢いで木乃香へと頭を下げる。

「そーなん? まほーがあるなんて驚いたけど、うちは言いふらす気なんてこれっぽっちもないんよ?」
「だそうだ、よかったな!」
「はい!」
「何嬉しそうにしてんのよ! 先にバラしたのは変わんないでしょ!」

 木乃香の言に安心したのかネギは嬉しそうに笑い、その隣で明日菜は魔理沙を指さして怒る。

「さてと、温まったことだしもう上がるわ」
「そうだな、風呂はいいが覗かれる趣味なんて無いしな」

 しかしあっさりと明日菜の指摘をスルーして、風呂から上がっていく二人。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 話は終わってないでしょ!」
「あん? 知ってるのはここにいる五人だけだぜ、黙ってりゃばれないって」
「そういう問題!?」
「順番を逆にすれば問題ないって」

 起こした問題を明日菜へ放り投げ、スタスタと脱衣所へ向かっていく二人。
 いい湯だったな、晩飯が楽しみだと脱衣所の引き戸に手を掛けようとした瞬間。

「お嬢様!」

 勢い良く引き戸が開かれ、声を上げて現れたのは愛刀を片手にした浴衣姿の桜咲 刹那。

「突き指しそうだったな」

 あぶないあぶないと刹那の横を通り過ぎ、刹那は二人をきつめの視線で一遍見て木乃香のもとへと走り寄る。

「お怪我は!?」
「せっちゃん……」

 木乃香に怪我の有無を確認した後露天風呂内を見渡して、争った形跡を確認してほっと一息をついた。

「心配してくれたん?」
「え、いや、わ、私は……」

 木乃香に笑みを向けられしどろもどろの刹那、ハッとして膝を着き。

「私は、お嬢様をお守りできれば──」

 自分の思いを押しつぶして言葉を綴るが、終わる前に脱衣所から新たな人影が姿を見せた。

「……ネギ先生、話があるので上がってください。 あなた達にも話を聞かせてもらうので、露天風呂から上がりなさい」

 葛葉 刀子がいつもの口調で言い、露天風呂の壊れて無くなっている一部の柵を見てため息を吐く。
 しょうがないとは言えこうも派手にやられては言い逃れ出来ない、出来たら出来たで将来が心配になってしまうが。
 とりあえずは話すことになる、これは木乃香が近右衛門の孫だからであり通常ならば隠蔽に走らなければならない。

「まったく……」

 襲撃者から生徒たちを守ったために魔法を暴露した点、これについては魔法を使用しなければ守れなかった事が大きいために強く追求できない。
 問題はその前の、襲撃がある前の魔法をばらしたことにある。
 やろうと思えばうやむやに出来るが、それでは意味がない。

「……刹那、近衛さんの傍から離れないようにしなさい」
「……はい」

 今回ばかりは二人の間にあるわだかまりに遠慮している場合ではない、結界崩しをされた上木乃香が狙われたのだから襲撃前と同じにしておけない。
 刀子はもう一度風呂からあがるよう催促、携帯電話を取り出した。





 四人とプラス一匹はホテル内を先導する、携帯電話を片手の刀子の後について歩く。
 言葉を発するのは刀子だけであり、その相手は名称から近右衛門だとわかる。
 それを耳に入れながら歩き着いた場所はとある一室、教員用に充てられた部屋。

「……わかりました、今から始めます。 入りなさい」

 携帯電話を下ろしながら戸が開き入室を促し、四人はスリッパを脱いで部屋に上がった。

「………」

 室内には誰も居ない、後ろから四人と一匹の隣を通り過ぎて素早く座布団を敷く刀子。

「座りなさい」
「は、はい……」

 まずは刀子が正座で座り、机を挟んで四人も神妙に正座で座った。
 向きあったまま刀子は携帯電話を操作し、ディスプレイをネギたちへ向けて机の上に置く。

「学園長、準備が整いました」

 そう刀子が告げれば、繋がっている携帯電話から声。

『もしもーし、近右衛門じゃが』
「学園長先生、ネギです」
『ネギ君かの、一通りの話は刀子君から聞いておるが齟齬がないかもう一度ネギ君から聞かせて欲しいんじゃが』

 その言葉にネギは頷き。

「分かりました」

 かくかくしかじか、露天風呂で聞いたことをそのまま近右衛門にネギは説明する。

『……それは間違いないかね?』
「……はい」
『……わかった、傍に木乃香は居るんじゃね?』
「はい」
『聞こえてるかの、木乃香』
「聞こえとるよ、じいちゃん」
『木乃香、魔法の事を知りたいかの?』
「……なあじいちゃん、うちってまほーつかいになれるん?」
『む? 彼女らになにか聞いたかの?』
「うん、魔力垂れ流しで勿体無いって言ってたんよ」
『……確かに、木乃香には並々ならぬ魔力を持っておる。 魔法使いになろうと思えばなれるだけの才能を持っておる、じゃがそう簡単な話ではない。 詠春も木乃香には魔法とは関係なく生きてほしいと言っておった」
「父さまが?」
『うむ、魔法と言うのは世間一般に考えられてるものとはちょっと違うんじゃよ。 むしろ危険な物じゃ、だからこそ魔法を覚え使うことには責任が付きまとう』

 その責任を背負う事が魔法使いの第一歩でもある、木乃香は身に秘める力に溺れず責任を背負うだけの覚悟を持たねばならぬと近右衛門。

『祖父であるわしや父である詠春も木乃香の将来に口出しすることは出来ん、木乃香の人生は木乃香自ら考えて決めねばならん。 すぐに答えを出さず、じっくりと考えてから自分が納得できる答えを出すのじゃ』
「……うん、わかった」
『うむ、ではネギ君』
「は、はい!」
『ネギ君や、木乃香の事はあまり気にせんでよいぞ。 木乃香が自分で決めてからの事になるからの』
「はい、わかりました」
『あと今回の件でネギ君にはお咎めは無かろう、責任があるのはしっかりと理解させていなかったわしにあるからこれも気にせずともよい』
「……れいむさんとまりささんはどうなるんですか?」
『……難しい問題じゃな、とりあえず厳重注意はしておくことになるじゃろう』

 それ以上の事は難しい、魔法世界で定められた魔法使い用の罰則を霊夢と魔理沙に適用すれば間違いなく反発を招く。
 悪い方に転がると危険なことになる、それを避けたいがために落とし所をここと定める。

『彼女らはこちらの常識には疎いからの、ネギ君は日本に来る前は日本の常識を知らなかったじゃろ?』
「はい、失礼なことがあったらいけないので麻帆良に来る前に日本の事をたくさん勉強しました」
『うむうむ、感心な事じゃ。 今の彼女らは日本の事を勉強する前のネギ君と似たようなものじゃ、じゃからいきなり本国の送るのも罰としては重すぎるとわしは考えておるんじゃ』

 事の重要さをそれほど理解しておらず、理解出来るだけの説明をしなかった近右衛門が悪いとした。
 魔法の行使は使用しなければ危険であったことを考慮し、不問とし。
 幸い初犯であるし魔法をばらされたのは近右衛門の続柄であり、話せばわかる者たちなので今回は注意という形で終わらせる。
 そうネギに告げる近右衛門。

『ネギ君は特使の事に集中してもらえれば良い、他の皆にはわしから話しておこう』
「はい」
『タカミチ君たちが居るとは言え、気を抜きすぎては駄目じゃぞ?』
「はい、気を付けます!」
『いい返事じゃ、それではこの話はここで終わりとしよう。 刀子君、タカミチ君が戻ってきたら電話をくれるよう伝えてくれんかね』
「はい、わかりました」

 通話が切れ、携帯電話をしまう刀子。
 視線が懐から机を挟んだ四人へと向く。

「ネギ先生、今回のことは災難でしたがまたこういう事があるかもしれません。 彼女達、特に霧雨さんが魔法の話を切り出しそうなら注意してもらえると助かります」
「はい」

 強くネギが頷き、刀子の視線は明日菜と木乃香に向けられる。

「勿論貴方たちも誰彼話してはいけません、分かりましたね?」
「は、はい」

 鋭い視線を受けて明日菜と木乃香は頷き、刀子は最後に刹那へと顔を向けた。

「刹那、今まで以上に近衛さんの護衛を怠らないように。 出来るだけ傍に居るようにしなさい、いいですね?」
「……はい」

 それに頷く刹那、木乃香は伏せ目がちに刹那の顔を見ていた。

「以上です、魔法関係の問題は忘れて修学旅行を楽しみなさい」

 何時もとはどこか違う声色で、刀子は解散を促した。





「それで、あの二人は注意だけで終らせるの?」

 開放された四人と一匹はホテルの廊下を歩いていた。
 ネギの左には明日菜が、右には木乃香が居て並んで歩き、その少し後ろに刹那が付く。

「学園長先生がしっかりと注意するそうです」
「ふーん、それだけ?」

 明日菜はあの金髪魔法少女が注意されただけで止めるかどうか疑わしかった。
 ちゃんと聞いていたなら魔法のことをばらさないし。

「いきなり本国に送っちゃうのは厳しいかなって学園長先生が言ってましたよ」
「そういうもんなの? またすぐにばらしちゃいそうな気しかしないんだけど」

 明日菜から見れば魔理沙は言っても聞かないタイプの人間だと分かり、どうにも口が軽そうで信用できない感じを受けた。

「桜咲さんはどう思う? あの魔理沙って子」

 足を止めて振り返り、後ろにいた刹那へと話しかける。

「……実力から見れば超一流の魔法使いかと思いますが、信用できるかどうかは別の話かと」

 それに対し刹那は内に持つ霊夢と魔理沙への不信感をそのまま述べた。
 簡単にルールを破る者を信用しろと言われても無理であろう、信用しないし頼りたくもないと言うのが本音。
 しかしあの二人の力が必要になるかもしれないと言う危惧、自分では敵わない相手が襲ってくるかもしれないと言う焦燥感。
 それを不甲斐無いと感じ、せめて木乃香が無事で居られるよう全力を尽くすと決めていた刹那。

「もし、戦闘となれば直ぐに逃げてください。 あれクラスの魔法使いの戦いになると……私ではどうにも出来ません」

 守ることも出来ないかもしれない、その意を含んだ言葉。

「桜咲さんも魔法使いなんでしょ? やっぱりあの二人は刹那さんから見ても凄いの?」

 決まりが悪そうに刹那は木乃香を見て、すぐに視線をそらし。

「私は魔法使いではなくて、神鳴流の剣士です。 補助程度には符術を使えますが、攻撃に使用するには決定打に欠けるかと」

 淡々と自分の能力を説明する刹那。

「しんめいりゅう? 何だか凄そうですね……」

 刹那の話を聞いて何だが刹那が凄い人に見えてきていたネギ。

「せっちゃん、ずっとうちを気にしててくれたん?」
「……私は護衛です、お嬢様が無事であればそれだけでいいので」

 余所余所しく顔を逸らし、事実だけを述べる。
 その横から、明日菜は疑問に思った事を口にした。

「ねえ、桜咲さんがこのかの護衛だからって仲良くしちゃいけないの?」

 見ていればわかる、木乃香が刹那の事を気にしているのを。
 木乃香は基本的に明るいが刹那のことになるとどうにも歯切れが悪くなる、友達の落ち込んだ顔なんて見たくはないと明日菜。

「い、いえ、そういう訳ではないのですが……」
「ウチ! せっちゃんと仲良くしたい!」

 明日菜の疑問に刹那が答え、刹那へと一歩近づいて思いを主張する木乃香。

「わ、私は……」

 気圧されて一歩下がる刹那。

「ウチ、せっちゃんに何か嫌な事何かしたん? 悪いところがあったら直すように頑張るし、だから──」
「違います!」

 刹那は遮って声を上げた。

「このちゃっ……お嬢様は悪くはありません、偏に私が不甲斐無いだけです! お嬢様が何かした訳ではないですし、悪いところなど!」
「……せっちゃん、ウチのこと嫌いになった訳やないん?」
「嫌いになる訳など、っ!」

 勢いに流され、刹那の口から本心が零れ落ちる。

「……ウチてっきりせっちゃんに嫌われたんやって」

 それを聞いてほろりと木乃香の目尻に涙、それを指で拭いながら微笑む。

「桜咲さん、仲良く出来るなら仲良くしたほうが良いと思います」
「あ……」
「よかったわね、このか」

 ネギに言われ、刹那が見るのは喜ぶ木乃香と言葉を掛ける明日菜。
 刹那が木乃香を心配していると同じで、木乃香も刹那に心配を掛けていた事。

「ほら、桜咲さん」

 明日菜に横から背中を押され、刹那は木乃香へと一歩、体と共に心も近づいた。





 一方その頃、高畑とガンドルフィーニはホテルの周囲で呪符使いを探していた。

「……居ませんね」
「うむ、それに彼女の魔法の残り香が強すぎるな」

 ホテルの露天風呂、既に応急補修をされた柵から一直線の離れた場所に二人は立っていた。

「魔理沙君の魔法の威力に逃げ出したのでしょう」

 召喚した式神たちを一撃で吹き飛ばされれば、二の次に召喚しても同じく一撃で還される。
 当然呪符使いの力が切れるまで延々と式神を相手にする理由もなく、式神たちを一撃で吹き飛ばした魔法を向けられる可能性は大いにある。
 それを理解して鬼たちを召喚した呪符使いは早々に退散したのであろうと高畑はあたりをつける。

「これで引け腰にでもなってくれればいいんですが」

 近衛 木乃香の護衛には強力な魔法使いが居る、その事実が木乃香を浚おうとする者たちに躊躇いを生むことになれば襲撃も減る事になるだろうと考える。

「しかし、強硬手段も採りかねないな」
「誘い出しもありえますが、それを考えるとやはり彼女達を同行させた方がより安全でしょう」
「……3-Aが騒ぎ出さなければ良いが」
「それは……、難しいですね」

 巫女服と魔女服を着た二人に興味を示さないわけがない、わらわらと興味津々に群がる様子がありありと思い浮かべる事が出来た高畑。

「これも含めて彼女達に言い含めておかなければならないな……」

 ガンドルフィーニは眉間を指で揉みながらため息を吐いた、やはり信じるべきではなかったかと呟く。

「まずは話を聞いてからにしましょう、それからでも遅くはないかもしれませんよ」
「ああ、そうしよう」

 後を追いかけられるような物はホテルの周囲からは見つからなかった、となればもう一つの問題の解決を図らなければならない。
 踵を返しホテルに戻った高畑とガンドルフィーニ、階段の踊り場で合流した三人に襲撃者を追跡出来なかった事を告げた。

「うーん、まさか結界が一度で抜かれるなんて……。 僕はまた襲撃があるかもしれませんから結界の維持に集中させてもらいます」
「ああ、よろしく頼む」
「高畑先生、学園長が連絡を入れて欲しいと言っていました。 私は見回りをしてきますので、理由が分かったら連絡をお願いします」
「分かりました」
「僕も見回りをしておきます」

 刀子たちと分かれた高畑たちは霊夢と魔理沙が泊まる部屋へと向かった。
 階段を上がり廊下を進んで、三階のスイートルームの一室のドア前で足を止める。
 高畑はドアをノックしながら霊夢と魔理沙を呼ぶ、ノックしてから一分二分と時間が経つが返事やドアが開かれる様子が無い。
 どこかへ行ったのかと下の階に戻ろうとした時、足音が部屋の中から聞こえてドアが開いた。

「はいはい、何か用?」

 霊夢が顔を見せ、高畑は問題となる用件を告げた。

「露天風呂の事で魔理沙君に話を聞きたいんだけど」
「……魔理沙ー、露天風呂の事聞きたいんだって」

 振り返って部屋の中にいる魔理沙へと呼びかけた霊夢、その後入室を促されて上がった二人。
 入ると目に入るのは座椅子に座って茶碗に酒を注いでいた魔理沙だった。

「何だ? 人の裸のことを聞きにきたのか? そういうのはお断りだぜ」
「このか君に魔法のことを話した理由を聞きにきたんだよ」

 笑いながら高畑は流し、ガンドルフィーニは部屋の中に漂う酒気に眉を潜めた。

「京都に来る前に一通りの事を教えたはずだが」

 机を挟んで対面の座椅子に座りながらのガンドルフィーニ。

「あれか、魔法を知らない人に教えちゃ駄目だってことか?」
「そうだ、何故近衛君に教えたんだ」
「魔法を知らないと魔法を使えないだろ、私が。 だからお嬢様に教えた」
「……それはどういう意味だい?」
「人の裸を覗こうとする奴が露天風呂の周りでうろついてたら良い気分も台無しだろ、だからか弱い私は魔法を使って退場願ったわけだ」
「魔理沙がか弱かったら凄い事になるわね」
「妖怪がのさばっちまうな」
「それは無いわね」
「………」

 魔理沙のか弱い発言はともかく、魔法を使うためにわざと木乃香に魔法のことを教えた。
 その事を聞いて口を閉じるガンドルフィーニ、何せ守るために魔法を使ったのだから責め立てる事は出来なかった。

「……その露天風呂の周りでうろついている者が魔法とは関係ない人であっても魔法を使う気だったのか」
「そんな訳無いだろ、こそこそと何かの術を使ってたからに決まってるだろ」

 妖怪じゃないのに人殺しなんてナンセンスにも程があるぜ、と酒がなみなみと注がれた茶碗を手に取り口をつける魔理沙。

「いいか、私にも一応守る気はある。 だが守って怪我したんじゃあ元も子もない、だから相手さんが何かしてこなけりゃ私は魔法を使わないで済むんだ」

 悪いのは私じゃなくて、魔法を使わないといけない状況にする相手が悪い。
 そう言って一応の誠意は見せる魔理沙。

「あのお嬢様が狙われる事も分かったんだ、この際だからあのお嬢様に自衛手段を十個や二十個ほど教えといたらどうだ?」
「確かにそうだね、だけど魔法を覚えるかどうかは彼女が自分で決めなきゃ駄目なんだよ」
「そりゃそうだ、教えられるより自分で覚えた方が色々と捗るな」

 もう一口飲む、霊夢も同じように酒を口に含んでいた。

「……そういう事か、とりあえず言いたい事は分かった」
「じゃあ話は終わりだな、飲むか?」
「いや、まだやることがあるからね」

 酒瓶を指差して薦めてくる魔理沙に高畑は断り、ガンドルフィーニと共に立ち上がる。

「ああ、明日自由行動があってね。 君たちも付き添って欲しいんだけど」
「そりゃ結構、明日もここで過ごせって言われたらどうなるか分かったもんじゃないぜ」
「ネギ君たちと一緒に行動してもらうよ、離れて動いても良い事は無いだろうし」
「そうね、他には何かある?」
「それだけだよ、それじゃあまた明日」

 ひらひらと手を振られて退室する二人、携帯電話を取り出しながらガンドルフィーニに声をかける高畑。

「守る気があって良かったですね」
「守ってくれなければ困るだろう」
「それはそうですが、明日は気を張らないといけませんね」

 魔理沙の魔法は派手だ、もし往来の中で強行してくれば魔理沙は迷わず魔法を使うだろう。
 そうなれば当然多くの人の目に付くし、関西呪術協会もより一層不快感を抱くだろう。
 露天風呂で襲撃してきた者は呪符使いと思われるし、向こうに味方する者も現れるかもしれない。
 さらには関西呪術協会自体が西洋魔術師である高畑たちを排除しようと動く事も十分ありえる。

「……これ以上厄介な事にならなければいいが」

 ため息を吐いたガンドルフィーニに同意し、アドレスを開いて近右衛門へのダイアルを押した高畑であった。















 アトガキ

 すみませんとしか言えない! ビクンビクン
 幾つか話を端折る気満々、魔法先生が守ってるし霊夢と魔理沙も居るから手出しは早々無理な状況とかついてない千草一行
 因みに露天風呂で召喚したのは千草じゃないです


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