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No.5527の一覧
[0] 東方結壊戦 『旧題 ネギま×東方projectを書いてみた』【習作】[BBB](2010/01/05 03:43)
[1] 1話 落ちた先は?[BBB](2012/03/19 01:17)
[2] 1.5話 幻想郷での出来事の間話[BBB](2009/02/04 03:18)
[3] 2話 要注意人物[BBB](2010/01/05 03:46)
[4] 3話 それぞれの思惑[BBB](2012/03/19 01:18)
[5] 4話 力の有り様[BBB](2012/03/19 01:18)
[6] 5話 差[BBB](2010/11/16 12:49)
[7] 6話 近き者[BBB](2012/03/19 01:18)
[8] 6.5話 温度差の有る幻想郷[BBB](2012/03/19 01:19)
[9] 7話 修学旅行の前に[BBB](2012/03/19 00:59)
[10] 8話 修学旅行の始まりで[BBB](2012/03/19 00:59)
[11] 9話 約束[BBB](2012/03/19 01:53)
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[5527] 1話 落ちた先は?
Name: BBB◆e494c1dd ID:bed704f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/19 01:17

「なぁ霊夢」

 博麗神社の縁側で、お茶と茶請けの羊羹を楊枝で突き刺しながら隣に座る白黒の魔法使いに返事を返した。

「……何よ」

 気色が悪いと言うほどでもないが、何か強請って来そうな雰囲気を出して声を掛けてくる魔理沙。

「外に行ってみたいぜ☆」
「行ってくれば?」

 切り分けた羊羹を口の中に放り込み咀嚼。
 丁度良い甘みに舌鼓、やはりお茶にはこういった和菓子が良く合う。

「素っ気ねーなー、外の世界のグリモワールを読んでみたいんだぜ!」
「だから行ってくれば良いじゃない」

 茶碗に口を付けて傾ける。
 ああ、初使用の茶葉で入れたお茶は美味しいわ。

「いやー、面白い本拾ってな! これとかこれ、これもな。 解読するのに時間掛かっちまったね」

 勝手に何処へでも行けばいいと言っていたら、なにやら勝手に説明し始めた。
 魔理沙がどこからか取り出した本、赤や青の、果ては良く分からない質感の本まで取り出していた。

「この本の何が面白いのよ」
「たとえばこれだな、『吸血鬼になる為の方法』とか」
「……は?」

 吸血鬼って、あの姉妹と同類になる方法ってこと?
 簡単に成れるもんなんだ、と一人完結させる。

「見てみるか? さすがに霊夢にゃ理解できないだろーが」

 そういって手渡してくる魔理沙、それについ手を出して受け取ろうとするが。

「あ」

 と『スキマ』に落ちた。
 私の手のひらに乗る前にスキマへと落ちた。

「こんなもの拾ってくるなんて、流石にこれは駄目ね」

 魔理沙が立ち上がって私の隣、いつの間にか座っていた『八雲 紫』に食って掛かる。

「そのグリモワールは私のなんだ、返せよ!」
「たとえ魔理沙が使う気なくても、色々バランスが壊れるから幻想郷に置いておけないわ」

 紫が手に持っていたグリモワールをスキマに投げ込む。
 吸血鬼姉妹のような存在がぼこぼこ増えたら堪ったものじゃないのは確か。

「さっさと返した方が身のためだぜ」
「身のため? どういう手段に出るのかしら?」

 魔理沙はスカートのポケットからミニ八卦炉を取り出し、紫はスキマから日傘と扇子を取り出して広げる。
 効果音にすれば『ズオォォォ』と言った感じだろうか、二人の間は空間が歪みそうなほどの視線の応酬。

「二人とも、やるなら神社の外でやってくれない?」

 その二人の間には私が居るわけで。
 勝手に喧嘩をやってればいいが、神社内や私を巻き込むならば相応の手段で叩き出さなければいけない。

「勿論だぜ! このババアをぶっ飛ばして取り返してやる!」
「バッ……、力押ししか能がない魔法使いにそれが出来るかしら?」

 どっちも火が入ったらしい、途端に飛び上がり上空で弾幕ごっこをはじめた。

 今日もお茶がうまい。





「と言うわけで外の世界に行こうぜ」

 どういう訳なのか分からないが二人の勝負は引き分けで、グレイズのし過ぎで服が焦げてたりしている。

「外の本を読みたいから私に付き合えって事でしょ? 嫌よ、めんどくさい」

 縁側でお茶を飲みながら日向ぼっこ、それが霊夢にとって最大の幸せと言って良い。
 それを邪魔するものは容赦なくぶっ飛ばしてきた、今もそれは変わらないわけで。

「……残念だったな、霊夢! 既に決まっている事なんだぜ!」
「は? ちょ!」

 と声を上げれば、いきなり目の前にお払い棒が落ちてきて、慌てて拾い上げるように手に取った。
 掴んだと確信すれば、浮遊感。
 落とされたと理解する、スキマの中に。

「ユカリィィィーーー!!!」

 落ちていく中、叫ぶ。
 境界を操ったのか、飛ぶ事さえ出来ずスキマの中へ。

「いってらっしゃーい♪」

 と、スキマの外からにこやかに手を振る紫が見えた。
 あのババア、戻ってきたら夢想天生を叩き込んでやる。
 そう思いながら、スキマの奥底へ落ちていった。



















「あのババア……」

 地鳴りのような唸り声。
 霊夢は恨みがましい表情で、紫をババアと呼んでいた。
 今ここに居ない無理やり移動させた元凶と、すぐ隣に居るそうするよう仕向けた元凶。
 居ない者と居る者、怒りをぶつけるには存在するものでないと駄目だ。
 つまり……。

「落ち着けって霊夢……、お払い棒を振りかぶっても戻──」

 言い切る前に、魔理沙の頭の天辺に振り下ろされた。

「っ……っ……!」

 しゃがみこみ、痛いと口に出せないほど痛みにもだえ苦しむ。
 霊夢から見ればきっと涙目になっているだろう自分。
 ニヤリと口端を吊り上げて笑う霊夢、容赦などしてくれなさそうだ。

「っおわ!?」

 再度振り上げられるお払い棒、今の一発では怒りは晴れなかったようで。
 間一髪避けてカリカリカリっとグレイズ音、3回鳴ったと言う事は3発分の攻撃だと言う事。
 威力か回数か、どちらでもいいけど当ったら痛い目を見るというのは確定のようだぜ……。

「悪かった! ほんと悪かったから!」
「謝罪の言葉なんて幾らでも吐けるわ、大切なのは行動で示す事よ」

 口で謝る位なら、さっさと幻想郷に戻せと霊夢は言っている。
 スキマを操れない私にはそれを出来ないわけで……。

「まるでUSC……だぜ」

 凄まじい笑みを浮かべ、腕が増えたように錯覚するほど高速で振るわれるお払い棒。
 今の霊夢はまるで、前に拾った『漫画』とやらに出てきていた、『オラオラオラオラァ!』と拳で殴ってくる奴のようだった……。
















「はぁ……、ここどこよ」

 一頻り魔理沙を叩き終え、辺りを見回せば鬱蒼とした森の中。
 少し歩けば妖怪がひょっこり出てきそうな感じがする。
 ため息をつきながら、頭にこんもりたんこぶを作って倒れている魔理沙を引っ張り起こす。

「……結構酷いぜ」
「嫌がってる人間に無理強いする魔法使いと、どっちが酷いかしらね?」
「しこたま人の頭を殴る巫女」

 霊夢が物理的なら、魔理沙は精神的。
 どっちもどっちな感じもしなくはない。

「……それで、ここがどこだか分かってるんでしょうね?」
「知らないZE!」

 ブオンッとお払い棒が魔理沙のほほを掠める。
 またもグレイズ音、霊夢は口より手が先に出るタイプの人間だった。

「ゆ、紫の話じゃ来る前に見せた本があった場所って聞いてるぜ!」
「ふーん、この土地に魔理沙が望む本があるって訳?」
「たくさんあるって聞いたから、蒐集するにはもってこいって訳だ」



 うふふと笑う魔理沙、紫以外の気色悪い笑い方など久しぶりに見た。

「で、本を取りに行くんでしょ? 場所は勿論分かってるわよね?」
「ああ、下のほうから強い魔力を感じるな」

 帽子を直し、左手で箒を掴む魔理沙。
 空いている右手にはミニ八卦炉を取り出していた。

「まァ、その前に……」
「妖怪退治と行きましょうか」

 視線の先、森の奥から数多の妖怪が押し寄せてきていた。















「ふッ」

 右のポケットから打ち出される大砲のような拳打。
 大気を叩き、弾丸と化した衝撃が召喚された式神たちを叩き潰す。
 地面はクレーターのような凹みが複数あり、地面に『居合い拳』を放った証拠でもある。
 こんな昼間に侵入してくるとは、最近大胆になり始めている。
 今だ結界の効果などで一般人には知られていないが、これが続き増え続ければ目撃所か一般人に被害まで出る可能性がある。

 結界のお蔭でどの方角から何人侵入してきた、と探知できるから良いものの。
 許容量を越えれば中まで侵入されかねない、そうなると物理的に遮断する結界が良いと思われがちだが。
 麻帆良に出入りする人の数は何万、時には何十万となるからかなり難しいものとなる。
 この麻帆良の地に張られた結界、それは認識を誤魔化したり、何処に誰が居るか、そういった認識阻害や探知、探索系の結界。
 効果としてはそれだけではなく、魔物や妖怪などの力を押さえ込む効果もある。

 無論それをごまかす手段など沢山ある、だが勿論それを防ぐ手段も沢山ある。
 数多の術で組み上げられそう言ったもので構築された、不法な侵入者が居れば即時に探知する仕掛け。
 結界を引くと言うならそれを探知する設備などが必要だ、だがそれをこなすのは一人の魔法使い。
 彼女なら例え力が封じられていても、誤魔化した時の違和感を感じ取る事が出来る。
 不正な手段で結界を通り抜けた者を感じ取り、それを我々の手で排除するという方式しか取れないと言う事だった。

「ふぅ……、終わりかな」

 真昼に堂々と入り込んできた式神、それを叩きのめして一息。
 統計、数年前からの侵入者の数が年々右肩上がり。
 現状人手が足りていないわけではないが、このままだと必然的に人手が足りなくなる。
 人員補充にも時間が掛かるし、これ以上魔法生徒達の手を借りるわけにもいかない。

「……全く」

 懐から携帯を取り出し、アドレスを開く。
 選択、通話ボタンを押して学園長に排除完了の電話を入れようとした所に、この森から更に北西に一筋の光が天へと伸びていた。
 同時に感じるのは巨大な圧力、凶悪と言っていい存在感を放っていた。
 勘の鋭い者なら離れていても感じるだろう、かなり強い存在がこの麻帆良に侵入してきたと言うのか。

「……学園長、新たな侵入者です」

 そうは話しながら飛び出す、瞬動を用いて全力で北西へと向かった。
















「こいつら、妖怪……よね?」
「じゃないのか? すげぇ弱っちいけど」

 非常に威力が低い『ホーミングアミュレット』の一発で吹き飛び消える妖怪たち。
 追尾性が非常に高い反面、威力が低いのだけど……。

「襲ってくるならまとめてぶっ飛ばすだけだぜ!」

 魔理沙がマジックミサイルを放ち爆裂、言ったとおり纏めて十数体を吹き飛ばした。
 強さは幻想郷の毛玉程度、姿が鬼や烏天狗なので相応に手ごわいと思っていたらこの程度。
 同じ鬼の『伊吹 萃香』や烏天狗の『射命丸 文』とは雲泥の差。
 二人と比べるのが失礼なくらいに弱い。

「ま、とりあえず痛い目にあってもらいましょ」

 群がる妖怪どもを蹴散らそうと、懐から符を一枚取り出して掲げる。
 魔理沙はマジックスフィアを浮かべて、撃ちながら妖怪たちの位置を上手く誘導する。

「いけるぜ!」
『神技──』

 魔理沙の合図と共に地面に叩きつけるように、符を持つ左手を振り下ろした。

『──八方鬼縛陣!』

 赤い線で出来た長方形の結界が見る間に広がり、自身と魔理沙、妖怪どもを内に捕らえて、足元から霊気が立ち上った。
 赤い光を放ちながら、天へと伸びる長方形の退魔殲滅陣。
 陣内の自分と魔理沙を除いた存在を一瞬で消し飛ばし、光が収まれば当たり前に妖怪たちは消えていた。

「まぁこんなものね」
「数だけか、骨がないって言っちゃあ失礼か?」

 魔理沙は笑いながら帽子の位置を直す。
 恐らくは紙を使って呼び出された式、骨が無いというのは言い得て妙。

「……もう居ないようね」
「さて、憂いも無くなったし早速グリモワールを──」

 と言いかけて、収めようとしたミニ八卦炉を構えた。

「──っと、人間か。 マスタースパーク撃ちそうになったぜ」
「せめてマジックミサイル位にしてなさいよ」

 あんな大砲を撃たれちゃ色々吹っ飛びかねない。
 ミニ八卦炉を向けている先には、メガネを掛けた無精髭の男が立っていた。




「……君達はここで何をしてるんだい?」

 光が立ち上ったと思わしき場所へ着いてみれば、頭に大きな赤いリボンを付け、紅白の露出が大きい巫女服……? を着た少女と。
 子供用の童話に出てくるような、箒を持ち、白黒の魔女ルックな服を着ている少女たちが居た。

「何って、妖怪に襲われたからぶっ飛ばしただけだぜ」
「襲われてぶっ飛ばした……? さっきの光は君達が?」
「正確にはこっちの霊夢だぜ、わたしゃ何もしてなかったり」
「魔理沙は限定的な広範囲は苦手だものね」
「それで、妖怪たちに襲われるような場所で何を?」
「……それは」
「いだッ! 何す──」

 巫女服の少女、霊夢と呼ばれた少女が手に持つお払い棒で白黒の魔法使いルックの少女、魔理沙と呼ばれた少女の頭を叩く。
 連続で叩き続ける少女と、逃れようと走り出す少女。

「思い出してムカムカしてきた、もうちょっと叩かれなさい!」
「そんなのは妖怪で晴らしてくれ!」
「本人に当らなきゃ晴れないわよ!」

 始まる追いかけっこ、あまりに場違いな状況に少し頭が痛くなった。

「……そろそろいいかい? 色々聞きたい事があるんだが」

 お払い棒を振り回すのを止めた紅白の少女がこちらを見て、ボコボコと殴られていた白黒の少女が顔を上げる。

「いつつ……、私も聞きたい事が有ったんだ」

 頭を摩りながら立ち上がり、まっすぐ見つめてくる。

「ここらへんにグリモワールがあるだろ? そこに案内して欲しいんだぜ」
「君達は……、魔法使いかい?」
「私はな、霊夢は違うぜ」
「ただの巫女よ」

 ただの巫女にしてはとんでもないものだと感じる少女。
 成人していない年齢だろうに、ここまでの存在感を放つ人物を見たのはナギやエヴァ位なものだ。

「そうか……、グリモワールは魔法書の事かい?」
「そうそう、グリモワール。 持って行きたいけど紫が持ってくるなって言ってたからな、一応読むだけ」
「魔法書を読みたいから案内してくれって事か、……本当に読むだけかい?」
「持ち込んだら没収されるからな、しょうがないから読むだけだぜ」

 『ゆかり』、おそらくは人名だろうがこの二人に厳命できるほどの人物か。
 警戒しすぎて損はない二人だが……。

「読んだらさっさと帰るわよ、人の幸せ奪っといて自分だけ幸せなんてムカつくし」
「今度賽銭入れてくから勘弁してくれ」
「そういってキノコ入れてくんじゃないでしょうね?」
「……とりあえず、学園長に話を入れるから付いてきてくれるかな?」
「がくえんちょう? なにそれ」
「この土地で一番偉い人の事だよ」
「ふーん、じゃあ連れてってくれ」















 侵入者を保護したと、高畑君から連絡を貰い。
 既に帰還していた他の魔法先生と共に、学園長室で待っていると二人の少女を連れた高畑君が現れた。
 紅白と白黒、それだけで表せるような少女達であった。

「ふむ、君達が侵入者かね」
「そっちから見ればそうでしょうね」

 言ってもいないのにソファーに座り湯のみを傾け、高級茶葉で入れられたお茶に舌鼓を打つ紅白の少女。
 一口飲むたびに『いい茶葉ね……』と呟いていた。

「名前は?」
「博麗 霊夢<はくれい れいむ>」
「霧雨 魔理沙<きりさめ まりさ>だぜ、ところでこの頭本物か?」

 いつの間に移動したのか気が付けば頭を撫で回し、軽く叩いている白黒の少女。 

「本物じゃから、あまり撫で回さんでくれ」
「ああ、すまねぇすまねぇ。 こんな頭持つ人間始めて見たぜ、この人里もめちゃくちゃでかいし。 外に出てよかったぜ」

 やたらと感心して窓の外に視線をやる少女、周りの魔法先生たちがあまりの傍若無人っぷりに怒りを溜めているのが分かる。

「本題に移るかの、君達の目的は魔法の書物かね?」
「そうそう下から感じるんだよな、色々な魔力が」

 思い出したと言わんばかりに頷き、麻帆良学園の学園長兼理事長の『近衛 近右衛門』は表情を変えずに驚く。
 学園長室から千数百メートル離れた、それも地下にある魔法書を感じ取っているような事を言う霧雨君。
 地下には厳重な封印処理をしている魔法書、かなり近づかないと感じられないはずの魔力をこの少女は今も感じていると言うのか。

「はて……、元より地下なんて無いがのぉ」
「そうなのか? なら地面の下に埋まってんだろうぜ!」

 とぼけて見るが、『掘り起こそうぜ!』と続けて言いそうな霧雨君。

「向こうの方から感じるんだよな、……ありゃあ湖か? もしかして水の中じゃあないよな」

 果ては湖ごと吹っ飛ばすか……、とか物騒な事を呟く。

「待て待て、そんな事したら魔法書まで吹っ飛ばしかねんぞい!」
「それもそっか、どうすっかなぁ」
「湖の上になんか有るじゃない、あれからは入れたりしないのかしら?」
「ん? よく見ればあるな。 良し、あそこに行ってみるか!」
「待て待て待てい! 君らには話を聞きたいんじゃが!」
「そういえばそうだっけ」
「すっかり忘れてた」

 頷きながら、『お茶請けは無いのかしら』とか言い出す始末。

「それで、聞きたい事って?」
「……なぜ本を求めているのかと言う事じゃ」
「魔理沙が読みたいって言ったからよ、正直言って私はグリモワールなんてどうでもいいのよ」

 さっさと帰りたいと一言付け加える博麗君。

「拾った本が面白くてな、紫がここに似たような本が有るって聞いて外に出てみたんだが」

 本も面白そうだが、この人里も面白そうだぜ! と笑いながら言う霧雨君。

「つまり、ただ本を読みたいがだけにここに来たと?」
「そう言う事」

 霧雨君が言う『似たような本』と、おそらく人物名だろう『ゆかり』と言う存在。
 前者は確かに湖の地下には貴重な書物がある、勿論それを公言している訳ではなく隠してはいるが、情報であるからして漏れているのは否めない。
 後者の人物はそれがそこにあると確信して霧雨君に言ったのじゃろうか……。

「霧雨君、似たような本とはどういうものかね?」
「魔理沙で良いぜ、本は家の近くで見つけたんだが結構面白くてな。 『吸血鬼になる為の方法』が書かれてた本とか」
「何じゃと!?」

 椅子を倒しながら立ち上がる、周囲の魔法先生たちも同様に驚いた顔。
 貴重所ではない、完全な禁書指定、焚書を受ける代物。
 図書館島は蔵書の増加に伴い増改築を繰り返し、今では全貌を知る者は居ない。
 裏の司書である『彼』も全部を知らんじゃろう、そんな物があったらすぐにでも処分していたはず。

「その吸血鬼になる為の本は今どこにあるのかね?」
「紫に没収されたぜ? 色々危ないからって言ってたな」
「むぅ……、そのゆかりという人物は今どこに?」
「見てるんじゃないか?」
「見てる?」
「おーい、ゆかりー。 見てるんだろー?」

 声を上げて呼びかける魔理沙君、見てるとは今この学園長室を覗き見ていると言う事か。

「ここは外から覗けるような防御の薄い場所じゃないぞい」

 遠見などの探知魔法を妨害する魔法を幾重にも掛けている、並みの魔法使いでは直接中に入らないと見えないはず。

「紫なら簡単に抜けてくるぜ、結界とかあんま意味無いし。 おーい、ゆかりーん」
「それほどの腕前なのかの? そのゆかりとやらは」
「そうね、障壁とか無視して直接中に入ってくる程度の能力を持ってるわね」
「障壁を無視とな?」

 茶碗をおきながら頷く博麗君。
 かなりのレベルの魔法使いらしい。

「おーい、いい加減出てこいよー。 ……話すすまねーだろ、このババアッが!?」





 ガン、っと魔理沙の上に標識が落ちてきた。
 しゃがみこんで頭を抱える魔理沙、かなり痛かったらしい。
 突然現れた道路標識に驚くコノエモンとその他の人間。
 床に落ちた道路標識が、床に開いた何かの中に沈んでいく。

「さっさと出てこないからそういう事を言われるのよ、紫」
「……ババアは酷いと思わない? 霊夢」
「事実だから仕様が無いでしょう、と言うかスキマに落とした恨み忘れてないわよ」

 室内に響いてくる美しい声、それを聞いて咄嗟に構える周りの人たち。

「あら、あなたの役目を全うさせてあげようと思っただけですわ」

 空間が裂けた。
 何もない空間に、一筋の縦線。
 その線の端に留められた赤いリボンが揺れ、線が開いた。
 人一人通れるほどの大きさで広がった時、幻想郷でも最強クラスの妖怪が現れた。

「そこで盾に取る? 最初から言えばよかったでしょ」

 紫が部屋の中央に現れ、いつもの格好で何を考えているかわからない笑みを浮かべている。
 帽子を鶏頭をさすっていた魔理沙が立ち上がり、短い抗議を発した。

「おい紫! いてぇーだろ!」
「口は災いの元、と」

 魔理沙は睨みつけるように見て、紫は飄々とそれを受け流す。
 その光景に音を吹き込むとすれば『ズオォォォォ』と言った感じ。

「さっきもそれやったでしょ、さっさと進めなさいよ」
「……それもそうだったな、あの本スキマから出してくれ」
「お断りするわ、あんなの人間の手には有り余るもの」





 開いていた亜空間を閉じ、降り立つ長い金髪の麗人。
 紫を基調とした、東洋風のドレス。
 ひらりとスカートを揺らして美しく微笑む、それだけで鳥肌が立った。
 目の前の存在は危険すぎると、本能が警告する。
 逃げろと警鐘を鳴らす、その警告に反して体は全く動かない。
 その気になれば、この場に居る全員を簡単に屠れるような存在だと認識した。

「ホッホッホ、貴女が紫殿ですかな?」

 そんな中、学園長だけが平然と喋りかける。





「ええ、『八雲 紫』と申しますわ。 以後お見知りおきを」
「此方こそ、わしは『近衛 近右衛門』と申す。 ……それで、早速で悪いんじゃが魔理沙君が言っていた吸血鬼になる為の本をお見せいただきたい」
「これ、ですわね?」

 左手に持つ扇子を開き、口元を隠しながら右手に本が現れた。
 空間転移? それにしてはラグが無さ過ぎる。
 彼女が現れた時と同じ様に、空間が開いてその中から本が落ちてきた。

「これ……が、八雲殿はこの本をどうするつもりで?」
「どうもしませんわ、このまま置いておくか処分するか。 少なくとも人の手に渡そうなどとは思っていません事よ」
「こちらとしてはそれは処分したいと思っておる、今ここで燃やすなりなんなりしてもらえませんかな?」
「その意見に賛同しておきましょう」

 潰れる、と言った表現が一番近いだろうか。
 本が『内側から』拉げていき、クシャリと小さな音を立てて消滅した。

「……貴殿のお心遣い、感謝しますぞ」
「そのお礼にこの二人をここに置いてもらえないかしら?」
「はぁ? 紫、あんたなに言ってんのよ?」
「それじゃあ、一週間位したら迎えに来るから」
「ちょ! 待ちなさい!」

 八雲 紫が亜空間の中に沈んでいく。
 博麗 霊夢が必死に手を伸ばすが、間一髪のところで届かなかった。
 伸ばした手が空を切り、倒れそうになるのを踏ん張って持ち直す。
 そして……。

「あぁぁぁんのくそババアァァァァァ!!!」





 紅白の巫女と、白黒の魔法使いが麻帆良に滞在する事が決まった瞬間だった。








 続くか分からん。
 霊夢が外道っぽい感じがする。
 魔理沙は作者のイメージ通り。
 紫は胡散臭い、色々と。


 一部加筆。
 昼夜の表現を変更、昼に侵入してきたことにした。
 ゆかれいむっぽいの変更。


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