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No.3907の一覧
[0] 然もないと [さもない](2010/05/22 20:06)
[1] 2話[さもない](2009/08/13 15:28)
[2] 3話[さもない](2009/01/30 21:51)
[3] サブシナリオ[さもない](2009/01/31 08:22)
[4] 4話[さもない](2009/02/13 09:01)
[5] 5話(上)[さもない](2009/02/21 16:05)
[6] 5話(下)[さもない](2008/11/21 19:13)
[7] 6話(上)[さもない](2008/11/11 17:35)
[8] サブシナリオ2[さもない](2009/02/19 10:18)
[9] 6話(下)[さもない](2008/10/19 00:38)
[10] 7話(上)[さもない](2009/02/13 13:02)
[11] 7話(下)[さもない](2008/11/11 23:25)
[12] サブシナリオ3[さもない](2008/11/03 11:55)
[13] 8話(上)[さもない](2009/04/24 20:14)
[14] 8話(中)[さもない](2008/11/22 11:28)
[15] 8話(中 その2)[さもない](2009/01/30 13:11)
[16] 8話(下)[さもない](2009/03/08 20:56)
[17] サブシナリオ4[さもない](2009/02/21 18:44)
[18] 9話(上)[さもない](2009/02/28 10:48)
[19] 9話(下)[さもない](2009/02/28 07:51)
[20] サブシナリオ5[さもない](2009/03/08 21:17)
[21] サブシナリオ6[さもない](2009/04/25 07:38)
[22] 10話(上)[さもない](2009/04/25 07:13)
[23] 10話(中)[さもない](2009/07/26 20:57)
[24] 10話(下)[さもない](2009/10/08 09:45)
[25] サブシナリオ7[さもない](2009/08/13 17:54)
[26] 11話[さもない](2009/10/02 14:58)
[27] サブシナリオ8[さもない](2010/06/04 20:00)
[28] サブシナリオ9[さもない](2010/06/04 21:20)
[30] 12話[さもない](2010/07/15 07:39)
[31] サブシナリオ10[さもない](2010/07/17 10:10)
[32] 13話(上)[さもない](2010/10/06 22:05)
[33] 13話(中)[さもない](2011/01/25 18:35)
[34] 13話(下)[さもない](2011/02/12 07:12)
[35] 14話[さもない](2011/02/12 07:11)
[36] サブシナリオ11[さもない](2011/03/27 19:27)
[37] 未完[さもない](2012/04/04 21:58)
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[3907] サブシナリオ5
Name: さもない◆8608f9fe ID:94a36a62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/08 21:17
「「くしゅん!」」

呼気の爆発が二つ同時に発生する。
揃いも揃ってくしゃみをしたウィルとアティの両人は、鼻の下をぐしぐしと擦ったり或いは口元を覆った後、隣にいるお互いを非難がましい目で見やった。

「ウィル君のせいですよ。あんな水浸しにしてっ」

「これだから天然は嫌なんです。無自覚で自分のしでかした行動に対してまるで理解がない。こんな不思議世界抱えてる天然に付き合わされるなんて、自分で自分の不幸を嘆きますよ」

「どういう意味ですかそれはっ!」

「おっしゃっても意味が解らないでしょう? だから言いません。あーメンドクサイこの天然」

「む~!!」

もはや日常の一コマとなりつつあるやり取りを展開しつつ、ウィルは隣で頬を膨らませるアティに溜息をつく。
昨日の海辺での争い、その事の発端について天然教師は何も分かっていない。自分の言動が巻き起こす爆発的被害に気付いていないのだ。
発言の後から今に掛けての態度からしても“そーいう”意味合いが含まれていないことは明白であり、ただ思ったことを口にしただけなのだろうとウィルは悟っている。というより確信している。

会話の流れからして「自分も大好き」の言葉が出てくるのは理解不能である。今も眉を上げて此方を睨んでいるこの天然の頭の中は、どのような思考展開がされているのか、全く以って興味が尽きない。別に知りたくないが。理解出来る自信もない。
この天然不思議ちゃんがっ。ウィルは隣に控えるアティを細めた横目で見やりながら、心の中でそう呟いた。

「貴方達本当に仲がいいのね……。よくもまあ、何時も飽きずに同じことを続けて…」

「アルディラ、心底遺憾だから訂正して欲しい。僕はこの天然のせいで常に精神を磨り減らされているんだ」

「それは私の台詞です! ウィル君何時も変なこと言うからっ!」

「嫌ですね、ホント。自分のことを差し置いて他人のことを非難して。一度自分自身を見つめ直すことをお勧めします」

「それこそウィル君がするべきです! 自分の言動を省みて、他の人に与える影響に対してもっと自覚を持ってください!!」

「あっ、てめっ、言ったな? オノレが一番しなきゃいけないソレを言いやがったな? よしっ、もう遠慮しねえ。ていうか拙者我慢の限界でござるよ」

「な、何を!?」

「ちょっと止めてよ。暴れて欲しくて呼んだじゃないんだから」

「ちっ。……見てろよ、あられもない噂をばら撒いて社会的に抹殺してやる」

「何言うつもりですか!!?」

「曰く、先生は子供を捕らえてその肉を食らう食人鬼だと」

「なんか聞いたことがありますよソレ?!」

「もういいかしら? いい加減、次に進みたいんだけど……?」


呆れ疲れているアルディラの声で脱線していた話の内容へと戻る。
此処、中央管理施設にウィル達が集まっているのは、最近塞ぎ勝ちになっているクノンについて話し合う為だった。
最初のウィルとアルディラの間で交わされていた交換条件が、己の失態により話を聞くのが難しくなったとウィルが素直に告げほぼ破綻状態になり、別の方法を取ろうということでアティにも協力を得ることになったのだ。
クノンと日常的に話を交わしていたのはこの場にいる三人のみで、クノンが塞ぎ込んでいる原因に心当たりがあるとすればこのメンバー以外あり得ない。そういった背景があり、急遽作られたクノン対策緊急編成チームは目下検討中であった。

今現在クノンの態度について意見を交換し合っているが、状況を芳しくない。というより率直にいってしまえば手詰まり状態、お手上である。
クノンの此処最近の振る舞いに戸惑いと不安を隠せないでいるアルディラは眉を歪めて頭を痛めていた。

「やっぱり、クノンに直接聞いてみませんか?」

「で、でも、それは……」

「気持ちは分かりますよ。でも、本人に聞いてみないと、結局本当のことは分からないから」

「…………」

「私も協力します。だから、アルディラ」

「……そうね。あの子に聞いてみないと、分かる筈ないものね」

アルディラがアティの意見に眉尾を下げ笑みを浮かべながら同意する。
アティらしい、と一連の会話を横で見ながらウィルは思った。積極的で互いの言葉をぶつけ合おうとする彼女の真骨頂、愚かしくもあり美徳でもあるそれ。ウィル自身にはないそれだ。
「自分」の「時」はこうも簡単に踏み切れただろうかと、過去のことを少し思い出したりもした。

ともあれ、クノンと直接話し合う、アティとアルディラのこの決定にウィルも反対はない。
こうなってしまえばクノンが胸に秘めていることをアルディラの目の前でぶちまけてしまった方が早期解決になるだろう。この関係が長く続くのは好ましくない。クノンの力に成れなかった自分の体たらくには腹立たしいことこの上ないが、そんな自分の感情などは切り捨てこの件の解決に力を尽くすべき。ウィルはそう結論していた。
だがやはり自責の念は拭えず、クノンの元へ赴くため無機質な廊下をアティ達と歩きながらも、本当に役に立たないとウィルは自分にぶちぶちと悪態をついていた。

「ウィル君」

「あっ、はい。何ですか?」

アルディラを先頭にして進んでいる途中、隣にいたアティが口を開く。
己を貶めるのを止めウィルは首を上げた。

「えっと、あの……私、気付かない内にウィル君に嫌な思いさせていますか?」

「…………」

どことなく落ち着かない雰囲気で視線を彷徨わせた後、アティは恐る恐る此方に目を向ける。
質問の意は先程のやり取りを省みてのことだろうか。少なくとも原因の一端は担っているだろうと今のアティの様子を見てウィルは思った。
少しマジに言い過ぎたか、いやでもこの天然にはあの位言わないと抑止のヨの字程の効果も…、などと思い考える。
両目の間に指を添えた体勢で、結局、ちょっと彼女相手でも遠慮がなかったかもしれないと反省した。

何となく納得もいかないが、相手は女性であり敬うべき存在、このような顔させるのは自分の心情的にご法度だ。
この頃眉間を揉み解す回数多くなってきたなと思いつつ、アティに顔を向きなおして口をひらいた。

「嫌な思い、とは全く違います。当て嵌まりません。……ただ、ええ、繰り返すように疲れるというか、磨耗するというか……いえ、やっぱ何でもないです」

「??」

「とにかく、そこまで深刻に受け止めないでください。僕自身、先生にそんな顔して欲しくて文句を口にしてる訳じゃないんです」

「…………」

「ちょっと僕も言い過ぎました。でも、先生にも色々考えてから発言して欲しい。堅苦しい言い方ですけど、そんな所です」

大して離れてもない距離で見上げ見下ろしながら歩を進めていく両者。
やがて、アティは破顔、頬を染めてウィルに言葉を返した。

「はい、分かりました。今度から、気をつけますね」

「分かってませんよね、多分……」

嬉しそうに顔を綻ばせる所じゃないだろうとウィルは苦笑。
まぁ目の前の天然がそう簡単に改善される筈もないかと悟りも感じる。それにアティはこんな具合がちょうどいいとも思った。間違いなく疲れるんだろうが。

目の前の笑顔がすぐ隣で見られるなら、それも悪くないかもしれない。

暖かさを感じさせるアティの笑みを見て、ウィルはそう思った。


「兎に角、勘違いされるようなことは口にしないでください」

「はい。……うん、やっぱり、ウィル君のそういう優しい所、私は好きです」

「…………ダメだ、こいつ」









然もないと  サブシナリオ5 「ウィックス補完計画その5 ~乱れた振り子のご乱心~」









さて、リペアセンター内、クノンの待機室。
暫らく部屋の扉の前で逡巡していたアルディラだったが、意を決し中に入室、突如やって来たことに驚きの表情を作るクノンに向き合っている。

「……何か、御用でしょうか?」

「いえ、用というほどでもないんだけど……」

「でしたら、私は作業がありますので……」

「あっ……」

煮え切らないアルディラに顔を背け、クノンは横を通り過ぎようとする。
感情的なことを聞き出すことに慣れていないアルディラのこのような姿は予測出来た。それはしょうがあるまいと思う。慣れていようがいまいが、他者の心の内を聞くことばっかりは何時だって勇気がいることだ。彼女の態度を攻めることなんて出来やしない。

アルディラには悪いが考えられた範疇だった。予てから計算済みだったクノンの逃走経路に立ちふさがり部屋から出すまいとする。
最後まで付き合ってもらうぞクノン。ここで言いたいことを言ってしまえ。

「―――――ぁ」

と、自分の前方に現れた俺に対し、クノンが目を見開いて固まった。
何だ、この反応? 俺クノンをビビらせるようなことをしたのか? 首を傾ける中、クノンは呆然と動きを止めてしまっていた。

「―――――――」

そして次には視線が俺から離れ、動こうとしていた隣のアティさんに向かう。
そこでクノンは今までの表情を崩し、眉を一杯に寄せて苦渋の面立ちを作る。ともすれば、それは今にも泣き出してしまいそうな悲痛そうな表情と相違がなく映る。
何故そんな顔をするのか。悲しみの色を浮かべるクノンに戸惑いを隠せない。
その場で立ち尽くし顔を伏せる彼女に、俺は困惑するばかりだった。

「クノン、待って。アルディラの話を……」

アティさんが俺の横を通ってクノンへと近づく。
あからさまにアルディラを避けている彼女に、話を聞くようにと言い寄ろうした。クノンへと手が伸ばされる。
瞬間、


「ッッ!!」


「―――っ!?」

「?!」

「なっ!?」

一閃。
差し伸ばされた手をクノンは勢いよく振り払った。
薙がれた腕にアティさんの手は弾き飛ばされ、彼女自身は瞠目する。アルディラと俺は言葉を失った。

「私に、触らないでっ!」

クノンの口から鮮烈な言葉が言い放たれる。
薙いだ腕のままの姿勢で、眉は吊り上げられ双眸は険しい漆黒を湛えている。
明確な意思表示。それらが伝えてくるのは間違いなく、拒絶だった。

「……ク、クノン?」

「来ないでっ!!」

呆然としていたアティさんが再度動きを見せようとすると、クノンは声を張り上げ彼女を抑止する。
アティさんは踏み出そうとしていた足を留め、その場に縫い止めた。室内に驚愕と緊張が充満する。一人の少女の爆発が、場に混乱を引き起こしていた。

「何で!? 如何して!? 何故いつも貴方がそこにいるのですか!!?」

「えっ……?」

「如何して貴方なのですか!? 如何して貴方ばっかり……っ!!」

普段の感情に薄い表情はそこにはない。今浮かび上がっているのは完全な憤激だ。言葉に付加される怒りの色は声量に比例して、その濃度を深めていく。
睨みの矛は依然アティさんを貫いたまま。その瞳の上を塗り固めれているのは……

(……嫉妬?)

「私にはないものを持っていてっ、何時だって貴方はっ……!!」

「ク、ノン……?」

「ずるいっ、ずるいずるいずるいずるいずるいずるいっ!! ずるいですっ!!」

癇癪を起こした子供のようにずるいと繰り返すクノン。もはや彼女の顔は怒りを通り越して悲しみの色すら窺える。
憤怒と悲愴で顔が痛々しいほどに歪められていった。
そして、


「ずっ、るいっ……!!!」


喉から喘ぐようにして吐き出された言葉と共に、


「!!?」


彼女の身体から電流が迸った。


「クノン!?」

「放電!? そんなっ……や、止めなさい、クノン!!?」

空間に蒼電が走り抜ける。
帯電を引き起こした大気とクノンから間断なく放出される電流が衝突し合い、激しいスパークを巻き起こした。

培われた危機察知が頭に警告を告げる――――臨界ダ、と。
そして、視界にアティさんの予備動作を確認。判断を介さず疾駆する。

「クノンッ!!」

「馬鹿ッ!」

クノンに駆け寄ろうとするアティさんへ、半ば体当たりするようにして飛びついた。
彼女の腹の側面に片腕を絡めるようにして突進。踏み切った歩に加え、次の歩を床に食い込ませ、全力で踏み抜く。
滑空するように、部屋の隅へと跳んだ。


「スクリプト・オンッッ!!!」


次いで、号令。身を床に打ちつけると同時にアルディラの魔障壁が展開され―――




「う、あ、ぁぁああああああああああAAAAaaAaAAAAAaAAAAAAッッ!!!!?」




―――電撃の悲鳴が、爆散した。















「まさか、こんなことになるとはね……」

「…………」

部屋に設けられた椅子に腰を沈めているアルディラが重々しく呟く。
放電現象、もはや暴走といって差し違いないそれを引き起こしたクノンは、部屋に破壊の爪跡を残した後床に倒れ込んだ。
すぐさま救急治療室に運ばれ治療を施され、今はアティさんが付き添っている。

事の成り行きから、彼女達二人だけにするのは危険だと感じ反対したのだが、今回の事故に自分が関わっているのなら尚一層引くことは出来ないと言うアティさんを俺は説得することは出来なかった。
強い眼差しをする彼女に何を言っても無駄だと悟り、クノンと二人っきりで話をしたいという意見を汲んだ。勿論、何かあったら速攻で駆け込む所存だが。


「クノンは平気なの?」

「ボディの方は放電の余波を被っているけど、大したことはないわ。……問題は、中身。クノンの中枢ともいえる思考回路」

先程の暴走を抜きにしても、クノンの回路は何度も焼き焦げた跡があったらしい。
異常な過負荷のかかった回路は完全に焼き切れる寸前で、今回の様な事が同じくして起これば、クノンは……。
アルディラはそこで言葉を切り、大きく息を吐く。彼女自身、今回の事故に相当参っているようだった。

「解らない……如何してクノンが暴走してしまったのか、回路があんなぼろぼろになるまで苦しんでいたのか……まるで解らない」

「…………」

俺のせい、なのだろう。
クノンに「彼女」のような在り方を知って欲しいと思い、色々なことを考えろと言ったせいなのだろう。
胸を焼き焦がしながら、彼女はずっと感情を理解しようと考え続けていたのだろう。

…………俺が、引き起こしたのか。

目を瞑り疼きを上げる胸を鎮める。
よせ。後悔と非難は後でも出来る。その時がきたら傲慢と無責任なお前を何時だって罵ってやる。だから、今はよせ。
今は、彼女のことだけを考えろ。

「……僕さ、クノンに感謝の意味を考えろって言ったんだ。如何して私に礼を言うのか解らない、っていうクノンに」

「……あの娘が、そう言ったの?」

「ああ」

確かに伝えた。
それだけではなく、話をすることで色々な表情を出させた。言葉を交わすことで、様々な感情に触れてもらおうとした。
クノンに、「クノン」の笑顔を知ってもらいたかったから。


「レックス」に「クノン」は聞いてきた。何故笑うのか、と。如何したら嬉しいと感じるのか、と。
「俺」は曖昧で複雑過ぎる問いに頭を悩ませながらも答えてやった。嬉しいから、と。嬉しいにも色々な形があるのだ、と。

「クノン」はそれに真摯に受け止め、そして今回までいかなくても感情を爆発させた。機械である自分には「俺」と同じようなことは出来ない。「アルディラ」と一緒に嬉しいと感じることは出来ないと。
それを聞き届けた「俺」は「クノン」を「アルディラ」の元に送って想いをぶちまけてもらった。「アルディラ」も理解し、互いの言葉を交し合うことで元の鞘へ収まったのだ。そして「クノン」は笑みを湛えるようになった。

今回の件、クノンが何に苦しんでいるのか俺は大体解ってる。アルディラのことと、あとは多分俺が考えろと言った感謝の意味。アティさんもクノンに尋ねられたそうだ。「レックス」と同じ問いを。
だがら恐らく、クノンは俺の言葉とアティさんの言葉、その二つの意味を考えることによって、「彼女」とは違う経過を辿ってしまっている。アティさんに向けられた嫉妬の色もアルディラの件についてだろう。アティさんがアルディラと一緒に嬉しいと感じられることに対し、クノンは妬んでいる。つまり、そういうことだ。

人事のようにクノンのことを述べている自分に嫌気が差す。でもこうして努めて客観的にならなければ、胸に燻る火種が爆発してしまいそうだった。感情的になって、自分を抑えられなくなってしまう。
それだけはまずい。アルディラのいる前で取り乱したり、動揺を窺わせては、彼女が本当に参ってしまう。これ以上負担は掛けたくない。

……やはり、柄ではなかったということか。他人の為に世話を焼く、ということは。背中を押す、ということは。
役者不足、か。


「だからさ、知恵熱じゃないかな、って思うんだ。クノンが苦しんでた理由も、あんな風になちゃったのも」

だが、落ちぶれてなんかいられない。
事を起こした自分は、最後まで見届け蹴りをつけるべきだ。腐ってなんか、いられないのだ。

「そんな……。クノンが?」

「普通じゃあり得ないのかもしれない。でも、発想を変えるっていうのも必要なんじゃないかな」

「みんな」のことを覚えている。「みんな」の笑顔がどれだけ掛替えのないモノか、今だったらはっきりと言える。
だから、みんなの力になる。助けになる。傷付かせない。悲しませない。笑顔でいて欲しい。
そう決めた。当然クノンもだ。

「先生が言ってた。アルディラに笑顔を浮かべてもらうには如何したらいいか、クノンから相談を受けてたって」

「うそ……」

そうだ。最後までどうとかじゃない。
やると決めたのだ。力不足だろうがなんだろうが、最善を、いや最高を尽くす。

「クノン、きっと変わろうとしてるんだと思う。だから苦しんでるだって、僕はそう思う」

自分の出来ることと出来ないことは弁えてる。俺は完璧な人間じゃない。
それでも、やるんだ。やると誓った心に嘘をつく訳にはいかない。自分の想いに背くことは絶対にしない。みんなの笑顔を、守るとそう決めた。
お人好しで心優しい彼女のように。夢物語ばっか言って、そしてそれを信じて疑わないあの人のように。愚かだろうがなんだろうが、突っ走る。
ああ、腐ってなんかいられない。ただただ、突っ走る。

「一回さ、クノンと話してみようよ、アルディラ。思ったこと、思ってること、全部ぶちまけよう。そうすれば、きっと元通りになる」

「…………」

いい加減立ち直ろう。
うじうじ言うのはそれこそ柄じゃない。開き直って、突っ走ろう。

あの娘にも―――アリーゼにも言われた。
それがきっと、「俺」なんだから。



「……可笑しいわね。貴方がそう言うと、不思議とそうなるように感じちゃうわ」

「はは、よく言われます」

「嘘をつきなさい、嘘を……」

疲弊に塗れた表情から一転、アルディラはほのかに口元を曲げる。
明るい、前向きな苦笑だ。少しは元気になってくれたか。

「行ってみるわ。あの娘の所に。色々話してみる」

「うん」

笑みを作りアルディラは席から立ち上がる。
これなら大丈夫。目の前の笑顔を見て、俺はそう思った。

「僕も付いてく――――」



だが、その考えを嘲笑うかのように、真紅に染まった警報が俺達に降り注いだ。



「――――――ッッ!!?」

待機室が耳をつんざかんばかりの音と、赤い警告灯の光で満たされる。
突然の事態。俺とアルディラは驚愕を身体に伝播させ、互いのを顔を言葉無くして見合わせた。

「ッ!!」

「アクセスッ!!」

そして、瞬時に行動を開始する。
俺は部屋から飛び出し救急治療室―――クノンとアティさんの元に駆け出し。
アルディラはその場に残りリペアセンターの管理制御部に接続、現在の情報を収集し更新する。
俺達の間で、何処で何が起こったのか思い当たる節は、もう一つしかなかった。

「くそっ!!」

何が起きた、何が起きてしまった、一体何が起こってしまった!?
焦燥が全身に巡り渡り、膨大な熱が発生する。それは身体を焦がしていき、肌から汗を噴き出させた。
眉間に皺を寄せ顔を盛大に歪める。「俺」の時とは、もはや事態が逸脱している。状況は最悪の一途を辿っているように思えてならない。
思考の歯車が致命的なズレを訴えてくるまま、俺は救急治療室に突貫した。


「クノン! 先生!」

クノンが運び込まれた部屋に脱兎の勢いで突っ込む。
自動ドアが開く速度さえももどかしいと感じつつ、開けられると同時に中へ。
足を踏み入れ、一瞬にして周りへ視線を走らせる。

「っ!!? ぁ…………せ、先生」

そして、俺の目に飛び込んできたものは、アティさんの見るも無残な―――


「ぅ、う、ううっ……」


―――ぶっすぶすに焼け焦げて、床に倒れ伏している姿であった。

健康に宜しくなさそうな煙がもっくもくと立ち昇り、天井の換気口へと吸い込まれていく。
白いマントの裾が、物が焼け焦げた特有の茶色と黒の色を伴ってボロボロになっていた。
………………。

「…………何やってるんですか?」

「く……クノンに、て、手を掴まれて、で、電流を……」

「あ、浴びせられましたっ…」とアティさんは身体を痙攣させながら続ける。
…………いや、俺の時も確かに浴びせられた記憶があるけど、こうまで酷いものじゃなかったような気がするんだが…。
エレキメDEATH食らった俺みたいにローストチキンになっている。……この人、実はクノンから恨みを買うようなことしたんじゃないのか?

「……えーっと、無事ですか?」

「ア、アンマリ……」

でしょうね。
深刻なダメージにマヒも被っているアティさんを俺はセイレーンで治療。
なんやねんコレ、と思いつつも魔力を捌いていった。


何とか動けるまで回復したアティさんを引き連れ廊下に出る。
此方とクノンの動きをモニターしているだろうアルディラに向かい指示を仰いだ。

「アルディラ、クノンは何処だ!?」

『ちょっと待って! …………第三区画を抜けた? ……あの娘、まさか!?』

スピーカーから悲鳴にも似た声が上がる。
嫌な予感が背筋を駆け抜けたが、それに構わず俺はアルディラに続きを促すように声を張り上げた。

「アルディラッ!」

『外に出て! あの娘は、クノンはスクラップ場に向かう気よ!!』 

「「っ!?」」

発せられた言葉の意にアティさんと共に戦慄し、しかしすぐに脇目も振らずその場から駆け出す。
極薄い青色で彩られた通路に足音をばら撒きながら出口を目指した。

「クノン、言ってました! 自分は壊れてしまったって! その解決する方法は解っていて、それが最善なんだって!!」

「ッ……!」

走りながらアティさんがクノンと交わした話の内容を叫ぶ。痛々し過ぎる言葉が俺の鼓膜を打った。
何故こんなことになってしまった? 俺がでしゃばったから? クノンに余計なお節介をしてしまったから? 彼女の信頼を裏切ってしまったから?
解らない。解る筈がない。他者の心の内など、何を思い何を感じたかなど全て把握し悟れる筈がない。
だが少なくとも、俺の行動がクノンを追い詰めることをしていたのは事実だ。
ウィルという因子が、彼女に破滅の選択を駆り立てたのは真実だ!!

死ね! マジで死ねっ!! 肥溜めに頭から突っ込んでくたばれ!! 糞に塗れて溺死しろっ!!

奥歯を一杯に噛み締めあらん限りに己を罵倒する。胸の内から迸って止まることを知らない自分への怨讐を身に叩きつけ、しかしそれをも疾走の糧へと変え趨走した。
俺の自己満足がクノンの心を蝕んでいたのは認める。俺の無責任な行動がクノンを傷付けたのは受け入れる。否定なんかしない。

だが、彼女の死そのものは絶対に認めない。

認めない、認める訳にはいかない。
解決策が自分を殺すこと? 自らを閉じることで全てを終わらせる? ざけんな。否定する。それだけは否定する。断固として取り合わない。
手段も方法も模索しないで、もがきもしないで、簡単に消滅を選ぶなんて馬鹿の極みだ。それだけは、はっきりと言ってのけてやる。

認めない。認める訳にはいかない。認めてしまってはいけない。
認めるなんて、もう御免だ。


―――安易に死へ走ることなんて、絶対に許容出来るか!!
















「…………」

眼前に広がる断崖。鉄と鋼で築き上げられた高層の崖。
遥か下。人口の谷底に群集となって広がるのは、変形し使い物にならなくなった鉄屑に、錆びれ動かなくなった同胞達だった。

「…………」

大幅な可視可能距離を持つ漆黒の瞳が、眼下の積み上げられた固まりの中で、ある一つの光景を捉える。
それはかろうじて原型を残した人型の腕だった。機械兵士のものか、或いは用途上設計された作業機械のものか。今となっては分からない。
装甲は破砕し五指を所々欠けさせた腕が、此方を仰ぐようにして鉄屑の群れから半ばその貌を覗かせていた。

「…………」

何かを掴もうとしているその腕は、自分に向かって突き出されており、まるでこっちに来いと呼び掛けているようだった。
お前の相応しい場所は此処だと。来るべきは、壊れた道具が身を寄せ合うこの墓場なのだと。そう語りかけてくる。

「……解っています」

壊れてしまった自分が迎えるべき末路はこの場だと、クノンは招き誘う鉄の腕に応答する。
表情に変化はない。感情の薄い相貌で漠然とその認識を言葉にする。

「申し訳ありません、アティ様……」

狼藉を働いた自分を、許されざる感情を抱いてしまったことを、クノンは非を以って詫びる。
過ぎた真似をしてしまった自分に対し、罪悪感を抱きそして恥を感じる。ともすれば、溢れ出てしまいそうな激情、理不尽だと叫ぶ声、それらを抑え込んで、ただ彼女に謝罪をした。

「お許しください、アルディラ様……」

命令に背き勝手に動くことを、満足に力になれなかった自分を、クノンは顔を俯かせながら許しを請う。
おぞましいバグを抱え、暴走を来たしてしまった。主人の手を煩わせ、そして多大な迷惑を掛けてしまった。なんという、粗悪なことか。

こうなる以前から、きっと自分は致命的な欠落を抱いていた欠陥品だったのだ。忠実たる道具には成り得なかったのだ。
証拠に、主人である彼女にさえ如何する事も出来ない思考を抱いてしまった。冷酷で残酷な思考が発生してしまっていた。
傍に控えることは、もう出来ない。

「……………………」

壊れてしまった自分に何が残るのか。
破棄を目前にした自分には何が残されるのか。

ふと発生した問いかけ、しかしそれに半ば確信を持ちクノンは目を瞑る。
自分に残されるのはこうなってしまった原因、何時の間にか摩り替わっていた、見たいと思った一つの笑顔。
求めて已まなかった、自分に向けられた笑顔――――



「「「クノンッ!!」」」



「―――!?」


回想を打ち消した叫びに、クノンは振り返る。
視覚機能が映し出したのは、謝罪を送り、赦免を求め、そして心が望んだ、それぞれの人達だった。





(間に合った!?)

スクラップ場に到着し、クノンの姿を確認すると同時にウィルは一先ずの安堵を得る。
だが、まだ緊張を解くことは出来ない。クノンが立つ場所はスクラップが集められた廃棄施設の目と鼻の先。動きを許せば彼女は奈落の底へと身を置くことになってしまう。
絶対阻止。ウィルは拳を握り締めそれを自身に刻む。

「何を考えているの、クノンッ! 早く其処から戻りなさい!!」

「聞けませんっ!」

「なっ!?」

アルディラの張り上げられた指示を、クノンははっきりと却下。
明確に告げられたクノンの言葉に、アルディラは目を見張って唖然とする。今までどんな時だろうとアルディラの指示に従ってきた少女が、はっきりと拒絶を示しあげた。

「これ以上アルディラ様の傍には居られません。取り返しの、付かないことになってしまう……」

眉尻を下げ言葉を口にするクノンは愴然とした雰囲気を漂わせている。
自らが破壊されることも辞さない覚悟がそこから滲み出ていた。

「落ち着いて、クノン! そんなことしたってっ……」

「近付かないで!!」

「!」

威嚇するかのようにクノンの体から電流が放出する。
鉄板で構築された足場を電気の束がのたうち回った。

「もう来ないでください。じゃないと、私は……」

「……クノン?」

「……貴方を、殺してしまう」

「「なっ……」」

伏せがちになった目で視線を合わせようとせず、クノンをその宣告を場に落とした。
アティとアルディラが言葉を失う。少女が曝け出したその真意に、少なからずショックを隠せないようだった。

(クノンの元まで約三十メートル。一瞬で詰められる距離じゃない)

一方で、ウィルは淡々と状況把握に努める。
「レックス」の際に「少女」の口から聞いたのと変わらぬ秘め事、予想された言葉だった。
何も思わないと言えば間違いなく嘘になるが、それでも彼の強靭な精神は動じることをよしとせず、ただひたすら冷静であれと体に言い聞かせていた。

「抑えられないのです、もうこれ以上は……。この胸に巣食っている思考をっ……」

クノンの独白に耳を傾けながらも思考を全開で展開させる。
断崖絶壁を背にしたクノンをどうやって安全域に引きずり出すか。あの場からバランスを崩したその時点でアウト。万事を尽くさなければならない。

「自身を制御することが適わないっ…………如何にかなってしまいそうなんです!!」

目眩ましからの気配遮断に独断先行?
却下。クノンは看護人形(フラーゼン)、気配を絶った所で熱源を感知される。近距離ならまだしもこの間隔では相手に悟られる方が遥かに早い。察知されずに肉薄するのは到底不可。

ユニット召喚による奇襲?
却下。上案と同じ。高速召喚を用いた所で魔力の流動に気付かれる。ユニット召喚獣が接近するまでのタイムラグは覆せない。

「貴方がっ、憎らしい! 嫉ましいッ!! アルディラ様と嬉しいと感じることが出来る、貴方がっ……!!」

手段は選べない、ならばクノンの撃墜からの回収? 機能停止に追いやり無理やり引き摺り下ろす?
愚の骨頂。バランスを崩した時点で終わりと推論したのは一体誰か。あの手摺りも囲いもない場上の条件下、攻撃を加えようものなら最悪の結末を迎えるのは想像に難しくない。
手段、方法は皆無。考案は全壊。この状況を脱する策を、構築することが出来ない。

「私が望むものを何時だって手にしている貴方がっ、羨ましい……っ!!」

冷静を帯びていた仮面が一片一片と剥がれ落ちていく。刻一刻と時間が失われていく中、不落を誇っていたウィルの思考にノイズが走り出していた。
焦りと苛立ち。打開の一手を見出せない自身を不安定な感情の波がその巨躯をもって揺さぶってきた。鼓動が早まり、その急いた生々しい音に身も心も飲み込まれかける。

(……ッ!!)

乱れかけた呼吸を律する。
無様な体たらく。だがウィル自身、この異常ともいえる動揺の原因には察しがついていた。

恐れている。自分は、「ヴァルゼルド」を失ってしまった「この場所」で、今度はクノンを失ってしまうのではないかと恐れている。
失われた「機兵」の姿を、今は泣き出してしまいそうな少女のそれに重ね、幻視してしまっている。
そのような事あってたまるか。そう否定はすれど、今の自分を何も出来ないでいる。この状況に立ち尽くすのみだ。

失わせない。失ってはいけない。失ってなるものか。
過ちを繰り返さない。繰り返してはいけない。

―――「機兵」の消滅を認めてしまったあの「時」を、繰り返す訳にはいかないのだ。

それだけはウィルは許容しない。
少女の死を、関わってきた者達の如何なる死も、「彼」は決して許容することを許さない。


「私の一番欲しいものを持っている貴方が、許せないんです!!」


だが、その想いは枷となってウィル自身を束縛する。確かな重しとなりウィルの思考と決断を阻害する。
本来の能力を失わせた思考と早る想いだけが空回りしていた。

――――打つ手がない

その事実が導かれ身に叩きつけられる。
ウィルの脳裏に、最悪の一瞬が駆け過ぎった。



「なら、その想いを私にぶつけてください」



「――――――――」

息をするのも忘れたウィルの元に、凛とした声が投じられる。
それは揺れ動くことのない意思だった。この状況を前にして、迷いも躊躇いも寄せ付けない不動の意志だった。
何にも屈することなく、目の前の災難を打ち砕こうとしている。

「な、に、をっ……?」

「私は、貴方のことを止めてみせます」

顔を上げる。
瞳に映ったのは前だけを見据える蒼の双眸。内に秘める意志には一点の曇りもない。

「やめてっ……! 来ないでください!? 私は貴方を、傷付けたくっ……!?」


「貴方が消えてしまうのを黙って見過ごすなんて、私は絶対に認めないっ!!」


「―――――――――ぁ」

その声は、果たして彼女だけのモノだったか。
毅然としたその姿に言葉を無くし、そして胸の奥で控える心に火が灯るのが分かった。

「う、あ、あ……っ!!?」

「私を止めたいのなら、クノンッ、貴方も本気でぶつかってください!!」

手段じゃない。方法じゃない。理屈じゃない。
クノンをこの場に繋ぎ止めているのは、言葉の意志と真直の想いだった。

(マジかよっ……!?)

顔の筋肉が引き攣り、不細工な笑みが止められない。
心を満たしてくる激励に全身が熱くて堪らなくなる。自分が至らなかった事柄を、こうも簡単に為し遂げる彼女は何なのか。

(なんだ、それっ……!!)

理不尽だと思う。奇麗事ばかり並べて、全てそうなるようにしてしまう彼女の在り方を。
クノンの言うように、確かにズルイと思う。

(カッコ良過ぎるだろ、畜生ッ……!!)

そしてそれが、何よりも眩しいと思った。


「うぁああああああああああっ!!?」

クノンから溢れ出た叫びと共に周囲からロレイラルの召喚獣が姿を見せる。
彼女を守るようにして陣を引き、ウィル達に立ちふさがった。

「ッッ!!」

そうだ。何を尻込みしている。彼女を見習え。ただ愚直に突き進め。
遠慮なんてするな。お前はお前のやり方で好き放題に引っ掻き回せ。ビビるな。臆するな。前進を、躊躇うな。

(絶対に繰り返すなッ!!!)

らしくない。ああ、全く以ってらしくなない。
さっき言ったばかりだろう。柄じゃないと。自分は自分で在るがままでいい。
開き直って、突っ走れ。

「召喚ッ!!」

「過去」に縛られるな。「前」を見ろ。「前」だけを見据えろ。
「機兵」の結末を、視界に映る光景と重ねるな。今泣いている、目の前の少女―――クノンだけと向き合え。
最悪など、寄せ付けず、振り払ってみせろ。


「蹴散らせ、ヴァルゼルドッッ!!!」

『イエス、マスター!!』



従者の機兵と共に、「過去」を打ち砕け。






















クノン

クラス 機械人形 〈武器〉 突×槍 〈防具〉 装甲

Lv13  HP142 MP135 AT70 DF57 MAT61 MDF57 TEC61 LUC50 MOV3 ↑3 ↓3 召喚数1

機C   特殊能力 スペシャルボディ 充電 放電

武器:マギスピア AT66 MAT15

防具:メモワール43 DF43

アクセサリ:empty


10話前のクノンのパラメーター。
注射マスターの異名を持つ白衣の看護婦さん。切り傷、打ち身、たんこぶなどの怪我においてもニードルを一閃させる猛者。静脈の位置など確認するまでもなく打てるらしい。何でもその生物の血脈は一目で掌握出来るだとか。心眼ならぬ、針眼の持ち主。道違えて格闘家に転職しようものなら普通に殺人拳生み出してしまいそうな勢いである。貴方は顰蹙を買いつつも健気で優しい注射マスターでいてください。

レベルが低いため、各能力は他の者達と比べて若干見劣りする。現時点では可もなければ不可もない状態。全体的にバランスよく能力値が振り分けられている。槍及び装甲の特性上、ATとTEC中心に育てるのが無難か。しかしDF自体基本値が高くないので装甲に頼り過ぎるのもアレかもしれない。ていうか装甲女性専用のヤツ多過ぎる。これは、ヴァルゼルドではなく彼女を使えいいから使え使えって言ってんだろ使えよっ、という遠回しな意思表示だと思うのだが……どうだろうか?(謎

何気に現時点で「放電」を覚えている。先生の行動に何か原因があると思われ。巷で噂になっているフラグブレイカー(ノウブルファンタズムに至ってるらしい)の名は伊達じゃない。あらゆるフラグを破戒する天然。確立したフラグ的要素、フラグに関わる全てを“作られる前”に戻す究極の対フラグ萌具。最悪だ。夢なら覚めてくれ。

超兵器『インジェクス』とのコンビは、注射撲滅を訴えているウィル(レックス)には滅茶苦茶恐れられている。過去に奇襲も含め相当の数打たれたらしい。曰く「あの巨大注射に刺されたら果てる」だとか。然もあらん。




本編とは直接関係ないが、補完の意味合いを兼ねて「レックス」の歩んだ軌跡を公開。
今回は6~7話。


青空教室再開。委員長にアリーゼをおき、磐石の布陣で授業に臨む。ぶっちゃけ仮病使ってフケたかったが、木の陰にゲンジさんが控えているのでそれも儘ならない。ていうか計算とか基本知識なら教えられるんだからアンタも手伝えよ、と心の中で思っていたら授業終了後にキャメルクラッチを極められる。伝家の宝刀背骨折り、腰に続け背面部を殺られ白目むいて虫の息と化した。

今日も今日もで島に駆り出される。ジジイのように身体丸めてぶつぶつ文句垂れながら各集落へ。イモ畑でヘルモグラ討伐の任に就く。ハンマー持った瞬間背骨がイカレて真っ白に燃え尽きる。更にモグラからペンタ君も見舞われ爆死。抜剣。畑を焦土へと変える。怒られた。以後モグラに再戦を誓うようになる。「奴等との戦いは命懸けだ」とは本人談。
引き摺って持ってきた少年が目を覚ましたとの報を聞く。「で?」っていう感じだったのでシカトしようとしたが看護婦さんに注射器で脅され話し相手を任される。しょうがないので取り留めない話をするが、自分に対する相手の態度(以前の件でイスラ反感的)がかなり嫌味ったらしく相当気に食わなかったのでカイル直伝ジャーマン・スープレックスを放つ。イスラ激震フラグその1がたった。
五月蝿い、外でやれ、とメカニック・ウーマンに怒られリペアセンターを追われ、これもしょうがないのでイスラと一緒に島を放流。その後森が死んでる怪奇現象に遭遇。超絶に嫌な予感がしたので部屋に引き篭もる。無駄に終わる。

キュウマに呼び出され喚起の門へ。抜剣してくれと頼まれる。「するかよ馬鹿」と一言で切り捨てた。でも「剣」が勝手に抜剣。しかし二秒後には主導権を取り返す。ハイネルぶったまげる。これまで警告し続けて何も聞かなかったレックスに、少しは痛い目にあってもらおうと思ってただけにショックを隠せない。「普段は偉そうなことほざいてる癖にホント役立たないなオマエ」とのコメントを頂く。ハイネル破滅フラグその1がたった。
ヤッファ登場。キュウマとマジで殺り合う。レックス、ジルコーダの存在に速攻で気付き、殺し合い繰り広げる二人を放置し離脱。事無きを得る。後にヤッファから背後からの斬影拳の強襲を受けた。

ジルコーダ討伐に突入。「背骨から腰にかけてマジで死にそうなんで囮役させてくださいいやホントお願いします」と懇願する。しかし全員シカト。涙がホロリ。アリーゼの気遣いが嬉しくもあり虚しかった。
突入。しかし素でおじいちゃん歩きしか出来ないレックスは真面目に役立たず。「「「「「ダメだ、コイツ。早くなんとかしないと…」」」」」とアリーゼとファリエルを除く全員が心を一つに合わせる。献身的になりやすい少女二人以外は「キショいキショい」ほざいて何もしないゴミクズに殺意を立ち昇らせ、そして鬼人の如き強さを発揮。パーティー一同限界突破スキルを手に入れる。レックスのダメ度に比例して効果の度が上昇するスキル(レックスがシリアス入ると効果極薄い)。

何気に女性陣が危ない時だけ身を翻して進み、遂に女王とバトル。「いやアレ無理だろ…」と一目して背中を向け帰ろうとする赤いの。カイルに首襟掴まれ、忌々しき人間砲弾として射出される。ブチ硬い甲殻に激突、女王倒れる。その反動で近くにいたファルゼンが甚大な被害被る。中身ファリエルだと知ってるレックスはマジモードに突入。どうにか助け出し、追撃振り切り一時撤退。カイルを原型無くなるまで顔面ボコボコにし、みんなの顔色見てホントのホントにヤバイかもしれないと今更気付く(シリアス入ったのでみんな一気に消耗した)。「あーマジで俺なにもしてない」とアリーゼまでボロボロになっている姿見て思い、後ろめたさ1割あの腐れ蟲調子乗りやがってブチ殺すな殺意九割を胸に秘める。そして突貫。生来の薄さで居なくなったことを誰にも気付かせず、カイル達がレックスの姿を認めた時には零距離でドリルぶちかましていた。
火花を散らすドリル。巨頭ヘッドバッドかまされるレックス。迫った爆顔に素でビビりながらくたばり、「剣」で復活した時には「調子乗んな」と素でキレながら暴走召喚。ドリルを身体貫通させた後、上段からの兜割りを繰り出し完全粉砕させる。鮮やか過ぎる手並みに「アイツ一体何者なんだ…」と男性陣が呆れ驚き、余りのギャップの開きに「あの人どっちが本当なんだ…」と女性陣は顔を赤らめ照れ恥じる。何気に背中向けて佇むポーズが決まってた。取り敢えず、募った殺意と心配掛けた罰を兼ねて灸を据えた。主に前者が激し過ぎて灸とかいうレベルじゃなかった。然もあらん。

夜会話。鍋を食い漁っていると、一人寂しく佇んでいる鎧を発見。話聞く。幽霊少女が健気過ぎて泣きそうになる。真面目に力になると約束する。幽霊さんやっぱりいい人だと思う。着々と好感度が上がっていく。
取り敢えず鎧連れて馬鹿騒ぎ。話せないならせめて笑って貰おうと思い、宴から離れようとしていた忍者捕まえて腹踊りさせる。ここら辺で漢三人が本格的に団結する。爆笑の渦が巻き起こる。鎧引き連れていろんな所を回る内に交流が深まる。島のことをちょっといい所かもしんないと思い始める。
宴終わった後、酔っ払った身体引き摺って船に帰る。ていうか何でアリーゼ酒飲んでねん、と笑い上戸になった生徒背負いながら思う。「好きです」連呼されるがハイハイで流す。ベッドに寝かせた時に少女が見せた望郷の涙に、少しは真面目に頑張ろうかな思い始める。
何だかんだで色々な契機な一日だった。


起床。二日酔い。ヘタレ全開。酒臭い生徒と授業進めつつ、余りの頭の痛みにリペアセンターに薬貰いに行こうと決意。生徒引き連れリペアセンター進撃。しかし途中クノンに補給ドッグで遭遇する。これ幸いと「クノン先生クスリが欲しいです」と色々問題ある発言かます。「後にしてください」と炭鉱へ向かうクノンにばっさり言われる。凹む。アリーゼに慰められる。みじめ過ぎて泣ける。
頭痛いの耐えて子供達と遊んでいると、ジルコーダ残党発見の報が届く。すぐに部屋に戻ろうとしたが、クノンピンチに気付き炭鉱に爆進。蟲に群がれているクノンを見つけ速攻で抜剣。一人で蹴散らす。クノン驚愕と同時に顔を赤らめる。フラグたった。お詫びにとリペアセンターでクスリ貰いお茶貰い色々質問貰い、割と満ち足りた時間を過ごす。姉さんが茶に一服盛ったと気付いたのは寝台に寝かされドリルが迫ってきた後だった。助けにきたアリーゼが何よりもカッコよく見えた。

投与された毒が抜けきっていないのか、頭フラフラさせながら森を彷徨う。アリーゼとは逸れてしまった。耐え切れず、木の元に寄りかかって休む。暫らくして開眼。よく寝たと思ったら……視界にアレの姿が。「ごばぁっ!!?」と噴血。胃が突然の事態にパニクり酷いことになっていた。きっと夢だと祈って逝く。口内を占領する濃厚な鉄の味には気付かないフリをした。
アズリア、急に血を吐き倒れてしまった赤いのに戸惑い、どう対応するかで非常に悩む。厳格な軍人としてか、恋する乙女としてか。盛大に悩み(所用時間2秒)、介抱することを決断。膝枕。アズリア恥じ照れて赤面。レックス胃が捩れて青面。レックスのHPバーが急激に縮まっていくなか、アリーゼ登場。許容量を遥かに超えた映像に一瞬吐き気が込み上げふらつき、そして次には何かがキレ、目に涙を溜めながら大マジのキユピーフルスロー。何時ぞやのすてみタックルを沸騰させる光景だった。大絶叫を伴ったキユピーアローにすぐさまに気付いたアズリアは超人的な動作で回避。木を粉砕し叩き折った紫紺の弾丸に冷や汗を流した。再び合間見えた二人、当の本人死んでるけど突入する修羅場。言葉無いまま滅茶苦茶睨み合っていたが、轟音を聞きつけたカイル達と帝国軍が集結。その場は何とか収まった。背中を見せてアズリアが立ち退いていった後、彼女と赤いのの仲を勘繰り勘違いした恋する純粋少女の瞳からポロポロ涙が零れていった。

レックス覚醒。何があったと考え、悪夢を思い起こしその場からゴロゴロ転がりながら距離を取る。召喚しかけた「剣」を構えた先には足を崩したアリーゼの姿が。疑問符を浮かべながら取り敢えずどうなっているのかアリーゼに事情を聞く。彼女に膝枕をされていた事実に気付くことはなかった。
事情を話す中で、レックスへアズリアのことについて尋ねるアリーゼ。「話したくないというか話せないイヤ話しちゃったら胃が…」と胃って答えようとしない赤いのに、「お願いですから話してください」と泣きつく。泣き出したアリーゼに慌てふためいたレックスは渋々ながらアレとの関係を語り出した。胃薬を片手に持ちながら。
昼に見たアズリアの態度から赤いのが言う話を頑なに信じようとしなかったアリーゼだったが、顔色が激悪くなってきた教師の姿を見て信じざる得なくなった。念入りに女傑のことをどう思っているのか問い詰め、「宿敵通り越して害悪」の返答にやっと誤解だということを認知しほっと息をつく。胸のわだかまりが溶けていく一方で、本人に好意の欠片も気付いてもらっていないアズリアを哀れ過ぎるほど不憫だとも思った。そのまた一方でメモリーをフラッシュバックされた赤いのは瀕死状態に陥っていた。

翌朝。ドリームでもリアルでも悪夢再来したレックスは一睡も出来ず憔悴。食事も胃が何も受け付けてくれず、傍目でもアブナイ状態だった。元気付けようとした海賊達だったが、見計らったようにギャレオ参上。降服勧告並びに宣戦布告する。弱者やら言われたカイル達はブチ切れ決戦準備。赤いのは事切れかかって撤退準備。姿を暗まそうとするが結局阻まれ捕縛される。「もういいよ『剣』渡しましょうよテイウカ家帰シテ」、と腐れっぷりを全開にする赤いの。普段なら制裁をこれでもかと加えるカイル達だったが、余りのダメっぷりにもう何も言えなかった。しょうがない、ていうか戦える状態じゃないし絶対足手纏いになるのは明白だったのでレックスはただ一人残留組にして暁の丘に赴くことに。
出発の直前、ソノラが自室の隅で屈み凹んでいるレックスに声をかけ「先生の代わりにやっつけてくるから安心して!」と満面の笑顔で励ます。レックス、ちょっと救われる。同時に罪悪感も感じる。
それからソノラと入れ替わるようにしてアリーゼが入室。レックスの気持ちも解るけど本当にこれでいいのか、このままでいいのか、と尋ねられる。他人に強制されて戦って、そして今みたいに耐えきれなくなって逃げ出すのはカッコ悪いと言われる。アリーゼ的には今のレックスを見ているのは自分こそ耐えきれず、またアズリアにレックスが屈伏しているようで何か嫌だった。以前からも思っていた、もっとしっかりすれば文句なんかないの意も込めて、「自分の意思で剣を持って、自分の意志で戦ってください、先生」と言葉をレックスに落とす。一人しかいない部屋の中で、励ましに来てくれた少女の笑顔と生徒の言葉をレックスは暫らく反芻した。

最初から話し合いの場など設けず戦闘に突入するカイル達。凄まじい戦闘能力を発揮し数の差を覆す。負けじとアズリアの指揮のもと張り合っていた帝国軍だったが、そのアズリアがキュウマに忍び足からの一騎打ちを仕掛けられ、指示が滞り次第に押されていく。いける、と確信するカイル達。しかしそこに大砲からの集中砲火。戦況が一変。ビジュの策略により窮地に落とされる。
更なる砲弾の雨が放たれようとしたが、少女達に促され出撃し帝国軍の背後をとろうとしていたレックスがそれを阻止。瞬殺されるワカメ。大砲ぶんどる赤狸。始まった殺戮。吹っ飛んでいく兵士達。薙ぎ飛ばされるゴリラ。爆殺されるうんこ。少なからず巻き込まれるカイル達。構築される阿鼻叫喚の図。それでも一向に手を緩めない赤狸。ていうかアズリアを撃ち落とそうと必死だった。救いがなかった。
やがて、とうとう大砲の弾が尽きる。服焦がしながらそれでもノーダメージの女傑の姿。「本当に何者だアイツ…」と慄くレックス。脇目を振らずコチラに突進してくるアズリアに腹を括り、マジモードで激突。誰もが唖然とする超苛烈な剣戟を繰り広げる。「何でそれを常にやろうとしない…」とみなが心を一つに合わせる中、剣と剣で切り結ぶレックスとアズリア。昔を少し懐かしんだアズリアは自然口元を曲線に曲げ、それを獰猛な笑みと瞳に映したレックスは本当にイカれてやがるコイツと吐き気を催す。このままずっと続くのではないかと思われた剣舞だったが、放たれた紫電絶華をレックスが片手を犠牲に強引に受けとめ一撃、決着となった。乱れ突きの中に曝した腕は血塗れで原型を留めておらずスプラッタ、泣きだしたアリーゼに無茶しないでと強烈な突撃を喰らい赤狸悶絶。彼女の言ったことを実践してみせたので、感動の言葉を貰えるのではないかと少なからず期待していただけに結構悲しかった。他の仲間からは無差別砲撃の件でリンチを執行された。帝国軍には逃げられた。然もあらん。

夜会話。アリーゼと甲板にて。ジルコーダの件も合わせて無茶はしないで欲しいと言われる。本気になりつつ手段を選べとは難しいことを言うなと少し思案。まぁ女性のお願いだから無下にはすまいと努力はすると返答。約束してくださいとやや強い物言いされるが、「君を(この島に居る間は)ずっと守ってやりたいからこれで勘弁してくれ」と素で言う。一昨日涙を流すアリーゼの姿を顧みての発言だったが、当人には相当ズレた形で伝わった。真っ赤になって沈んだ生徒に疲労かと首を傾げながら、また背におんぶして部屋に運び寝かしつけた。色々面倒かけたからそりゃ疲れるかと苦笑。目を回して横になったアリーゼの頭を撫でながら、絶対守るからと零し笑みを浮かべた。知れずアリーゼの印象が大きく変わっていった。


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