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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/06/03 19:39
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'16,06,03 誤字修正



Side 純夏


「うば~~~~~」

「・・・・・・何遣ってんだ?、鑑。」

「ホエッ!?―――ビックリしたァ、彼方くんかぁ」


A-00執務室にあるソファーにひっくり返って魂の発する原初の叫びを上げてたら唐突に覗き込まれた。
この部屋に入れるA-00中隊のメンバーなら、神宮司・篁両大尉以外なんとなく何処に居るか判るので、此処迄不意を突かれることはない。
これは、多分クリスカさんやイーニァちゃん、そして真愛[まちか]がお互いの位置がわかるのと同じ、擬似とはいえ“合一”した意識の間に、僅かでも繋がりができるからだろう。
その両大尉にしても、わたしは薄いリーディングゾーンを常に張っているので、思考は読まなくても気配は感じられる。
わたしや霞ちゃんの対諜報警戒網をすり抜けてくるのは彼方くんぐらいだ。

わたしがソファに起き上がり、霞ちゃんが立ち上がろうとするのを掌を翳して抑えると、彼方くんは自分で湯沸しポットをセットし、ドリップの用意を始める。
コーヒーに関しては彼方くんに淹れてもらうほうが美味しいからそれ以上はでしゃばらない。
勿論基地の配給品なんかじゃない。
夕呼先生の執務室はブルーマウンテンだけど、A-00執務室[ココ]はハワイ・コナ。
それも豆をハワイや中米からシャノアを使って定期的に直接袋買いしている。
普通は何カ国かを通関する嗜好品であるため、とてつもない金額に成っちゃうから最初恐縮してたけど、個人的に使える物流網を持ってるので現地原価とのコト、今は喜んでご馳走に成っている。


「疲れたか?・・・午前中は悪かったな。
A-00は本来、久々の全隊非番だったのに・・・。
お蔭でアイツ等、もう覚えたんだって?」

「あ、うん・・・真愛[まちか]、頭よくってビックリしちゃった。
1教えたら、10!、みたいな・・・。」

「・・・・・・。」


彼方くんが一瞬手を止め、黙ってわたしを見る。


「・・・珍しいな、鑑が名前呼び捨てなんて・・・。」

「え?・・・あ」

「―――純夏さん、真愛[まちか]さんとスパーリングしたんです・・・勿論小手調べ程度ですが。
雑談で真愛さんが近接格闘訓練にボクシングしてたって聞いて・・・。」


霞ちゃんが僅かに苦笑いしながら補足してくれる。


「・・・なるほど、それでダブルKOして“強敵”と書いて“トモ”と呼ぶ厚い“友情”を結んだ・・・と?」

「・・・リボン[リーディング制限]してたからお互い純粋なテクニックだけだったんだけど・・・あの絶妙なクロスカウンターは侮れない・・・ッ!」


思わず拳を握りしめる。
拳に感じた熱気と、頬に感じた冷気はハッタリじゃない。


「―――マジで[]ったんかい・・・」

「あ、ううん、二人とも寸止め[●●●]したし、今度ちゃんとリングで[]ろうって約束したから・・・。
だからなんとなく控えめなクリスカさんとは違って、真愛[まちか]ぁ~~っ!・・・・・・みたいな?」

「・・・そして、お互いニヤリと笑い合った―――、と言うことだな。
まー、仲良くしてくれるなら無問題、めいっぱい青春してくれ。」

「でも・・・、A-00の皆にも内緒だし、今夜には“赤坂”に送るんでしょ?」

「まあな。
表向き横浜基地[ココ]との関係性は無いものにしたいし、明日から横浜トライアルの参加者が集まってくるから、―――リスクヘッジだな。
今後手続きが順当に進めば、アイツ等は斯衛軍第1連隊、帝都城防衛が主たる任務となるが、それでも先刻森羅2nd:“天地[あめつち]”の適合確認も取れたし、何れは第4計画にも関連して共闘も有り得るだろ。
そうなれば、スパーも出来るさ。」


ポットがピーピー鳴いて湯が沸いた事を告げる。
最初ネルを湿らせると、今度はかなり細い筋を維持しながら、途切れること無く注ぎ続ける。
辺りには柔らかいコーヒーの香りが立ち込める。

後始末と言ってユーコンに行った彼方くんが、図らずもソ連から奪取?してきたカタチの第3計画の遺児―――。
最悪また引き取ってくるかも、と言っていたクリスカさんとイーニァちゃんじゃなく、別の二人。
仕掛けられたロジックボムの解除や欠損部位の再分化に半日くらいシリンダーの中で“治療”を受けていたらしいけど、今朝会ったときにはもう普通だった。
勿論霞ちゃんの姉妹には違いない。

透未[すいみ]ちゃんはホントに本当の最終ロット[末っ娘]らしい。
最初警戒してたけど、すぐに懐いてくれて超可愛いかった。
イーニァちゃんのミーシャがずっと羨ましかったらしく、霞ちゃんのうささんにも反応したため、彼方くんから“[のろ]いウサギ”と“タレっくま”と言う大きなぬいぐるみをプレゼントされた。
長らく悩んだ末に結局常に両方抱えて居る。

一方小さなカプセルに入れられた様な状態から全身再生された真愛[まちか]に妙な近親感を感じてしまったのは内緒。
“繭”と言うのはいろんな意味で禁句らしい。
彼女も最初はツンツンして見えたけど、頭の回転が速くて礼儀も正しかったし、なによりあの拳に込められた熱い想いは、本物。


「ま、何れにしろ休日半分潰したんだ、埋め合わせは希望があれば何時でも受け付ける。
明日から、また当分休みは無いからな。」

「うん。」

「今日は―――、武は?」

「今日の昼は柏木さん。
勿論偶然を装って、だけどね・・・。」

「え?、・・・・・・あの娘も“嫁”なのか?」

「うん。
過去のループでも何度か・・・。
でも、前のループがアレだし、これで8人[フルメンバー]だから・・・。」

「あ―――理解。

それで・・・?、鑑は未だに“森羅”着込んで何調べてたんだ?
社も“天地”装備だし・・・。」

「うーーん、なんとなく?
装備は午前の流れなんだけど、発端はね、伊隅大尉なんだよ・・・。」

「・・・タケルさん達がユーコンに行って居ない間、A-01部隊の皆さんが交代で、ワタシ達の直衛をしてくれたのはご存知だと思います。」

「そーなんだよ。
それで、その時にたまたま会話の流れで私とタケルちゃんが幼馴染だって知った伊隅大尉が羨ましがって・・・。
前は気付いて貰えなくてって話したら、どうやってブレイクスルーしたか、根掘り葉掘り訊かれちゃった。
タケルちゃんの記憶でも、甲21号作戦に赴くとき“温泉作戦”を伝授したけど、それが死亡フラグになっちまったって凹んでたから・・・。」

「・・・それで帝国軍からのランダム招聘リストに“前島正樹”少尉が在るんだ。」

「うん。
今は戦闘の記録を残す偵察・記録部隊に居るから、今回のトライアルもPR用の記録をお願いするって事で通しちゃった。
副司令は向こうの世界みたいなネットに依るリアルタイム配信を画策してるみたい。
・・・でも、実は遠乃少尉と相原少尉も同じ想い人なんだけどね。」

「・・・なんとなく判った。
伊隅が羨ましがって遠乃と相原が引き摺ってるってコトは、相手が“鈍感系優柔不断無自覚フラグビルダー[エロゲ主人公体質]”ってコトか。」

「そう!、そうなんだよ!!
・・・なんか、伊隅大尉のコト、とても他人ごとって思えなくて・・・。
よくよく聞けば、伊隅四姉妹、みんなライバルだって言ってたし・・・。
ホントなら一人に肩入れするのは躊躇うけど、年明けには8人までOKでしょ?
だったら、温泉は無いけど、トライアルで少しは協力出来ないかなって・・・。」

「・・・その方法をハッキングでネット検索?」

「ううん、コッチは違う人・・・。」

「違う人?」

「・・・リストの前島少尉に反応した人が、もう一人居たんだよ。」

「誰・・・と訊くまでもなく?」

「そう―――香月副司令。
なんでも、お姉さんの弟子[エジキ]の一人だった筈だとかなんとか・・・それで―――」

「・・・皆まで言うな・・・面白がって拡散した・・・と。」

「正解。」

「・・・哀れな犠牲者[ターゲット]は?」

「辻村中尉、高原少尉、麻倉少尉には既に特定の相手がいるけど、もう出来ちゃってる既成のカップルには興味が無いんだって。
新たな恋愛[希望]の成就こそが、BEATに傾いた支配因果律を揺るがすのよ、って力説された。
と言って速瀬中尉と涼宮中少尉は無理だし、風間少尉はちょっとバイっぽくて怖いし、築地少尉はネコだし・・・。」

「残るは・・・。」

「そう、対象は宗像中尉。」

「・・・南無南無。」

「―――冥福祈らないで、止めてあげて?」

「無理。
鑑は俺に死ねと?」

「・・・ダヨネェ。
向こうの夕呼先生も人の恋路に茶々入れることには命かけてたし・・・。」

「しかし・・・宗像ねぇ・・・。」

「調査対象は、過去?の男・・・。
なんでも、元は京都に居たって・・・。
宗像中尉自身が帝都陥落の年の春に207衛士訓練部隊に入っているから、その時別れたままみたい。
タケルちゃんの傍系記憶を隅から隅まで探して、未来ループの富士教導隊で会話したときに聞いた“八雲鷹徳” って人らしいから、一応記録を漁ってたの。」

「・・・それで?」

「城内省に残ってた記録によれば、外様だけど一角の武家出身らしくて京都の斯衛軍衛士養成学校をその’98年に修了してそのまま当時の斯衛軍第1連隊に任官してた。
当然その後の帝都防衛戦で京都守護に回って、伏見の攻防戦に出陣・・・以来不明・・・。
でも軍籍上MIAが付いたのは3ヶ月後なの。
明確な遺体は未確認ってコトだけで、、現場も極度の混乱、把握出来てないみたい。
病院や救護所のリストも残っているだけは見たけど・・・。」

「・・・行き詰って、二人でへたってたんです―――。」

「・・・。」


ドリップの終わったコーヒーを各自に用意した小さめのマグに注ぐ。
わたしと霞ちゃんには、砂糖を付けて渡してくれた。
ミルクは合成になるし、このコーヒーは元から口当たりが良いので、ここでは誰も使わない。

その香り高い淹れたてを一口啜ると、彼方くんはポツリと言った。


「鑑としては、見つからないほうが良いのか?」

「わかんない。
本当に死亡が確認取れちゃったら、後悔するかも。
でも、もし生きているなら見つかって欲しい・・・。」

「宗像の古傷抉ることにはならないのか?」

「今回・・・恐らくテロ対応要員として、またシルヴィオ中尉が招聘されます。」


霞ちゃんが答える。
わたしも2ヶ月前まだ脳髄だったときに逢っているらしい。
本来当時は冬眠状態に近くて覚えているはずが無いのだけど、なんか夢で見てたような気がする。
大方の経緯は霞ちゃんに教えてもらった。


「・・・シルヴィオ中尉・・・って?」

「・・・副司令が“対等”と認めた数少ない相手です・・・。」


霞ちゃんが彼方くんにプロジェクションする。
霞ちゃん自身の体験だから鮮明。
彼方くんのリーディングは出来ないけど、プロジェクションは通る。


「2ヶ月前?・・・うわ、また際どいコトを・・・。
・・・欧州連合情報軍のエース・・・ファルソ・・・“フェニーチェ”?・・・サイブリッドか・・・。
A型軍装[AKGコス]って・・・夕呼絶対にまりもで遊んだな・・・。
嗚呼・・・今度涼宮(妹)には優しくしてやろう・・・。
βブリッド研究の殲滅?・・・黒幕は恭順派・・・?
停滞工作員の炙り出し?・・・ABSキャリアーの検知?・・・なるほど、それで宗像と組ませたんだ・・・。
それでも夕呼の企みの裏の裏、結構いいトコまで読み切った、・・・か。

フーン・・・面白いな、コイツ―――。」

「わたしも・・・嫌いじゃありません。
あの時の純夏さんを一切否定せず、守ろうとしてくれました。
・・・宗像中尉も、その・・・。」

「―――満更でもなかった・・・というコトか。
・・・全く、優しんだか厳しいんだが判らないな・・・ウチの総司令[センセ]は。
まあ、見て愉しむのはデフォだが・・・当人が更に[●●]前に進む為には必要なことでもある・・・ってか。」

「「・・・・・・。」」

「なら、・・・一応探して見るか―――。」

「え―――?」

「シャノアの病院船。
あの当時運河で琵琶湖に入っていたから、結構な数の重傷者が運び込まれたはず。
シャノアの場合、データは俺が隔離しているから、鑑のハッキングでもそうそう入れないだろ。」

「!!―――。」






検索結果―――1件該当。


Sideout




Side 武

B17フロア 機密エリア備品倉庫 19:00


夕食後彩峰が私室に来たのは先刻―――今日の夜は彩峰の担当[シフト]と言う事だ。
なんとなく私的なスケジュールも管理されている様な感もあるけど、ユーコンに行く直前キスされた柏木を含め皆仲良く成ったとのこと、状況はオレとしても願ったりで、その辺は口出ししないことにしている。


なにせ今回のループでは横浜に来てイキナリ少佐となり、207B、A-01に始まり、すぐに斯衛のXM3教導、その後は新潟やユーコンで派手なパフォーマンスをやらかした訳で、最近は斯衛軍に加え帝国軍の教導に関する様な対外的な折衝も増えてきている。
傍系記憶でも佐官くらいまでなら昇進した記憶があるから、そういった交渉自体はなんとかこなしているが、実際にはその場に至るスケジュール調整や今回のループに於ける関係先状況そのものの事前把握等が当然必要であり、オレの手に負えるモノではない。
それらの管理をずっと霞と純夏が対応してくれていた。


とは言え、霞はそうそう外には連れ出せない。
第3計画の遺児ってだけでも様々な諜報機関に狙われるのに、その一方で第4計画が誇る鉄壁のセキュリティの中核、“無菌室”の維持をずっと一人で支えてきた頑張り屋さん。
第4計画では夕呼センセに次ぐ中心人物とも見られている。
そんな霞を基地から出した途端、本人も空けた基地も狙われるのが目に見えていた。

他方“森羅”適合者である純夏については、今のところ機密漏洩がないため、表面上一衛士扱い、あまり心配は要らなかった。


横浜にハイヴからの“唯一の生還者”が存在し、それが第4計画の鍵であると言う話は、そこそこ漏洩しているらしいし、それがシリンダーの中に在る脳髄だと言うことも極一部にはバレている。

一方で“森羅”という名称、そしてその能力は新潟防衛戦に参加した全軍に認知されているが、そこでも純夏の名前は公にしていないし、ほとんどの人はそれが人間であるとすら思っていないだろう。
通信ログにも残していないが、相手方の応答については残っている。
それを時系列で重ねれば、最大10を優に超える相手に対し同時音声対応をしているのだから・・・。

つまりは徹底して“森羅”の呼称を使った上で、『森羅=装着型00ユニット』『装着型00ユニット適合者=純夏』『純夏=脳髄』と言う何段ものステップを明確に知るのは、新潟遠征前に浜離宮に集まった極一部の関係者だけであり、その他は夕呼先生と霞しか居ないという状況―――。
篁大尉やまりもちゃんですら、00ユニット関連のコトは伏せてあり、純夏のコトは森羅適合特性を有する一衛士、としか認識していない。
“森羅”適合性を試したA-00、A-01メンバーも同じ、00ユニットと言う存在自体が秘匿されていた。

確かに装着型にした段階で、非炭素系擬似生命という00ユニット本来の定義とはかけ離れる部分もあり、機能はともかく呼称としてそぐわないのは確かだった。

この急激な変化に追従しきれていない外部の諜報機関は、長年苦労に苦労を重ね掴んだ第4計画の情報『脳髄≒00ユニット』との認識はあるが、それが突然装着型に変わったことなど知らず、また脳髄からの全身再生など反応炉の生きているココ横浜以外では到底不可能であるため、純夏と脳髄と00ユニットを関連付ける事など想像することすら出来ていないのが現状である。

なので純夏に関しては外出も大丈夫といえば大丈夫なのだが、それでもその稀少性重要性から万が一を考え、不特定多数との接触は避け、それ以外でも俺や彼方と一緒でない場合は、基地外に出ることを控えていた。
“天地”に霞やユーコンで彼方が引き取ってきたらしい発現者が適応することにより、AIGISを初めとする戦域BETAの把握・・・つまり新潟で純夏がやった対BETA戦術支援システムとしてや、リーディング・プロジェクションの強化、ハッキングの獲得などは出来るように成る。
しかし、オリジナルハイヴ潜行時の鍵である00ユニット拡張装備:XG-70のML機関については、エミュレーションに依る僅かな時間遅れがラザフォード場制御のネックとなり、“天地”では運用には適さない事が判っている。
―――つまり未だに凄乃皇を制御できるのは、純夏唯一人。
その扱いが慎重になるのも仕方ないだろう。


と言う事で、話が盛大に逸れたが、基本霞も純夏も基地外部での打ち合わせには同行できなかった。
その結果、外部折衝の折には、新潟戦後A-00として正式任官となった新メンバーが交代で補佐官として付いてくれるようになったわけだ。
勿論通常の訓練はオレが不在でもA-01と同じくあるため、専任固定化はしていない。
そして各自が得た情報は純夏と霞が一元管理しているらしく、適宜プロジェクションやリーディングで相互に摺り合わせしているとのことで、次々担当が入れ替わっても全く齟齬がないのが何気に凄い。
霞や純夏の能力を知らせて良いのか?、とも訊いたが許可は得ているとの応え、問題ないらしい。

また当然折衝相手に合わせ、城内関連は冥夜、帝国軍関係は彩峰、政府関連は委員長、国連関係はたま、詳報関係は美琴、とそれぞれに適性を持つメンバーが補佐官としてつくものだから、交渉なら有利に進むし、逆に皆もスキルアップを図れる、というオマケ付き。
正直交渉事が得意とは言えないオレとしては、かなり助かっていた。


但しこの状況は、逆に言えば、当然オレの空いている時間も完全に熟知している事となる。
初めは何時も誰かが傍に居る状況を予想し、嬉しさと、そして息苦しさも感じたのは確かだ。
だが実際には、皆の都合や体調も併せて私的なスケジュールが組まれているのは夜だけだった。
まあ、昼は大抵執務か訓練ばかり、ココのところ休みらしい休みも取れなかったから、昼間のローテなど作っても意味がなかったのだろうと納得した。

実際今日も純夏と霞は、休日返上で“森羅”“天地”関連の調整作業だ。
冥夜も休みを利用して月詠中尉と共に帝都城に参内している。
他のユーコン遠征メンバーもあれ以来久々の終日非番ということで、各々に溜まっている雑事対応。
A-00で残る彼方と篁大尉は、オレ達の帰国以降ユーコンで起きたユウヤのMIAに始まる問題を片付けてきたコトで、此方もなにかと忙しそうだった。



結果として今日の昼間オレにはやることがなく、休みだというのに独りぶらぶらしていたところを、たまたま通りかかった柏木に誘われた。

それは彼方が何処からか引っ張て来た中古車両を使った、基地外周路ドライバーズ訓練。
この時代、勿論免許制度はあるのだが、当然の事ながら軍務優先、尉官には勝手に仮免許が付いてくる。
あとは上官を載せて運転できることを確認してもらえば正式な免許となる。
民間と比べると極めて甘いが、普段そうそう運転する機会も環境もなく、あるに越したことはない程度なので、そんな扱いで問題ない・・・のか?
オレ自身で考えて見ても、元の世界含め運転の経験は永いループの中でも数えるほどしか無かった。
荒れた戦場では普通の乗用車など無かったし、ある程度舗装された場所に戻る時には、既に運転手付きだったりしたからだ。

柏木から誘われたのは、その車の運転慣熟。
基地外縁ではあるが既に公道とは言えない無人の街路を交代交代思う存分走りまわることが出来た。
実際初めはおっかなびっくりで、けれど速度とハンドル舵角でそれなりに曲がれるように成れば、徐々に速度も上がる。
一応教程マニュアルがあって、バックや車庫入れはじき慣れたが、縦列駐車は何気に難しいことも判った。
興が乗り、最後の方は後輪が滑るくらいの互いの運転にギャーギャー言って、笑い転けた。

そして・・・勿論、というか、そんなコトをしていれば、いい雰囲気にもなるわけで・・・。
渡米前に貰ったサプライズには百倍返しさせてもらった。


―――流石に、車のサスペンション性能を確かめる加振試験は自重したよ?




閑話休題。




夕食後、笑顔で別れた柏木に変わり、今、目の前に居る彩峰。
何時も飄々として見えるが、なんとなくソワソワしているようでもある。

・・・やっぱり愛しい―――そう、思う。
昼間柏木で、もう浮気―――、とは違う。
結局どっちも大事。
まあ、やっぱ気が多い・・・と言われても仕方ない。

だが、そもそもオレが拘って、固執して、巡って来たこの世界・・・。
その対象が今は未だ喪うこと無く、全てこの腕の中に在る―――。
他を一切知らなかった過去のループなら確かに一人に絞れたが、それら彼女たち全員の想いを知っている今、その何れを切ることもオレには出来るわけがない。
そして、それを取り零すことも・・・。

―――ヘタレといわば言え。
だったら開き直り、ヘタレ道を突き詰めて、全員幸せにする―――ッ!

そう思って抱きしめようとして、それ[●●]に気付いた。


「・・・彩峰なにそのリュック・・・?」

「ちょっと・・・、行きたいトコ在る。
一緒に来て?」


彩峰は美琴に負けず劣らず、通常通りのマイペースだった。






その彩峰に促され案内されたのは、B17、ユーコン遠征に赴く前に一悶着あったこの倉庫だった。
・・・美琴と一緒に備品を探しに来て、彼女に初めてキスをした時、つい盛って暴走し、すんでのところで捜索に来た207Bメンバーに捕縛されるという事態に陥った場所。
今更何故?、とも思う。
あの時持て余したリビドーは、ユーコンで各自に十倍返ししているので、問題ない筈・・・。
だが、何故かリュックを背負った彩峰は珍しく鼻歌を歌いながら何時ものマイペースで中に入り込み、そしてとある壁の前に立った。


「コレ―――。」


見せられたのは、補修された板壁の痕。
手前の床に残るうっすらとした窪み。

あ―――。


これは確か美琴を押し倒したオレを皆が見つけ取り囲んだ時、目の前にいる彩峰が無言で強烈な震脚と共にパネルを打ち抜いた通背拳の名残・・・。
今はその穴をキレイに四角く切り取り、新たな板で塞いである。


「・・・今日はアレ以来の非番だった。
だから午前中に鎧衣と直した。
後はペンキ塗るだけ―――。」


なるほど、午前中に彩峰と美琴を見かけなかったのはその為か。
実行犯の彩峰が美琴に頼んだのだろう。
サバイバル系含めこの系統なら何でも得意な美琴はDIYもお手の物、その修繕出来栄えもプロ並みだった。
塞いだ板が髪の毛1本入る隙間もなく、見事に嵌めこまれている。
これで同色のペンキを塗れば、周囲と見分けなど付かない。
流石に基地設備の破壊は譴責にあたる為、今までは応急処置でカムフラージュし、気付かれる前に直してしまえ、と言うことだ。
実際機密区画の補修はセキュリティが面倒だから軽微な場合譴責しても放置されることが屡々、だったら自己責任で修繕した方がよっぽどマシ。
勿論本来オレが注意する立場にあるわけだけど、元はといえばこんな場所で部下である女性士官とコトに及ぼうとしたオレのせい・・・。
言葉にしてみると元の世界ならセクハラで訴えられるレベルの行為だな・・・。


「う・・・、申し訳ありませんでしたァーー!」

「え?、あ、うん、そうじゃ、ない。」

「え? 違う?」

「―――白銀は強引[それ]くらいでいい・・・ポ・・・じゃなくてコレ・・・見て?」


前半はスルーしたくなるコトを言うと、彩峰は補修されたパネルそのものの繋ぎ目に手を掛け、パコンッ、と外す。


「お、おい!、彩峰・・・。」


言いかけたオレを置いて彩峰がパネルをずらすと、そこにはたたきの様な空間、その打ち放しのPCにドアが在った。


「・・・なんだこれ?」

「作りかけの非常口・・・、脇にうっすらとチョークで書いてある。
今朝このパネルを鎧衣と補修しててたまたま見つけた。」


扉に近寄って見れば、確かにB17非常口(3)の文字。


「―――元々突貫工事で作った横浜基地。
その先は、横浜ハイヴのスタブに成ってるから、最初は非常階段でも通す予定だったはず?」


軽く言いながら何故か背後のパネルを戻す彩峰。


「スタブって、オマッ!、まさか・・・?」

「こんな楽しそうな“秘密”、ほっとけない。
勿論既に鎧衣と探検済みで、危険はない。
それに・・・ジャンケンで勝ったから、“初”を貰った。」


じゃんけん?
初?
オレの疑問をスルーして彩峰は閂状のロックを外し、鋼鉄製の扉を開く。
その向こうは、確かに蒼く、淡く、薄ぼんやりと光る壁を有する、ここ横浜ハイヴのスタブ。


「・・・危険はないって、こんな機密区画に抜け穴なんて完全にマズイだろ・・・。」

「だから調査して報告する為、探検した。
この横坑、基地が在る側が本坑だから、先が完全に行き止まりになっている。
侵入の危険性はないけど、逆に非常口としても出られない。
結果、壁で塞いで放置?」

「―――ああ、そういうコトか・・・。」


反応炉が生きている以上、強固なスタブはそうそう掘り抜けない。
広大なスタブを全て埋め戻す手間を掛けるわけがなく、セキュリティ上問題ないため、そのまま放置されたのだろう。

手を引かれて扉をくぐれば、確かにスタブ。
細い枝坑なのだろう、大型トラックが一台通れる程度、BETAなら戦車級くらいまでしか通れない。


「ってか、何故出る?
しかも、ドア閉めてるし?」

「これ重要。
上司である白銀にも安全確認してもらうって言うのもある・・・。」

「・・・ああ、確認ね。」


言われて辺りを見回す。
一応佐官だし、筋は通っている・・・のか?

仄蒼い壁面はシミュレーションやループ記憶でも戦術機のカメラを通して見慣れているが、こんな軽装でしかも生身で見るのは何時以来だろう・・・?
なんとなく、記憶に在るような・・・。
ああ―――そうか、純夏と一緒にBETAに捕まったこの世界の記憶だ。
勿論その時の横浜ハイヴ[ここ]は、BETAで溢れていて、それを想い寒くは無いのに一瞬ブルッと身が震える。
ここはB17相当―――2,3階層下のシリンダールームに近いということは、実際この辺りの階層に閉じ込められていた可能性だってあるわけだ。

だが機密区画に直接繋がる抜け穴である以上、恐らく建設時にチェックは行われているだろうが、再度調査して確認する必要があると言うのも判る。
何故、彩峰とふたりきりでプライベートな時間に?、と言うのは置いても。


壁面に亀裂や分岐、或いは偽装抗が無いか一応注意しながら進むが、彩峰は相変わらず鼻歌交じり。
結局分岐もないまま100m位進むと、確かに横抗は行き止まり小広間に突き当たった。


「コレ―――。」

「・・・はぁあああ!!??」


問題は、その行き止まりに存在した、仄蒼い壁を映す水面・・・。
畳にすると18畳程度・・・近付けば感じる湯気と熱気―――!
唐突に何処かの傍系記憶にあるイメージが蘇った。
先刻の既視感も、コレか・・・。


「・・・温泉・・・か?」

「・・・調べたけど温度は午前中大体41度くらい。
変わってないと思う。」


彩峰がリュックを下ろし、温度計を差し出された。
先端を浸けてみれば、水銀がスルスルあがり、確かに41度前後を示す。
底も淡く光る壁面と同じ構造だが、凹凸もそれほどなく、深さも・・・うん、適当。


「―――泉質は単純泉で、有害な物質が入っていないことは、さっきサンプルを調べてもらった。」


後ろからの声に、湯に手を入れる。
こんなとこに何故?という疑問は湧くが、元の世界の記憶でも横浜に温泉が皆無だったわけではない。
日本の場合、大体どこでも深く掘れば温泉が出るとも言うし、ここのハイヴだって現実最下層は1,200m掘られているわけだ。
傍系記憶では美琴が探検して見つけたことになっていたように思うが、今回も美琴と彩峰、か。
B17は、層で言っても17層―――地下600m程度に相当するはず・・・。
何らかの水脈が熱せられても不思議じゃない・・・のか?
僅かに熱めの温度がオレには丁度イイ―――。

僅かな水音がするのは、右手の壁面の一部から、チョロチョロと湯がしみ出し流れているから。
左手には溢れた湯が流れていく僅かな裂け目がある。

―――正に天然掛け流し、地下温泉洞窟風呂・・・ッッ!!


「彩峰、コレッ―――!!」


振り向けば、彩峰は既に臨戦態勢。
全裸にタオル一枚で前を隠し、もじもじしながら立っていた。
オレが温泉に気を取られているうちにさっさと脱いだらしい。
あのリュックはこう言うこと、手桶とタオル・ボディソープ類が傍らに置いてある。

何より極めつけは、彩峰の背後で勝手にインフレーションしているピンク色のエアマット・・・。
超小型ポンプが付いているのか、既に2m四方に展開しつつ在る。
確かに下はゴツゴツした岩肌で素足でも痛そうなのは判るが、それにしては太いエアチューブ、―――洗い場としてはクッション性が良過ぎやしませんか・・・?


「オマッ・・・えっと―――そう、な、なにそれ?」


どうにか理性を保ち、背後の存在を質す。


「これ?、大佐に貰った・・・。
―――使い方は白銀に訊けって言われた。
・・・察するにレスリング[●●●●●]の練習用?」


そんなん、知るかァァァァ・・・と思いつつもゴキュン、と唾を飲み込む。
正直言えば実経験はないが・・・元の世界のアングラメディアによる多少の知識は・・・確かにある。

何よりも手を伸ばせば届くところにある肢体・・・仄蒼いフラットな照明に浮かび上がる彩峰の白い肌は、陰影がなく、幻想的なまでに艶かしくて・・・。
腕で抑えていながらタオルを仮借なく押し上げるボリュームの理性破壊力が半端ない。

慧・・・恐ろしい娘。

直撃されたリビドーが叫ぶ!
・・・正に超進化[メジャーバージョンアップ]した温泉作戦やぁぁぁっっ!!


「・・・白銀、入ろ?」


―――トドメの一撃。
潤んだ瞳で上目遣いに誘われて、オレは呆気無く理性を放棄した。


Sideout




Side シルヴィオ・オルランディ(欧州連合情報軍本部第六局・特殊任務部隊“ゴーストハウンド”中尉)

B19フロア 夕呼執務室 20:00


ノックの返答に、室内に入る。
―――相変わらず本やら書類やらあちこちに散乱した乱雑な執務室だ。
前回ダミーに使われた1階層上のコピー部屋ではない。

デスクの向こうで、モニターに向かっていた大きなワークチェアがくるりと回る。
端正な口元に、あるかなしかのアルカイック・スマイルを浮かべたこの部屋の、否、この横浜の主がそこに居た。


「―――欧州連合情報軍、シルヴィオ・オルランディ、・・・要請により参上した。」


息を呑む―――。
彼女の流儀に従い敬礼はしない・・・いや、出来なかった。
それでも気を飲まれたのは数瞬―――、その相変わらず凶悪な存在感を撒き散らすバスト[魔性]のせいでは決してない。
ないったらない―――。


寧ろ前回もその怜悧な美貌に見惚れたが、今思えば判る、判ってしまった。

あの時、この目の前の魔女がどれだけの焦燥にその身をやつして居たのか―――。
行き詰っていると言いつつ余裕も見せていたあの大掛かりな謀略戦さえが、実はギリギリの、正しく計画存亡を賭けた窮余の一策ではなかったのか―――、そう理解してしまった。


それほどまでに、今の[●●]香月夕呼[ドクター]は満たされていた。

勿論、未だ翳りが無いわけではない。
だがそれさえ憂い[アンニュイ]なアクセントとして、雰囲気を更に引き立たせている。
前回垣間見たその飽く無き闘争心は寧ろ更に研ぎ澄まされ、現状に甘んじること無く、その目的を見据えた瞳と、何者にも犯せない気高さ、そして強靭な意志をその身に纏わせる、凄艶の魔女―――。


そして、その事は取りも直さずここ一ヶ月、この横浜の情報として入って来たとても信じられない様な数々の話が、“真実”であることを告げているのだ。



久しぶり[Long time no see]、でいいのかしら?―――早かったわね。」

「・・・もう2ヶ月なのか、まだ2ヶ月なのか知らんが、俺は今、猛烈に嫉妬している―――。
―――貴女にそんな顔をさせられる男が存在したんだな。」

「あら、バレた?」

「・・・ああ。
2ヶ月前の余裕の笑みが、実は無限の懊悩と煉獄の焦燥、その裏返しだったってことに、今更気付かされた。」

「ふ・・・ン、今気付けただけでもイイ線よ・・・。
あの時気付いてたらちょ~っとは、靡いたかもねェ~。」


ケラケラ笑う魔女に、唇の端を引き攣らせるしかない。
あの魔性に挟まれてみたい気もするが、どう考えても気苦労の方が多いだろう。
大和撫子は惚れた相手に尽くすとも聞くのに、目の前の相手にはまるでその光景が想像できない。


「・・・何よゥ、あんた失礼なこと考えてない?」

「いや・・・。
先だってレンツォに会ってきた。
アレほどまでに再生可能だとは思わなかった。
感謝する―――改めて礼を言う。」


眇める流し目に背筋を削られながら強引に話を変える。
机の端でピョコンと金色の何かが動いたが、取り敢えずは気にしない。


「そう、喜んで貰えて何より・・・礼は一応、受け取っとくわ。
ま、抑圧されていた古い記憶は戻ったんだけど、サイブリッドにされた以降の記憶は、前も言ったとおりABSで物理的に欠落させられていたらしく回収は無理だったわ。
組織の行った悪事の証拠に出来ないのは残念だけど、本人的には無い方が良さそうな内容だろうから、これ以上の再生は挑戦しないけど?」

「構わない・・・心遣い、感謝する。
しかし、サイブリッド・・・しかも完全体だったのに、態々全て“擬似生体”にしたんだな。」


気にしなくても視界には入る。
金色の、見事なプラチナブロンド・・・頭か。
小さな少女?
あの薄い紫に近い髪色と触覚・・・もといウサミミ・・・が無いから社少尉ではない。


「予測通り一部にβブリッドが使われていたせいね。
アレ、確かに性能は高いんだけど―――ダメね。
倫理的にも技術的にも色々問題あるデバイスだけど、基本的にβ細胞は、エネルギーの生成プロセスがミトコンドリアを使う地球型動物細胞と致命的に異なる―――と言うことよ。
内呼吸をしないβ細胞を、地球型動物細胞に組み合わせる事自体ナンセンス。
無理矢理組み込んでも、抑々必要とされるエネルギー量が異なるから、β細胞を十全に使うことは出来ない・・・寧ろエネルギーの無駄遣い、ね。
そんなことしてたら、周囲の細胞のほうが疲弊するわ。
彼の場合も結果としてβ-サイブリッドのまま、記憶を回復させることも出来たけど、その場合余命は2,3年だったでしょうね。」

「な・・・!?
いや、横浜は、そこまで―――!!、BETA鹵獲技術かッッ!!」


今まで集めたβブリッドの研究成果にも、今香月博士があっさり口にした内容は無い。
β細胞のエネルギー発生プロセスすら解明されていないのだ。
余りの呆気無さに絶句して・・・そして思い当たった。


「そうよ。
全身の再生は、横浜[ココ]だからこそ可能―――、ラッキーだったわね。」

「やはり横浜は・・・アレ[●●]が完成していると言うのか?
イヤ―――XG-70を接収した以上、最早確定―――!?」

「―――いちいち面倒な性格のボーヤだな。
こんなのが使い物になるのか?」

「は―――?」


唐突に聞こえた天使のような美声は、乱暴で辛辣な科白を突きつけてきた。

見れば、香月博士の横に、仁王立ちで腕組みするゴシック調の黒いドレスを纏う美童女―――。
未就学の幼女程では無いが、身長は130・・・140弱、中学生ほど背もなく、恐らくはティーンにも達していない学童だろう。
にも拘わらずとにかく目を引くのはその見事なまでのプロポーション―――脚が長い―――コルセット風ビスチェの腰位置が極めて高い理想的なスタイル。
そして透き通る様なプラチナブロンドをストレートに落とし、きっちり切り揃えた前髪の下には卵型の小さな頭。
この年にして既に最高級のカメオさえ霞むほどの“美貌”。
ボルダーネックのノースリーブレースブラウスに、二の腕まであるロンググローブ、シンプルだが僅かにパニエが覗くフレアスカートはかなり短く、そこから伸びる長い脚はベルトをアクセントとした腿まである編み上げブーツ・・・。
昔雑誌で見た、まだBETAに奪われる前の欧州ファッション・・・確かヴィヴィアン・イーストウッド女史を彷彿とさせる装い。
確かに童女なのに、その強烈なイメージに全く引けを取っていない。
・・・その一種背徳的な服装とも相まって、このまま齢を重ねれば、一体どれだけの男を惑わすのか知れない、魅入られそうな妖しい霊光を纏う。

何よりも、幼なさを一切否定するような理知的な瞳は、深く透した氷蒼[アイス・ブルー]―――。


「―――これは失礼を、お嬢さん。
はじめまして、ですね・・・。
俺ははシルヴィオ・オルランディ・・・・・・何だとッッ!?」


美童女が見るも鮮やかに、そして獰猛に微笑んだ。


「・・・ほう、気付いたか。
X-rayスキャンは装備されていないと聞いているが・・・。
夕呼が目をかけるだけ在って、抜け目は無いと言うことか。」

「・・・サイブリッド?―――いや、まさか!?、あのシリンダーの・・・?」

「―――フフン、その目に報い特別に名乗ってやろう。
我はアナスタシア・E・K・マクダネル―――。
―――所謂“00ユニット”という存在だ。」

「!!!―――」


優雅に微笑む香月博士の隣、その最高級ビスクドールにも勝る造形に覚えた違和感・・・。
自分自身の3本の手足や、嘗てのレンツォを見ているオレだからこそ気付けた齟齬。

・・・そういうコトか―――。


第4計画の目標が00ユニットに在ることは知っているが、00ユニットがどのような存在であるのか、その詳細は俺のレベルには伝えられていない。
恐らくは第4計画でもトップクラスの機密事項。
しかしそれが凡人には到底理解出来ない、相対論以上に難解なあの理論に基づくものであり、BEAT諜報を目的とした第4計画の切り札であることは類推できた。
そして“彼女”の存在からも、それが横浜ハイヴからの唯一の生還者であり、凄惨なBETA犠牲者であった“彼女”とサイブリッドを繋ぐものである事は疑う余地もない。

その結果が、ここ横浜ハイヴで得られたBETA鹵獲技術・・・。
それらを元に、今やXG-70をも接収し、BETA反攻一大作戦を立案していると言う事実―――。


全てを確信させるに足る“存在”―――。




溜息を付く。
此処まで優位に展開しておきながら、何故・・・?


香月博士[ドクター]・・・ならば訊こう。」

「・・・何かしら?」

「―――貴女の勝ちだ。

第5計画は既に失墜、G弾が天変地異を引き起こす欠陥兵器だってことは、脳天気な米国民以外全世界が認知した。
世界のステークホルダーは、そのバビロン計画とセットに成ったリスクの高い移民計画を見限り、BETA鹵獲技術をチラつかせる第4計画支持にシフトしている。
そして、BETAに対抗する術を得た貴女は、今正に反攻に打って出る準備を着々と進めている。
新潟・・・ユーコンでのデモンストレーション・・・そして“彼女”、全てがそれを示している。

・・・もう一度言おう、貴女の勝ちだ。」

「・・・勝負は下駄を履くまで解らないものよ。」

「そう・・・。
それでも、貴女の勝ちは揺るがない―――今の儘なら。

―――それなのに何故、ココに来て危険な賭けをする?

今度は何の冗談だ?

横浜基地内でトライアル?
しかも艦隊ごと米軍を招いて?

あんな国なんか、放っておけばいいだろう?

そして米国の戦術機を懐に入れるどころか、果てはこの世界一安全な“無菌室[クリーン・ルーム]”を出て国連本部[●●●●]で緊急動議、だと?

護衛する身にもなってくれッッ!!!

まるで狙ってくれと言わんば・か・・・り―――。」


そこで、香月博士とアナスタシアの黒い笑みに気がついた。
前回の重要事項プレゼンの時は、全てが仕組まれていた・・・あのレンツォの襲撃さえも―――。

ならば、今回もそれ[●●]が狙い、か!!


「―――気がついたみたいね。

アンタの言うとおり、BETAに対する準備は進んでいるわ。
クソッタレな現状を打ち破る目処も立った。
余程のことが無い限り、負ける要素は無いわ。

第4計画の対抗勢力も、まあ、一応は封じた。」

「・・・・・・。」

「―――でもそっちは完全じゃない・・・。
今もBETAに滅ぼされることを目的とする“敵”が残ってる。」

「!!・・・恭順派かッ!」

「アンタもあれ以来、頑張っているみたいだから、欧州や国連内の状況も、イヤってほど知っているでしょう?
宗教が絡むから結構がっちり食い込んでいる訳。
信仰には結構チャランポランな日本人と違い、キリスト教が生活の一部とも成っていた欧米ではその影響力は侮れない。
敬虔なクリスチャンであるアンタには痛いほど判るわよね?
そして、・・・それは、米国も同じよ。

人類の敵はBETAだけど、結局人間の敵は何時まで経っても同じ人間。
予定外の、信じられないような余程のことを起こすのは、いつも人間だわ。
後ろから撃たれる危険性を排除出来なきゃ、足元を掬われることだってある。」

「・・・。」


・・・否定できない。
10月の後半以降、更に強度が上がったと言われる横浜の無菌室[クリーン・ルーム]
その中で“00ユニット”の完成によって醸された“BETA鹵獲技術”と言う、信じられない程の“成果”。

一つの結果が、死者0で成し遂げた新潟防衛戦であり、日本帝国・政威大将軍の復権であることは想像に難くない。
そしてその際に吹いた粛清の神風は、日本政府は愚か、帝国軍内部に蔓延っていた米国傀儡をも尽く吹き飛ばしたという。

第4計画の母体である日本帝国の杞憂は排除した。
それでも、米国そのものの裏には今も恭順派がいる事実、欧州や国連の現状とも何ら変わりはない。


「―――残念だけど、米国そのものは強大よ。
今、この世界が滅びていないのは米国が健全だから、と言うコトは揺るぎない事実。
実質世界を支える相手に、“勝てないことはないが、めんど臭い”と言ったヤツがいるけど、全く以て同意だわ。
今の状況で米国全体を敵にまわすのは、時間的にもコスト的にもどう見たって得策じゃない。

―――けどね、その陰に隠れて死にたがりにコソコソされるのは御免なのよ。」

「・・・だから此処迄追い詰めた上で、撒き餌を撒いた・・・と?」

「そうよ。
ここまで見え見えの“誘い”、罠と見て忌避するか、でも第5計画派・・・特に狂信派にもう後はないから罠を食い破る気で誘いに乗るしかない。
国連内にも既にG弾不要論が浮上しているみたいだし、米国の第5計画派そのものも内部分裂が始まっているしね。
そりゃあ、G弾で世界を獲れる、と信じていたから参画していたのに、使えば嘗て一度足りとも侵略されたことのない国土さえ失うと在っては、普通の感覚を持っている人なら使えないわ。」

「―――狙いは、狂信派、ということか。」

「先鋭派・狂信派・恭順派・・・呼び方なんて何でもいい。
未だにG弾を使いたがっている一派がいるのは確かね。
恐らく、彼らはそれが引き起こす災厄を理解していないわけではないわ。
確信犯―――それは、難民救済と言いつつ、死こそが救いと嘯いて大量虐殺を目論む恭順派と繋がっている。

現世の地獄を忌避し自殺が許されないから救いだと言ってBETAに殺してもらう。
本人が望むなら構わないけど、それを他人まで強要するのは神の救いなんかじゃない。

キリスト教恭順という耳触りの良い言葉に隠れた人類自決強要者―――それを世界に晒すのよ。」

「・・・人類を滅ぼそうとする人間、謂わば『人類に敵対的な地球[]起源生命』、Beings of the Intra Terrestrial origin which is Adversary of human race――“BITA”の存在を暴き、世界に示す・・・と?」

「!!・・・・・・」

「ほう―――。
面白い・・・確かにポテンシャルは在るようだな。」

「?」

「・・・自分でその発想にたどり着くなんて・・・アンタ、やっぱりイイわ―――。
今からでも手駒に成んない?、代わりに宗像あげるからさァ。」

「ブッッ、美冴は関係ないだろッ!!・・・ん?、“BITA”と言うのは既存の概念なのか?」

「―――そのBITAが実際に居るとすれば?」

「な!?・・・概念的な意味ではなく?」

「“傀儡級”BITA―――私達はそう呼んでる。
“星系統括級”BETAの有すると考えられる強烈なプロジェクションで、正しく“BETA”が神の使徒かのように精神に焼き付けられ、BETAの尖兵と化した人間の事よ。」

「!!??―――そんな人間が現実に存在する・・・と!?」

「確認例は、まだ1例よ。
日本帝国五摂家である九條家の前当主、九條兼実―――。
知ってると思うけど飽くまでリーディングの結果なので、超能力が公式に認められていない以上、公には出来ないわね。
恐らくは、ルナベースでBETAと戦っていた間に、人類情報と引換に植えつけられた、と推測している。」

「!!!―――。」

「尤もBITAそのものの存在証明をしたいわけじゃないし、その必要性もないわね。
要は、人類自決を目論むキリスト教恭順派の名を騙る狂信者集団[癌細胞]が存在する、と言う事を明示したいのよ。

なにせ“見えない敵[ステルス]”が最も厄介なのよね―――。」


―――確かに、言われてみればキリスト教恭順派の思想は過激すぎる。
神は自ら助く者を助くのであって、安易に諦めろとは一言も言っていない。
現世を人類の罪に対する地獄とし、BETAを神の使徒と崇め、それに恭順するのは個人の判断と自由だが、それを他人にまで強要するのは単なる殺人行為だ。
だが・・・。
傀儡級BITAの存在を是認すれば、その構図も頷ける。

勿論、前提としてBETA乃至、その“星系統括級”とやらがそれだけの知性を有している、と言う事になるが、“00ユニット”、それが齎すBETA情報は、それを裏付けるに足るものなのだろう。


思っても居なかった人類内部の敵・・・!
確かに完全に見えていなかった想定ッッ!!

だが、それがBETAに利する“人間”で在る以上、第4計画によってBETA攻略の可能性が高まれば高まるほど、致命的な妨害を仕掛けてくる可能性が高い、ということか!!


「今此処で打って出ることが・・・必要な措置、なのだな?」

「―――全世界を巻き込む程の反攻のチャンスは1度切り―――今の人類に同じ規模のやり直しをするだけの余力は無く、その乾坤一擲[●●●●]に勝利してこそ次の未来が拓ける―――。
―――だからこそ、今、万全を期すのよ。」

「―――解った・・・。

只今を以てシルヴィオ・オルランディ、―――着任する。
―――好きに使ってくれ。」


Sideout




Side 夕呼


「なかなか弄り甲斐の在るヤツだな。」


シルヴィオが退室すると、傍らのゴスロリが薄い胸を反らせて偉そうに言い放つ。
ヤケに様になっているし、ま、いいんだけどね・・・。


「・・・そうね。
前回此処での芝居に噛ませたけど、色々吹っ切れたみたいだわ。」

「ククク、そう言いつつ[]を見せたのは、ヤツやその背後にミスリードさせる為だけではないのだろう?
・・・さしずめ、サイブリッドに対する護衛・・・。」

「当然―――。
プロミネンスを懐柔して欧州連合とは共闘体勢に成ったけど、恭順派が幅を訊かせている事実は変わらない。
所属が異なる以上、齟齬は存在するし、人は同じ間違いを犯すこともある。
―――なにより本人が自覚していなくても操る術もあるわ。

このフロアで銃器は登録した指紋と一致しなければ撃発しないけど、膂力は別。
アイツの抱擁は、容易くアタシの脊髄を砕く・・・。
でも、強力な“ハッキング”能力を有するアンタなら、サイブリッドや強化装備・機械化歩兵のシステム・セキュリティごとき紙よね。
こーゆーこともあろーかと・・・ってヤツよ。」


彼方は想定外だったアノ子達の環境整備で不在だし、森羅込みの社や鑑は、勘の鋭いヤツには見せたくない。
この尊大な物言いをする“00ユニット”は過保護な彼方が、アタシやあの子達を護る為に創り上げた存在―――起動したのは一昨日だ。
但しあの彼方をして、2度と作らないでござる、と泣き言を吐かせた程手間がかかったらしい。
24時間耐久拡大鏡下脳外科手術に匹敵したとかしないとか・・・。


「ククク・・・バッフワイトの感知距離が短い為、戦術機無双は無理だがな。
慎重な指揮官で重畳、流石彼方が惚れた女と言うことだ。」


―――くっ!
そんなアタリマエのこと、言ってんじゃないわよ。


「それで・・・?、アナスタシア―――今日一日自己分析してたんでしょ?
・・・アンタ一体、何者なの?」

「さぁな―――。

有り体に言えば、必要のなくなった純夏用義体を流用したガイノイドに過ぎん。
知識・思考は彼方から、問われて齟齬が無い様BETAに囚われた記憶だけ純夏から受け継ぎ、人格の元となったAIは彼方が洒落で組んでいた前の世界のアニメキャラベース・・・。
それ以上の情報は無かったぞ?」

「アニメキャラって概念がイマイチ不明だけど・・・ここまでの“自我”がAIで再現できるか、甚だ疑問なのよ?」

「・・・記憶のプロジェクションはコンプレスしてあったから、そこに純夏が虚数空間に漂っていた何らかの“存在”を混ぜてしまった可能性は在るが、・・・前世の記憶はないな。」

「・・・。」

「フフフフ・・・ハハハハッ!
何者、・・・か。
そもそもその問いに明確に答えられる“人間”が居るのか?」

「・・・所詮人間でさえ、真の自分のコトなんか判らない・・・と?」

「そうさ。
私はアナスタシアの名を貰った、“00ユニット”―――β-サイブリッドの身体と、量子電導脳を有するAIに過ぎん。
尤も・・・私に取っては、AIだろうが人間だろうがどうでもいい些末。
cogito ergo sum―――、故に私は、私だ。」


・・・・・・確かにその思考は彼方っぽいわね・・・。


「名がアナスタシア[再生・復活]とは、またよくも付けてくれたモノだがな。
なに、心配は要らん―――純夏の為に数ヶ年掛けて積み上げてきたβ-サイブリッドの義体を使い、4個目[最終試作]の量子電導脳を使用してまで私を作った目的も十分理解しているし、また放棄もしない。
・・・何しろ私は本質的な意味での“00ユニット”でありながら、XG-70のML機関は制御出来ないからな。
せいぜい、“デコイ”として立ちまわることとしよう。」


・・・それだけじゃ済まないから困るんだけど、ね。
―――全く、ほんと予想の斜め上を行くんだから・・・。


Sideout



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