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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 17:20
'15,07,25 upload
'15,10,07 誤字修正



Side イェージー・サンダーク


「〈неизвестный[UNKNOWN]〉出現座標特定!!」

「―――第372小隊、奇襲により障害発生、作戦遂行不能―――弾薬・燃料を奪取された模様。
対象は南東方向に逃亡!」

「―――哨戒中の全部隊に告ぐッ 〈неизвестный[UNKNOWN]〉出現座標を包囲せよ、繰り返す―――出現座標を包囲せよ!」


CP[コマンドポスト]の声に司令室内にも緊張が走る。


特定位置は北東エリア―――当該地を哨戒していた1個小隊が急襲により全機行動不能、・・・か。
ヤルな、ブリッジス、―――そう来るか。

報告は武器弾薬、どうやったのか推進剤から電力まで奪われたと言う内容。
これでまたヤツの行動範囲・攻撃能力が拡大した訳だ。
衛士の生命に支障はなく、アウノウン[ブリッジス]の逃走方向も確認されていた。

南東・・・。
今までの経緯が皆無であるためブラフとも取れる。
カナダに抜ければ、アサバスカ暗黒流星街という国際的にも手出し為難い場所もある。

その選択は米国に戻れず我が邦にも帰属しない逃亡兵としては―――妥当、だろう。


だが―――。
ブリッジスのことだ。
必ず裏がある。
そして、その裏の裏を掻くコトを本当は狙っているはず・・・。

今の行動に裏があるのか、それとも裏の裏で素直に出たのか、それは判らない。
しかし逃亡兵の目的などどうでもいいこと。
何方でも構わないのだ。
上司の指示は不明機の抹殺だが、私としてはT-50の評価試験が行えれば、それでいい。
―――故に、この国境だけは通すわけに行かない。



「ところで・・・・・・、“連結”は完全なんだろうな。」


隣に居たベリャーエフに尋ねる。


「とっ、当然だッ!
融合率は、既[]98%を記録した。」

「それは結構―――。」

「どうする[]だッ?
このままでは、カナダいう[に抜]けられてしまうぞ?」

「そうだな・・・では、そろそろ動くとしよう。」

「―――よしッ、いいぞっ!
理想の生体おう[] “繭”―――いよいよ初の実戦データ収集だっ!
これで・・・これでっ私はッ!」


鼻梁の再形成手術はしている隙がないらしい。
まあ、“繭化”を急がせた所為ではあるが、相変わらず子音Иの発音がおかしいベリャーエフが妙に興奮していた。
だが、“白き結晶”を喪い、ロゴフスキーも暗に手を退いたПЗ[ペー]計画に最早未来はない。
コイツは研究一筋なだけあって、コストと成果の比率になど構わず最高性能だけを追い求める。
その偏執的なまでの手腕は認めないでもないが、その反面バランスに大きく欠ける。
“白き結晶”が失われても、今在る発現体から孫クローンをすればいいと考えているらしいが、そうなるとテロメアは更に短縮し、有効期間は20年にも満たなくなる。
今まででさえ歩留まりが最悪で量産化目処すら立っていないのに、さらに寿命短期化とは・・・。
その状態では、例え今後量産化の目処が付いたところで、コストに見合う成果は到底見込めない。
この後は、ゆっくりと治療する時間が取れるコトとなるだろう。

一瞬の煌きを放ち、潔く散る存在―――。
だがその在り方は、限界機動試験に対しては渡りに船でもあった。
私に取って、勝てばT-50の優秀さの誇示でき、負けてもПЗ[ペー]計画の性能不足と出来る、・・・何方の目が出ても良い、最後の戯れに等しかった。



「―――イーダル試験小隊、実証試験[●●●●]を開始せよ。」


徐にその、終焉を告げる。


「―――CPよりイーダル試験小隊発進、〈идол[イーダル]-X1〉、実証試験を開始せよ―――繰り返す、実証試験を開始せよ。」


CPの復唱に、モニターでは逆巻く雪を切り裂き、カタパルトを滑るように出て行く噴射炎。
やがて3機のSu-47pzを従えた、少し小柄なT-50が今も辺りを逆巻く白い闇に霞むように消えていった。


Sideout






Side タリサ

アラスカ州ビーバー付近 ユーコン川河畔  16:00


「・・・なぁ、ホンットウに、こんなトコにいていいのかよ?」


誰に訊くでもなく、つぶやく。
アルゴス隊による〈Argos-01〉捜査任務が開始されたは良いが、実態は昼前にココに来て雪に埋まっているだけ。
先刻もソ連側に展開している哨戒部隊に大きな[]への移動が見られたが、変わらず“待機”。
元々じっとしているのは大の苦手、いい加減じれていた。


「・・・そうね、 CAP-RT[リアルタイム戦闘行動予測]の結果が出てきた時は私も驚いたけど、結構妥当かもしれないわ。」


アタシのボヤキに、後ろの席のステラから答えが返って来る。
ここはXFJ-01 3号機―――クリスカとイーニァが乗っていた複座の管制ユニット。
そして今居る位置は、ユーコン基地から100kmほど西[]に離れたユーコン川河畔。

ブリーフィングで確認された、捕捉位置の軌跡は北東方面ばかりだったのに、である。
このXFJにはアクティブ・ステルスまで装備したというのに、ここはソ連領ですら無い。


『しっかし、雪ン中ってのは寧ろ暖かいとはな。
春まで凍りつくかと思ってたぜ。』


2号機からはVGの声。
この地にXFJ-01が2騎、レーダー部分だけを出し、他はすっぽり雪に埋めてアンブッシュ状態。
なにせ、追っかける相手はPhase4、すなわち超高速機動型。
Phase3で普通に追いかけたんじゃ、追いつかない。
そこで行動を予測し、先回りして強襲するしか無い、という判断のもと取られた作戦だった。


「なに暢気なコト言ってんだよ・・・。
そんなに居心地いいなら春まで冬眠してろよ―――。」

「・・・あんまり心配しなくても大丈夫よ、タリサ。
クリスカの調子がイマイチだったでしょ?
あのユウヤがクリスカの体に触るアサバスカに向かうとは思えないのよ。」

「んあぁ・・・そういやそっか・・・。」

「それに、ハイネマンさんに聞いた1号機の持つもう一つの機能、統合補給支援機構[JRSS]だって、燃料を強奪する相手がいてこそ成り立つのよ?
早々にカナダ領に入ってしまったら、ソ連は基本手出できないし、カナダ軍はステルスなんて相手にしてくれないから、何れ推進剤が尽きる。
アサバスカまでも辿り付けないわ。
そんな選択を―――ユウヤはしない。

逆に西なら、領域侵犯を繰り返す限りソ連軍の哨戒部隊が何時までも構ってくれるから幾らでも補充できる・・・。
まあ、これはまさかとは思うけど、カムチャッカから千島列島まで行ければ・・・その先は・・・。」

『―――日本・・・ってコトだろ。』

「オイオイ・・・、あのユウヤがそんな選択するかぁ?」


ユーコンに来た頃よりかなり緩和されているが、ユウヤの日本嫌いは筋金入りだ。
しかも、そこを頼るような行動をするとは思えねぇ―――。


「―――しないと想うわ、独り[●●]なら、ね。
でも今はクリスカとイーニァが居る。
あの二人にとっては、米国でもリスクは高いかも知れない。」


それもそうか・・・。
詳しい話は聞いてないが、イロイロ人体実験されていたらしいってのは知ってる。
その結果があの“鬼神”のような強さだとしたら、米軍だって狙うかも知れない。


「あぁ・・・日本てより“横浜”・・・ってコトかぁ・・・。」

「もっとも CAP-RT[リアルタイム戦闘行動予測]の結果に、勝手に理由を後付しただけだから、プログラム内でどう判断されたのかは知らないわ。
実際日本まで行こうと思ったら、スーパークルーズが出来るPhase4だって10回以上の補給が必要になる。
当然目的もバレれば対処もされる。
ソ連軍がそこまで馬鹿だと見積もるほどユウヤも楽天的ではないでしょうから。」

「・・・ユウヤの事だから、もっと単純なんじゃねぇの?」

「・・・かもね。」


そう、戦闘や対外的なコトではイロイロ気を回すヤツだが、殊自分のコトとなると、まるで無頓着。
何時だって任務には固執したが、自分については全部後回しだった。
強引で我武者羅で、任務に忠実でありながら、自分を蔑ろにするからつい誤解されがち・・・。
損な性格。
そのユウヤが、初めて自分の欲で動いたのがこの奪還劇ともいえた。


『・・・どっちでもいいさ、けど―――どうやらビンゴだぜ!』

「「 !!――― 」」


VGの言葉に意識を向けた。
レーダーの隅に現れた輝点。
識別信号[コード]〈Argos-01〉―――。





その輝点が10kmに近づいたところで秘匿の部隊内通信を繋げる。
遠距離のデータリンクは遮断しているが、通常のエリア内通信機は生きている。


「―――ユウヤァ! テメェ・・・そんなに急いで何処行こうってんだよッ!?」

『―――ッ!』


Phase4が、停まる。




「・・・良くもアタシ達まで騙してくれたなァ!?」

『・・・・・・。』

「オイオイ、返事くらいしろ、コラッ!」

「ユウヤ―――、機密漏洩疑惑なら、もう気にしなくていいわよ?
私達に気を使う必要もない・・・。」

『―――なッ!?』

「―――貴方を補足する為に、ソ連領内に侵入する必要もあるかと、この2機にもアクティブ・ステルスが搭載されたわ。」

『なん・・・だと―――?』

「貴方は勘違い[●●●]してるかも知れないけど、ステルスやJRSSが搭載されたのは、“Phase4”から。
ボーニング独自進化のPhase4は、機密漏洩に当たらないのよ。」

『―――そういうコトか・・・。
・・・そっか。
ハイネマンのおっさん、ウェラーと握りやがったな・・・。

で―――ステルス無効のXM3正規版を搭載した、オマエ等が脱走兵を捕縛に来た・・・と?』


Phase4がギリと闘気を纏う。


「慌てんじゃねぇよ、コラッ! ンっと気ィ短けぇな。
―――事情は判ってんだ、漏洩疑惑が問題ないなら、帰って説明すればいいだけジャン。」

『・・・・・・まだ・・・まだ帰れない―――。』

「何か―――目的が在るって言う訳?
迷走時間が長いほど、例えクリスカ奪還の為であっても、説明が難しくなるわよ?」

『・・・・・・。』

『旦那、還ろうぜッ!?』

「還りましょう、ユウヤ。
此処にいても、ソ連に狙われるだけよ。」

「だからさッ、ユウヤは堂々と米国に凱旋すれば良い。
―――行こうぜッ!!」

『・・・だが、悪いな。
[]はまだ戻れない。』

「「・・・。」」

『・・・詳しくは話せないけど、こんな仕打ちをされてまで、クリスカとイーニァはソ連を祖国と感謝している。
それが・・・、例え植えつけられた忠誠だとしても、本人が望んでいる以上オレはその状況を望まない。

このまま戻れば、米国の思惑により、二人を出汁にしてソ連を非難する。
それは、二人の本意じゃない―――。』

「「・・・・・・。」」

『―――そしてこの状況で戻れば、クリスカとイーニァは人体実験の証拠を確定するため様々な検査を要求されるだろう。
その中には米国と言えど邪な考えを持つ“意志”が働く可能性も高い。』

「―――そんな・・・、戻んないって、宛はあんのかよッ!?」

『―――心配掛けて悪いとは思うが・・・、もう少し時間をくれ―――。』

「・・・Mwwww。」


そう言われっと、そんな気になっちゃうじゃん・・・。


『―――ユウヤ気を付けろッ! ―――新手だッ!! 詰めてきたぞ!』

『「「―――なにッ!?」」』


レーダー見れば10時方向、ソ連側から1個小隊・・・このコード―――!
また[●●]イーダルか!

・・・つくづく絡んで来る奴らだぜ。
当然目標はユウヤ―――。

今んトコ此奴は還る気はないようだし、伝えるという最小限のミッション…オーダーはクリア済み。

アンブッシュの鬱憤晴らしに、一丁暴れっかぁ!!


『アルゴス試験小隊に告ぐ―――私はソビエト陸軍、ドミトリー・ガヴェーリン中尉だ。
そこにいる〈неизвестный[UNKNOWN]〉機にはソビエト領域侵犯の嫌疑が掛けられている。
速やかに引き渡すよう、要求する。』

「あ~、当地は緩衝地域とはいえ米国領である。
我々アルゴス試験小隊は、米国の依頼により行動している。
―――というわけで、引っ込みなッ! これはあたしらの問題だッ!!」

『―――我々の行動は自衛権の行使である。
不明機を擁護する場合、実力で排除する。』

「ふざけんな、このタコッ! ヤロウってなら、遣ってやるぜッ!!」

『仕方ない―――抑えるぞ!』


あたしとVGはPhase4をすり抜けて、正面に立つ。


「ホント、困ったモノね―――。」


ステラが後ろでヤレヤレと息を付いた。


Sideout







Side ユウヤ

アラスカ州ユーコン川河畔ビーバー付近  16:40


オレ達の行動を完璧に読んで待ち伏せていたアルゴスのメンバー。
どうやらハイネマンのおっさんとDIAのウェラーが小細工して、もしこのまま米国に戻っても機密漏洩疑惑の問題は無いと言うことを知らせてくれた。
戻ろう、との言葉に一瞬揺れたが、今度はクリスカの略取とその奪還を説明するとなると、また他のリスクが生じるコトは必至・・・。
・・・今はまだ、還る状況ではなかった。


その間隙を縫って急接近したのがイーダル試験小隊―――。
元々追尾されていたのは知っていたし、コチラは衛星にIRトレースされないよう、出力を絞っていたから追いつかれるのは時間の問題だった。
情報交換の足止めに気付き、一気に差を詰めてきたらしい。


けれど、包囲展開しようとした3機に〈Argos-02〉と〈Argos-05〉が対峙する。


行け―――。

その背中が語っていた。


・・・オマエ等―――。

感謝を抱きつつ、その“仲間”を置いて、距離を取る。

戦闘が避けられないなら、米国領は下策、恐らく多少なら踏み込んでくる。
その戦闘で、態々退いた米軍部隊を再び呼び戻すわけには行かない。




しかし―――アレ[●●]はヤバイ。
正面に来た3機のSu-47とは離れ、まだ雪に隠れて視認できない機体。
レーダーに寄る認識がうまくできていない。
そして離れていてさえ最大プラーフカを掛けた時の“紅の姉妹”以上の圧力[●●]を感じる。

正直アレ[●●]込みで、今のイーダル試験小隊と単騎で当たったら、此方に勝ち目は無い。
アルゴスが他の3機を牽制、釘付けにしてくれただけでもかなり有難かった。


霞む吹雪に未だ姿は見えないが、レーダーには輪郭のはっきりしない4機目。
その〈идол[イーダル]-X1〉は、他の足止めされた3騎を気にかけることさえ無く、国境線を西になぞるコチラの追撃に掛かり、確実にその差を詰めている!

恐らく・・・一昨日倒したマーティカと、確かスィミィのペア。
その際、彼女たちのSu-47は結構な損傷が在ったはずだから、恐らく別の機体なのだろうが、その見えぬプレッシャーが半端ない。

本来コッチはステルス、レーダーには捕捉されていない筈。
なのに視認すら出来ないブリザードの中、何故が迷うこと無く真っ直ぐコチラに向かってくる。


「―――クッ、完全に捕捉されてる!」

「―――アレは、この前模擬戦で戦ったマーティカとスィミィ・・・最後の第6世代[ラストオーダー]って言ってた娘だ。」

「!、まさか、イーニァがクリスカの居場所を感知できたように、マーティカとスィミィも、イーニァやクリスカを位置を感知できるってコトか?」

「恐らくそうだ・・・。
わたしにも漠然とだが向こうの存在が感じられるから、同じなのだろう。
・・・それに、彼女たちは既にプラーフカで融合人格になってる・・・、その融合率はわたし達の最大値よりも高いかも知れない―――。
それも・・・どこかヘン[●●]な違和感があるのだが―――。」

「!!、来るッ!」


イーニァの言葉の前に動いている。
イーニァももう意識の解放をして、オレの意識と接続している。
―――故に、動けた。



刹那、紙一重の銃撃。
そしてブリザードを衝いて現れた機体は、紅い塗装の、つい最近写真で見たばかりの試験機―――。


「!!、コイツがPAK FA・・・T-50かッ!!」


すれ違い様、鋭いモーターブレードの剣戟。
その一閃を弾くのが精一杯で、躱すことは愚か、透かしたり逸らしたりも出来ない!

大振りなSu-47と違い、大きさでXFJとほぼ同等。
潜り込む死角も見当たらず、そもそもその機動が―――疾いッ!

弾かれつつ、霞む視界にレーダーと同調、瞬く間に旋回する位置に合わせ、偏差射撃を試みる。
が―――、XM3正規版のアビオニクスをもってして当たらねェ!

レーダー捕捉を欺瞞するという第2世代アクティヴ・ジャマーかッ!
―――これがT-50―――!


クッ!
これは脚を止めちゃダメだっ、鴨撃ちされる―――。









ここ一連のブラフで完全にソ連の裏を掻いたつもりでいた。
ルートを東に取り、推進剤補充のついでに騒ぎを起こし、ソ連の哨戒部隊が米国そしてカナダとの国境線を封鎖するよう仕向けた。
範囲は結構な距離になるから、その動きに合わせ雪の中で移動する哨戒部隊をやり過ごし、逆方向である西[]に向かった。
当然哨戒部隊の殆どを3国国境線に集めることで、反対側は手隙になる。

戦域データリンクによれば、ソ連施設の襲撃は事故とされており、テロコードが解除されたため、既に米国側国境線には米軍が殆ど展開されていない。
それを確認したオレ達は、一路西側国境線を目指した。
ソ連領内でずっと侵犯機で居るよりも、視認される危険性が少ないなら、米国側の方が安全。
かと言って、推進剤が足りないときは、ソ連の哨戒部隊を襲うしか無いため、結局国境線を辿るのが一番効率が良い。

そうして、西に・・・クリスカとイーニァの故郷に少しでも近づく事にしたのだ。

どこまで行けるか不明だが、他に明確な目標はなく、クリスカに残された時間を共に居るための行動。
理由なんて、オレがそうしたいだけ、で十分だった。


―――だが、そんなオレの行動を予測している者が存在した。


一方はアルゴス隊。
見事な行動予測とアンブッシュ。
まあ CAP-RT[リアルタイム戦闘行動予測]とか在るし、それはオレもかなり使っていた・・・ってことは逆に予測対象データとしてサンプリングされていた可能性が極めて高いから、この精度は仕方ない。
それでもアルゴスの皆は、捕縛を強行しようとはしない。
飽くまで自主的な帰還を待ってくれている。


そして、もう一方が恐らくサンダーク・・・。
ヤツは哨戒部隊をコチラの思惑に乗ったように見せかけながら、一方でイーダル試験小隊を刺客にしやがった。
サンダークはオレが米国領に戻らないのを知っている。
ステルスである以上、通常の探索は困難―――故にカナダへの国境だけはガチガチに固めて行き場を無くし、マーティカ&スィミィのプラーフカ + T-50で正確にクリスカ達、ESP発現者をトレースする、と言う戦法に出てきたのだ。

勿論機密漏洩疑惑の状況が変化した今、米国側深くに逃げ込めば、或いはこの戦いは避けられる。
だが、それは同時にオレとクリスカの時間がその時点で終わることも意味する。

―――オレにとっては、それだけは絶対認められない!!
その為には、この刺客部隊を打ち破って押し通すしかないのだ。






間を稼ぐ。
高速のシザースから、漫然と切り替えし・・・。


「ダメェ!」


イーニァの静止が意識に突き刺さる。
その機動を咄嗟に中止すれば、切り返すはずだった空間を薙いで行く銃弾。


この距離、この視界でかッ・・・!
―――くっ、マジ、油断も隙もねぇ!!



ケッ―――、何しろ相手は“未来視”持ちだったな!


過去、レッドシフトの時のクリスカとイーニァの最大プラーフカは、唯依とのコンビネーションでどうにか抑えた。
そしてモニターで見たXM3との模擬戦、装備が非XM3ほど異なる状況下でなら、単騎でも圧倒できることを唯依が証明していた。

しかし、横浜で治療し復帰して戻ってきて以降、かなり自在に最大プラーフカと同等の、彼女たちが“合一”と呼ぶ状態維持が出来るように成っていた二人とは、まともに戦ったことがまだ無い。
―――が、トライアルの合間に軽く手合わせして感じた限り、おそらく“未来視”を全開にした二人には、1on1で敵わない可能性が高いことも予想していた。
装備もXFJ-01、OSもXM3正規版となった今、二人に勝てるのは多分、“レベル5er[ファイヴァー]”を超えた“限定解除[アンリミット]”保持者のみ。
正確には、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”と、表向き明示していないが、“御大[Great Colonel]”くらいだけじゃないだろうか。
そして、今クリスカやイーニァが感じているこの相手は、二人の最大フラーフカ時を上回る予測能力かもしれないと言う。


今のイーニァはオレと“接続”はしているが、クリスカと“未来視”できる“合一”状態に入っているわけではない。
そもそも操縦桿[スティック]はオレが握っていて、移る暇も無い。
イーニァの警告は、マーティカとスィミィの動向を把握しているだけなので、どうしても応答が遅れる。
オレとの接続、相手の動向把握・・・2つので能力を割り振っている今、“合一”が出来ていない。


「ユウヤッ!」


ズガガガッッッ!!
イーニァの警告にも、機体が激しく振られた。

ちッ―――被弾ッ!!

注意してたってこれだ、
―――右肢20%。
噴射跳躍を使う限り問題はないが、切り替えし動作が制限されるのは地味に痛い
コッチはステルスだってのに平気で当ててきやがる!

これでも相手はLTEだからアクティブ・ステルスが有効なのだ―――と言うか故に救われているとも言える。
彼女たちの予知能力は、アビオニクスに直結していない。
飽くまで個人の感覚に頼るしかない、とクリスカに聞いた。
コレがもし、アビオニクス連動でもされた日には、一撃で決まるだろう。
相手がアクティブ・ステルス無効の正規版だったら、今ので墜ちていたと言うことだ。


「―――ダメだッ!!
二人の並列同調効果[ナストロイカ]が強すぎて、介入できないッ!」


一方で同じく“合一”に能力をふっていなかったクリスカはクリスカで、マーティカとスィミィの“同調”に介入を試みていたらしい。

その事に意識を向けた一瞬、回避が遅れた。



こちらの間合いに外連無く滑り込むT-50。

咄嗟に出した突撃砲ごとモーターブレードに弾き飛ばされる。


「―――クアッッツ!」

「!、止めて、マーティカッ!!、ユウヤが死んじゃうッ!」


避けられないと判断し、反射的に噴射跳躍を合わせて衝撃方向に敢えて跳んだ。
それでも咄嗟に盾にした哨戒部隊から奪取した突撃砲が使い物にならなくなった。
―――まあ、いい。
ソ連製で元々マウント機構ともシックリしなかった装備。
左手にも昨日苦労して研いだ長刀を抜く。


「!!―――マーティカは必死にスィミィを留めているッ。
でも、幼いスィミィには、ユウヤに対する恐怖しか無くて!
抑えが効かない!」


今の接近で相手の状況を察知したのか。

・・・なるほどなぁ。
一昨日の襲撃時、その印象がトラウマになっちまったか。
だが恐怖に依る防衛反応だろうが、戦術機の攻撃は剣呑、当たれば当然ただじゃ済まない。

機体性能で言えば、同等か、寧ろ僅かだが向こうが上。
低速域では特に・・・。
コッチのアドバンテージは、特化した高速域しかない。
―――が、“未来視”持ちに高速機動はリスクが高すぎる。
高速になれば成るほど回避の範囲が狭くなる。
“未来視”で精度が格段に上がる偏差射撃は脅威だ。

―――通常機動で上回るしか無いってか・・・。

だが、今でも意識を重ねたイーニァに頼っている状態。
未来を見ている相手は、ソレよりもさらに早い!

―――このままじゃジリ貧・・・八方塞がり・か・・・・・?




「・・・イーニァ、横浜で純夏と遣ったこと、覚えてるか?」

「ウン、覚えてるよッ!」

「・・・その時、霞が遣ったことは、―――出来る?」

「―――遣るッ!」

「?!―――」


オレの思考をリーディングしていたのか。
打開策が在るなら、ウェルカムだが。

二人が突然頭に付いていた制御装置を引き剥がした。






驚きに声を上げる間もなく、繋いでいたイーニァからイメージが流れてくる。


―――ユウヤに。


そしてイーニァに接していた意識が、一気に“中”に引き込まれていた―――。


ウワッ―――・・・・・・これは―――!

一体なんと表現していいのか・・・。


既に “合一”していたのだろう、その“中”にはイーニァだけでなく、クリスカをも感じる。
取り込まれたオレ自身の自我・・・ “個”を仕切っていた“境界”は、昇華していく水面の如く、淡く掻き消えるように崩れた。

触れる側から融合する意識―――。

それは―――個でありながら全、全でありながら個・・・。


―――あァ・・・。

まるで世界をも取り込んだような一体感。

思うこと無く融け合うクリスカの意志、イーニァの希望。
これが、以前聞いたクリスカの言葉。
違いや、自己の差―――。
二人に包まれ、そして二人をも包む今の感覚。
溶け合い、混じり合い、自己の境界すら霧散していく。
真の相互理解。
この“知覚”や“思考”ですら、“個”のものとは言えず、クリスカとイーニァとも共有している。


そして確かに感じる“未来”―――、初めてそれが認識できた。
―――視える。
確定した未来情報という“世界”。


これは・・・。

こうして見れば、今の状況だってスィミィが実戦不足で、垣間見た未来を忠実に再現できなかったから助かっていたのだと判る。
さらにマーティカがそのスィミィをなんとか抑制してくれていたからどうにか均衡を保っていたのだと。




――――――それらの事象と理解が、ほんの僅かな時間・・・刹那の間に生じていた。






意識を向けるまでもなく、視えた未来に姿勢を変える。

確かに戦闘に於いて、この情報を一方的に得るアドバンテージは計り知れない。
余程の技量差、一世代分の機体性能差が無ければ、引っくり返すコトは出来ない。


だが―――今なら条件はイーブン!



見える銃弾の射線を避け、懐に飛び込む。

ギェリィィィィンンン――――!!

互いに長刀とモーターブレードが弾けた。




“未来視”。

確定した未来、とクリスカは表現したが、より正確には、“その瞬間から帰結する未来”なのだろう。
と言うのも、そこに至る自分の動きを変えていくことで、けれど相手の動きもまた変わり、ソレに連れ、視えている“未来”もまた変化していくからだ。
その変化は遠い未来ほど大きく、近い未来ほど小さい。

つまりは、“未来視”同士の戦いは、先の先を予測する、究極の読み合い。


何度でも仕掛ける。

徐々に弾かれる量が少なくなる。
先刻までなりふり構わず防御に振られていた姿勢にも、ようやく余裕ができてくる。


変化する相手と、変動する未来に合わせ、機動を詰めて、詰めて詰めて、更に詰めて、結局双方決定打とはならず、互いの刃を打ち合わせて互いに飛び退く。



まだ、わずかではあるが“未来視”は向こうのほうが上らしい。
実現した結果が予測とほんの僅かずれる。
それでもその差は矮小!


呼び合うように再びの接近。


ギィィィィーーーーーンンン!!!


そこからの変化にも、“未来”は対応し、互いに一歩も譲らず。



けれど取り得るバリエーションは、コチラが上。
当然それには戦闘経験や、機動理論に基づいたものである。


この状況では、突撃砲のアドバンテージが無いと見たか、モーターブレード一本に絞ってきた。

弾かれては寄り、寄っては弾き、何度も刃を交える。

その中に、一つとして単なる攻撃はない。

そのどれもが十重二十重に“未来”を重ねた“結果”。


読み合い・・・しかしそれは心理戦ではない。
相手の意識や思考、狙いを読んでいる訳ではないのだ。
飽くまで視える未来は、“事象”。
こうしよう、と思っただけでは未来は変動せず、機体の動きを変化せせることで初めて未来が変化する。



それは一撃一撃が相手を凌駕しようという研ぎ澄まされた一手でありながら、一種完成された舞踏の様な、完璧な殺陣の様な、そんな戦い。




その中で、徐々にだが、気付いたこともある。

あの時・・・ハイネマンのおっさんの、E-M機動理論による分析を聞いていてマジ良かったと思う。
応答速度が、2次元機動は確かに向こうの方が疾い―――と言うことは此方が勝てるとしたら3次元―――。


この予定調和に嵌った状況を毀すには、要は相手が・・・正確には機体が応答できないタイミングで動作を変化し決着を変える必要がある。

意識をクリスカとイーニァに向ければ、即座に頷く感覚が返ってくる。


―――仕掛ける。


相手の攻撃に発展する芽を先んじて尽く潰す。
幾つかの攻撃パターンに誘導、それを折り込みながら何度も激突し、弾かれる。


しかしこのT-50、ぶつかっても剛性感が半端ない。
さすが頑強をもって鳴るソ連の最新鋭機―――。
それに比して、コチラは “合一”するまでに受けた被弾が徐々に、けれど重く伸し掛る。
同じ動作にも、僅かな歪みが出始めていた。


その歪こそは、彼女[スィミィ]が自分で作った勝機―――。
やっと見つけた“怖い相手”の僅かな綻び―――。

だからこそ疑わない。

膠着した千日手にも思える“未来視”の応酬に、見出した一筋の“勝ち筋”に乗ってきた。




勝敗は刹那の差―――。



繰り返された斬撃―――。
だがその終端に傷ついた機体ゆえの応答遅れが出る!

“未来”が歪む。

“勝機”に固執した相手。


その瞬間、今まで何度も繰り返し行って来たサーフェス機動から、全く変え、縦にロールを敢行。
それでも、見えた“隙”に追従したT-50は追随、故にXFJ-01の小半径バレルロールと高速スピン―――3次元機動に遅れた。

それは言うなれば経験の差。
生死を潜り抜けた者達と、まだ無垢な怯えるだけの幼子―――。
焦りから勝機に縋り、未来を見失った者と、未来予測の変化をも予見した者、それが応答の差を生んだ。


その瞬間、正面には、“未来”を見失ったT-50の機体が無防備な“腹”を晒していた。



2騎が交差した瞬間、今まで一度も使っていなかった左の長刀が、空間を薙いでいだ。








荒い息。
強化装備で強制除去されているにも関わらず、全身に感じる脂汗。

“合一”が解かれると、隣でクリスカが崩れる。
強化装備、そしてハーネスが最高レベルの物でも、サイドシートやバックシートでの戦闘機動は厳しいはず。
特に体調の悪いクリスカは!

慌てて顔を覗き込めば、潤み切った瞳に、上気した頬。
見ればイーニァもバックシートに突っ伏していた。


「―――ナストロイカ・・・“合一”は、一方で脳内麻薬物質の分泌を促進させるのだ・・・。
それも、より未来を得ようとするほど、その度合は昂るのに・・・。
・・・貴様は、初めて[●●●]の相手に無茶[●●]させるのが趣味なのか?」


甘く睨まれながら、昨夜も何処かで聞いたセリフ。
勿論オレだって“合一”も初めてだ。
過去のプラーフカでも二人はケラケラ笑っていたし、オレ自身何故にこんなにハイ[●●]なのか理解した。
無茶させたつもりは無かったが・・・けれど、“初めて”であの機動は無いらしい。
・・・あとからイーニァにもプンスカ怒られた。


だが、今はそれを斟酌している暇は無い。
斬ったのは腰なので、管制ユニットは被害がないはずだが、お互いそれなりのスピードは出ていた。
当然地面に叩きつけられれば、相当の衝撃はある。


管制ユニットを飛び出し、ひしゃげたT-50の胸郭に飛び乗ってハッチを開ける。

中には、マチカ、マチカァと泣きながら丸い器に抱きつく白い少女。
後部シートに設置された丸い器は、クリスカの拘束されていた手術室で見た“繭”そのもの。
その時は余りの悍しさに破壊して来たのだが、当然予備も在ったのだろう。
瞬間、オレは理解してしまった。

スィミィは背後のオレたちに気付くと、今度は背中で“繭”を庇うように、ヴ~~~と唸り、涙ぐみながら睨みつけてくる・・・。

この絵面では、完全に悪役はオレ達の方だった。




「・・・ユウヤ、銃を貸してくれ。」

「・・・!!ッ」


それがクリスカの覚悟だとでも言うのか?


「・・・マーティカは、この姿をユウヤに見られたくないと言っているんだ・・・。
そして、この姿でこれ以上生かされるのはイヤだとも・・・。
―――出来れば、見ないでやって欲しい・・・。」

「―――かと言って、スィミィも殺すのか!?」

「・・・・・・。」


悲しそうに微笑んだクリスカは、しかし口をつぐんだ。


コレはクリスカが陥りかけた深淵の底なし沼―――。
代わりに受ける事になったのがマーティカなのだろう。
そして、それを予期していたから、マーティカはオレの前に立ちふさがり、オレに“殺される”コトを望んだ・・・。
今、クリスカを止めここに残せばあの忌々しいベリャーエフが回収してまた使う―――。


―――クソゥゥゥゥッ!!

鼻柱を折る程度じゃてんで甘かった―――。
こんな事になるなら、一思いに殺しておけばよかった・・・。
オレが、オレが甘かったばかりにッ・・・!!


状況を知っている今、殺すのは余りに忍びない。
だが、マーティカやクリスカの覚悟にもまた抗えないものがある。


その時、イーニァが叫ぶ。


{!!ッ、ユウヤ、この戦術機、S-11が搭載されてる!
起爆・・・ロック・・・ッ!!
―――時限装置が作動してるッ!」

「なにィ!?―――退避するぞ、急げッ!」


ちィ―――ッ!
ヤリやがった!!
サンダークの奴、結局全部吹き飛ばすハラかッ!

―――間に合うのか!?









ブリザードが支配する荒野の白き闇を、一瞬、埋め尽くすような光が閃いた。

周囲に迸った光は、けれど吹き荒ぶ地吹雪は直ぐに何も無かったかの様にかき消され、爆風で均された大地は吹き飛ばした雪をも伴って、即座に再び全てを白く染めてゆく―――。


Sideout






Side イェージー・サンダーク

ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室 17:32


「!・・・S-11起爆確認―――。
идол[イーダル]-X1〉パイロット、共にバイタル途絶。
неизвестный[UNKNOWN]〉ロスト・・・S-11の爆発に巻き込まれたモノと推測されます。」


淡々と告げるCP。


[]ぜだ・・・?
идол[イーダル]-X1〉の融合率は99%[]迄達していたと言うの[]ッ!
あい[なに]が起きたッ!?
あ、あ[]男は、未来を覆せるとでも言うのかッ!!
“繭”が!、わ、私の“繭”がぁぁッッ!!」


隣でわめき散らす男が欝陶しい。
―――が、これで私の目的は達せられた。
T-50の限界機動性能確認、そして領域侵犯機の殲滅。
ついでに言えば、これでПЗ[ペー]計画の終了も宣言できる。
フェインベルク現象を発現できる可能性がある第6世代の予備は、―――もうない。

―――しかし、ユウヤ・ブリッジス、99%にまで達したフェインベルク現象発現者を相手に、土壇場であのパフォーマンスを魅せるか。
ほんの戯れに、自爆まで僅かなタイムラグを設定しておいたが、逃げ延びたか否かは貴様の運次第。
巻き込まれる程度なら、所詮そこまでの存在。
・・・お互い、悪運に恵まれれば、何れまたまみ[]えることも在るかも知れんな。
―――それを楽しみとしよう。




イベントの完了した統合司令室を離れ自らの執務室に戻ると、盗聴器のチェックを行ってから秘匿通信を繋いだ。


「私です―――限界機動性能評価試験、只今終了致しました。」


「―――は。
今回の計測は、現状で考えうる最高の機動データと言えます。
これ以上は、たとえ“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”を評価対象[T-50]に載せても、叶わないかも知れません。」


「―――は、勝敗は衛士の差であるとの解析も完了しております。
ПЗ[ペー]計画のラストオーダー、確かに最高レベルのポテンシャルを有して居りましたが、反面稼働年数が極めて少なく、戦闘経験は殆どないことから、取り得る戦術の選択肢が少なかった故の敗北であります。
評価対象[T-50]そのものの機動性としては、寧ろ比較対象[XFJ-01]を凌駕して居たのは明白であります。」


「―――は、つまり評価対象[T-50]が、最初の第4世代機と言われる比較対象[XFJ-01]同等以上であることが確認されました。
今回の機動データは決して表には出せませんが、幾つかの僥倖が重なった最高の条件、2度と同じ状況は作れないでしょう。
試作機1機を賭ける価値が十分に在ったと結論しております。
実際比較対象[XFJ-01]には、これ以上の拡張性など望めませんが、評価対象[T-50]はまだまだ実証機段階、このデータを元に更に洗練されるコトが期待できます。」


「―――は、上層部が危惧しているステルスに関しましても、我が邦のアクティブ・ジャマーは、XM#正規版に対しても有効であることが確認されております。
対してアクティブ・ステルスに関しては、正規版にてその効力を失うことが確認できました。
勿論XM3正規版の入手については現在未定ですが、先行的には、既にペトロパブロフスク・カムチャツキー国連基地の所属中隊に導入されておりますので、その一部を流用することは可能であると愚考しております。
F-22Aの形状ステルスに関しましては、既に幾つもの対策が始められておりますのでご心配は無用です。」


「―――ПЗ[ペー]計画は既に死に体です。
計画は終了しますので、今後は僅かな残滓を運用することしか出来ません。
閣下の計画に影を落とすことは在り得ません。」


「―――は、手筈通りに。
では詳報をお待ちください・・・アターエフ准将、では。」



・・・同志ロゴフスキー、悪いが私が貴方に遺すのは“カス”だけだ。
そのリスク回避のノウハウ含めて勉強はさせて頂いた。
そしてПЗ[ペー]計画が為した“粋”は全て私が戴こう。


Sideout



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