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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 17:15
'15,07,10 upload
'15,10,07 誤字修正



Side ユウヤ


「・・・ユウヤぁ―――。」

「ああ・・・。
けど、気にすんな。」


不安げなイーニァを抱きしめる。

21:30―――。
終演の[アラート]
本来ならギリギリセーフなのだが、もうシンデレラタイムには間に合わない―――。



あの後、強襲した実験棟に潜入、イーニァのプロジェクションでナヴィゲートしてもらい、手術室の寝台に固定、放置されていたクリスカを無事回収。
医師や研究員は、案の定クリスカの保護など全く頭になく、強襲のサイレンに逃げ散っていた。
スクランブル後、迫ってくる哨戒部隊からブリザードとステルスを頼りに、間一髪、北に抜けた。
強めの噴射跳躍を使ったから、偵察衛星のIRサーチには引っかかったかも知れないが、データリンクで確認しても、今現在NORADの情報は何故かロックされている。
今は、林に身を潜め、麻酔から覚めないクリスカに強化装備を着けてもらっていたところ。

何せ、国境線には哨戒部隊とは別に、既に警備部隊も展開していた。
襲撃の警報と同時に基地全体にテロ発生のコードが流れたのだ。
ユーコン基地の警備は、米国・ソ連の両国、それに国連所属の警備部隊は合わせて3大隊が在り、テロ後暫くは欠員もあったのだが、プロミネンスがXM3の頒布窓口となって以降、即座に再編されていた。
警備部隊枠には最優先でLTEが導入されるメリットも在ったからだ。
その内各々2個中隊が既に出撃、計72騎が犇めく国境方面、行きたくても近づくことも出来ない。
テロの教訓が生々しい今、まだまだ反応は過敏で且つ過剰でもあった。

当初予定に於ける戻り30分と言う見積もりは、こんな状況下での数字ではない。
この警戒を掻い潜って刻限までにリルフォートに戻る時間は、最早無かった。


―――というか・・・。

既に戻る気そのものが失せていた。



マーティカの話が真実ならば、クリスカに残された時間は残り少ない。
聞いた限りベリャーエフも否定しなかった。
信じたくはないが、ПЗ[ペー]計画の今までの遣り口を見れば、真実である可能性のほうが高いと言わざるをえない。


自壊プロセスの発動―――。

既に開発者のПЗ計画でも“繭化”以外手立てがないと言うのなら、戻っても米国がどうにか出来るとも思えない。
そして戻れば、恐らくクリスカとは物理的に離される。
クリスカ達に対する機密漏洩防止措置を知られたら、その延命だ、証拠固めだ、サンプルだと言って、検査・観察され、挙句死亡した後は解剖と言うコースもあり得る。
そうなれば2度と会えなくなるのは明白だった。

残されたのは僅かな時間・・・。
その間、ずっと一緒に居るためには、戻るという選択肢は無い。



そもそも―――この選択が正しかったのか。

今もオレには判らない。
だが、マーティカの誘いに乗っても、言うような状況には到底現実感が湧かず、碌な未来は描けそうにない。
どちらも迷うのなら、少なくともこのXFJ-01をソ連に渡すようなことだけはしない。
他の全部を投げ捨てる選択をしていながら、開発衛士の矜持だとか言うつもりはサラサラないが、裏切者にだけはなりたくなかった。




『聞こえるか、ユウヤ・ブリッジス―――。』


な?
秘匿回線ッ!?
この声・・・サンダークかッ!?

レーダーには北西から接近しつつ在る機体が1騎―――。
そうか!、テロの時の交信記録から・・・、ってこの天候で、セラウィクからもう帰ってきたのか!?


『・・・聞こえているのだろう?
投降しろ―――、いや、コチラに帰順しろ―――。
決して悪いようにはせん―――。』


・・・此方の位置を完全に特定しているわけではないらしい。
ゆっくり哨戒しながら近づく角度が、僅かにずれている。
が、展開している哨戒部隊の配置や、国境線の警備から離脱方向を見極められた・・・と言うことなのだろう。
悪いことに、今は雪が少し薄くなり、視界が確保しやすくなっている。
上空は未だ厚い雲だから監視衛星の可視光映像にはまだ映らないが、戦術機相手だと視認される。


『・・・考え直せ、ブリッジス・・・!
マーティカ・ビャーチェノワ少尉の言ったことは真実だ。
その者達を救うたった一本の細い途は、既に“繭化”しか残されていない!
それも今しか無いのだぞッ!!

ビャーチェノワに施された機密漏洩防止措置の存在自体をブラフと見做しているのかも知れんが、考えてもみろ。
ベリャーエフは兎も角、私に取ってはその者達は既に“亡き者”、その生死に興味はない。
だが、このまま自壊プロセスが進行してビャーチェノワが死亡すれば、貴様を引き抜く機会は永久に失われるだろう。
その瀬戸際、今、だからこそ交渉しているのだ。』


そう言う賭に出たということは、クリスカが手遅れ[●●●]ってのは本当ってコトか・・・。


「・・・そして、今度はオレを同じような措置で組織に縛り付けてしまえば、アンタのスキに出来る・・・ってコトか。」

『・・・沈黙を破ったと思えばソレか―――貴様は2つ意味で誤認している。』

「なに?」

『貴様はXFJ-01を直々に貸与されるほど、御子神大佐に認められている。
例え、それが陽動やプロモーションの意味合いが強かろうが、気に掛けられているのは確実・・・。』

「・・・。」

『その謂わば“愛弟子”が、我が邦に帰順後理不尽な扱いを受けたら、大佐が黙っていると想うかね?』


オレなんかに“御大[Great Colonel]”が本当にそこまでしてくれるかどうかは全くの不明だが、少なくともサンダークにそう意識させるだけの庇護は帰属後も継続する、と言うわけか。


『そしてもう一つ・・・、遺伝子操作技術はそこまで融通の効くモノではない、と言うことだ。』

「・・・・・・。」

『機密漏洩防止措置とて、細胞分化の最初期、複製胚の段階だからこそ遺伝子操作が可能なのだ。
分化が進み、成熟した成体の持つ60兆もの全細胞に、短時間で遺伝子操作を施す技術は、未だ確立されていない。』

「・・・・・・、」

『もちろん、ベクター等を使って細胞に遺伝子を転写することは可能だが、細胞の分裂に依る更新がなければ、転写した遺伝子は発現しない。
この細胞の更新周期はまちまちで、中には一生涯更新されない細胞も多々在る。

つまり、後付の遺伝子操作で、貴様を縛る鎖など作れない・・・と同時に複製胚の時点で施された遺伝子組み換えを、完全に取り除く技術もまた無い・・・ということだ。』


・・・チキショウ―――。
結局オレを縛るコトは、技術的にも庇護的にも出来はしないが、クリスカやイーニァを生かし続ける為には、どうあってもПЗ[ペー]計画の下に居るしか無い、ってことか!


『放っておけば・・・その者は直ぐにでも死ぬ。
自壊プロセスが発動したら、遺伝情報を有している我々でももうどうすることも出来ない。
今のうちに、健全な脳神経系を保全するしか手は無いのだ!』

「・・・御子神大佐に全部譲渡したんじゃ無かったのか!?」

『・・・機能保全のための周辺施設の譲渡までは要求されていない。
それは指向性蛋白の情報も含まれる。
寧ろ、“繭”も“白き結晶”も要らないと大佐は言った。
つまりは延命措置と成り得る付帯設備や、遺伝子の基本情報も必要ない、と大佐自らが言ったのだ。
詭弁と言われようが、この点については要求されたのは飽く迄“身柄”のみ。
大佐は自身の言葉を翻したりはしない。』


状況からの行動予測と、カンを頼り少しずつ近づいていたサンダーク。
むしろ動けば捕捉される危険が在ったためじっとしていたが、視界の隅に国連ブルーを視認したらしい。
動きを停めた。


『・・・・・・やはりXFJ-01―――。
―――なるほど、貴様の杞憂はソコ[●●]か。』

「・・・なにッ!?」

『このまま我が邦に帰順すれば、まさに日米の軍事機密の粋であるXFJ-01を敵に譲り渡した裏切り者。
そしてXFJ-01にステルス機能が搭載されている、と知れれば一度は政治決着した機密漏洩疑惑に決定的な証拠を与える・・・と言うわけだ。』

「・・・チッ!」


ちゃんと裏まで知っているってコトか!


『―――ならば、それについても対処を約束しよう。
私自身XFJ-01には、それ程の興味を感じない。
それを熟成した貴様の手腕をこそ買って居るのだ。』

「な・・・?」

『なに、某顧問[●●●]から売り込みが来ているのでね。
貴様が帰順するなら、XFJ-01には手を出さず、秘密裏に戻すことを約束しよう。
・・・いや、それが信用できないなら、いっそ貴様自身がアルゴスの野外格納庫に持って行くと良い。』

「・・・は?」

『ビャーチェノワ少尉を我々に預けて、演習地区に戻り貴様の筋書き通り救難信号を発するが良い。
ビャーチェノワ少尉さえ騎乗していなければ、幾らでも言い訳が出来るはずだ。』

「・・・・・・!」

『ビャーチェノワ少尉についてはコチラで“繭化”を進めるが、これは緊急を要する避難的な措置として一時的に我慢して欲しい。
即刻“繭化”しなければ、その者は永遠に失われる。
その後のクローン細胞による身体の再生を約束しよう。
・・・或いは、これも“横浜”の技術が借りられれば、より良いだろう。
“譲渡”したビャーチェノワの再生と言えば、大佐もNOとは言わない。

ヒトゲノムの解析に依る自己細胞再生・・・これも基はといえば“横浜”から提供された技術だ。
今回、我々には不可能だった広範囲の脳神経細胞修復を行った“かの地”なら、ビャーチェノワの再生が可能だと踏んでいる。
勿論、―――指向性蛋白の情報も提供しよう。』

「・・・・・・。」

『更にビャーチェノワ少尉の行方不明については、機能障害発生の緊急救命措置として、対処可能な施設に一時収容したことをプロミネンス側に伝える。
査察が始まる22:00以前・・・今ならまだ間に合う。
22:00を過ぎると連絡が無かったことが不自然となり、内容の開示等求められるから、此方の機密漏洩防止上応えられず、こじれる可能性が高い。

貴様たちは一度アルゴスに戻り、そして機を見てソ連側に入り込み亡命という手続きを取れば良い。』


・・・クソッ!!
一旦戻れはするが、クリスカの身柄を押さえられている以上、否応無しってコトじゃねェか!

けれどサンダークの提案が二人を救う最も確実な途なのは、理解できる。
XFJ-01のコトも、確かにこの提案ならトラブルを全て回避できるのだ。
クリスカの緊急措置についても、ПЗ[ペー]計画ではなく、“横浜”との内容にしてしまえば、プロミネンスも米国も、口を出さない。
何よりも、オレやクリスカ、そしてイーニァは安心できる・・・と言うことか。


うぐぅ・・・。
さすがマーティカの親玉―――。
マーティカの提案でも一瞬グラッときたが、サンダークは更にガクガク揺さぶってきやがる・・・!


「・・・その言葉が真実だと、どうして信用できる?」

『我々の欲しいのは、ユウヤ・ブリッジス―――貴様なのだ。
ビャーチェノワもシェスチナも、一度は諦めた存在、私に取っては貴様という逸材の付録に過ぎない。
そのモノ達が欲しいだけなら、こんな面倒な提案はしない。

そして今後御子神大佐の齎すであろう技術・・・。
それは次世代、次々世代の戦術機に繋がる技術である。
その開発において、貴様のXFJに於ける功績・経験は何よりも得難い珠玉なのだ。

貴様が納得し、自分の意志で来るので無ければ、真の協力は得られないだろう。
何なら、横浜との交渉が完了し、“繭”からビャーチェノワの復帰が見込めるまで、貴様の亡命は延期しても良いのだぞ?』

「・・・ベリャーエフや、ПЗ[ペー]計画の干渉が無いと言い切れるのか?」

ПЗ[ペー]計画は、間もなく打ち切られる。
貴様たちは、実質新たな戦術機開発に携わることになるだろう。
これ以上の干渉はないと約束しよう。
唯、ブリッジスについては、計画の遺児たちについても面倒を観てもらうことになるかも知れん。
“触媒”と言う事についてもマーティカに聞いたはずだ。
無論、そのマーティカも貴様に譲ろう。』

「・・・・・・。」

『―――アレは理解している。
貴様を引き込めなかった場合、ベリャーエフやロゴフスキーはその責任を私や彼女に被せるだろう。
そうなれば、最早彼女に未来はない。』

「―――!!」

『・・・哀れな彼女を救ってやれるのも、貴様だけだ。
皆―――全て、貴様のモノ[●●]だ。』




―――ああ、よく判ったぜ。
お前らみんな同じ思考をしやがる・・・ッッ!。

人はモノじゃねェ・・・!
テメェがその意識でいるかぎり、何も変わらねェってな!!



「・・・だが、―――断るッ!!」

『―――馬鹿な事を・・・。

―――自壊まで数日しか残されていないのだぞ!?
全身の細胞が壊死し臓器の崩壊を伴う、極限の苦痛だ・・・!!
―――貴様はそれを・・・ビャーチェノワに強制しようというのかッ―――!?』

{フザケンなッ!}


やっぱり、一発お見舞いしないと腹の虫が収まらない。


ガキンッッ!!

刹那の抜き打ちにも、反応したサンダークに弾かれる。
なるほど、衛士としても一流。


「―――都合のいい責任転嫁してんじゃねェッ!!
クリスカやイーニァをそんな状況に追い込んだのは他ならないテメェ等じゃねェか!
テメエにクリスカをどうこうする資格なんか、ねェ!」


追撃。
一合い・・・、二合い―――。


『資格だと?
フン・・・、その者達は我が妹のなれの果て・・・。』

「!!・・・けッ! 重度のシスコン野郎かッ!!
妹だろうが、母親だろうが、その人の人生はその本人のモノだ!!
遺された細胞を弄って、報われない魂を量産し、その死を冒涜してんじゃねェッッ!!」

『!!クッ―――、BETAとの戦いは、そんな生温い戦いではない!
―――BETAの殲滅こそが我が妹の悲願・・・その為に託された“遺志”そのものだッ!!』


モーターブレードを弾き飛ばす。


「―――ああ、オレも思ったさ、カムチャッカやレッドシフト・・・コイツは半端ねぇってな。
人間性を踏みにじるのも、その勝利のためなら仕方ないかも・・・とな。

―――とんだ思考誘導詐欺だったぜ。

御大[Great Colonel]”に関わって、そして今回“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”に逢って、そんなの嘘っぱちだと、結局は悲劇を利用した権力者の都合の良い解釈だと理解したぜッ!」

『!!ッ・・・・・・“御大[Great Colonel]”・・・御子神大佐か・・・。
―――なるほど、かの者なら今の閉塞した状況を、或いはひっくり返す準備をしているのかも知れぬな・・・。』

「・・・サンダーク、[]てめェの言う言葉に嘘はないかもしれねェッ!
アンタの提案は、極めて現実的で妥当。
確かにクリスカは助かる可能性が高いし、示される未来は魅力的でもある。

―――けどなァ、アンタの国は、それこそそんなに甘い国かァ!?」

『―――ッ!!』

「それがクリスカを救える唯一の途かも知れないが、それ故に利用される可能性のほうが遙かに高い。
やる気もない“繭からの再生”を餌に、そしてその次は“指向性蛋白”の為に、次々と要求を飲まざるを得ない可能性がなッ!

確かにПЗ[ペー]計画は終わるかもしれねェが、ソビエトと言う国の、腐りきった権力構造が変わる訳じゃねェ!
目先の利に走り、踏み出せば底なし沼に嵌る、2度と抜けることの出来ない深淵の底なし沼にな!

そんなところに帰属するなど、有り得ねェんだよッ!!」

『・・・・・・。』

「・・・応えの無いのは、自分でも在り得ないコトではないって思うんだろ?」

『―――では、どうすると言うのだ!?
既に刻限は迫っている。
今からでは私の協力なしに米国にも戻れず、そしてソビエトにも帰順しない。
行き場など無い、ただ逃亡兵となって流離うしかないのだぞ?
しかも、米国にもソビエトにも行ける条件でありながら貴様が自らの意志で逃亡兵と成れば、流石の御子神大佐でも庇護はするまい・・・つまり領域侵犯者として殲滅されるのだ。
米国、ソビエト・・・何れに於いても約束された輝かしい未来を蹴って、人形一体、女一人のためにその全てを捨てると言うのかッ!?
全てを断ち切れば、その女も、間を置かず死ぬというのにッ!?』

「・・・コレばっかりは自分でも可笑しいとは思うがな、所詮これがオレの生き方だ。
元より大佐の庇護を頼って逃げる気もサラサラねェ!

カムチャッカやこのユーコンでも米国内に居たら絶対に知ることが出来なかった“現実”って奴を嫌って言う程認識した。
オレは、BETAに食い散らかされるこの地球で、輝かしい未来なんて戯言に全く魅力や現実感を感じられねェのさ!

その中で、何よりもオレが大事にしたい女の"今"が、最優先事項だッ―――!!」


瞬時の噴射跳躍による接近。
一瞬の強い風と舞い上がる地吹雪を見逃さなかったオレと、その背後からの風に気づかなかったサンダーク。
刹那奪われた視界と、レーダーの効かないステルスによりサンダークの反応は遅れた。


「ベリャーエフとやらには、キツい一発をお見舞いした。
アンタにも一発、―――呉れて遣らァ―――ッッ!!」


ブラフの一刀を反射的に逸らした相手に、そのまま突っ込んで肉薄する。
通常は長刀もモーターブレードも近すぎて振るえない超クロスレンジ。
その急接近に危機を覚えたか、緊急退避しかけたSu-37の下肢に、踏み込んだ脚を掛ける。

ガツンッ!

過大なモーメントを発生した機体はもんどり打ち、自分の推力で宙を舞う。
添えた前腕で肩口を引き込めば、姿勢制御をしようと反転した噴射跳躍ユニットの推力と重力が相まって、頭から背にかけて地面に甚だしく激突した。


『―――グ、ブァッ!!』


投げに柔道の要素の取り込んだMACROTで言う、“大外車”から“隅落し”へのコンボ。
刃のない長刀では仕留め切れないし、かと言って戦術機でブン殴ると此方の機体損傷も洒落にならない。
制御ユニットに当たれば本気で致命傷になる。
・・・クリスカは、きっとそんなこと望まない。

それでもこのコンボが綺麗に極まると、搭乗者は制御ユニットの背面に強烈に叩きつけられる。
強化装備を付けていてさえ、喰らった瞬間は死ぬかと思うほどの呼吸困難と、運が悪ければムチウチ症、酷い時には脊椎損傷に寄る半身不随も引き起こす。
雪がクッションにはなったはずだが、結構本気で掛けた。
大佐に、ムチウチにならないギリギリのを何度も喰らったからなァ・・・。


勿論、次の瞬間には離脱を掛けている。


「・・・悪いが、クリスカとイーニァはオレが連れて行く。」


遠巻きの哨戒待機部隊―――ソビエト陸軍第231哨戒中隊がサンダークの撃墜と同時に動き始める。
12騎の近接格闘に特化したMig-29はヤバい。
落下の衝撃にまだ息が出来ず返事のないサンダークに捨て台詞を落としながら、視界が遮られているうちに白い闇に紛れる。



もうココには用はない。
この二人と一緒なら、それでも良かった。

サンダークもクリスカ拐取の事実が在る以上、襲撃は公には出来ない。
このまま消えれば、正体不明のテロリストとして存在を消し去る事を選択しただけだ。



はぁ―――。


ウェラーに示された平穏で輝かしい未来など、所詮オレには無縁だってコトだな。

・・・さて、何処に行くか・・・な。


Sideout





Side イェージー・サンダーク

ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設 22:30


その通信が入ったのは、医療センターから自分の執務室に戻った時だった。

ズキリと頸が痛む。
外傷性頸部椎間板ヘルニア・・・か。
重症とは言えないが、今後の予後次第では麻痺も発症する可能性も在るとか。
遣ってくれたな・・・。


『どういうコトなのだ?、同志サンダーク。』


相変わらずの粘着質な話し方。


「―――どういうこととは、何のコトを仰っているのでしょう?、同志ロゴフスキー大佐。」

『・・・何故、あの機体を取り逃がしたのだッ!?』

「・・・意味がわかりかねます。」

『ステルスを装備した機体だッ!
あれが手に入れば、人形の奪還よりも遥かに大きな功績と成ったものを・・・。』

「・・・同志ロゴフスキー。」

『・・・なんだ?』

「・・・つまり、貴方はあの機体と、搭乗者をご存知・・・と言うことですか―――。」

『な・・・?』

「私は、本日イーダル試験小隊に一時的に預託されるT-50の受領にセラウィクまで出向いていました。
先程戻った折、正体不明[●●●●]のステルス機を偶然発見し、捕獲を試みましたが一蹴され、今まで医療センターに居りました故、何が起きた[●●●●●]か一切知らないので、是非[●●]教えてい頂きたい。」

『!!な・・・、べ、ベリャーエフは君も承知だと・・・。』

「・・・ベリャーエフ?
ああ、あの者には決して短慮せぬよう、言い聞かせたのですが・・・。
なにせ、御子神大佐に“XM3”の代償として引き渡した“壊れた人形”を今更欲しがるものですから。
間違って、ブリッジス少尉など我が領内で死亡するような事態が起きたら、理由如何に拘らず、その瞬間に我が邦への“XM3”供給は絶たれるでしょう。」

『!!!―――』


ベリャーエフ程度のでまかせに弄されたか。
よっぽど欲の皮が突っ張っているらしい。


『・・・・・・正体不明のステルス機はどうした?』

「さあ、ステルス機なのでなんとも。
私を倒した後は、“北”に離脱しましたが。」

『・・・私の責任に於いて、テロは誤報だったとプロミネンスに申し入れる。
施設の破壊は、戦術機試験の暴走だとする。
ブリザードの為、目撃者が見間違えたと・・・。
貴様の責任は問わん!
・・・謎のステルス機など、存在しない!!』

「・・・・・・。」

『そして不法侵犯機[●●●●●]は速やかに、確実に殲滅せよ。ネジ一個足りとも、存在を残すな!
決して・・・決して米国側に帰還させるなッ!』


・・・自分の仕出かしたコトの重大さに思い至ったか。
それを全て“無かったこと”にしてしまう強引さ。


『―――貴様の責任に於いて[●●●●●●●●●]、なッ!』


―――あいも変わらずその責任は部下に押し付ける、・・・か。
典型的な、そして圧倒的多数のソビエト軍クソ上司。
・・・ユウヤ・ブリッジス、貴様の読みはなかなかに正鵠だぞ。


『尚、今後一切、私はПЗ計画に関わらない!』


更に輪をかけて今更完全無関係を装う。
ПЗ[ペー]計画がレッドシフトを阻止した功績で大佐に昇格した下衆が。
上に行くほど席数が絞られる階級社会、権力争いも熾烈。
私の大尉昇格など、その人数比から言えば、1/10にも満たぬ論功行賞だろうに。
相変わらず失敗は部下の責任、成功は自分の功績か


「・・・それは、此度のトラブルの処理一切からも手を引く・・・と?」

『同志サンダーク、君の計画だ、全て君の好きなようにしたまえ・・・君の責任に於いて、な。』



来た時と同じく、通信は一方的に切れた。

・・・まあ、いい。
どうせ、後は閉めるだけだ。
此処でПЗ[ペー]計画をロゴフスキーに押し付けて逃げる手もあるが・・・、そうなると逆恨みされ次の計画[●●●●]に絡まれても困る。
計画を見限ったなら私のことも放置するだろうから、計画中止後隠遁しその間に移籍してしまえば良い。
下士官が居なくなることも、我が邦ではありきたりの出来事だ。

ブリッジスは米国にも戻る気が無さそうだから領域侵犯機の殲滅命令など放っておける。
流石に米国に帰れる状況であるにも拘らず、ソビエト領内をウロウロしているのなら、撃墜しても文句は来ないだろうが、そもそもステルスのブリッジスを補足する術がない。
今回は前回の様なハイネマンの裏もないから、推進剤が切れればどこかで野垂れ死ぬだけだ。
凍土に閉ざされれば、永遠に見つからないこともある。
人形に殉じる程度の男なら、それでも構わない。



痛む頸をさすりつつ、半壊の研究室に戻る。

そこには陥没した顔面に大きなガーゼを貼り、時折苦痛に顔を歪ませながらも、狂喜しているベリャーエフが居た。







「で?
どういうことなのだ?」

「・・・わ、わたしは、悪く[]い!
マーティカが余計[]コトを・・・。」
それ[]、無茶苦茶だ!、戦術機で突っ込んでくる[]んて!」


―――吃りはもう慣れたが、鼻骨を骨折しているせいで、子音Иの発音が怪しい。


「・・・そんな無謀な計画を誰が許可したのか?」

「・・・ロゴスフキー大佐だ。」

「・・・。」

「大佐は、サンプル回収の意義を認m・・・あ、が・・・。」


トカレブの銃口を口に突っ込む。
鼻がひしゃげ、骨折はしていても、基本的に整復前、ギブスなど無い、
その生白い顔が更に蒼白になった
歯が当たりカチカチと時を刻む。


「・・・大佐は基地襲撃など存在せず、テロ・コードは誤報、施設の破壊は、戦術機の暴走に依る自爆とするそうだ。
貴様、大佐に私が了承していると騙ったそうだな。
・・・逃げたユウヤ・ブリッジスの完全殲滅を指示された。
それに失敗すれば、ロゴフスキー大佐は、杜撰な貴様の計画を承認したミスを我々に被せるだろう。
・・・独善的な頭越しの計画でこの様な事態を招いた責任、―――覚悟はいいだろうな。」

「あへ、あひぇ!!、あしぇッ!!!」


そのまま引き金を引きたい衝動をどうにか抑える。
どうせ閉めるのだから、こんな奴居なくても良い。


「・・・何だ?」


漸く銃口を抜かれ、崩れて荒い息を付くベリャーエフ。

無理に喋ったことで口の中を切ったのか、血が垂れる。


「・・・さ、先の戦闘で、スィミィの自我が覚醒した・・・。」

「・・・なに!?」

「精神えん[]齢でさ、3,4歳程度の幼稚[]自我だが、ぼ、防衛反応が強く、その際の攻撃衝動が飛び[]けて突出している。」

「・・・それは、ブリッジスと戦ったからか?」

「か、確証は[]いが、恐らくは・・・。
先刻確いん[]していたマーティカとのプラーフカでは、ゆ、融合率96%を記録した。
問題は・・・スィミィの攻撃衝動が強すぎて、マーティカでは抑制しきれ[]い可おう[]性が高い。」


・・・成る程、面白い。
見放した計画だが、まだ使い道が残っていたか―――。


「・・・“繭化”すれば?」

「・・・か、可おう[]だと推測する。」

「―――早急にやれ。
明日、XM3LTEを搭載するT-50に載せる。
その結果を見るまで、貴様の処分は保留してやる。」

「ば、ばか[]ッ!
今から明日など無理[]きまっている!」

「逃げているのは世界最先端の機体に、世界最高レベルの衛士―――。
第2世代のアクティブ・ステルスを持つあの機体は、電子機器での捕捉はもう不可能なのだ。
追尾できるのは、“繭”以外にあるまい。

・・・浅はかな計画が、この事態を招いていることが理解できているのか?
米国に戻られれば、我が国への“XM3”供給は停止されるだろう。

先ほどロゴフスキー大佐は、この件に関する処理の全権を私に移譲した。
・・・つまり、勝手に承認した貴様の計画の、尻拭いを押し付けられたのだ。

ブリッジスが此方に帰属しない以上、撃破に依るビャーチェノワ略取の事実殲滅が必要、
少なくとも明確な口実を与える訳には行かない・・・というのが大佐の指示だ。

どんなカタチであれ、ビャーチェノワ少尉の拐取が知られれば、ソビエトだけが“XM3”、そして“Amazing5”の技術開示を得られない結果に成りかねない!
決して奴らを還らせてはならない。
我が邦の領内で完全殲滅しなければならない!
折角G弾という呪縛が消失したというのに、同じ轍を踏むわけには絶対にいかんのだ!!

この失態の責は、貴様に在るのを忘れたか?

それでも出来ないと言うなら、もはや貴様など必要もない―――。
軍法会議さえ時間の無駄だ。」


再びトカレブを構える


「わ、わわわ~、わ、判った!、判ったッ!!
すぐヤる!、すぐ始めるッ!!」


慌てて動き出すベリャーエフ。


「ああ、同志ベリャーエフ・・・。」

「・・・。」

「―――“繭化”の際、このリストにある部位は残せ。
スィミィの自我が覚醒したのなら、融合率向上の可能性がある。」

「・・・り、―――了解した。」





ユウヤ・ブリッジス・・・。
全く飽きない男だ。
“輝かしい未来なんて戯言”、とはな・・・良くも言ったものだ。

しかし・・・・・・。
スィミィ・シェスチナまで自我の覚醒に導いたか。

・・・惜しい、実に惜しい事だ。
スィミィの覚醒まで促すとは、やはり貴様は、ПЗ[ペー]計画で生み出された者に取って、最高の触媒。
恐らくは“白き結晶”が有する遺伝子と、何らか強く共鳴する遺伝子を有する“運命の相手[homme fatal]”だったのだろう。
だからこそビャーチェノワやシェスチナとコレほどまでに惹きあってしまったとも言えるがな。

既に“白き結晶”が失われた今、考えても仕方ないことではあるが、計画初期に貴様が居れば、或いはПЗ[ペー]計画は、今とは全く異なる展開を見せていたかも知れんな。


そして・・・。
神がダイスを振ったようなこの機会―――。
XM3装備Phase4の実力・・・確実に量りたいものだ。
だが、相手は“レベル5er[ファイヴァー]”に達したユウヤ・ブリッジス、マーティカや私程度では一蹴されただけだったが。

ならばこそ、融合率が96%を超える“繭化”マーティカ+“未知数”スィミィ、そしてT-50の組み合わせで何処まで迫れるか・・・。
何よりも[]への重要な資料となることは確実だ。


計画最期のフィナーレとしては最上の仕儀となりそうだ。


Sideout





Side マーティカ(ソビエト連邦陸軍実験部隊イーダル試験小隊)

ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設 23:00


ベリャーエフの検証から開放されて暫く経つ。
サンダーク大尉が帰ってきているらしい。

それも今の私には関係ない。

傍らには膝に縋り付いて眠っている“白い雪娘”。
だが、その容姿とは裏腹に、何よりも温かい・・・。



あの戦闘で覚醒したスィミィの自我は、まだまだ幼いものだった。
通常プラーフカによる意識融合を行うと、様々な記憶・知識も共有するため、元に分離しても精神年齢を引き上げてしまうことが多いと言う。
しかしスィミィの無垢で純粋であるが故に、頑なで強固だった自我は、私のそれを今まで受け入れようとはしなかったのだ。
だが、私が死を選ぼうとしたあの瞬間、確かに私達は融合した。

それが、スィミィ自身の生きたいという希望だったのか、模擬戦ではない生死を賭けた戦闘に感化されたのか、あるいは“触媒”だというブリッジスに触発されたのか、それは判らない。
おそらく本人も理解していない。
さっきまではブリッジスの存在に怯えるような臆病さと、それに相反するように峻烈な攻撃衝動・・・。
初めて私が制御側に回る意識融合でありながら、その激しさに抑制しきれないことすら在った。

だが・・・。


そう、私を選んでくれたバディとの融合―――。

クリスカがイーニァの為に、と言っていた感覚が初めて理解できた。


そっと、その白絹の様な髪を撫でる。





カチャン、と音がして入ってきたのは、サンダーク大尉だった。

形式的な敬礼と答礼。


儀礼的な戦闘の労いに続いて告げられた命令。


T-50の戦闘機動限界―――。


だが、その話は殆ど私の頭に入らなかった。


そんな・・・


「生まれたばかりの自我とは言え、その攻撃性は・・・」


まさか・・・


「・・・貴様が“繭”に成れば十分に制御可能・・・」


―――私が“繭”?


「・・・サンダーク大尉―――ブリッジス少尉を説得出来なかったのは、私の力不足であることは否定しません。
しかし、本来私の策なら斯様な状況には」

「そこは実に感謝している。
当初ベリャーエフが立てた計画のまま進んでいたら取り返しのつかぬ事態に陥っていた。
あの献策は実に素晴らしい提案だった。
・・・だから、これは貴様への褒美でもある。
―――これで通常よりも、長く祖国に奉仕できるのだからな。」

「・・・。」


ほんの僅かな意見具申も直ぐ様遮られた。


「・・・設備破壊の責は問われないが、正体不明の襲撃者逃亡に関しては、私が責任を持って当たることになった。」


ああ、そうか・・・。
やはり・・・考えていた通りなのだ。

あのゲスは、今回の事態の責任をサンダーク大尉に被せた。
だから表向きは、自国戦術機の暴走による施設破壊と言い繕う。
かと言って今更表沙汰になっては困るクリスカ拐取の証拠隠滅を押し付けてきた。
どうせ、何処かの最前線にでも送られる、とは思っていたが、まさか“繭化”!?


「君には残念なコトであるが・・・。
―――我が国では・・・切れ過ぎる[●●●●●]ナイフは喜ばれないのだ。」

「・・・クッ・・・。」


冷酷に告げられる最後の言葉。
何を言っても無駄―――。
所詮、私達は最期まで“モノ”でしか無かった。
分をわきまえぬ“モノ”など不要と言うことか―――。



腕に何かが触れた瞬間、私の意識は何の慈悲も無くブツリと途切れた。


Sideout



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