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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 17:13
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'15,10,07 誤字修正



Side マーティカ(ソビエト連邦陸軍実験部隊イーダル試験小隊)


「スィミィ、出撃準備だ。」


強化装備に着替え、控室に戻った私は、何時もの様に片隅でただじっとしているだけの存在に声を掛ける。
・・・今までは、ずっとその存在自体が不気味だったのに、今は忌避感が無い。

―――成る程、認めてしまえば勝手なものだな、感情とは・・・。
フッ、と自嘲的な笑みが落ちた。

ずっと感情を否定、というよりは自分に無いかの様に振る舞っておいて、一方で感情を一切示さないスィミィに畏怖していた・・・、と言うことか。

考えてみれば、姿こそ極めて華奢で身長は130cm半ば、それでもスラリとして見えるのは、小さな頭と殆ど脂肪による丸みない肢体の所為、・・・10代に入ったばかりの身体そのもの。
しかし、実際には最近能力の発現が確認されたばかりの最終ロット・・・、つまり、実年齢でまだ2,3歳なのだ。
すでに製造・・・否、誕生から16年前後経ている私たちは、幼年期ずっと施設で訓練され、選別淘汰されながら成長してきたのだが、最新の遺伝子工学に寄る超促成成長を施されたこの子には、その過程・思い出すら無い。
どうせ見込みと詰めの甘いベリャーエフの事、元々不要な感情など関係なく促成したのか、こんな体だけ大きな幼女になってしまった訳だ。

しかも―――余程無理な遺伝子操作でもしたのだろう。
私達は皆遺伝的に、薄紫の髪に青紫の瞳を共通の特徴としているが、この子はそれさえ無いアルビノ・・・色素が殆ど無い。
髪は、絹の様な光沢こそあるが、“銀”ではなく完全に“白”。
それどころか、眉毛から、長い睫毛さえも白いのだ。
そして血の色がそのまま透ける瞳は鮮やかなブラッドカラーであり、同じく薄い皮膚に血の色が透ける唇が、やたら紅い。
その風情は余りにも儚げで、この天候で外に出したら、そのまま白い闇に溶けていってしまいそうな存在感の無さは、さながらこの子の運命を暗示しているかに思えてならなかった。

相変わらずの無表情だが、立ち上がったスィミィの頭に掌を載せると、その行動の意味がわからず、小首を傾げる。

―――見かけは少女、中身はまだ2,3歳の幼女・・・この子も、また同じ“人間”なのだな・・・。

“姉妹”・・・か―――。






ユウヤ・ブリッジス―――。

躊躇う素振りも見せず、行ってしまった・・・。




『クリスカやイーニァ・・・オマエも含めて“人間”と認めないような組織に帰属する気はない―――。

そもそも、クリスカやイーニァにこんな陰惨な機密漏洩防止措置を施したのはПЗ計画、到底それを認められないオレがその組織に居た所で大きな矛盾を孕むのは必至。
・・・矛盾をかかえて組織に帰属しても、クリスカもイーニァも絶対幸せになれない―――!』



確かに、そうだ。
考えて見れば、あのユウヤ・ブリッジスが我が国の組織と噛み合う訳がない。
私は提案に当たり、自分と、そしてブリッジスの“利”しか考えなかった。
だが、ブリッジスは自身の満足よりも、クリスカとイーニァにとってどうしたら最善なのか、それだけを考えていた。

本来クリスカが自らの延命のために“繭化”なんぞ望むわけもない。
記憶も意志も奪われ命令のままに動く“部品”・・・、最早“人形”ですらない。
ベリャーエフになんと言われたのかは知らないが、クリスカだって事実を知れば逡巡しただろう。
私だって御免こうむる。
その選択は、自分の事を考えず唯只管イーニァの為・・・それだけだ。

だが―――。


『イーニァがクリスカの“繭化”を望むとでも思うのかッ!?』


それも・・・その通りだ。
イーニァは、間違ってもそんなクリスカを望まないだろう。

ブリッジスの為に謂わば祖国も捨てたクリスカが“部品”として何の希望もなく生きながらえる事を、彼も、そしてイーニァも喜ぶ訳も無い。
たとえ、残された僅かな時間であっても共に在り、“人間”として尊厳在る死を看取る・・・それがブリッジスの選択であり、イーニァもまたそれを望むだろう。

―――結果、自分も死ぬことになっても・・・。


いくら私が感情を否定して居たとしても、私とてイーニァと意識融合したコトも在る。
その位は理解していた。

同じようにイーニァを理解している筈のクリスカがその途を選んだのは、それでもイーニァに生きて欲しいと言う、自分は部品で構わないのでブリッジスと共に在って欲しいというクリスカ自身の我儘なのだろう。
・・・まあ実態は“繭化”の詳細を知らされず、生き残る方法がある、とでも伝えたのだろう。
通常なら乗るような誘いではないが、記憶の復活により自分の避け得ぬ死を明確に自覚してしまったクリスカなら、乗ってもおかしくはない。

・・・しかし、ブリッジスはイーニァの死をも容認すると言うのか?


『つまり貴方は、自分本位のつまらない感傷でクリスカを見殺し、イーニァまでも殺すと言うのか!?』

『見縊んじゃねェ!
イーニァはそんなに弱くない。
勝手にサンダークからクリスカに替えたなら、次はオレに替える、替えさせて見せるッ!』


そんな都合のいいコトなどあるものか・・・とも思ったが、何よりも強力な“触媒”のいう言葉、あながち可能性の無いことでも無いのかもしれない。
そしてイーニァさえ生き延びる可能性があるなら、クリスカは“繭化”など望むわけもない。





「―――所詮、引き抜きを夢見た浅はかな愚策に過ぎない・・・か。
フッ・・・・・・マザコン[●●●●]め―――。」


独り、恨み言を落とす。
“指示”の意味が判らず、小首を傾げるスィミィ。

何故ブリッジスにイーニァが惹かれたのか、なんとなく解る気がする。
米国という最も恵まれた国に生を受けながら、彼もまた家族或いは肉親と言うモノに恵まれず、彷徨い続けた訳だ。
存在すら蔑まれる環境に、自らの半分の祖国を疎み、母を捨てた父を恨みながらも、実は渇望して止まない矛盾した深く冥い負の望み。
それが激烈であるが故に輝き、けれどそれを凌駕すべく尚高みに届こうと足掻き続けるその生命―――。
そもそも人工子宮から産まれ、明示的な父母さえ居なかった私達にとっては、その冥い輝きが強い吸引力に成ったのは確かだ。

そして接してみればぶっきらぼうではあるが、彼自身が幼少時より差別にあってきた所為か、偏見や差別をしない。
人種や国籍といったモノだけでなく、それこそ私達のような特殊な出生の人種にも極めてニュートラルに接してくる。
そう云う人間はこの国の、私達の周囲にはハッキリ言って皆無だった。
機密の塊、人の気持ちを読む化物、BETAに対する情報収集で謂わば使い捨てられる“消耗品”。
そんな物騒な相手に近づくような物好きは、この国では長生きしないのだ。

だが、彼は違う。
ESP発現者・・・それを知って尚、普通通りに接してくれる。
しかも、それがどれだけ稀有であることか、自分自身で気付いても居ない。

そう、呆れるほど鈍感なのに―――決して見失わない本質。


だが、一方でそんなブリッジスが女性に求めるのは、彼の人生において強烈な印象を遺した“母”の在り方、なのだろう。
断片的なリーディングで得たブリッジス自身のイメージでしか知ることは出来ないから偏っているかも知れないが、自身の愛を最期まで貫いた気高くも勁い女性。
それは決して周囲を変え、全てを奪うような外的な強さではなく、全ての困難を自らの想いにのみ昇華させる内的な勁さ、とでも言えば良いのだろうか。
結局その“母”を、クリスカに重ねているのだろう。
いや、重なって見えるクリスカに惹かれた、と言うことか。

私達に植えつけられた忠誠・・・それを私の様にそれ自体を変えていきたいという方向ではなく、彼女は唯従容と受け入れた。
勿論国の在り方と、ПЗ[ペー]計画は別物だから一概には言えないが、文字通り命を掛けて国に報い尽くしてきた“姉妹”達を、国はその生命に感謝さえすること無く、ただ無慈悲に使い捨ててきた。
そんな在り方に、私自身は我慢が出来なかったが、クリスカは此処迄酷い仕打ちをされても今も本気で感謝さえしているのだ。
それも一つの勁さ、であろう。
そしてクリスカが、その祖国を捨ててさえ選んだのがブリッジス―――。


だからこそ―――私の様な攻撃的な性格は、お気に召さないのだろうな・・・。
我慢が出来ない、それは内部ストレスを攻撃することで解放しようという、見方を変えれば一種の弱さであるからだ。
先に彼との接触を重ね、そんな心情を理解していれば、もう少しやり方があったかも知れない・・・とも思う。
が、それも今更だし、姑息な策略は何れ破綻する。
真摯に純粋に・・・それこそ最大プラーフカで身を削るまでに焦がれれば・・・。


フン―――やはり感情というのもやはり難儀なモノだな・・・。

リーディングなんぞ出来る所為で、何故自分が振られたのか、理性では[●●●●]理解できてしまう。
それでも感情は納得など出来ない・・・・・・か。
勝手に望み、勝手に期待し、そして淡く儚く消えたこの喪失感。

―――確かに、これが人間[●●]というコトなのだろう。


強化装備を着け終わったスィミィに手を伸ばし、そして抱きしめる。
幼い、・・・自我さえ発現していない無垢な魂―――。


「・・・悪いな、こんな事に付きあわせて・・・。
・・・オマエに自我のないことが私の贖罪にはならないだろうな―――。」









スィミィを連れてハンガーに急ぐ。


「こんな時間に、この天候で何なんですか?」


イグニッションからタキシングを進めて貰った整備兵があからさまな不満顔。


「・・・正体不明の戦術機が施設に急接近している。
緊急発進[スクランブル]だ。」

「!、・・・まさかそんな・・・。
警戒網には、何のアラートも」


そこまで言った瞬間、建物が軋むように揺れ、重い地響きとドーンという衝撃音が伝わっれくる。
追って、館内を警報と赤色灯が埋めた。


「・・・これで信じたか?
明確に施設破壊を狙ったテロリズム―――崩れる建物の下敷きに成りたくなければ、とっとと逃げるんだな。」


前回のテロの記憶はまだまだ生々しい。
ここは無事だったが、プロミネンス基地内のイーダル試験小隊専用ハンガーや、野外格納庫では整備兵まで尽く射殺されていた、
顔面を蒼白に変えた警備兵は、2,3度口をパクパクとしたが、声は出せず、周囲の仲間と共に慌てて走り去った。




―――しかし潜入するのに、まさか戦術機で来る・・・とはな。
リーディング出来たときには、声が出そうになったぞ?
先般、機密漏洩疑惑騒動もあったXFJ-01。
話はウヤムヤになったと聞いたが、それ[●●]が現実に実装されているとは・・・、そしてそれを使ってしまう彼には呆れる。

ベリャーエフの事だから、私が勧誘に失敗したと知れば、再び強硬手段に出てくる可能性もある。
交換条件的にブリッジスが断らない、と自分も踏んだから私の具申を認めたのだろうから。
ヤツの想定はせいぜい軍用車による移動。
この施設の警備兵だけで十分制圧出来ると踏んでいる。
ヤツに取っては、イーニァの確保こそが最優先、襲撃犯として射殺返還が不味ければ、今度は全ての潜入の痕跡を消して完全抹殺してしまえば良いと、と考えるだろう。
あとは知らぬ存ぜぬ・・・この国ではよくあるコトだ。
そんな論理が御子神大佐に通じるかどうかは、考えても居ない。
それ以前に、まさかブリッジスが反撃可能な、戦術機で来ているとは思っても居ないだろう。



だが、現実的に私の代案は失敗したのだ。
ブリッジスを懐柔出来ず、結果ベリャーエフの望む“紅の姉妹”も留め置けはしないだろう。

恐らく事後、その責任をベリャーエフは私に被せる。
そしてあの大佐[ゲス]も、自分の欲に駆られた作戦承認のミスをサンダーク大尉に押し付ける。

サンダーク大尉なら私のしたことを理解してくれるとは思うが、この国における自分の保身となれば、大尉にとっても唯の部品である私を擁護することは決してない。
寧ろ積極的に切り捨てる―――、か。


・・・腐り切った権力依存構造―――なるほど、彼がクリスカの死を覚悟しても、この国を選ばなかった理由が嫌というほど理解できる。
先刻までの私と同じ、矛盾を含む存在では何れ破綻が訪れる。

そもそも私達をそうなるように仕組んだ卑怯者に帰属することを良しとせず、人間としてのクリスカの尊厳在る死を尊重した。
―――そう、確かにそんな彼ならイーニァの依存先をクリスカから自分に替えさせてしまうに違いない。


「貴方が戻ると言うなら、妨げもしないと言ったが・・・スマンな、あれは嘘だ。
ユウヤ・ブリッジス・・・悪いが、征くならば、私の屍を越えて行け―――。」


既に未来の閉ざされた私には、もはや人としての尊厳在る死など許されないだろう。
ならば貴方が認めてくれた“人間”として、せめて貴方の手で死なせてくれ。


идол[イーダル]-01〉、マーティカ・ビャーチェノワ、スィミィ・シェスチナ、―――出る!」


Sideout




Side ユウヤ

ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設 21:00


ベリャーエフという引き篭りお宅[コモオタ]は、マーティカの言うとおり、クソでカスでバカでゲスだった。
改めてマーティカの誘いに乗らず正解だと思う。
こんなヤツの研究材料に成るとか、死んだってお断りだ。


イーニァがプロジェクションによるイメージを送ってくれていたお陰で、その行き先を辿るのは直ぐだった。
ただ、マーティカの言っていた状況とは違い、クリスカを奪還して戻る、と言うのはそう簡単ではないらしい。
マーティカの説得の成否が伝わっていないのか、セキュリティは甘いままだったが、ベリャーエフとやらの研究室に着いたときには、武装した警備兵に遠巻きに囲まれていた。

研究室内に確保されていたイーニァを奪還し、一足先に逃がす。
慌ててセキュリティ操作していたが、悪いな、主要なドアは、閉まらないよう工作してきた。



クリスカの事を聞いてみれば、既に圧倒的な優位にあると信じているヤツは、どうせオレは死ぬと思っているらしく、時折どもりながらもペラペラと、"語って"くれた。

自らの研究の有効性と正当性―――、一応それでも勧誘しているつもりらしいが、それは、取りも直さず、人間性の蹂躙に留まらず。命・・・生命の冒涜の軌跡。
自らの技術に酔い、恰も神であるかのように数多の生命を弄び、殺してきたか、と言う事に他ならない。
それをまるで自らの功績でも自慢する様に“語る” 姿は見るに耐えない。
いくらBETAに勝つ為だとしても、それで人間辞めてしまったら、意味はない。

・・・イーニァを逃がす時間稼ぎじゃなかったら、とっくにキレていただろうな。

そして施設到着後眠らされたクリスカは、既に“繭化”準備中。
オレをマーティカの居る病室に誘導するためその近くに置いていたが、イーニァと分断後、手術室に搬送されたらしい。
それだけ聞けば十分―――、しかも手術までの時間はない。


「―――ヤれ、イーニァッ!」


強く思ったことが、つい口に出た。

刹那の間を置いて、何かが爆発した様な身体を震わす衝撃波、地響きと揺れ、そして破壊音が盛大に室内を満たした。



オレへの強いプロジェクションを繰り返すうちにパスを確立したのか、多少離れてもオレの強い想いをリーディングすることが出来る様になったとか。
マーティカとの話で、全部の内容は読み取れないものの、オレの強い感情や意志は伝わってきたという。
この状況下でも攻撃はされず、警備兵の裏を掻い潜れるイーニァにXFJ-01を託したのだ。
施設を抜けだすルートを熟知しているイーニァは、警備兵の追跡を振り切り、3階の非常階段から飛び移ったヴィジョンがプロジェクションされてきた。

・・・けっこうなお転婆さんだ。




「!!!―――ま、ま、まさか、貴様、戦術機で侵入してきたのかッ!?」

「ああ―――、こんな剣呑な所に丸腰で来るとでも思うのか?」

「ば、バカなッ!?
警戒網を潜り抜けたというのかッ!?
ハッ! まさかステルs、ッふべラッ!!」


もう、その言葉を聞いているのもイヤだった。

顔面の中心を強化装備の拳で打ち抜かれ、頭蓋の中央を凹ませたままベリャーエフが吹っ飛んだ。
CQC訓練なんてあまりやっていないが、これは戦術機MACROTの講義の一環で“御大[Great Colonel]”に叩き込まれた生身に依る正拳。
一昨日見てくれた彩峰少尉によれば、まだまだらしいが、筋は良い[You have potential]、とか。
飛び出す様な踏み込みによる素早い体幹の重心移動と、その際の体重分重力落下の運動量を、全て撃ち出す拳に載せる技法―――、とでも言うのかな。
瞬発力とタイミングが勝負の単純系なので小難しくはないが、強化装備でなければ一発でコッチの拳から肩から粉砕してしまう為、既存の格闘技や拳法には存在しない打法らしい。
例えるなら2mからの落下の衝撃を突き出した拳で受けるようなものだとか・・・。
まあオレがまだヘタクソで相手が派手に吹っ飛んだ分エネルギーが逃げたから、恐らく致命傷ではない。
それでも、鼻骨周辺を粉砕した感触は、拳に残っていた。



《ユウヤッ!》


イーニァのプロジェクションが、音声を含んで伝わる。


「・・・二度とオレ達に近づくんじゃねェ」


どうせ聞こえちゃいないが、白目を剥いて泡を吹いている鼻血塗れの男に捨て台詞だけ残し、プロジェクションの導く方向に走る。
もう2,3発イッときたいが、その時間は無い。


イーニァは、長刀で建物を切り抜いていた。
刃は無くても建物程度なら十分斬れる。
相手は戦術機、警備兵の持つ小銃など豆鉄砲、既に皆逃げ出していて周辺には誰も居ない。

警報が鳴り響き、赤色灯が瞬く中、拾われた手から制御ユニットに飛び移る。


「クリスカの居場所、解るか!?」

「ウンッ!」

「じゃ、その近くも斬ってくれ!、おそらく麻酔状態らしいから、このままオレが連れてくる!」

「わかったッ!」


当然、この騒ぎ。
戦術機に依る基地施設襲撃、だ。

手術をしようとしていた技師も泡喰って避難しているはず、代わって哨戒部隊がスクランブルしてくるだろう。
主機立ち上げからなら、猶予は5分前後―――!


ハッチが閉じ、エマージェンシーハーネスを繋ぐ。
建物の切れ目[●●●]に入れていた上半身を引き抜いた途端鳴り響く警報。

―――接近アラートだとッ!?


咄嗟の噴射跳躍で飛び退いたXFJ-01に、白い闇の中から突然湧いてでたようなモーターブレードが襲いかかる。

ギンンッッ!!


「ッッ!!、マーティカッ!?」

「―――な!?」


感覚的に察知したのだろう、イーニァが叫ぶ。

―――チッ! 好きに還って良いんじゃなかったのかよ。
なるほど、リーディングで戦術機で来たことを読まれていたか。
敵対すれば油断も隙も在ったもんじゃねぇな。
イーニァ達第6世代が戦闘能力特化なら、寧ろクリスカやマーティカ達第5世代はBETAとのコミュニケーションを求めた感応能力の最終世代とも言えるのか。
だから第6世代[イーニァ]の制御を担当したのだろう。
イーニァは“色”と言うが、クリスカの表現は聞いたことがない。
実は・・・結構読まれているかもな。


《―――前言翻して悪いが・・・、戦術機で乱入ともなれば、所属衛士としての立場上動かない訳にはいかないのだよ。》


イーニァから、マーティカのプロジェクションがそのまま流れてきた。


「どーしよう、ユウヤ・・・」

「・・・このまま繋いで[●●●]いて、オレの思うように動けるか?
マーティカへのプロジェクションは無しで。」

「・・・やって見る!」


此方はステルス、しかも視界は今も3mとないブリザード。
なのに正確に此方の位置を把握しているのは、お互いがESP発現者だからと言うことか?


《・・・信じられないことをする―――!
それこそベリャーエフにでも教えれば、狂喜しそうだ・・・。》

《なにッ!?》

《此方は、スィミィとのプラーフカによる並列同調効果[ナストロイカ]で、漸くイーニァの位置を把握している。
イーニァは素の単体で同じことを行い、しかもプラーフカも無しでESP非発現者のブリッジスと意識融合・・・いや、流石にそこまでは行かないか、・・・意識接合[●●●●]までするとは!
第6世代とは言え、ここまで進化した例はない。
・・・サンダーク大尉ではないが、貴方は本当に興味深いな。》

《・・・悪いが、時間を掛ける暇はない、邪魔をするなら一気に排除させてもらうさ。》


多分、イーニァでも出来る。
相手がSu-47pzでXM3LTE装備機体でも、マーティカはギリギリ“レベル4er[フォウァー]”。
機体の機動性含めて、XFJ-01の方が疾い。
けど、相手がマーティカ。
イーニァが攻撃衝動を開放していない今、縁ある相手を倒すのはオレの役目だろう。
と言ってシートを替りフィッテイングしている暇はない。


「・・・シッ!」


どうせ気配は読まれている。
実弾のない試験小隊装備だったのか、幸い突撃砲は持っていない。
モーターブレードなら、長刀でどうにかなる。


噴射跳躍で一気に間を詰める。
オレの描く機動にイーニァが同調し、タイムラグも無く機体が動く。
白一色の増感視野に赤い機体がぬっと現れ、迎撃する剣筋を右の長刀で往なす。
弾いたブレードを掻い潜り、左の長刀で相手の跳躍噴射ユニット機関部を貫いた。


ヴィンセントのメッセージメモとこっそり仕込んでくれた偽戦闘短刀形状のシャープナーは見つけたが、悠長に研いでいる時間はなかった。
戦術機相手だと、上手く関節を狙うか、或いはこうして突き刺すかになる。

被弾して離脱を図るSu-47、しかし片側の噴射跳躍ユニットが破壊されていて、方向が限定される。
・・・誤差範囲内!
モーターブレードを装備する右肩を狙い、動いた。

その瞬間、Su-47は不自然に上体を捻る。
正面になった制御ユニット部に、74式近接戦闘長刀の鋒が吸い込まれ様とする。


「―――なッ!?」

《・・・・・・フ・・・ッッ!?》

「!ッ、ダメェェェェェッッッ!!」

《・・・ィYaaaaアァァァァァァッッ!!!》


幾つかの叫びと思惟が交錯する。
イーニァが強引に逸らせた鋒と、Su-47の更に蹲るような不自然な動きにより、制御ユニット部を貫くかに思えた突きは、Su-47の頸部を突き刺さり、強引に切り飛ばす。

そのまま、Su-47は地吹雪荒ぶ大地に沈んだ。



「・・・・・・なんだ?、今の動き?」

「・・・わかんない・・・。
でもマーティカじゃ・・・マーティカだけ[●●]じゃなかった・・・。
今まで真っ白だった所に、急に紅い色が・・・。」

「・・・まだ来るか?」

「・・・凄く混乱してる・・・。
色がぐちゃぐちゃで・・・。」

「・・・来ないならもうイイ、マーティカは取り敢えず無事だし、戦術機ももう動けないだろう。
クリスカの方に急ごう。
流石に哨戒部隊に囲まれると、マズい。」

「・・・ウン、わかったッ!」





・・・凄ェ女。

オレ達の攻撃を読み切ってのあの動き・・・いっそ殺して欲しかったとでも言うのか・・・。


・・・アイツはまるで青紫の“冬薔薇[ふゆそうび]”―――。
その“才”と“色”、そして何よりも強烈な“意志”を宿す瞳の勁さ。
・・・咲く“場所”を、“季節”を、そして人工的にしか出ない稀有な“色”でさえなければ、或いは世界をも我が物にしたかも知れない、そう思わせずに置かない煌きが確かに在る。


その運命の残酷さに憐憫や悲哀を感じつつ、今はクリスカの確保が最優先。

・・・此方だって悠長に構える状況でもない。
焦る気持ちを抑えつつ、実験棟に向かった。


Sideout




Side イェージー・サンダーク

ユーコン準州ソビエト連邦租借地 ベネチ周辺上空 21:20


現首都のセラウィクを出たのは18:00。
ユーコンに近づくに連れ激しさを増すブリザードを向こうに、どうにかБ-01基地迄辿り着いたのが20:30―――。
そこからはSu-37を自ら翔って、ユーコン基地を目指していた。
推進剤の増槽はつい先刻投棄した。



秘匿通信が入ったのは、その時だ。


『同志サンダーク。』

「同志ゼレノフか―――何が起きた?」

『あ―――、戦術機に依る施設強襲ですね、コリャ。
指示通り小娘が非常階段に逃げるまではサポートしてたんですが、流石にこの天候で外の追跡は断念した直後―――ですな。』


起きている事態は重大だというのに、相変わらず口調はのん気でのぞんざいな対応。
だが、此奴はそれでいい。


「・・・やはりあの機体には、アクティブ・ステルスが搭載されていたか・・・。」

『ステルスッ!?、・・・じゃあブリッジス少尉は訓練を装って機体を隠し、車に乗り換えたんじゃなく、ステルスを発動させてそのまま侵入してきた・・・と?』

「そう云うコトだ・・・。
―――同志ゼレノフ、ご苦労だった。
多分、ブリッジスもそのまま戦術機でビャーチェノワを確保し、離脱するだろう。
後はベリャーエフの確保だけ頼む。
戦術機で出てきた以上、それ以外は遣ることがない。」

『・・・ごもっともなコトで・・・了解しました。』


秘匿通信を打ち切る。

ユーコン基地まで、あと10分程・・・。
未確認戦術機による基地襲撃とも成れば、当然哨戒部隊、そしてテロを警戒して警備部隊が即座に動き出す。
いくら自機がステルスとは言え、中隊+大隊規模に包囲をされたくはないだろう。
そして当然国境線の警備は厚くなるから、それは迂回をするはず・・・。

さて、どうしたものか―――。







今回受領したT-50、機番は006、限界試験用の機体だった。
とはいえ、機体は既に吹雪を避けるように、今日のうちにБ-01基地に到着している。
限界機動試験では、今後の運用を鑑み、可動部に強いストレスを発生させるXM3に於ける評価が必須であり、ユーコンに於ける利益代弁者となっている私に話が舞い込んだのは幸運だった。

既に書類上の機体の受領も済んでいる。

だが、私には更なる目的が在ったのだ。


前回ユーコンに来た御子神大佐が示した“2つの数字”、それを知る者はそこに居た者でもそのメモを見たハルトウィック大佐とハイネマン氏、そして私の3名だけ。
当然桁の外れたその数字に誰もが懐疑的で、ハッタリか策謀にも取れた為、他に漏らして躍らされるような愚は誰も犯していない。

だが、先の新潟防衛戦・・・“Amazing5”の示した機動。
それが全てを変えた。

公開された画像の運動量や、最後に見せた電磁投射砲と思しき射撃を含む総エネルギーを綿密に積算していくと、現行の戦術機が持つ数値から離れ、示された数値に近づくことが確認されたのだ。
となれば、先行して持てるスペックを知るメリットは多大、次世代、次々世代の戦術機設計に於いて一番の基礎を確定できるのだ。
つまりは、他国に少しでも先んじる為の極めて重要なキーナンバー[●●●●●●]なのである。
当然何れは公表されるこの情報を塩漬けにする気はない。
この数字とXM3はユーコンで私が手に入れた、鍵。
ПЗ[ペー]計画を見限った私にとっても、次のステップへのキーともなる重要なアイテムだった。

それ故、現在の上官とは別の人物[●●●●]に、この“2つの数字”と“Amazing5”解析結果をプレゼンしたのは当然の帰着でもあった。



―――だが、釘をさした筈のベリャーエフが問題を起こしたと、密かに監視させていたゼレノフから連絡のあったのは、今日の16:00―――。
私が居ない間に強行拉致になど及ばぬよう、その手の工作員は全て遠ざけて置いたのだが、どうやら詐術によってビャーチェノワを誘いだしたらしい、との事だった。
更に詳しく探ってもらえば、マーティカとスィミィの調整に失敗したベリャーエフがロゴフスキーに計画の承認を取り、実行したもの。
内容は、指向性蛋白の一件を思い出させてビャーチェノワを誘き出し、奪還に来るだろうブリッジスを襲撃犯として射殺、シェスチナも確保すると言うモノ。
目先の事にのめり込むタイプの研究バカと思っていたから、そんな策略が描けるだけでも驚いたが、実際計画は杜撰で稚拙、実にマズいことをしでかしてくれた。
計画自体は幾らでも阻止できるが、既にビャーチェノワの心理ブロックは解除されてしまった。



ビャーチェノワが指向性蛋白の事を忘れたままならば、もし仮に自壊しても、人工生命体に有りがちな突然死、としての言い訳が出来たのだ。
だが、思い出させてしまえば、組み込まれた非人道的な機密漏洩防止措置発動の結果、という事が関係者に知られてしまう。

私としては、既にПЗ[ペー]計画は見切りを付けた。
後は如何に綺麗に終わらせるか、と言う事。
ベリャーエフ、そしてロゴフスキーが勝手に暴走して、勝手に潰れるのは全く構わない。
だが、今後の為にもそこにかの大佐[●●●●]が絡むのは容認できないのだ。


実際たった一人[御子神大佐]の意向をここまで慮らなければならない今の状況は、甚だ遺憾ではあるが、差し迫った現状で他に手がないと成れば致し方ない。
何よりも大佐にはXM3と言う前例がある。
個人的には国家戦略的に今でも信じられないが、通常のライセンス料だけで他に何の見返りも求めずプロミネンスという口輪を通じ、全世界に頒布している。
イデオロギーによらず・・・と言うか、実際には米国やその他後方国家よりもBETAと直接対峙している前線国家優先で頒布は進行していた。
因みに“紅の姉妹”は直接XM3の対価ではなく、“賭”のチップだ。
実際あの模擬戦で篁大尉が負けていたら、譲渡は為されず、今の状況にはないだろう。
言ったことは実行する・・・、それが御子神彼方と言う男。
で在るならば、次の技術供与にも信憑性が増すと言う物。
少なくとも“2つの数字”を実現する技術を獲得するまでは、決して大佐の機嫌を損ねる訳には行かない。



・・・取り敢えず、ビャーチェノワ略取とブリッジス射殺はマズい。

正面きってロゴフスキー大佐には反旗を翻す事になるが、致し方ない。
だが、特殊部隊によるベリャーエフの拘束とクリスカの解放を指示しようとしたところ、マーティカ・ビャーチェノワよりベリャーエフに意見具申があり、計画の修正を在ったコトを知った。


マーティカが具申した修正案・・・?
内容を聞けば・・・なるほど、ベリャーエフよりずっと現実が見えている。
これなら確かにユウヤ・ブリッジスを取り込める可能性も在った。
もしこの修正案が上手く行けば、見限った計画とは言え、残った素体の更なる有効利用が図れる可能性も生じる。

更には何れにしろビャーチェノワが思い出してしまった機密漏洩防止措置について、何らかのの対策を講じる必要はあったのだ。
しかしこの案ならば、仮にブリッジスの篭絡が成らなかった場合でも、それはブリッジスが納得尽くで戻る事に他ならない。
機密漏洩防止措置が非人道的と謗られようと、生まれついて設定された遺伝子への組み込みであり、生まれてしまったらどうにもならない。
それが発動している以上、“繭化”を使った延命策しか無いと言う話は極めて妥当。

この提案はそれを蹴った場合、ビャーチェノワを救える唯一の可能性を拒絶したのはブリッジス本人、と言う状況に持ち込める。
黙っていて死亡されると納得は得られないが、説明した上で選択枝を与え、結果死亡に至っても、選んだのはブリッジス、と言う事になる。
それはブリッジスが決断したコトであり、筋を通す御子神大佐は何も言わない可能性が高い。



なかなかによく出来た修正案―――。
そう考え、特殊部隊にもブリッジスの潜入、もし脱出するなら、その脱出も最大限サポートするよう指示を出した。




―――まあ尤も、ビャーチェノワが本当に自壊に至るのか、未だ判断がつかないところではある。

御子神大佐が指向性蛋白そのものの情報さえ気に掛けなかったのは、2つの可能性がある。
機密漏洩防止措置の存在を全く考慮しなかった場合と、それを回避する策を既に有していた場合しか在り得ないだろう。
前者であるなら、私が気に掛ける事すらなかっただろう。
当然後者であるから、コレほどまでに警戒させられているのだ。


何しろBETAからの技術鹵獲を匂わせた御子神大佐、である。
すでに“横浜”が公表している技術に擬似生体の調整手法が在ったが、アレは我々遺伝子工学に携わった者から見れば、ヒトゲノムの完全実用化技術に他ならない。
実際、ベリャーエフがスィミィを促成成長させた手法だって、その技術を転用したモノである。

つまりは、BETAが横浜ハイヴで行っていたと言われる人類の調査・・・それを既に鹵獲していると考えられる。
そもそも、御子神大佐がビャーチェノワ達を要求した際、言った言葉。


“繭”とも、・・・“白き結晶”とも言わんよ―――。


あまりにもあっさり言われた故、しばし気付かなかったが、“白き結晶”はまだしも、“繭”・・・それは第3計画が第4計画に接収された時点では存在しなかったПЗ計画の最重要機密のキーワードなのだ。
あの言葉は、あの時点で大佐がПЗ計画の全容を把握しているぞ、と言う暗示そのもの。
当然、機密漏洩防止措置についても、対処可能と言う見込みがあったのだろうし、交渉材料にもならない、と言う宣言でもあった。

普通に考えれば、数多ある指向性蛋白を特定し、自家製造するような遺伝子組み換えは、現状の遺伝子工学では極めて困難である。
仮に出来たとしても、その定着には細胞の更新が必要となり、60兆ある全身の細胞が大方更新されるには2年程度の時間が掛かる。
そして中には脳神経細胞や心筋細胞の様に生涯更新されない細胞もあるのだ。
指向性蛋白自体は細胞間の流動性が在るため、恐らく体細胞の50%が自己生成出来るよう更新されれば自壊プロセスの危険はなくなるだろう。
しかしそれでも、その更新に掛かる時間は、約2ヶ月―――。
結局指向性蛋白を外部摂取しながらでなければ、ビャーチェノワは救えない。
米国や、例え“横浜”がどんなに頑張っても、我が邦に帰属しない限りビャーチェノワは助からない・・・・・・、と普通は思う[●●●●●●]

だが、同じように多大な時間がかかるはずで、我々には今以て手法も思い浮かばない脳神経細胞を修復するという技術をも有しているのだ。
何らかの手法で、その崩壊を防ぐ手立てを既に講じている、と考えるのが妥当だった。




だからこそ、あの者達がこの地に戻ってきたと聞いたときには驚いた。
そして、ビャーチェノワに自壊プロセスに入った兆候が出ていることにも・・・。


ベリャーエフがトリースタを狙っていることにすら釘刺してきた大佐が、信じられない短期間で治癒せしめ、その能力さえ向上させた“紅の姉妹”を、今も国際謀略が渦巻き魑魅魍魎が跳梁跋扈するこのユーコン[魔境]に戻す事こそが、全くの不自然。
もし何事も無く機密漏洩防止措置が解除できているなら、リスクを冒してまで態々2人をここに戻す必要は皆無。
そしてまさかの自壊プロセスの発動―――。

―――つまりは、御子神大佐をして、“紅の姉妹”を戻さざるをえない何らかの事案[●●●●●●]、乃至トラブル[●●●●]が発生した・・・と言うことなのか?


とすれば、意図が判らず静観していたが、―――逆に千載一遇の好機かもしれん・・・。


何の思惑であの者達をこの魔境に戻したのかは判らないが、この手の事態を想定していない筈もなく、当然リスク覚悟だろう。
用意していた自らの策が外れたのであれば、今更ビャーチェノワやシェスチナが機密漏洩防止措置の発動で死亡しても、大佐は何も言うまい。

だが、ブリッジスは違う。
殺してしまうのは最低の下策、強化装備を着けている限りバイタルモニターくらいしていそうだから、隠蔽しようが同じこと、技術の供与どころか、通告も無しに我が邦のXM3搭載機が動かなくなっても驚かない。
しかし・・・ブリッジス本人が納得ずくで我が邦に帰順させることが可能であれば・・・確かに全て[●●]を手に入れることも可能・・・か。




そして、今の報告―――。

ブリッジスが戦術機で突入、と言うことは、やはりベリャーエフ[あのバカ]は、シェスチナに固執したのだろう、修正案を無視して警備兵に依る武力制圧に出たか。

それはブリッジスが、マーティカの提案も一蹴したと言うことだ。


マーティカにとっても残念なコトだったな・・・。

―――この具申がマーティカからと聞いた時は驚いた。
無論今まで、こんな提案をしてきた人工生命体は皆無―――。
以前から薄々感じてはいたが、我が妹の成れの果て、“白き結晶”から生み出された数千にも及ぶ人工生命体の中で、最も当の妹本人に近い資質を有するのがマーティカである様だ。

その、謂わば乾坤一擲の具申だっただろうに・・・。

煌めくばかりの才が[]と成らなければ良いが、・・・な。

―――嘗ての、妹の様に・・・。




・・・・・・だが、出来ればやはり彼にはコチラ[●●●]に帰属して貰うのがベスト・・・か。

御子神大佐の思惑も、今ひとつ見えない。

大佐にとってはブリッジスもビャーチェノワも所詮他国の兵士、最悪どうなろうと構わない、と言う見方もできる。
それが必要であれば、切り捨てることくらい平然とするだろうが、それでも神経損傷を直してくるのだから、ある程度以上に気にかけているのは確か。
何らかのトラブルで自壊プロセスが進行しているなら貸し一つ作るだけでも、重畳だろう。

ビャーチェノワを“繭化”できれば、日本帝国以外に存在する唯2騎の“レベル5er[ファイヴァー]”も独占確保できる。
今後の私の計画[●●●●]に在って、“レベル5er[ファイヴァー]”でありXFJ-01の開発経験を有するブリッジスは、別の意味でも魅力的だ。


―――ならば、再度挑戦してみるのも悪くない。


秘匿通信で、ユーコンテロの時使った履歴に繋ぐ。
返事が在るかは、知らぬが・・・。


「聞こえるか、ユウヤ・ブリッジス―――。」


Sideout



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