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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/26 14:25
'15,06,26 upload
'15,12,26 誤字修正



Side ユウヤ


ПЗ計画研究施設の潜入は、拍子抜けするほど簡単だった。


今季最大と言うだけ在ってブリザードもいよいよ荒れ狂い、視界が2mも確保できない為、外部の監視カメラさえ効かない。
XFJ-01を建物の死角にある使われていない非常階段近くに置く。
当然監視カメラの死角になる位置、吹き溜まりになっているため下肢を堆い雪に埋める事が出来た。
そのまま置けば、じき上体も薄く雪が覆ってくれるだろう。

しかしステルス―――確かに剣呑な性能だ。
今までF-22EMDが当面のライバルで、ステルスをなんとなく敵視していたが、隠密行動に於けるその有効性を改めて認識させられる。
ソ連がトラウマを抱えるのも尤もだった。

ある程度のリスク覚悟でこの位置にしたのは、イーニァが感じるクリスカの居場所に近い、と言う。
当然脱出は速やかにしたい。
下手に距離を置いても、雪中移動だけでかなりの時間をロスする。
このクラスのブリザードとなると数十mの距離に辿り着けず、凍死する例も数多い。
刻限は決まっているのだ。

衛星のIRサーチを考えれば全開で匍匐飛行するコトは避けたい為、出力は抑えた。
来るだけで15分、人気のない且つ目立たない位置を探すのに更に15分掛かっていた。
一方で無事脱出したとしても、今度はクリスカを居住区に送るのにも同じぐらいを見込む必要がある。
脱出のリミットは、21:30と言う事に成るだろう。

イキナリ戦術機で破壊・・・というのも在るかも、とチラッっと思った。
けれど、10m以上の距離でイーニァが判るのは、クリスカの位置だけ。
しかも、眠らされているのか、今は“声”も届かないという。
生きていることは確かだが、予断を許す状況でもない。
だが、施設破壊となれば当然大騒ぎ、哨戒部隊も急行してくる。
運次第でもXFJ-01を目撃するものも出てきてしまうリスクは増大する。
肉視だけならしらばっくれるが、アクティブ・ステルスが欺瞞するのは飽く迄レーダー情報と戦域データリンクだけ。
戦術機の光学センサーまでは欺瞞しないから、撮影されてしまえば証拠が残る。
一切姿を見せぬまま終わらせる事が前提なら無茶は出来ない。

流石に非常口からの潜入は無理だったが、以前の侵入経路に回ってみれば、サンダークの設定したセキュリティパスが未だ生きていてオレ自身が難なく入れた。
監視カメラの映像だけは厄介だが、コレも持参のPDAから所内のLANに繋ぎ、前回念の為にウェラーに貰ったウィルスソフトをサーバーに転送することで欺瞞する。
LANで繋がっている構成の監視カメラ映像を、指定時間だけ固定化するだけのシンプルな欺瞞、その後は自己消滅するとか。
最重要機密区画のパスコードも、ウェラーに教わってメモしていたコードがそのまま使えた。
・・・こうなるとウェラー様様だな。
たまに巡回はあるがそこはイーニァが一緒なのでやり過ごせる。


けど・・・セキュリティが妙に緩い。
クリスカの帰還が自主的なものであるなら、確かにセキュリティを引き上げる理由が無いのか?
だが、勿論そんなに甘くはない。
病室エリアを前にイーニァが呟く。


「・・・ダメ・・・、通路がない・・・。
歩哨が居るの。」


テーザーガンを手にする。


「・・・遣るか?」

「―――ううん、その先は居ないはずだから、わたしが引きつける。
その間に進んで?
適当に撒いてから、追いかける。
いっつも抜け出してたから、そういうのは得意なんだよッ。」

「・・・解った。
でも気を付けろよ。」

「うんッ!」

「・・・そうだ、オレへのプロジェクションなら出来たよな?」

「出来るけど・・・。」

「一応辿った途を分岐毎に送ってくれ。
コッチが先になれば、それに追いつくようにするから。」

「判った、やってみるねッ!」


そう行って離れるイーニァ。
ハッキリ言って心配だが、この施設内での立場とその能力からすれば、危ないのは寧ろオレの方。
イーニァは見つかった場合、捕縛はされても攻撃はされないだろう。
オレの方は・・・問答無用に掃射だな・・・。


やがて遠くからロシア語が聞こえ、離れてゆく。
イーニァが上手く呼び寄せたのだろう。
戻ってくる前に済ませなければならない。

そんな事を思いながら以前もモニター越しにクリスカと話した警備室までたどり着いた。

中には入らず、モニターだけ確認すれば、以前イーニァと来た時と同じ病室のベッドに突っ伏している姿が見える。
・・・眠らされているのか?


先を急ぐ―――。
この先が最難関・・・のハズだったのに、前回ウェラーが日替わりだと言っていた病室区画のパスまでが難なく通った。


・・・此処迄来ると不自然。

ウェラーが気付いて仕方なくサポートしてくれているのか・・・。
或いは誘い込まれた?

前者なら良いが、後者はマズい。


ドアの内側操作版を適当に探し、“開放”設定する。
罠だったとしても、もう行くしか無いのだが、閉じ込められるのは、勘弁願いたい。
更に脇に在ったパイプ椅子を挟み、閉じないようにしておく。


そして目的の病室に侵入した。
ここでも扉には椅子を挟んでおいた。



殺風景な病室、照明も薄暗く、この建物全体、何処を取っても陰鬱な印象しか受けない。

その傍らのベッドに突っ伏す薄い紫の髪。
小さく、ゆっくりと上下するその背に安堵する。
服装だけはリルフォートに出たときと異なり、薄い布地のプルオーバーになっていた。


19:50―――時間はない。
ハッキング設定や、歩哨の回避に思ったより時間を取られている。

その華奢な肩を揺する。
2,3度目に一度ピクンと反応して、寝返り、ベッドの上にモソモソと身を起こした。


「クリs・・・」


声を掛けようとした途端、柔らかいものが懐に飛び込んできた。

そのまま受け止めると、無防備に抱きついてきた為、薄い布一枚の下で、下着も着けていない胸が柔らかくひしゃげ、反発するように自己主張する。
コッチだって強化装備だけ、そこに当たる尖端の感触さえ判ってしまうのだ。
しかも―――それだけじゃない。
抱きとめた際、脚が内側に入り込んだ。
太腿の内側が柔らかく密着する感触。
強化装備の場合アレはプロテクターで覆われているため、直接刺激を受けずに助かったが、全身で感じる“女の肉体”は刺激的すぎた。
今までは余り感じたこと無い、圧倒的な“女”が煩悩を直撃する。


「!、クリスカ、寝ぼけてんのかッ!?」


有無も言わさずギュッと抱きついてくる。
首筋に顔を埋め、密着する胸、擦りつけてくるような下腹部の柔らかさ。
コチラに全幅の信頼を寄せて抱き縋る女体、無防備に、寧ろそうされることを渇望しているかのような、男を誘う艶めかしさ―――。
・・・触れれば、墜ちる―――、それが判ってしまう。

男の本能に従い、キツく抱きしめようとするその手が肩を掴み―――





―――強引に引き剥がした。



「―――てめえ・・・クリスカじゃねぇな!?」


自分でも驚くような冷たい声に、女は臆することもなく、蠱惑的な、嫣然とした笑みを魅せる。
勁い瞳の煌きに逆に圧倒される。
その姿は、紛れもなくクリスカ・・・けれど、纏う雰囲気が違う。


「―――私[]クリスカだ。」


女はオレに肩を掴まれたまま、気にすることもなく右手の指を薄いプルオーバーの襟元に添える―――と、一気に引き裂く。
仄暗い照明にもヌメるように白い肌、美しい曲線を描くまろやかな膨らみが零れ、控えめに主張する淡い桜色の乳首、脂肪の一切浮かない滑らかな腹、ささやかに淡い茂みまで惜しげなく晒す。


「・・・この身体は、細胞の一片までクリスカと同じ・・・。
唇も、胸も、脚も、そして性器までも、この肢体[カラダ]は全部、貴方のモノ。
奪っても、嬲っても、壊しても構わない・・・スキにして、構わない。
思う存分、欲望をブチ撒けて―――。」

「・・・てめぇ、マーティカか!」

「・・・そうだ。
・・・アレ[●●]から聞いていないのか?
私はアレ[●●]の優性クローンだ。」

「・・・なに?」

「なんだ、アレ[●●]はなにも話してないのか?
唯の試作品が人間ぶっても仕方あるまいに、・・・男に媚びるタチか。」

「・・・てめェ。」

「憤ったところで、事実は変わらん。
私達は、明確に目的を有して設計された“道具”、素材が金属やプラスチックではなく、“肉”と言うだけだ。
こんな無駄な肉、何に使うのかと思っていたが・・・、貴方が気になるならそれも一興。
アレ[●●]と同じ、というのが少々気に食わないが、・・・存分にイジって構わないぞ?」


顕な自分の胸を下から掬うように白い指を食い込ませる。
指に挟まれて、淡い色の先端がツンと尖る。


―――チクショウ!

思わす、肩を突き放した。
クリスカと同じ顔で、同じ身体でそれをヤラれると無性にイライラする。

評価試験の時に似たような娘が居ることは気がついていた。
それでも、居住区も違うイーダル試験小隊とは普段の接点はない。
コチラ側にしょっちゅう入り込んでいたイーニァが特殊なのだ。
コイツの事は、二人の後を埋めたидол[イーダル]-01〉との認識くらいしかない。
今までは面と向かって話すことが無かったし普段は遠目で、しかも髪型が違うから気付かなかったが、確かにその顔の造作や身体つきは双子という範疇を超えてそっくり。
―――クローンという存在、黙っていれば錯覚してしまいそうだ。


「・・・何故、オレにハニトラなんか掛ける?、オマエにとっても意味が無いだろうがッ!」

「・・・心外だな。
これはハニートラップなどではない。
私も貴方に興味が有るのだ。
自らの意志も込めて、貴方を求めている。

・・・フフン、貴方は自らの重要性をちっとも理解していないのだな。」

「・・・どう言う意味だ?
クリスカを略取しただけじゃ無いのか?」

アレ[●●]の確保は別の意味も在るが、端的に言えば、ユウヤ・ブリッジス・・・貴方を誘い込むためのオトリに過ぎない。」

「!!ッ―――、道理でセキュリティがザルな訳だ・・・。
まんまと誘い込まれたって訳か。
クリスカとイーニァを確保して、後は不法侵入したオレを射殺すればOKってコトだな。」

「―――バカだな、だったら私がこうして誘う必要もない。
・・・もうとっくに射殺している。」


クスクスと本当に可笑しそうに笑うマーティカの言うとおり・・・。
潜入が誘い込まれたというのなら、いくらでも実行可能だ。


「それどころか、真実を全て知った上で、それでも貴方が戻ると言うなら、妨げもしない。
アレとイーニァが欲しいなら、連れていけば良い。」

「な―――!?」

「言っただろう?
私が欲しいのは、貴方なのだよ―――。」

「・・・・・・。」


・・・意味が判らねェ。
クローンと言うことも含め、コイツもПЗ[ペー]計画の生み出したデザインド・チャイルドであることは明確。
何故コイツがオレなんかを求める?


「・・・譲渡された時点でもう、アレらは使えなかった。
XM3を搭載したTYPE-00戦が最後・・・2度目の極限プラーフカを行ったのだ。
その顛末は貴方の方が知っているだろう?
サンダーク大尉にしてみれば、死亡も廃棄処分も譲渡もさして変わらない状況だった。」

「・・・XM3の対価ってヤツか?」

「まあ、そうだ。
だが、驚いたことに通常は修復不能レベルの広範囲脳神経細胞損傷を、かの大佐[●●●●]は短時間で修復せしめ、しかもトライアルでの模擬戦ではプラーフカを使わないフェインベルク現象の発現までして見せたんだ。
サンダーク大尉は全く取り合わなかったが、研究者であるベリャーエフ主任の興味を引かないわけがない。
そして最後の第6世代調整に失敗したベリャーエフ[ヤツ]は、切羽詰まり、サンダーク大尉に釘を刺されていたにも拘らず、復活・強化されたイーニァを確保するため、クリスカが自主的に戻るよう唆した・・・。」

「・・・オレがクリスカを奪還しにイーニァを連れてくることを見越した・・・って訳か?」

「そう言うコトだ。
ヤツ[●●]が立てた最初の計画では、アレに成り済ました私が隙を見て貴方の強化装備を強制解除、警備兵が女性衛士暴行犯として射殺・・・という碌でも無い筋書きだったがな・・・。」


舌打ちする。
目の前には薄いプルオーバー一枚、しかも襟から引き裂かれて顕な肢体・・・。
いくら強化装備である程度見慣れているとは言え、ここまで無防備だと目に毒。
この光景を一見すれば、どう考えてもオレが暴行犯だ。


「・・・なぜ計画が変わった?」

「―――私が変えさせた。
ヤツは研究バカだ。
唯々イーニァ欲しさにサンダーク大尉の頭越しに杜撰な略奪計画を上に打診し、不在の間に実行した。
だが、考えても見ろ。
譲渡されたはずのアレらが行方不明、貴方が施設襲撃犯として射殺されたら、かの大佐[●●●●]はどうすると思う?」

「・・・成程な。
御大[Great Colonel]”なら、どんな証拠を見せられようと、そんなの関係ねェ。
その瞬間にXM3供給を停止する、―――だろうな。」

「・・・私は遠目に見ただけで、直接知らないのだが・・・、どうもそう言う御仁らしいな。
サンダーク大尉もそれを恐れ、ヤツにも手出し無用と厳命したらしい。」

「・・・それをアホなその上が認可したわけか・・・。」

「元々ПЗ[ペー]計画の功績を自分の功績であるかのように吹聴して昇進したゲス[●●]だ。
ベリャーエフの甘い見込みに気付かず、また欲に塗れ目が眩だんだろう。
―――結果、喪うのはXM3だけでも大事だと言うのに・・・、かの大佐はBETA鹵獲技術の供与も仄めかしているらしい。」

「BETA鹵獲技術ッ!?」

「―――先の新潟防衛戦・・・、“Amazing5”と呼ばれる機体を見たか?」

「やはり・・・電磁投射砲―――か?」

「それだけじゃない。
機動も何かと隔絶していたが、何よりもあの新潟防衛戦、“Amazing5”は、一度の推進剤補給も受けていない。
公開映像で明示はされていないが、移動距離を考慮しながら時系列を辿ると、補給している空白時間が一切無い。」

「な―――!?」

「ハイヴ攻略を悲願とする欧州・ユーラシアの国々に取って、それがどんな意味を持つか、貴方にも判るだろう?」


実際のBETA上陸時間は6:50前後、掃討完了が8:30過ぎだったはず・・・。
その間、1時間40分・・・否、事前移動や、事後の処理を考えれば、優に2時間強―――。
しかも、あの戦闘機動を行った上で!!
なるほど・・・、ハイネマンのおっさんが期するものもそれか。


「・・・大佐は前回来たとき存在を仄めかしただけだったが、新潟を見る限り既に実在することは確実。
あれはその実戦検証であり、その技術も今後供与するつもりらしい。
一国が余りにも突き抜けた技術を独占すれば、世界を、特に米国を敵にまわす。
米国にも配慮しつつ、それでいて傾注しすぎないように、他国にも同様に供与する・・・。
それが国の軍事戦略として正しいかどうかは判らないが、既にXM3と言う前例がある。
少なくとも世界を相手にして過剰な機密防衛に多大なコストと時間を掛けるなら、いっそ公開してしまえ、という考え方が在ってもおかしくはない。」

「・・・・・・。」

「だが、当然そこは供与相手が“信”足りえるか、という条件が付く。
強力な兵器を供与して自国を攻められましたじゃ洒落にならん。
今回ベリャーエフがしでかしたこの事態は明確に大佐の信を裏切る行為、本当にそれらの技術を公開すると成れば、我が邦だけが享受出来なく成る。
その責任が取れるのか?―――先刻ベリャーエフ、ヤツ[●●]に具申した。」


・・・コイツ、抜け目ねェ・・・。
上司の性格や、行動パターン、世界情勢まで見越してやがる。


「―――指摘されたヤツは、ビビって私の修正プランに乗ってきたよ。
・・・だから貴方は安全で、―――そして私が1番引き込みたい相手なのだ。」


・・・そういう事か―――。
漸く合点がいったぜ・・・。

“紅の姉妹”を奪取し、オレを嵌め殺しても、“御大[Great Colonel]”が納得しなければ、ソ連は今後技術的にハブられる。

けれど、オレが納得ずくでソ連に取り込まれ、そこに彼女たちが居るのなら・・・。
恐らくだが“御大[Great Colonel]”は何もしない。
クリスカ達の責任を持てと言われたが、その遣り方に指定はなかった。
彼女たちの心情からコレが最善、とオレが判断したなら何も言わないだろう。
最終的にたどり着く“結果”の責任が全てオレにある、というコトだけだ。

つまりは―――オレを引き込めばソ連は、全てを手に入れられる!


それをこの女・・・、ベリャーエフとかは勿論、当事者のオレですら気付いてなかったことを見切っていた。
しかも気に入らなければ、戻って良いとまで言い切る程の条件が在るってコトなのか?


「・・・その対価が、オマエって訳か。」


フフン、と勝気そうに笑うのが、妙にハマって見える。


「コレは対価なんかじゃない、寧ろそれを望んでいるささやかな私の希望だ。」


外連無くスッと近づくと、身構えたオレを手を取る。
その害意のない手弱かな所作に、振り払うのを逡巡した瞬間、その手を胸の膨らみに導かれた。


「・・・どうでも良い肉と思っていたし、こういうのは初めてなのだが、―――結構気恥ずかしいものなのだな。」

{―――ッ!}


大胆な動作とは裏腹の、はにかむ様な恥らいを滲ませて自嘲的に微笑む。
その笑みに気を飲まれ、引っ込めかけた手が止まってしまった。
押し付けられた掌には、指を動かさなくてもその柔らかさと張りが極薄の強化装備皮膜を徹して伝わってくる。


「・・・あぁ・・・貴方に触れられるのは、確かに悪くない・・・。
この身体も・・・、勿論、イーニァも、そしてあんなモノでよければアレ[●●]も貴方のモノだ。」

「クッ!―――何故、碌に知らないオレをそこまで誘う?」

「・・・協力して欲しいのだ。
アレからも聞いているだろうし、薄々感じていると思うが・・・、現状ソビエトに於いて私達人工生命体の地位は極めて低い・・・。
底辺、というより、もはや人として扱われていない。
・・・兵器として、恐れられてはいるがな。

尤も・・・上層部はスラブ以外の民族・・・いや、寧ろ兵士や平民など虫けら程度にしか見ていない腐った国・・・。
―――だが、貴方の協力があれば、その状況を変えられる可能性がある。」


クソッタレな国なのは同意する。
しかし・・・、オレの協力?
何を言っているのか、理解出来ない。


「・・・それにオレが何の協力が出来るっていうんだ?」


言いながら、薄皮越にも吸い着いてくるような肌から手を離す。
背筋がゾクゾクするヤバい感触・・・このまま触れていたら、ついもっと弾力を確かめたく成る。
マーティカは心底残念そうに呆れた表情。


「・・・私達は、オルタネィティブ第3計画の遺児だ。
そのくらいは、聞き及んでいるのだろう?
ESP能力によるBETAとのコミュニケーションを図った第3計画であるが、本来の目的に成果が期待できなくなった計画の後期には、攻撃性をより高めた第6世代の設計が行われていた。
ただ、シェスチナ姓を与えられた第6世代は能力の発現率が非常に少ないため、極めて貴重な個体なのだ。
現存数は・・・一桁の下の方・・・。」

「・・・その一人がイーニァだって言うのか?」

「そうだ―――。
そして第6世代は、攻撃性をより強化しているため、能力を解放する際、視床下部と中脳灰白質の異常活性が起こり、破壊衝動に支配される。
・・・キレまくって狂化する訳だ。
それ故単独運用を断念し、攻撃衝動を司る脳幹機能を分離、別個体に移植して共に成長させる―――それをコミュニケーション能力に特化していた我々第5世代が担った。
アレは、イーニァの制御を担当するプロトタイプとしてデザインされた試作品、と言うことだ。」


いままでのクリスカの言葉が思い出される。
―――イーニァの為に・・・。
その言葉は、そのまま設計時に企画された目的そのものだというのか!?


「・・・当然試作品ゆえ、不具合も多くてな。
特に感情の抑制がきかず、性能の安定化が図れなかった。
それが何故か貴方との接触によって、アレもそしてイーニァも安定して行った。
その効果は“調整”の範囲を遙かに超えて高かったのだ。
―――貴方の存在が“触媒”として進化に寄与している、というのがサンダーク大尉の見解だ。」

「・・・触媒?」

「―――私達の基となる特殊胚・・・“白き結晶”と、遺伝的に共鳴し高め得る存在・・・なのだそうだ。」


・・・そんな珍奇なモノになった記憶は無いが、そう考えるとサンダークがやたら好意的で、クリスカやイーニァとの接触を積極的に図った理由も理解できる。
クソッ!
人を出汁に、クリスカやイーニァの底上げを図った、と言うわけか!


「私達にとって、貴方がどれだけの存在なのかは未知数だが、その程度によっては私達の価値を再認識させ、地位の向上を図れる可能性がある―――。」


これは・・・恐らくはサンダーク、或いはソ連という国の要望ではなく、飽く迄マーティカの個人的な願い。
クリスカやイーニァの扱いについては、オレも正直憤りを感じていて、その思いには共感出来るものもある。
クリスカやイーニァはそれを従容と受け入れているが、コイツは周りが見えているが故に、理不尽を感じているのかもしれない。



・・・だからこそ、納得が行かない。


「・・・オマエに取ってクリスカは何なんだ?」

「・・・折角貴方との接触で進化したのに、最終的には、余計に情動に支配され、自らを壊す選択をした存在―――。
それら試作品で確認された欠点を修正・強化したのが、正規品である私。
クローンする際のES細胞に、更に操作を加え脳幹との適合性を高めた。」

「・・・その正規品様が、クリスカに負けたって訳か!」

「!!、な、何をッ?」


図星・・・、か。
初めてマーティカの余裕こいた表情が歪む。


「決まってんだろ?、イーニァが性能だけを求めたんならSu-47の最終評価試験の時、パートナーはオマエになっていたはずだ。
それでもイーニァはクリスカを選んだ。」

「!!!ッ・・・・。」


一瞬激高するかの表情を見せたが、すっと消える。
―――大した自制心だ。


「・・・そうだな。
イーニァは何故か、アレを選んだ。
それが、貴方との接触の結果なのか・・・そこも確認したいところだ。」

「フンッ!、そんなことも解らねェから選ばれねェんだよ。
いいか―――、オマエ等は性能のみで決まる機械じゃねェ、ちょっとだけ凄いことが出来る人間だってだけじゃねえか!
命を預けるパートナーに血の通う、気持ちの通じる相手を選ぶのは、当然だろうがッ!!」

「―――有り得んッ!
私達には、感情など不要、精緻な制御の妨げに成るだけだ!
感情に振り回され、挙句男のために自分が壊れる選択をするなど、認められないッ!」

「・・・感情が無いだァ?
オレに言わせりゃ、そうやってクリスカを貶めて、自分の優位性を主張して居ることこそ、現状を認めたくない、認めることが出来ない自分勝手な感情そのものにみえるがなァ!」

「―――!!ッッ・・・」


想定外の反撃を喰らったのか、暫く呆然としたマーティカは、やがて心臓を打ち抜かれた様に、ペタンとベッドに墜ちた。


「・・・何故だ・・・?
同じ形態、同じ遺伝子なのに、―――何故だ?
何故、イーニァも、ユウヤ・ブリッジス、貴方も私ではなく、アレを選ぶ?

・・・私は軍で唯一無二に成ることで、人工生命体の地位を高め、解放したいと密かに思っている。
私達が、どんな差別を受けているのか・・・貴方も知っているはず・・・。
それを解放することは、クリスカやイーニァの地位向上にも繋がる。
―――それが間違いだというのか・・・?」

「・・・ばーか。
性能ばかり拘り、自分で自分を人工生命体なんて言ってる時点で、差別しているのは自分自身じゃねェか。
同じ遺伝子を持つクリスカを、性能が低いと見下している時点で、大きな矛盾を抱えているのはオマエ自身だ。

―――オレはクリスカをそんな風に思ったことはないし、クリスカもイーニァも、―――そうして戸惑うマーティカだって、綺麗な人間の女の子[●●●●●●]にしか見えない。」

「!ッ―――作られた私が、・・・人間?」

「・・・世の中には、身体の90%が義体だって人もいる。
生まれつき、四肢の何れかが欠損している例なんか探せばいくらでもある。
その人達は人間じゃネェのか?
みんな人間として自分で考え、自分で判断して、そして“現在[いま]”を生きている。
オマエらの基になった細胞―――“白き結晶”だっけ?
それは生命の誕生以来ずっと受け継がれてきた進化の塊、紛れもなく人間の遺伝子だろうが?
要するに、オマエらはみんな姉妹だ。
人工的に生まれたにしろ、遺伝的には受け継がれてきた父母やその祖先が連綿と存在している。
遺伝子が少しぐらい弄られたところで、せいぜい“個性”の範囲、うだうだいうことじゃねェ!」

「あ・・・・・・。」

「―――自分が否定したいことを、自分で実践してちゃ世話ねェ。
理想を否定しているのは、他ならない自分じゃねェか!
そんな矛盾を抱えて、たかがオレが協力したくらいで何が出来ると言うんだ!?」




しばしの沈黙。


「・・・ウフフフ・・・・・・アハハッ!
・・・より高みに・・・それがユウヤ・ブリッジス、貴方の存在―――。」


そして突然笑い出したと思ったら、先刻とは打って変わった、熱に冒されたような潤んだ瞳で見上げられ、そっと伸ばされた手にゾクリとして、飛び退いた。


―――ヤヴァい!

これが噂のデレ?
白銀少佐の言う、ツンデレ、いや、コレがヤンデレなのかッ!?
性格はともかく、形態はクリスカそっくりでかなりクル[●●]ものがあるのも、その開けっぴろげなしどけない姿も、全部ヤヴァいッ!!


「わ、悪いが・・・、どれほど遺伝子が一致していて、容姿が寸分違わなくたって、オマエとクリスカは別人、中身が、そう―――魂が違う。
それこそが天上天下唯我独尊って奴?、唯一無二の人間だからだ。

オレは容姿のみに惹かれた訳じゃない

別人である以上、オマエにはオマエの相手が居るはず。
オマエの相手は、残念だがオレじゃない。
“触媒”だって唯の推測、他にもっとオマエに合う男が絶対居る。

―――そいつを探すんだな。」

「・・・・・・酷い男だ。
私に内在する矛盾を情け容赦なく指摘し、求めて止まなかった人間で在ると認めてくれて、・・・本気で惚れさせておいて、その場で振るとは・・・。」

「・・・諦めてくれ、所詮オレはそう云う朴念仁らしい。」

「・・・だが、断る!
これから言う事をよく、考えて欲しい。

アレは・・・クリスカは、間もなく死ぬ。」


―――なにッィ!?


「・・・私達第5世代は、特殊な蛋白が自己生産出来ないよう、遺伝子操作されている。
定期的にその指向性蛋白を外部より摂取しなければ、細胞が壊死するようにプログラミングされているのだ。」

「なんでそんなことをッ!?」

「貴方は否定してくれるがな、実際そう云う見方しかしない奴らにとって私達は遺伝子操作で作られた一種の特殊な兵器、その機密保持が個人の行動に左右されてはならない。
その為、拐取や逃亡の際データが取れないように、だ。」

「・・・・・・。」

「なにしろ下手に遺伝子を調べられたら、そこから解ってしまう可能性も否定出来ない。
故に、生体を離れ培養された細胞1個であっても、先の指向性蛋白の欠如により、アポトーシスを引き起こす様設計されている。」


ウェラーが言っていた機密漏洩防止措置かッ!?
本当にそんなことをしていると言うのかッ!?


「・・・クリスカはそんな薬、知らないと言っていたぞ?」

「―――甘いな。
ソビエト連邦が最重要機密を譲渡するのだ、機密漏洩に最大限配慮するのは当然のこと。
本人には厳重な心理ブロックを掛けて、重要項目は忘却させたのだ。
・・・今朝方、ベリャーエフが心理ブロックの解除ワードを与えたらしいからな。
元の記憶を思い出しただろう。」

「 ッ!! 」

「・・・通常指向性蛋白の最終摂取から2週間程度。
クリスカの場合は譲渡される際、少し多めに投与されたらしいが、それでも持って20日―――。
そして、クリスカには既に自壊プロセスが発動した兆候が出ている。」

「・・・どう言うコトだ?」

「残念だが、プロセスが発動したということは、既に可逆限界を超えている。
つまり今から指向性蛋白を摂取しても、もう崩壊は止まらない。
過去の例では、自壊プロセスが始まると、通常2,3日、長くても4日で死亡した。」

「な・・・・・・。」


―――クリスカが死ぬ?
ベリャーエフがそれを思い出させた?
自壊プロセスが発動―――?


「待てよ・・・今更遅いなら何故、クリスカが此処に来る必要があったんだ?」

「・・・先の指向性蛋白不摂取による細胞の崩壊は、脳神経系細胞が一番最後になるのだ。
能力保全の関係上、不要な干渉を極力排除した結果だそうだ。
―――その分、酷く苦しむ事になるのだがな・・・。
ПЗ[ペー]計画に於ける研究の延長に、“繭化”というクソ技術がある。
研究過程で偶然発見された特殊な伝達物質を使い、脳波の増幅や安定化が可能な技術だが・・・但しその際、人としてのその他の部位の制御は放棄される。
―――即ち、肺も心臓も止まる。
ならば、不要な部分は削除して、機械が代わりをすれば良いというゲスな考え、それが“繭化”だ。」

「・・・それはつまり脳だけを取り出して生きながらえさせる、と言うことかッ!?」

「これにより、能力の安定化とともに細胞分裂の鈍化が得られる。
もともと人工発現体は“白き結晶”よりクローンを実施する関係上、テロメアが短い。
普通の人間の、ほぼ半分以下の寿命しか無いのだ。
その“性能”の安定化と延命化・・・部品として生まれた私達が、より高性能になれる技術、だそうだ。
私ならそこまでして生きるより、死んだ方がマシだがな。」

「ふっざッけんなッッ!!!、命を何だと思ってやがるッッ!!」

「・・・その“繭化”を望んだのは、他ならぬクリスカ自身だとしても?」

「え―――?」

「先刻言ったように脳細胞の自壊プロセス発動は、他に比べて遅い。
通常は脳細胞のプロセス発動が起きる前に、先行発症する内蔵・循環器系が壊死して血流が止まり、脳細胞も死に至る。
裏をかえせば、今ならまだ脳細胞だけ“繭化”することで生き長らえる事が出来るのだ。」

「・・・なんでそんなことを?」

「クリスカは、壊れて死ぬことよりも、“繭”となってもイーニァと共に在ることを望んだ。
ベリャーエフはそれを生き残る唯一の選択肢として伝えた。
ま、細かい内容までは伝えていないと思うがな。
ヤツ曰く、我が邦は、国連横浜軍籍のクリスカを拉致もしていなければ、施術の強要もしていない、だとさ。
飽く迄本人の希望に依る人道的緊急措置・・・なんだそうだ。」


指向性蛋白を摂取せずに一定期間を超過すると、細胞を壊死させるアポトーシス・プロセスが発動―――。
そうなれば、最早指向性蛋白を摂取しても止められない。
待っているのは緩慢な、そして脳神経細胞を除く全身の細胞が壊死する凄絶な死―――。
発動から4日以内には、死に至る―――。

それを回避するたった一つ残された手段が“繭化”・・・。
けどそれは・・・完全に戦術機の生体部品となることじゃねェかッ!!


「・・・なぜ、クリスカがそんな選択を・・・。」

「・・・そうしないと、イーニァも死ぬからだ。」

「なにッ!?」

「コレだけ冷徹な機密管理に於いて、イーニァに危機管理処置が施されていないなど在り得ないだろう?」

「・・・・・・。」

「ただ発生率が極端に低い、個体数が僅少な第6世代は貴重―――万が一の事故や単純なミスで細胞自壊させるわけにはいかない。
故にイーニァには、母集団からの一定期間分離をトリガーとする脳細胞溶解処置が施されているそうだ。」

「は・・・?」

「指向性蛋白の欠如と一定期間特定の人物と離れている状態だと、クリスカとは逆に脳細胞の特定部位が結合不全に陥り、それにより人格と能力が壊失する。
ПЗ[ペー]計画の技術があれば、その状態からの再生が可能と言うが、これとて繰り返したり、長期間壊失状態を放置すれば脳の全域不全に進行し死に至る。」

「・・・・・・。」

「母集団とはПЗ計画―――それは即ちサンダーク大尉・・・だった。」

「だった?」

「そう、サンダーク大尉であった母集団を、イーニァは無意識にクリスカに変えてしまっていたらしい。
本来深層心理に打ち込むブロックで、対象の変更は本人には出来ない筈が、何故か元に戻してもいつの間にかクリスカになってしまう。
第6世代の能力故、とも言えるが、遺伝子と異なり心理の面ではまだまだ未知の領域が大きいそうだ。
極めて貴重な第6世代である筈のイーニァを、サンダーク大尉が諦めて御子神大佐に譲渡したのは、そのせいだ。
クリスカが使えない以上、自らクリスカに依存するイーニァも何れ自壊する。
クリスカとイーニァの譲渡は、大尉に取っては完全に廃棄処分と同義だった訳だ。」

「・・・・・・。」

「だが、横浜の魔術はクリスカとイーニァの傷ついた神経組織を完治させた。
それでも、サンダーク大尉は興味を示さなかったが、先のベリャーエフが色気を出し、クリスカを誘いだした、というコトだ。」

「・・・クッ!!」

「しかし、考えてみて欲しい。
自壊プロセスが発動した以上、このままではクリスカの死は免れず、それによってイーニァも死亡する。
クリスカの“繭化”だけが、イーニァを救う選択肢である以上、クリスカに否応はない。
しかも脳細胞であれ、自壊プロセス自体は細胞内に存在する。
数十万という種類がある指向性蛋白のたった1つを限られた時間で特定することは、事実上不可能。
他では摂取出来ない以上、ПЗ[ペー]計画の庇護下でなければ生き長らえることは出来ない
それはクリスカに依存するイーニァもまた同じ・・・。
作られた生命は、その庇護下でなければ生きられないよう、設計されているのだ。」

「・・・・・・。」

「貴方の望みは、二人と共に在ること・・・。
その望みが叶うのは、我が邦でしか在り得ない。
クリスカとイーニァとの未来を望むのであれば、クリスカの自壊プロセスが発動してしまった以上、クリスカを“繭化”し、イーニァと共にソビエトに帰属する途しかないのだ。
“繭化”については、残念としか言えないが、将来的にクローン培養した身体に再移植する技術が完成する可能性は高い。
それまで我慢してもらえるなら、クリスカと同じこの身体を貴方に捧げよう・・・。
何、貴方に触れることで、私も進化できるかもしれないからな。
対価としては十分、私のことは愛さなくて構わない・・・、クリスカの代わりで良い。


―――これでも、受けてもらえないか―――?」


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