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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 11:46
'15,06,05 upload
'16,05,06 誤字修正



Side ユウヤ


この時間の野外格納庫には、流石にヴィンセントも居ない。
それじゃなくても、今日はA-00他参加ゲストを含めた今回参加部隊のフェアウェル・パーティ。
プロミネンスとしては望外に成果が大きかったせいか、ハルトウィック大佐が奮発したらしく、ウェルカム・パーティ以上の豪華な内容、部隊関係者は整備兵まで含め鱈腹飲み食いしていた。

夜間殆ど無人の野外格納庫、それでも関係者なら出入りはできる。
無論今入れるのは控室とデッキくらい、戦術機メンテナンスベッド周りはモニター監視されているが、ここは簡易メンテ用だから、この時間アルゴス隊の機体は、よりセキュリティーの厳しい本館のボーニング専用格納庫にある。


「・・・すまんな、こんな時間に呼び出して。」


そこに居たのは相変わらず角い顔にグラデーションサングラスのオッサン。
正直敵だか味方だが未だに解らねぇが、職務上情報だけは持っている。


「まったくだ・・・が、まあ、いいさ。
あんたには前回世話になったからな、―――デイル・ウェラー捜査長。」

「結局全ては徒労に終わったがね。
君に関しても、煽るだけ煽った形で終わってしまった。
―――謝罪しよう。」

「・・・何もしてねぇから、オレに謝罪なんか必要ない。
それよりも―――、こんなとこに呼び出して何の話だ?
“高度な政治的判断”、なんて言う裏を説明してくれる訳じゃないんだろ?」

「・・・そうだな、正確に現状を認識してもらう為には、そこから説明しよう。」


な?
あっさりと言い切る内容か?


「君は“於地球上G弾使用による大規模重力偏向と大規模潮位変動予測”と言うレポートを知っているかね?
ああ、“香月レポート”と言った方が通りが良いか。」


それは、最近良く耳にするG弾使用後の世界を予測した報告書 。


「・・・ああ、“大海崩”だっけ?、G弾の使用は大規模津波を引き起こす、“人類自決兵器”じゃねえかってヤツだろ?」

「そう、それが今や一般にまで公開されているが、・・・あの日リークされたんだ。」

「―――え? ・・・それってちょっと待てッ!?
TVじゃ“可能性がある”なんて言っているが、これは本当のコトだってのかッ!?」

「政府が混乱を招かぬよう、マスコミにそういう表現に留めてもらっているだけで、内容は事実。
少し専門領域を齧っただけの大学生でもシミュレート出来る話らしい。」

「・・・そんな大事なことに気づかず、米国はG弾ドクトリンとか謳ってたってコトか!?」

「そこは糾弾されても仕方ないだろう。
尤も、計算には実際に使用された横浜の詳細な観測結果が必要になる。
使用前には、その影響が見積もれず、誰もその事に気づかなかった。
そしてまた、使用地点が1箇所では、この現象は生じないのだ。
よくぞ気がついた、としか言い様がないが、示された理論に一切の破綻なく数式に一片の齟齬もない。
もしあと2箇所、地球上に横浜と同等規模以上の重力影響を及ぼした場合、それらの重力波が重畳され、形成される三角形の面に垂直方向の固有潮汐作用が働く事になる。
それが少なくとも数100m規模の“重力津波”を引き起こす、と言うことが検証をした全ての研究機関で確認された。
政府が表立って正式に認めることは在り得ないが、自滅覚悟の状況にならない限り、G弾が使われることはないだろう。」

「・・・つまりそれは、米軍の掲げるGドクトリンの、・・・事実上の崩壊・・・ってことか・・・?」

「使用したら、今BETAに侵されること無く平和で居る我が国の少なくとも3/4を喪う、と予測されている。
そんな欠陥兵器を誰が好んで使うのかね?」


・・・言葉もない。

どうせ何処かのインチキ学者が言い出した、反G弾のためのネガティブキャンペーン位にしか捉えていなかった。
BETAが米国に攻めて来たら、最後はG弾撃てばいいじゃん、みたいな感覚が米国人にはある。
カムチャッカでBETAと戦う前は、オレだってそうだった。
同じ地球の為に戦っているつもりでも、何時だって自分には被害のない、対岸の火事。


「そしてG弾が使えない以上、BETAを抑えるのは戦術機がメインに成る―――。」


・・・ああ、そう云うコトか・・・。
G弾に頼っていたドクトリンが崩壊した今、BETAより対人戦に重きを置いたF-22やF-35、ステルスに偏重したロックウィードの開発だけでは事足りず、対BETA、しかもハイヴ攻略が可能な戦術機が要求される。
そもそも、ハイネマンも、プロミネンスも、日米の共同計画であるはずのXFJも、G弾在りきのドクトリン故不要と判断されCIAが嫌疑を掛け抹殺を目論んだ、というのが前回の機密漏洩疑惑に対するウェラーの説明だった。


「・・・前にも言ったが、国連の対BETA計画であるオルタネィティブは現在第4計画が進行している。
推進国は日本で、その本拠地は国連横浜基地―――そう御子神大佐や白銀少佐の所属するのはその第4計画本体で、香月夕呼博士は、その第4計画の総責任者だ。
まあ噂は色々あるが、天才的な科学者で在ることは確実だ。」

「―――!!ッッ」

「そして現在予備計画として第5計画も並行して進められている。
オルタネィティブと言う一つの国連計画が並行して2つ推進されているのは異常なのだが、その経緯は省略する。
この第5計画の推進国は我が米国、その根幹を為すのがバビロン作戦という、G弾によるBETA殲滅作戦。
そしてそれを強力に推し進めていたのがCIA―――と言うことだ。
・・・此処まで言えば・・・理解しているようだな。」


台頭する日本製の戦術機、彼らは自国内にハイヴを抱え、通常兵器に依る攻略を悲願としている。
世界でも唯一のG弾被曝国である日本は、殊にそのアレルギーが強い。
欧州やソ連・中国も爆心地を不毛の土地に変えるG弾の使用は断固拒否をしている。
だからこそ、第5計画派は、ハイネマンの機密漏洩を掴み、XFJ、ひいては欧州戦術機ドクトリンの実現手段を担うプロミネンスを潰しにかかった
それがソ連の売り込みに乗じたCIAのやり口だった訳だ。


そこに、投下された逆G弾級の爆弾があのレポート―――。

否、それだけじゃない、時期的にプラチナ・コードも公開されたはずだ。
戦術機に依るハイヴ攻略の可能性を明確に示したあのシミュレーションは、米国の戦術機メーカーにも激震を与えたはず。


「・・・発信者が第4計画指揮官なので、第5計画派でも急進派は只のブラフとしてみたが、中には慎重派も居ないわけじゃない。
そして米国内にもG弾使用に反対する第4計画派、更には何方側にも組みしない穏健派が多数いて、彼らにもそのレポートは渡った。
結果、真偽確認までは日米の溝を決定的にする例の査察[●●●●]は保留となった。」


・・・だろうな。
日米間に決定的な溝を刻み、プロミネンスも潰してEUとの関係を壊し、ボーニングの戦術機部門を国内戦術機開発の第一人者ごと抹殺する査察をそのタイミングで実行するわけには行かない。

・・・あの顛末にはそんな裏が在ったのか・・・。


「G弾ドクトリンは勿論崩壊、・・・まあ、自分でも知らずに自爆装置を作動させるところだったんだから、これは寧ろ喜ぶべきことなんだろうが・・・第5計画派は、レポートの検証結果が出る前に、すかさず第4計画へのカウンターを強行した。
それがXFJやXM3にかこつけた第4計画主要メンバーの暗殺計画およびXM3の強奪計画・・・君が戦った対インフィニティーズとのAH戦だったのだよ。」

「―――え?」


・・・あの慌ただしい設定と、後催眠暗示まで使ったなりふり構わない暴挙はそういう訳か。
インフィニティーズはテロの時もCIAに使われ、ソ連のG元素研究施設を破壊していたらしいから、いいように使われてブルーフラッグを行ったコトになる。


「・・・その暴挙の所為で、F-22はステルスさえ見破ってしまえば近接格闘戦に弱い、という弱点も晒すはめに陥ったがね。
結局CIAの仕掛けた暴挙は、G弾ドクトリンに加えF-22の失墜によってATSFも見事に崩壊させた、と言うことだ。
尤も、元々G弾ドクトリンの所為で、ATSFの矛盾には多くの関係者が鬱憤を溜め込んでいたから、君たちがF-22を墜とさなくても、遅かれ早かれ同じだったかも知らんがね。」


・・・ラプターを墜としちまったオレへの批判がやけに薄いのは、その所為なのか?
プロミネンスという特殊環境のせいだと思っていたぜ。


「そしてプラチナ・コード、それを為したXM3という存在が明らかになり、即座に動いたのがサンダーク。
何しろ戦術機によるハイヴ攻略の可能性を示唆して居るわけだから、自国内に多数のハイヴを抱えるソ連に取っては垂涎の的。
奴は第4計画と第5計画の確執も知った上で、利用していたフシが在る。
つまり先のインフィニティーズ戦を予期したんだろう。
正確に言えば、XM3の価値を最も早く評価したのも奴かもしれない。
結果、より正確にXM3の真価を図るために、ビャーチェノワ少尉を残した。」

「―――え?」

「考えても見給え。
サンダーク大尉に取ってもESP発現者は、数が少なく貴重なのだよ。
XM3の価値を見極めるとて、ポンポンと他のサンプルを使い捨てに出来るものじゃない。
限界を超えた調整などしようものなら、確実に破綻するのは分かっている。
その点、廃棄実験に使われようとしていた彼女は適任だったといえる。
つまりは、最大値でXM3にぶつける被験体として残した訳だ。」


―――グゥ!

限界を超えたプラーフカは、絶命するまで暴れ回る、とも言っていた。
テロの時はオレと唯依で止められたから助かったようなモノ、それでもクリスカとイーニァは二人ともボロボロだった。
唯依との模擬戦時のあの雰囲気・・・、やっぱりもう一度それを遣らせたわけかッ!

クソッ!!
いつかその澄ました面、ぶん殴ってやるッ!!


「・・・御子神大佐か・・・。
前回逢ってみたかったとつくづく思う。
彼は、XM3の齎す価値も、危険性も、重々承知していた。
それを持って、第5計画派の謀略渦巻く敵地に平然と乗り込んで来たのだから、その豪胆さには驚嘆する。
まあ、第4計画が推進している作戦に必要な機材をボーニングが握っていたのだから、仕方ないとも言えるが、それにしても尋常じゃないな。」

「・・・・・・。」

「此処に来て早々にハルトウィック大佐とサンダーズ大尉、そしてハイネマン氏と話をしている。
内容については、君が知らないほうが良い情報もあるから、割愛しよう。
君の知っている結果で言えば、ハルトウィック大佐にはXM3の供与を、ハイネマン氏にはXM3の仕様書を開示、そしてサンダーク大尉とは模擬戦とXM3供与の見返りに、“紅の姉妹” の身柄引き渡しを要求している。」

「なッ!?」

「なにせ、こちらはその時“香月レポート”の検証と、市井にまでリークされた情報の統制、そして崩壊したドクトリンの後始末で此処に来る余裕など欠片も無かったのでね。
後で報告を聞いて絶句した―――、在り得ない、とね。」

「・・・・・・。」

「だが・・・細かいことは省くが、結果としてその行動が全てを平穏に済ませた。」

「・・・・・・。」

「考えても見給え。
今でこそ、XM3は搭載した機体をほぼ一世代分進化させてしまうOSとして知られている。
けれど実際米国の場合、今保有する全ての戦術機を一世代先に置換するとしたら、いったいどれだけの金と時間がかかると思う?」

「―――あ・・・」

「それが、XM3なら正規版でも1機当たり数10ドル、LTEで数ドル、LITEならほぼ0―――。
単純な貨幣換算だけでも途轍もない価値があり、加えてXM3の普及により生存することが出来るだろう衛士の数を考えると・・・、な。」

「!・・・。」

「それだけに、このXM3を日本が独占したら・・・?。」


・・・そうか。
戦術機がBETAに対する唯一の対抗手段である今、時間を掛けない戦力の向上は、何に代えても欲しいのは何処の国も同じ。
もし秘匿しようにも、一国規模の部隊に展開した時点で、確実に漏れる。
特に日本は何時侵攻が起きてもおかしくない状況にあるんだから、使わない選択肢はない。
そしてそれを独占していたら、日本は世界中から総スカン、内容を知る関係者は親類縁者含め世界中から狙われる。
更に言えば・・・その中には、オレ達、アルゴスのメンバーも含まれているってことだ。


「・・・大佐はユーコンに来た直後、プロミネンスにXM3の供与を約束した。
イーダルとの模擬戦、ましてやブルーフラッグでF-22を叩き潰す前に、だ。
逆に言えば、その時点ではXM3の価値は実はそこまでとは考えられていなかった。
プラチナ・コードや、白銀少佐の斯衛大将戦は公開されていたが、一方では白銀少佐の突出した機動能力故とも取れる。
もし、君たちがインフィニティーズを墜とした後で、XM3を供与する動きがあったとしたら、確実に米国側から待ったが掛けられただろう。」


・・・図らずも、XM3が万人に絶大な恩恵が在ることを、オレ達が一番最初に証明して見せた・・・、って事か。


「先も言ったように、第5計画は大佐を暗殺し、アルゴスに遺るXM3を徹底解析してそれ以上のOSを作る積もりでいた。
当然、日本はXM3を秘匿、乃至、公開するにしても何らかの交渉材料にしてくると読んでいたし、占有することが大きなアドバンテージになるのは眼に見えている。

だが、大佐は殆ど見返りを求めず、XM3を公開し供与を約束した。
協議や契約内容の検討もなく、つまりは米国が口をはさむ一切の暇を与えず即決で、謂わばEUの代弁者であるプロミネンスとソ連に対して、だ。
それにより秘匿・独占することで生じる全てのリスクを回避してしまったわけだ。」


・・・最重要機密の供与にも驚いたが、そう言われれば納得もする。
それにより結果的にはオレたちまでもが護られた訳だ・・・。
御大[Great Colonel]”がXM3を公開していなければ、米国を始めEU、ソ連も同じものを再現しようと目指すだろう。
御大[Great Colonel]”暗殺の成否に拘らず、日本以外で唯一XM3に換装されたアルゴス隊は狼の中に取り残されるスケープゴート、どう考えても碌なコトにならない。


「・・・実際、独占するのが理想ではあったが、全面公開は米国に取っても悪い話ではない。
とある一国の戦術機だけが一気に性能向上すれば危機感を覚えるが、全世界頒布は全ての戦術機がほぼ同時に上がることになる。
それは元あった性能差、在るいは機体数差はそのままのこると言うことだ。
否、全ての機種に恩恵があり、性能向上に繋がると言うことは、戦術機の保有台数が多い国ほど上がり幅が大きい、と言う事に他ならなかった。」


最善ではないが次善・・・米国が黙る事をちゃんと読んでいたってことか・・・。


「・・・詰まるところ、大佐が行う全世界への供与は、国家間の軍事バランスを変えず、時間も金も掛けずにBETAに対してのみ人類が優位になる、と言うことだった訳だ。

・・・それを証明したのが、“新潟の奇跡”―――。

尤も、新潟防衛戦ではXM3だけではなく、いろいろ仕掛けていたみたいだがな。」


ああ、27,000のBETAに対し人的損耗0、正に奇跡の防衛戦。
だが公開されている映像を見ただけでも、何かと突込みどころ満載の内容。


「ついでなので、ソ連の状況についても言及しておこう。

ソ連は、イデオロギーの問題があり、西側諸国とは一定の距離を保っている。
しかし国土の殆どを喪い、アラスカを租借している今、最近は体制さえ維持できるのならイデオロギーに拘らず西側に迎合すべきとの意見も強くなっている。
将来的にBETA攻略が成れば、自国内に多数のハイヴを抱えるソ連は、最大のBETA由来物質保有国になる可能性もある。
だが今現在、領土を喪ったソ連の売れる物は、武器技術しか無い。
先月XFJに仕掛けられたSu-47との評価試験・・・あれもその一環だと言える。」

「・・・・・・。」

「サンダーク大尉のПЗ[ペー]計画については、ソ連上層部でも疑問視されているのは、以前も言及した。
あの国の権力構造的に、リスクを冒した大きな成功よりも、安全確実な小さな成果を求めるからとも言える。
その中で、今回のXM3だ。

以前上層部は“ПЗ計画<ステルス技術” という優先順位だった。
それがXM3の公表とインフィニティーズ撃破により、“ПЗ計画<ステルス技術<<XM3”と言う構図に変化した。
理由は、言わずもがな―――。
機を見るに敏いサンダーク大尉も同じ、否、誰よりも早くそのポテンシャルを察知していた可能性がある。
だから自らの最大の研究成果であるビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉の転籍まで認めた。
当時満身創痍で・・・君には悪い言い方だが・・・廃棄予定者で在ったとしても、機密に厳格なソ連としては異例中の異例。
国連軍の中であれ人事権まで渡す転籍は、殆ど亡命容認に近い。
今、国連横浜基地に籍を置き、ユーコンに転属となっている二人は、少なくとも本人たちが希望すれば何時でも日本か米国に亡命出来る状態にあるわけだ。」

「 !!ッ 」

「・・・一方でサンダーク大尉は、自らの研究に見切りを付けた感もある。
第3計画を引き摺り時間と金を掛けた割に、得られた成果が少ないと言うことだろう。

だが、当初サンダーク大尉が廃棄処分も止むなしとしたビャーチェノワ少尉がこの短期間で復帰した。
・・・まったく、あの魔窟には何があるのかね。
復帰しただけではなく、“新潟の奇跡”にて目覚しい機動を示した5騎・・・Amazing5の一角とさえ目されている。

こう言ってはなんだが、彼女たちが今も横浜で治療中なら問題はなかった。
しかし、XM3によって戦術機が全て同等にレベル上げ出来る以上、次に求めるのは白銀少佐や君の様な、突出した存在なのだ。
彼女たちがПЗ[ペー]計画の体現者である以上、その秘密を知ることで、それが量産できるのでは?、と考える人間が必ず居る。
第3国、テロリストを含む非合法組織、・・・そして残念ながら我が国にも居るだろう事は否定出来ない。
御子神大佐を刺激したくないサンダーク大尉は否定するだろうが、復活した“紅の姉妹”を調べれば更に成果が上がると、ソ連側が考えても不思議はない。」

「―――ッッ!!!」


何を浮かれていたんだ、オレは・・・。
言われてみればそのとおり、クリスカとイーニァが元気になって還ってきたことは、新たなリスクの種でもある。
その存在自体が機密である彼女たち。
今のまま何時までも居られるわけじゃないのは、頭じゃ理解しているって言うのに・・・。


「君を・・・、君たちを取り巻く情勢が理解して貰えただろうか?」

「・・・ああ、オレがアマちゃんだってことが、イヤってほどな。」

「・・・勘違いしないで欲しいのは、君はいまや重要人物、謂わば米国の希望の星なのだよ。」

「・・・はぁ!?」


今までの話の流れの何処に、そんな要素が在るんだ?


「―――G弾という拠り所が幻と消え、その偏ったドクトリンに歪められたATSF、その産物であるF-22を墜とした。
だが、一方でF-22を墜としたチームの筆頭が、米国民である君であることに軍事関係者はみな安堵している。
間違っていた幻想を打ち砕いた、唯一の“米国民”。
それを為したXFJの主席開発衛士にして、XM3エキスパートが米国人初の“レベル5er[ファイヴァー]”。

今や無視することの出来ない横浜の第4計画、その主要人物である、御子神技術大佐・白銀少佐とも知己。
今回その白銀少佐との1on1で、あそこまで拮抗してみせたのは、紛れもなく君だけだ。

米国はこれから新たな軍事ドクトリンを創出し、F-22に代わる抑止力として“最強”の実現も求められる。

そこに於いても君がXFJ-Phase4で示した可能性は、今後目指すべき方向の一つの示唆でさえある―――。」

「・・・・・・。」

「・・・無論、君が彼女たちを気にしているのも理解している。

―――ここからが、こんな密談の本題、君への提案・・・寧ろ要請と行っても良い。
無論、ダンバー准将とも同意した内容だ。」

「―――!!」

「既にG弾ドクトリンの崩壊とF-22失墜を受け、米国防総省高等研究計画庁(DARPA)、陸軍、NASAがATSFに代わる“第5世代戦術機開発計画”を立ち上げようと画策している。

君にはその開発衛士を率いる部隊長として開発に参加して欲しい―――。」

「なッ―――!?」

「君が此処に来る理由だったXFJ計画は完了しており、議会承認も終わる。
確かにフェニックス計画は継続しXFJの機体もその参考として存在するが、正確に言えば、2号機と今回の3号機に付いては、予算上米国側ボーニングの所有と成っている。
1号機について所有権は基本日本側にあるのだが、正直搭載されている“装備”が装備だけに、大佐は敢えて貸与という形式で遺したと言える。
統合補給支援機構[JRRS]は兎も角、第2世代アクティブ・ステルスも、OSその物が変わってしまうXM3では、弾いてしまう可能性が高い。
時代遅れの機密でこれ以上余計な嫌疑を掛けられるのを避けたとも言えるが、まあこれは、我々が機密漏洩だと騒いだ“装備”など歯牙にもかけないと言う御子神大佐の皮肉と見ている。」

「・・・だろうな。」

「もともとフェニックス計画はF-15の焼き直し計画、ハイネマンとは別系統で新たな開発計画が必要だというのが上層部の一致した見解だ。
戦術機に関しては国境を感じていない彼に危機感を覚える向きもあるのでね。
ロックウィード・マーディンでも新たなスカンク・ワークスが発足した気配もある。
幸いXFJは“共同開発”計画故に、今回開発された内容については、米国が独自に運用することも可能であるわけだ。
勿論、機密漏洩の嫌疑を掛けた件については、内情はどうあれ正式に謝罪することに成るだろう。」

「・・・・・・。」

「君にはこの後、原隊復帰した上で、極秘裏にラングレーかエドワーズ、ネリス、いずれかの基地に転属してもらう事になる。
当然階級は中尉昇格、乃至2階級特進で大尉も有りうる。

そしてビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉については、君から強く亡命を勧めてほしい
米国市民として正当な保護を与えるためにも、できるだけ早期に亡命を申請してほしいのだ。
その上で国連軍から転属して貰い、彼女たちも同じ部隊所属とし君の部下につける。
彼女たちもまた、XM3“レベル5er[ファイヴァー]”にして、Amazing5の一角。
BETA実戦をくぐり抜けてきた者として戦力に申し分ない。
基地を特定していないのは、彼女たちの存在を第3国や非合法組織からの防衛上、秘密裏にしておきたいからだ。
場合に拠っては、証人保護プログラムの申請も検討し、国内の不穏分子についても対処する。
当然、米国市民として遇する以上、意に添わない検査や実験は行わせない事を約束しよう。」



―――破格・・・なんてもんじゃねぇ・・・。

確かに今回のPhase4に関しては、自分としてもやり切った感がある。
今オレにある、ありったけをぶち込んだのだ。
白銀少佐との模擬戦こそ惜敗だし、高速戦闘以外まだまだなのは理解しているが、手応えは感じた。

だから、XFJで遣り残した事が在るのか?、と訊かれれば、正直無い。
ここに残れば、オレがやる事は、むしろ各国プロミネンス派遣部隊へのXM3教導、という事になる。
それは、本当にオレがやりたい仕事なのか?

なるほど・・・。
ウェラーの要請も理解できる。
オレ自身の待遇については余り頓着はしていなかったが、クリスカやイーニァに絶えずリスクが付き纏うのは勘弁して貰いたい。
それを少しでも守れる立場と言う意味では、昇進も大きな意味を持つ。

このまま中途半端な立場でユーコンに留まれば、米国内の後ろ暗い勢力を含む世界中から狙われる、という事になる。
存在を秘匿して何処かの基地に転属すれば、少なくともそのリスクは大幅に減る・・・と言うことか。

その為にあの[●●]尊大な米軍が譲歩し、曖昧だったXFJ計画への嫌疑についても謝罪してくれるとなれば、唯依の誇りもまた守られる。

加えて仕事の内容。
XFJとして限界ギリギリまで踏み込んだ自覚はある。
これ以上となれば、それはフレームや主機から構成する必要性が生じ、それはもう基礎を不知火に置いた機体ではない。
自国内にハイヴの存在しない米国では、求める戦術機のコンセプトが違うのは当たり前。
米国に依る米国のための最強を作り出す事に他ならない。
・・・それを、クリスカとイーニァと出来るなら・・・。

そもそも日本と米国の共同推進プログラムだったXFJが正式に完了した以上、オレには何時復隊命令が来てもおかしくはない。
新潟防衛戦、そしてそれを受けた今回のトライアルが在ったから保留されている可能性もある。
その上で、復帰したクリスカ達の様子から、この提案になったのだろう。



だが・・・。

―――この空気が抜けていくような現実感の希薄さはなんだろう?

ウェラーの示す未来が望みうる最上の状況であることは、判る。
ジャックポットを当てたような物なのに、―――なぜかピンと来ない。



「・・・提案・・・いや要請は理解した。
オレとしては、確かにかなり条件の良い話ではある。
が、亡命の話は二人に確認してみないと、回答できない。」

「ああ、勿論それは構わない・・・が、可能であれば2,3日中に回答を貰えると有り難い。
君については遅かれ早かれ原隊復帰が命じられるだろう。
そうなってからでは、イロイロと準備が必要なのでね。」

「ああ・・・、了解した。」


・・・感傷、だよな。
事実、唯依はすでに新しい横浜の地で、バリバリやっている。
少なくとも“御大[Great Colonel]”の下だ。
オーダーはきついかも知れないが、その他の事からは絶対に護ってくれる安心感がある。
階級も大尉になったと聞いた。
ならばオレも今の心地良い環境に甘んじること無く、新天地で腕を磨くのも悪くはない・・・。



その時、突然控室のドアが開いた。


「・・・おやおや、こんな所で密談ですか。
まさか君たちが居るとは思いませんでした。」

「・・・その言葉、そのままお返ししますよ、Mr.ハイネマン。
しかも相手は、白銀少佐・・・どんな内容か、大変興味がありますな。」


皮肉の応酬。

そう、入ってきたのはハイネマンと、鎧衣少尉を伴に連れた白銀少佐その人だった。


Sideout




Side 武


誰も居ないと思っていたそこには、二人の男が居た。
咄嗟にされた敬礼に、返礼する。


「・・・?、ブリッジス少尉と?」

「ああ、失礼、私は米国国防情報局に属するデイル・ウェラーだ。」

「・・・ご丁寧にどうも。
国連太平洋方面第11軍、通称横浜基地所属の白銀武です。」

「同じく、鎧衣美琴です。」

「・・・ヨロイ?」

「ああ、そっか、DIAと言うことは父と知己・・・と言うかきっと商売敵ですね。
まあ、父が何をしているのか、ボクは内容を全く知らないのでスルーしてください。」


ウェラーと言う渋めの男性、美琴の親父さんと同類、か。
情報局というだけで身構えたが、名前に微かに反応したのを美琴に見破られるなんて迂闊すぎる。
但し、CIAの系列なら警戒すべきだろう。



彼方からハイネマンに渡して欲しいと、数枚の画像が送られてきたのは、夕方だった。
機密ではないが、俺からハイネマン氏に接触すれば、何かと要らない憶測も飛ぶだろう。
仕方なくフェアウェル・パーティの席でコソッと打診すれば、夜の22:30にアルゴス試験小隊専用野外格納庫を指定された。
この衛士控室なら本当にセキュリティフリーらしい。
どうやら前回彼方が来た時に隠蔽された監視を嫌い、欺瞞情報を流すよう細工して行ったらしく監視サイドの人間は未だに気付いていないとか。


「まあ、そちらの話は終わった様子。
場を譲っていただけると有り難いのだがね?
最近私の周囲は監視が厳しくてね、自分の執務室よりも此処の方が自由なのだよ。
ウェラー捜査長も、それを知っているから此処を選んだのだろう?」

「・・・申し訳ないが・・・職務上、看過出来ない。」

「ユウヤこの人、あたま固い人?」


美琴が訊く。


「ああ・・・まぁ、融通は利くけどな、基本的には堅物だ。」

「・・・では、ウェラーさん、別に職務に忠実なのは構いません。
ですが一つだけお尋ねします。
その答え次第で、考えさせていただきます。」

「・・・。」

「・・・今のCIAは、お好きですか?」

「・・・・・・・・・個人的には、大嫌いだ。」

「・・・判りました。
居て頂いても結構です。
但し、一切の質問は受け付けません。
それでも宜しければ、ですが・・・。」

「・・・約束しよう。」

「・・・オレも居て構わないのか?」

「ああ、まあ、彼方・・・御子神大佐からこの写真をハイネマンさんに渡して欲しいと頼まれただけだからな。
密談って程の密談じゃない。」


そう言ってオレは、数枚の写真をテーブルに広げた。



何の情報かと見れば、見知らぬ戦術機の写真だ。
真上から陸送される途中、熱感知カメラでカバー内部を透視したものだった。
恐らくはこの基地周辺状況把握のため、彼方が自律飛行で飛ばしているXSSTからの情報。
A-00メンバーの安全保安上の措置だとか。
オレも過保護な自覚はあるが、彼方だって相当だぜ。
写真は熱感知カメラ故、色彩は微妙だが、形状で言えば今まで見たことのないタイプ。
ソ連領から国境でもあるユーコンを目指しているらしく、少し気になるのでハイネマンに確認してくれ、とのことだ。
彼方の見立てでは、今までの流れと違うソ連の戦術機ということで、それなり[●●●●]らしい。
その言い方から、F-22よりはかなり評価していることが伺えた。













以前彼方にこの世界の戦闘機と戦術機について説明してもらったことがある。

そもそもオレがF-15と聞けば、前の世界なら当然の様に戦闘機[●●●]を思い浮かべたもので、それがそっくりそのまま、戦術機[∨∨∨]に成っているのかと思っていた。

が・・・、どうも、そうではないらしい。


元の世界ではF-4ファントム戦闘機が登場する前に作られていたセンチュリーシリーズという、遷音速速度域の戦闘機群が在るらしいのだが、この世界でのそれらの写真をみて驚いた。
F-104、F-105、F-114、F-115、F-116、F-117、F-118、そしてYF-122、YF-123・・・、つまりは元の世界で何処となく見たことのある様な戦闘機ばかり。
しかも若いナンバーの機体は、既に1960年代のベトナムの空に舞っていた、というのだ。

記憶を整理して思い返すと、元の世界では1969年に漸く達成したアポロ11号による月面着陸を、この世界では1950年台、それもかなり前半で成し遂げ、1970年代には恒久的な月面基地すら作っていた。
元の世界では1990年代に入っても国際宇宙ステーションの運用までで、21世紀に入っても継続的な月面着陸さえ行われていなかったと記憶している。

つまり宇宙航空分野では、スタート時点で約20年、その後に宇宙開発に至っては50年以上この世界が先を行っている、と言う事になる。
故に、その分野の歴史を顧みれば技術進化の過程上、元の世界では第2次世界大戦で飛んでいた最強のレシプロ機と言われた戦闘機が既に第1次世界大戦の空に飛び、第2次世界大戦で遷音速領域のジェット戦闘機、そしてベトナムの空には元の世界の近代戦闘機に似た超音速戦闘機が飛んでいたのだ。


だが、1973年のBETAによるオリジナルハイヴ建設と、そしてその後の光線級出現が決定的な歴史の転換点になった。
光線属種の撃破能力は、航空機、特に軍用機の進化を完全に打ち止めてしまった、と言うことになる。

宇宙へのシャトルや、HSSTはそのまま正常進化しているものの、大気圏内を運用する航空機については、この世界での1970年初頭、元の世界では1990年初頭に相当するレベルで停止している、と彼方は言った。
ハイヴが建設された当初、BETAへの攻撃に当時最先端だったステルス戦闘機や爆撃機を使うのは当然で、それが一切通じなかった事から、航空機の運用は主に軌道高度を運行するHSSTや一部の輸送機に絞られて行ったからだ。

そして対BETA主力戦闘装備が、MMUから発展・進化し、戦車に代わり高速で平面移動が可能な噴射跳躍ユニットを装備した戦術機Tactical Sureface Fighterへと遷移して行ったのは自然な流れだろう。
当然元々の戦闘機メーカーは、その全てが戦術機メーカーに変化した。
だからこの世界では、空軍の担当領域が存在せず宇宙軍となっており、一方噴射跳躍ユニットの進化で、対人戦に於いては空中戦も可能であっても、その所属は陸軍となる戦術機が進化してきた、との事だ。



その戦術機の進化にエポックメイク的な功績を遺した天才のコトも教えてくれた。

ジョンソン・ボイド[Johnson Boyd]―――退役時は陸軍大佐。
元々1960年代は空軍教導隊所属であり、“40秒の男[Forty Seconds Boyd]”と呼ばれ、当時最高の空戦能力を持っていたらしい。
だが、先に言ったように、戦闘機に依る空戦は光線級に制され、米国に於いて空軍は淘汰されていった。

元の世界にも米空軍に同じような伝説の存在が居たらしいが、この世界のボイドはその空戦能力を買われ、戦術機に依る空戦指導に招かれて陸軍に転籍していたのだ。

そして元の世界同様、それだけに留まらなかったのが天才たる所以、その後戦術機機動の教導の中で、戦術機に依るE-M(エネルギー機動)理論という独自の機動理論を構築していく。
しかもこの世界のボイドは、戦術機に於ける空戦時の3次元E-M理論と、地上戦時の2次元E-M理論、その双方を確立している、とのことだった。
3次元では、高度と運動量、そして姿勢の変化に依る抵抗係数の基準式を示して居るのに対し、2次元では、運動量に対する空気抵抗と接地抵抗・・・摩擦抵抗ではなく、地上構造物のピボットとしての抵抗・・・及び、機体の電磁伸縮炭素帯出力を考慮した機動理論であるらしい。
この理論に興味を持った当時の参謀総長であるジョン・マコーネス[John McCornes]が、当時まだ一介の教導官で少佐であったボイドを迷走していたF-15の開発に突っ込んだと言う。

そのF-15は当初ボイドの理論に沿って設計されたものの、その後の陸軍の過剰な要求をとり込むうちに、最終的にはボイドの理想と乖離していった。
最終的にボイドの理想は半分も叶わなかったらしいが、それでもその機動は既存の戦術機と一線を画し、長く最強の戦術機として君臨、今も世界各地で使われているのである。
しかし、ボイドはそれに飽きたらず、理想の戦術機を実現すべく戦術機マフィア・・・非承認で活動する裏チーム・・・で勝手に開発を推進して行った。
その計画は後日LWTSE計画として正規化され、YF-16、YF-17の実現に繋がったが、その段階では如何せん試作する予算も無い。
そこでボイドは “Hi-Low-Mix構想”と言う適当な言い訳をでっち上げ、予算を捻出させたというのは有名な話だとか。

結果F-16は若干の変更はあったもののボイドの理想に最も近い最高の運動性能を得るに至り、構想からたった5年で量産に移行した。
更にはF-15の1/3程度の価格と維持費だったこともあり、現在西側最大のベストセラー機になっていると言う。
一方のYF-17は、海軍での運用を目的とした度重なる設計変更に、完全にボイドの理想から離れ、最終的にはボイドの手を離れF-18として世に出たものの、評判は良くなく、度重なる改修を受けることになった。

また、攻撃力と機動能力をバランスさせた名機として、各戦線でBETAと対する海兵隊に非常に高い評価を受けているA-10も、ボイドからE-M理論の薫陶を得た戦術機マフィアの一人、ピア・スプライ[Pierre M Spray]が中心と成って実現させている。

つまり、ボイドは海軍が中心と成って進めたF-14の開発以外、米国陸軍の第2世代中核機であるF-15、F-16の開発に中心的な役割を果たし、最後は理想とかけ離れたとはいえ海軍の後継機と成ったF-18の開発を開始した人物であった。
これだけの功績を為したが、ボイドの突飛な発想や強引な遣り方は、一方で陸軍内、特に上層部に敵を量産し、結局ボイドはF-16完成後、軍を去る。
その後、一種軍事コンサルタントとして、意志決定理論の一種であるOODAループを提唱、各地のBETA戦線に直接関与した海兵隊の戦術に大きな貢献をした、と言うのは別の話。
90年代・・・F-22の先行量産機が出たその年に、その功績を殆ど知られぬままここの世を去っているという。

実はこの世界の戦術機について、明確な知識など全くなかった彼方が、横浜で戦術機の改修をするときに使っているのが、このE-M理論だという。
勿論彼方なりにパラメータを調整したり、剰余項を追加したりしているらしいが、基礎理論が在ったことでかなり手間が省けたのは確かだとか。
もしワシントンに行くことがあれば、アーリントンに墓参したいとまで言っていた。



元の世界に於いても存在した、戦闘機のE-M理論―――それを過去のものとし、新しい最強戦闘機の在り方を打ち立てたのがステルスという概念だった。
相手に補足されること無く遠距離から瞬殺し、即離脱する・・・、そのコンセプトには近接格闘戦の優劣など全く問題にならないのだ。

だが、彼方に言わせると飽く迄これは戦闘機[●●●]だからこそ成立する機能で、戦術機[∨∨∨]に於いては完全に的外れだと言う。
そもそもがBETAに対抗するための戦術機が、その基本理念を外れ対戦術機戦のみを追求すること自体がナンセンス、という意見には、激しく同意する。
なにせBETAにはステルスは効かない。
ならば最も重要視すべきは機動性・近接格闘能力であって、ステルスなどという方向に走るべきじゃないだろ。

そしてそのステルス能力も戦術機では中途半端、なのだ。
この世界では言った通り、1970年代には既に航空機のステルス技術が存在していた。
高度はせいぜい5km程度、数100kmを移動する戦闘機同士の空戦に於いて、レーダーの電波は基本水平方向から飛んでくる。
それが航空機の形状であれば、水平方向から来る電波の反射を制御することで、形状的にも高いステルス能力の確保が可能。

けれど、戦術機[∨∨∨]の形状は、どんなに頑張っても自ずと限界がある。
匍匐飛行でも、水平方向の投影面積・反射角は、決して戦闘機レベルまで低減することなど不可能なのだ。
まあ、それをある程度可能にしているのが戦術機のステルス技術だというのは判るが、物理的限界は厳然と存在する。
結果、最も隠蔽性の高いステルス戦闘機[●●●]のレーダー機影がピンポン玉ぐらいだとすれば、ステルス戦術機[∨∨∨]であるF-22EMDのレーダー機影は、せいぜいソフトボール程度。
だから小隊レベルのチャチなマルチスタティックレーダー程度で容易に補足できる、と言うことだった。


―――戦術機は飽く迄“対BETA兵器”。
目的を履き違えた対BETA兵器としてのF-22という戦術機は、オレにも完全な駄作としか思えない。


大体がATSFの前提も間違っている。
まあ、これは彼方の推論の結果、今のところ第4計画だけが掴んでいる情報なので、仕方ないといえば仕方ないのだが・・・。
ハイヴが攻略され、反応炉が制圧出来れば、エネルギーを反応炉に頼っているBETAは活動を停止する。
エネルギー消費が半端ない光線級は、真っ先に活動停止する。
つまりハイヴさえ攻略してしまえば、BETA完全殲滅まで20年などという時間は掛からない。
実際、ここに来る前に明かしてくれたRes-G弾を利用するG-6[グレイ・シックス]ループが回れば、早くて2,3年、遅くとも5,6年で地球上からBETAは駆逐される。
因って早期に光線級が排除されれば、空は戦術機のエリアではなく、戦闘機のエリアだ。
戦術機はその形状からどんなに頑張っても遷音速の速度域であり、中途半端なステルス性しか持てない以上、空に在っては戦闘機の敵じゃない。

結局所詮は奢った陸軍の暗愚、それがF-22と言う戦術機だった。



そういう意味で、ハイネマン氏は判っていた。

F-15の再開発に携わる彼には、ボイドのE-M理論にも、当然触れているはず。
それはYF-23を見れば一目瞭然で、ステルス性よりもE-M理論に沿った近接格闘能力を重視している。
だから重くなり機動を阻害する形状ステルスには拘らず、謂わばポン付できるアクティブステルスをメインとした。
結果的に形状ステルスの効果がイマイチ望めない戦術機に於いては、その方が効果的で、ステルス性能でもYF-22を凌駕してしまったのだが・・・。
性能では勝り、経済性で僅かに劣っていたYF-23だったが、対BETA兵器であるという前提を踏まえれば本来YF-23一択だったのだ。

その選択を決定的に歪めたのがG弾の完成による、G弾ドクトリンの成立だった。
当時の軍上層部は、戦術機に依る対BETA戦必要なしというもので、在っても小規模であり、寧ろハイヴ鹵獲物質の争奪戦に於ける対人戦がメインになる、と想定した。
その先走った蒙昧は、不必要な近接格闘性能に優れたYF-23を不要とし、更には勝者であったF-22でさえ、要らないんじゃね?、との声まで上げた。


ハイネマン氏の軍上層部に対する失望はどれほどだったのか、オレに理解出来るとも思わないが、上層部の無能は聞いただけでも呆れるばかり。
ハイネマン氏が日本やソ連に傾注しても仕方ないレベルだと思うぞ?














プリントアウトされた数枚の写真。
それを手にしてハイネマン氏が唸った。


「PAK-FA・・・T-50か?」

「!!ッ、実在していたのか!?」

「T-50?」

「タケル、T-50って?」

「・・・彼方に依れば、存在が噂されていたソ連独自のステルス戦術機、だそうだ。」

「・・・まさか、貴様コレにも?」

「君は質問禁止のハズだが、まあいい。
・・・ボクとしては甚だ残念ではあるんだけどね、T-50には直接関与していない。
この写真を見る限り、是非関わりたかった処ではあるがね。」

「・・・・・・。」

「勘違いしているのは、君の方だよ、ウェラー捜査長。
ステルス技術は、元を正せば1970年代の戦闘機で進化した技術、当時のソビエトにもステルス戦闘機の基礎技術は存在したのだよ。
CIAの主張するような米国独自の技術では決してない。

PAK-FAとてソビエト版ATSF計画である多機能前線戦術機計画(MFPTI=МФПТИ)で企画された戦術機。
MFPTIの開始はATSF計画から1年遅れただけ、PAK-FAの開発そのものはスフォーニ開発局の別ルートでSu-47はおろか、Su-35やSu-37と並行して行われていたはずだから、例えソビエトが領土撤退に依り疲弊していたとしても今出てきて驚かないよ。
そう・・・、今後の戦術機がXM3をBASEとするのは必須だから、早期のフィッテイングが望まれる。
今直ぐそれが出来るのがプロミネンスで在る以上、此処に来ることは必定、と言うことなのだろう。
G弾ドクトリンが崩壊し、F-22最強説の幻影が霧散した今、最強候補XFJ-01の対抗としてソ連が名乗りを上げる事は、今後の海外輸出を睨めばおかしなことじゃない。」

「・・・ココのところの急激な状況変化に、機を見た・・・と?」

「そうだね。
・・・Su-27、Su-37からSu-47の流れは、近接格闘機動に劣っていると言うわけではないが、それよりも平面制圧を目的とし、継続攻撃能力を重視したコンセプトだからね、重量増は避けられなかったんだよ。
まあ、ソ連製にしては値段もそれなりだしね。
ハイヴ攻略を行う近接格闘能力で言えば、コンセプトがXFJ-01やYF-23に近いと思われるこのT-50の方が上だろう。」

「それは、E-M理論から見て、ですか?」

「・・・白銀少佐は若いのに良くそんな事を知っているね?」

「ああ、使っているのは彼方ですけどね。」

「・・・さすが御子神彼方、知っていたか。
Evolution4の構成を見たとき、もしかしてと思ったが。
ジョンソン・ボイドは、私がたった一人、師と仰ぐお方だ・・・。
―――F-14の設計時にはまだ知らなかったんだが、その後は・・・、ね。」

「・・・。」


氏の技術協力が在ったと噂されるSu-27からの流れには考慮した、と言うことか。


「・・・そうだね、この写真を見る限り、サイズは大柄なSu-47よりもXFJに近い。
スリムな構成をしているから、重量も抑えているだろう。
しかも3次元推力偏向ノズルや可変ストレーキ・・・LEVCONと言ったかな・・・と思しき機構が副翼に着けられている。
正確にはちゃんとスペックを見た上で、計算しないと判らないが・・・、見て取れるサイズから無理矢理出せば、・・・2次元機動はXFJ同等以上の可能性もある。
元々E-M理論を使った第2世代戦術機機動の集大成とも言われるのは、MiG-29だしね。
一方で3次元機動は、・・・XFJには届かないかな。
形状ステルスの名残が邪魔で、抵抗が大きいようだね。
まだ概念実証・・・いや先行量産に近いかな。

何れにしても、XFJ-01のライバル候補、と言うわけだ。」

「ステルス性能は、高いのか?」

「見た限り形状ステルスは大したことない。
F-22の倍は見つけやすいかな。
但し・・・断定は難しいがレーダー波放射面と思われる箇所が各所に見受けられる。
これはYF-23と同じく効果が薄くて重量増に繋がる形状ステルスを一部捨て、ソビエトが得意としたアクティブ・ジャマー・・・恐らくは第2世代か第3世代のアクティブ・ジャマーで位置を撹乱する方向だろう。

YF-23の第2世代アクティブ・ステルスは、謂わばハッキングで存在を隠蔽する。
逆に言えばハッキングが出来ないシステムには無効化される。
しかしアクティブ・ジャマーはレーダー波の反射元を他の位相を持つ電波で撹乱し幻惑するからシステムには関係ない。
存在は認識されるから隠密行動は出来ないが、これが完全に機能すれば、対人戦では存在は感じられるのに位置が特定できない、まさに近接格闘戦に特化した厄介なステルスとなるだろうね。」

「・・・。」


―――ウン、まあ厄介そうな相手ではあるかな。
数枚の写真だけからこれだけ予測するこのハイネマン氏もやっぱ只者じゃない。
内容は・・・帰ったら彼方に伝えるとするか―――。


Sideout




Side ベリャーエフ

イーダル小隊専用野外格納庫 地下研究施設 23:50


「・・・クッ!、こ、これもダメだッ!」


繰り返すプラーフカの調整―――後催眠深度や向精神投薬の配合・比率。
それらをいくら弄っても、所詮誤差範囲。
記録されている最大融合率は、92%・・・。

要求された融合率は95%―――、恐らくはオレの生命線[ボーダーライン]、それが研究者生命なのか、文字通り命の閾値なのか、無能な上司の意向など知らんが、粗暴なKGB上がりなら後者だろう。

そもそも要求が無茶すぎる。
大体物事の進化は漸近線に倣うのだ。
融合率も70%程度までは、順調に上がった。
そこから伸びが鈍化し、90%台に入ってからはたった1%を上げるのにどれだけ苦労することか。
それが自然の摂理でもあるのだ。
だと言うのに、無知な上司や党本部はそのことも理解せず、同じペースで上がるものと捉えている。

特例的な成功例と言えた“紅の姉妹”を除けば、マーティカとスィミィの融合率は91%前後だった。
スィミィのポテンシャルが史上最高に近く、イーニァ・シェスチナを超えていた所から、通常の育成プログラムに沿って制御用のバディを作成し、時間を掛け一緒に育てれば、あるいは95%をあっさり超えていただろうとも予測できる。

けれど拙速すぎる要求にその選択肢は元よりなかった。
スィミィの発現が確認されたのは先月、培養期間としては幼児期の終わり、発生3年目だ。
あれ以外の個体は、平凡な値でしかない。
更に悪いことに、それ以降の分離で培養していた胚珠が全て死滅していた事が明らかになった。
その後の調査では“白き結晶”自体のテロメア枯渇が確認された事から、培養初期の旺盛な細胞分裂に耐えられなかったと考えられる。
つまりПЗ[ペー]計画に於けるESP発現体は、この個体群が最後となり、スィミィは“白き結晶”から発現した本当の意味での“ラストオーダー”。

にもかかわらず・・・。
結果的に、失敗した、としか言えない。
―――何もかも、無知で結果ばかり要求する無能の拙速に拠って・・・!!



強制的に行われた人ゲノム情報による急速な超促成培養は、身体の成長こそ予定通り行えたが、精神の発育を完全に置き去りにした。
自我の発達によって齎されるべき脳神経細胞の連結が無作為に行われた事により、全く自我の感じられない、正に人形になってしまった。
促成前に移植されたイーニァからクローニングされた脳幹周辺組織は、促成同調後に部分切除されている。
クリスカのクローニングであるマーティカとの意識融合でもフェインベルク現象まで再現性が確認されているから、マーティカとスィミィでも可能だと予測していたのだ。

結果としてマーティカとの並列同調効果[ナストロイカ]―――意識融合は生じる。
その融合率は91%―――。
けれど、それだけだった。


本来、フェインベルク現象に於いては、主となる人格のポテンシャルが重要で、それを抑制・制御する副人格はそれこそ第5世代で十分なのだ。
だが、スィミィが完全に自我を確立出来ていないことから、マーティカとの意識融合に於いては、本来副であるマーティカが主人格になってしまった。
実際には、第5世代を主人格としながら91%の融合率は極めて高いレベルにある。
前頭葉視床下部活性化による知覚拡大は、発現した。
しかし、一方ではそれが限界で、それ以上は望むべくもない。
“紅の姉妹”が融合率95%以上の時に見せるフェインベルク現象:確定した可能性の予見は、今のところ再現が確認されていない―――。


そして今日、貴重な時間を使ってスィミィとマーティカとの融合調整を繰り返した結果が、これ―――。

融合率は、91%から辛うじて92%に上がったのみ、それさえ厳密に見れば誤差レベル。


スィミィが主人格になれるなら、マーティカを“繭化”し余計な制御を全て切り捨てて、完全に生体部品とすることで、融合率を上げることは可能だ。
しかし、今現在スィミィがマーティカの性能をブーストする増幅器としてしか機能していない以上、意味はない。
一方で余計な自我すら未発達のスィミィを“繭化”しても、今となにも変わらないのも判り切っていた。



「・・・無理だ―――。」


だが、無知で無能な上司はそれを認めることは絶対にない。

既に今日何度もプラーフカを繰り返したマーティカもスィミィも、被験用のベッドで完全に弛緩し、時折ピクリと筋肉が痙攣するだけの屍と化している。
その瞳は虚ろで、血の気の感じ無い白い顔も不気味な程表情がなく、目、鼻、口から体液を垂れ流していた。

最大に掛けたわけではないから神経細胞そのものを破壊する様な過負荷は無いが、繰り返し掛けた事で既にレセプターの統合が失われている。
クスリが抜ければじき元に戻るだろうが、今々これ以上はテストも不可能なのだ。



八方塞がり―――。


今、サンダーク大尉は居ない。
明日19日以降・・・具体的には20日にも搬入されるPAK-FAの受領にセラウィクに出向いている。
その機体にXM3LTEを搭載し、“紅の姉妹”並の衛士によるテストが求められていた。

つまり与えられた時間はあと1日しか無いのだ。
最早迷う余地すら無かった。


もう―――腹を括るしか無い・・・な。


私は、傍らにある受話器に手を伸ばした。


Sideout



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