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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/05/31 20:15
'15,05,31 upload

※予定していたプロットに矛盾を感じ、再構成中―――間が開いてしまい申し訳ありません。
 どうにか形になってきたのでもう少し?お待ちください。
 今回はプロットが煮詰まらない間、進まないタイピングの慰みにつらつらと打っていた駄文です。
 幕間感全開・ネタ要素強めなので、そんなのでも構わない、というお方だけお進み下さいm(_ _)m





Side 壬姫


伏射姿勢で右肩をストックに添え、トリガーに指を触れてトリガーガードをつまみます。
頬をチークパッドに寄せスコープを覗くと、そこは一種独特の世界[killing zone]

ゆらゆらと不規則に揺れる視界に、ただ閑かに息を詰める―――。



手にしているのは”ULPRECS-408”と御子神大佐が呼称していたフル・カスタムメイドの超長距離用狙撃ライフル、総合戦技演習前に横浜で大佐が調整していたのを手伝ったことがあります。
“ULPRECS-408”がそのまんま超精密カスタム[Ultra Precision Custom]のことだと知ったのは代理のエージェントと接触した一昨日なんですけど・・・。
以前調整したのは大佐が前回ユーコンを訪れた際、とある筋に貸し出したらしいんですが、それとは別の同種機材を調整して欲しいとの依頼があり、今回は私が御子神大佐から交換用のバレルとサプレッサを受け取り、持参して来たんです。

受け取った機材のバレル組み替えと機械的な調整は横浜基地から一緒に来た整備兵が行う段取りに成っていましたが、XM3正規版換装と続く模擬戦での、特にたけるさんの機体整備に彼らが追われていた事、また狙撃銃の組立もきちんと納得したかった事から、全部自分でやりました。
・・・重かったのは確かですが・・・。
実際に同じ機材を大佐と組んだ経験、そしてループの記憶を回収したことによる経験値は十分に在りました。
幾つものループで扱った大量生産品のライフルに比べれば、この加工精度の極みとも言える“ULPRECS-408”が珠玉の様に感じられるのは致し方ないこと、その組立すら楽しい時間でした。




既にプロミネンス計画に於けるXM3トライアルのメニューは今日で全て完了し、今夜はこの後19:00からフェアウェル・パーティ。
トライアル自体は内容も充実・成果も多大で、参加した者のレベルは軒並み上昇しているとのこと、欧州やアラブ圏におっきな貸しが作れたと副司令は喜んでいたみたいですが、そこは正直私には関係ありません。
私達自らの思い出した膨大な経験値と現状や装備との齟齬認識、それらが各国トップガンとの模擬戦を通じてリアルに確認出来たことの方が重要でしたし、アルゴスや、ツェルベルス・ロレーヌにレインダンスと言った欧州戦線の錚々たるメンバーともお知り合いになれたのが、大きな収穫です。

勿論オプションであったこの狙撃銃の件に関しては、スケジュールの合間に組み立てていたんですが、一昨日の夜はたけるさんと、えっと・・・その・・・、まあ、あれです、ずっと一緒だったので時間が取れず、昨夜もオーロラまで見ちゃいましたので、最後の実射によるチェックがこんな時間になってしまいました・・・。
狙撃銃そのものは、極めてシンプルな構造なので、問題がなければ試射も18:00までには終わるし、逆に問題があれば大佐の判断が必要となり、此処で対応は出来ないので横浜に持ち帰りとなります。
予備装備のバージョンアップとのことで、緊急性はなくただ受け取って持ち帰りでも構わなかったらしいんですが、私の生身での超長距離射撃実践のため依頼を受けたとたけるさんが教えてくれました。

たけるさんも大佐も私たちがループ記憶を受け取ったことは知りません。
総合戦技演習の狙撃だけでも繰り返した回数は幾百・・・、そして吹雪に搭乗して超水平線砲、というトンでもレベルの狙撃までが経験値として多数在るんですが、生身で撃つ実体弾で、しかも2,000mと言うレンジはこれが初めて。
308クラスではそもそも届かないし、50BMGでも狙って当てるには難易度が高すぎるレンジです。
超水平線砲は最大で500kmと桁の違う極超長距離ですが、アレは電子制御の火薬による砲腔内逐次加速と、衛星データリンクを用いた2度の軌道修正を可能とする半誘導弾みたいなもの。
乱暴ですがその口径比から換算すれば、発射後の軌道修正無しで実に240km先を狙う事と同じになります。
2,000mがどれだけ規格外の距離なのか、と言うのを実感しました。

ユーコン基地の演習区画、狙撃訓練サイトを借りセットアップを終えたのは先刻ですが、そもそも2,000mのレンジは、戦術機に依る狙撃訓練サイトであり、その横に人用の設備を併設しただけ。
担当者によると人用の設備は殆ど使った事が無いとか。
”ULPRECS-408”は人工芝の伏射用射撃ブースに静かに蹲っていました。




その姿は、サプレッサからストックまでほぼ一直線、一本芯の通った太さの変化する長い棒の様、です。
それが、マガジンとグリップを付けバイポッドとストックから突き出たモノポッドで3点支持されたフレームに組み込まれている極めてシンプルな印象。
唯一ライフルらしくないのは、サプレッサ部後端にチューブが接続され、地面に置かれた小さな静音タイプのコンプレッサから圧縮空気が送られていることでしょうか。
微かですが空調機器の様な気流音がします。
かなり高周波なので、遠くまでは聞こえないらしいですがこれ以上の遮音は困難でこのレベルは避けられないとか。
リスクと精度のバーターです。

バレルは凡そΦ30mm、精緻さを感じさせるソリッドな削り出し、薬室までが一体形成。
チタンのような鈍色にマットな質感で反射を抑えています。
バレルの有効長は34インチ、サプレッサを装着しない全長は1230mmありますが、その半分が剥き出しのバレルです。
口径は.408、直径約10mmなので、量産品のアンチマテリアルライフルを見慣れた私には、ずいぶんと肉厚で重厚に見えます。
事実バレルはその重さだけでも7kg近く、全体では9kg弱あり、設置にはこの超長距離狙撃に興味をもったルナやブレーメル少尉が手伝ってくれました。
先刻から実射のスポッターも努めて貰っていますが、特に機密とは言われていないので、無問題です。

バレルを支えるフレームもシンプルな円筒を基本とし、その最前部、全体ではほぼ重心位置となる中央にバイポッドを有しています。
構成はストックの前にボルト機関部と装弾数5のマガジンが配され、その前方にグリップのあるプルバップ形式であり、通常の配置に比してバレル長に対し全長が若干抑えられています。
機関部が後方になり通常のボルトアクションがし難いのでは?、とルナに訊かれましたが、これは長距離精密狙撃では外せないバイポッドを用いた伏射姿勢を取ったとき、ストックに添える左手でボルトアクションを可能にするためで、ボルトの操作角度もそれ用に上方にシフトしています。
遊底のスライド操作も極めて精度が高く滑らかなため、通常のボルトアクション程の力を必要とせず、慣れればトリガーに右手指を掛けたままスコープサイトを視野から外すこと無く次弾の装填が可能になります。
射撃時の反動に依る跳ね上がりを極力抑えるため、銃身と同軸に配されたストック、そのストック後端に取り付けられたモノポッドには、同じく伏射時に左手で操作できる上下・左右の2方向にミクロン単位のリング式マイクロスライダ機構が付けられていました。

バレルの支持は、薬室付近機関部のみが接するフルフローティング構造なのは勿論、フレーム側に配されたリニアスライダーに差し込む形式、射軸方向とその回転方向にある程度移動代を有する2軸フリーフリー構造。
組み付けには基本的に脱落防止のネジしか使わないため、私でも組み立てられたんです。
バレルの歪をバランス調整しながらボルト締め付け軸力を調整する、といった職人技の技能は私には在りません。
更に機関部周辺のフレームと前方のバレルの間には、バレルの振動減衰と放熱のため熱伝導性と減衰の極めて高いグリースジェルが充填されます。

この機構が有する“遊び”は、超長距離超音速弾として再設計された408SH[シアーズ・ハック]弾に最適化されたワンオフバレルを使用したとき、その内腔を弾体が通過する時間、約1000分の1秒の間にバレルが受ける反動を、全てバレル質量で受けきる為にあります。
発射の反動は、1000分の1秒で軸方向に約3.5mm、ライフリングの通過により回転方向にも約2度移動するとの事で、その分の“遊び”により、弾丸の反動に依る最初期の跳ねや捻じれを生じさせない構造です。
昨今ではスーパーカーボンを使用して軽くて強靭なバレルの作成も可能ですが、軽ければ軽いほど変位量が大きくなりバレルのブレが発生する為、精度を追求するがゆえに重いバレルを選択しているんです。
細かく言えばバレル自重による銃口部の撓みが20ミクロン程度存在し、その分の跳ね返りのみが残るとの事ですが、その値は常に重力方向に一定のため、弾道計算に組み込んで補正しているとか。
勿論弾丸射出後それ以上の変位については組み込まれたダンパーが抑制することになります。

そしてフレームとバレルが浮いている構造であるため、スコープマウントはバレル一体の機関部に設置されています。
スコープはフレームとのクリアランスに依存すること無く、常にバレルと同軸が取れます。
このスコープの設置に関してだけは、微細なボルト軸力の調整が必要になりますので、御子神大佐や恐らくは使用者が残してくれていた微細なメモを参考に実施、・・・その調整だけで今朝の3時までを費やしました。
尤も、今のように2,000m先を狙えば、その到達時間は2秒強かかり、重力による弾丸の落下は20m以上と成ります。
正確な光軸調整の後には、距離に応じた軸角度調整が必要なんですが・・・。






スコープに見えるT字センターを見ながら風を感じます。
ユーコンの17:00は既に濃い紺の空、空は雲に覆われ星も瞬きません。
明日には雪がちらつき始めそうです。
照明に照らされた的場だけが、遙か遠くに明るく見えます。







横浜で御子神大佐が話してくれた情報によれば、元々この”ULPRECS-408”は、米軍一(つまり世界一?)とも讃えられた狙撃兵、ロエベ・ラギース[Loebbe Wragges ]元軍曹が依頼した一品物ということでした。
彼はベトナム事変に従軍し、絶望的な撤退戦から狙撃で僚軍を救ったという英雄でしたが、当時の軍部が狙撃の戦果を表に出さなかった為、受勲はしていません。

第2次世界大戦以降、顕著に成ったイデオロギーの対立により米ソの代理戦争として起きた1950年代の朝鮮争乱に続き、1960年代にはベトナム事変が勃発しています。
旺盛な宇宙進出競争の裏で、特に明確な宣戦布告も無いままに始まったベトナム事変では、戦闘は早期にゲリラ化したため、地雷や狙撃、アサルトライフルといった対個人用の装備・戦闘手法が一般化され進化したと言われています。
狙撃でもそれまでの1,000m前後の射程では足らず、338Rapua、あるいは50BMG、と言ったそれ以上の長距離を目指すべく進化・設計されたカートリッジが出現しました。
けれど―――、1967年に月面基地で起きたサクロボコス事件の発生により、その状況は一変しました。


明確に対立する地球外生命体の顕在化―――。
月の状況は、そのまま第1次月面戦争に突入。
以降、BETAと名づけられた存在との月面戦争が激化するに従い、米ソの視線も明確にBETAに向けられることとなり、人類同士の戦争は、少なくともこの時点では、一気に収束して行きました。
そして経緯を同じくして対人戦争では多大な成果を生む狙撃という攻撃手段も、対BETAでは使いどころが無い事を知らされていくんです
少なくとも、あ号以外明確な指令系統の存在しないBETA戦では、ロングレンジで寡数を相手にする狙撃という手段がそぐわなかったのは確かなんです。


私は、ラギース元軍曹本人について詳しく知りません。
ベトナム事変後期にソビエトの狙撃兵に狙われ瀕死の重傷を負ったとか、その時の後遺症に悩まされ今もソビエトを憎んでいるとか、復帰後月面戦争に駆り出されレミンドンM700で月面に於ける20kmを凌駕する超地平線狙撃に成功したとか、帰国退役後精度を求めてChey-Tec M-200の開発に関与したとか、語られているエピソードには事欠きませんが、真実かどうか不明です。
これらの話も、90年代に起きた1,500m級の狙撃に依る暗殺事件の容疑者とされ裁判になったことで出てきたんですが、判決自体は無罪が確定、事件は迷宮入り、その後彼は再び表舞台から姿を消しています。
類まれな狙撃能力から陰謀に巻き込まれ、その相手がCIA関連だったため更に偏屈になった、と言うのがその時、[まこと]しやかに追加されたエピソードでした。

但し数年前、御子神大佐にワンオフの狙撃銃を依頼したのは確からしく、先日大佐が調整していたのはその試作品と言うことです。



元々ラギース元軍曹が開発に携わったと言うChey-Tec M-200は、極大レンジにおける狙撃精度を求めて計算を繰り返し、求められた408という弾丸に適合するライフルを組み上げたもの。
もっと言えば、Chey-Tec社とTHENIS社の開発した、統合狙撃システムLRRS(Long Range Rifle System)を用いて運用されるシステムそのものを言います。

通常、精度を競うベンチレストの様な競技で使用されるカートリッジは、弾速は280m/s前後に抑え音速には届きません。
それは音速に近づくに連れ急激に増大する非線形の造波抵抗が弾道に与える影響が大きく精密さを欠くのに対し、例え偏差が存在しても線形であるため計算できる層流の方が、精密な射撃を可能にしていたからです。
けれど一方、軽い弾丸・遅い弾速は超長距離の射撃には適しませんでした。
故に長距離弾は大口径化・高速化しましたが、音速の壁を超えるときの非線形乱れが精度に影響し、高い精度は望めず、アンチマテリアルライフルとして進化したとも言えます。
実際大口径高速弾は、加速時に銃腔内でまず音速を超え、そして数100mの飛翔後減速により再度音速を下回るため、音速境界の乱れ影響を2度に渡って受けます。
特に後半の遷移領域は、旋転も弱まってから層流域に戻されるため、大きな乱れが生じる可能性が高いとのこと。
それ故有効射程も特殊な大口径弾を除けば、1マイル(1,600m)も届けばいい方で、それも単に届くだけという状況でした。


その超長距離での狙撃精度を求めたのがChey-Tecです。

個人的にはChey-Tecの思想はベンチレスト競技と逆で、“超長距離射撃に超音速が必要なら、超音速のまま到達させればイイじゃない”、としたんじゃないかと考えています。
加速時の銃腔内の様々な干渉を可能なかぎり小さくする弾形状を取ることで、非線形の不確定要素を低減し、弾速が再び音速近辺を遷移して姿勢を乱す前にターゲットに到達する、と言う思想。
超音速飛翔中の圧力波発生は、弾丸の形状精度を上げることでランダムな乱れを均質化することで対処する―――。

結果、メーカー公称射程は当初M200がリリースされた時点で2,300m、先頃公表されたM300では、2,500mを謳い、2,000mに於けるグルーピングは、90cmとも言われています。
但し、超音速を安定的に飛翔するために求められる弾丸の製作精度は非常に高く、特殊な製法を必要とするため高コストとなり、マーケティング的には成功したとは言えないのでしょう。
勿論物量対策を基本とする対BETAでは必要性のない武器である事が最大要因でしょうが。


そして開発に関わったとされながら、達成された射程と精度では納得がしなかったのが、ラギース元軍曹だったのでしょうか。
408カートリッジという一つの超音速弾の可能性は示しましたが、コストと精度に制約がある工業生産品では届かない彼の目標には、彼自身が実践した月面で空気抵抗が皆無の状態における理想的な狙撃が在るのかも知れません。

それがカスタムの作成依頼に繋がり、生まれたのが、先の”ULPRECS-408”―――。

純夏さんがネイティブと呼ぶこの世界の御子神大佐とラギース元軍曹の接点が何処にあったのかはわかりません。
それでも過去シャノアを指揮し渡米したことも多数あるらしいので物理的には不可能ではなく、またネイティブさんが今の御子神大佐と同じ気質なら、気難しいと言われるラギース元軍曹と話が合ったのも理解できる気がするのは私だけでしょうか?
射撃の精度に関しては病的なまでに拘りを見せるラギース元軍曹と、何処までも果てしなく原理と結果を求めるタイプの、謂わば加減を知らないマニアックな御子神大佐は、何処か似ている様な気がするんです。

つまりラギース元軍曹の月面に於ける狙撃の経験を踏まえ、ネイティブさんが構成したのが”ULPRECS-408”とも言えます。


そのスタートは弾丸特性として突出していた408でしたが、弾形状は超音速飛翔に理想的なシアーズ・ハック体になっています。
元々前半部は同様の形状でしたが、やるなら徹底的にやっちゃうのが御子神大佐、結果前後にも対称な、後端も尖った特殊な弾丸となりました。
そして408SH [シアーズ・ハック]弾では、飛翔中の旋転をより長く維持するため、質量を変えず慣性モーメントを増やす製法を取っています。
つまり最大径部を中心にタングステン削り出しの樽型外郭にニッケル合金を射込んでいます。
この構成は、通常芯に使う重い金属を最も外側に使うことで、同一重量でありながら慣性モーメントを50%程度増しているんです。
更にその後精密加工により重心位置と軸精度を飛躍的に向上させていて、元々精度が高かったChey-Tec408が裸足で逃げ出す様な数字を実現しています。
25gとなった最適重量に対する火薬の調合や充填均質化により理想とされる加速を実現したカートリッジは一弾一弾湿度と温度を管理し、酸化を防止する窒素封入容器に密封され、その価格も高いとされるChey-Tec弾から更に桁が違うとのこと、勿論一般に流通なんかしていません。
その特製カートリッジに応じた徐変角ライフリングも施し、実現した弾速は1,100m/sにまで達し、2.6kmまで超音速を維持していました。
こうして出来た”ULPRECS-408”の2,000mレンジに於ける機械計測のグルーピングは45cm。
既に当時50半ばで、とある森に隠遁していたラギース元軍曹の射撃では、15cmだったらしいと言うのが御子神大佐の話でした。

それは2,000mレンジでのヘッドショットを1発で决める数字―――、震撼したのを覚えています。




今回はその”ULPRECS-408”に、更に今の[●●]御子神大佐によって追加されたオプションが在るんです。




専用のZeizz 6-60×80という特製ズームスコープは、最大倍率の60倍に振ってあります。
照準用の光学機器としてもレンスの各種収差や部品加工公差からすれば限界スレスレの実用性―――それを実現するためにレンズ研磨に求められた精度の桁からして違うと聞きました。
そんな自国製のスコープが使われていることに気付き、ルナが涙していました。
今の欧州では作れず、工場移転したアフリカでも残念ながらまだ望めない精度だそうです。
尤もその倍率でさえ半径10cmの目標最小円は1m先にある大豆くらいにしか見えず、既に2射していますが、スコープでは弾痕を確認することも出来ません。
装着された統合狙撃システム[LRRS]によりスコープ内にオーバーレイ表示される距離は、2,000mジャスト―――。
データリンクから齎される周辺気温・気圧・風向きと風速、そして赤外線レーザーで測距されたターゲットまでの実距離と射角、更には方角と緯度。
装填された弾薬と、この銃身の現在温度までをも含む各種特性値。
それらをすべて・・・コリオリ力まで考慮して弾道計算された結果を輝線レティクルとして表示してくれます。

そこまで示してくれるシステムなら、後は照準を合わせて撃つだけの簡単なお仕事・・・と言う人は、超精密を競うベンチレスト競技や、あるいは超長距離狙撃のスコープを覗いた経験のない人でしょう。
実際狙撃銃のグルーピング判定にはテストする人間の技量という要素を省くため専用のスポッティングマシンを使用しますが、そのグルーピングは概して千々に散るんです。
それを人が撃つと、7割近くの人が機械よりも悪い成績となり、残り3割近くが機械同等の成績を示します。
そして僅かに1%弱の人は、明確に機械よりも優れた集弾成績を残すと言われています。


トリガーガードに射撃時と同じ荷重を掛けながら、左手は肩に触れるでもなく添えた銃床から伸びるモノポッドのマイクロスライドリンクを回し、レティクルを微調整します。
フレームとバレルを保持するリニアスライダにもフローティングが施されており、細かい高周波は減衰させますが、ゆったりとした長周波は残ってしまいます。
こうしてバイポッドとモノポッドで支えてすら射手の呼吸はおろか、心臓の鼓動や、筋肉の微かな痙攣が伝わっただけでも60倍の視界は台風の波間のように大きく揺れてしまうんです。
この距離では、銃床が50ミクロン動いただけで、着弾は10cmずれます。
更にはリアルタイムで送られてくる現在状況、特に風やその温度の変化から示されるレティクル自体も常に微動しています。
2射目以降となれば、バレル温度も安定し難く成る訳で・・・。
結果、何時まで追っても揺れて捉えきれないセンター、2,000mと言うのはそう云う距離です。
なのでレティクルを合わせるのはそんな揺動する範囲の中心―――確率密度として最大と成るポイント。
勿論バレルの温度勾配、気温上昇や気圧の変化など、一方向に変化し続ける要素も在るから、できるだけ短時間で仮想中心を見極め、レティクルの中心に捉えなければならないんです。



絶えず揺れる視界の中で、放つタイミングを図る・・・、それは正しく、弓道で言う“会”―――。

弓による射形の完成状態であり、“離れ”、を待つ状態です。
既に引かれたトリガーは、激発前の紙一重で保持しています。
“何時”が激発する最適なのか?―――それは一種の未来予測とも言えます。
何せ、発射から到達まででも2秒以上掛かるんです。
その間の風や造波抵抗分散に依る、射軸のズレ以外の不確定乱れを予測しなければならないんです。






日本の武技に於いては、常に“術”と“道”が存在します。
剣術と剣道、柔術と柔道、そして弓に於いても弓術と弓道と言うように。
基本的に技能を伝えるのが“術”、精神的な修行の要素を多分に含むのが“道”、でしょうか。
勿論、“道”だから技能の習得を蔑ろにしているわけではなく、“術”だからといって精神的な鍛錬を否定しているわけでもありません。
その“弓道”に於いて宗教的な素養が色濃かったと言われる故阿波研造範士が遺したのは、“的と私が一体になるならば、矢は有と非有の不動の中心にある”、と言う言葉です。
“的中は我が心を射抜き、仏陀に到る”に至っては、明らかに弓を通じての宗教ですが・・・。

それは例え目を殆ど閉じた状態で弓を絞っても、的が自分に近づいてきてやがて一体化し、狙わずに中てることが出来る・・・、と言うお話。
弓道の完成形として、矢は技術で狙って放つ[●●]のではなく、刻が至れば自然に離れる[●●●]と言い、それを総じて弓道では自らの中の“真我”が射る、と称します。
範士の言葉もその表現の一つなのでしょう。

これだけ聞くと弓を知らない人には明らかにオカルトや超常現象の世界ですが、稀代の達人、先の故阿波研造範士は狙わずに中てるというこの矛盾に満ちた言葉を体現してみせたんです。
納得出来ない弟子を招いた夜の道場で、通常は使わない三寸(10cm)の小的を設置。
その後道場・安土ともに一切の照明を点けず、辛うじて蚊取り線香だけが灯る暗闇での一手。
この状況に於いて、範士の放った甲矢(一射目)は小さな的のど真ん中を射抜き、続く乙矢(二射目)は甲矢の矢筈に中り、その甲矢を引き裂いていた―――と記されています。
因みにこれを目撃した筆者は日本文化の研究に弓道を学んだドイツ人哲学者だったりします。





視界に揺れるレティクルを見ていると、そんな話を思い出します。


闇の中、見えない的を狙う事など出来ない状態で在りながら、神業を為した範士。
しかも、同様の事を幾度か行ったとも伝えられています。
私自身範士のエピソードは読んでいて、“真我”云々も理念としては知っていましたが、今までは漠然としか感じていなかったし、その境地を特に意識したこともありませんでした。


けど・・・。

幾多のループの、数多の狙撃の記憶―――。
擬似的にしても純夏さんと行った“合一”、そして一昨夜のたけるさんとの時間に生じた感覚・・・。
フェインベルク現象で“紅の姉妹[彼女たち]”が“未来”を感じているのも、同じ境地なのかも知れない、・・・とも思うんです。

勿論、故阿波研造範士だって矢の届かない的に中てる事は出来ないでしょう。
“真我”は物理現象をねじ曲げる超常の力ではないんです。
存在する事象の未来における最尤解を識る―――、恐らく小難しく言えばそういう事。

この狙撃にしても弛まぬ技術革新がこの距離でまとまった範囲に着弾を揃える事に成功しました。
それでも残る、弾丸射出以降の不確定要素が弾を散らします。
けれど父母未生以前の本来の面目・・・謂わば時間を超越した因果に触れる―――その事が出来れば、その不確定要素さえ見透す事が出来る―――。

機械計測の集弾特性を凌駕する1%未満の“名手”とは、実はそこに明確に届かぬまでも近しい人たちなのかもしれません。




―――そんな雑念も薄れ、刻は至ります。


雑多な思考が霧散し、すっ、と意識がスコープに引き込まれます。


周囲がモノクロに変わり・・・、音が―――、消える―――。




トリガーが落ちた瞬間、バネを使ったメカニカルな機構よりも応答時間の短いFireByLightで信号は伝わり、同様バネよりも反応の速い電磁伸縮炭素芯がカートリッジの雷管を穿ちました。
カートリッジ底部に拡散した火焔は、均等に込められた火薬に音速を超えて反応を起こしながらその自らの圧力で急激に膨張していく・・・。
瞬間的には最大1000MPaにも達する圧力で押し出され、加速された弾丸は、進み始めて僅か10cm程度で音速を突破し、34インチ=86cmの銃身をとび出すときには、1,200m/s―――熱の壁ギリギリのM3.49まで加速されています。
雷管の撃発から、弾丸がマズルを飛び出した1000分の1秒後、ダンパーを含む緩衝機構で受け止められますが、かなりの衝撃が肩に掛かりました。
ストックはバレルと同軸上に配されるため、無闇に銃口が跳ね上がることはなく、その分リコイルは大きいんですが、それでも総合戦技演習で撃った50BMGの半分ほどですみます。




その反動が収まり、視界に色彩が、聴覚に音が蘇って来ました。

反射的に左手でストック部のボルトを操作し薬莢を排出すると、冷気が吹き出して来ます。


「―――Aim X-Center Hitッ!!
8時方向、目測2cm!
凄いですわ! 壬姫[Miky]、全弾センターですッ!!」


傍らには的場の様子を移すカメラのモニター。
ルナが賞賛する様に半径20cmの的に、3つ目の穴が空いていました。
今のは一番中心に近いですが、グルーピングはだいたい10cm・・・、ですか―――。


暫くバレルを冷やすと、ヴォルテックス・サプレッサに圧縮空気を送るコンプレッサを停止しました。




そう、マズルの先、更に400mm伸びているΦ40mmのスーパーカーボン製サプレッサが今の[●●]御子神大佐が追加したオプションになります。

マズルに近い部分が少し太くなっていて、圧縮空気を送るホースが付いています。
圧送された空気はマズルに近い部分のヴォルテックス・ジェネレータで音速近くまで加速され、高速で流れる螺旋流としてサプレッサ管内を旋回し先端から吐出されるんです。
バレルにカートリッジが装填され銃腔内部気密が保たれている状態に於いて、旋回流は竜巻のようにマズル直前の中心部を減圧します。
当然巻き込まれた銃腔内の空気は螺旋流と共にサプレッサマズルから排出されるため、結果的にバレル内は装填されたカートリッジ直前で1/10気圧程度まで減圧されることになります。
宇宙での狙撃を理想としたラギース元軍曹の思想を元に、擬似的にバレル内を減圧し弾丸の加速抵抗を減らすのがこのヴォルテックス・サプレッサと言うことです。
そしてそれは単純な空気抵抗だけではなく、音速突破時の乱れに関しても寄与します。
この減圧により空気の音速は通常大気圧の1/3以下になり、また密度が低下していることから衝撃波そのものも弱くなります。
本来狭い銃腔内で乱反射し、弾丸の運動量にも大きな影響を与えるそれら反射波が、音速の鈍化により反射して戻ってきたときには既に弾丸が通過していた、という状況を齎しました。
マズルに向け、気圧は高まり音速も早くなりますが、その時には更に弾速も上がっているわけで、マズルを飛び出すその瞬間まで大きな反射波に乱されることがなくなりました。
また弾丸のマズル突出時に弾丸を追い越し、弾道を乱す突出圧力も、サプレッサ内壁を旋回する螺旋流に巻き込まれ減速されることから、弾丸本体に与える影響は、サプレッサがない状態よりも大幅に小さくなります。
一方で音速を大きく越えている弾丸は、サプレッサ通過中も円錐状の衝撃波を発し、内部旋回流との間に丁度断層を作ることで、弾道そのものに旋回流が与える影響を排除できます。
マズル音の主因ともなるそれらは弾丸の後部で旋回流に幾度も反射しエネルギーを喪って減衰、マズルでの突出音と共に低減されます。
弾丸がサプレッサを突出する頃には、通常大気圧に戻るため、勿論新たな衝撃波を生成しますが、線形に昇圧されたいるため、空気に壁に突入するような爆発的なものではありません。

結果的に位置を最も特定されやすい単音源であるマズル音は綺麗に抑制されることになります。
弾丸の飛翔に伴う衝撃波は仕方ありませんが、こちらは移動音源であるため位置の特定はされにくいでしょう。

ヴォルテックス・サプレッサは、こうして銃腔内空気抵抗の削減・音速突破の際の干渉低減と、突出時の気流影響低減、そして本来の目的であるマズル音の消音、更には僅かですが突出流の減速によるマズルブレーキの効果も得ることとなりました。
また、ボルトを廃莢の為に解放しバレル内に流路が形成されると、螺旋流境界層で熱交換された冷却流が機関部に向かって流れるヴォルテックス・チューブとして機能するため、燃焼ガスで加熱されたバレルの強制冷却も可能となるおまけ付き。

唯一の欠点は、先にも言いましたがそれなりの空気を圧送する為、かなり消音していてもある程度気流音がしてしまうこと、10mも離れれば聞こえない程度の音ですが、不利であることは間違いないでしょう。




銃腔内の減圧することで、加速時の抵抗が大幅に減り、それに合わせてバレルのライフリングも変えているのが今回の改修仕様。
結果的に得られたサプレッサ付き”ULPRECS-408”で同じ408SH弾を使用したとき、初速は1,200m/s、超音速維持距離は、約3,000m、そして2,000mに於けるグルーピングは、機械計測値で20cmでした。
今回それを上回るグルーピングが出たので、十全であることは証明され、これで調整は完了。
もう少し撃ちたい気もしますが、バレルのクリーニングをしないでこのまま続ければ内部ライフリングの早期劣化を招きます。
ADNR[ダイヤモンド・ナノロッド凝集体]化してあっても基本は大事ですから。
時間も無いし、私のお仕事は此処迄です。
機材はこのまま再分解して清掃、専用のケースに入れ、代理エージェントに引き渡します。
この子が誰に使われるか、何に使われるか、NTK[Need To Know]ですが、大佐が託した相手です。
きっと誰かを守るために使われるのでしょう。


件のラギース元軍曹は、機械計測値45cmのヴォルテックス・サプレッサ無しで15cmを叩き出しています。
今回のオプション有り仕様なら、確実に7cm以下にしてくる、ということです。
対して私は10cm―――。

―――まだまだ精進の余地が在る、と言うことですね!


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