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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 17:03
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Side タリサ


「え? じゃあそっち[ユウヤ]も?」


美琴[Mikt]の問いにチラッと奥のテーブルで渋い顔をしているユウヤを見てニヤリと口元を歪める。
その隣には今もツンドラの様に冷たい視線のビャーチェノワとまだ少し涙を溜めたシェスチナがいて、その表情とは裏腹に、二人してユウヤの両腕を抱き込んでいる。
食事の間も左右から交互に供給されていた。
傍目には何処のバカップル[リア充爆ぜろ]だァ?、という状態なんだけど、嫌いなモノまで有無を言わさず突っ込まれていたから、微妙。
ってか―――あのビャーチェノワまでが表情は兎も角、こんなに軟化し[デレ]ているのには吃驚だけどな。
何故かうさ耳少女を幻視したから、きっと横浜[魔窟]でいろいろ触発されるものがあったんだろうとは思うけど・・・。
以前のことも改めて直に謝られたし、日本に行く前の憔悴しきった様子も知っているから一応受け入れたけど・・・、シェスチナ、チビのくせにその胸はぜってぇ認めねェぞ!


「そっちもってことは、白銀少佐もかよ?」

「うん、結構カオスだった。
千鶴さん[Cz]は噴火するし、壬姫さん[Miky]が泣きながらふくれてるし、何よりも何時も飄然としてる慧さん[K]が何も言わずハラハラと涙落とすし・・・。
流石にタケルも悪いと思ったらしくて、目一杯平謝りしてた。
―――まあ、アレ[●●]は本来実機JIVESでヤッちゃうレベルの模擬戦ではないよね。
高速機動はそれじゃなくてもリスクが高いんだから、 V-JIVES[シミュレーション]で行うのが妥当な内容、・・・リスクヘッジは基本だよ。」


美琴[Mikt]の真っ当な指摘に周囲も苦笑。
味方の居ない当のユウヤはガックシうなだれる。
ちょっと・・・うん、世間的に見てまあかなり行き過ぎた内容だったことは否めない。
ユウヤにしても事情を知らせていなかった二人の“嫁”達にはどれだけ心配掛けさせたコトか、模擬戦中の様子を知っているだけに、軽口も挟めない。
それが今ユウヤの置かれた状況。

確かにあの化物じみた強さの“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”と互角に戦うには、相手に経験が無い超高速戦闘[自分のエリア]に持ち込むしか無いってコトは理解するけど、少しは自重しろって言ったじゃん!


「・・・けど、ある意味衝撃的でしたわ。
戦術機というシステムの一つの未来の姿―――、とも言えます。」

「技量は驚異的だけど、・・・残念ね、BETA相手には0高度背面飛行なんて意味ないわ・・・。」


隣のテーブルから肯定的なルナテレジア中尉の意見と、滅茶苦茶冷めた言い方をするベルナデット大尉の批評が突っ込まれた。

・・・そう、此処はリルフォートでも一応有名所のステーキハウス。
同じテーブルには、話をしている美琴[Mikt]の他、“紅の姉妹”を含むアルゴス隊の衛士メンバー、そして隣のテーブルには、ツェルベルスの3人娘とロレーヌ中隊の隊長が座っている。
たまたま此の店で鉢合わせした時、美琴[Mikt]を見つけて隣に寄ってきたのだ。

トライアルは基本17時迄でそれ以降は各隊自由だから、基地要員含めても人口10万の小さな町、こういうことはよくある。
中には早くもシミュレータを予約して換装されるXM3教導に入っている部隊もあれば、夜間演習でXM3LTE版が換装された機体に慣熟を始めている部隊もあるから、こればっかしは各隊のカラー次第だけどな。
そして勿論こんな自由時間を取っている部隊も存在した。
・・・そーいえば、ツェルベルスもロレーヌも今夜機体はXM3正規版換装作業中だったっけ。
ヴィンセントもEF-2000やラファールに触れる、と喜んで手伝いに行っていた。


もともと昨日の歓迎会でA-00中隊のメンバーに寄ってきていたのは知っていたし、そのままの流れで近くに居たから何となく顔見知りに成った面子。
今日の“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”戦でもツェルベルスはXM3未装備の中隊としては最も練度が高かったし、“前衛砲兵”と言う矛盾した様な異名を持つロレーヌ隊隊長は、白銀少佐に唯一被弾判定を付けた人物。
自分の技量がそんなに高いと自惚れているわけじゃねェけど、ヤッパそれなりの技量を持つ相手は認めちまうのが衛士。
食事をしながら、お互い結構打ち解けた空気になるのにそれほど時間は掛からなかった。
ユウヤの座る一角は隔絶していたにしても・・・。

A-00の他のメンバーはといえば、白銀少佐を模擬戦の休養という名目で折檻?しているらしいし、神宮司大尉はそんな少佐の代わりに基地司令主催の晩餐に出ている。
整備関係者もXM3正規版換装の為、今日は徹夜覚悟。
そんな中で、少佐の糾弾から途中で抜け、一人で基地のPXに行こうとしていたマイペースな美琴[Mikt]を見つけ、リルフォート[ここ]に誘ったのはアタシだ。

一方ベルナデット大尉もツェルベルス隊の正副隊長と共に基地司令主催の晩餐に招待されていた筈だが、腹の探り合いとお上品な食事の量に物足らず、雑談モードに入ったところで早々に退席。
たまたま見かけた街に繰り出そうとするツェルベルスの3人娘に強引に割り込んで此処にきたとか。
その場所で今宵のA-00では唯一フリーだった美琴[Mikt]を引き当てるあたり情報に対する嗅覚は侮れねェぜ。


「・・・でもその様子を見る限り、アルゴス隊のみんなは、それほど危険って思って無かったみたいね。」

「まあ、な・・・。
俺たちは、“今まで”をずっと見てるからな。」


イルフリーデ大尉の疑問にVGが応えた。

それもそうか・・・。


御大[Great Colonel]”が帰国してまだ2週間経っていない。
けれどその2週間弱、アタシとユウヤは、それこそXFJ-01 Phase3を乗り潰す勢いで駆り倒した。
その殆どが戦術機としては高速域の限界機動―――。
VGが言うように、アタシらに言わせればその時の、まだ空力が改善されていない不安定なPhase3による限界飛行のほうが余程際どかった。
常識的に考えれば長距離の匍匐飛行が可能なことすら可笑しい、と言われる戦術機。
個人的には世界の七不思議になって居ないコトが不思議。
その全てを跳躍装置[ジャンプユニット]に頼っている訳で、空力は寧ろ挙動を安定させるためのものだった。
人がロケットエンジンだけ背負って空飛ぶ様なモノ、なにせ姿勢一つで重心位置が大幅に移動し、加えて速度に応じ空力もコロコロ変化する複雑な形状。
航空力学なんて難しい理屈は解んねェけど、過去何度も“片肺飛行”を経験してきたアタシに言わせれば、その制御がどんだけ難しいか知っている。
推力さえ確保出来れば取り敢えず飛んでいられる飛行機とは決定的に違う。
例えれば、針の上に卵を立てる様なもんだ。
けどそれが開発衛士[テストパイロット]責任領域[レスポンシビリティ]ってコトも理解している。

そんな綱渡りの成果として得た実機機動データを以て、高速域シミュレーションの再現性を飛躍的に高め、そこから更に超高速域に踏み込む空力特性に特化した機体形状を求めた。
その試作が出来る迄の間、最終的に導きだされた機体でユウヤもアタシも今度はシミュレーションの中に籠ってギリギリまで操作を煮詰めてきたのだ。

この12日間、実機機動だけでも毎日6時間以上、シミュレータに依るチェックも入れれば毎日14時間以上飛んでいた事になる。
ユウヤが新しい空力外装に換装したばかりの“Phase4”実機をあそこまで自信を持って乗りこなせたのは、その凝縮された経験が在るからで、模擬戦レベルでコケるとは思えないって言うのがそれに付き合ったアタシの感想だ。
勿論模擬戦には相手も在ることだし、絶対に安全な訓練なんてないのは確かだけど、その経緯を知っているからドーゥル中尉もハイネマン氏も、ついでにハルトウィック大佐もこの危険に見える模擬戦に何も言わなかったのだろう。
けど、知らない人には殊更に常軌を逸した機動に見えるだろうから、心配させたことに違いはない。


・・・ってかさ―――。

寧ろその速度領域に直ぐ様適応しちまった白銀少佐こそ異常。
この模擬戦に危惧が在るとすれば少佐の対応だったんだけど、同じ領域に踏み込んできたのにはこっちだって驚いたんだから、少佐の部下の心配は半端なかっただろうと思う。
しかも、それで最終的にはユウヤに勝っちまうんだから、今も信じられねェけど・・・。


「その割には美琴[Mikt]は平気そうね?」


ケラケラ笑っている美琴[Mikt]にステラが尋ねる。


「ああ、ウン、まあね。
心配しなかった訳じゃないんだけど、ボクだけ[●●]は御子神大佐から聞いて、知っていたからね。
『どうせブリッジスが絡むと武は無茶するだろう』って、一応タケルの機体には対衝撃“最終防御”っていうのが組み込まれているんだってさ。」

「「「“最終防御”?」」」

「えと、IR何とかのMAX掛けとか200分の1とか言ってたけど、そこは流石に機密らしいから効能だけ言うと、マッハで地面に突っ込んでも、コアセクションだけ[●●]は護る緊急措置だって。
防げるのは2000G程度迄の衝撃だけで、光線級のレーザーとかは勿論、防御出来ないらしいけど。」

「「「 な!? 」」」


・・・ヲイヲイ―――簡単に言ってるけど、マッハの激突を緩衝するってだけでも半端ねェぞ、それ・・・。
けど、“御大[Great Colonel]”が断言したなら、あの人を知っているアタシらはそうか、って思えちまうから不思議。
少なくともアルゴスのみんなは“紅の姉妹”含めて納得したように頷いている。
けど、なるほどね・・・。
ユウヤの様なアクティブセーフティではなく、究極とも言えるパッシブセーフティが在ったから白銀少佐はあの領域[ユウヤの牙城]に躊躇なく踏み込んできたわけか。

アルゴスメンバーとは逆に、疑問顔なのはゲストのお嬢様方。
コレばっかりは、まあ本人に一度会わないとどんだけ説明しても理解しては貰えねェだろうな。

ツェルベルスは見た目貴族のご令嬢然とした3人娘、階級も既に中尉と大尉なんだけど、そんなことには拘らず、気取らない気さくなところは嫌いじゃない。
天然、おっとり、生真面目っぽいという三者三様、けど衛士として損耗率の高い前線ドーバー要塞[ドーバーコンプレックス]で生き抜いてきた猛者、中身がそのままとは思っていない。
午前中に垣間見た3人の連携は、ツェルベルスの大・中隊長の連携に次いで、相当な域に達してると思う。

・・・けど、やっぱちょっとアタシとは何かと違いすぎる気がして少し苦手。
同じ欧州出身のステラやVGをさりげなく間に挟むことにしている。
VGも流石に MG[モニカ姉]の居る今、貴族様に粉を掛けたりはしない・・・よな?

反対にロレーヌの中隊長は、此方も大尉様でありながら歯に衣着せないかなりの毒舌と来ている。
が、何故かアタシや美琴[Mikt]には雰囲気が柔らかい気がする・・・。
ちっちゃいものクラブ[同族意識]のよしみなんじゃね?とウンウン頷いていたVGにはカエルアッパーをお見舞いしておいた。
MGにも通報しようと思ったけど、ヤメた。
MGもその意味では“向こう側”の女。
本人は無自覚だろうけど、下手にチクると逆に弄られそうだし・・・。
妙なところで似ているのはやはり姉弟だからなのか?



「・・・でもそれならば、なんで美琴[Mikt]だけ知っていたのかしら?」


ルナテレジア中尉が聞いてきた。


「・・・先刻チラッと千鶴さん[Cz]が言ってたと思うけど、ボクらは横浜で各々の得意分野に関して御子神大佐から個別にサポートを受けているんだ。
最初はなんとなく、だったんだけど正規任官してからは、結構真面目に頼み直してさ。
千鶴さん[Cz ]は、戦術に関してリアルタイム戦闘行動予測プログラム:CAP-RT。
今回は来ていないけど、冥夜さん[御剣]ていうメンバーが、特殊場に於ける剣術・・・これはアルゴスのみんなは知っている篁大尉と同じ類のものだね。
あと、慧さん[ K]は、近接戦術機格闘術:MACROT。
壬姫さん[ Miky]は、動的銃器管制。
そしてボクは、慣性制御機動概念:MCLIC、って言う具合。
で、“最終防御”は慣性制御機動概念の拡大派生機能なので、たまたまボクだけが説明されて知っていた、ってとこかな。
今回の模擬戦みたいな高速域の飛行機動に関わるのはMCLICだけだしね。
一応みんなにも事後に話してタケルの援護はして上げたんだけどね、理性で理解は出来るけど感情で納得出来ないって言うから後は任せちゃった。」

「・・・ちょっと待って美琴[Mikt]、それって帝国のセキュリティ・ポリシーに反しないの?」

「ああ、ありがと、ベル。
心配しなくても国連軍[●●●]の機密条項には触れてないよ。
今の装備関係は、全部国連軍[●●●]の御子神大佐が発案しているから、帝国の機密条項には当たらないんだ。
アルゴス隊に開示した範囲は、同じ国連軍[●●●]なら問題ないって御子神大佐にも言われてるし。
殆どの内容については、付随するナビゲーションAI[まりもちゃん]に聞けば幾らでも答えてくれる内容だから、正規版配布が決定しているここに居るメンバーについては無問題。
逆に本当に言っちゃいけない事は知らないって言ったように殆ど知らされていないから大丈夫、かな。
それに、新兵[ルーキー]の得意分野なんか午後の模擬戦でバレバレでしょ?」


そう言やその辺に付いては“御大[Great Colonel]”もかなりいい加減だったっけ。


「それは、此方の質問にもある程度答えられる・・・ってコトかしら?」

「・・・抜け目ないねベル。
まあ、ボクの知っている、許される範囲で良いならどうぞ。」

「そう―――、じゃあ先ほど神宮司大尉が言っていたレベルアップの可能性だけど、どういう事なの?」


美琴[Mikt]の言うとおり、抜け目ねぇな、このチビッ子[同志]大尉。
この年で大尉まで成っただけはあるのか?
っていうか、当然ツェルベルスのお嬢方も興味津々。
大陸の最前線・・・一つの情報が生死にも直に繋がるだけに貪欲に成るのは仕方ない、か・・・。

そして大尉が訊いたのはあの模擬戦の後行われた、全体ブリーフィングでの説明のコトだろう。
最後が激しい模擬戦だったから直ぐに戻らないのも仕方ない少佐ではなく、A-00中隊の中隊長でもある神宮司まりも大尉からの講評だった。

XM3のシミュレータ教導に出てくるAIキャラは、既にプロミネンスに関わる衛士の中では有名だった。
実装されているのは、ナヴィゲーションAI[まりもちゃん]アグレッサーAI[たけるくん]
そして“たけるくん”が白銀少佐であることは、周知の事実。
脳天気に見えて、時折決して諦めない熱い闘志を垣間見せ、その技量はべらぼうなAIだ。
その一方、“まりもちゃん”のモデルに付いては今まで謎とされてきた。
教導は厳しいながら、時に激励し、諭し、語りかけるその内容は千差万別。
受ける人の応答に因って教導手法まで変えてくる事が最近明らかになった超高性能AIだった。

既に歓迎セレモニーでの紹介でも噂になっていた。
そう、“まりもちゃん”のモデルは、“たけるくん”と同じ、現実のXM3教導官。
本人も今まだ数少ないレベル5er[ファイヴァー]にして新潟防衛戦における“Amazing5”の一角、〈Garm-01〉。
その講評は的確で鋭く、XM3の初期教導として今後の参考に成ることばかり。
寧ろ天才肌でその機動が余人には真似しにくい白銀少佐に比べ、教導に関してのエキスパートだと各国指揮官クラスに認識されたのは間違いない。

チビッ子大尉が訊いているのは、その講評の中に在った言葉だ。


「ああ、神宮司大尉の仰った“努力の可能性”だね。
んと・・・、昨夜タケルは、レベル4erやレベル5erの発現が、2シグマ、3シグマの確率ってコトで説明したと思うけど、その存在確率は単純に“戦術機適性”っていう“才能”のみで語った場合なんだってさ。」

「・・・天賦の“才能”のみ[●●]で考えれば、という事?」


チビッ子大尉が確認する。


「うん。
でもレベルの上昇や上限に付いては、はっきり言えば今のところサンプルが少なすぎて仮説でしか無いんだよ。
今後帝国の各部隊、そしてプロミネンスや今回正規版を配布する部隊ともデータを交換しあって検証していくけどね。
そしてタケルが言った確率は、何よりも“努力値”の重積を一切考慮しないとそうなる、ってだけで、もしかしたら努力次第ではシグマ分布が中心の偏ったポアソン分布に変化していく可能性も高い、って御子神大佐は考えているみたいだね。
少なくともボク達を含む横浜の教導実績では、資質によって上達速度に個人差は在っても、経験の蓄積や技能の研鑽に因って向上出来ることが確認されているからね。
―――簡単に言えば、努力次第で必ず報われる、ってことかな。」


難しいことはわかんねェけど、これが才能にのみ従って決まることならば、レベル上位に達する者はかなり少ないということに成る。
けど努力と研鑽により向上できるって言うなら、その可能性は無限―――。
全員が“レベル5er[ファイヴァー]”、それ以上の“限定解除[アンリミット]”に至れる可能性を誰も否定出来ないって事か・・・。


「因みに美琴[Mikt]達はどの位XM3に慣熟したのでしょう?」


すかさずルナテレジア中尉の質問。
チビッ子大尉とは、一見仲悪そうなのに、息合ってんな・・・。


「ボク達は正式任官する前、訓練兵の時からXM3教導を始めていたし、御子神大佐って言う技術サポートの反則[チート]級が傍にいたから参考になるか解らないけど・・・、期間で言えば約10日とちょっと、その間にシミュレーションによる出撃回数では凡そ100回超かな―――。」

「「「!!――10日ちょっとで、100ッ!?」」」

「・・・あと、ちょっと説明出来ない事情があって、5に上がるには200相当の嵩上げが在ったんだけどね。」


時間圧縮とかループ回収とかイロイロ有り得ない裏技なんだよ、と苦笑しながら軽く流す美琴[Mikt]
―――それにしたって10日強で100でも異常、そんなのが出来るのも化物だ。
シミュレーションとは言え平均しても1日10回以上の出撃・・・まあ、機体のV-JIVESが自由に使える今なら確かに不可能では無いが、通常の基地では不可能。
それを置いても自分が出来るかと訊かれれば微妙、1日10回以上のBETA戦・・・普通は有り得ねェだろ?
それに加えて200の嵩上げって・・・。
これはA-00は御子神大佐の被験者[おもちゃ]ってことなのか?、とさえ思ってしまう。

尤も、じゃなきゃ新兵[ルーキー]で“レベル5er[ファイヴァー]”なんて無理ってことか。


「・・・なるほど、シミュレーションでも100でレベル4、プラス200熟せばシグマ分布を無視してレベル5程度まで上がれる可能性がある・・・って言うことね―――。」


関係なくウンウン頷くチビッ子大尉。
・・・サラッと部下にヤラせそう・・・。
そして、更にキランと瞳を輝かせる。


「・・・で、美琴[Mikt]が得意なのは“慣性制御機動概念”って言ったわよね?」

「ウン。
まぁ、ブッチャケればタケルの次に空間把握能力が高いらしいんだ。」

「・・・なら、今日のエキシビション・マッチ、白銀少佐が最後に何をした[●●●●●●●]か説明できるのかしら?」


さっきまでの嫁や周囲の攻撃に凹んでいたユウヤがビクンと反応し、顔を上げる。
オイオイ、確かに最大の謎ではあるけど、幾ら何でも普通切り札は明かさねェだろ?
そいつァ突っ込んでいくところか?


「・・・先刻、一応神宮司大尉にも質問したんだけど、案の定それは知らないって言われちゃったのよね。
基本的に“直観的”な少佐の3次元機動は余人には不可解、参考にならないことが多い、ってイイ笑顔で返されたわ。
けど大尉は、本人に訊けば答えてくれるかも、と仰っていた。」

「・・・踏み込んで来るねェ、ベル。
本人には訊かないの?
そんなのをペーペーのボクが知っている・・・と思う?」

「そうね・・・。
白銀少佐に訊く気はないわ。
彼、自分の機動に関しては直観と反射で動いてるカンジだし、同じ感覚を持っている人じゃないと本当の意味で理解出来ない気がするのよね。
OSや装備の解説なら良いけど、動作に関しては、“なんとなく” って返ってきそう。
その意味では、“なんとなく”弾を当てちゃうだれかさん[イルフィ]なら理解できそうだけど・・・。」

「・・・なんか妬ける。
もうそんなに理解してるんだ・・・。」

「あら、心配要らないわ。
衛士として、憧れて、目標にするだけだから。
異性としては、A-00[あなたたち]に任せるわ。」

「・・・。」

「私は貴女と[●●●]、お友達になりたいの。
―――貴女じゃ無かったら訊かないわ。
模擬戦を見た限り、美琴[Mikt]も一見直観で動いているように見えるけど・・・、結構技術的なコトも精通してて、計算もしてるでしょ?」

「・・・よく判るね――、ボクですらイロイロ思い出したばかりで、ちゃんと整理付いてないのに・・・。」

「それこそ“なんとなく”だけど。
タネ明かしについては、勿論、知らないなら、それでも構わない―――。」


溜息を付いた後、興味深そうに大尉を見返す美琴[Mikt]
ちっちゃいとは言え欧州大陸では歴戦の勇士にしてこの洞察力だろう、若くして大尉という階級に着いている女傑、しかも今日午後の模擬戦からしっかり把握されているような相手。
だと言うのに、まるで物怖じしない態度はコイツも断じて“新兵[ルーキー]”じゃねェな。


「・・・正解だよ、ベル。
タケルに訊いても、多分ボクに遠慮して答えなかったんじゃないかな。
―――あのコンボ[●●●●●]を登録したのは、ボクなんだよね。」

「「「 は? 」」」「「「・・・。」」」

「タケルはあーいう騙し系の小技[●●●●●●]は不得手だからね。」


カラカラ笑う美琴[Mikt]にゴクンと唾液を呑み込む。


「―――イーニァさん、此処で話しても大丈夫?」

「えと、ん―――うん! 大丈夫だよミコト。」

「ありがと。
・・・一応タケルの切り札の一つでもあるから、他の人には内緒ね?
ボクもベルと仲良くしたいから、今日此処に居る人だけの特典ってことでよろしく。

―――アレは、簡単に言うと“サブリミナル・ミスレコグニション”だよ。」

「「サブリミナル」」「「ミスレコグニション?」」

「うん。
認識外誤認[サブリミナル・ミスレコグニション]
タケルは“夢幻泡影”って呼ぼうとしてたけど、御子神大佐に“チュウニ”って言われて躊躇してた。
そんな大層な名前を頂く様なコンボでもないしね。
あの模擬戦でユウヤの意図・・・遷音速戦を仕掛けられた事を理解したタケルは、最初から戦術機の機動にこのバックグラウンド・コンボを掛けていたんだ。」

「最初から?」

「うん。
時速で600km/h以上の機動については、“1秒間に、0.1秒だけ減速、即、0.1秒だけ加速する”―――っていう常時発動[バックグラウンド]コンボをね。」

「・・・0.1秒の減加速―――、そんな事が可能?・・・いえ、そもそもそれなんか意味在るの?」

「・・・人間のモノを認識するサンプリング感覚は凡そ0.2秒毎って言われているんだ。
テレビの黎明期には1秒に30枚の画像に一枚だけ商品の映像を入れ、見ている人は認識しないけど深層心理に画像が焼き付いて購買意欲をそそる―――って言うサブリミナル効果を利用した広告が造られたのは有名でしょ?
勿論、すぐ規制された手法だけどね。」

「・・・認識できないのは解かるけど、広告と違って深層心理に影響なんてしないだろ?」


ユウヤが突っ込んできた。
何故負けたのか、一番知りたいいのはユウヤだろう。


「戦術機戦闘に限ったことじゃないけど、バトルに強い人程、速度の認識が一瞬で予測が正確なんだよね。
目で見た映像が脳に伝わるのは時間遅れがあるし、対応してトリガーを引くのも時間遅れが生じるから、脳内の“認識”と“現実”には時間差が存在する。
それは速度が早くなれば早くなるほど大きな差になる。
巧い人ほど瞬時で相手の速度を把握し、正確に相手の未来位置を予測し、自分の動作遅れを考慮した必要なタイミングを瞬間的に割り出す。
そして戦闘中はそんな事を一々考えてるわけじゃないから、そういう速度域・相手に準じた脳内モデルを組み上げてしまうのが早い人ほど強いってコトだね。」

「「「 ・・・。 」」」

「1秒毎に0.1秒の減加速は今のタケルの機体性能だと、秒速200m、時速にして720km/hの場合で1秒間の到達距離にして1m程のズレ[●●]を生じさせる。
つまりタケルはユウヤにずっとその速度と距離感を認識[●●]させていたんだ。」

「・・・ユウヤなら速度の認知は一瞬、けれど認識できない極短時間の減加速により到達位置の誤差を含め認識させた―――と言うことね?」

「ステラさんの理解で合ってる。
勿論、0.1秒の減加速はコンボを使っているタケルにも認識されないから、XM3正規版の緻密な制御とそれに応え付いて来る機体性能が在ってこそ、・・・のトリックだけどね。
その機動をずっと・・・先刻の模擬戦だと20分ほども続けて、ユウヤの脳内モデルを、“誤認”させた。
そしてユウヤが決めに掛かった最後の一合いだけ、それまでの減加速[●●●]を、加減速[●●●]に切り替えた。」

「「「 ! 」」」

「あの時の最後の動き、反転から交差まで約3秒―――。
瞬時に判断している“見かけの速度”は同じでも、今までずっと減速されていた分を今度は加速させたから、ユウヤの認識と現実のズレは、約6m[●●●]になった―――。」

「・・・それがオレが的を外し、少佐の斬撃が届いた距離・・・って訳か―――。」

「実際コレをタケルに使わせたユウヤは凄いと思うよ。
本来使うつもりは無かったんじゃないかな。
けどユウヤの最初の加速で、この模擬戦がどんな領域の戦いになるか、それこそタケルは直観的に理解した。
だから使った。
それに、今回コッチでアルゴスにも教える予定だった空中機動に於ける慣性制御機動概念MCLIC:Maneuver Concept of Linked Inertia Controlだって、ユウヤはタケルの機動を見て模擬戦中に徐々に使いこなしていたし、何よりも超高速機動に特化されたPhase4の“キレ”はタケル以上に研ぎ澄まされていたよ。
もしこれがレインダンサーズ戦くらいの戦闘速度だと、0.1秒の減加速で稼げる誤差は半分の0.5m程度にしかならないから射線を躱せるかどうかは微妙だよね。
ユウヤの速度が速くて、そして脳内未来予測が極めて正確だったが故に、覿面の効果が出たってことだね。」

「「「 ・・・・・・」」・・・もしかすると見ていた私達も速度錯誤させられていた・・・と言う事なのか?」


ヘルガローゼ中尉が呟くが、確かにアタシも少佐の被弾を幻視したのを思い出す。


「当たり―――。
同じ効果は当然対戦していたユウヤだけではなく、画面を注視していた全ての人が嵌った。
モニターで見ていたみんなが、認識できない繋ぎの間に、被弾する〈Thor-01〉を幻視したはずだよ。
速度予測が巧い人ほどより明確に・・・。
瞬時で相手の速度を認識する、目の良い人ほど掛かりやすいトリックだからね。」

「・・・やけにあっさりバラしたと思ったら、超精密制御を可能とするXM3正規版限定コンボ、そして600km/h超の超高速機動時のみ有効・・・と言う事ね。
使いどころは思いっきり絞られるけど、コンボなら私にも使えるって言う事かしら?」

「一応難易度がGのコンボだから使えるのはレベル4になってからだし、認識外と言っても極短時間にかなりの加減速Gを受けるから長く連続使用すると酷い吐き気を催す。
20分も使って平然としてるのはタケル位だけど、ベル達が“レベル4er”になる頃には、数分単位でなら使えると思う。
あと、コンボの公開は一応最初の登録者に権限が与えられるんだけど、ボクは公開するつもり。
―――と言うのも、バラした理由はこのコンボ、BETAにも有効らしいんだよねェ。」

「 え? 」「 な? 」「 は? 」

「・・・BETAにも効くのか?」

「現状でも機体性能で超高速機動が出来るユウヤやタリサなんかは使えるかな。
加速が付いてこられるか・・・ちょっと微妙だけど。
御子神大佐によると、BETAの飛翔体に対する知覚はその感知方法こそ違うけど、信号の伝達・反射系は同程度の速度を有していると観測出来るんだって。
これは炭素系生命と殆ど同じ塩基を基本としているからで、その伝達速度は地球型炭素系生命の理論値とほぼ同値。
だから0.1秒レベルの変化は認識出来ないし、照射は予測に基づく偏差射撃、上手く使うとレーザーの直撃を免れることが出来ると思うよ。
照射時間が長いから、追尾が躱しきれれば、だけどね。」

「「「「・・・。」」」」


それでも初撃が躱せれば、遮蔽域に逃げこむ可能性は高くなる。
敵はBETA・・・。
それが対BETA戦に有効であるなら、将来的には対立するかも知れない陣営にも惜しげもなくあっさり公開する・・・、そんな当たり前のことを当たり前に実行しちまう。
対人戦など歯牙にも掛けない。

御大[Great Colonel]”といい、・・・ホントにブレねェな、コイツら―――。


Sideout



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