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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/05/31 10:24
'15,03,28 upload
'15,05,31 誤字修正


Side ルナテレジア(Lunateresia von Wizleben西ドイツ陸軍第44戦術機甲大隊第1中隊第3小隊中尉)


画面の隅に映った機体が、瞬く間に迫り来る。
増大する爆音にオートアッテネータが間に合わず、スピーカーの音がガリガリと割れた。

画面が明後日の方向に激しく振られ、即座に切り替わる。
ドローン・チェイサーの画角と追尾がその速度に追いていない。


次の画面もすぐ振り切られて視野が切り替わり、空域を映す仰角画面。
刹那、大小の弧を描くバーナー炎が接触寸前まで交差。
モニタールームに生じた小さな悲鳴と共に火花を散らして互いに弾ける。


ロールしながら水平に旋回回避した白い機体[White One]に対し、グレーの機体[Gray One]は縦に落ち、ビル間に消えた。


―――墜落ッ!?


周囲からも引き攣るような悲鳴が上がるが、切り替わった画面に息を呑む。
そこには、ビル街のメインストリートを0高度背面飛行[●●●●●●●]で翔け抜ける戦術機[●●●]の姿!!

それも爆音と共に大量の埃を舞い上げ、一瞬でフレームアウト。

切り替わった次のカメラでは、その姿勢のまま副腕に固定されたままの2門の突撃砲を上に向け、ビルの谷間で銃撃。
反動で微かに地面を擦過する跳躍ユニットが激しい火花を上げ、相手銃撃の盾にしたビル群の破片が跳ね回る。
その[TUBE]を、超高速で潜り抜けて行く。


転景―――俯瞰視点。


ビルの谷間からの銃撃を一重で躱した白い機体[White One]は、メインストリート前方に120mm弾を点射。
遠い順に左右のビル角を崩し、その行く手を潰す。
ルート沿いに上昇を余儀なくされるだろう相手に偏差射撃の突撃砲を構えた。


再び画面はメインストリート。


ビルの破片を避けたグレーの機体[Gray One]は、その速度を維持したまま錐揉みで強引に進路を変える。
ロールとピッチを同時に、しかも完璧なタイミングで行わなければ成し得ない起動で、メインストリートに区画一つ隔て並走する隣の街路・ハイウェイ高架下にくねる様に強引に機体を割り込む。


映像は高架下―――。


跳躍ユニットロケット点火の長い焔。
更に加速し瞬く間に離れる機影―――。

高速道路の架橋を潜りぬけ、チェイサーの追尾も、相手の銃撃も振り切って高空に脱した―――。








フゥ―――――。


私はずっと詰めていた呼吸を漸く開放し、長く息を吐きました。

それでも視線は釘付け、画面から目が離せません。
今は2騎とも様子見の旋回、ですが何時切り込むかわかりません。
勝負は瞬きした一瞬でも決してしまいそうです。

モニタールームも今の映像にざわついています。


全員で幻でも見たような気分です。

戦術機による0高度背面[●●]飛行なんて、見たことも聞いたことすらありません。
そんな事が出来る戦術機と衛士が出現する事さえ想像を絶していました。

複雑で突起や可動部が多く、高速度では乱流発生が夥しく変化する戦術機の形状―――。
それにより空力が安定しない戦術機は高速度域の飛行姿勢がかなり制限されています。
つまり戦闘機動時の噴射跳躍による瞬間的な状態としては在り得ても、通常安定的な背面飛行の継続ですら難しいのが実情なのです。
と言うのも殆どの戦術機では背面状態に於いて揚力が不足するため高度の維持は出来ず、高空からの降下時くらいにしか不可能な機動―――。
さながら旅客機で背面飛行を行う様なもの、と考えればそれがどれだけ荒唐無稽なことであるのか、理解出来ると思います。


それを、0高度で敢行―――。
尚且つ、その姿勢から突撃砲による反撃までして見せた・・・。

有り得ない速度でしたが、逆に言えばその速度だからこそ可能であったとも言えます。
ほんの僅か間違えれば、彈け飛ぶ限界ギリギリの瀬戸際―――。


今此処に集う衛士がそれを知っているからこそ、モニタールームもざわついているのです。



けれど、私が更に衝撃を受けたのはメインストリートから並走する高架下に滑り込んだあの機動―――。
白銀少佐ですら読んでいなかったルート。

0高度背面を実行できた戦闘機はパイロットの腕次第とはいえ、過去いくらでも存在しました。
けれど・・・あの速度であのレーンチェンジを行える戦闘機は存在しなかったでしょう。
だからこそ白銀少佐ですら予測し得なかった。

ピッチレート・・・しかも構造上機首上げ[●●●●]が異様に高い戦闘機では、最初の回頭は出来ても、次の切り戻しにはロールに依る反転が必要となります。
故に、あの短い距離で連続した反対方向への急旋回を要するレーンチェンジは戦闘機では不可能なのです。
勿論、既存の戦術機で、平面機動[サーフェシング]であれば可能ですが、その場合の速度は300km/h前後が限界でしょう。

それを常軌を逸した速度の空中機動でヌルリと抜けていった・・・。



―――今も私の身体は、全身が総毛立ち、小さく震えています。

これは畏怖?、それとも歓喜?
命さえ削るような極限のぶつかり合いに対する畏怖なのか、戦術機という概念を超越した歴史的場面に遭遇することが出来た歓喜なのか、私にも判りません。

これ以上は危険、と危惧する傍らには、この瞬間に立ち会っているんだと言う、意識があります。
目前の巨大モニターに繰り広げられる極限の映像は、一方で戦術機という概念の、一つの黎明。

今までの常識を遥か彼方に放逐し、目に飛び込む映像が全て新しく、只々目の前に繰り広げられる2騎の機体を目で追うのみ。



主役は日本帝国の次期主力戦術機候補である試製XFJ-01。
そのBASEとなった不知火[TYPE 94]弐型[セカンド]から Phase3まで変更を受け、更に“横浜”と“ユーコン”で個別の進化を遂げていると思しき試作機同士の模擬戦―――。

それは正しく、今までの戦術機戦闘の常識を根底から覆すものでした。











そもそも、A-00中隊の戦術機が披露されたのは、今朝になってからです。
昨日の歓迎式典では、到着直後ということもあり、点検整備中。
専任のメカニックも引き連れカーゴを開ける事無く割り当てられた野外サイトの機密区画に篭ってしまったので、一目拝むことも出来ませんでした。
尤もXFJ-01については、歓迎式典でもユーコンに於ける試作先行型、不知火[TYPE 94]弐型[セカンド] Phase3の2号機と3号機が並んでいました。
Phase3はあの不運の名機とも言われるYF-23の流れを汲むとも噂される機体。
ステルスと言う機能には全く魅力を感じないのでYF-23そのものはそれほど好きな機体ではありませんでしたが、機動性を向上させる不知火[TYPE 94]弐型[セカンド]とのハイブリッドには思わず見惚れてしまいました。
正規版XM3を積むことで、第4世代の魁とフランク・ハイネマン氏が認めた、初めての機体でもあります。
それだけでも眼福だったのです。


・・・そう今思い出しても感動が蘇るトライアルのオープニングは200機以上の戦術機がズラリと並んだ歓迎式典、余りの僥倖に私は天まで舞い上がりましたわ!
何という“炭素筋肉祭り[カーボン・マッスル・ハーレム]”なのでしょう!?
トライアルの遠征メンバーに私達を選んでくださったジークリンデ様に嬉し涙に塗れながら深く深く感謝し直した位です。
余りの幸せ[エクスタシー]に危うく気が遠くなりかけましたもの。

―――我が人生一片の悔いなし!!


ただ、思考が飽和するほど炭素筋肉過多の為か、その時見た“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”白銀少佐自身の印象については割愛致しますね。
昨日と今朝、そして戦術機機動中の印象が余りにも違いすぎて上手く表現できない、と言うのが現状ですから。



そして、今朝になって並んだA-00の部隊機―――。
白地に国連ブルーが配色された試製XFJ-01は、昨日の“炭素筋肉祭り[カーボン・マッスル・ハーレム]”とは別の、不思議な雰囲気がありました。
―――孤高の存在、とでも言うのでしょうか。
底知れない霊光[オーラ]を纏った、妙に存在感のある機体・・・。
新潟戦に於ける“Amazing5”と呼ばれた5機の内、3機は“横浜”仕様XFJ-01、そして2機は日本の斯衛軍[インペリアルガード]専用機“武御雷”を改修した機体と観測されていましたが、その5機にも同じ印象を抱きました。
今回此処には6機、全てその“横浜”仕様XFJ-01“Evolution4”が、並んでいたのでした。
試製XFJ-01の中でも横浜で改修される特定の任務を想定したというスペシャルバージョン、それが横浜では“Evolution4”という呼称で呼ばれている、と教えてくれたのは壬姫[ Miky]です。

基本はPhase3を踏襲しながら細部には更に手が入っていることが伺えます。
各部の空力仕様も異なりますが、何よりも跳躍装置[ジャンプユニット]が違います。
余程のハイエンド・チューンを施しているのでしょうか?
外側の形状は同じでも、奥に見えるバーナーノズルの仕様が異なることは見て取れます。
寧ろそれを従来と見た目同じとし、なるべく隠蔽している意図が伺えました。

そして、表面上最大の違いはその装備。
各個の装備は、帝国の87式突撃砲をベースとした“改”仕様、恐らく支援砲に近いロングバレル化だと思われますが、サプレッサ的な所もあり個人的には意図が理解できませんでした。
それもそのはずで、この87式突撃砲“改”仕様が“新潟の奇跡”では、帝国の“姫将軍”その人が突如地下侵攻で湧出した5000近いBETAを殲滅した未公表の新兵器―――恐らくは電磁投射砲と推測されている突撃砲と同じ形状なのです。
通常は36mm弾を使用しながら緊急時は電磁投射砲として運用可能・・・その理想的な思想は理解できましたが、その実現に必要な莫大な電力の供給を、このサプレッサに有しているのか?
今はアフリカにある本国研究所、技術者の興味の的は、その一点でした。
その新兵器が各戦術機にほぼ2門装備できる程に完成されいるのか、それともデコイなのか、それすら解りません。
しかも今回、白銀の雷閃[シルバーライトニング]機と思われる機体が装備する87式突撃砲“改”は、更なる強化を施されていました。
ガイドレールを廃し、大きなブレードをフレーム一体成型した、恐らくは完全なワンオフ仕様―――。
その存在感は圧倒的で、銃剣とは一線を画し、形状的にはガス避けのスウェッジを持つドロップポイントのナイフ、サイズ的には日本で言う脇差にも近いものがあります。
戦闘長刀の2振りと共に背面担架にマウントすると、鋭利な刃が4本並ぶストライプとなり、その姿は流麗でありながら、極めて剣呑な雰囲気を醸しておりました。
この突撃砲2+長刀2の装備が試製XFJ-01の基本装備であるらしく、横浜の他の2機とアルゴス試験小隊の2機もブレードでは在りませんが同じ仕様となっています。

無論A-00の場合は実戦を兼ねる部隊なので、残る3機の内2機は突撃砲と長刀担架を1に減らし、代わりにミサイルポッドと思しきボックスを背にして、主腕にもう1門突撃砲を抱える制圧支援のスタイルでした。

そして、最も私の目を引いたのは最後の1機―――。
その機体は、欧州[われわれ] EF-2000[タイフーン]が主に装備する中隊支援砲:ラインメイタル社製Mk-57中隊支援砲を改造したと思しき長いバレルの支援砲を抱えていました。
背面担架はの2つは突撃砲と長刀、残りは恐らくMk-57“改”の専用のマガジンだと思われます。
砲撃支援担当と思しき装備―――。

Mk-57“改”・・・。
極めてソリッドな感じのする長いヒートガイドとそれを支える2本のガイドレールの構成は、87式突撃砲“改”と同じ意匠構成。
我がドイツの名狙撃銃DSR-1を彷彿とさせる雰囲気があります。
内部の銃身は当然フローティングされているのでしょう。
バイポッドは省略されているのか、付いていない様に見えます。

けれど何故か纏う雰囲気がMk-57と何処か違う・・・。

試作品故なのでしょうか、見ているだけでもその質感を感じる、極めて精度が高い物作りに、秘められた力を感じずに居られないのです。
機関部はMk-57を流用しているのが丸分かりなのですが、これも専用マガジンボックスに変更されていますし、なんといってもヒートガイドに保護されたバレルから先の精度が桁違い・・・、底知れない迫力を感じました。

まさか・・・このMk-57“改”も電磁投射砲化出来る―――なんて言いませんよね?




そんな私の興奮を他所に、午前中行われた単騎vs中隊戦は、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”白銀少佐の圧勝。

相手はXM3の極みに在る“単騎世界最高戦力”、私に言わせれば当然の帰結です。
聞き及んだXM3の性能が今のOSと違いすぎました。
寧ろ既存OSで、彼の完璧に3%の瑕疵を付けたベルと、あの捉えどころのない機動を相手に、剣を交えたアイヒベルガー様とジークリンデ様が別格。
イルフィの偏差射撃ももうちょっとだったんですけど、相手の機動が凄すぎて僅かに届きませんでした。
私とヘルガは最後まで残っていましたが、アイヒベルガー様とジークリンデ様が共に倒された事で動揺、ヘルガとともに相手射線に不用意に出てしまい、被弾判定。
あまり良い所なく終わってしまいました。

個人的にはダメダメでしたが、あの機動を齎すXM3が私達のEF-2000にも換装されるのです!
今後に期するものが無い訳ではありませんわ!


でも、白銀少佐のワンオフらしいとされる、ブレード仕様87式突撃砲“改”もやっぱり素敵!
叶うならXM3正規版を装備したEF-2000で、左にMk-57“改”、右にあのブレード仕様突撃砲を装備して戦いたい、と思ってしまいました。


・・・そうなのです。

今回参加した14中隊中13中隊には既にXM3LTEが配布され、現在はOS換装インストール作業中。
終わり次第、XM3慣熟に入ります。
元々XM3LTEが配備されていたレインダンサーズは、その時間を使い先行してXM3正規版の搭載を進めています。

またツェルベルスを含む5中隊に、今夜中に正規版が支給・搭載されることも決まりました。
供給数は14中隊中6と言う事で、モメるかとも思いましたが、基本国連基地に属する中隊が対象となりました。
各国の軍隊から個別に参加した部隊は、やはり機動ログの提出に付いて本国との調整に手間取り、明確な意思表示の回答が間に合わなかった模様。
白銀少佐から帝国の配備が終われば個別に対応するとの回答も在り、特に不満も出なかった様子。
先ずはXM3のレベル向上が必要と認識している為で、正規版への換装はそれからでも十分間に合う、と言う判断のようです。


ゲスト中隊の戦術機が整備に入った午後の時間に行われたのは、XM3の検証と習得にプロミネンス計画に参加している各実験・試験小隊の模擬戦。
アルゴス試験小隊は既にXM3教導側として除外されておりますので、残り9小隊。

その相手は、出撃回数1回の壬姫[ Miky]達、新兵[ルーキー]小隊。
プロミネンスに参加する各小隊以上にXM3に習熟していたレインダンス中隊さえも単騎で退けた白銀少佐では、小隊規模で挑んでも余り得るところはなかろうと言う判断・・・まあ、瞬殺は判り切っているのでそれでは意味が無いと言うことでしょう。


A-00小隊が“Evolution4”を駆るとて、相手は各国の試験小隊、出撃回数二桁を優に越えているトップガンクラス、歴戦の猛者たち―――。
新兵[ルーキー]小隊では慣熟にもならないのでは?、との大方の予想を完全に裏切り、そのプロミネンス所属の実験小隊を新兵小隊が事もなげに撃破していく理不尽を魅せ付けられました―――。

初めは神宮司大佐を隊長とするGarm小隊で行うのかとも思っていましたが、メンバーは〈Garm-02〉[Cz]〈Garm-03〉[K]〈Garm-04〉[Mikt]そして〈Thor-04〉[Miky]新人[ルーキー]4人編成での対戦。
けれど、いざ始まってみれば彼女たちの技量は既に熟練の域、出撃回数が20を超えているベテランに対しても、黙っていればどちらが新人か判らない程の落ち着き様なのです。
制圧支援で小隊長代理の千鶴[Cz]が相手の動きに合わせ新人とは思えない対応で小隊指示を行い、強襲前衛の[K]が切り込んでは相手を上手く散らします。
それを千鶴[CZ]と、同じ制圧支援である美琴[Mikt]が、各個撃破していく。
その中で僅かにでも突出した機体は最後方にホバリングする砲撃支援壬姫[Miky]がMk-57“改”で撃墜してしまいます。

それも一気に潰すのではなく、詰めチェスの如く理詰めで追い込んでいく―――。


後からよくよく聞けば、昨日の歓迎会で仲良くなった壬姫[ Miky]達A-00中隊の新人4人は、訓練兵の時点からXM3のみの教導しか受けていない純血種[サラブレッド]、しかもその教官は“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”その人と、XM3教導の祖とも言われる神宮司大尉、更には“漆黒の殲滅者[ダーク・アニヒレーター]”その人にも個別にサポートを受けていると言う超エリート部隊。

そのせいなのか、本人たちの資質がもとより高かったのか、多分双方なのでしょうが、既に全員がレベル5に到達しているという驚愕の事実が発覚。
昨夜の話を聞いたジークリンデ様によれば、レベル4は衛士20人に一人、レベル5は、衛士千人に二人の発現確率とのことなのに、A-00中隊は神宮司大尉含めて全員レベル5er[ファイヴァー]だとか。
他にA-01中隊にも新潟迎撃戦で見せた光線級回避が実行出来るレベル4er[フォウアー]以上が数人居る事が知られていますから、A-0大隊がどれだけの精鋭を集めた特殊部隊なのか、深く、海より深く理解しました。

対する実験小隊は、各国のエース級とは言えその殆どが今月半ばに入ってから漸くXM3教導を始めたばかりで、実際の到達レベルはまだ2や3の小隊。
その実力差は明白で、実は最初からA-00小隊側の教導モード。
訳が分からない内に撃墜されるのではなく、徐々に追い込まれることにより自分たちのミスや欠点を浮き彫りにさせ、認識させる、且つ1小隊ジャスト20分ずつ・・・。
休憩を挟み3時間、見事に“XM3慣熟の基礎模擬戦”を熟してみせたのでした。









そんな小隊戦の後、藍色に染まりゆく空の下、今日最後に行われたエキシビジョン・マッチが、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”と、同じXM3正規版でF-22EMDを下したアルゴス試験小隊、通称“ラプター・クラッシャーズ”のエース、ユウヤ・ブリッジス中尉の模擬戦でした。

片や“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”が操る白い機体[White One]“Evolution4”は、ハイヴ潜行を意図した事が明白である近接戦闘力の拡大版。
それと同時にレインダンサーズ戦で見せた高度50m以下での高速飛翔戦闘力、時速300km/hを超える速度でビル群を縫う機動と、その機動からでも突撃砲を当てて来るアビオニクスを併せ持つ第4世代機。
確かに今朝方ジークリンデ様に説明されたXM3正規版の細密制御が在ってこそ、と納得させられたものです。

もう一方はユーコンでのAH戦を元に、更に突き詰めたであろう機体。
昨日から今朝も整備中と言う事で、此方も見ることが出来なかったグレーの機体[Gray One]はPhase3-1号機。
しかしPhase3と言うよりも、既に“Phase4”と言っても過言ではないのでしょう。
“Evolution4”はとまた方向性の異なる、各種改修が施されている様子。
基本フォルムは変わっていないのに全体のシェープが、より鋭く、空力を意識した形状に変更されている感じがします。

実際、開始直前のモニターの中で、〈Argos-01〉は2振りの戦闘長刀を予め引き抜いていました。
更に背面担架の突撃砲をマウントした副腕を胸部まで展開し頭部センサーの両側に上に向けた形で固定、空いた長刀マウントは、折り畳む形で展開した副腕の基部に嵌め込まれました。
周囲の形状もそれに合わせて変更してあり、結果的に“Phase4”は背中がほぼフラットな形状を得ています。



―――そして始まったのが、今目の前に繰り広げられている驚愕の一戦でした。



開始の合図と共に、〈Argos-01〉はビル街のメインストリートを全力加速。
恐らくはロケット推進剤も使って一気に速度を上げ、離陸。
しかしスクランブルと言うより基地強襲されたときの様―――。
脚が離れたその直後には機体をロール、そのままビル街を急旋回するシザースに入りました!


これは・・・!!


匍匐飛行の姿勢、前傾が深いのです。
戦術機の上半身が水平を僅かに超えるまでに倒し、その為ほぼ上を向いていた突撃砲が正面を狙う固定機銃と化しています。
また、跳躍ユニットを殆ど水平に出来、脚部を僅かに下げることで機体全体で翼形状を構成、それにより十分な揚力を得られるであろうことが見て取れました。
ココまで前傾というか完全匍匐姿勢を取れば、最大戦速時の前面投影面積が大幅に減ります。
背面担架を畳み、フラット化することで、揚力を稼ぎCd値を大幅に減らしているはず―――!。
各パーツ形状の形状変更も、全てこの姿勢での空力に寄与するためのブレンデッドウイングボディを為すモノであることがはじめて理解できました。

通常姿勢に於ける操作性の変化を少なくしつつ、飛行姿勢に於ける揚力と空力制御性に特化した機体形状―――。
全体的に空力の邪魔になる突起をなるべく無くし、曲面で構成したシャープでスッキリしたラインに変更されているのです。
担架から外し、両手に逆手で持つ戦闘長刀ですら、空力制御に於けるカナード代わりに機能して居ました。

機体で十分な揚力が得られるため、推力の殆どを前進に使える・・・。
・・・これはジェット燃料に依る最大巡航速度でさえマッハに届くかもしれません。
ロケット燃料をアフターバーナーにした最大推力時は更に上にまで達することが出来るでしょう。
勿論その速度で不用意に飛行姿勢を崩せば、瞬時に空中分解する事もあり得ますが、電磁伸縮炭素帯の硬直化とXM3のモデル化を組み合わせ、巡航速度に合わせた可動範囲モデルを設定することは出来るはず―――。

亜音速から恐らくは超音速域までの空力に特化した形状進化―――それが“Phase4”の本質でした。


その結果、過去の戦闘機ですら難しい離陸直後の超低空旋回を失速すること無く成し遂げ、一旦は離れる方向に加速する〈Argos-01〉、一気に上昇に移りますが、その機動も細く速いシザースを伴うもの。
その速度が既に戦術機では在り得ないほどに達していました。



対する〈Thor-01〉も加速を始めます。

高速機動をする相手に対し、足を止めての迎撃が難しいことはあれほど午前中に自らが示していました。
正規版XM3の射撃管制が極物だとしても、今までこれほどの超高速域は戦闘経験になく、モデル化も出来ていないはず。
脚を止めての対峙は下策、少しでも相対速度を少なくするには、自らも高速機動をするしか無い、と言う少佐の判断が見て取れます。
先程は、時速300km/h級の機動を見せていましたが、何処まで行けるのでしょう?


それは―――超高速超低空空中戦。

2騎の平均時速は、なんと700km/h前後―――!
〈Argos-01〉に至っては瞬間的に900km/hにも達していたのです!!


亜音速から遷音速に踏み込む程の速度で、通常の戦術機としてはフルパワーによる一瞬の最高速に近い領域にまで達していました。
午前中、白銀少佐がレインダンサーズ相手に見せた飛行戦闘でさえ、有り得ない速度域の空戦機動だと思っていたのに、ユウヤ・ブリッジス中尉の速度は更に常軌を逸しています。
先程の少佐の凡そ倍の速度。

しかも、通常戦闘機が数千m上空で行う速度域の空中戦を高度300mの範囲で行っているのです。

その速度を秒速にすれば約200m/s―――
1秒疎かにすれば、地面に激突する速度!


白銀少佐も、高速で制空権を取られ頭上を抑えられると劣勢に立たされることが判っているため、午前中より更に速度を上げていますが、改修の方向性が異なるその形状の違いから、当然そこまで速度が上がりません。
その速度差を、機動で躱しているのが今の戦いでした。

確かに狭いスタブを潜るハイヴ戦に於いて、ここ迄高速域の空力特性を振る必要があるかと言えば疑問ですが、少なくともオープンエリアに於けるAH戦に於いては、新たに提示された一つの解であることは間違いないのです。

“Evolution4”の機体に施された空力特性は、恐らくは“ニュートラル”―――全ての速度域で出来るだけ空力影響を排し、機動の安定化を図った仕様。
対して“Phase4”は正しく“エアリアル”でしょうか。
機体が高速化すれば高速化するほど、先鋭化する空力特性。
けれどその特性はピーキーとは異なり、線形性[リニアリティ]を保持した制御性[コントローラビリティ]を維持しているのです。
敢えて言えば“Phase4”に施された改修は、中低速域の機動を悪化させる類の改修ではありません。
制御性を確立する線形性さえ維持できれば、機動モデルの中で如何様にも制御できるのです。
つまりは極めればハイヴ攻略も熟し、BETA殲滅後はその超高速機動で制空権も奪取できる―――。


それにしても戦術機にコレほどの空戦特性を付与するとは・・・。
―――いかにも米国らしい進化と言えるのではないでしょうか。



XM3を極め、独自の3次元挙動を駆使する白銀少佐、その中低速域に於ける機動のデタラメさは午前中の中隊戦で遺憾なく発揮されました。
その中にはXM3の高密度アビオニクス補佐による精密射撃も入っています。

ブリッジス中尉の“Phase4”が同じ正規版XM3装備だとて、その慣熟による反応速度は限定解除の白銀少佐が上。
通常の1on1では勝負にもならない、と言うのが周囲の雰囲気でした。

相手は1騎で連隊規模の戦術機を凌駕できる“単騎世界最高戦力”―――。

単騎で抑え得る者など皆無―――それが始まる前の認識でした。



しかし、だからこそブリッジス中尉はこの戦法を選んだのでしょう。
戦術機で遷音速に踏み込む速度域での高速戦なら、厄介な銃器管制が極小化出来る。
加えて超高速故に、白銀少佐独特のトリッキーな3次元機動も空気抵抗の観点から大幅に制限される。

彼はその為の機動モデルも、遷音速前提で積み上げてきたはず。
その容量は、遷音速域に限れば、あるいは白銀少佐すら超えている可能性もあります。

故にその要望に応える機体の進化も、相当に煮詰められた物なのでしょう。
そこはフランク・ハイネマン氏とボーニング・・・培ってきた戦闘機の経験が存分に生かせるのですから。

・・・でなければ、こんな危険な模擬戦をプロミネンスが静観してるわけがないのです。





何度目かの交差で〈Argos-01〉を縦に弾いた〈Thor-01〉がビル街に追い詰めたかに見えましたが、〈Argos-01〉は0高度背面飛行という離れ業から、超絶的な空力制御で高架下を翔け抜けて見せました。

そう、往年の戦闘機にさえ不可能なこの機動が可能な理由は、全身を一つの翼と見立てたBWB[ブレンデッドウィングボディ]に在るのでしょう。
主翼やボディが固定されている戦闘機と異なり、戦術機は姿勢変更[●●●●]が可能なのはず。
その姿勢制御で揚力特性を反転できれば、機首上げと同等の機首下げピッチレートを実現することも可能―――。
あの滑らかなレーンチェンジは、姿勢制御を含めた戦術機ならではのピッチレート実現により為されたものである可能性が高いのです。


何れにしても―――2騎とも凄い・・・!!

隣で観ているイルフィの口があんぐりと開いたままだったので、閉じてあげました。



突撃砲はペイント弾、長刀はシリコンで基本殺傷力はありません。
けれど機動は実機で現実なのです。

つまりこの速度域で地面や、或いは相手に激突すれば、確実に命はない―――。

なのに平然とバーティカルターンを敢行し、旋回円をクロスする。

2騎ともが、戦術機の超高速飛行を完全に制御下に置いているから出来る機動・・・。
この速度域でのXM3の補佐する制御モデルが、二人の中には既にある、と言う事に他ならないのです。


まさしく手に汗握るドッグファイト、否、イーグルファイトと言うべきでしょうか。

頻繁にチェーサーが振り切られ、固定カメラに切り替わります。
如何に非常識な速度域で戦闘を行っているのか、如実に物語っています。


戦術機の場合、戦闘機とは異なり後方危険円錐に入られることが必ずしも不利とはなりません。
副腕にマウントされれた突撃砲は、そのまま後方にも射線が取れます。
後方が有利なのはホーミングタイプのミサイルが追尾を外し難く成るためで、その手のミサイル装備が珍しい戦術機に於いては真後ろに着いたとたん突撃砲を斉射される可能性もあります。
故に後ろを取る事には固執せず、飽く迄相手の機動を予測し、旋回円をクロスさせる一瞬に捉えるしか無いわけです。
後ろを取り合うドッグファイトではなく、交差の一瞬で爪を突き合うイーグルファイト。

XM3の射撃管制が幾ら高性能であっても、この速度域とも成れば、その機会はほんの刹那―――。
その時間的にも空間的にも僅かな、“微塵の刹那”を奪い合う空中戦。


―――こんな戦い方は欧州にはありません。
恐らくは帝国にもないでしょう。


戦術機[Tactical Surface Fighter]という概念を産み出しておきながら、それを超えて、戦闘機の様に運用する概念拡張そのものです。

正に米国だからこそ出てくる発想。
ブリッジス中尉が自分の得意な領域に白銀少佐を否応なしに引き摺りこんだ戦い、と言えるのでしょう。



その戦いは、さながらあらゆる空中機動の見本市のような模擬戦―――。
時間など忘れていたけれど、気がつけば既に20分以上、この空戦を続けています。

機体の速度は平均値でいえばほぼ同等―――、しかしその機動は違います。
超高速域を想定していないハイヴ潜行仕様の“Evolution4”は、その機動の7割をスラスターに頼っています。
サブスラスターも含め強力な推力ですが、その速度を継続するには、各部の空気抵抗が大きすぎました。

一方の〈Argos-01〉、“Phase4”は、空力に最大限配慮した姿勢で遷音速巡航すら可能。
同じ系統のスラスターを装備していますから、白銀少佐と同じ機動が可能なだけでなく、空力を有効に利用する分多彩で鋭利な機動モデルを有している・・・。


実際空戦は機体スピードと空力制御に勝る〈Argos-01〉が優勢。
交差するたびに僅かづつでも近づく射線に、〈Thor-01〉は時折カメラのピントがぼやける様な絶妙の機動で躱すのがぎりぎりになってきています。

基本攻めの立ち位置にある〈Argos-01〉が、〈Thor-01〉の回避機動を学習することで空力機動にスラスター制御を加え、相手のその回避マージンを削っているのに対し、守りに徹さざるを得ない〈Thor-01〉は、しかし空力機動性の不足から現状以上の回避が出来ない―――。
そんな図式が見て取れます。

―――あの“単騎世界最高戦力”を追い詰める者が存在する!!




そして〈Thor-01〉の旋回円に下から抉り込むような垂直上昇を見せた〈Argos-01〉。
シザーズで躱す〈Thor-01〉に、読んでいたように機体を前転させ、背面全てを使う極大ブレーキング。
失速直前に跳躍ユニットを全開噴射にして空中でドリフトする様にスライドしながら〈Thor-01〉の軌道に切り込みます!
空力制御性とスラスター推力を最大限組み合わせた超高速機動!!

〈Thor-01〉もブレーキングシザースから離脱を図りますが、〈Argos-01〉も想定済み―――。


決まる―――!!



刹那の射線、けれどそれを外すとは考えられない完璧な位置取り。
見ていた全ての者が、ペイント弾に黄色く染まる“Evolution4”を幻視しました。


そして旋回ラインが重なった次の瞬間―――。



画面には〈Argos-01〉の機体、腰から下が袈裟懸けに断たれて墜ちていく映像が合成されていたのです!!




『・・・・・・あ・・・〈Argos-01〉大破判定・・・?、―――戦闘不能。
よって〈Thor-01〉の勝利です―――。』



半ば呆然としたオペレータの疑問形アナウンスと共にモニタールームは一気にどよめきが湧き上がります。

恐らくは、本人のブリッジス中尉を含む、戦闘を見ていたほぼ全員が白銀少佐の撃墜を幻視したはず。

にも関わらず、少佐の“Evolution4”は確かにペイント弾の痕跡を残さず、暮れ残る空を背景に4条の蒼い翅を棚引かせ宙に佇んでいました。




・・・何が、・・・一体、何が起きたのでしょうか!?


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