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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 16:57
'15,03,22  ※ 続・タケルちゃん無双
         感想板にご指摘いただきましたので、前話に少しだけXM3解釈の加筆しました。
'15,10,07 誤字修正



Side 武


12戦を終えて被弾3%―――か。

ほぼ盲撃ちで当てられるとは思わなかった。
逆に言えば、勘任せの予測不能偏差射撃だから喰らったとも言える。

―――ま、そこは流石としか言い様がない。

ベルナデット・ル・ティグレ・ド・ラ・リヴィエール大尉―――。


傍系記憶には、1周目のバビロン作戦後[The Day After]に共闘した覚えもある。
この記憶のループはいろいろ理不尽な事ばかりあり、当時のオレは滅茶苦茶荒んでたから余り思い出したくない部類の記憶なんだけどな―――。



次はツェルベルス、・・・こちらは2周目の桜花以降に欧州戦線で共闘した事がある。
その時のメンバーには今いるメンバーが数えるほどしか居なかった。

世界各地の陽動作戦を含む桜花作戦での消耗が甚大だった2周目。
1周目の世界群よりはましとは言え、夕呼先生に言わせれば、10年が30年に伸びただけ。
彼方の言う不可逆限界点が今年いっぱい、そのギリギリだっただけに天秤はまだ危ういバランスをとっていたとも言える。

今、傍系記憶を思い返せば、1周目でバビロン作戦以降関わった人たちは、寧ろ2周目の世界では桜花作戦までに亡くなった人が多かったような気がする。
まりもちゃん、冥夜、狭霧大尉に、ウォーケン少佐・・・。
他にもオレが知らないだけで、同じような例はたくさんあるのかも知れない。

そう考えると2周目の世界ではベルナデット大尉は桜花陽動で亡くなっていた可能性もあるのか。
逆に1周目の、JFKハイヴ戦ではドイツ仕様のEF-2000を少数見かけた記憶も在るのでツェルベルスのメンバーも、2周目の桜花陽動で生死を分けたとも考えられる。


様々な“可能性の未來”を知っているだけに複雑な想いは在った。

―――けれど、今回目指すのは、あるいはその双方を生かせるかも知れない道。
支配因果律を人類側に寄せると言うことは、取りも直さずそういう事だ。

―――貴方達にも、是が非でも生き抜いて欲しい・・・。
その為のXM3先行供与と教導、そしてこの模擬戦なのだから―――。


その光、指し示してきなさい―――まりもちゃんにもそう言われた。




そして、正直今日のオレはかなりテンション高かったりする―――。














今朝目が覚めると、左胸には柔らかな存在、それを腕で抱いていた。。


まあ朝チュン、と表現する状況ではなかったけど。
今の時期、ユーコンの朝は異様に遅い。
日の出は10時過ぎ、日の入りは4時半前。
まだまだ外は暗く、鳥も鳴いていないのだった。


回した腕の指に触れる髪をそっと撫でた。




何せ、昨日はいろいろと気疲れした。

コトの発端は横浜をHSSTで出るとき。
起床ラッパ前の早朝なのにわざわざ見送りに出てきてくれた柏木に、いきなり首に抱きつかれてキスされたのだ。
しかもオレが混乱している隙を突いて、舌まで絡めてくる濃厚でディープなヤツを・・・。


アハハ、私の気持ちよ。
行ってらっしゃい―――!


・・・じゃねぇーよ!!
―――ふっくらした唇の感触と、薄ら頬を染めて走り去る柏木に一瞬見惚れてたのは、確かだけど・・・。

そこに残されたオレの周囲には、一緒に行く委員長、彩峰、たま、美琴の醸す冷え冷えとした空気。
柏木は選りに選ってみんなの目の前でやらかしてくれたのだ。


お蔭で2時間のフライト、そして歓迎式から歓迎会の間、ずっと針の筵状態。
立食パーティで甲斐甲斐しく世話してくれるみんなが、逆に怖かった。



部屋に戻った後、訪ねてきた委員長には、更に問い詰められるのかと覚悟した。

けど、そのまま縋られた胸の中で、
・・・やっぱり悔しい。
私にもあんなキスしてくれる?
と言われたときには、そのまま掻き抱いていた。






柏木の事を聞かれたのは、コト[●●]の後。


「実際、白銀はどう思っているの?」


そうは言われたが、その尋ねる声が甘い。
何時もの声が僅かに掠れて、トーンも優しい。
大きめの胸がしっとりとすいついてくるその素肌の感触が悩ましい。


「・・・正直、吃驚した。
こざっぱりしたヤツだから、今までそんな素振りも見せなかったし・・・。」

「・・・やっぱり悔しかったからあんな態度取ったけど・・・大人げなかったわね、ゴメンナサイ。」

「イヤ、千鶴に謝られても・・・オレに隙があったのは確かだし。」

「・・・千鶴って呼んでくれるんだ。」

「・・・こうして髪解いて眼鏡してないと、“委員長”って感じじゃなくて、なんかオレのもの、って感じるんだ。」

「・・・ありがと・・・、嬉しい。
・・・でも、柏木は・・・柏木も、白銀に取って大事な存在?」

「え?―――あ・・・。」


記憶がフラッシュバックした。
前のループで、凄乃皇弐型を護る為に飄々と去っていった柏木。
それはオレが取り零してしまった命―――。
当時のオレでは為す術も無く。
確かに桜花には既に居なかったので今まで意識していなかったが、そう云う意味では今回護りたい、護るべき存在であることは間違いない・・・。
傍系記憶には確かに柏木と結ばれた記憶も在る。
思う人が居た伊隅大尉や、何故かまりもちゃんとは、最終的に結ばれたことはない。
涼宮姉妹や速瀬中尉もだ。
だが、柏木とは確かに在った。
幾つもの情景が浮かぶ。


「・・・柏木が白銀に取っての大事な存在なら、私達[●●]は認めるわ・・・。
8人目だし、ちゃんと上手くやる・・・。
まあ、スネることくらいは在るかも知れないけど、邪魔したりしないし、晴子とも仲良くする。

―――でも今は、私を見て・・・?」


首筋に顔を埋めてくる、愛しい存在に、ああ、そっかと思った。


前回喪ったみんな。

それを再び失いたくないからこそ、戻ってきた。
彼方が来てくれたお蔭で、今のところ順調に推移している。
H-1攻略にも目処が立った。

けれど、まだ支配因果律が人類に傾いたとは言い切れない。
この先は今までの記憶にはない、何が在るか判らない領域に入っているのだ。

ならばオレは未来の可能性の全てを護らなければならない。



何時もの三つ編みが解けた長い髪。
眼鏡で隠していた、光の加減で翡翠にもトパーズにも見える瞳を閉じて胸に寄り添う。
大胆にも怖ず怖ずとオレの股間に伸ばされた指は、けど少し震えていた。

まだ・・・時間はあるな。
時計をチラ見してそう思った。








閑話休題―――。


そんなこんなで、昨日の憂鬱が晴れスッキリした朝を迎えたオレ。
更に、一緒にとった朝食の席で他の3人にも謝られた。
もちろん、委員長が代弁してくれたような物なので、気にしてない、むしろゴメンと返したけど。

正直、彼女たちには出来る限りのことをしたいと思う。
一人に絞りきれない優柔不断な自分にも呆れるが、それを全て許容してくれてもいる。
集まると怖いものもあるが、オレのことを想っての行動であることは理解している。
・・・前のループの、“桜花作戦”の時のように・・・。

間違っても今回は、あんな行動を取らせちゃダメなのだ。

そして、そんな彼女たちと未来を紡ぐ為にも、“神鎚”作戦前に世界にXM3を散蒔き、少しでも支配因果律を人類側に引き寄せる為にも、こんなところで躓く訳にはいかない。

オレが強ければ強いほど、抱かれる“希望”は大きくなるのだから―――。






『コンバットオープンまで60秒―――。』


CPからスタンバイの指示。

意識を網膜投影に向ける。




そして13戦目、ツェルベルス戦が始まった。







レーダーの光点が一斉に動き出す。
状況開始と共に、迷いなく突っ込んでくる。


先のリーピング・ジャガーズと言い、ロレーヌと言い、流石激戦区のトップガン部隊―――。
XM3未搭載とは言え、侮ることは出来なかった。


思考を切り替えると、網膜投影からさえカラー情報が希薄になる。


陣形は・・・変形型のアロー・・・いや、ハンマーヘッド?
こっちの突撃砲による薙ぎ払い斉射を警戒してか、前後衛を立体的に重ねてきた。
こういう所、即応部隊ならではの柔軟性。

個人技に長け、それでいて高度な連携の取れるチーム。
元の世界、欧州サッカーのトップチームの様な相手だ。


背部担架から、長刀と突撃砲を手にしつつ、噴射跳躍装置を吹かした。


ビル街を翔け抜ける。

思考はのんびり考察しているけど、機動の方は殆ど反射的に先行入力を入れ、モジュレーション調整を熟している。
これも一種のマルチタスク、と言っても良いのだろうか?
純夏みたいな多重思考は出来ないが、反射とのパラレルなら出来る。


装備は左手に突撃砲、右手に戦闘長刀。

勿論、弾はペイント弾で、長刀はシリコン製ブレードの模擬刀。
突撃砲に付けたブレード[●●●●]も、同じシリコン製に変えてある。




―――元々Evolution4の装備する突撃砲・試製EMLC-01式は、先端に放熱ガイドの付いたサプレッサタイプの電磁加速砲筒を装備する改造87式突撃砲である。
放熱ガイドの組み付けはフレーム一体化され、それだけでもかなり強度が高いが、放熱面積の拡大のため、上部の120mm砲の射線を妨げない銃身下部に、下部フレームに固定された2本のヒートレールを兼ねるガイドレールが追加されていた。
そのガイドレール部を、彼方に頼んでスーパーカーボン製のブレードにしてもらったのが、オレの装備するSPL仕様、彼方は“ガンブレード”と呼んでいた。
簡単に言えば銃剣の拡大版なのだが、殆どフレームと一体成型なので、取り外しは出来ない。
刃長は、87式突撃砲の元々の全長よりも僅かに長いくらい。
それでも87式の本体が間に入るため、銃床から鋒までの長さはちょうど74式近接戦闘長刀と同じくらい、刃渡りは2/3くらいになる。
銃口より先の部分はプラズマ火箭を避ける為、ドロップポイントと成っている。
即席とはいえ凝り性の彼方のワンオフ、 CNF[カーボンナノフラーレン]被覆による超振動防汚と、瞬時給電に依るエッジ部超硬化機能も付けてある本格派。
勿論、今はダミーだけど・・・。

最近の訓練に於けるオレの戦闘は、このスタイル、左腕に試製EMLC-01式“改”ガンブレード突撃砲、右に試製74式“改”近接戦闘長刀、が多い。
副腕に残したもう一門は、同じ仕様でも後方射撃に使うことが多いが、メインは左手の支援射撃と右手の斬撃、となる。

元々XM3の射撃管制で機動中に離れた目標を点射出来るのが楽なのだが、その分近接格闘戦で左側が心許ない為、ダメもとでブレードの設置を頼んだら、2門だけ作ってくれた。
通常なら銃剣を装着するのだろうけど、ヤワなモノだとV-JIVESで要撃級を4隊くらい捌いただけで劣化するし、何より剛性感が低く重量バランスもイマイチで苦手だった。
その点、試製EMLC-01式は元々剛性の高い放熱ガイドのお陰もあり、かなり具合がいい。
バレル本体はフローティング構造なので剣への多少の衝撃は射撃精度には影響しないし、伝熱シリコングリスで熱だけは伝えるためブレードが大型の放熱フィンとなることで、EMCL使用時の熱害対策改善にもなった。
まあ、握りが銃把なので、ちょっと癖があるが87式の握りは元からかなり傾いていて取り回しし易く、重宝していた。



通過するビルの隙間から、キラリと光る点群が見えた気がする。

射撃モードを予測偏差にし、大まかな方向に向けてトリガーを引いた。
が、発砲しない。
このモードではトリガーロックをした状態でも撃発されないのだ。
敵と識別された相手と自分の位置情報・運動ベクトルを計算し、当たる可能性が生じた段階で勝手に撃発が起きる完全お任せモードだったりする。
それでも距離があると撃発エリアそのものがホンの僅かな領域なので、おまかせとは言え相当にシビアなのだが―――。

銃口をその方向に向けながらビル街の次の通りを過ぎる瞬間、36mmが撃発された。


『! 〈Zerberus-09〉機関部被弾、大破判定! 戦闘不能―――』


CPのアナウンスも少し遠い。
ZONEに入っていて狙いも精緻になっているだけに、この距離でも正確な射線がとれたのだろう。
反則染みたアビオニクスと射撃管制の融合に任せたタナボタなのだがコレも正規版の一機能、後半戦ともなると正直出し惜しみで勝てる相手じゃない。


そう、今回はXM3正規版の供与に際し、表に出すものは全て使う設定にしてあった。
今のところ出せないのはG-コア周りの装備。
その為、電磁スラスタのレスポンスや軽量化分も考慮した主機出力に抑えているし、突撃砲のEMLモードも当然封印。
反対に、XM3正規版が齎したアビオニクスや、バッテリー駆動でもなんとかなる試製74式“改”近接戦闘長刀などはJIVESにも設定が反映されていた。



次の交差点に差し掛かる直前、翳が兆す。
反射的に直前のビル陰で最小半径・限界Gのインメルマンターンを敢行。

先刻のお返しだろう、先の十字路上アスファルトが削れるほど着弾しているのを尻目に、来た方向斜め上に飛び出した。

瞬間―――そのオレを1発の弾丸が掠めていく。


完全に裏を取ったと思ったが、かなり勘の鋭いのが居るらしい。

構わず錐揉みに近い半径5m程度の連続バレルロールをしながら、更に半径20mくらいのバレルロールを行う、“二重螺旋”機動で、中隊ど真ん中に飛び込む。

途中、2度ほどトリガーロックしたままの突撃砲が火を吹いていた。


『・・・〈Zerberus-07〉頭部被弾、センサー大破、戦闘不能。
続いて〈Zerberus-06〉機関部被弾、戦闘不能―――。』


その遠い声を耳にしながら、メインストリート中央、目前に居た白いEF-2000に長刀を振り下ろす。
刹那、右の黒いEF-2000から跳ね上がった特有のハルバードタイプの長刀BWS-8が交差する直前、左側方にスラスタースライド。
振り下ろす速度は全く変えないまま、Mk-57をコッチに向けていた機体の右肩から切り裂く。


4つ―――。

そんな取り回せない長物銃器を近接で使うな、って!



目まぐるしい機動に撃墜を告げるCPのアナウンスさえ更に遠い。


左からの斬撃には、体幹を僅かにロール、一重で躱す。
横向きのままスラスタ推力も載せた踏み込みでガンブレードを叩きつけると、自分はそのままそのベクトルに載せ、跳躍。
目の前のビルを踏み台に切り返す。


5つ・・・もう一騎―――。

思った瞬間、右にスライドで流す。


地面が跳ね踊り、更に追ってくる。
上空からの援護射撃を回避しつつ、更にビル壁を蹴って反対の路地にダイヴした。



5つ撃墜したのに、直ぐに態勢が整えられる。
ハンマーヘッドのど真ん中を抜いたからか、エレメント単位の包囲陣形に変わっている。

やはり・・・中隊全体の練度はピカ一。
欧州最強と噂されるのも頷ける。
ホント、欧州のトップチーム、タレント揃い。

そういえばドイツサッカーのナショナルチームは、歴代強かったっけな。



中でもあの七英雄黒白ペアと、妙に勘の鋭い砲撃支援を含む連携の上手い3騎―――。



戦術機がギリギリ通る路地を匍匐飛行。
ビルの隙間の射線に出た一騎をそのまま撃ちぬいた。


6つ。

足を止めなきゃ撃てないなら、掃射しながら相手射線を切って出な!



ペアとトリオ・・・、合流されての対峙は流石にヤバそう・・・。
出来れば個別に対応したい。
レーダーの配置を確認する。



ならば!


路地を斜めに飛び出し、そのままヴァーティカル・シザーズで駆け上がる。
ランダムに軌道円半径を徐変しているから、ランダム・シザースとかトルネード・バレルロールとでも呼んだほうがいいか。


―――通常こんな速度のこんな機動制御は人の神経じゃ出来ないんだけどな。
先刻の二重螺旋機動も同じ、オレが制御できる最大速度でコンボ化したあと、彼方が追加したモジュレーション[●●●●●●●●]を使いCPUの許す限り高速化することが出来る。
勿論コンボは難易度設定がされ、制御レベルにより使用制限がつくから、初心者がこんなのを発動して突っ込むことはない。


けど、マジ勘の良い砲撃支援、何発か脇を抜けて行ったから、これが定常円旋回だったら被弾していただろう。


旋回円半径を大きく取り、速度を上げたところで一気に距離を詰める。

サブスラスターで上下左右ランダムに機体を振りながらの接近、オレがナックル・ラッシュと呼んでいる機動に、小半径の高速連続バレルロールを組み合わせた。
―――これも難易度Gコンボ。



!!

なるほど、―――けれどそれは悪手!

視界に捉えた〈Zerberus-03〉は既にMk-57を背に、長剣を構えていた。

当てられない、と踏んだ見切りはいいけど、若いな―――ホバリングは悪手。



右手の長刀を伸ばしながら、射撃モードをノーマルに戻し、背後を向いている背面担架の突撃砲と共に掃射。

後方で動こうとした相手僚機の足止め、威嚇だから当たれば儲けもの、と思っていたら後方射撃を警戒していなかった一騎を喰った。



正面に剣を構える〈Zerberus-03〉、速度は秒速にして50mの交差。
30m手前で進路を左に修正、長刀を翳す。
〈Zerberus-03〉が剣を構える。


相手スラスターに揺動はない―――避けずに相対する、か!

・・・そういえばこの大隊、ほぼ全員騎士の末裔、だったな。
一騎打ちが基本・・・なのかもな。


〈Zerberus-03〉の剣が疾る。

コッチは接触10m直前で、左に流していた軌道を強引に右に振る。

刹那の交差―――。


EF-2000の左をかすめながら、[]に持った長刀ではなく、[]のガンブレードがその胴を薙いだ。



当然オレが誇示した長刀と右側を通る軌道を見せたオレに対応するように右側[●●]を意識していた〈Zerberus-03〉、突き出された剣はそこを擦過する機体を狙った物だった。
けれど接触0.2秒を切ってからの切り返しに、人の持つ反射は追従できない。
こればかりは認識に至る神経伝達に依存するので、“紅の姉妹”の未来視の様な反則技を有していない限り対応不可能。
恐らく〈Zerberus-03〉は何が起きたかも判っていないはずだった。

・・・そう言えば似たような技が、前の世界で親父の持っていた忍者漫画に在ったような気がする。


何れにしろ相手の高速機動に自分の足を止めちゃ無理―――。





取り敢えず追撃の射線を外し、一端着地した。

レーダーには残5。
エレメント単位の行動。

機動中射撃の精度を警戒して固まることは避けたらしい。


メインストリートから1本西、高速道路高架下。
望遠視界に映る影。

射撃モードはノーマル、レーダーロックしないから相手のロックオンアラートは鳴らない。

網膜投影にレティクルを出し。左腕の突撃砲を照準する。


彼方がたまと組んでいた有視界狙撃のモード。
距離は約3,500。


発砲後、高速高架上を匍匐飛行。


残4騎が迎撃態勢に入った。。







まず・・・、こっち!



―――キィンッ!!


耳が鳴るほど強く高い音がする。
剣は贋物のくせに、効果音は現実の硬度を考慮しているからこんな音がでる。

さすがは七英雄の筆頭、"黒き狼王[ Schwarzerkönigswolf ]"、
発動した試製74式“改”近接戦闘長刀を振って、倒す気の一閃が止められたのは、初めて。
真っ直ぐ受けてくれれば、そのBWS-8ごと叩き切っていたのに・・・。
勿論JIVESなので本当に刃が通るわけではなく、現実そうあるように見せるだけなのが。
けれど、〈Zerberus-00〉は刀の側面で受け、弾くことにより斬撃の軌道を逸らす。
その捌きは寧ろ日本の剣術に在る動き。
槍や重い剣を多用する欧州の剣技ではない。

―――それだけ、多様な研鑽を重ねている・・・と言うことか。


そのまま流れるコッチの機体、追ってくるBWS-8を体幹そのものをロールして回したガンブレードで弾く。
そのまま、撃発。
〈Zerberus-00〉が後方に跳躍回避するのを視野に感じながら、此方も噴射後方[バック]宙返り。
影のように〈Zerberus-00〉に追従していた〈Zerberus-01〉"白き后狼[ Weißwolf]"の一閃を躱す。


『〈Zerberus-00〉、右主腕被弾、機能低下60%―――。』


それでも致命傷を避けるとか、反応速度から見て、この方々も一種ZONEに入れるらしい。
加えてこの連携・・・。


入れ替わり立ち代わり交互に繰り出される斬撃―――。

何処まで息合ってるんですか!


チラリとレーダー画面に残り2騎が接近しているのが見える。


此方の斬撃は鮮紅に発動した長刀の性能が判っているらしく、刃を合わせずに払われる。


ならば―――。




戦術機の近接戦に於いて機体を接触する肉弾戦というのは、まあ彼方や彩峰の投げなんかを別にして、通常はしない。
ブレードエッジという思想も接近するBETAに対した防衛の意味合いが強く、AH戦でそれを利用した体当たりと言った戦法は取らない。
戦術機同士では、ブレードは良くてもフレームが当り方に拠っては結構簡単に歪むからだ。

つまりは遠方からの射撃や、移動しながらすれ違い様の斬撃がAH戦攻撃の基本となる。
特に、相手は欧州奪還を目指し主に平らな大地を主戦場とする騎士たち。
一撃即離脱による騎士戦に近い。
ハルバードタイプの大剣も通過後に引っ掛けて斬撃を与えるための形状と言えた

本来、1対1の手数ならXM3装備のオレが圧倒的に有利なのだが、しかし比翼連理、その完璧な連携に於いては、相手の手数は2倍になるわけで・・・。

一騎打ちなど到底望めないBETA戦、その圧倒的な対多戦を生き抜いてきた彼等のスタイル、それがこの形だった。





数度目の交差、〈Zerberus-00〉が払おうとした動作に、僅かに長刀の角度を変えて受け、そのまま機体ごと退いた。
ハルバードの先を引っかけ、交差しようとした瞬間に発生した力は向心力となって互いの機体を回す。

直線運動が円運動に変わり、落ちた速度をスラスターで補う。
XFJ-01の高ロール特性を利用した転回運動は、“紅の姉妹”の十八番。

〈Zerberus-00〉が何が起きたか察した瞬間には、咬ませたハルバードを放つ。


今までの息もつかせぬ連携から、当然の如く次の斬撃を敢行していた〈Zerberus-01〉―――。
〈Zerberus-00〉の表裏一体のユニゾン。

交差による斬撃もその後の回避も予定調和。
しかし、"黒き狼王[ Schwarzerkönigswolf ]"の動作は予測できても、オレの動作までは予測できなかった。
一瞬の交差でオレが強制的に行ったキャスリングは完全に想定外。


剣を払う〈Zerberus-01〉の目前に飛び出したのは〈Zerberus-00〉だった。




本来完全に反応出来ないタイミングを狙ったのに、それでもその斬撃を止めた〈Zerberus-01〉は凄いと思う。

―――けれど、それで完璧だった両者の連携が、その刹那、止まった。


その時には、〈Zerberus-00〉から離れてもう1回転、スピンした機動にそのまま載せた長刀が2騎纏めて薙ぎ払っていた。




うーん、・・・ヤバいな。

今日のところはOS性能差で圧倒できたけど、この人達がXM3に慣熟したら、4や5は簡単に届きそうだ―――。

・・・同じ装備で近接2対1なら負けるかも。



そんなことを裏で思いながら、残り2騎に意識を向ける。

―――けど、やはり此方を先に倒して正解。

それまではずっと警戒して接近していたのに、共に崩れる隊長機2騎を見て動きが単調になったところを射線に捉えるのは、雑作なかった。


Sideout



Side ユウヤ

アルゴス試験小隊専用野外格納庫 衛士詰所 11:30



「・・・スゲーな、ハンパネーゼ、レインダンサーズ・・・。
VGのネーちゃんなんか、機動に重力感が全くないぜ!?」

「・・・今の俺と違ってアネキはずっと火事場渡り歩いてるからな、経験量がダンチ―――。
男が軽佻浮薄なせいで、イタリア女は基本堅いんだけど、未だ敵わねェ・・・。」


チョビの揶揄にVGが愚痴を返す。
堅いのは敵わないのと関係ないと思う。


「・・・LTE版とは言え、相当XM3に適応しているわ。
連携も、3次元機動も、今までの中隊とは明らかにSTAGEが違う・・・。」

「―――それでも届かない・・・か―――。」


ステラの言うように、隊全体の動きが違う。
この中隊戦では唯一のXM3LTE既装備部隊。
第4計画の息も掛かっている精鋭とも言える。


そして、その上を往く“単騎世界最高戦力”、白銀少佐。



此処は、野外格納庫詰所。
アルゴス隊衛士はずっとここのモニターで観戦し、各自勝手なことを言っていた。

今日の出番は俺だけ。
今はヴィンセントが最後の調整をしてくれている。



「あ、また墜とした・・・。
ヤッパ、あのガンブレード、いいなァ―――。」


空中で一合、止まらずに抜けようとした相手を、背を回したガンブレードが薙ぐ。

後方への威嚇射撃の序で、戦術機の関節自由度が高いとは言え、忍者みたいな使い方をする。


「“御大[Great Colonel]”に頼んだら作ってくれねーかなァ・・・。」


チョビはまだ言ってる。
今朝見た時からだ。
民族の武器である“ククリ”と銃把の角度が似てるとかなんとか。
ちょっと違うような気もするが、そこは好き好きだから突っ込まない。



見惚れるような鋭角シザーズで射線を躱しつつ翔けあがる。

レインダンサーズが仕掛けたのは、低空空中戦・・・。
地表滑走ではなく、突撃級の突進を躱す高度50m以下の表層戦闘だった。

相手に制空権を奪われたら勝てない―――その意志のもと欧州らしからぬ空中戦が展開されていた。


確かにXM3の動きの良さ、練度もあり拮抗している。
今までのように、一合もせずに切り捨てられてはいない。

先刻地上近接格闘戦では、初めて打ち合った王狼・后狼の神的連携でさえ、数合いで切り伏せた白銀少佐だ。


多重ミサイル弾幕、立体的な連携、隙のない展開・・・。



それでも、尚その上を往く白銀少佐は、やはりオカシイ。

レインダンサーズのメンバーが、空中戦を繰り広げながらも、基本の飛行姿勢、つまり地面に同一角を為すのに対し、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”は全く無頓着。
上と下の概念を完全に消失しているような天衣無縫の動き。
旋回しながらの錐揉みはロールと呼んでいいのかどうかさえ迷う。
普通あんな機動をしたら、一瞬で天地の認識ができず、怖くて加速できない。
それを事もなげに姿勢を持ち直し・・・というかそのまま閃くように移動する。
姿勢などもう滅茶苦茶なのに、その機動は正しく雷閃。
―――気づいたらそこにいる。


そんな相手なのだから、対峙できても数合―――。


昨夜の歓迎会、空中戦を仕掛けるわ、と言っていたVGの姉貴。
異次元と言われる空中機動に挑むなんて無謀だと返した弟に一言。

どうせなら、一番得意な機動を見たいじゃない!


それにしても空中機動の練度が桁違い。

レインダンサーズはXM3装備とは言えLTE、。
対全体のレベルは見たトコ2から3。
同じ時期に渡された俺達は、正規版でV-JIVESも可能な恵まれた環境にあり、全員が3には上がっている。
オレがもうすぐ4と言うところ。
レインダンサーズも中隊長だけは既に4に近いと見る。

そのVGの姉、“プリマ・ドンナ”の異名を持つ MG[モニカ・ジアコーザ]の機動は、ヒラヒラと舞う蝶と言うより重力を感じさせない、水中バレエの様な浮遊感。
機動の一つ一つが靭やかで軽い。
独特のリズムと、舞うような空中機動を持つ彼女が、単騎では最も長く “白銀の雷閃”と打ち合ったが、それでも9合。10合目の剣戟を避けたその姿勢から縦のローリング・ソバットの様に繰り出された一撃に沈んだ。


終了のアナウンスが流れる。



「ユウヤ、後で戦うんでしょ?」


イーニァが聞いてきた。


「ああ、一応プロミネンス側の代表ってことでな。」

「タケル強いよ?
クリスカと一緒でも、まだ勝ったことないもん!」

「・・・だろうなぁ。
御大[Great Colonel]”は底知れないけど、白銀少佐は突き抜けてる・・・“青天井”だな。
既存の戦闘では、まだまだ届くとは思えねェよ。」


相手が途轍もないのは理解した。

“単騎世界最高戦力”という触れ込みは、詐称でも誇張でもない。
たとえXM3非搭載機とはいえ、14中隊を相手に、僅かに被弾1,3%の被害のみ。
それで全てを撃破した。

脚を止めての近接戦闘で自分にできるとは思えなかった。



だが。

予想通り、なのだ。


即ち“横浜”仕様は、ハイヴ潜行[●●●●●]スペシャル。
停止から中低速度状態を機動の基本としている。
前線国家の悲願が通常兵器に依るハイヴ攻略なのだから、それは当然の流れである。
“Evolution4”と言う呼称はイーニァが教えてくれた。
機密じゃないのか?、と慌てたがあまり頓着していないとの事。
今のところ言っちゃいけない事は別にあるらしい。



しかし、ここは米国。

それは俺にしても同じ―――。
例え血に日本人が混じっていようが、ずっと馴染んできた環境が違う。

そんなオレがどこまで通用するのか、漸く試すことができる。


その時が来るのが、楽しみでしょうがなかった。


Sideout



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