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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 12:25
'15,02,20 upload  ※久々にちょいエロ注意
             R15くらい・・・ですよね?
'16,05,06 誤字修正



Side まりも


普段使われない横浜基地の講堂―――。
11月のヒンヤリした静謐な空気が身を引き締める。

今朝方、出し抜けに集められた207B訓練小隊のメンバーはまだ少し戸惑っている。
何が行われるのか、伝えては居ない。



そこに現れたのはラダビノッド基地司令だった。


「―――整列ッ!」


号令を掛ければ、反射のように隊列が揃う。
壇上に上がった基地司令に、全員が敬礼した。


「―――突然ではあるが・・・、
ただ今より国連太平洋方面第11軍衛士訓練学校、第207衛士訓練小隊解隊式を行う―――!」


その言葉に、全員が姿勢一際姿勢を正した。




榊千鶴。
御剣冥夜。
彩峰慧。
珠瀬壬姫。
鎧衣美琴。
鑑純夏。

私が送り出した衛士訓練生の中でも、いろいろな意味で、最も印象深い教え子たち・・・。
その解隊式が執り行なわれる。



「・・・諸君は本日をもって訓練過程終了―――晴れて任官というめでたい日だ。
本来であれば盛大にその門出を祝ってやりたいところだが―――諸君らは既にとある部隊への所属が内々に決まっているのは既知のこと。
その性質上派手な行事は控えていることを理解してほしい―――。」



この訓練小隊・・・各人の有するは複雑な政治的背景。
跳ね除ける力も、抗う術も無かった彼女たちは、その狭間で翻弄されるしか無く、出口も見えず、迷走した時期もあった。
だが、彼女たちは全員、それすらを乗り越えて、今ここに巣立つ。



そんな私の回顧をよそに、基地司令の祝辞が続く。



・・・そう、当面、このコたちの後に、私の教導予定はない。
人員的に、そして夕呼の求める水準的にも達する者が居なかった為でもあるらしいが、最大の理由は既にタイムリミットに至ったコト・・・。


次は無い―――。

それが今の人類が置かれた状況なのだ。
先にオルタネイティヴ4と言う夕呼の指揮する計画下に併任し、秘されていた状況を知ることで改めてその事を認識させられた。

故にこれから彼女たちが進む途は、すぐ目の前に峻烈な山が聳え立つ、極めて過酷な途。
しかし、それが人類の存続に繋がる一縷の途―――。


自らの背景をも乗り越え、希望を得て、その途を征くことを決めた、強い意志。
どんな未来を齎すのか、今は判らない、
けれど今はそんな彼女らを教導できたことを、誇ろうと思う。



「―――今この刻をもって諸君は人類防衛の前衛たる国連軍衛士の資格を得た。
その栄誉と責任を噛み締め必勝の気概を持ってその持てる力を尽くしてほしい。
―――人類の勝利と・・・未来をつかみ取るために!」



衛士は勇敢だと言われる必要など無い。
臆病でもいい。
ただ永く生き残り、一人でも多くの人を救って欲しい。

何時も心に秘め、その想いが少しでも伝わればと、導き、教えてきたつもり。
・・・でも、実は最近少しだけ、宗旨替えした。


“生き残る”、という受動的な結果論的な姿勢じゃ足りないのだと。
生き抜く[●●●●]―――自らの意志で能動的に、運命さえも凌駕して見せる。
それは、その強烈な意志を持って、この基地に帰還した二人の姿勢そのもの。

一人は、私では届かなかった彼女たちの琴線に触れ、光を指し示した。
そしてもう一人は、迷子だった夕呼、そして私の憂いさえも払い、未来を感じさせた。

その期待に沿うためにも、望む途を征く―――。



「最後に・・・極めて異例のことではあるが諸君の任官に際し御言葉が寄せられている。
日本帝国政威大将軍煌武院悠陽殿下からの御祝辞・・・心して賜りたまえ。」



もうすぐ、彼女たちは私の教え子ではなくなる。
そして、人類の決戦を控え私の部下に成る―――。



『―――此度の新潟防衛戦に於ける貴隊の働き、誠に大儀でありました。
一つの命をも喪うこと無く本土防衛を完遂せしめた慶ばしき事に、多大なる貢献を為した貴隊の勲功は輝かしきものであります。
それと同時に、未だ訓練兵で在りました貴隊の御力までを借りねばならなかった我が力不足をお赦しください。

されど、この混迷の世にありながら、祖国を守らんとするそなた達の強き意志を間近に感じる事ができ、大変嬉しく在りました。
先人達は、この日本という国を愛し、民を慈しみ、八千代にも続くことを願ってきました。
その想いを託され、受け継ぐ若者が今も数多いることを改めて確信させて戴きました。

今人類の置かれた状況にて、それを果たすことが並々ならぬことで在ることも重々存じております。
しかし一人一人が己のなすべきことをなし、相克を凌いで琢磨することにより、叶わざる願いなどありはしないのです。
この国の、そして人類の未来を切り拓く魁として、皆様が正道を征かんこと、切に願います。

わが心は、如何なる時もそなた達とともに在ります。
そなた達は決して独りではないと心に留め置きください。

―――いつの日か、再び共に語れる未来を信じ、皆様への餞の辞とさせて戴きます―――』


「・・・昇任に際し殿下から御言葉を賜るという名誉は諸君自身の手で掴んだ栄光である
国連軍兵士としてそれに相応しい活躍を期待する。
―――以上だ。」



・・・ホントよね、と心のなかで苦笑。

先の新潟防衛戦―――。
私の中では当初、半ば見学に近いポジションの予定だったのだ。
配属は“仮”であり、繰り上げ任官もしていない訓練兵。
珠瀬事務次官にも指摘されたが、本来私だってV-JIVES以外に参加させるつもりはなかった。

だが、最初のV-JIVES演習から、あのコたちは与えたオーダーを遙かに上回るレベルでクリアし続けた。
XM3教導の先行事例、早期慣熟を目的とした最新鋭機・試製XFJ-01の先行支給。
白銀クンと言う偉大なお手本を傍に感じ、その技量にも気後れせず、貪欲に食らいついていく。
彼方クンにも譴責覚悟で何やら頼みに行ったらしいし、先任であるA-01中隊、篁大尉、衛士復帰したビャーチェノワ少尉・シェスチナ少尉にまで時間さえ有れば果敢に挑んでいった。
彼方クンはそんなあのコたちの教導環境を最適に整え、そして個別のスキルアップにも協力してくれたらしい。

その成果は覿面―――。
尤もそれは余りにも余りな結果となり、今後のXM3教導の参考にはならないかもしれない。
斜め上過ぎる。
初の実戦に参加した訓練兵でありながら、新潟戦後には、すでに全員がXM3の制御レベル4に届いていたのだから・・・。


実際新潟に於いて、海岸に配された機甲連隊を守りきり、第2陣光線属種の優先殲滅を為せたのは、あのコたちの力故でも在った。
今“Amazing5”とも呼ばれるA-00部隊のEvolution4とは言え、4騎では届かなかった事も理解している。
そこに207Bのサポートがあってこその戦果。
あのコ達が参加していなければ、取り零した命がどれほどあったことか。
そしてそれは、殿下の影としてHQを守り切った彼女についても、また同じ。
突然の急襲にも臆することなく対応し、自らの為せることを為してみせた。

―――殿下の御言葉にあるのは紛れもない事実なのだ。



「続いて衛士徽章授与を行う。

―――榊千鶴訓練兵!」

「はいッ!」

「・・・ただ今をもって貴官は国連軍衛士となった。
おめでとう、少尉!」



そう、それでもこれは一つの区切り。
私は、今は教官の立場として、素直に祝福しよう。


次々に任官する教え子を見ながら、其々の訓練を思い返す。
有能であれば有能であるほど消耗の激しいこの世界。
それでも、彼女たち、そして彼等ならこの世界を変えていける。

そんな希望を覚えながら・・・。








「―――以上をもって国連太平洋方面第11軍衛士訓練学校、第207衛士訓練小隊解隊式を終わる!」

「「「「「 ありがとうございました!! 」」」」」


歓声と共に、皆が拳を突き上げている。
帽子は高く飛ばないけど、ね―――。


Sideout






Side 美琴

B17フロア 機密エリア備品倉庫  19:00


「これで、終わりだネ。」

「ああ。
これで全員分OKだ。
助かったよ、アリガトな、美琴。
中々他に頼みにくくて、な・・・。」


傍らの棚に備品を置きつつ、チクリと、胸の奥に疼痛―――。



午前中の解隊式、そして正規任官。
ボク達は、予定通り国連太平洋方面第11軍A-0大隊A-00戦術機概念実証試験部隊に正式任官となった。
式は節目としてそれなりに感動したけど、実質で言えば(仮)が取れただけだし、神宮司教官には教官として涙のお礼を言った後、部隊に行ってみれば今度は上官の中隊長として一緒だし、何も変わらないと言えば変わらない。
まあ機密部隊だけに内輪とは言え、夕食には先任含め祝賀・歓迎会として、ちょっとした祝宴になっていたのだけが唯一の違い。

それでも衛士となればイキナリ正規兵の尉官と成るわけで、正規軍装から強化装備までが全て変わり、またロッカーやシャワールーム含め今後のブリーフィングルームに至るまで一般エリアから機密エリアに移動となる。
今まではA-00ハンガーまで入るのも、上位者の同行が必要だったのがなくなる。
実質A-00部隊執務室までのセキュリティパスが付くのだ。


けど、そうは言っても元々A-0大隊は機密度が極めて高く、その為逆に人手が極端に少ないとも聞いた。
実際大隊長で少佐なのに補佐官さえ付いていないタケル。
本来社少尉がそのポジション、今までよく一緒に居た理由として納得したが、少尉は少尉で他にもいろいろ在り、最近は特務である純夏さんに付いていることが多いらしい。
しかも行動範囲が機密エリア中心と成るため、元々人の出入りは制限されている。
タケルの場合、更に年が若いせいか人に頼むことも慣れていないので、雑用に関しては結局自分で遣っちゃう事が多い。
謙虚というか、タケルらしいというか・・・。

だからこんな倉庫にも入る。
任官の祝宴を終えた直後だというのに、足りない備品を探しに行くタケルに会った。
で、そのままボクが手伝ったりすることは、往々にしてあるんだよね・・・。
何故かそういうタイミングで会うのはボクらしい。
2本のアホ毛センサーの所為だとタケルは言うが・・・。


「まあ、そうだよネ。
普通の娘じゃあ・・・引くかな。」


・・・人気のない倉庫。
こんな用事でも無い限り、立ち入る人も居ない。
ある意味とても危険なんだけど前にも何度か在ったし。
・・・尤も、同じ元207Bの同期なら、逆にみんな喜んで付いて来そう。
―――肉食だよね。

そう、こんな些細なことでもタケルを手伝えることは嬉しい。
公式の場なら、相手は少佐様。
今日の午前中に、漸く正式任官したばかりのボクとは、立場も権限も技量も雲泥の差。
それでもプライベートならこうして気安く話ができるのは嬉しいし、雑用とは言えこうして二人きりになれるのも、そりゃあちょっとは・・・ボクだって期待もする。

でも、何かの折、男扱い―――。
どちらかというと、気安い親友ポジション。

じゃれあっているだけ。



初めはそれでもイイかな、なんて、思ってた。
タケルがこの基地に復帰して、まだ20日余り。
戦術機機動に関しては凄腕を通り越した“神”級の技量の持ち主。
世界最高単騎戦力と言われるけど、それが素直に納得出来る。
数多の地獄を自らの技量で生き抜いて[●●●●●]来た者―――。
何よりもその強靭な意志・・・。
憧れた。

けれど気安くフレンドリーなタケルの態度に、ボクはすぐ馴染めた。
普段のタケルは少しも押し付けがなくそばにいて安心出来る。
それが心地良くていたけど・・・。
自分が惹かれていることもすぐ気付いた。


でも・・・。
先月末に純夏さんが復帰して、様相が変わった。
タケルの幼なじみで、長い間入院してて、でも実は凄い事の出来る人―――。

タケルと惹かれあっていたのは一目瞭然。
その余りの素早さに、失恋の痛みも感じなかったよ―――。

ところが、純夏さんはタケルを独占する気はないらしい。
しかも、冥夜さんも既に一緒!?

そして、ボク達にも一緒にタケルを支えて欲しいと純夏さんは言う。
初めは皆も半信半疑だったけど。

ここ2,3日で・・・慧さんも、千鶴さんもその気になったみたい。
そして昨日も、事務次官の訪問があった。
小さなボクの胸を更に抉るような攻撃にボクが逃げ出した後、タケルは壬姫さんにも子作り宣言までしたと後で聞いた。
因みに・・・壬姫さんの参戦にちょっとは希望が持てたから、ボクはあまり報復をしなかった。

確かに今の若い男女の人口比は1:8。
既に国民の数が激減していながら、このままでは更に次世代の人口が激減するのは必定。
今までは先の見えない状況もあり、そこまで積極的な人口対策はされていなかったけど、殿下が公表した“高天原”はそれにも一定の目処を付けた。
なので悠陽殿下が進める拡大婚姻法案も、本気。
既に法案は提出され、まもなく審議入りする。

それじゃなくても、帝国はてんてこ舞い。
大権奉還して一段落、所ではなかった。


数々の奇跡を生んだ新潟防衛戦。
仮初の大地、と言いながら、実質今後の日本帝国を支えていくだろう高天原。
その一方で、揺るぎない殿下の姿勢を内外に示したとも言える大粛清。

それらは国内にも、そして国外にも強烈な衝撃を与えた。
父さんから珍しく泣き言の手紙が来たけど、なんで貿易会社がそんなに忙しくなるんだろう?
縁者とて犠牲は厭わない、って何時も言われてたのに・・・。



けどさ・・・。
そんな皆の話を聞いちゃうと、こうして人気もない倉庫に二人きりで居るのに、襲われもしないボクって・・・。
やっぱり・・・。



小さく付いた溜息。


「美琴?、オレ、なんかした?」

「・・・え? 何もしてないけど?」

「・・・そっか。
ならいいけど―――なぁんか最近美琴が余所余所しく感じるんだよなぁ」


これだもんネ・・・。
溜息には気づくのに・・・。
それは・・・逆なんじゃないかな。
何もしないから、・・・だよ。


「・・・そんなコト、無いと思うよ。」

「・・・じゃ嫌われた訳じゃないんだな?」

「ボクがタケルを嫌うなんて―――、有り得ないよ。」


タケルに取っては、親友ポジションかもしれないけど、さ―――。


「・・・。」

「じゃ、行こうか」


断ち切るように背を向けてドアに向いた瞬間。



え―――?。

無言で腕を引かれ。
当然バランスを崩してタケルの胸に背中から受け止められる。
そのまま後ろからフワリとその腕に包まれた。


―――心臓が大きく跳ねた。


「ど、どうしたのさ、イキナリ―――。
わるふざk「華奢だな、オマエ―――」ッ!・・・・」


ギュッと抱きすくめられる。
肩から回された腕に無いながらも胸が当たっているのも構わず・・・。


「あ・・・え―――?」

「・・・悪ふざけなんかしてねぇよ。
オレはもう、大事なモノは手放さない―――、って決めたんだ。」

「あ―――、でもほら、タケルはボクのコト、男扱いだし・・・」

「・・・してねぇし・・・ってか、この際男でも女でも関係ない・・・、美琴は美琴。
オマエは、オレの大事[モノ]だ。」

「あ・・・。」


大胆な行動と、直接的な言葉。
背筋をゾクゾク、とシビレが走る。
嬉しさが心を満たしていく。
僅かに抵抗するようにタケルの腕に添えていた手から力が抜け、辛うじてBDUの袖に捕まる。


背中に感じるタケルの体温―――。
鼓動。
タケルの左手がボクのおとがいを包む。
恥ずかしくて俯いた顎を持ち上げられても、抵抗も出来ない。


「―――んッ!」


唇を奪われたんだと気がついたのは、抵抗するまもなく舌を絡め取られた時。
勿論抵抗なんかする気もなかったし、力も抜けちゃってたから、タケルのなすがままだったけど。
確かに甘く感じられるモノが粘膜に触れたその感触は、一瞬でボクの全身をシビレさせ、完全にボクは囚えられてしまっていた。
初めは確かめるように、控えめにそっと触れてくる。
驚きと嬉しさと恥ずかしさと、色んな感情がごっちゃになって拒むことも応えることも出来ないボクの舌に、そっと優しく絡んでくるタケルの舌の感触が、徐々にそんな思考さえ奪ってゆく。


初めてのキス―――。

激しい訳じゃない、でも深く滲み込むような、息もが融け合うような感覚。



しばし頭の中が真っ白で、絡みつく舌の甘い感触に支配されていたボクにもわかってくる。
胸に回された腕の力強さ。
遠慮会釈無くささやかな膨らみを包む掌の熱さ。


・・・タケルがボクを求めてる・・・。

漠然とそう思った瞬間、下腹部がキュンとして、それが熱い塊になって背筋を這い登る。


男みたいにも扱われていたけど、女の子で良かった―――。
そんな思いさえが熱く舐られる感覚に白く埋め尽くされて・・・。

嬲られる舌に抵抗も出来ないまま、今度は熱さが甘いシビレになって全身がタケルに占められていく。





クちゅル―――。


気がつけば無意識のうちに、タケルの舌に応えていた。

ハジメテのキス、なのに濃密に触れ合う粘膜、それがキモチイイ・・・。

右腕は胸に回され今も抱きしめられているから、密着したままのお尻に熱いものも感じられる。


・・・タケルがボクに欲情している。

それが嬉しくて、そこからの熱にじわじわとボクが侵されてゆく。
応える様に身体の芯が昂ぶっていく。





時間感覚も曖昧・・・。
おそらく長い・・・長いキス―――、鼻で継ぐ息が小さく弾んでいる。

舌も少し痺れて。
もう頭の中はとろとろに蕩け切っている・・・。

ダラシナイ表情にされちゃって居るのが自分でも判る。


・・・でも、タケルならいい・・・。
ボクはタケルのモノ[オンナ]・・・。


そう思った途端、ボクの小さな膨らみを包んでいた手が少し動いた。


「ンfmッ―――。」


軽く握られただけで。
ビクンと身体が竦む。
息が鼻から漏れる。
ボクの知らない感覚が電気ショックのように、胸から背筋、背筋から頭の中を焼き、そして腰から下腹部をしびれさせる。
胸の先にゾワゾワと感覚と血が集まっていく。


まだ、唇は奪われたまま。
舌は絡みついたまま。





そして―――。
タケルの指が、いつの間にか尖っていた胸の先をキュッと摘み、同時に一際深く舌が絡まり、強く吸われた瞬間―――。


うぁn・・・fぁあ!!


ボクの体の芯で、沸々としていた熱い何かが、弾け飛んた。


Sideout




Side 武


後ろを向いた美琴のその姿が、儚げで寂しげに見え、反射的に抱き込んでしまった。
後ろから抱きしめたまま、小さな頭を支えて仰向かせ、そのまま唇を奪った。


最初は勿論、軽いキスだけのつもり。

何時もつい気楽な男扱いしてしまう美琴にちゃんとオレの想いを伝えるだけの行為だった。


なんとなくキッカケが無かった美琴が、結局気持ちを伝える最後になってしまったし、妙に気安い関係を築いてしまった為、普通に言葉で言ってもなかなか信じて貰えない事は判っていた。
今の関係に馴れてしまったから、それを覆すには直接的な行動が必要―――。
美琴もここのところ周囲の変化に気づいて気後れしているようにも見えたから、確認の意味も込めての直接行動[キス]だった。






―――けど、これは反則だろッ!

なんでオマエ、こんなにエロい[●●●]んだよっ!!




キスだけで全身の力が抜け、クタリと身を委ねながらも、やがてその舌だけは怖ず怖ずと健気に応えてくる美琴が可愛くて、そのまま舐る様なキスを続けていた。

続けている内に、どんどん美琴の身体がトロケるように、熱く、そして柔らかくなっていく。
その反応に、いつの間にか張っていた股間、なのに美琴は嫌がる素振りも見せず、無意識だろうか、幽かに身じろいで擦りつけてくる。
煽られる―――。
抱きしめた位置に丁度あった胸の感触も徐々に一部が硬くなってゆく。
キスしたままでも、美琴の鼻息が少しづつ跳ねてくるのが感じられる。
重ねた唇の隙間から、熱い吐息と湿った音が漏れる。



コイツどんな表情[かお]をしているんだ、と目を薄目にして見てみれば―――。

それを見た瞬間、ガツンと意識をぶん殴られた。


桜色に上気しきってなまめく頬や眼瞼・・・。
その無意識に僅かに開いた眼瞼の隙間から見えたのは、美琴のトパーズと濃い琥珀が混ざったような瞳が滲んで潤み、霞んで飛んだ瞳―――。




―――コイツ、マジ、ヤバい!!


元の世界で男だったイメージもあって、この世界でも気安く接してくれる美琴にいつもふざけあっていたのに・・・。
どちらかと言うとサッパリした性格、スレンダーで少年ぽいスタイルも相まって、普段は性的なイメージを一切抱かせない。


・・・それが、こんなの[●●●●]見せられたら・・・。
元の世界でもヤバかったかもしれない!
薄い本の世界が垣間見える。

―――こっちの美琴がオンナで良かったと、心底感謝した。



キスだけで、美琴が蕩けている―――。

オンナであることを確かめる様に、そっと胸を包んだ右手に力を込めれば、ピクンとその華奢な身体が震える。
それでも、自分から唇を外そうとはせず、懸命に応える舌が可愛くて、力がないのにBDUの袖を握る指がいじましくて、鼻息だけで幽かに喘ぐ美琴をもっと虐めたくて、益々深くその唇を、口を舐る。




徐々に応える舌の動きが緩慢になってくる。
それでも交わす唾液の粘度が上がったように、ねっとりと絡みつく。
抱きしめている美琴の身体が小さく震えている。


オレのモノだと印を刻む様に―――。

右手に触れていた尖った先端を少し強めに摘む。
甘い舌を更に深く絡め強く吸った瞬間。
ビクンッと一際大きく、その華奢な肢体が腕の中で跳ねた。



次の瞬間、完全に力が抜けたのか、カクンと膝が墜ち、崩れる身体を咄嗟に抱きとめる。


離れた唇に糸が引いた。


地に着けた膝の上に、そっと支える。




上気し紅潮した頬。

薄らと湿り、艶めく肌。

今も滲む様に飛んだ瞳。

細かく震える長い睫毛。

尚も誘うように薄らと開き、桜色に濡れる唇。





・・・マズい・・・。

―――完全にヤラれた。


―――ギャップ萌え?
いや・・・、コレが男の娘属性ってヤツか?
・・・あ、まあ、この世界の美琴ならノーマル、うん、普通普通。
ホント、マジ、元の世界じゃなくて良かった。


傍系記憶には美琴と結ばれ、ちゃんとイタシタ記憶も在るっていうのに、―――こんなにも美琴に煽られた記憶は無い。

なんか今回のループは、オレが虚数空間から全部ひっくるめて持ってきたせいか、色々余計な因果が混入している気がしないでもない。
今までも既に関係を持った純夏や冥夜だけでなく、千鶴[委員長][彩峰]壬姫[たま]にも、色々ドキッとさせられていたけど、一番気楽な関係で居られると思っていた美琴にまで、こんなにギュッと心を鷲掴みにされるとは思わなかった。






その場に座り込むと、崩れた美琴の身体を横抱きに膝に載せ、そのまま左腕で頭を支える。


まだ幸せそうな蕩け顔を晒す美琴の頬を指でなぞる。
緩慢に反応して、n・・・と無意識に甘やかな吐息を落とす。



クるなコレ・・・。




コイツがちゃんと意識を覚ましたら、きっと先刻の濃密なキスに抗議してくる。
確かに唐突だったし、美琴に取ってはファースト・キスなのに歯止めが全く利かなかったし、挙句此処まで追い込んだ・・・。
批判は甘んじて受け入れる。


けど―――、その時、男の娘風・涙目・上目遣いの必殺三連コンボなんかされたら・・・。


・・・オレの理性、ヤバイかも知れない―――。


Sideout






Side 武

B19フロア 夕呼執務室  21:30


「トライアル依頼・・・ですか?」


まだ痺れる足をさすりながら部屋に戻った後、伝言に気付いて夕呼先生の執務室に向った。
そこには、既に彼方と純夏が居て、相談をしていたらしい。
告げられた言葉がそれだった。


先刻、危なくそのまま事に及びそうになったオレを、探しに来た他のメンバー、冥夜・委員長・彩峰・たまが発見し、その場で正座[おすわり][おしおき]と成ったのだ。
尤も、説教の内容は良く良く聞くと、初めてなんだから時と場所を考えろ、という内容だったが・・・。
冥夜は仕方ないなぁと言う顔だったが、他は微妙にそれ以外も在ったみたいだし・・・。
美琴自身も安堵半分、残念半分と言った表情だったのだが、コトの最中に乱入されるよりは良いだろう。
むしろ最後は美琴が庇ってくれて、ようやく解放された。
自業自得なので仕方ないが、こうも団結されてしまうと弱い。
やはり今後のヒエラルキーが非常に心配だった。



「そうなのよ・・・。
“新潟の奇跡”がセンセーショナル過ぎちゃったみたいね。
ま、正直、あたしだって本当に死者0が出来るとは思っていなかったし。」

「―――そうですね、あれだけの規模に成れば何処かで破綻が出るし。
あれは運が味方した部分もあると思います。
支配因果はBETAの側に振れてたはずなのに・・・。」

「・・・そんなに一方的に振れてたら、とっくに人類は滅びてるな。
確率分布の中央値がそんなに一気に変化することはそうそうないだろ。
今回は、数で大きくBETAに振れた分、揺り戻しで小さな運は人類側に振れたのかもな。
その小さな運を勝利に結びつけるのは各自の努力だし、一気に振れないからこそ、地道な人類意識の変革をしている。」

「なるほど・・・。」

「その努力を重ねて、最終的な人類の勝利に結び付けないとならないんでしょ。
トライアルもその一環といえば一環ね。
で、話戻すと、XM3関連だけでも相当数の希望が舞い込んでいるわけ。
まあ国外に関しては実質プロミネンスでLTEの供与が進んでいるからいいんだけど、単純にXM3の実装だけではなく、その機動の極みを確認したい、と言うストレートな要望が多いわね。
とにかく新潟戦以降、特にEUの喰い付きが凄いらしくて、ハルトウィックからもとうとう直接の要請があったわ。」


なんとなく機嫌がいいのはそのせいか。
余程したでに要請されたのだろう。

けど、解らないでもない。
EUはイギリスが最後の砦。
そこからの祖国奪回が悲願。
その防衛に賭ける執念には並々ならぬものがある。

新潟に於ける海を挟んだ侵攻の完全防衛、今後の大陸侵攻を目指すEU連合軍に取っては外せない条件。
誰よりも興味を示すのも致し方ない。


「正規のXM3には、アンタ達が確立した新概念機動モデルがあるからねェ。
LTEの機動基礎モデルには入っていないんでしょ?
例の近接戦闘機動概念CCCA:Concept of Cross range Combat Actionや、それに基づく近接戦術機格闘術MACROT:Martial Arts in Cross Range Of Tsf。
更に白銀が3次元機動に発展させた慣性制御機動概念MCLIC:Maneuver Concept of Linked Inertia Control。
それらを体系立てて有しているのは、この横浜だけ―――。
アルゴスにだって、MCLICは教えてないんだっけ?」

「タイミング的に、並行したからな。」

「勿論、EUだけじゃないわ。
殿下が帝国軍も掌握して、横浜[第4計画]との関係を明確にしたから、帝国軍にも味方と認知されたし、国内外含め、相当数―――。
とてもじゃないけど、此処だけじゃ捌ききれない数ね。」

「・・・そういえばこの先、前のループで大きなイベントって在ったのか?」

「あァ―――、11月の末頃に、所内でXM3の内々のトライアル。
タマの親父さんはもう来ちゃったし、そのタイミングのHSST落下も彼方が流したから・・・。
次は12月5日のクーデターだったけど、今の状況からこれも無さそうだし。
大体何時もはこの時期、22日まで総合戦技演習、その後は夕呼先生の理論を補完するために、元の世界に還っていた。」

「本当は、皆の死亡フラグを確実にへし折る為に、とっとと佐渡攻略したいんだけどな、なにぶんG-コアの数がある程度揃うまでは、ハイヴ潜行が実施出来ない。

いっそ3次元機動元祖の武が、A-00連れて2,3日ユーコンでも行って教導してきたらどうだ?
どうせ何時ものループでも別のところに行っていたみたいだし。
そのタイミングで、欧州やソビエト、アラブ圏からも集めさせればちょうどいいデモンストレーションに成るだろう。
ビャーチェノワやシェスチナも完治したから、帰さないとならないし、アルゴスならMACROTまで慣熟してるから、MCLICくらい教えるだけで済む。
一番初期の機動モデルくらいなら、LTEでもパッチが当てられるかな。
国内分は仕方ないとしても、横浜で全部が全部抱えて、神鎚[本命]の方が進まないんじゃ、本末転倒だろ。」

「そうね、神鎚[ミョルニル]の実施時は全世界挙げての陽動作戦があるから早めに広める必要があるから、プロミネンスをそのまま教導隊化するのね。
まあ、ソフトだってハルトウィックの言う技術の演繹、プロミネンスの基本理念にも沿うことよね。
欧州やアラブ圏、西アジア位までの要望は、あっちで受け持って貰えばいいか・・・。

横浜[●●]は、国内と大東亜圏・・・あとは米国・・・かしら?」

「プロミネンスも表立って拒否はしないと思うが、まあ、色々在った米国の部隊をすぐ受け入れろと言うのも難しいかもな。」

「・・・同時に“Amazing5”についても問い合わせ凄いんだけど。」

「11月29日にある程度公表するんだろう?」

「・・・そうね。
当然取引材料ではあるわ。」

「なら・・・早めにまずユーコン、11月下旬に横浜でXM3公開トライアル。
月末の緊急動議の後、12月初旬に“G-コア”関連の公開トライアル・・・って流れか?」

「それであれば、今予定している16日、甲21号、24日、神鎚には十分間に合う・・・ってところかしら?」

「―――そんなところだろう。
今回のユーコンに関しては、俺や篁はRes-G弾の仕上げがあるから、多分無理。
残念だけど鑑も機密上、あと流石に御剣も警備の関係上、今海外は厳しいだろうな。
それでも、概念構築者の武、XM3教導のパイオニアでもあるまりもセンセ、そして、デモンストレータとして、榊はXM3チーム戦術構築特化、彩峰はMACROT特化、珠瀬はXM3射撃特化、鎧衣は武に継ぐMCLIC特化、それに剣術は“紅の姉妹”でいいだろ。
御剣の剣術はまだIRFGを出さない以上、今回はどの道公表出来ないしな。
面子としては、上々だぜ。」

「その紅の姉妹はどうするつもり?」

「軍籍は国連軍所属だから、篁はアルゴスにでも置くつもりらしい。
ハイネマンには通知済み。
流石に今のEvo4をそのまま渡すわけにはいかないから、ハイネマンにPhase3を追加で用意させる。
その位は2つ返事でやってくれるだろ。」

「・・・妥当な線かしらね。
他のメンバーの機体は?」

「新規のG-コア2基と、俺と紅の姉妹の機体から抜いて既に換装してるから、明日から使える。
勿論、最初はリミッターが掛かってレスポンスや出力は機体重量比でPhase3相当だが、早めに重量バランスの違いには馴れて欲しいからな。
ユーコンでトライアルするなら、その慣熟には丁度良い。」

「まりもも入れると G-コア持ち[ Evolution4]ばかり6騎ね・・・。
その気になったらユーコン基地くらい陥とせそうだわ。
・・・むしろその位の方が、安心ね。

―――そうね、白銀、16日から4日くらい、行ってきなさい。
再突入艦くらい用意してあげるから。
現地では・・・15に着いて、19に帰ってくるくらいかしらね。
ハルトウィックにそう返事しておくわ。」

「Yes, Ma‘am。」

「鑑も悪いな、武駆り出だして。」

「ううん、大丈夫だよ! 冥夜もいるし。
むしろ折角行くんだから、他のみんなとももっと[●●●]仲良くなって帰ってきてほしいな。」

「・・・出来た嫁ね―――。」

「ま、“神鎚”終わったら、武と絶海のコテージにでも招待してやるから。
楽しみにしてな。」

「うんッ! ありがとッ!」


なんかオレを置いて話がどんどん決まってゆく。
こういうトコ、男に主導権はない。
けど、まりもちゃんを除いて、先刻の4人で4日―――。
計ったようなこの符合。





「―――で、帝国軍は名実共に悠陽殿下麾下になったからいいとして、米国はなんだって?」

「・・・所謂穏健派や第4計画の協力派からの正式な要請ね。
ど真ん中の直球―――XM3の供与と教導の依頼。
可能であれば“Amazing5”についての情報提供。
同じ要望は、榊首相を通して、殿下にも行ったらしいわ。」

「・・・パチもん造りはもう早諦めたのか?」

「渡した仕様書を見ただけで、殆どのソフトウェアメーカーが降りたと聞いたわ。
残っているのはMicro SUNだけだって。
それも期限を設けない、っていう特例付きだそうよ。」


苦笑する。

正直彼方の組んだXM3は、オレから見ても前のループのモノと殆ど別物と言っていい。
実現している機動上の機能は一部を除きほぼ同じでも、別ループのソフトでは摩耗やエネルギー効率にまで及ぶ統合機動制御等実現出来ていなかった。
その上でレベリング、V-JIVESやAI教導システムなどどれだけ積み上げたことか。
その仕様を今のCPUで実現しろと言われたら、元の世界のようなゲームの発達による基本概念の無いこの世界では、実現は極めて困難になるだろう。
むしろそれがないのに曲がりなりにも実機で使えるソフトを実現できた夕呼先生や霞が凄いとも言える。


「・・・対価は?」

「非公式だけど、一方的な日米安保破棄に対する謝罪、日本有利に振った条件での再締結。
あとは正式なライセンス料とは別に、日本帝国に対する無償食糧援助、だそうよ。」

「明星作戦は・・・、形式上あれは米軍の参加した国連軍、という解釈か。」

「そうなるわね。」

「微妙に対価になっていないのがガキ大将[ジャイ◯ン]らしいが、・・・ま、その辺の判断は悠陽に任せる。
俺の口出しすることじゃないし、XM3の所有権筆頭者は、悠陽、だしな。」

「そうね・・・。
これだけで十分とはとても言えないけど、この先G-コアもあるし、Res-G弾もあるし。
第5計画派を釣る以上、少なくとも当面の味方[●●●●●]とはあまり揉めたくないわ。」


・・・魔女とその使い魔の会話は怖い。






「あの・・・ところで副司令、00ユニットってどうなっているんですか?」


話が一段落したところで、珍しく純夏が夕呼先生に質問を投げた。

現在の00ユニット適合者は、純夏一人。
適合可能性は高いはずなのに、オレを含めA-0大隊の誰もが現状使えない。
ノイズに依る頭痛のほうが問題で、装着出来ていないままだ。


「そうね・・・、正直芳しくないわ。
ま、余りホイホイ適合されても危険だから良し悪しだけど、もう少しは数を確保したいトコなのよね。
・・・でも―――どうして鑑が気にするの?」

「実は霞ちゃん・・・社少尉と、色々試してみたんです。」

「・・・何を?」

「前のループで社少尉は、意識の無かったわたしを通して、00ユニットで上位存在と通信しました。」

「・・・。」

「今のわたしを通しても、それは出来るみたいなので・・・。
ただ、その時別に“人格”は要らないみたいなんです。
だから、擬似生体でイメージを変換する“インターフェース”を作れば、社少尉のリーディング/プロジェクションで、“量子脳”のエミュレーション[●●●●●●●●]が出来るかなァ・・・って。」

「!!―――ッ
なるほど・・・可能性は・・・・・・在るわね!

・・・ナイスよ!、鑑!
挑戦する価値は十分ある!

―――そうね、・・・なんかご褒美あげるわ、鑑。
何がいい?」

「え?・・・あ―――」


純夏がちろん、とオレを見た。
―――その流し目に背筋を舐ぶられた感触。

多分、先刻の美琴やみんなとのコトもバレてる。
それも知られたところで推奨してくるし、全く文句も言わない。
むしろ喜んでくれる。
―――しかし、先刻の皆の状況と同じく、対抗意識[●●●●]は別らしい。


「―――じゃあアレが良いです!
例の―――無重力の!」

「え?、あ―――。
あちゃー・・・。
まあ、あたしはいいけど、―――彼方次第よ、それ。」

「彼方くんにも、この前の九條家訪問で、何か欲しい物があれば、って言ってもらえてるから、副司令に許可貰って、彼方くんに実行して貰えれば可能です!」

「・・・夕呼話したな・・・。
―――まあ、仕方ない、こっちも確かに約束だし、そういう事ならOKだ。
今からなら、―――8時間かな、朝6時帰還でいいか?」

「うんッ!」

「・・・ほどほど[●●●●]にな。」




―――??

無重力?

オレには、純夏が何を希望しているのか、サッパリ判っていなかった。










マサカ―――。

XSSTに載せるカーゴユニットには、宇宙空間でのシェルターとして使える居住ユニットなるものが在るなんて聞いてなかった。
更にはそれに乗って衛星軌道まで上昇すれば、無重力[●●●]の宇宙旅行が手軽に実現できるなど想像もしていなかった。

勿論操縦制御はリモートで、シェルターと言うかベッドルーム[●●●●●●]は、無限の星空の中究極の二人きり・・・。
食料品もある程度揃っていてミニキッチンはあるし、無重力対応の吸引式ミストシャワーも完備。
当然、この世界の御子神[ネイティヴ]が作っていたモノらしいが・・・。

―――彼方ェ~。




その日、夜もすがら―――。
無重力に特化したバルジャーノンの機動に慣熟しているはずのオレが、生身のバトルで純夏に撃墜されまくったのは言うまでもない。


Sideout



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