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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/26 14:19
'15,02,14 upload   ※明日も投下出来るかもしれません^^;
'15,02,20 誤記訂正
'15,02,27 誤字修正
'15,09,05 齟齬修正
'15,12,26 誤字修正


Side 武


色々爆弾発言は在ったが、事務次官もその位で切り上げ、今は夕呼先生の執務室に案内されていた。

元々事務次官は夕呼先生との会談に向かう途中で、娘の様子を見に少しだけ立ち寄ったらしい。
事務次官を案内してきたピアティフ中尉に拠れば、その場にオレも呼ばれていると言う事だった。
たまを見たのも久しぶりだろうから、親バカが爆発した、というところか。
前のループでは事前連絡くらいあって、たまの一日分隊長とか無茶したっけな。


苦笑しつつデブリをまりもちゃんに任せて、夕呼先生の執務室に向かったのだ。

彼方と純夏はまだ帰ってきていない。
昨日の“大粛清”に伴う、九條当主、突然の交代。
夜には脳血栓で倒れたという報道も在った。
先の傀儡種疑惑確認含め、それを確かめてくるというので、純夏が同行している。

午過ぎには帰ってくるだろうが、今回は車移動なのでまだ時間的に無理。



―――あれ?

けど、事務次官の訪問って、なんかイベント無かったっけ?










「ようこそいらっしゃいました、珠瀬事務次官。」

「ご健勝そうで何よりです、香月博士。
訪問当日のご連絡になってしまい、誠に申し訳ない。
―――しかし、最近何かと色々な噂も聞こえてきておる。
特に一昨日の“新潟の奇跡”、そして昨日の“高天原”は、国連としても詳細に把握せねばならぬ事項。
早急に確認する必要があると判断し伺わせて頂いた。」

「ご心配には及びませんわ。
第4計画としても、近々安保理に緊急動議[●●●●]を提出する予定、予めご相談差し上げたかったところですので、丁度よい頃合かと・・・。
唯、わたくしから申し上げるのは、第4計画に関することのみ。
“高天原”に関しては、わたくしの管轄外ですわ。」

例の装備[●●●●]の半分が、彼地のドックに入庫したとも聞いたのだが?」

「まあ、それは良いお耳をお持ちですのね。
けれどわたくしは、“高天原”の主である、煌武院悠陽殿下からスペースをお借りしただけ。
特に機密の観点ですわ。
あちらは、未だフレームから組み立てる状態、多数の作業員が出入りいたします故。」

「うむ、ならば“緊急動議”の内容について報告願おう。」

「畏まりました。」







「これは本年の春先に極秘計画として提出させていただいた“オリジナル・ハイヴ威力偵察”にて回収されたデータから採取されたログとなります。」

「・・・作戦は失敗、部隊は全滅、と前回聞いたが?」

「そこにいる白銀が本作戦唯一の生き残り、しかも本人もそれまで記憶喪失だったのですが、部隊全滅のショックによる記憶の復帰が生じ、混乱状態に陥りました。
記憶の整理含め暫く療養を必要としておりましたので、データが回収されたのはつい先月になってから。
以前の報告の訂正はこれから、となります。」

「・・・なるほど、白銀君の復帰とデータ回収遅れには其の様な事情が在ったのか。」

「回収された内容は、搭載した試作00ユニットを介し、白銀とオリジナルハイヴの重頭脳級との会話[●●]ログ、―――心してお聴きください。」


そして流される音声。
オレの声は肉声だし、声紋の一致も取れている。
一方のBETA重頭脳級のイメージを翻訳した霞の声は、電子音に差し替えられ、声紋も取れない様に加工されていた。
今では、当時の位置情報や経過に関しても、00ユニットで参加していた純夏がバックデータを引っ張り出し、日時・状況を構成しなおして付帯させているため、何処をどう調べても破綻のない完全なデータと成っている。



ログを聞くに連れ、顔色を無くし、厳しい顔つきになる珠瀬事務次官。


「・・・・・・・・・うむ。
このログを得たが故の、現在の第4計画の行動、と言うことか。」

「はい―――。
例え、このログを以て即座に第4計画の報告としたところで、そこには“絶望”しかありません。
そして恐らくは米国の第5計画派が暴走、人類滅亡の自決行為に至るでしょう。」

「・・・その為に、事前に“香月レポート”や“バーナード星異説”を流布し第5計画派を牽制した・・・。」

「それらの内容が全て真実で在ることは、世界中の研究機関が認めています。
第5計画派だけは、必死に否定して居りますが―――。」

「・・・それで第4計画は今なにを?」

「お忘れですか、事務次官。
―――第4計画が目指したのは対BETA諜報だけではありません。
現在は得られた情報を元に対BETA戦略の構築途上。
そしてその一部が示されたのが、一昨日の“新潟”―――。」

「 !!ッ 」



夕呼先生が大きめのディスプレイに完成した装備関係のリストを出す。

XM3。
森羅。
そして、G-コア。
電磁投射砲筒や、戦闘長刀(改)はG-コアのサブオブジェクトとしてある。

―――さすがに“ IRFG[反質量場]”は伏せていたが・・・。


「・・・抑々XM3は、第4計画に於いて白銀が構築したハイヴ潜行機動概念を具現化するために御子神が組んだOS。
それを用いて、現行の戦術機全て[●●]の底上げを実現しました。
そして先日完成した“森羅”は、情報公開こそ差し控えましたが、BETA諜報の枠に留まらず、新潟に於けるBETAの行動をほぼ完璧に予測して見せました。」


ディスプレイに展開される“森羅”の予測と戦闘経緯。
地域戦に於ける光線級の優先排除を実現したのは、紛れもなく“森羅”。
その後もその圧倒的な戦域把握能力により、極めて有機的な部隊対応が行われたのは疑いの余地もない。
公表はしていないが、その恩恵にあやかった将兵の間では早や、伝説化されているとも聞く。


「“森羅”はこの後、凄乃皇弐型のラザフォード場を完全に制御し、ハイヴ攻略に多大な戦果を齎すことが期待されます。」

「・・・うむ!」

「・・・またBETAとの接続は、言語体系や思想背景が全く異なるため、残念ながら完全とは言えず部分的ではありますが、BETA及びハイヴ情報やBETAの有する技術の一部鹵獲にも成功しております。
一例を上げれば、ヒトゲノムの完全理解に依る生体組織の調整―――。」

「! あれもBETA由来の技術であったか!」

「はい。
―――そして、遂には今の燃料電池スタックとは比べものにならないほど高出力・大容量の小型反応炉・G-コアをも生み出す事に成功し、今回新潟に於いては、5機の戦術機にて実戦証明を行っております。」


G-コアのパフォーマンスとそれに依って齎された装備の結果が画面に映される。
昨日純夏や、彼方、篁大尉がまとめていた資料―――。
勿論、原理や詳細は記されていないし、IRFGに関する部分は伏せられているが、その結果だけでも戦果の大きさは言うまでもない。


「・・・これが、新潟に現れた“Amazing5”の秘密・・・か。
なんと、既にこの装備が実用段階に在るのか・・・。」

「G-コアは本来ハイヴ突入戦を前提とする長時間の戦闘継続を目的に設計されたリアクター。
その恩恵は、地上戦に於いても遺憾なく発揮されています。
―――但し、必須部品の製造工場がBETAにより破壊されているため、現在手持ちの部品では最大468基しか製造ができませんし、1週間に3基の製作が限界となっております。
既に必須部品の製造工場再建を高天原にて行っておりますが、その稼働には最短でも10年掛かる事が判明しております。」

「・・・香月博士は、この強大な“力”を独占するお積もりですかな?」

「・・・様々な勘案は御座います。
ですが、大きすぎる力の集中は、不必要な軋轢を生むのもまた必定―――。
現在開発者含めた第4計画の意向としては、適当数を各国に分配供与し、相互管理するのが妥当・・・と考えております。」

「!!・・・なるほど・・・。」

暫しの黙考。
たまに付いては過剰な親ばかでも、生粋の外交畑。
悠陽殿下もが信頼するとういう辣腕―――。


「・・・・つまりこれらは、対BETA諜報に依る“絶望”ではなく、対BETA戦略構築による“希望”を準備している、と?」

「―――それが第4計画の目的ですから。」

「――――――素晴らしいッ!」


感極まった唸るような一言が漏れた。


「・・・・・・素晴らしいですぞ、香月博士ッ!!
貴女は―――、貴女は、地球人類の救世主と為られたッ!!」

「―――いいえ、事務次官。
わたくし達は未だ、BETA殲滅のための可能性を創出したに過ぎません。
真の救世主はこれらを使い、上位存在と自らを呼称した重頭脳級:あ号標的を殲滅した者にこそ与えられる称号。
・・・結果はまだ出せていないのです。」

「・・・そうなれば貴女は差し詰め、“救世主[メシア]”を生みだした“聖女”と言った所ですな!」


夕呼先生は、薄く微笑んだ。





「・・・して、この成果を元に貴女が提出する緊急動議とは・・・?」

「はい。
―――オリジナルハイヴ攻略計画―――神鎚作戦[Op.ミョルニル]です。」







引き続きモニターにグラフを示しながら説明する。
年末が人類滅亡の不可逆分岐点であると予想されること。
佐渡も年末には大侵攻を引き起こす可能性が高いこと。
BETAの新しい装備に対する対応を封じるためには、上位存在を真っ先に殲滅する必要があること。

その上で、今の段階における作戦規模と達成率を提示する。
G-コアの実装で、突入部隊の損失率は一桁にまで落ちている。
但し、降下部隊に付いては、重金属雲でカバーしきれない為、30%程度と成っている。
また、ハイヴの規模が大きすぎて、崩落工作が使用出来ないことから、上位存在殲滅後の汪溢BETA殲滅も極めて厳しい状況にはある。
周辺ハイヴへの合流と、ユーラシア規模での汪溢も有り得るが、そこは予測が困難で被害想定は記されていない。

それでも、現時点であ号標的を殲滅しなければ、人類の衰退は必至。
引けない一線がそこに在るのだ。



勿論、作戦内容は今までのループでオレが経験した“桜花作戦”によるものだ。
00ユニットとして正確に記憶していた純夏がまとめている。
そして元々“桜花”は特攻を前提として造られた第2次世界大戦当時の自爆兵器の名称。
実際にはその搭載母機が“銀河”だった。
しかし全員生還を目指す今回の作戦には縁起が悪い、ということで験を担ぎ、作戦名も変更した。




―――だが、珠瀬国連事務次官は、難しい顔をして長考を始めた。

そして語った内容―――。





「・・・日本は今、世界の注目の的なのだ。

既に“奇跡のOS”とさえ呼ばれるXM3を開発し、それを以てラプターをも完全に凌駕し、米国の軍事ドクトリンすら見直させるに至った。
今や国連内でもプロミネンス計画は、反オルタネィティブから、親第4計画に塗り替えられた。

―――そして此度の新潟防衛戦。

27,000ものBETA侵攻を人的損耗[]で済ませたのだ。

今回は秘匿した“森羅”やAmazing5と言われる突出した戦力が確かに存在したが、戦術機全体の底上げが無ければ決して実現し得ぬ奇跡の数字。
新潟が奇跡と呼ばれるのは、正にこの0と言う数字だからこそ・・・。

そして香月博士は関与を否定したが、仮初の大地、“高天原”。
既に借款の可能性を明言されたソビエト、中国、EUからは、視察の申し込みから具体的内容検討の要請など、外務省がパンクするほどの状態。
10%と言う移民枠にも、全世界から高い関心が集まって居る。
恐らくニューヨークの国連本部に戻れば、わしとて質問攻めに遭うのだろう。



―――その中で、米国だけが蚊帳の外。


表向きはG弾とステルスに偏重した軍事ドクトリンの欠陥を指摘され、裏では第5計画の両輪双方を否定され、そして昨日の大粛清では帝国に蔓延らせていた様々な謀略ルートさえ根こそぎ断たれた。

確かに日米安保の一方的な破棄や、横浜でのG弾試用強行―――。
更には、九條閨閥を尖兵に策略を用いて帝国の傀儡化を謀略した第5計画派に近しい一部勢力。

個人的には快哉を上げたい。

内政干渉を排除するのは当然、その他の装備や施設についても、BETAに対抗する為、必要不可欠であることは理解する。

勿論米国内にも良識派が多数派として存在し、第5計画派の様な急進派を牽制しているのも確か。


―――しかし、基本的にあの国民には、自らの国が“世界の盟主”という意識が大なり小なり存在する。


現状、全ての面で突出しているのは米国のみ。
その力が無ければ、今の世界が立ちゆかないのもまた事実なのだ。

現在の帝国には勿論、過去にも、そして恐らく未来にも、今の米国の立ち位置に帝国が立つことはないと断言できる。
何よりも謙譲を美徳とする控えめな日本人の国民性では、世界の管理などとしゃしゃり出る訳がないのでな。

高天原の租借は将来的に、ソビエトや中国、EUとも提携を強化する可能性も見え隠れする。
何れは技術供与に依る、第2、第3のギガフロート建造を含めてだ。

けれど、今この時点に於いては、例え他のどの国をどんなに味方にしたところで、米国にNoと言われれば世界規模の作戦など実施できない。

逆に言えば、米国にYesと言わせれば、他の国はなんとかなるのだ。




簡単に言えば、この作戦プランには、米国を納得させるだけの、“利”が存在しない―――。



更に言えばもう一つ―――。

この作戦に必要な、軌道降下時の安全性が実証されていない。

凄乃皇のラザフォード場により、レーザー回避が可能とあるが、抑々凄乃皇は弐型ですら未完成。


この状態で安保理の承認が得られるか、甚だ疑問であるとしか言えない・・・。」







そして、小一時間後、珠瀬事務次官は席を立った。


「―――何れにしろ、第4計画が極めて偉大な功績を成し遂げた事は確認できた。
改めて人類を代表し、香月博士に最大の敬意と惜しみない感謝を表しますぞ。
また、それに基づく緊急動議が必要なことも深く理解し、それに向けてこちらも準備を進めよう。
期日は、11月29日としたい。
しかし―――、提案作戦内容については、もう一考して頂くことを望む次第、ですな。」

「・・・承知いたしましたわ。」



去ってゆく珠瀬事務次官を見ながら唐突に思い出す。


あ!!
HSST―――ッ!
どうなったんだ?


Sideout




Side 夕呼

B19フロア 夕呼執務室  19:30


「さて、じゃあこの後、どう詰めていくか決めましょうか。」


篁がドリップし、鑑が配ったコーヒーを一口啜り、口元を少し湿らせると徐ろに切り出す。

ここは何時ものアタシの執務室。
午前中の珠瀬事務次官との協議を踏まえ、今後の作戦展開を決めなければならないため、午後の訓練を終えた後、必要な面子を再度集めた。
本来この階のセキュリティパスを持たない篁は、彼方の同伴が無いと入れないのだが、何故か毎回連れてくる。
―――と、言って落した様な雰囲気はない。
彼方は相変わらずポーカーフェイスだが、そういう関係に成ったら篁が変わるだろうに、それが全くない。

ま、いいけど―――。

彼方の他は、白銀、そして鑑。
既に特別な位置付けである彼らは、ほぼアタシに準じるセキュリティパスを持っている。
未来知識、そして00ユニットでもある二人の意見も外せない。



「珠瀬事務次官の言っていた事ですか?」

「そうよ。
自分たちじゃ何もしないクセに、その先の利ばかり気にするバカばっか。
でもそういうバカが現実に国際社会を動かしている以上、事務次官の言うことも一理ある。
Gコアを餌にしても、いまのG元素の取り合いを見れば、確かに凄乃皇の戦闘証明[コンバット・プルーフ]を求められる可能性は否めないわね・・・。」

「・・・珠瀬事務次官? 何時来た?」

「午前中。
アンタが出てったあとすぐ電話があって、10時過ぎには来てたわよ。」

「・・・それでか。
ニュースになってたぜ、貨物用のHSSTが佐渡の突入コースに間違って乗ったせいで、重光線級に狙撃されたって。」

「え!?、何時?」

「帰りの車の中だから、11時過ぎか―――。
軌道降下が佐渡に向いていたらしく、若狭湾沖の海上でレーザー被弾・爆散して、破片は全部福井沖の日本海に散った。
―――若狭の連合艦隊の基地にも被害はないらしいけどな。」

「・・・事務次官の対応で気が付かなかったわけか(彼方なんかやった?)・・・・・・。」

「だろうな、此処に直接関係ないし(聞いてたからな、横浜基地の座標をセットすると、佐渡に誘導するようにハックした)。」

「(相変わらず・・・)・・・って、そういえば彼方いつ還ってきたんだ?」

「―――昼過ぎ。
鑑と一緒に遅い飯をルシェフに貰って、その後、鑑の護衛で反応炉。」

「反応炉?」

「ああ―――。
鑑の対BETA:MAcPro-IIIの予測で、新種が出現する可能性が示唆されたと言うから、鑑に此処の反応炉にリンクして貰った。」

「!!、情報漏洩はしないの?」

「勿論―――。
ODL交換はしないし、リーディングオンリーで各ハイヴの構造や成長度、保有BETA比率なんかを探ってもらった。
俺が障壁[クッション]に成ることで、鑑の心理ブロックと情報漏洩には対処したから、結構時間は掛かったが、さすが“森羅”だな、リーディングが有効で、俺じゃ届かない所まで浚って[サルベージ]くれた。」

「そう、情報漏洩しなら良いわ、ハイヴ詳細情報は何れにしても有用だし。
・・・で、なによ、その新種って?」

「予測されている出現場所はエヴェンスクなんだけどな、此処はハイヴ建設以来、周辺地域の光線属種比率が極端に低い上、ハイヴの成長自体もかなり鈍化していることが判った。
初めは母艦級でも作っているのかと思ったが、母艦級なら光線属種の出現比率が低いことに繋がらない。
地下茎構造もフェイズ2らしからぬ広大な大広間と主縦坑が存在することが鑑のリーディングで判ったから、今の重光線級よりもかなり大型の光線属種だろうと予測されている。
―――謂わば、“超重光線級”だな。」

「・・・エヴェンスクでしょ? そんなトコにそんな新種作ってどうするのかしら?」

「・・・そこは試製99型電磁投射砲 EML-99Xの試射をして、重要保安部品をBETAに齧られたエリアです―――。
何か関連が在りますか?」

「んん―――、過去の光線属種の出現を辿るに、結構前、つまり電磁投射砲試射前から作っている様子。
EML-99よりは、大凡アサバスカの核飽和攻撃やその他核ミサイルの対処を目論んだ対応だと考えたほうが自然だろうな。
今後或いはG弾頭を搭載したICBMの軌道を考えると、かなり効果的だぜ、この位置は。」

「!! 米国内からミサイルでユーラシアを狙うには、必ずその空域を通り、レーザー射程内に入る、と言うわけね。
原潜や艦艇を考慮してないのは、今まで使っていないから・・・。
けど・・・そんなのが出現したら、第5計画の機動性は益々落ちるわけね―――。」

「G弾でならラザフォード場で回避できる・・・のでは?」

「そこは出力次第ね。
G弾って米国が言うほど万能じゃないわ、少なくともBETAには。
確かに人類には対処出来ないけど、BETAなら苦もなく大出力のレーザーを当ててくる。
実際凄乃皇だって、重光線級でも照射を同時に10本も喰らえば、負荷が増大するからG-11[グレイ・イレブン]の消費が半端無くなる。
出力を越える負荷にはラザフォード場ではなく、それを発生するジェネレーターが耐え切れない場合もある。
G弾だって起爆に使うG-11[グレイ・イレブン]まで消費したら爆発もしないし、過大負荷には対応出来ないわ。」

「・・・そんな、対岸の火事と言ってられない可能性もある。
最悪BETAに軌道降下用の再突入艦が危険と認識されれば、軌道修正に実質地球を数周する軌道艦隊も狙われかねない。」

「―――!!」

「通常軌道降下は投入ルートに乗せる際、地球自転に合わせ、東から[●●●]から遷移して目標に寄せる。
つまりユーラシアに在る目標[ハイヴ]を考えた時、今あるハイヴで一番東[●●●]にあるエヴェンスクに衛星軌道を狙撃できる“超重光線級”を配置するのは、かなり理に叶っているぜ。」

「・・・それもそうね。」

「―――出力次第じゃ、凄乃皇でも厳しい・・・って事か。」


確信したように応える白銀、頷く鑑。
・・・要するに、二人の傍系記憶に在った脅威を引っ張り出してきたわけね。






「ま、その対応は追々考えるとして・・・で、事務次官が何だって?」

「―――簡単に言えば、オリジナルハイヴ攻略には、実戦検証が足りないって事。
少なくとも凄乃皇弐型がレーザーを回避できることを示さないと、国連の協力を得られない可能性がある、とさ。」

「・・・そのココロは?」

「ぶっちゃけ、日本が活躍しすぎて米国が面目無いからよ―――。」

「ああ・・・・・・なるほどねェ。
高天原やG-コアでいくら雑魚釣っても意味はない、と言うことか。
―――確かに色々ハブったな、このところ。

要するに、今オリジナルハイヴ攻略作戦を出しても、

・第5計画派はG弾戦略を予備案に出来ず
・G-コアも欲しいがこれも運用はG元素次第
・他国にまで配られれば自前でハイヴ攻略されてしまい、米国に旨みはない
・唯一釣れるのはH-1のアトリエ攻略を任せる位だが、これも軌道降下のリスク不明
・そもそもオリジナルハイヴを早急に殲滅する必要性が曖昧
・仮に攻略出来ても残存BETAの侵攻による脅威が不明

で、少なくとも00ユニットが出来たなら渡したXG-70の実戦証明しろ、と―――。」

「―――判っているのね、ほぼその通りよ。」

「バランス感覚のイイあのオッサンの言いそうな事だ。
無理すれば、米国の“良識派”まで敵にまわすってんだろ。」

「・・・それって、まずいのか?」

「ん―――、まあやって出来ないことはない。
けど、ものっっすごっく[●●●●●●●●]、メンドクサイ―――から遣らない。」

「めんどくさいって・・・。」

「米国の国民性って言うのは、対外的には外弁慶[ド◯エモン]ガキ大将[ジャ◯アン]みたいなもんだ。
何時でも自国が一番偉くて正しいと思い込んでるクセに、擦り寄って来る弱小国には平然とたかる。
守ってやるんだからオマエのものはオレのもの、みたいにな。
・・・過去の石油、今のG元素もそうだろう。
その癖過去自国の領土を侵略されたことは無いから、国防関連には異常なまで神経質―――。」

「・・・うへぇ―――。
けど、国連の作戦なんだろ?
米軍なんてどうでもいいじゃん。」

「その国連軍だってスポンサーはほぼ米国だけどな。」

「―――え?」

「自分で稼ぐことのない国連の予算が何処から出てるか判ってるか?
各国に割り当てられた拠出金からだぞ。」

「あ・・・。」

「BETA侵攻が始まる前でさえ、米国の拠出金は全体の22%、勿論トップ。
拠出金の比率は厳密に決まっていて、2位の日本が10.833%、米国の半分以下だった。
当時の常任理事国はフランス:5.593%、英国:5.179%、中国:5.148%、ソビエトに至ってはたった2.438%。
それがBETA侵攻が進んだ今年の拠出金で見れば、国土を喪った国や、最前線国家は分担金も半分に減じられている。
全体で見ればそれでも日本が2位で、5.4165%、欧州で辛うじて国土が残っている英国より僅かに多い程度。
BETA侵攻が進むに連れ、拠出金を出せる国自体が減っているんだ。
その現実問題減っている比率を支えているのは、何処か―――。」

「・・・。」

「―――言うまでもなく、今や米国が元の倍、その44%を支えている。
後方支援国家である豪州なんかも元の2倍、南米諸国も1.5倍まで比率は上げているが、元が少なめだからせいぜい4%台でしか無い。」

「―――うゎぁぁ・・・。」

「因みに今米国以外の先任常任理事国4カ国を全部足したって12%弱にしかならない。
日本とオーストラリアが常任理事国に追加されているが、実質その最大の権利である拒否権の発生は、2007年度以降。
現状国土のない3カ国は窮々で辛うじて拒否権に縋っている状態、生産拠点を上手く第3国に移したイギリスだけが気を吐いているけど、完全な米国寄り・・・。
米英、そしてカナダやメキシコ、或いは南米を含めた米国親派は、軽く50%を越える。
この状況下では国連や国連軍が米国の支配下って呼ばれるのは、むしろ当たり前だろ。」

「・・・国連の実態ってそんな状況なんだ・・・。」

「実際俺達が敵視しているのは第5計画派って言う、謂わば米軍の中のごく一部だ。
帝国軍の中の九條一派みたいな物だと思え。
帝国軍や斯衛軍にも色んなヤツが居るように、米軍も色々、それこそ第4計画の協力派もあれば、プロミネンス派もいる。
そしてほとんどは派閥に属さない一般兵士だ。
俺達は、米軍全体に逆らっている訳じゃないのさ。」

「・・・そっか―――。」

「第5計画派は、実際米国内で比較的少数派だが、今まで明確なドクトリンと脱出作戦による米国内富裕層の支持を占めいていたためにその発言権は強かった。
良識派は良識故に基本的に穏健だからな。
だから、逆に米軍の第5計画派を納得させれば、国連軍をも動かすことも出来た。
―――例えば[●●●]、オリジナルハイヴ殲滅作戦が失敗したら、G弾殲滅作戦を予備化して即発動させる―――、とかな。」


―――彼方の言うとおりだ。

白銀が辿ったループで言えば、“桜花作戦”を実行する差し迫った理由があり、そして第5計画派とのギリギリの駆け引きで実施に漕ぎ着けた、とも言える。
00ユニットからの人類戦略漏洩の対応期限、トライデント作戦の即時発効予備計画化、H-1ハイヴ・アトリエの米軍優先確保。
そして少なくとも甲21号作戦でラザフォード場によるレーザー防御を実戦証明していた。

其れらが無ければ、国連ひいては米軍は動かなかった可能性が高い。
本当にギリギリの、細い細い道筋を辿ったのだ。
それでも結局今、世界がループしているのは、その先で何れ破綻し白銀が死んだからに過ぎない。


今の世界に於いても、第5計画派を此処まで叩かず、同じ経緯を辿れば、計画の発動は可能だっただろう。
しかしそれは、余りにもリスクの高い細い途。
そして結果的に重い損耗を人類が負う選択であり、最終的なカタストロフは避けられない途でもある。
戦略を漏洩してしまえば、もし予備の重頭脳級が出現した場合、一気に人類の反抗が全て封じられる。

所詮何時迄も人類に希望を灯せない状況では、支配因果律に抗しきれない―――。
其れ故の、今回の第5計画徹底排除と言う選択だったのだ。




「もうひとつは・・・正常性バイアス・・・か。」

「正常性バイアス?」

「そうだ―――。
俺達は、今人類の置かれた立場をほぼ正確に把握している。
けれどそれを知らない人、あるいは知らせても信じない人は、[]の安定が今後も続くものだと思いこむことによって心理的ストレスを回避しようとする。
―――大災害時に自分は大丈夫と過信して逃げ遅れるようなものだな。

さっき言った
・そもそもオリジナルハイヴを早急に殲滅する必要性が曖昧
・仮に攻略出来ても残存BETAの侵攻による脅威が不明
に関わる事で、正常化バイアスが働くと、今は大丈夫なことを、ワザワザ崩して危険に晒す必要があるのか、という疑問が生じる。

それを突破するには、作戦が“絶対成功する”と信じさせるしか無い。

―――だから凄乃皇の実戦証明を示せ、ってんだろ。」


“世界”の状況は中々に頑固なのである―――。


「 つまり―――簡単に言えば、やり方として、

1・BETAの対応を危惧し予定通りH-1を先に攻略する場合は、、
ゲリラ的に先行して極少数であ号のみを叩く
2・世界規模の作戦展開を行い、人類の決戦とする場合は、
H-21で戦闘証明[コンバット・プルーフ]した後、19日以内にH-1の順に叩く

何方[いずれ]かってことだ。」

「「・・・」」

「―――簡単にいえば、そう言うことね。
元々BETAの対処を最大限減じる為に、オリジナルハイヴ殲滅を先行させて来たけど、確かに事務次官の言うとおり、現状の作戦のままでは、いきなりのオリジナルハイヴ攻略に国連は動かないと見たほうがいいでしょうね。
勿論、時間を掛ければ説得も可能かも知れないけど、コッチにはその時間がない。
となれば、“銀河作戦”と同じく、今ある戦力だけで威力偵察[●●●●]として実施し、そのまま、あ号だけを破壊してしまえばイイ―――と?」

「・・・。」

「―――まあ正直1番手っ取り早い。
こ難しい国際調整も面倒な根回しも要らず、今以上の準備も少ない。
但し、国際的な合同作戦は取れないから軌道降下は無理、と言うか無謀。
流石に凄乃皇でも、H-1一帯の光線属種一斉砲火を浴びたらもたない。

突入できるのはXSSTに載せられる2騎のみ―――。
超低空、超音速で接近、一気に潜行となる。
鑑の得た情報によると、外縁スタブのBETA密度はそれほどでもなく、ある程度の広さを持つルートも存在する。
BETA密度的にもルート次第でXSST程度のサイズならSW115辺りまで強行潜行可能―――。
お約束の渓谷・トンネル通過ミッションってとこだ。
ハイヴ潜入さえ成功すれば、Evo4と荷電粒子砲装備なら、・・・ま、不可能ではないな。」

「・・・シミュは?」

「“銀河作戦”のデータで千回ほど計算した。
武と・・・俺でなら達成率は約90%―――。」

「―――90・・・ね。
で、損耗率は?」

「 50% 」

「「「 !! 」」」


―――コイツッ!!

ここは白銀が死ねばループする世界。
2名のエレメントアタックで損耗50%ということは、その損耗は一択。


・・・なるほどね―――。
アンタがこの手の話に毎回篁を連れてくる理由が解ったわ。


白銀が何度も巡った世界。
“桜花作戦”の支援に回った世界全体陽動作戦の損耗は、毎回40~60%と聞く。
“桜花作戦”そのものの損耗に至っては、一緒に宇宙に上がった国連の軌道艦隊は文字通り全滅―――。
生存者はたった2名。
随伴した米国軌道艦隊も残存戦力は、10%前後だったらしい。


全世界で言えば、各々の正確な数値は伝えられていないが恐らく死者は数万―――あるいは10万に届く規模。
それが、あ号を叩く為の一作戦で消える―――。
その膨大な損耗を一人の命で贖えるなら、悪いコストじゃない、ということなのだろう。

・・・確かに数字だけ見れば凡庸[まとも]な指揮官ならそれを選ぶかもしれないわね。


その時、あるいは万が一の不慮[●●●●●●]に備え、篁を後継と考えているわけか―――。
だから装備関係に関して全部開示しているし、その製造にも携わらせている。
確かにG元素関連、アタシか鑑が理論を理解し、篁が実践出来るなら、それも可能・・・。


―――けど無駄よ。

アタシは今更アンタの居ない世界になんか、もう興味は無いのだから。



「―――却下よ。

アタシは例え100万の命だって、見ず知らずの有象無象よりアンタ達の命を選ぶから。
あ号で終わりじゃないんでしょ?
まだまだハイヴは残っている。
“創造主”がアンタの予測通り周到な知性なら、予備の上位存在が復活することも十分在り得る。
月も、火星も手付かず―――。
だったら100万の使えない人間が居たところで、BETAに蹂躙されて終わりよ。
歴史がそれを示しているわ。」

「―――ま、そんなオプションも在るって事だ。」


彼方は肩をすくめてみせた。


「・・・で、肝心のアンタはどう考えるの?」

「―――そうだな。
そこまで言って貰えるなら、期待に応えないとな。
俺としては、・・・全く別の理由なんだけど、H-21の[]反応炉が欲しい。」

「・・・はァ?」


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