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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/04/11 23:27
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Side 純夏


・・・なんでわたしが此処に居るんだろ?
昨日の今日なので、正門の前にはチラホラとマスコミも張り付いていたし。


昨日“大権奉還”、そして“高天原”公表の裏で行われた大粛清の嵐。

それは軍部・政界に限ったことではなくって。
公官庁に於いても、地方に到るまで著しい不正は次々に捕縛された。

復古の大獄―――と冠した新聞さえあったくらい徹底的に。


何せ今回の検挙には、陰ながら彼方君が関わったのだ。
流石に裏仕事をわたしにさせるわけには行かなかったらしい。
なので電子情報に残る疑惑は尽く、全て白日の下に晒された。

けど、その彼方君のハッキングを以てしても、九條当主本人の直接関与は出てこなかったみたい。
呆れるほど周到に、あらゆる記録から自分の存在だけは消していた。
極端な写真嫌いとも言われ、今の姿を探すことすら難しいのもその事に由来するのだろう。
勿論わたしが直接リーディングすれば、黒も黒、真っ黒だろうけど、それを裁判の証拠とするわけには行かない為、深入りはしない筈なんだけど・・・。

それでも、両腕とも言える一條・二條当主を始め、その十指にあたる係累、また九條とは繋がりがないかに見せていた裏閨閥も完膚なきまでに連行された。
特に注力されたのが、裏閨閥。
九條が今の殿下に取って政敵であることは既知であるため、表面上の中道、あるいは殿下サイドの切り崩しに腐心していたらしい。
MPに捕縛された佐官クラスには仲御門や大伴と言った名前も散見された。
その容疑は軽くて収賄、横領から背任、詐欺、重きは殺人教唆や殺人、そして国家騒乱・教唆にまで及び、その内容が尽く暴かれ詳らかに明かされていった。

結果的に統合幕僚本部はその半数を刷新する羽目に陥り、本土防衛軍トップもまた更迭を免れなかった。
本土防衛軍指揮系統には、即日各方面隊から元陸軍の将官が呼び戻され綱紀粛清することと成る。
またそれと同時に帝国軍・斯衛軍内部に潜伏していたCIAの工作員もその殆どが検挙されている。

つまり九條は軍事的・政治的・官僚的・外交的伝手を全て奪われた形となったわけで―――。

例え本人に累が及ばなくとも周辺のほぼ全てが検挙されるという事態には、流石に元枢府とて看過出来る状況ではなくなった。
日和見的に九條サイドに近かった元枢府であるが、此処に来て新潟防衛、そして高天原と今の帝国にとって必須ともなる要素を携えた殿下の復権に棹さそうものなら、次の粛清対象と見做されるだけ。
当然態度を翻した元枢府から九条家への緊急勧告に対し、九條兼実は即日当主を辞し、疎遠だった姪の頼子が九條を継ぐこととなった。
周囲が検挙された以上、例え本人の関与が証明できなくとも、一族の監督責任というのは当然当主に帰する。
このまま捜査が進めば今後益々その責任を問われる事になるわけで、元枢府の寝返った今、辞さねば御家断絶ともなる状況。
批判の及ばぬ今の内に家長の権限を移譲させる事で、五摂家断絶ともなる不祥事を避けたかったのは元枢府とて同じ、その勧告に従わざるを得なかった。
この唐突な当主交代で断絶こそ回避できたかもしれないが、当然家格は五摂家末席にまで落とされる事となったらしい。


そして当の本人は、自身の権勢を以てしても全く抗し切れなかった怒涛の政変に憤慨、あまりに激高した挙句、脳血栓の発作を起こし倒れたとの報もあった。
尤も病院に運ばれることもなく、主治医の処置により自宅内療養との事だったので、世間的には仮病ではないかという憶測も出ている。
一方で、倒れた時間と当主交代の前後は定かにされておらず、断絶を危惧した周囲や元枢府の陰謀ではないかと疑うものも多数居るらしい。





―――で、なんでわたしが、その九條家の裏口に居るの?


もう一度思う。

しかも目前には憎悪で人を射殺せそうな目でわたしの[]を睨みつける女性。


「―――貴様が何故此処に居るッ!?」

「久しぶりだな、クマ。」

「クマではない!、久那だ!」


刀に手を掛ける相手に、相変わらず飄々とした態度。
―――そう、わたしをここに連れて来たのは彼方君。

断絶したんじゃないの、と聞けば、出入り禁止は喰らっていないの一言。
わたしがクラックするまでもなく、裏門の電子ロックを平然と解錠し、勝手知ったる様に裏口に御免と一言、入り込んだ。


「おやめなさい、月輪。」

「お嬢・・・御館様! しかし此奴ッ!」

「・・・非は伯父上にあるのですよ。
それはソナタも承知のはず。」

「・・・クッ!」


奥から現れた若い女性がそう声を掛けてくれなければ、抜刀されていたかもしれない。


「―――とは言え、この時期におなご一人の共しか付けず、不法侵入とは如何なものでしょう・・・御子神彼方大佐。」

「―――挨拶はしたから訪問と言ってほしいな。
正規を望むなら、正門から訪問し直すが? 九条家当主、九條頼子殿―――」


この女性が、九條の新たな当主・・・。
まだ20をいくつも超えていないように見える。


「・・・・・・ふう。
貴方は幼少の昔からそう―――。
久那を揶揄するのも相変わらずですか。」

「少しは流せるようになったかと試したが、何時までもノリがいいな。」

「全く・・・。
伯父が倒れたという今、確執在る貴方が正面切ったら、マスコミには恰好の話題作りですね。
―――では、凋落した宗家に今更何の御用ですか?」

「・・・隠居の様子を見に来た。」

「・・・仮病を疑っているのですか?
まだ意識は戻っていませぬが、医師の見立てではかなりの後遺症が出ているはず。
―――良くて半身不随、悪ければ寝たきり。
何れにしても蟄居は確定です。
2度と権勢を握ることは無いでしょう。
―――その伯父にトドメをお望みですか?」

「どうせ邸内のICUに居るんだろう? その姿を見せてもらうだけでいい。」

「・・・。」


彼方君を良く知っているのだろうその女性は小さく溜息を付いた。










都心の超一等地に構える広い屋敷。
典雅な庭を望む茶室。


彼方君はわたしを連れ、本当に邸内に存在したICUのベッドに横たわる壮年、いやすでに老人の様に老けこんだ男性をガラス越しに一瞥しただけだった。
その意識は何を思うのか・・・。
反射的にチラリと彼方君にもリーディングを仕掛けたが、その思考は相変わらず読めない。
ホント、チート―――。
主となる思考を普段からアストラル領域で行っているらしい。
通常のリーディング/プロジェクションは脳波に干渉するもので、彼方君の場合、生体部分ではその断片を不連続に処理していると見えて、それだけでは意味をなさなかった。



当主自らが亭主となり茶を淹れてくれた。
優雅な所作や、嫋やかな手付きは流石お姫様とも思う。

前当主の様子を見たその後、少しは話しを、と請われここに居る。


「―――伯父の行ってきた所業。
確たる証拠こそ無いものの、繋属の殆どがそれら大罪に組みしていた事実。
領袖の責と成れば、此度の沙汰も致し方なきこと。
むしろこれだけのことをして、御家が断絶しないだけでも僥倖と言うべきなのでしょう。
・・・彼方の積年の恨みも少しは溜飲が下がりましたか?」

「・・・俺には別に私怨なんぞ無い。
抑々俺には今年年初までの“記憶”は無いことは聞き及んでいるのだろう?
過去の経緯は“記録”で知っているが、感覚で言えば“他人ごと”だ。」

「・・・。」

「―――ただ人類の存続を阻む、その在り方が相容れなかっただけだ。」

「・・・伯父は第5計画の移民船に一縷の望みを賭けていた。
確かに早々にBETA大戦を忌避し逃避に走るは、武家の在り方としては認められぬかもしれません。
けれど、前帝都が陥ちようとする過日、他の五摂家は何れも年端も行かぬ女子を当主に立て、将軍への推挙を回避しようとした・・・。
それと如何程の違いがありましょう?
それがそんなに咎められる事なのでしょう?」

「・・・判って言ってるんだろ、頼子。
その為に、・・・第5計画派に与するために、隠居が帝国内で何をやったか・・・。」

「・・・。」

「忌避するだけなら構わない。
自らの高齢を理由にその年端も行かぬ女子に政威大将軍の大役を押し付け、それでいて悠陽がただのお飾りに収まらないカリスマ性を発揮すれば、それを危惧し直ぐ様潰しに来る。
政威大将軍は辞退したのに、その権勢の干犯と物資の蚕食には執心。
“記録”を見ただけでも知れたぜ。
そして挙句が今回の遠征妨害、クーデター煽動と米国傀儡政権誘導か?
その意志は紛れも無く本人のものだ。」

「・・・私があの時[●●●]、崇宰と同じく、九條の当主として起っていれば違った未来が在ったかも知れませぬね・・・。」

「それも一つの未来・・・だったかもな。
ただ、同じ第5計画に縋ったならどの道未来はなかった。
そもそも隠居が固執したあの移民計画、今の第4計画の認識で言えば、“蟲毒”の壺、BETAの罠だ。」

「――え?」

「・・・恐らく隠居は、月面基地[プラトー1]でBETAに洗脳[●●]されたのではないかと予測している。
多分、自覚すらないままに―――。
その為に第5計画に固執した。
今地球上を席巻しているBETAなぞ只の作業機械、その背後には人類を搾取せんとする高次の知性が在る可能性が見え隠れしている。
今日は、それを確かめに来ただけだ。」

「!!、―――あ。」


彼方君の忌憚ない暴露に、心当たる節が在る様子。
形の良い唇を強く噛み締める―――。


―――そう、先程垣間見たICU。
こんな所までわたしを連れてきた理由を漸く理解した。

確かに重度の脳血栓を起こし運動野のかなりの部分が壊死していた。
あの規模では今後も回復は望めず、日常生活すら自力では出来ない事となるだろう。
それでも、思考野や記憶野は健在。
目覚めない九條前当主の中では、夢見る様に残った記憶野が活動しており、その中には確かにその痕跡[●●●●]が存在した。

強烈な、焼き付けられた様なイメージ。
神性―――としか言えない存在の刷り込み。
昏睡中の、記憶の断片となったそれ[●●]を僅かにリーディングしただけでもこちらまで帰依したくなってしまうような崇高な存在感。
それが無意識下でBETAと繋がっている。
そこ[●●]に至りたいという狂信的な意識が移民計画への渇望に繋がり、その手段として第5計画に与した・・・。

BITA―――傀儡級、その在り方―――。

けれど、其れ以外は所詮人の力しか持たない存在だった。
たまたま前当主が権力を握っていた者だからこその影響力。
だが、その権力を失い、動く術すら喪われた今、そこに何が残るのだろう。
刷り込みゆえの強烈な渇望と無力感、決して届かぬ妄執への煩悶・・・。
―――本人に取っては飢餓の煉獄に等しいかも知れない。
この状況に陥ったのは、或いは喪われた人々の因果なのかな・・・。


「―――得心がいきました。
確かに伯父が変わられたのは月面基地滞在以来と聞きます―――。
神性を感じた―――宇宙に出てそう言う体験をする人は多いとも言われますので、そんなモノかとも思って居りましたが・・・。
そういう事だったのですね―――。」

「―――その事実が見えて来たのは、ここ最近。
そして残念ながら今後洗脳が証明されても隠居の責は変わらない。
支配を受けていたわけではなく、言うなれば凡そBETAと言う宗教に帰依し、その為に他者を陥れても構わぬ行動に出たようなもの。
そこで“何を為すか”は個人の自由裁量だからな。
もっと早く判っていればとも思うが、先の当主云々と同じ、今更だな―――。」

「・・・そうですね、今言っても詮無きこと―――。
寧ろ伯父の妄執が帝国を滅ぼす前に阻止できたことがせめてもの救い、でしょうか。」

「気に病むなとは言わんが・・・オマエは、隠居じゃない。
洗脳もされていない。
オマエは、オマエのすべき事を為せばいい。」

「・・・相変わらずです、貴方は―――。
あの時、当主として起てていれば、今も貴方が繋属で居てくれたかも知れない、・・・その事が心残りの最たるものですわ。」


ずっと張り詰めていた能面のような表情が崩れ、初めて泣き笑いのような表情を見せた。


「頼子―――。」

「・・・何でしょう?」

「やる。
オマエが当主なら、問題ない。
今の九條には必要だろう。」


差し出したのは、分厚い紙封筒。
受け取り、中を改めるその顔が驚きに染まる。


「・・・これはッ!? 合成半透膜の補完特許?
―――貴方と伯父の諍いの元となった特許ではありませんか!?」

「嘗ての分家として、新当主への[はなむけ]とでも思え。
・・・元々、権利に固執なんかしてなかったからな。
BETAの侵攻に伴う水不足を補えるなら、九條が持っていても何ら問題はなかった。」

「・・・では何故?」

「隠居に相談した段階でこの装置は、わざと仕掛けた欠陥[トラップ]の他にもう一つ、重大な欠陥[●●●●●]を残していた。
―――濾過過程で、ある種の環境ホルモンが混入する、というな。
人類という種に対する遅効性の毒と言っても良い。
長く蓄積することで生殖率が格段に下がるというシロモノさ。」

「ッ!!!」

「・・・隠居は俺の説明でそれを解っていながら、その修正すら指示することなくこっそり企業に横流しにした。
だから[●●●]完全に離反し、対立した。
修正特許の実施過程でその欠陥も改修したから今は問題ないが、それで隠居を“人類の敵”と見做した―――。」

「・・・成る程、その段階で既に貴方は伯父の異変を見切っていたのですね。
子供だった私にはただ違和感しか覚えなかったというのに・・・。」

「まあ、当時の記憶を喪った俺が言うのもなんだが、もう少しオマエには相談したほうが良かったかもという記述はあったよ。」

「・・・そう言って戴けるだけで救われますわ。」


そう言って浮かべた微笑みは儚げに見えた。












「悪かったな、鑑。
重い話に付き合わせて。
流石に昏睡している相手のリーディングは、鑑くらいしか出来ないんでな。
その表情は、・・・在ったんだろ?」


横浜への帰りの車。
車種は元の世界で夕呼先生が乗っていた、ランチア・ストラトスだったりする。
なんか微妙に跳ねられた記憶も在る。
元がラリーカーだから、多少荒れた道でも大丈夫らしい。
確かに無舗装[グラベル]舗装[ターマック]の混在する道をかなりの速度で流している。
バンプで低く跳ねたり、時折お尻の下が横に流れたりする感覚もあるが、タケルちゃんの超絶機動にも慣れているわたしには何のことはない。
高天原のコア・セクションにあるネイティヴ倉庫から引っ張り出して来たらしく、夕呼先生がイタく気に入って基地内をドリドリ乗り回していた、と付き合わされた教官がうんざりした顔で言ってた。


「うん・・・。
強力な洗脳、というか意識付けというか・・・。
でも、九條家と色々遣ってたのって、彼方君の言う御子神[ネイティヴ]なんだよね?」

「ああ。
ブログに在るだけだけどな。
御子神[ネイティヴ]なりに、もう少し上手く運べたんじゃないかって言う悔悟はあるらしいから。
ま―――俺のこれも所詮、自己満足に過ぎないさ。」


その言葉になんか、少し安堵しちゃった。
完璧に見える彼方君でも、迷いも後悔もある。


わたしが捻じ曲げ、タケルちゃんが閉じてしまったこの世界。
この彼方君はそんな世界に無理やり引きずり込んじゃった存在。
実際、今までの記憶にあるどのループでも表立った活動のないその名前。
今のループに遺された準備を見る限りネイティヴの彼方君も相当のチートだったはずなのに・・・。
大方の場合悠陽殿下が、政威大将軍に起っているからいつも“弾劾”に近い事が起きているのに、その後の痕跡は今まで辿ったどのループにも存在しない。
つまりこの世界の彼方君[ネィティブ]は、強烈な支配因果律で排除されてきたのかも知れない。

その支配因果を飛び越えて、元の世界群から送り込まれた今の彼方君。
紛れも無くこの世界を変えることが出来る、恐らく唯一の“鍵”。
でも“鍵”は、“錠”を解くだけ。
“扉”を開けるのは、誰でもない、わたしやタケルちゃん―――。




「そういえば、この前武が言ってたけど、“桜花作戦”の時、ヤバいの[●●●●]が出た記憶が在るんだって?」


そんな事を思っていたら、唐突に訊かれた。


「あ、うん、―――超重光線級ね。」

「超重光線級?」

「“桜花作戦”後も残ったタケルちゃんの傍系記憶にあった。
エヴェンスク・ハイヴに出現したみたいで、00ユニットの記憶はないから、具体的な映像や能力の記憶はないの。
桜花が成功した時は、対応したソ連軍がどうにか殲滅したみたいだし・・・。
ただ、その存在について副司令がまとめたコメントが記憶に残ってる。」

「・・・エヴェンスクとはまた辺鄙なとこだな。」

「エヴェンスクは長らく周辺に光線属種の出現が確認されてなかったみたいだし、今のループでも確かに同じ状況みたい。
当時の副司令もそれ[●●]を制作してたせいじゃないかって推測してる。
他の地域でも同様の傾向がある場合は注意がいるだろうって。
出たのは、要塞級・重光線級・頭脳級を合成したキメラみたいな全くの新種らしくて、もしこの新種がもう1体他のハイヴに出現していたら、桜花作戦は完全に失敗してた、って言うのが当時の副司令の考察。」

「・・・その組合せだけで相当ヤバいな・・・。」

「うん・・・。
実際“桜花”で失敗した傍系記憶の中には、軌道周回中に撃墜されたコトもあって、今考えるとその新種にやられてたんじゃないかってパターンもあるから・・・。
当時の副司令はODL交換で00ユニットから漏洩した人類の戦略や、カムチャッカの電磁投射砲試射が影響して、作成された可能性があるって考察してたけど・・・。」

「・・・何れにしても、何らかの対策は必要って事か―――。
鑑、現在の各ハイヴのBETA種別出現比率ってカウントできるか?」

「ん――――――、直接やろうとすると、00ユニットで横浜の反応炉に接続すれば出来るかも。
細かい“言語”や“意味”は読み解けないけど、“図”や“量”みたいなイメージになりやすいものなら解ると思う。」

「・・・コチラ側の情報漏洩リスクは?」

「00ユニットのODL戻さなきゃ大丈夫、だよ。
接続もプロジェクションせずに、リーディングだけ使うから・・・。」

「・・・OK、戻ったら早速頼む。」

「了解!」


こういうとこ、相変わらず鋭い。
先手先手で準備していく。
っていうか、彼方君は傍系記憶に関することをなるべくタケルちゃん本人に訊かないようにしているみたい。
タケルちゃんに細かいところまで思い出させることを避けている。
だから同じ記憶を持っていて、且つ00ユニットであった故に細かいところまで覚えているわたしに訊く。
タケルちゃんの心理負担を軽くしてくれてるのだから、わたしとしても大歓迎だけど。
ホントは私達がどうにかしなくちゃいけないのよね。


「で、―――鑑も最近いろいろヤってるみたいだな。」


う―――。


「・・・彼方君、鋭すぎるよォ。」

「・・・別にいいんじゃないか?
具体的には知らんが、鑑が武の為にならないことをするとは思えないし。
いっそ―――もっとやっていいぞ。」

「え? ホント? やっちゃってOK?」

「ああ、無問題。」

「・・・。」


機密開示とか漏洩とかイロイロ抵触するかもって、躊躇っていたんだけど・・・。
既に大佐格で、夕呼先生どころか、悠陽殿下まで落としちゃってる彼方君。
権力中枢をしっかり握っちゃてるのが凄いけど、その彼方君にお墨付きをもらえば、全部クリア! よね?

・・・うん。
大丈夫。
漲る―――。


「・・・よ~しッ!!」


わたしはレカロのバケットシートに丸くなり、拳を握りしめて気合を入れた。


Sideout





Side 壬姫

ブリーフィングルーム 10:07


それはA-00中隊として新潟防衛戦のデブリーフィングしている時でした。
新潟の参戦、戦闘の“経緯”はすでに纏められていて、報告も済んでいますが、今後中隊あるいは個人がこの経験を踏まえて如何に対応していくか、の思索とのこと。
そう、たけるさんに依ると、次はハイヴ戦。
あの[●●]追体験を、実際に行うことになるのです。


そこにノックの音。

神宮司教官が応えると、ピアティフ中尉の声。
そして、姿を見せたのは。

―――は? パパぁー!?


「起立ッ! ―――敬礼!」


榊さんの号令が飛んで、反射的に敬礼をしました。


「ああ―――楽にしてくれ給え。
わしは珠瀬 玄丞斎、国連事務次官なんぞをしておる。
そこに居る珠瀬訓練兵の父でな。
会議中、失礼とは思うが、何かと忙しい身、僅かの時間挨拶するのを許してくれ給え。」


そ、それは職権濫用よ!

とは言え此処は国連軍基地―――。
しかも帝国に地権を借りている横浜基地なのだ。
日本の国連事務次官と言ったら、下手すれば基地司令より偉い事になる。
教官や、たけるさんだって苦笑しているだけで何も言わないというか、言えない。


「と言うわけで、たまは元気でやっておるか?」

「―――職権濫用は困ります!、事務次官!」

「おォ、凛々しいたまも良いぞ。
元気そうで重畳、重畳。」

「え?、う・・・、もう!」


文句を言ってもニコニコ笑っているだけのパパに二の句が継げない。

その間にパパは教官の前に進んでいる。


「貴女が神宮司大尉ですな、極めて優秀な教官であり上司であると聞いております。」

「は、お初にお目にかかります。神宮司まりもであります。」

「・・・ところで、うちのたまは総合戦技演習に合格したとは言え、訓練兵であった筈、実戦に赴くなどないと伺っているが・・・?」


え? だ、だめパパ!
教官に絡むなんてやめてぇぇぇ!!


「―――お言葉ですが、この訓練小隊はXM3教導の先行事例として白銀少佐の下、訓練を重ねてきました。
既にその練度は素晴らしく、優に一般衛士をも超えております。
故に最新鋭機である試製XFJ-01を与えられ、検証部隊に仮配属となりました。
現在の人類には斯様に優秀な衛士を遊ばせておく余裕はありません。」

「・・・それは新潟防衛戦に参加した・・・と?」

「はッ。
機密部隊ゆえ、公開はされておりませんが、ご息女は先日の横浜防衛戦に参加し見事“死の8分”を突破したのみならず、初陣での撃破BETA数では、煌武院悠陽殿下に次ぐ、2,800のレコードを打ち立てております。」


平然と応える教官に、パパの雰囲気が緩んだ。


「・・・そうですか。
それも、貴女のような素晴らしい教官の指導の下、上官の指揮の下と言うことですな。
これからも宜しくお願いしますぞ。」

「ハッ!」


穏便に済んでほっと、息を付くが、パパが榊さんに前に向かった瞬間、教官の凄艷な流し目が私を射抜いた。

・・・冷や汗が止まらない。


その後も一人ひとりに何事か言い、その度にジロリと睨まれる。
鎧衣さんなんか、何か叫びながら走り去った。


・・・もう、パパってば、何しに来たのよぉぉぉ・・・。




そして―――。


「・・・うむ、君が“白銀の雷閃”、白銀武君だね。」

「は、白銀武であります。」


パパが最後にたけるさんの前に立っていた。


「新潟防衛戦の君の戦い、見せてもらった。
―――誠に天晴であった!」

「―――ありがとうございます。」

「先程からみていたが、うむ、聞きしに勝る好青年、しかも顔も悪くない。
更に、性格もいいと聞いている。」

「は?、はぁ。」

「今このご時世で君以上の男は望むべくもない。」


え? なんか先刻までと様子が違うんですけど。


「君ならば・・・うむ、よかろう
たまのこと[]よろしく頼むよ。
傍で支えてやって欲しい、今までも、そしてこれから[●●●●]もね。」


は、はぁ!?
何言っちゃってんのぉ~!?


「いやはや楽しみだ・・・わははははは。
いや、そろそろわしも、孫の顔がみたいかな、ま、ご、の、か、お、が、な!」


orz

―――私、死んだ。

私だって、たけるさんと鑑さんや御剣さんが親密なのは判ってる。
榊さんや彩峰さんもかなり怪しい。
鎧衣さんだって、なにかと仲がいい。

そりゃ私だってって思う。
鑑さんは、私の応援もしてくれている。

―――皆で支える、って言ってくれてる。
戦術機に乗った時の武さんを見ていると、凄すぎてそんな事が本当に必要なのかと思っちゃうけど。




なのに、なのにぃ~!
それにしたって、こんな“婿”宣言なんて!
・・・パパってば・・・。

皆に付いて睨まれるのは、あることないこと手紙に書いちゃった私も悪いけど。

皆を威嚇してそんな事言うなんて!

しかも“孫”なんて言われたら、たけるさんに引かれちゃうじゃない!

ほら、たけるさん苦笑しているし!




「はい―――。
―――俺なんかで良ければ、お任せください。」


え―――?


「・・・うむ、その意気や良し。
呉れ呉れも良しなに頼む。」

「ご要望にも、ASAP叶うよう努力します。」


な、な、な、なんでがっちり握手なんかしちゃってんですか?

武さん、そんな・・・私なんかも傍にいていいんですか?

ご要望って・・・、あの、私と、・・・その・・・アレしちゃう[●●●●]んですかぁ~?


あ・・・、そんな―――、そんな優しい眼差しで見つめられたら・・・気が・・・とお・・・。


Sideout





Side 武


珠瀬国連事務次官の突然の訪問。

今回のループでは色々やらかして居るから、今までより随分早いし、微妙に話の内容は異なるものの、最後はいくつものループで記憶にある“孫の顔”発言。
・・・いつもこの後拉致られてトイレに放置プレイだったっけ。
トイレのタイルは常に冷たかったなぁ・・・。



けど今回のループ、純夏の完全生身復活とまさかのハーレム画策。

彼方によると、プロジェクションに因る刷り込みは、相当強力らしい。
“傀儡級”と彼方が呼ぶBITAはそれで仕込まれたんじゃないかと予測していた。
それを確かめに、今純夏は居ないわけで・・・。

勿論純夏はみんなには使っていない・・・よな?


一抹の不安が無いわけじゃないが、何れにしても今までのループに比べ、207Bの皆の、好感度上昇が半端ない。
冥夜の様に幼馴染という今回のループ特有の付加項目が在るならまだ判るが、何故かみんなオレに関してはまとまっていた。
しかも責任範囲8人という純夏の説得にも納得している様子。
実際殿下がそういう法案を提出すると言うのだから信憑性は高い。
男が少ないこの時代、変に争って弾かれるよりは、枠内に収まっているなら問題ない、と達観しているらしい。




それに対してオレはといえば、正直ヘタレていたのは確かで・・・。
純夏や冥夜と早々にデキてしまった事もあり、ハーレムと言う状況も腰が引けていたというか。

けれど、今度の新潟での完勝が何かを変えたことも確かだ。
自信に繋がったと言うこともあるかも知れない。



オレの意思―――、それが、それだけが世界を変える―――。

彼方にそうは言われ、自分では判っているつもりで居た。
けれど今まで幾度と無く繰り返された“負け”のループに、無意識の“諦観”を持っていたのかも知れない。

そこに新潟防衛戦の死者0、そして殿下のこの時点での大権奉還や高天原が齎す“希望”。
その端緒となる、新潟戦。

これはオレにとっても今回のループにおける初のBETA戦、その大勝利―――。
死者0を狙って、そして実現できた“奇跡”。
彼方の齎す展開が寧ろ早すぎて、なんとなく夢見心地だった感覚から、実戦を経てやっと地面に足が着いた、と言うか・・・。


抑々今回のループで、この早い段階からとても夕呼先生らしからぬ程、機密の公開や提供の約束まで行っているのは、[ひとえ]に“支配因果律”に抗する為。
つまり全世界の人々に少しでも未来に希望を感じてもらうために、先行して出せる情報は公開し、渡せる技術は渡す、という方針のためだ。
勿論技術公開がBETA戦後の国家間闘争に障害となる場合もあり得るが、それも全てBETAを駆逐して後の事。
最優先は、支配因果に打ち勝ち、人類の存続を決定づけることだった。

すべては“希望”を灯すため。
そしてそれはオレ自身も、彼女たちもまた同じなのだ。

嘗て冥夜が口にした、“せめてもの”、と言う意識。
愕然とさせられた。
それは“希望”ではなく、一種の“諦観”。


―――純夏に冥夜、霞、そして委員長や彩峰、たまに美琴。
いつのループでもオレを支えてくれた彼女達。
オレには、全員を幸せにする“義務”がある。
幸せな未来を予感させる必要がある。
それなのに、オレのほうが妙に遠慮し、引いていたら意味はない。

その“意思”を誰よりも持たなければいけないオレが、みんなに遠慮することの方が筋違いだと気がついた。




だから、たまパパの発言程度で怯むこともない。
オリジナルハイヴ戦以降なら、いっそ妊娠させたって構わない。
孫の顔が見たければすぐにでも見せてやる、―――その位のつもりで視線を返す。


尤も、顔を真赤にして、挙句卒倒したのは、たまだったけど。
あわてて抱きとめたら、あうあう言っていたから、座らせてみんなに介抱を頼んだ。
たまパパ発言のフォローは・・・、まあそのくらいの意趣返しは甘んじて受けな。

多分、皆可愛がってくれるから・・・。


Sideout



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