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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/04 22:07
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'15,01,14 一部修正
'15,01,24 語句統一
'15,02,03 誤字修正


Side 鎧衣左近(帝国情報省外務二課課長)


「・・・課長、またMBです。
乗員は4名・・・。
状況を鑑み撤退するものと思われます。」

「・・・去る者は追わんで良い。
つかんだ情報も、どの道明日には公開される。
せいぜい雇い主を慌てさせてくれるが良い。
・・・問題は剣呑な装備をした残り3台か。」

「は。“森羅”情報により、すでに包囲の詰めに入って居ります。」

「では、早速片付けて、帝都に戻りますか・・・。」


越後平野の後方に位置し、広い範囲を一望できる標高を有した粟ヶ岳。
ここはその沢筋集落跡。
いろいろな所から来た“お客さん”が観光[●●]するには調度良かったらしい。
この時期に数台の車両が入っていた。
当然“観光”だけでは飽きたらず、この後 “悪戯”しそうな不良[ヤンキー]には大人として叱責することも必要であろう。


“森羅”と言う単語に、娘の友人でもあるという少女の相貌が浮かぶ。
そう、佐渡に蠢くBETAの捕捉用として設置された数々の観測機器は“森羅”によって統括され、此度の偉業達成に多大な貢献を為した。
その余録としてこの地に於いても、自動車の通行くらいは簡単に察知してしまう。
今や通る人も殆ど無いこの地に車が入ることは目的を持つ者以外あり得ないのだから。
流石に“人”の行動までは把握していない、と聞き及んではいるがしていない[●●●●●]と言っただけで、出来ない[●●●●]とは言っていない。
全く末恐ろしいシステムを構築したものである。

―――味方で良かった。


その観測情報と共に状況に応じた対応を、と[]より連絡が入ったのは今朝6時。
殿下の行方不明以来と言うのに、確かに人使いは荒い。

勿論その事態に対し二課でも多少の調査はし、状況の予想くらいは付いたが、二課は本来“外務”。
今のような[]からの客あしらいはするが、第2帝都におわす方には全く伝手もない。
任せるより他ないのだが、その首尾に抜かりはない様子だった。




帝国本土防衛軍・帝国斯衛軍合同新潟大規模演習―――国連横浜軍を加えたXM3実戦検証。

当初予定は勿論JIVESであったものの、この大規模検証が世界中の政府・軍事書関係者の注目を集めていたのは確実だった。
あのプラチナ・コードを齎した機動の礎であり、いまや帝国衛士のみならずプロミネンス計画を通じ一部世界にも供給され始めたXM3。
異次元の機動技術を有する特別な[●●●]衛士ではなく、一般衛士がXM3を用いたときにどうなるか―――その具体的初事例なのである。
関心が低いわけがないのだ。

―――10,000の侵攻を損耗率10%以下で早期殲滅、という昨日までのJIVES結果でさえ今までの防衛状況から言えば破格。
十分な性能と言えた。

その最中、突然発令されたCode991―――。
しかも最終的には総数27,000にも及ぶ未曽有の大規模侵攻。



だが、その大規模侵攻を発生から3時間掛からず殲滅を成し遂げたのだ。
それも、人的被害0で―――。


この時実は“森羅”情報は、外部から接続するデータリンクには漏れていない。
“森羅”は、データリンクで戦域情報を統合するメインフレームサーバーそのものすら支配下に置き、戦域情報を完全支配していた。
必要な者に必要な時、必要な情報を、個別[●●]に知らせている。
今回の場合、[]のログには一切その存在を残していない。
現状、BETA防衛戦に参加した衛士や兵士の記憶にしか留まっていないのである。

故に此処に居た“外からの客”は一切その状況を知らず、何故第一波から光線属種が排除されたのか、理解していない、
故に興味の対象は主にXM3。
光線級吶喊とも呼ばれるレーザー回避による光線属種優先殲滅手法である。


CASE-29で示されたレーザー回避による光線級殲滅。
そこには現実のBETAに対してもその手法を単独で苦もなく行うシロガネタケルが存在した。
しかし教導が広がる今、それを為すのは彼だけではない事もまた証明された。
国連軍A-01、そして斯衛軍衛士の中にも、まだ極僅かであるがその域に達する者が現れ始めていた。


世界は知る。

XM3の齎す機動は、決してシロガネタケルという英雄だけが可能なものではなく、皆が共有できるものであるということを。
それこそが、今後のBETA戦略の魁であることを。


その一方で現段階では巧妙に隠蔽されたBETA戦術支援システム“森羅”。

そういえば、F-22に搭載されているアクティブジャマーは、第1世代アクティブステルスと言うらしい。
相手のセンサーやレーダーを撹乱し、衛星や広域レーダーからの情報も遮断する。
しかしそれは一方で、ジャマーを発する自らの存在を明示することでもある。
その事から第2世代アクティブステルスとして、データリンク情報から、自分の存在のみ[●●]を隠蔽するハッキング方式がYF-23には搭載されていたとも聞く。
勿論、かの国の軍事機密・極秘情報であるが。

だが、“森羅”のそれは次元[●●]が違う。
データリンクからの情報を改竄する様な小規模ではなく、その気になればデータリンクを統括するシステムそのものを“支配”してしまうのだから。
故に通常のデータリンクシステムからは、完全なステルスと化しているのである。

勿論、この情報は00ユニット脅威論の引き金とも成るため、そうそう表に出ることはない。
今回も、“森羅”はデータ量が膨大であるため、データリンクとは別系統[●●●]の通信システムを有している事になっている。

―――BETA戦後の対人戦、特にステルス技術など歯牙にもかけないわけだ。




同じ次元に居て、且つ実力もどんぐりの背比べともなれば、相手を出し抜くには様々な手管を必要とする。
諜報、情報操作、汚れ仕事も当たり前。
それもこれも、全てより良い未来を信じてこそであり、自分のしてきたことに後悔はない。
ま、在るとすれば家内と、そして残された娘には悪いことをした、と少し思うが。

本土防衛軍の内部に蔓延する現状への不満についても然り、今の状況が続けば何れ破綻する。
無計画で無秩序で、故に破滅的なクーデターの発生を回避するために、敢えてあの者[●●●]を煽動した。
少しでも制御の効く秩序ある決起を期待して、その為の情報リークもした
現実にクーデターが起きれば、十分嫌疑を掛けられるに足る。
一方で殿下に忠義を誓いつつ、傍から見れなその殿下に仇なす様な、蝙蝠の如き仕儀。
榊首相の言葉ではないが、まあ碌な死に方はしないだろうと思っていた。


だが、そのクーデターも機先を制された。
先程“厚木”が先駆に至り首相官邸に空挺降下するも、1騎の“試製XFJ-01”に阻止され帰還した、との連絡を受けていた。


呆れるほど抜け目ない。


―――決して敵に回すまい。

先刻も思ったが、とても大事なことだ。
―――まあ、殿下のことは大事にしている様子、大凡その状況にはならないだろうが。



それにしても相変わらずの予測精度。

そのネタも一応知らされている。

MAcPro-IIIなるプロファイリングソフトに基づくもので、“森羅”のBETA行動予測もその一端と言う。
膨大な計算量に依る人格モデルを構築、そして情報という外部環境が与えられたときの思索・行動予測するという物。
意志なきBETAであれ、目的を与えられて自律行動している存在なら、ある程度予測が可能らしい。
尤もBETAの行動予測については、まだまだデータが足りない、との事だが。

この人格モデルは、本能から表面思考まで多段階に分かれた多層心理モデルを有しており、対象とする人物の経歴、過去行動から現在における普段の様子だけでも逐次最適化による更新を行い、表層から深層に至る詳細モデルを構築していく。

その為の情報提供を求められたのだ。
過去・現在・思想・人間関係。
遭遇した事態とその反応。
課内をひっくり返し、更には諜報で近況も探り出し、相当量のデータを提示した。
―――勿論その見返りとして、当該システムの使用権も頂いたわけだが。

当然自由に行動できる状況に於ける予測確度が低いが、条件や環境を絞れば絞るほどその予測精度は高まる。
現況に於いて九條一派からリークがあれば、あの者が決起に至るであろうことは確度80%の予測だった。




―――全くあの女性[ヒト]も、今更ではあるがやはりタチが悪い。


これらを齎した第4計画の主を思い浮かべる。



事此処に至るまで、第4計画は表立った“成果”をだして来なかった。
裏仕事の一部を任されていた私にすら、その気配さえ感じさせなかった。

遅々として進まない弾4計画。
開始以来ほぼ6年―――。
国連安保理もそろそろ決断が必要だと認識しており、年内に国連大使の極秘査察の結果次第では打ち切りも止むなし。
そんな状況であり、情報は榊首相も得ていたらしい。

それが、先日の浜離宮会合で覆った。
ちゃぶ台返しではなくどんでん返し。
状況は部屋[じげん]を変えるように切り替えられた。
第4計画が目指した対BETA諜報は既に完了、そして現在は対BETA戦略の構築に向け、概念証明中。

その時は公言はしなかったが近く、第4計画より国連に緊急動議が提出されるのは間違いないだろう。



どんでん返し―――即ちシロガネタケル、そして[]の帰還より20日余り。

世界は激変した。
そして、まだまだ変わる。



明日、殿下の大権復古が宣言される。

更に高天原の公開。

―――そして大規模な粛清。

メインは検察や警察。
軍務関係は、軍警察、軍事裁判所も取り込み、復権した政威大将軍の名のもと一斉検挙が始まる。
外務二課は主に煽動していたCIA関係者の捕縛。


国内はそれだけでも大わらわ。



加えて今回の“偉業”を齎した“対BETA戦略構築”のための装備群。

“森羅”こそ公表はしなくても、その存在が囁かれるのは致し方ない。
映像で明確に晒されたS-11並の威力を持つ120mm弾、突撃級の衝角すら切り飛ばした“鮮紅”の長刀。
はたまたXM3搭載機から更に上、完全にもう一つ突き抜けてしまった異次元の機動をする、A-00中隊の4騎。
極めつけは、突如現れた5,000もの地下侵攻を撃破した“光芒”を放つ突撃砲・・・。
今回は使うつもりは無いと言っていたが、緊急回避に使用せざるを得なかった事は間違いない。

何れにしろそれらの情報を求めて、また横浜界隈は賑やかになるだろう。


無論“高天原”にだって世界中の、特に国土を喪った国々の注目が集まるのは避けられない。
軍事装備とは違い、平和的な利用を前提とした“新たな大地”。
情報提供・引き合いが殺到するのは当然の帰結と言えよう。





表も、・・・そして裏も・・・。

膠着した世界に投げ込まれた特大の起爆剤。
どの様な状況に至るのか、想像もしたくない・・・。



一言くらい言わせて欲しい。

「―――本当に過労死させる気かね、ミコガミカナタ―――。」


Sideout






Side 真耶  


周囲は後片付けに雑然としている。
が、勿論誰の表情も明るい。
此度の大規模師団級BETAの侵攻を見事殲滅。

一部負傷者は数名出たが、最終的に人的損耗0―――。

そして、確かに殿下の言う “瑕疵”は在ったものの、殿下は大権復古を明言した。
それは斯衛、何よりも真っ当な帝国軍人に取っては待ち焦がれた、待望のお言葉。
闇い終末の時代に在って、未来に希望を抱かせる変革を期待させずには置かないのだから。




ここは三条市グリーンスポーツセンター内の研修室、“殿下”の居室と設定された室内。
殿下直衛の私と、その“身代り”を務めていた真那が扉の左右に立つ中、ここのところの何時もの顔ぶれが揃っていた。

紅蓮醍三郎 帝国斯衛軍副司令官 大将閣下。
斉御司巴 帝国斯衛軍第2連隊長 中佐。
斑鳩崇継 帝国斯衛軍第16大隊長 少佐。

白銀武 国連太平洋方面第11軍A-0大隊長 少佐。
鑑純夏 国連太平洋方面第11軍A-00小隊 少尉。

更に今回は特別に、
御剣冥夜 国連太平洋方面第11軍A-00小隊 訓練兵。

そして何よりもその中央に居られるのは、今朝方仙台より舞い戻った
煌武院悠陽 帝国斯衛軍総司令官 政威大将軍殿下。





「ムゥ・・・、やはり第2帝都城への招聘であったか・・・。」

「・・・概略、白銀の察した通りです。
九條という名前こそ出ておりませんでしたが、此度の新潟演習が大規模過ぎるとの事で、謀反の疑義あり、との密告が在ったそうです。
その妄言により現皇家守護代である崇宰を焚き付け、陛下の名を借りてワタクシを帝都城の秘密鉄路にて招聘という名目の拐取をいたしました。
陛下の御璽を示されればワタクシに否応はなく、警護を司る崇宰で無ければ真耶にも気付かせず実行することは困難でありましょう。
そのまま第2帝都城の離れに事実上の蟄居と成りました。

翌日、陛下との謁見で伺った限りでは、陛下自身謀反そのものを疑っていたわけではなく、何故斯衛まで新潟に赴く必要があるのか御興味が在ったとのこと。
むしろ崇宰の過剰反応を諌めて頂きました。
早朝には逸早く事情を察した彼方と真耶が駆けつけてくれた為、謁見に同席した彼方が過去のデータを用いてBETA新潟侵攻の可能性が極めて高いことを説明申し上げた次第。
陛下には御納得頂き、崇宰に謝罪は受けましたが、このところ仙台周辺もきな臭いらしく、新潟侵攻が真実であると言う事が判るか、或いは予測が外れ演習の終了までは原隊復帰を遠慮してほしいとのこと。
余計な疑惑を持たれぬよう通信もせず合流が遅れ、皆に心配を掛けたこと、誠に申し訳なく思います。
―――許されよ。
ですが、そなたたちであれば、ワタクシが不在でも必ずやより良き結果を齎してくれる、と信じておりました。」

「新潟侵攻が真実って、・・・今朝の5:50までと言うことですか?」

「―――左様です。
第2帝都城内にて、同時刻にCode991発令の知らせが届き、上空待機していた彼方のXSSTに担架した2機の“武御雷”に搭乗し、真耶と共に此方に。
ステルスから光学迷彩まで有するXSSTですが、さすがに低空ではその音を隠しきれませんので、先行する第14師団をフライパスせぬよう敢えて郡山まで南下し、喜多方を抜け、旧只見線に沿って参りました。
光線属種に狙われぬ山間を縫うように飛んだため速度が出せず、この付近に着いたのは凡そ7時過ぎ。
場は既に臨戦状態であり、無用の混乱を避けるため“赤”の武御雷として直衛の末席に加わって処りました。」

「え? “赤”・・・ですか?」

「―――ええ。
実際、何も起きなければ、そのまま冥夜に最後まで名代を努めてもらう心積りで在りました。
無粋な横槍が入ったことで、入れ替わらざるを得ない仕儀となりましたが・・・。」

「? 殿下が入れ替わったのは、何時ですか?」

「有間を説得したのは、冥夜です――。
有間が隙を突いて真那を弾き吶喊された際、“紫”と縺れた“赤”が〈Thor-02〉、真耶の〈Thor-03〉と共にXSSTに搭載されていた機体です。
〈Thor-03〉は元々真耶の機体、当初の予定では〈Vortex-01〉となる機体です。
〈Thor-02〉は京都における撤退戦の折、斑鳩が彼方に貸し与えた青の試製98式と聞き及んで居ります。」

「ああ、アレか―――。
“青”の試製98式が五摂家に割り当てられたものの、あの侵攻時未登録のまま送還要請があった機体だ。
4機はそれこそ崇宰の前当主に貸し出したが、九條分は彼方に渡した。
彼方が当時弄った事により随分ピーキーな特性になったとかで、その後斯衛の試験小隊かどこかに在ったと思うが・・・。」

「彼方の併任する帝国斯衛軍中央評価試験部隊に在ったそうです。
その塗装を変えてもらい、今朝真耶の機体と共に遠隔操作で第2帝都城へと運びました。」

「え? しかし機体色は?」

「・・・〈Zois-01〉のコールサインの元となる紫紺の宝石:ゾイサイト―――、元々は多色性[●●●]を有する宝石なのだそうです。」

「「「「「え?」」」」」

「有名なアレキサンドライト程、劇的に変色する訳ではない為、あまり多色性と認められていないらしく、知る者は少ないとのことですが。
同じ組成を有する石には色々な発色が在るようですが、その中で紫から青に変わる青系の石をタンザナイトとある宝飾メーカーが命名しました。
ゾイサイトとしては、紫から赤[●●●●]に変わる石が存在するのだそうです。」

「!! まさか?」

「もともと〈Zois-01〉、そして此度ワタクシが騎乗した〈Thor-02〉は、その表面を CNF[カーボン・ナノ・フラーレン]の繊毛で覆って居るそうです。
〈Thor-02〉は相当な突貫作業で在った様ですが・・・。
光線属種BETAの大出力レーザーに対し、従来の耐レーザー皮膜より高い防御が可能との事。
とは言え、光線級の一撃をどうにか耐える程度で、重光線級や光線級でも2度めの照射には耐えられないそうですが。
塗料ではない[●●●●●●]ため、電圧偏向を架けると、“赤”になるのは、丁度表面振動させた74式長刀“改”が鮮紅色に輝くのと同じ原理。
そしてその励起する周波数を変えると、波長の長い赤から短い紫まで、或いは全反射や全吸収といった殆ど全ての色に、一瞬で変色する事が可能との事。
色が変わっても物理的強度が上がる事はないな、と何故か残念がっていましたが・・・。
モルフォ蝶の翅と同じ発色原理と考えればよい、と彼方より聞き及んでおります。」

「・・・あの2騎が縺れた一瞬で入れ替えたのか?」

「・・・最初は冥夜の説得で納得し刀を退くならば、入れ替わら無くても良いと思っていたのですが、尚も執拗に冥夜を狙ってきたので、ワタクシの駆る“赤”の武御雷が、冥夜の駆る“紫”の武御雷を庇って乱入し、縺れた瞬間に、データリンクを介して偏向周波数を切り替え、2機の色を入れ替えました。
勿論“Zois-01”には元来生体認証機能が有りますので、その操作はワタクシか遺伝情報が極めて近い冥夜・・・あとはそれを弄った彼方くらいしか実行できないと聞いています。
そして色と同じタイミングでコールサインも入れ替え、冥夜には秘匿回戦で黙秘と着替えをお願いしたのです。
〈Zois-01〉には唯依の〈Fenrir-01〉武御雷改に使ったとは別、XFJ Evolution4と同じ、XFE512-FHI-1500を搭載しています。
2基目の3DベクタースラスターXFE3112-FHI-700が間に合わず、急場を凌いだ形ですが、中身は兎も角、見た目XFE512-FHI-1500は、武御雷Type-Rに搭載されるFE-108-FHI227と見分けが付かない事も幸いしました。

予測通り、色とコールサインだけで、ワタクシ達が入れ替わったことに誰も気付きませんでした。」

「なんと・・・。そのような手管まで用意して居ったとは・・・。」

「当初は先に申した様に、光線級のレーザー耐性向上とブレードエッジの防汚を意図したもので在ったようです。
加えて数が揃わないうちに決行せざるを得ない喀什で、貴重なG-コア持ちの戦術機を使えないことは避けたい、とのこと。
冥夜が駆るなら御剣の家格からして“白”とする意図が在ったようですが、もう暴露してしまいましたから。
冥夜を影武者というよりもワタクシの名代として、“紫”で赴いて貰おうと考えています。」

「・・・なるほどねぇ。
疑義が晴れた後なら有間が陛下に何を聞いたかも確認できるから、節刀も前もって用意出来た訳か。」

「流石にそれは・・・。
朝方第2帝都城を辞す挨拶の折り陛下より情報は得ましたが、拝領した節刀は帝都城にありますゆえ、彼方がXSSTに置いてあった似たもの[●●●●]で済ませました。」

「・・・証明は“銘”だけで済んだとはいえ、所詮見る目も持たなかった訳か・・・」

「・・・。」

「殿下、有間のことは・・・?」

「ええ、―――先ほど聞き及んで居ります。
・・・人格が乖離し、もはや復帰が望めないことも。

しかし此度の仕儀、有間一人のことではありません。
喪われた人々、そしてそれに連なる今なお生きている人々にも同じように悲惨な、あるいはそれ以上に残酷な境遇にあった方も大勢居ります
そしてそれでも強く明るく生きている方もいる。

本来それを奪ったのはBETA。
また彼の心を毀したのもBETA。

けれど・・・弱かったのです、彼は・・・。
何よりもその精神が。

―――そう思い、納得することとしました。


何かに依存することでしか、自らの生を実感出来なかった。
そして、それを喪うと、誰かを恨むことでしか精神を保つことが出来なかった。
だから怨嗟を本来向けるべきBETAにではなく、恨みやすい人に向けてしまった。

その隙を九條周辺に付け込まれたのでしょう。

後催眠暗示こそありませんでしたが、効き目の強い向精神薬を多用していたことも判じているとのこと・・・。
彼の怨嗟が増幅するように仕向けていたのでしょう。

彼の境遇は仁恕すべきでしょが、その行いにより更に同胞を悲劇に巻き込む斯様な仕儀は許されないのです。
軍人である我らは、勁く在らなければならぬのです。
体も、―――そして心も。」

「「「・・・御意。」」」


弱き者でも、それは殿下の臣民。
思うことは幾多あろうが、より弱き民草を守るべき軍人として割り切るしか無い。
為政者、或いは指揮官として厳然と対処すべき事柄である。




「・・・で、そんだけのことを仕組んだ張本人は、何処に?」

重くなりかけた空気を切り替えるように白銀が尋ねた。

「関係者のほぼ全員が此処新潟に居るのです。
斯衛軍1連隊分を含め横浜のA-0部隊すら全てBETA防衛に当たった今、尤も手薄なのは横浜基地か、さもなくば帝都。
・・・そう仰って早々に戻られました。」

「「「「 !! 」」」」

「此方に到着する直前には、連合艦隊の艦砲砲撃に因り佐渡島地表の光線属種が殲滅されましたので、悠々と最大戦速で。
遠征の期間に横浜でG-コア化を進めていたXJF Evolution4や試作品を取りに行くと。」

「成程―――。彼方をXFJ Evolution4に乗せれば、大方の事は軽く抑えそうだ。」


帝都の現状に全員が一時緊張したものの、あ奴が逸早く戻ったと聞いてそれを解いた。

・・・何故だろう?
極めて謀略に近しいことをしているにも拘らず、このような“裏”仕事に関しては妙な安心感を覚える。
黒い、流石黒い。
ユーコンで付けられたという“漆黒の殲滅者[ダーク・アニヒレーター]”なる二つ名を聞いたときに、思わず納得してしまったのは私だけではあるまい。




「ところで殿下、冥夜のこと、公表してしまって宜しかったんですか?」

先程から恐縮しきったように隣で畏まる御剣訓練兵を気遣うように更に白銀が尋ねた。
実質的にA-0大隊に配されているとは言え、未だ正式な任官もされていない訓練兵の立場で、この場に居る。
殿下は訓練兵に向き直り真っ直ぐな視線を向ける。


「―――冥夜、ワタクシは嬉しかったのです。
そなたの、有馬への説得を聞いて確信致しました。
そなたの心は、常にワタクシと共に在る、―――と。」

「!、―――勿体無きお言葉「冥夜、斯様な謙遜は必要ありませぬ。此処に居られるのは、謂わば全て“身内”。白銀や純夏の様に楽になさい。」・・・・は、しかし・・・。」

「良いのです。
―――今朝方までワタクシが第2帝都城に在ったことは厳然たる事実。
なにより証人が皇帝陛下その人ですから詐称するわけには参らないのです。
今回こそ上手く入れ替わりましたが、ワタクシに影武者が存在する事実は既に覆しようがないのです。
・・・であれば、影武者がワタクシの信に足る者だという内実を公表し、ワタクシと共に在る者と公言してしまった方が今後の益になると判断いたしました。
無理に隠そうとするから、利用されるのです。
よくよく考えれば、既に戸籍上双子でもありませんので、共に居たところで煌武院家の禁忌にも当たらない。」

「・・・あ、・・・殿下・・・。」

「―――冥夜、・・・姉上、とは呼んでくれぬのですか?」

「え、あ・・・。」

「公の席ではどうあれ、今は事情を知る者しか居らぬ席。」

「あ、・・・斯様にお呼びしても宜しいのですか?」

「・・・そなたにはこれまで言葉には言い尽くせぬ多大な苦労を掛けました。
謝ることはそなたの矜持に悖る事ゆえ致しませぬが、ワタクシも心痛めて居りました。
―――そして、まだまだ面倒を掛けることになるやも知れません。
けれど、今からはそなたが一人で悩むことはないのです。
・・・ワタクシと共に在って貰えますか?」

「あ、・・・姉上ッ!!」


しばし寄り添う二人。
暖かな沈黙がそこには在った。





「しかし城代省当たりが難癖つけて来ませんか?」

「―――なんとでも。」

やがて居住まいを正した二人。
危惧した斉御司中佐に飄然と応える殿下。

「既に明日の大権奉還は揺るぎません。
即日、“粛清”を実施し、“高天原”も公表します。
城代省すら、冥夜のことなど何も言えなくなる程の激震に見舞われるでしょう。
鎧衣より冥夜の事を排除しようと意見していた者こそが米国CIAと繋がっていた証拠も掴んで居ります。
国連横浜軍は世間的には米軍親派と見做されておりますが、内実は真逆。
冥夜を闇に引き込む事で逆にCIAが拐取、正しく傀儡に仕立て上げる謀略でも練っていたのでしょう。

此度の仕儀、対応等取らせぬまま、本年中に喀什を陥落せしめ、更に佐渡島を奪還するのです。

ワタクシは残念ながら同道できませぬが、冥夜は恐らくその実行部隊。
ワタクシの名代として“紫”を派遣すれば、城代省とて一切の文句は言わせませぬ。」

「「「・・・。」」」

「・・・更に年が明ければ拡大婚姻法が発効し、純夏と共に“白銀の雷閃”白銀の妻とも成る冥夜。」

「えッ!?」

「・・・今公にしたところで何の問題が在りましょう?」

「ウワァァァ、吹っ切っちゃったよ、この方!」


殿下の宣言に、真っ赤になって俯く御剣訓練兵と温かい眼差しの周囲。


「―――帝国の磐石はワタクシが担います。
オリジナルハイヴ攻略と佐渡島奪還は、そなたらに架かっています。

―――然と任せましたよ―――。」

「「「「「「「 御意ッ 」」」」」」」



「―――そして月詠真那中尉。」

「はッ。」

「冥夜はこれまでより重要な立ち位置となります故、第19独立警護小隊は冥夜任官後も引き続き国連太平洋方面第11軍A-0大隊に兼務とします。
香月女史とも話は通って居りますので、A-00中隊フレイヤ小隊とし、その警護に当たりなさい。」

「はッ!」

傅いて命を拝領する真那に微笑み、そして殿下は皆を見回した。

「―――では、帝都に凱旋いたしましょう。」


殿下の明るい声が徹る。

まだまだ遣ることは山積。
決して楽な道程ではない。
それでも今はその未来が信じられる。













「・・・時に真耶。」

散会になり皆がそれぞれの部隊に散った折、この場の片付けに残っていた真那がボソっと呟いた。

「・・・殿下のあの[●●]突き抜け様、・・・何か在ったか?」

「・・・知らぬ。」

「・・・・・・。」

斜に流す視線に、口元を僅かに釣り上げる。

「・・・唯、一昨日の朝よりお固い侍従長も居らぬ地で、実質2昼夜[●●●]共に在ったのだ。
狙いを定めた[●●●●●●] 殿下がどの様な手管に至ったか・・・、私は関知していない。」

「!・・・。」


納得顔で離れる真那を、私は笑を浮かべたまま見送るのみ―――。



Sideout




※あとがき?
 永らく文章を綴る事と離れていたにも拘らず拙作を応援していただいてありがとうございます。
 感想や誤字報告も読ませて頂き、参考にさせてもらっています事、この場で御礼を申し上げます。

(この部分は問題が解決されたので削除しました)




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