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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/08/21 18:44
'15,01,04 upload  ※色々突っ込み所満載ですが^^;
'15,08,21 誤字修正


Side 狭霧尚哉(帝国本土防衛軍大尉 帝都防衛第1師団第1戦術機甲連隊隊長)


「・・・行くぞ。この国の未来に我らの命を以て血道を拓く!」

網膜投影に映る同志29人の一人ひとりを見回す。
その表情は誰もが決意に満ち、この期に及んで臆するものなど一人もいない。
帝都に低空飛行する帝国軍671航空輸送隊に属するAn-225 ムリーヤ、その数15機。
戦術機を満載[フルロード]したカーゴが開かれる。


「―――降下、開始ッ!」


指示しつつ自らも輸送機の進路を妨げぬよう後方に落下し、纏わり付く朝靄を引き裂く。
BETA新潟侵攻の事が既に伝わっているのだろう、帝都全体が微かに鳴動しているようにも感じる。

通常時なら周辺上空を通過することすら禁止されている帝都城周辺も、デフコン2発令に伴うBETA迎撃準備に、直上を除き飛行が許可されていた。
勿論、それでもこの地域での戦術機降下は厳重な禁則事項だが、一度飛び出してしまえば僅か十数秒。
障害は無い・・・筈であった。
大隊30機が降下開始するとともに、絶妙の推進噴射で決められたポジションに散ろうとした時、唐突に警告が鳴った。

ッ?、ロックオンアラート!?

「全機ッ、散開[ブレイク]!!」

光線属種のレーザー警報ではない。
厚木からの低空侵入、佐渡からも大陸からも光線属種に捕捉される高度ではない。
対戦術機戦に於ける、ミサイルアラート。
相手のレーダー捕捉に、全隊30騎がマルチロックオンされている。
断続的な警戒音は、徐々にその間隔が短かくなる。

飛行しているムリーヤには反応しなかった所を見ると、降下する標的に絞ったものと見える。
まさかこのBETA侵攻時に帝都城周辺は兎も角、首相官邸に対戦術機対空防衛網が存在するのか?
そんな情報は得て居ないが・・・。

疑問を持ちつつも僚機がロックオンを切るために目標座標を外れていく。
脅しではない事を示すように、数条の噴射煙が擦過し、辛うじて射線を躱した僚機の脇を駆け抜けていく。
戦闘機よりも急峻な機動が出来る故、上手く躱せば追尾は振り切れるが、そもそもの速度差が著しい。
肉眼では捉えきれない遠方から音速の数倍で飛来するミサイルを躱し続けるは至難。
想定外の障害に歯噛みつつ、殆ど連続音となったロックオンアラートに垂直のバレルロールを敢行。2条の噴射煙が描く螺旋の間隙を縫うように、正面突破する。

その時網膜投影の視界に隅に一瞬捉えた機体。

あれは・・・。


首相官邸の屋上ヘリポートに佇む、白とブルーのカラーリング。
特徴的な肩部推進器スラスター。

―――試製XFJ-01ッ!?

咄嗟に回避機動のまま側腕を展開し、無照準の威嚇射撃を試みるが、視界を一条の光条が駆け抜け、側腕ごと突撃砲が持って行かれた。


クッ。

ミサイルは警告、視界に居る限りその気[●●●]であれば何時でも撃ち抜ける、と言うことか。

―――だが、しかし。
問答無用に殲滅する気はないらしい。
ならば、まだ対応策は、ある!

ミサイルアラートを無視し、周辺に散開していく同志を無視して単騎官邸に突っ込んだ。






遡る05:50―――

 突如発令されたCode991。
 朝もまだ明けやらぬその時、けたたましいサイレンで叩き起された。
 スピーカーが佐渡島から旅団級以上の汪溢BETAが本土を目指している、と興奮気味にがなる。
即時新潟地区はデフコン1、隣接地域はデフコン2、そして暫し後、今後の進路に当たると目される帝都を含む関東圏も同じくデフコン2に引き上げられた。
 予てから噂のあった新潟侵攻。
小規模のものは散発していたが大規模侵攻は久々である。
今回の規模についてまだ情報はないが、現時点で上陸はしておらず、関東からの距離は遠い。
基本的に新潟は方面隊が対処することになろうし、早急に騒ぐほどのことも・・・、と考えたところで漸く覚醒してきた脳裏に閃くものがあった。

 ―――新潟といえば、新OSであるXM3の実戦証明を兼ね、煌武院悠陽殿下が斯衛大隊を率いて参加しているのではないか!

 この侵攻が、殿下にとって僥倖なのか奇禍なのか、今の時点で俗人に測り知ることは出来ぬ。
しかし視察として赴いた新潟実弾演習の最中。
斯衛の戦力もある程度揃っている今、民を護りたいと願う殿下に取っては、またとない機会なのかも知れなかった。
 何れにせよ帝都も同時にデフコン2に移行と言うことは、帝国本土防衛軍帝都防衛第1師団も即座に基地召集され帝都防衛軍として各拠点に待機となる。

 ・・・色々な情報収集は、すべきであろう。
 そう黙考し、幾つかの拠点に秘匿通信を送った。



 ブリーフィングルームに着くと、第1戦術機甲連隊の各中隊長は既に揃っていた。
皆の視線は、モニターに集中している。

―――現在までの湧出数は大中型種で14,000超、尚も継続中―――

という報が流れると各所で小さな悲鳴が上がる。
―――総数20,000越えは、今までにない大規模侵攻。
意識の片隅を嫌な翳りが過る。

新潟当地に現在展開している部隊は、正規の方面隊である帝国軍第12師団より戦術機甲部隊1個連隊分+機甲部隊2個大隊分。
加えて実弾演習に参加していた帝国斯衛軍第2連隊から2個大隊、そして第16斯衛大隊の、計1個連隊分。
更に国連横浜軍のA-0大隊から2個中隊分に欠ける19騎。
総計、戦術機が235騎、戦車・自走砲が72輌。
・・・これは―――過去のキルレートから鑑みても相当に厳しい状況が予想される。

せめてバックアップの第14連隊が間に合えば良いが、それを以てしても20,000超となるとかなりの高確率で新潟を抜かれる。
即ち帝都防衛戦を前提に、配備を決める必要が生じている。

現在判っている情報を元に、首都防衛圏を構築するブリーフィングが始まった。






そして06:52―――

師団級BETA群の先頭が本土上陸開始。
第1戦術機甲連隊も帝都守備連隊として既に配備されている展開エリアへの追加配置を定め、出撃準備の最中であった。
厚木基地全体が慌ただしい喧騒に包まれる中、しかし新潟より届けられる報は目を見張るばかり。

それは快挙―――。快挙に継ぐ快挙。

基地全体が何度もどよめいた。


それは偶然[●●]付近を航行中であった連合艦隊による電子機器を休眠させての接近と手動艦砲射撃に依る佐渡ヶ島本島光線属種の殲滅に始まる。
それにより海上の自由を得た機動艦隊は海底を進むBETA群への魚雷攻撃を敢行、光線属種を優先的に排除するという多大な成果を上げ、第1波上陸における制空権を確保せしめた。
更に海岸に陣を敷いた戦車や自走砲隊が上陸するBETAから大型種の優先的な排除に成功。
そして上陸した残存第一波は、戦術機甲部隊が巧みに誘引し、内陸に敷いたS-11シフトによって一気に殲滅するまで僅か30分弱―――。
艦隊に依る成果と合わせれば既に10,000を越えるBETAを屠って尚、未だ友軍の損害0。

その余りの偉業に、背筋が粟立つのが止まらない。

一体現地では如何になっているのか。
文字情報だけでは判別のし様もないが、何か[●●]が起きていることには相違ない。


無論、状況はまだまだ予断は許されない。
観測に依る汪溢BETA総数は最終的に20,000に達し、佐渡島からの侵攻としては過去最大。
連合艦隊の艦砲射撃と機動艦隊の魚雷や機雷攻撃で3,000近い成果を上げ7,000を超える第1波を撃破しているとはいえ、まだ10,000の第2波が今も侵攻している。
対する防衛戦線は、機動艦隊が既に撤退している。
恐らくは備蓄の魚雷を撃ち尽くしたことによるものと推測され、これより第2波には光線属種が数多く残存していることであろう。
当然陸上で迎撃する部隊も消耗していると考えられることから、実際にはここからが正念場と言える。

しかし何れにしても、流石は殿下直々の御采配と感銘せざるを得ない。
この状況でさえ殿下であれば、何とかしてしまう気もする。
視察先偶然の迎撃にしてこの成果は、何よりも殿下の政威大将軍たる御威光を示すもの。
今後を計慮するに歓迎すべき事である。


そうして畏敬の念を新たにしているところに、その極秘連絡はあった。




―――それまでの高揚が急激に醒める。
紙を持つ指の震えを抑えることが出来ない。

発信源は来る決起に向け、何かと支援を頂いている本土防衛軍の高官からであった。


【新潟現地に在る殿下は贋物、且つ国連横浜軍傀儡の可能性大。
 殿下御本人は昨晩の時点で第2帝都城下に滞在。
 現在も城内に居られると思われるが、今朝方第2帝都城外にて身元不明の若い男女の遺体発見情報もあり。
 継続確認中】


唇を噛む。
鉄の味が広がる。


―――まさか、この為の、 撒き餌[ XM3]かっ!


赤く染まる視界を一度閉じ、爆発しそうな感情を無理矢理に抑えつける。






ふ~~~ッ。

深く長い調息。一度ではなく、何度も繰り返す。
漸く一旦落ち着けて再度思索を巡らせる。



・・・情報提供者は、[]の重要な協力者であり、信頼度の低い情報はよこさないだろう。
もう一度文面を確かめる。

第2帝都城下・・・仙台。
そう、拠りにも拠って仙台、なのだ。




事の発端は、殿下が依頼したとの噂のXM3である。
その性能は確かなもので、自分自身啓蒙の至り、従来のOSとは一線を画すのは明白。
そして性能が高かったが故に実戦検証として新潟侵攻を想定したJIVES訓練が設定され、新人衛士の訓練ということで斯衛からも参加が決まり、殿下のご視察との流れ、となった。
新人の経験不足は、今回参加の帝国軍方面隊や斯衛に限ったことではなく、我ら本土防衛隊でも深刻な事態であるため、その流れ自体に何ら疑問を挟む余地はない。
確かに、斯衛軍がほぼ1連隊規模を動かした時には瞠目もしたが、元々第2連隊は殿下警護が任であり第16斯衛大隊が精鋭遊撃部隊であればその遠征も納得できた。

だが、逆に言えばそれは殿下麾下で最も信の厚い1連隊とも言える。
納得が行かなかったのは第2帝都城の守護司辺りだろうか。
普段政治から距離を置く陛下には無為に殿下を呼び出す事をしない。
全件を委任された殿下もまた滅多なことでは仙台を訪れない。
しかし何かと訝しい帰来の在る仙台周辺の官吏に唆されれば守護司とて殿下の真意確認に至るのに無理はない。
陛下とて、米国には何かと懸念をお持ちのご様子、今回の遠征が米国先鋒とも噂される国連横浜軍すら同道とあれば、その真意を質すのに異論は挟まぬ可能性が高い。

そして陛下よりの招聘があれば、当然本来なら演習自体が中止乃至延期となるであろう。


しかし何故か、演習は強行された。

更にその強行が殿下ご自身の意志である可能性も高い。
偽物である影武者を斯衛が、少なくとも最上層部は黙認している事から察せられる。

つまり殿下には強行する理由があり、影武者を立ててまで演習を実施する必要があった、ということになる。
合同演習は、申し入れ初期に米国寄りの官吏官僚から結構な難癖が付いたとも聞く。
しかしそれとて延期してしまえば良いだけの話で、この時期に拘る必要は、その時点[●●●●]では無いはず。


―――時期に拘る必要があるとすれば、ただ一つ、此度の新潟大侵攻―――。

・・・つまりは予期していた、としか思えない。

方面隊だけでこの規模の侵攻が在ったとしたら、どれだけの被害が出、どこまで侵攻を許したか想像もしたくない。
最悪帝国そのものの崩壊、少なくとも帝都決壊の瀬戸際に在ったことは間違いない規模。

それが、何故かそこに居た連合艦隊。
斯衛の精鋭を含む1連隊。
単騎世界最高戦力を含む国連横浜軍。

故に今の快挙が在ることは紛れもない事実。
殿下なら、影武者を立ててでも演習[●●]を決行するだろう。



だが、それこそが・・・、殿下を仙台[●●]に呼び出し、影武者と入れ替えることが真の目的であったとしたら?


性能の良いOSが提供出来、新潟侵攻の予測が可能と思われる人物、そして影武者の用意までして在るとなれば、その全てが可能なのは、“横浜”―――。
BETA情報を探っていると噂の“雌狐”しか居ない。
そしてその“雌狐”を擁立し、横浜に居座らせ、米国に媚びを売る現政権ッ!

万が一、このまま影武者を殿下として侵攻を防衛してしまったら、本物の殿下が御帰還出来なかったとしても、それにより生じる混乱、斯衛・帝国軍の激烈な士気低下を鑑みれば、殿下周囲の斯衛上層部はそのまま贋物を“殿下”として立てざるを得ない。
たとえ仮初とはいえ“殿下”のご威光に代わりはなく、その実現政権や米軍の攻勢と饗応し、更なる米国傾注を進める事ができる。
それこそが帝国を乗っとらんと欲する敵性勢力の望む状況。


現状殿下のご無事は不明。
遺体発見の報も在ったが、傀儡影武者へのすり替えが目的なら、ご遺体を晒す意味はなく、何らかの誤報と考えるほうが妥当。
第2帝都城内に在れば、今はご無事でも周囲を封じられている様なもの。
影武者を立てて居るのであれば、恐らくは護衛も最小限。
極秘故に人目を偲んで戦地に戻る際を狙われたら・・・。
想定したくない状況であってもその可能性は高い。


元々皇帝陛下のお膝元であり、逆に殿下のご威光は薄く、直衛の部隊が存在しない仙台は傀儡にとって何かと都合が良い。
魑魅魍魎が巣食っている可能性が極めて高い。

殿下の身柄を確保されてしまえば、万事が終わる。
現在計画中の決起においても、如何に殿下の身柄を確保するのか腐心しているのだから。


―――痛恨の一失。





―――では、現在の状況に於いて、我らの目的に対し如何に行動するのが最も理に叶うのか?

本来我々の目的は、この国から米国の影響を廃し、殿下執政の正道に立ち返ること、その一点に尽きる。
その為には大権を恣にする現政権の誅殺は必須。
権力の中枢を奪取することが目的ではなく、それを殿下に献上することで大権奉還を為す、そのための計画である。


考えたくはないが、既に殿下が亡き者とされ、我らが遅きに失していた場合―――。

先の考察から贋物は傀儡一択である。
それに連なる国連軍、米国から元凶である現政権までが絡み、今後状況は混沌とするだろう。
新潟防衛が成功すれば米国傾倒が強まり、失敗となればその混乱には更に拍車がかかる。


我等の希望の星が墜ちているのであれば、今為すことはその無念を晴らし、そして殿下に殉ずるのみ。
この機を逸しては、斯様な状況を招いた元凶たる国賊を一掃する機会は皆無とも思える。
後に建つだろう新たな政権は一時的に米国に寄る可能性は否めないが、抑々国連の計画を誘致した現政権が斃れれば、横浜も追って瓦解する事が期待できる。
当然混乱を生じることは間違いないが、殿下に殉ずる身であれば、後は残るものに任せるより無い。



一方、殿下が御存命の場合はどうか―――。

その場合でも、第2帝都城内に在らせられることは確かであり、その身が傀儡に確保される前に、真実を明らかにする事こそが肝要。
大権に執着し、米国の傀儡たる現政権の制誅は一刻を争い、その排除こそが殿下のご無事へと通じる。
横浜への掣肘は叶わぬまでも、元凶を断てばその伝手を失い、更なる陰謀は仕掛け難い。


何れにしても、今を除き一矢報いる機会はない。



決起に伴う国家騒乱の科により我々は何れ制圧され、よしんば生き残っても獄死は免れぬだろうが、それも本望。
同道一月と経たぬ裡に決起する予定であった。
それが今更10日、20日永らえたところで何に変わりもせぬ。
来月には空母を含む第7艦隊が日本近海で演習する事が予定されているらしい。
影武者の成り済ましをこのまま看過すれば御存命だとしても更に殿下は危うく、予定通り決起したところで我々の決起に呼応し、何らかの具体的直接行動に至る可能性も高い。



Code991により現閣僚が集合して居り、且つ第3者の介入に先んじる[]は最後の機会と言える。
現在帝都の警備含めBETAに全ての視線が向いており、斯衛の主要部隊さえが相当数当地に赴いているため帝都内の斯衛は手薄。
予定している大規模な戦闘や制圧は、万全を期すための止むに止まれぬ仕儀であり、事後もBETAに対する任を持つ友軍を相手取る事となるため、可能であれば避けたい。

首都防衛隊として、手薄な帝都城周辺に追加配備を先刻決めたばかり。
我が大隊は準備が整い次第、空挺降下にて帝都に赴く。
ならば、より成功率が高く、無益な友軍との衝突も回避できると言う物。
無用な騒乱を招くこと無く、その元凶中枢のみを葬り去る電撃強襲が最も目的に叶う。

無論此方の準備も途上ではあるが、7割方は済ましている。
しかも当面動くのは一握り。
一気呵成こそ成否の鍵・・・。


殿下ご存命に一縷の望みを賭け――――乾坤一擲――。




永く瞑目した後、そして傍らに告げる。

「・・・駒木」
「は。」
「・・・この機に乗じ、第1戦術機甲連隊バンディット大隊単独で、空挺強襲を掛ける。」
「!ッ・・・は。」
「全同志には、煌武院悠陽殿下が無事帝都に御帰還できるよう、BETA侵攻の帝都防衛を第一義に行動するように通達。
国賊を誅殺し、且つBETA殲滅が成った時点で制圧した官邸から声明放送を行うので、それまでは各部隊にて雌伏するように伝えてくれ。」
「・・・・・・了解致しました。・・・た、大尉・・・。」
「・・・。」
「ご無事で・・・、いえ、見事本懐を遂げられることを・・・。」
「・・・まだ死ねぬよ。殿下大権奉還の勅言を戴くまでは、な。」


第1戦術機甲連隊のすべてを同志に引き込めた訳ではない。
それでも、直轄するバンディット大隊のメンバーは全て同じ理想に生命を賭けてくれる。
連隊長の権限で動きやすいよう、同志をある程度同じ部隊に集め、その他は決起の際の撹乱に部隊内均等に散らした。
降下後、一気に国賊を誅し内閣の制圧が成れば、状況に応じ駒木の率いる他大隊や他部隊の同志と連携しつつ、声明を出せる。
決起[]てば賛同してくれる者も多いはず。

―――国賊を排し殿下に大権を奉じる。

成れば帝国軍全体の賛同も得られる可能性は0ではない。
事態が終息したとき謀反の咎を背負う事になる者は少ないほうが良い。




そう胆を決した08:15―――


既に空挺団輸送機の内部、15機の輸送機に29人の同志が不知火に搭乗し待機している。
500m程度の低空、光線属種の照射も届くことはない。
出撃に先立ち、同志たちとは密かに別れの水杯も交わした。
強襲する中隊メンバーは、生きてまた此処に還る気は無い。


先刻認めた最期の手紙を基地整備士に託し、残っていた一握の未練も断ち切った。

帝国軍を嫌った[]も、国連横浜軍であったな・・・。
現政権が倒れしこの後、誘致された国連の極秘計画がどの様に変遷していくのか、与り知らぬ事ではある。
願わくば幸多からんことを希求するのみ。

そして此処に来て、光州以来流離ってきた魂が、漸く自らの逝く末を見出したような安堵すら覚える。
嘗て、師父とも慕った中将を国際世論の[]とした現政権への私怨も晴らせる。





―――その時、唐突に広域データリンクが繋がり、網膜投影に窓が開き景色が映し出された。
片隅に第14師団第3戦術機甲連隊第3大隊長の文字。
・・・これは、何度も戦略研究会に参加してもらった有間長門大尉の機体カメラ映像か?

そしてその目前には、紫紺[●●]の武御雷。

「!な・・・?」

刹那。
ザリッ!っと長刀が地面を抉る。
咄嗟に回避したその“紫”の武御雷を、追撃しようとした“彼”の視界に入る“赤”。

―――ギャリンッ!!

一合。

“赤”の武御雷に庇われ、既に“紫”は後方跳躍で離れた。


・・・成程、コイツが傀儡、か・・・。

確か有間大尉は、横浜に強い隔意、いや、寧ろ密かに激烈な憎悪を抱いていらした。
故に理想を掲げた我らには迎合できぬと言い、同志にはならなかった。
しかし今となっては、その意志が正しかった様に思える。

遠き地に在る唯我等は静観するのみ。
自分の信念に従って偽物を糺そうとするその行動は崇高に思えた。
有間大尉は元々第2帝都城周辺の警護に当たっていたはず。何らかの確証を得ているのか。
そして横浜の傀儡を屠れば、米国と繋がる横浜の出鼻も挫けると言うことか。
それとも、大尉自身の言うように私怨その物か。

・・・そう思い至り、苦笑する。

―――密かに私怨を抱く自分と何が違うのか、と。


それでも、我等は国賊の誅殺に専心するのみ。
さすれば榊の誘致した横浜の計画もいずれ瓦解する。


決行まで僅かな時間の道連れとして、経緯を見守らせてもらおう。






その結末が付かぬ、08:25―――
傀儡という影武者の言葉に引っ掛かるものを感じつつ。

我々は空挺降下を決行し―――。
そして今、首相官邸の屋上ヘリポートで、国連カラーの試製XFJ-01と対峙していた。



今も間欠的なミサイルアラートは消えていない。
同志は周囲のビル街に散り、取り敢えずはロックオンを振り切ったらしいが、官邸に射線を取れる位置に出ると再びロックオンされるらしく、建物の死角に釘付けになっている。
発射装置を特定しようにも、位相情報が錯綜し、レーダーの発信位置を特定できない。
一体何基設置されていると言うのか。
待機を指示したにも拘らず、命令無視して吶喊した09。
しかし降下中とは異なり、直後複数の小型ミサイルが四方から飛来した。
初弾を回避した09の逃げ場を尽く塞ぐ絶妙な偏差攻撃は、狙いすまして09の手足をもぎ、瞬く間に無力化してしまった。
既存のシステムに比肩し威力は小さいものの、その誘導性能が桁違いに高い。


・・・やはり自分の存在以外、複数戦術機の官邸への接近を許容する気はないと言うことだ。

元々8騎にて官邸を包囲し、残りは強化装備で突入、直接全閣僚をこの手に掛ける事を目論んでいた。
残る29騎全機が同時に吶喊すれば突破も可能であろうが、それでは目的の確実な誅殺には程遠い。
ここにXFJ-01が在る以上、既に突入に対しても対処されている可能性が高い。

まだ先行配備すら始まっていない試製でありながら国連カラー。
で、あれば相手は自ずと知れる。
機密事項により明示はされていないが、少なくとも件の白銀少佐が新潟で多大な戦果を上げた以上、ここにいるのはAH戦でラプターを蹂躙したと言う、御子神大佐であろう。、


もとより目前に佇むこのXFJ-01、纏う気配が尋常ではない。
1個大隊の戦術機を前に、静謐なる深淵に張る鏡の如き水面―――。


F-22Aのステルスすら封殺してみせたという相手である。
先の09撃墜を見るに、相当な性能を有するどこかに設置されたミサイル群。
そして、このXFJ-01が相手では、単騎といえ此方も甚大な被害を被る可能性が高い。
・・・そういえばこの御方[●●●●]は、ラプターも手足をもぎったという噂があったな・・・。



「・・・何故、御身が鬼畜米国に与し、国賊たる現政権を護るのですか?
今こそ、米国の傀儡を排し、殿下の正道を拓く好機、道を開けて頂きたい・・・」

『・・・成程、状況も此方の事も察しがついているか。話が早くて助かる。
―――簡単に言えば、榊首相の不在[●●]が殿下正道への障害[●●]となるから。』

「なッ!?―――――、馬鹿なッ!、大権に固執する榊が何故ッ!?」

『世間的にそう思わせていた方が、殿下に非難が向かない。
色々思索して此処に起ったんだろうが・・・あんたのミスは榊首相が殿下の真の臣下[●●●●]である、と言う可能性を一切考慮しなかった事だ。』

「な・・・・に・・?」

『・・・無意識か、意図的にかは知らんが、な。』


愕然とする。
自分たちの目指していた道を真っ向から否定され、頭が真っ白になった。

現政権をたおす事が、殿下正道への障害?
榊首相が真の臣下[●●●●]
自らが非難を浴びることで、殿下をお護りしていた?

馬鹿な・・・馬鹿な、・・・馬鹿なッ!

感情が否定する。
しかし理性はその可能性を示唆する。



『そろそろ、か・・・。広域データリンクに映っているだろう? 傾注したらどうだ?』

そう言われて、ふと気づく。

網膜投影の片隅にあった有間大尉の戦術機映像では、再び“紫”に襲いかかる機動。
その裂帛の斬撃、しかし“紫”は大尉のカメラから忽然と消える。
転回した視界に“紫”と“赤”が立ち上がり、更に“赤”が立ち塞がった。

激昂する大尉、しかしその声に先ほどまでの崇高感がない。
寧ろ妄執に憑かれたかのような、粘着感―――。

そして武御雷のハッチが開き、件の影武者が姿を顕した。



「な―――!?」

その姿は、どう見ても煌武院悠陽殿下その人としか見えなかった。

ざわざわと戸惑うのは現場も同じ。


更に相手を誹謗した有間大尉が一刀の元に無力化された。
ガクンと視界が下がり、半ばまで断ち切られたコックピットから有間大尉が転がり落ちる。
固唾を飲んで見入るしか無い。


殿下と思しき厳しい叱責にそれでも尚、言い縋る有間大尉。
殿下本人であると言う証明に、政威大将軍に任じられて以来公表されていない“節刀”を示せと有間大尉が迫る。

・・・それは皮肉にも、既に私怨と公憤を履き違えた男の末路にも見えた。


“紫”の武御雷のハッチに立つ“殿下”は、一度その睫毛を伏せ、そして遠く見透すかの如き紫紺の瞳を真っ直ぐにこちら[●●●]に向けた。









網膜投影には勝ち誇ったように哄笑する男と、凛然と気高くそこに在る存在。

『それを知らない以じょ『短刀、銘“左”、号“太閤左文字”』・・・・はぁ!?』

その応えに驚愕したのは、地べたに映る有間だけではない。

“殿下”を守護していた周囲の斯衛たちのみ成らず、固唾を呑んで事態の成り行きに傾注していた事情を知る者全てが、自ずと目を見開き、網膜投影に映るそのかんばせを確かめていた。

だが、先の視線に射ぬかれた自分には当然の帰結に思えた。


『・・・此処に御座います。
政威大将軍認証の折、女性に因り短刀の方が宜しかろうと、陛下より拝領致しました国宝級の業物。』

『・・・・・え・・・・・、あ?・・あ・・あ!・・・・・。』


殿下[●●]の切れ長の瞳が冴えた光りを放つ。

典雅な拵、鯉口を切って抜刀した。
明るく冴える僅かに反った刀身、波紋はのたれて互の目を描く。網膜投影の画像越しであったが、その短刀の纏う霊光の様な雰囲気が、稀代の業物であることを顕す。
銘“左”と言えば、筑前の国、実阿の子と伝えられる刀工で、相州正宗の十哲が一人とも言われているはず・・・。号“太閤左文字”はその作中でも最高傑作と言われ、正しく国宝級、太閤秀吉の愛刀でもあった一振り。

『・・・その方に刀剣の真贋が判るか知りませぬが・・・
――更には、BETA大禍の明けた年初の定例報告会の後、もう一振りの“節刀”も拝領しております。』

『な?』


コックピットの収納スペースに納めてあった羅紗に包まれた刀。
その瀟洒な纏を解き、スラリと鍔を切れば、余りに特徴的なその鋒。
なかごと刀身は緩やかな反りを有するも、鋒両刃造[きっさきもろはづくり]と呼ばれる、刀身の先端から半ば以上が両刃となる刀。

小烏丸―――。

皇帝陛下自身が有事の際の指揮刀として傍に置いていたという伝説の一振り。
京都からの撤退の折りもお側に置いたと言われる。
“殿下”はその指揮刀を真っ直ぐに有間に向けた。


『!、小烏丸ッ!?』

『・・・その方が用意した答えは、此処に在る何れの刀でもない、と申しますか?
その方の私怨に曇った眼は、業物の真贋さえ判別出来はせぬでしょうが。』

『・・・・・・・・そんな・・・馬鹿な・・・? 貴様・・・い、いや 御身は・・・・・・・』

有間の様子がおかしい。
眼球が左右別々に動き、白目と黒目がデタラメに入れ替わる。

『・・・何故、その示唆こそが、妄言と気がつかないのですか?
――――蒙昧も大概になさいッ!』

『・・・・・・。』

完全に自失した有間は既に声もない。

更に・・・。

『・・・・メイヤ・・・』

『・・・はッ』

『――此方へ。』


広域リンク画面に映される〈Zois-01〉の後ろに控えていた“赤”の武御雷が近づく。
先刻、〈Mauler-01〉の刃を見切り〈Zois-01〉を絶妙のタイミングで護った機体で在ったはず。
コールサインは・・・・〈Thor-02〉・・・〈Thor-02〉ッ!?
〈Thor-01〉は参加情報に在った白銀少佐のコールサインの筈、その次席?

そして、促されるまま、“赤”の武御雷のハッチに姿を表したのは、フレームに白と青を基調とした国連軍仕様衛士強化装備に身を包み、紫の長い髪を後ろに結い上げた姿。


・・・確かに似ている。
―――が、その疑惑の者をこうして衆目に晒している以上、〈Zois-01〉が本物[●●]の煌武院悠陽殿下であることは、確固たる事実だと言うことだ。

成程、昨日は第2帝都城下に在ったとしても、包囲の網さえ抜けられれば新潟に入ることはいくらでも出来ると言うことか。


『――此処に在る者は、確かに国連横浜基地に籍を置く、御剣冥夜なる煌武院家縁の者・・・。
けれど、それは飽くまで家の事情で分たれた戸籍上での関係であり、その身は紛れもなくワタクシと血を分けた双生の妹。
この者がワタクシに翻意を抱くなど、それこそその方が唆された妄言綺語。
・・・その方は、ワタクシの大切な妹[●●●●]をなんと申し蔑みましたか?』


・・・先程までの殿下らしからぬ舌鋒にも納得がいった。
何をそこまで盛大に怒って居られるのか、を。
妄言に惑い、あまつさえ、殿下本人に刃を向け、その血筋上は“妹”である御方を口汚く侮辱し、BETA侵攻を見事に防ぎきった友軍の武功さえ否定した男は、その問に応えられるワケもなく。
殿下が本物である事が判明した当たりから、精神が乖離しているか、薬物が作用しているような異様な反応。
いまも全身を細かく震わせながら蹲り顔色をなくし、髪さえ色素が抜けそうに蒼白の男に向く視線は、同じ帝国軍の者ですら液体窒素の如く極冷。

『・・・・奸臣の虚言に惑わされ、上位に刃を向けた蒙昧、ましてや血を分けたワタクシの妹を侮蔑した下賤。何よりも帝国軍同胞の勲功を穢した暴挙・・・追って軍規により厳しい沙汰在るものと、覚悟なさいッ!』

―――止め。

男は泡を吹き、白目を剥いて失神した。



そして殿下は、まだ事の成り行きに呆然としたまま周囲を囲むモーラー大隊を睥睨す。

その視線に気づいた瞬間、モーラー大隊全隊が膝を付き、投降した。




視界には、その間を縫い“赤”の武御雷、しかも“金角”が映る。


『紅蓮・・・。して首尾は?』

『は。ご無事でなによりです、殿下。
先ほど第12師団が見事残存BETAの殲滅を完了致しました。
大深度侵攻の湧出BETA残党も掃討完了して居りますので、今回侵攻したBETAは、0833を以って全て排除されました。』

『それは重畳、大儀でありました。―――BETA掃討に当たった全ての者に感謝を。』

その声音は、漸く自分の知る殿下であった。







―――安堵する。

何よりも殿下がご無事であったこと。
仙台に巣食う魑魅魍魎にも、妄言に惑わされた有間や自分を含む蒙昧な輩に弑されずに済んだ事にも。

現政権が殿下の臣下。
その状況を肯定すれば、180度立ち位置が変化する。
それは横浜すら殿下の味方、ということに他ならない。
状況が違えば、有間大尉の立ち位置に自分が居たことも有り得る。
未だ納得は出来ないが、状況は理解できる。


そして、紫の武御雷のハッチに、スッと立つ煌武院悠陽殿下が再び周囲を俯瞰せしめた。
その芯の通った、毅然とした立ち姿。
纏う雰囲気に、現場に在るものはそのまま膝を付き、衛士は戦術機のまま膝をついていく。


『―――我が親愛なる帝国軍・斯衛軍・国連横浜軍、ご協力頂いた帝国連合艦隊・機動艦隊、そして此度の大規模侵攻防衛にご尽力頂いたすべての方々――。
―――誠に大儀でありました。』

これは・・・。

『演習に赴いた地での突然の出来事、前例を見ぬ25,000を越えるBETA侵攻にも拘らず、唯の一人も欠くことなくその脅威を殲滅至らしめた事、誠に喜ばしき事と思います。
 これも偏に皆様におかれる日々の多大な努力と、現場に際した並々ならぬ健闘の賜物、それを遺憾なく発揮して頂いたことと、感謝の念が尽きません。

 一部には一片の瑕疵も御座いましたが、それすらも長きに渡るワタクシの至らなさに端を発し、皆様の期待に応えられずに居た一つの帰結と思えば、自らも襟を正し、課せられた責務から逃避すること無く、正道に邁進することこそ肝要である、と今更ながらに痛感しております。

 ―――なれば、これを機に立ち上がることは、他ならぬワタクシに課せられた責務と申せましょう・・・。』


な――――。

息を呑む。
現地の雰囲気も、言葉を途切った殿下を注視している。

『――――同じ過ちを尚も繰り返さぬ為[●●●●●●●●]にも、これよりワタクシ・煌武院悠陽は、政威大将軍の政務に立ち返り、勝利と平和を勝ち取る為、皆様と共に苦難を乗り越えて参る所存に御座います。

―――明日、大権奉還の為、関連政令の廃止、及び、関連時限法案の期限満了が閣議決定[●●●●]され、即日発効する準備が推められております。

 長きにわたる戦乱の終わりは未だ見えませぬが、その歩を止めぬことで光明が見えてくると確信しております。

 今日まで、幾多の方々に護られていたワタクシは、正に今日、25,000ものBETAすら跳ね除ける皆様のご助力を得ることが出来た、と確信しております。
 どうか、その皆様のお力を、これまでと変わらず、今暫くお貸し下さいますようお願い致します。

 ―――最後に、重ねて此度の皆様の働きに万謝致します。
 誠に―――誠に大儀でありました―――。』



はじめは、静まり返っていた。
徐々に、ざわめきと、そして拍手。
更に幾つかの雄叫びや、号泣に近い叫び、一斉に立ち上がり天に拳を突き上げる戦術機・・・。
暫し間を置いて、遠く艦砲と思われる祝砲音までが辺りに響き渡った。
それらが巨大なうねりとなって画面から伝わってくる。


―――これは・・・現実なのか・・・?

網膜投影の端に並んで見えているバンディット隊隊員の表情も、皆歓喜と戸惑いの表情が入り交じっている。





『―――で、どうする?、降下地点をミスった[●●●●●●●●●]隊長さん』

唐突に割り込んでくる音声。

「・・・何故我等を赦すのですか?」

周辺飛行が許可されているとはいえ、降下は禁止事項。
実際その意図を持って強襲降下しているのだから、最初に捕捉された時点で、問答無用に全機撃墜されていても当然だった。

『・・・死にたいなら止めないが、少なくとも現状貴隊が官邸に向け発砲した、という事実はない。
対空装備も臨時に持ち込んだ“試作品[●●●]”。
記録なんぞ残してないしな。
―――それに何よりも悠陽は年内[●●]に佐渡島奪還作戦を敢行する。』

「え?―――な?!」

『佐渡島攻略に手練者は多い方が良い。』

「・・・・・・。」



逡巡。

それでも、先の殿下の言が真実であるなら、我等の予定した行動は正に殿下の正道復古を阻害する。
現政権が殿下の“真の臣下”であるなら、今後の施政にも多大な影響を与えよう。
これ以上は先の有間大尉と同じ、本当に唯の私怨に堕ちる。
自分はどうあれ、殿下の大切な臣である部下をこれ以上巻き込むわけには行かない。
大佐が名さえ名乗らないのも、全て無かった事にする為。


事ここに至り、我に正義なし―――。
否、元より正義など無かった。
此の国を糺すため、外道で由としたのだから―――。

だが、殿下は我等がその愚挙に至る寸前、その血塗れる手を借りることなく、自ら興隆せしめた。
降下する寸前まで耳にしていたそのお言葉も残っている。
確かに、この国を糺し、殿下正道の礎となる・・・、そう死ぬ[●●]覚悟は逢った。
だが、そこに“今際の際まで生き抜く[●●●●]という覚悟”は在ったのだろうか。
・・・結局閉塞した未来をただ“殿下”に押し付け、死に逃げる・・・、斯様な、安易な路を望んでいたのではないか―――。



無言で、踵を返す。


『―――ああ、降下位置ミスったんだ、譴責位は覚悟しとけ。
あと、命令無視して自損[●●]した09、しっかり教育[●●]するといい。催眠暗示を受けている、・・・かもな。』

これは秘匿回線で投げられた言葉。
・・・成程、終始警戒はしていたが、米国の手管は思っていたより身近に迫っていた、と言うわけか。
予定通り実行していたら、足元よりひっくり返されたかも知れぬ。

しかし佐渡、・・・か。
喪われし遙かなる彼の地。
それが今回の侵攻殲滅を見る限り、既に無謀な作戦では無くなっているとも言える。
外道として死地を望みながら、望外に生きながらえてしまった・・・否、“殿下”に生かされた。
ならば殿下の言う生き抜く覚悟、決める場所としては相応しいかも知れん・・・。


「・・・総員、帰還する。
先刻、新潟における侵攻BETAの殲滅を以て帝都圏のデフコン2は解除された。
空挺降下に失敗し自壊した09は、10と11が回収。
―――行くぞ。」

『『『『『『『『『『『 Yes, Sirッ!』』』』』』』』』』』


29騎の跳躍噴射が、西の空に低く翔けた。


Sideout



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