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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近
Name: maeve◆e33a0264 ID:520f0d2a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/12/29 20:34
’14,12,28 upload  ※斑鳩閣下の名前を正史に沿って修正
             キャラ・口調違和感はご寛恕
             過去分は追々変更します
※新規分は§69、§70連投です



Side 斑鳩崇継(帝国斯衛軍中佐第16斯衛大隊長)


『・・・有間大尉、――その方に尋ねよう・・・・』

発信のコールサインは〈Zois-01〉。音声はあるが網膜投影の映像は無い。
流石に双子[●●]、先んじて存じていてもその声音[こわね]は瓜二つ、通信を通した音声だけで真贋を判じ得る者は皆無であろう。

『―――BETA大侵攻という国家存亡の秋に在る今、その方にとって、ワタクシの真贋と国家の防衛、どちらが緊要なのです?』

『――――。』

『―――此度の25,000に及ぶ侵攻、斯衛も帝国軍もそして国連軍さえも戮力同心、全ての者が不惜身命を以てその防衛に精勤し、未だ残存せしBETAと戦っている者たちが居ります。
斯様な状況に於いて、友軍に刃を向け、問答無用に斬りかかる事がその方の第一義とでも申すのでしょうか?』

『―――フンッ!
既に侵攻はほぼ終息し、今は残存BETAの掃討戦、程なく完了するは明白。
その殲滅が完遂された時、BETA侵攻殲滅という多大な“武功”を貴様の如き“贋物”などに掠め取られることなど在っては為らんッ!
我等帝国軍衛士の精勤は、全て煌武院悠陽殿下に対し奉じられるもの、“横浜”傀儡の羅紗緬になど論外であるわッ!』

『・・・ワタクシが・・・その方の知る“殿下”は、その様な“武功”を欲する・・・と?』

『・・・成程、欲しないであろうな。
だが我等帝国軍兵卒は、等しく皆煌武院悠陽殿下の麾下で戦いたいと切に願って止まない。
今の徐々に磨り潰されるような閉塞した組織ではなく、殿下の下で・・・と。
そして殿下が希求すれば何時でもこの身命を投げ出す覚悟。
その為にも、・・・殿下が逆臣国賊に干犯された大権を取り戻し、帝国が正道に戻る為にも・・・、此度の偉業に等しい武功は殿下にこそ必要なもの。
その栄誉は薄汚い贋物が浴して良いものではないッ!!』



網膜投影に映る状況の推移を鑑みながら眉顰する。

狼藉であれど言妙だ。
事実上殿下麾下の斯衛でさえ、その言には賛同する。
増してや、帝国陸軍の出身者が多い各方面隊実働部隊には、確かにそれを熱望する者数多い。
このまま“紫”が影武者であることが暴露されれば、決定的な離反が生じかねない―――。




後方援護に就くはずだった帝国軍第14師団第3戦術機甲連隊――通称“剛の大鎚[スレッジハンマー]”連隊、その第3大[モーラー]隊が、突如“紫の武御雷”に斬りかかったのは先刻。
第16斯衛大隊や隣の斯衛軍第2連隊は、既に担当範囲のBETA掃討を完了し、現場の検証や確認も終えて戻ろうとしていた時節。

恐らくは敢えてオープンチャンネルで伝えられたその襲撃、そしてその罵倒するような口調に何が起きたかは、すぐに察した。
九條の奸計―――それ以外にはないであろう。
後催眠暗示等による単発の突発的襲撃―――そんな単純なものに非ず。


これが大隊を率いての吶喊であれば警護部隊も即応しただろう。
だが少なくともその接近は、最上位司令官である政威大将軍に拝謁する形式に則り、当然部隊の武器は格納し本隊はトレイル陣形から途中待機、指揮機だけが跪坐し着任の許可を得る、そこまでは作法にも沿っていたため誰も警戒はしなかった。
そこから、隊長機が一気に長刀を振り上げるまでは・・・。

隊長機が突然の狼藉は、当初後催眠等による乱心と断じた。
しかしその後全チャンネルに流れた指摘に、俺だけではなく斯衛全隊が凍った。

―――〈Zois-01〉に搭乗する殿下が贋物[●●]


その間隙を突き第3大[モーラー]隊が包囲陣形に展開。
―――何たる迂闊ッ!
単騎を制圧すれば終わる事を予期したが為に、その“機”を逸した事を悟る。



『――崇継ッ!』

「!!、ならぬ“御前”ッ!
我等が今動けば“鋼の槍[スティールランス]”が追従する可能性が高い!」

『なッ――――――』


総合司令室[HQ]帰還の意思を示した斯衛軍第2連隊長からの秘匿回線の呼びかけに、即座に返す。

“殿下”が贋物、しかも、弑逆された疑いすら在る―――。

それは今尚BETAと継戦している帝国軍将兵のみならず、事情を知らぬ斯衛配下にさえ戸惑いを生じさせている。

唐突な初撃こそ直衛の“赤”が庇い、〈Vortex-01〉の即時介入により事無きを得たものの、その後の〈Mauler-01〉有間大尉の暴露に、状況は窮境に陥った。

網膜投影には、付近の外部カメラに依り総合司令室[HQ]周辺状況が示されている。
互いに油断無く対峙する〈Mauler-01〉と〈Vortex-01〉。
その背後に、“赤”を直衛に付けた〈Zois-01〉、周辺を円陣で護るヴァーテックス隊と、それを包囲するようなモーラー隊・・・。



場は、異様な静寂が支配していた。



機体は撃震とはいえ、幾多の修羅場を潜って来ただろう大隊長有間大尉。
〈Vortex-01〉が真那とて、かの者を一撃で無力化出来る迄の技量差は在るまい。
取るに足らぬ腕なら、先の一合で既に片は付いていよう。
単騎同士の決戦なら〈Vortex-01〉の勝ちは揺るぎなかろうが、それは今の危うい戦場全体の均衡を崩す行為でしかない。

同じ理由で、俺も、“御前”もこの場から動けないでいるのだから―――。




―――榊首相の、些か過剰気味の“乖離”工作が功を奏し過ぎた、と言うことか。


元々、榊首相は自らを“亡国の総理”と見做していた節がある。
佐渡島ハイヴが拡大している今、余程の奇跡[●●●●●]が起きない限りその殲滅は叶わない。
未だ嘗て、ハイヴ攻略に成功したのはG弾を用いた横浜ハイヴのみ。
そのG弾使用にも警鐘が鳴らされた今、通常戦力のみでフェイズ4と言うよりも、既にフェイズ5に限り無く近づいた佐渡島ハイヴを攻略することは、誰の目にも極めて困難に見えた。

故に最悪の事態を考えるべき政治家は、国土が喪われることを前提に、国民とそして“帝国”を存続する方策に腐心していた。
――既に1,000万人を難民としてでも海外に移住させた。
そして残る6,400万人の内、70%は切り捨て2,000万人に託して世界に渡す―――。
4,000万人以上を見限ること、合計で3,000万人に流浪の生活を強いること。
このBETAが蔓延る世界で、どちらが幸せか、果たしてそれが正しいことなのか、誰にも応えることは出来ない。
今や世界中に亡国の民は溢れているのだから・・・。

それでも一縷の望みを託し、前途ある若者を逃がす。
そこには、その象徴であり国土無き国民の若き指導者でもある殿下も含まれる。
そして自らは国土を喪い、膨大な民草を見殺し、国を亡ぼした全ての責[●●●●]を負って国土と共に朽ち果てる―――。
その一切の責を殿下に残さない―――それが榊首相の真意だったろう。

その為俺や御前は勿論、長らく現政権を米国親派と見做していた。
殿下本人にすらその真意は漏らさぬ程に徹底した乖離工作だったと聞く。
俺とて独自に国内情勢を纏めるべく情報を集めていたが、実際本人に明かされるまでその真意を汲めていなかった。



それがあっさり変わった。

余程の奇跡[●●●●●]どころか、遥かに想定外の機械仕掛け神[デウスエクスマキナ]染みた望外の僥倖[●●●●●]にその必要がなくなった、と前回浜離宮で会合したときに寧ろサバサバと言っていた。

彼方や白銀との邂逅以降、初めて第4計画その全容を聞き、また此度齎される途轍もない規模の項目を知り、今は既に違った意味で忙殺されている榊首相を、俺と御前が温かい目で見てしまったのは仕方ないだろう。

しかし、そこに至るまで事実上斯衛の天辺まで謀ってきた老獪である。
今以って、現場の人間にその真意を知る者など皆無――。



西日本を喪失する中、BETA大禍に於いて一方的に切られた日米安保。
にもかかわらず、明星作戦に於いては、事前通告もなく新型爆弾の実戦証明を断行し、多くの友軍を犠牲にした米国。
反米感情の根は深い。
世間から見た榊政権は、殿下を蔑ろにし、その米国に擦り寄る傀儡、としか見られていない。

今は不遇の殿下さえ再び起てば、きっとBETAは打ち滅ぼされ帝国は立ち直る―――そんな都市伝説に近い盲信が生じているのは確かだった。
徹底した憎まれ役を演じた榊首相と、殿下が招いた偶然という“奇跡”の対比が、否応なしに殿下を必要以上に崇拝し崇め奉る土壌を醸した為に、今の危機的な状況が在る、と言うのは皮肉としか言えなかった。



斯衛軍のみならず、帝国軍にとっても希望の象徴のように見られていた“煌武院悠陽殿下”。
今までも、その様な声は数多耳にした。

指揮権を残す斯衛軍のみならず、帝国軍でも元帝国陸軍等“現場”に近い衛士の殿下への傾倒はある種異様な迄。
本来は帝国軍を含む国軍の総司令でありながらその権限は干犯され、帝国軍に対しては名目上であり、指揮権すら持たない殿下―――。

苛烈なBETA侵攻に対して損耗し本土防衛軍に接収された形の帝国陸軍。
統合参謀本部に使い潰される様な不透明な用兵、益々激化し先の全く見えないBETAとの戦闘に疲弊しきっている状況も理解するも如何ともし難かった現実。
BETAとの戦闘で死ぬのもいい、せめて殿下の指揮下で―――それが現場の衛士の切実な願い。



そして此度の新潟実弾演習――。

その望みが訓練という形で形式的にでも叶ったのだ。
殿下を頂点に頂いたこの“演習”に参加させて戴くだけでも感無量―――そう言って涙ぐんでいる衛士すら多かった。

これも殿下が依頼し実現したという触れ込みの画期的な新OS:XM3の実機証明。
その操作性は既存のOSとは明らかに隔絶し、飛躍的な生存率の向上が見込める。


しかし一方でその供給元が国連横浜基地であることに懐疑的で在ったことも確か。
魔女とも雌狐とも呼ばれ唾棄される香月博士に殿下が依頼したことも、それに先方が無償で応えたことも、帝国軍の衛士としては信じられない、と言うのが本音だろう。

それは実際斯衛も同じだったのだが、斯衛を変えたのは白銀の教導と彼方の講演。

殿下の立場を救った“弾劾者”であり、殿下の幼い時よりの知己と認識されていた彼方は、XM3に込められた理念を語るとともに、国連横浜基地への所属とその理由も明示した。

―――BETAを知り、BETAに克つ為に―――。

彼ならば殿下が頼るに足り、信じるに値する、とする斯衛軍。


その一方で帝国軍に対しては、九條に誘導され、クーデターを目論む勢力への制限の意味もあり、意図的に供給や情報を制限していた。
結果、理念や真意などは伝わらず、斯衛からの噂レベルでしかなかった。
現実的にはCPUの供給が間に合わないというのは本当だが、そこに生じる帝国軍と斯衛軍には微妙な差。

その微妙な齟齬を九條に突かれた。



突然のCode991発生と、総数20,000超という報に死を覚悟した者も多いであろう。
防衛線の崩壊と帝都への侵攻までもを幻視したのも俺だけでは在るまい。

それが蓋を開けてみれば、今やその殆どを殲滅し、人的被害は0。
此度の侵攻に於いても、合同の臨時新潟防衛総合司令室[HQ]として指令が下され、実際指揮に際しては“殿下”が携わった事はない。
しかし例え指揮はしていなくとも、XM3、そして“森羅”を齎したのは、紛れも無く“殿下”の慧眼、と誰もが感じたことであろう。
共に戦った将官から一兵卒に至るまで、心酔の極みにまで達した事は想像に難くない。
事情を知らない者には、殿下が三度奇跡を起こしてくれた、と言う認識だったのだ。



―――だがその殿下が、真っ赤な偽物かもしれない――――、と言う疑惑。

確かに上位の戦略上、殿下の影武者が居てもおかしくはない。
しかし、それが香月女史麾下の国連軍兵士だと聞かされれば、いまもBETAと戦っている第12師団ですらそんなに簡単に認められるものではない。

斯衛は一瞬動揺したものの、〈Vertex-01〉の言に一応の理解を示す。彼方のお陰で国連横浜基地そのもにもそれほどのアレルギーはない。
指揮官クラスは事情を知っているし、寧ろ協力しているので、動揺もない。

しかし、国連横浜基地を信じていない帝国軍はそうは行かない。
その情報の差が、態度に現れる。
結果、偽殿下の欺瞞は、斯衛とグルか、という疑念が生じて居るのは確実だった。

そして殿下かもしれないご遺体が発見されたという知らせ――。
加えて言えば、彼方と思しき遺体も。


故に、今の“紫”が“偽物”で在ることが露見するのは在ってはならぬのだ。





その真偽の程は測りかねるが、命令違反を犯し、紫の武御雷に斬りかかったからには、少なくとも[●●●●●]第14師団“撃の大鎚[スレッジハンマー]連隊”第3大隊長は、その情報に命を賭している訳だ。

その事象を表面だけ辿れば、確かに国連横浜基地の“雌狐”による謀略と見られても仕方のない面はあろう。
何せ、件の女史も今までの行状が評判悪すぎた。
勿論榊首相同様、世間には周知されていない第4計画という極秘計画、水面下で対立し繰り広げる米国との諜報戦を知らなければ、これも帝国軍が蔑ろにされている様にしか見えない。
これまた頑固で頭が硬いと見られがち(と言うか実際そう)な榊首相と同じく、高飛車で傲岸不遜(に見えるだけか?)な香月博士は帝国軍からも斯衛軍からも蛇蝎の如き扱いだった。
必要に迫られれば、その位は遣る――そう思われて居たとしても不思議はないくらいに・・・。


今、“鋼の槍”連隊が落ち着いていられるのは、殲滅すべき対象[BETA]がまだ目の前に居ること。
そして、実際にその殲滅に当たった者として、多大な成果を齎したXM3や“森羅”が、モーラー隊大隊長の言うような唯の撒き餌として出された薄っぺらいものではなく、紛れもなく自らの生存率を高め、BETAの駆逐に重要な力と成ることを実感していたからである。

ともに戦い、そして助けてもくれた斯衛、ひいては国連軍を信じたい―――。
しかし殿下が贋物で、そして本当に弑逆されているのであれば、それは全て謀略のための仮初の偽善と言う事も有りうる―――。



―――故に、揺れる。




今、この場は極めて危ういバランスの上に成り立っている。

不確定な情報のみで、謂わば命令違反・反逆にまで踏み込んだモーラー大隊。
今の所、非は彼にある。

このままモーラー隊が、“殿下”に襲いかかかり、それを警護である斯衛が排しても、恐らく第12師団は動かない。
それでも殿下の真贋問題と、友軍を切り捨てたという深い遺恨は残るだろう。

反対に斯衛が今の状況から手出しして、有間大尉を制圧すれば、それは説明責任を放棄し、力づくで抑えつける事に等しい。
最悪の事態となれば、周囲を包囲するモーラー隊が呼応して発砲する可能性もある。
そこに至ってしまえば、後は乱戦―――。
多数の死者・負傷者がでることは想像に難くない。
・・・だからあのモーラー隊大隊長はアレほど口汚く罵っているのだ。
憤らせて、斯衛から手出しを誘うように・・・。
自らの命を賭した告発が、大きな潮流となって斯衛をも糺せると信じ、そんな自分に酔って。


そしてあやふやな情報に対し、否定するにも肯定するにも既に説明責任は斯衛、と言うか“殿下”や内情を知るその側近にある。
斯衛将兵ですら“殿下”を殿下として、その演習に参加できることを他の留守番部隊から羨ましがられて来た者たち。
“余人の入り込む余地のない高度な作戦行動”、を盾に押し切る事も出来る。
しかし全て有耶無耶では大きなシコリが残ろう。
今後の“殿下”の言動は帝国軍、或いは斯衛軍の中でも信頼を喪う[●●●●●]


今小康を保っている緊張を斯衛から破ることに成れば、それは“殿下”が偽物であることを押し隠し、正当化しようとする行為とも取られかねない。
その場合は、第12師団も、或いは戦域に居る他の“剛の大鎚”連隊も、“決起”する可能性が浮上する。
或いはそこまでは行かなくても今後の、真の協力体制は望めない。
それは、この通信を受信しているだろう機動艦隊や連合艦隊も同じ。
信頼することの出来ない指揮官に自分の命を預ける者など居るわけがない。
軍規だけで縛られている部隊など、いつ崩壊するか判らないのだ。


同じように、我等第16斯衛大隊や斯衛第2連隊が動けば、少なくとも機動性を有する“鋼の槍[かれら]”も動く。
第2連隊や第16斯衛大隊の移動が、数の“威圧”と受けられれれば、それは移動も攻撃と同じ。


そのまま混戦に突入するキッカケと成りかねない―――それだけは、避けねばならない。





『―――ワタクシには、斯様な“武功”など、ありませぬ。
此度のBETA侵攻に際し、幾多の帝国軍、斯衛軍、そして国連軍将兵の協力・助力を得てこそ為せた掃討。
それはかの者たちがワタクシの指揮下に居たからではなく、その一人ひとりが自ら考え、そして果敢に行動することで成し遂げられた輝かしき成果。
故に決してワタクシ一人の武功などではなく、遍くこの防衛に参加した皆のもの。
―――その方が申すワタクシ一人で成したかのような言い様は、かの者たち一人ひとりの成し得た努力・勇気・功績を無きものとし、かの者たちを否定し、貶めることそのものでありましょう。』

『―――クッ! 殿下に似せた声音さえ忌々しいわッ!
その帝国軍将校、兵卒に至るまでが殿下に忠義を尽くし、その復権を希求している!
その殿下を亡き者とし、此の国を縦にしようと企む逆賊がッ!!」

『・・・その方、何故既に“殿下”が弑逆されたと断ずるのです?』

『―――昨日、殿下が第2帝都城内裏におわす様をこの目で見たからよ。
本物の殿下が陛下に招聘されて尚、強行された此度の演習そのものに疑義ありと逗留なさっていた。
この事態に贋物をすり替える意図在りしことは明白、その為に弑逆した殿下のご尊顔を判別出来なくした・・・。
それ以外無かろうがッぁ―――!』

『・・・今朝方発見されたと言う遺体―――その方の申す様に、ワタクシのすり替えが目的なら、何故遺体をしかも駐屯地近傍に晒す必要がありましょう?
顔が判別出来ぬようにする暇が在りながら装束はそのまま・・・。
暗殺に成功したことを知らしめたいなら顔を認識出来なくする必要はなく、すり替えが目的なら本来遺体を人目に曝す必要もない。
どちらにも不自然な状況は、“殿下”では無い無睾の者を、恰も“殿下”らしく見せかけようとした意図が見え見え。
それは取りも直さず、逆にワタクシの死を印象づける為の稚拙な偽装工作だと示していましょう。』

『・・・例えそうだとしても、それが殿下のご無事を示すものではないッ!
そして貴様が偽物で、演習を強行したことには変わりが無かろうがァ!』

『―――此度のBETA侵攻・・・、それがある程度予測出来たていた、とした時、その方が思い描く“殿下”はどの様な行動を取るでしょう?』

『なッ?・・・予測?・・・まさか・・・ばか、な・・・』


激昂する有間に対し、飽くまで涼やかにさえ聞こえる声で冷静な対応をする“紫”。
有間の返答が初めて詰まる。

・・・影武者であるあの者には侵攻の予測は伝えていないはず・・・。
とはいえ、横浜では白銀に鍛えられ、あの鑑少尉とも共にあると聞く。
殿下が失踪した後、自分を影武者に立ててまで強行され、挙句想定に近いBETA侵攻が発生すれば、自ずと気づくだろう。
ここのところの“横浜”や、ましてや今までの戦闘に参加しておらず、“森羅”を知らぬ第14連隊には到底理解出来ぬだろうがな・・・。


『事前に侵攻の可能性を察知していながら斯様な状況に置かれたとき、帝国を、何より民を護るために進めていたBETAに抗する準備を全て放棄し、ただ自らの保身のため招聘に赴くでしょうか?
この規模の防衛を該当方面軍にのみ任せ、唯事の成り行きを眺める傍観者に成るでしょうか?
・・・ワタクシは、・・・その方の思い描く煌武院悠陽は、其の様な存在である、・・・と?』

『・・・グッ・・・』

『・・・そもそも、その方の“忠義”、何処に重きを置くのでしょう?』

『今更何を!―――政威大将軍煌武院悠陽殿下に決まっておろうッ!
今でこそ米国の傀儡、榊に大権を干犯されているが、あの御方こそ、危機に瀕した帝国を導く明星―――。』

『その認識が誤りであると、何故気づかぬのですか?』

『な・・・に?』

『―――土地を囲いても、国は出来ませぬ。
そこに―――人が集いても、それだけでは国は成りませぬ。

法と言う契約の下、初めて集いた人が国民と成り、構えた土地が国土と成るのです。
法とは、国は民を庇護し民は国を興す、その潜在的な契約、それが在ってこそ、民の心の中に“国”という想念が生じる。
そして政威大将軍とは、陛下の名代として法の下、この日本という“国”を任された存在、即ち民が有する想念の“映し身”である、とワタクシは捉えています。』

『・・・。』

『・・・国を守るということは、それを形作る民を護る事に他なりませぬ―――。
国を想う民がいる限り国土なき国は成立しますが、民無き国は存在し得ないのです。
国を守るためにそなた等に与えられた強大な力は、即ち民を護る為に揮われるもの。

ならばそなた等の忠義は“民”、あるいはその想念である“国”にあるべきで、決して唯の“映し身”である政威大将軍、ましてや煌武院悠陽などという個人に向けるべきものではないのです。
何故なら、ワタクシ自身もまた、そなた等と同じ、国に仕え、民を護るべく必死に足掻く、一個の個人でしか無いのですから。』

『・・・。』

『―――もし大尉の言う様に、帝国軍将兵の皆様がワタクシの復権を望み、ワタクシの下に集いたいと思いて頂けているのであれば、それは大変嬉しく存じます。
しかし、忠義の在処を間違うてはならぬのです。
ワタクシの麾下に集うことは、民を護る一つの手段であって目的では有り得ない。
且つまた、手段は決して一つだけではないはずです。
例え何処に在っても、自らが考え、民のために為すべきことを為すことは出来るはず、それが帝国軍人に課せられた責務ではありませぬか。

そして、―――そなた等もまた一方では大切な日本帝国の臣民なのです。
その身命そのものが、掛け替えの無い帝国の宝。
民は、国を喪失してはならぬのです。
安易に自らの責任を放棄するに等しい死を選ぶことは許されぬのです。

それなのに、何故今際の際まで生き抜くという覚悟すら持たず、軽々しく身命を投げ出すなどと口にするのでしょうか?

―――足掻いて足掻いて、それでも足りず、懸命叶わず、散っていった数多の先達が後進に託すその想い、何と心得ているのですか!』

『・・・。』

『此度のその方の襲撃が、忠義に則り、今、民の庇護も儘ならぬワタクシを諌め、より良い未来を齎すものであるなら、甘んじて受けるのも吝かではありませぬ。
帝国軍将兵の皆様に期待され、そしてその期待に応えられていないのは、この身の未熟、ワタクシ自身忸怩たる思いであり、誹りを受けるも致し方なきこと。
しかして、唯ワタクシの真贋に拘泥し、恰も“横浜”に隔意を有するかの言動、真に己の忠義に悖らぬと、その方は胸を張れるのでしょうか?』

『・・・横浜はG弾と言う日本国民の怨嗟で生まれた、悪逆非道米国の手先でしかないッ!』

『・・・ならば何故、その方はXM3装備の撃震に搭乗しているのでしょうか?』

『 ! 』

『XM3を・・・、BETAに対向する手段の構築を“横浜”にお願いしたのはワタクシです。
それは、BETAを駆逐し、人類が地球を取り戻すことが取りも直さず、日本帝国の臣民を護ることと同義であると考えたからです。
手段は違えど、その目的は同じである、と信じているからです。
此度のXM3の実戦検証、そして先行検証となった“森羅”。
これらによって何か帝国軍の不利となることが有りましたでしょうや?』

『・・・。』

『・・・それでもまだ、その方はワタクシの真偽こそが肝要である、と申すのでしょうか――?』

『・・・・・・・・・。』






撃震が長く沈黙する。
既に帝国軍兵士に声はない。
・・・成程、傑物だ。
血を分けただけの事はある。


そして、その逡巡の果て、撃震の手にした長刀の鋒がほんの僅かに下がる。

判る者にしか判らぬ微かな反応。
それ故に、あの者の説得が傑出していたが故に―――説得に応じたか、俺が思ったとき、唐突にそれ[●●]は吶喊した。
投降に応じるが如き僅かな気配の変改に、刹那気を取られたのは“紫”を直衛する〈Vertex-01〉も同じ。
鋭敏に気配が読める手練者だけにそれを逆手に取られた。

“紫”には向かわず、障害となる〈Vertex-01〉に急接近した撃震は、武御雷のブレードエッジにも怯まずその質量と防御をそのままに、体当たりを敢行する。
接近を迎撃した〈Vertex-01〉の長刀は、しかし懐に飛び込まれ、刃元と成った故に硬い撃震の装甲を切り裂くに叶わず、自らの軽い機体と共に弾き飛ばされた。
咄嗟の噴射に依り宙でその姿勢を修正するが、その時には 勢いの儘“紫”に長刀を振り上げる撃震。

その瞬間、“紫”の後に控えていた“赤”が、そのまま背後から“紫”に被さるように突っ込んだ。
迫る撃震と動線が交差する。
2騎は縺れるように地面を転がるが、直ぐ様柔道の受身のように体勢を立て直す。


―――見事!

大きな慣性を持つ撃震の踏み込みに対し、左右後方への退避程度ではその鋒を避け切れなかっただろう。
前方にこそ活路を見出した“赤”は、“紫”を押さえ込みながらそこに飛び込み、間一髪長刀を回避した。
まさかの捨て身に、方向性を持っていた撃震の慣性はとっさに対応出来ず、転回したときには既に〈Vertex-01〉が間に入った。
先の一触で長刀を弾かれ無手の〈Vertex-01〉に、直ぐにも再度踏み込もうとしたその時、背後の“紫”が差し出した長刀が、その手に握られた。



『―――飽くまで反逆する・・・と言うことか?』

動作を止めた撃震に、冷え冷えとした〈Vertex-01〉の問い、と言うよりも確認。

『―――つまるところ、結局あんたは贋物[●●]、ってことだよなッ!? “横浜”傀儡のッ!!』

『・・・。』

『“妖狐”の息がかかる羅紗緬[くされ女]が殿下の周囲に居るだけでも、我慢ならぬわッ!!』






その時、カション、と言う小ささ解錠音に続き、空気の抜ける擦過音。
そして“紫”の搭乗ハッチが開いた。

『な・・・・』

周囲がざわめく。
そのコックピットからは、紫の強化装備に身を包む紫紺の髪を結った姿が顕れる。

・・・これは・・・御剣・・・なのか?


『ッッ!!、惑わされるなっ! コイツは殿下の遠縁に下げられた殿下の双子、殿下そっくりでもそれを恨み、御剣公を誑かせて鬼畜の手先である国連軍に従軍し、横浜の雌狐の眷属となり下がった卑女―――』


刹那―――。

鮮紅[●●]の長刀が一閃した。
“紫”より顕れたその姿に意識を捕らわれた〈Mauler-01〉の隙、対峙する〈Vertex-01〉が見逃すはずもなく。
その手には先ほど“紫”より渡された74式戦闘長刀[]
構えていた長刀諸共、右腕と腰から下を一刀のもと袈裟懸けに切り飛ばしたていた。


『―――お黙りなさい。
全てはその方の蒙昧な妄想、これ以上聞くに耐えませぬ。
BETAに打ち克つ気概を亡くし、自らの私怨に囚われ、幼稚な思考に嵌り、幻想に酔い、現実に25,000ものBETAを殲滅せしめた友軍の武功すら貶める言い草。
第12師団の精鋭は果敢に真っ向から迫り来るBETAに相対しました。
その方の様に友軍と見せかけ突如斬りかかるなど、武士の風上にもおけません!』

『どこが妄言だッ!?』

斜めに断たれたコックピットから転がり出ながら、それでも有間大尉は叫ぶ。
搭乗者が殿下でないことを証明してしまえば、目的は達せるとでも言うのか。

『・・・その方の主張は、全てワタクシが偽物である、と言う前提に立っているのです。
その方の腕が惜しいが故に穏便に済ますため明言を伏せてきましたが、どこまでも蒙昧―――。
ワタクシが煌武院悠陽である以上、余りにも馬鹿馬鹿しい妄言としか言えないのは明白でありましょう。』

『クッ! 双子であることは事実っ!』

『・・・ではワタクシが偽物である、という事をその方はどの様に証明なさるのか、申してみなさい。』

『―――クククッ・・・確かにな。
そこまで似ているとは思っていなかった。
進退極まって開き直り、強気になるのも解らなくはない。
だが、強気に出られるのも此処までだ―――今その化けの皮剥いでやる。』


まだ諦めていない、獰猛な貌付き。


『――――煌武院悠陽殿下が政威大将軍を任じられた際に、陛下より授けられた“節刀”、貴様はそれを示すことが出来るのか?』

『・・・。』


“節刀”ッ!?
まさか、そんな情報を、得て居るというのかッ!?

通常、政威大将軍を任じられるとき、皇帝陛下は天下の指揮刀として、手元に有する数多の宝刀より一振りを下賜される、と聞いている。
しかしそれは、皇帝陛下と政威大将軍の間で私的に交わされるしきたりであり、通常正式な記録が残されることも少なく、また殆ど公表もされない。
実際、悠陽殿下も何らかの“節刀”を下賜されたらしいが、五摂家の一当主であり帝都城を警護する第16斯衛大隊長である俺ですら、その銘を聞いたことは無かった。
―――まして今まで会うこともままならず全くの疎遠であった“彼女”が知る由もない。



『・・・・フンッ、出来まい!
“節刀”の存在そのもの、そしてそれが何なのか、ご存知なのは基本的に皇帝陛下と煌武院陽殿下のみ―――。
此度の演習、殿下の真贋に疑義ありと、自分はそれを崇宰当主を通して陛下より伺っているッ!』


勝ち誇ったような男の哄い。


“紫”のハッチに立つ“殿下”は、フッと視線を下に落とし、―――そして再び相貌を上げると、透徹する紫紺の瞳で男を見た。


Sideout




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