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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡
Name: maeve◆e33a0264 ID:c23374a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/08 09:53
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'15,02,08 誤字修正


Side 武


『――湧出BETA“群体”は殲滅!、湧出孔西側より汪溢した中型種残存BETA、約200――。』


状況を伝える“森羅”の声さえ明るく感じる。

その残存200は・・、と見やれば、“金角赤”の武御雷が、鮮紅色の長刀[●●●●●]も鮮やかに、鬱憤を晴らす様BETAの群の中で舞っている。
消費電力の少ない74式戦闘長刀“改”はG-コア無しで使用できる装備であり紅蓮閣下に渡したら、それだけでも鬼に金棒状態。

『うぉぉぉぉぉぉ――――ッッッッッ!』

新しい“玩具”を使って三つ胴の試し切りでもしているように、今も要撃級を衝角ごと3体纏めて断ち切る。
その姿に、もう模擬戦はしないと誓う。
これで“IRFG”[まかいぞう]を持つ武御雷“改”などに乗られた日には、闘気全開[スーパーサ○ヤ]状態になってしまうのは確実だろうから。
そして閣下の周囲、取りこぼしはクリムゾン小隊がカバーしてくれている。

―――閣下の憂晴らし[コレ]を邪魔しては、後で謂れの無い模擬戦を課されそうだから、介入はダメ、絶対―――。

そうナニかが囁くとともに視線を外した。



湧出孔辺縁から零れたそれ以外の多脚種BETAも、既にヴァーテックス隊や、A-01ヴァルキリーズが片付けていた。
既に湧出分を完全把握した“森羅”を司る純夏が対処を振り分けているのだから、撃ち漏らしはない。


突然の大量地下侵攻とその短時間殲滅―――。

残党掃討を終えているヴァーテックス隊は、今も不気味な口を開ける湧出孔の周囲で一応の警戒を続けながらも漸く息を整えていた。
既に“殿下”の〈Zois-01〉も〈Vortex-01〉に促されて総合司令室[HQ]付近まで引いていた。
一方のA-01は、被弾した3機を庇いつつ、万が一に備え補給に向かう。
エリア2から残弾半分位で長駆、そしてそのままフルバーストの最大密度攻撃。
120mm砲は空、36mmだって殆ど残っては居ない。


慌ただしい総合司令室[HQ]の指示の下、収束していく周囲の状況を確認しつつ、ほっと息を付く――。

・・・流石にこれ以上の侵攻は、もう無いだろう―――。


光線級の照射を受けたA-01の3名、機体の大破と中破は喰らったが、辻村晶代中尉と相原美沙少尉、そして遠乃優莉少尉も本人には怪我が無いことも確認されている。
A-01は、遠征まで全員がレベル4と言う理想にまでは届かなかったが、一部はレベル4、残る全員がレベル3になっていた。そのため初期照射警報にある程度反応出来た事が皆の命を救った。
元々ハイヴ攻略の参加条件としてレベル3クリアと言って居たのだが、ある意味妥当な線引きなのだろう。

それにしても照射されたのが符丁通り[●●●●]の3名だった事は支配因果律と言う運命なのか、不気味としか言えないが特に辻村晶代中尉と相原美沙少尉はこれで以前のループにあったその“死すべき運命”の顎から逃れられているといいのだが――と思わずに居られない。




しかしまさか、この期に及んでマジ[●●]で“母艦級”の増援が在るとは・・・。

“森羅”が地下侵攻を感知したのが7:55位だった。
恐らくは母艦級から分離し、地上を目指したBETA“群体”の長さは、その個体数から類推する体積から換算すると、およそ400m程度と推定され、それが毎秒5mの速さで上昇してきた。
A-01による湧出前の穴内砲撃からの殲滅完了までの経過は、現実の戦闘時間にすれば3分程度。

エリア2の残存掃討をフェンリア・ガルム両隊に任せ、“IRFG”まで用いた最大戦速で此処まで戻って来たが、A-01を先行させて置いて正解だった。
美琴やイーニァの危機感知能力にも磨きが掛かって居るように思う。

そのA-01とヴァーテックス隊にBETA湧出を僅かでも抑止してもらえたから上空からの EMLC[レールガン]による掃射が間に合った。
あそこで光線属種が先に解放されていれば、オレだって無事に済んだかどうか、怪しい。


恐らくは今回は、今までのループにはない大規模な侵攻部隊の早期壊滅、というBETAに取っての“重大災害”を越えた“甚大災害”が発生したことで出てきたモノと思われるが、大深度地下を動く“母艦級”の動きが把握できないと言うのもかなり問題がある。
アレだけの巨体なら、大深度とはいえ把握できそうなものだが、純夏でさえ最後に検出した振動以外は、その兆候は全くと言っていいほど無かったという。
と言うか、予めそこに居た[●●●●●●●]かの様に、唐突に出現したという方が状況に即している。

前のループでも佐渡島ハイヴ“消滅”の後、大深度の“母艦級”に残ったと思われる師団規模のBETA侵攻に晒され、多くの犠牲を伴って横浜基地は壊滅した。
実際この時の横浜基地の壊滅は致命的で、凄乃皇四型も被害を受け不知火も反応炉も喪った。
最終的には、それがODLの枯渇に繋がり、00ユニットの純夏が機能停止に陥る避けがたい運命が決まった。
その後のいくつかの“居残った”ケースでも純夏は2度と目覚めず、凄乃皇も無く滅茶苦茶苦労した記憶がある。
桜花作戦が成功しても、人類の滅亡が10年が30年になっただけ、と言う夕呼先生の言葉の正しさを実感したものだ。

そして、その諸端は防衛線を無視して突然[●●]出現した旅団規模のBETA群だった。
―――同じような事例は、カムチャッカや、ヨーロッパ戦線でもいくつも在る。


その一端が、今回垣間見えた。

嘗て、オリジナルハイヴやその他、“居残った”記憶にあるいくつかのハイヴ内、または先刻エリア2でBETA群を収束させた時に見たBETAの“群体”行動。
元来個々に自律行動するBETAが、ある程度の密度以上に集合すると“群体”を形成しあたかも巨大なBETAとして振る舞い、個々のBETAは細胞であるかのように振舞う行動様式。
今回の事で、大規模な地下侵攻の際にも、この“群体化”が関係しているらしいことが明確に成った。
それは“群体”となることで、恐らく“母艦級”が垂直に掘り進めた後に埋められた謂わば“偽装抗”上部の土砂を効率よく下方に送りながら迫上ることが可能、と言うこと。

200mより浅い範囲では、3次元フェイズドアレイ地下探査ソナーでその姿が捉えられていた。
“母艦級”直径ほどの地下空間が“空いて”いれば、純夏が見落とすはずがない。
“森羅”の感知によると、垂直に掘られた湧出孔の壁面に取り付いて居た多脚種が約30%程度。残りがその他の種を取り込んだ“群体”と化していたという。
その縦抗を、BETA群体は管形化し、縁に沿いつつ中央から邪魔な土砂を下に落としながら、抗壁面に取り憑いたBETAが中央の“群体”を抽送し、恰も超音波モーターの様に蠕動運動で持ち上げる事により、土中を掘削するのとは桁違いの速度で上がってきた。
コレにより垂直壁を登れない二脚種や突撃級なども地上に運べる上、その振動も同じ規模の個体が掘削するそれよりも大幅に少なく、感知がし難い。
結果殆ど振動を伴わず、突然旅団規模が土中から現れる理由なのだろう。


もし、土砂を落としている時点で先行してそこにS-11を放り込み、十分な深度に達した時点で起爆すれば、一気殲滅も可能かもしれない。
但し、その場合S-11の起爆点より湧出孔上方にある質量は、空高く打ち上げられることになる。
今回のように拠点が近い場合は、BETAの残骸を含む何十万トンもの質量が、総合司令室[HQ]周辺に落下してくる事となるため頂けないが、今後の対策としては一考の余地がある。
先ずはその偽装抗を掘削している時点で把握する必要はあるが、帝都の防衛網に盛り込む必要はあるだろう。

その“群体”が出てきてしまうと、その空間的に組みあがった密度故に2個中隊分の突撃砲程度では到底殲滅に足りなかった。
しかし、逆に狭い範囲に集中していた為、EMLCの威力が最大限に生かされ極めて短時間で殲滅できたのはBETAにとっては皮肉かもしれない。
“殿下”の武御雷“改”に持たせてあった試製01型電磁投射砲筒:EMLC-01Xを解放することで、“群体”湧出を抑え、それでも突出した分についてオレが真上から殲滅することで、綱渡りの殲滅を成し得た。

あの“群体”が分離・分散していたら、戦線を内側から食い破られていたと思うと背筋が寒くなる。


殆ど完成されている電磁投射砲を披露してしまったことで、この後の厄介事は増えそうだが、どうせG-コアに依存する装備として共に公表される運び、寧ろ“殿下”の初陣パフォーマンスとしては、申し分ないだろう。

で、あるならば、だ。

オレが真上から潰したのは、実質既に突出していた50m分、全体長さから言えば、1/8。
総数5,000の70%の7/8を、初陣である“殿下”が撃破したことになる。

えっと・・・計算上は殲滅数は3,062―――か。

概算だから初陣撃破数のレコードかどうかは微妙だし、何よりも飽くまで[●●●●] “殿下”の記録なんだよな、と独りごちる。
本人は突撃砲よりも長刀命の性格だから今の紅蓮閣下みたいに、長刀1刀でBETA200体最短撃破とかのレコードの方が嬉しいのかもしれない。


上空で哨戒を続けながら、そんな事を考えていた。

もうすぐ、紅蓮閣下の掃討も終わる。
現況、各エリアの上陸BETAも残存数はあとエリア7と8に120程度しか残っていない。
フェンリア隊やガルム隊だけではなく、中央エリアを担っていた斯衛軍もすでに戦闘行動は終了していた。

―――あと10分も掛からず、掃討は完了する。





「――タケルちゃん、第14師団第3戦術機甲連隊第3大隊が、着いたよ―――えッ!?」

視線を背後に戻したそこで見たのは、援軍である帝国軍第14師団第3大隊の所属と思われる撃震が、紫紺の武御雷[●●●●●●]に長刀を振り上げる姿だった―――。






第14師団第3戦術機甲連隊通称“撃の大鎚[スレッジハンマー]連隊”は、元々宇都宮駐屯地に属した北関東を管区とする帝国陸軍歩兵師団だった。
BETA大禍以降、陸軍そのものの存続に関わるほどの損耗と、本土防衛に重きを置く本土防衛軍の拡大により、陸軍の接収を含む大規模な統廃合が実施され、現在は東北方面隊として、主に第2帝都を含む東北地方の沿岸防衛を担う師団となっていた。
その中で、“撃の大鎚[スレッジハンマー]連隊”は、撃震3大隊108騎で構成された連隊であり、その第3大隊モーラー隊は、総合司令室[HQ]周辺の援護に回った筈であった。


侵攻終盤に突如発生した5,000にも及ぶ地下侵攻を、自らの携えたEMLCで跳ね除けると、再び未だ終わらぬ戦場に意識を向けていた〈Zois-01〉。

一方大規模地下侵攻によって一気に消耗した警護隊は、更なる万一に備えて補給に廻り、指揮機の紅蓮大将は残存BETA掃討中、側近である〈 Vertex-01[月詠中尉]〉ですら、〈Zois-01〉から僅かに離れたところに控えていた。

援護に駆けつけた帝国軍第14師団第3大隊、現場は一部まだBETA戦闘中であることもあり、雑然とした状況。

〈Zois-01〉から少し離れたところに接地した撃震:大隊隊長機である〈Mauler-01〉はそのまま膝を着き、形式的でも着任の許しを乞うもの―――と誰もが思っていた。




だが――。


その虚を衝くように一瞬の噴射跳躍で更に距離を詰め、その時には跳ね上げたように抜刀され大上段に構えた長刀が、何ら迷うこと無く振り下ろされていた。

味方とばかり思っていた撃震の全く予期していなかった凶行に、〈Zois-01〉は何一つ対処することも出来なかった。




ざりッッ!

しかし74式戦闘長刀が抉ったのは、大地――。



―――その凶刃は、間一髪、既の所で躱される。

〈Mauler-01〉が接近した刹那を予期していたようなタイミングで、〈Zois-01〉の背後に控えていた斯衛“赤”の武御雷が、死角から接近し咄嗟に〈Zois-01〉を引き寄せた。
そのまま、体を入れ替えながら庇うように噴射跳躍して距離を取る。


―――ギャリンッ!!

その動作を察知し、同じく噴射跳躍で追撃しようとしたその撃震〈Mauler-01〉の前に〈Vertex-01〉が立ち塞がり、次の長刀の一閃を弾く。


『―――貴様ッ何を遣っているのか判っているのかッ!?』


〈Mauler-01〉大隊長に追従するが如く、モーラー大隊が包囲陣形に移行するのを、ヴァーテックス隊の武御雷がサークル陣形を取りつつ牽制する。



その際で対峙する2騎―――。


『―――笑止ッ!!・・・貴様こそ、一体誰を警護しているか理解しているのか?!
恐れ多くも“紫の武御雷”を乗っ取ったそこな羅紗緬[アバズレ]は、煌武院悠陽殿下などではないっ!!』

『な―――!!』

『・・・・我等に斯衛に敵対する意思はない―――。
・・・しかし “殿下”を騙る淫売[●●]を成敗することを邪魔立てするなら、逆臣と見做し伴に討つッ!!』

『 ――!!ッ 』



〈Mauler-01〉の通信は、全バンド―――、戦域の全てに発信されていた。


当然反射的に〈Zois-01〉の援護に動き出していたオレの背筋にゾッとした怖気が走り、身体の芯から何かが抜けていく。
貧血を起こしたような、悪心がこみ上げる。


―――不味いッ!!

今のタイミング[●●●●●]でこの指摘は、例えそれが虚言であっても、今現在“殿下”が影であることは替え様のない事実。
それを暴かれれば、帝国軍は愚か、斯衛だって事情を知らない者には決定的な疑念が生じる。


『・・・巫山戯るなッ! 何の確証もなく、いきなり斬りつけるなど、それが誇り高き帝国軍人の所業かッ?』

『―――2日前より煌武院悠陽殿下は、極秘にて陛下に第2帝都城に招聘されていた、と皇家守護司である崇宰[●●]様縁の高官より聞き及んでいる―――。』


―――!!!!
崇宰ッ!
九條は、皇帝陛下その人に擦り寄るのではなく、中立派の崇宰を炊きつけたのか?

『・・・確か、そこな羅紗緬が演習に参加したのもその日からだと記憶している。
斯衛がドコまでグルなのかは知らんが、我等帝国軍を謀りBETA侵攻の肉盾とする憎き米国の手先、横浜の妖狐が傀儡。
将軍家遠縁で在りながら、その容姿が殿下に近しいことを利用して殿下とすり変わり、国家を謀ろうという悪逆米国毛唐の肉便器とも成り果てた卑しき羅紗緬、冥き忌み名を持つ女である事も、既に知れている。』

『―――その口、慎め―――。
陛下に仕える高官が“極秘”と言う情報を漏洩すること事態が既にオカシイとも気づかぬ蒙昧がッッッ!!!』




「タケルちゃんッ! ダメだよっ! それ[●●]が九條の狙いだよッ!」

「え・・・? あ・・・。」

純夏の声に、はっとした。
周囲が凍るような月詠中尉の激昂に、釣られて突撃砲のトリガーに掛かっていた力を抜く。
余りの口汚い言い草に、頭に血がのぼり、危うくEMLモードで〈Mauler-01〉を狙撃するところだった。

けれど純夏の言うように、此処で国連軍と国連軍や斯衛軍が衝突すれば、タダでは済まない。
死者が出れば決して拭えない遺恨が残る。




『・・・抑々、ここに居られる“殿下”がご本人だろうと、仮に“影武者”であろうと、それは戦略上の問題であり、一兵卒に預かり知れぬ高度な作戦行動[●●●●●●●]であろうッ!
それを上位の命令さえ無きまま、一高官の機密漏洩如きを根拠に混乱させ、ましてや問答無用に斬撃するなど、反逆罪以外の何物でもなかろうッ!?』

『・・・・命令違反、偽物とは言え指揮官の殺害・・・、軍規に糺せば極刑は免れん事など些事――。
帝国軍第14師団“撃の大鎚[スレッジハンマー]連隊”連隊第3大隊長、帝国軍大尉有間長門が一命を賭して物申すッ!
元より自己の事しか考えぬ横浜の妖狐が、XM3を無償提供[●●●●]することこそが在り得んコト・・・。
それに託け、この時期に新潟で殿下を旗印にしての実弾演習など余りにも不自然。
謀略の疑義在り、と崇宰様が陛下の名において殿下を招聘為されたのに、その不在にも拘らず演習を断行したッ!
ならば・・・その狙いは、XM3実弾演習に託けた“殿下”のすり替えに他ならぬッ!
貴様の言う高度な作戦行動[●●●●●●●]であって、横浜の謀略ではない、と言う証明も無い!
――殿下のご指示の下集いて戦うことを切望してきた我等帝国軍人にとって、それを謀り、偽物が堂々と紫の武御雷に乗る事こそ言語道断、・・・・腸が煮えくり返るわッッッ!!』



―――“撃の大鎚[スレッジハンマー]連隊”。
ループの記憶で云えば、第12師団に続き投入されたのが第14師団だったことしか無く、その名は聞いたことがない。
しかし12・5事件の際には仙台城の臨時政府こそが米国の傀儡政権とも知らず、その護衛に着いた戦術機部隊が在ったはず・・・。九條の手先そのものではなくても、首都防衛軍や、富士教導隊にすら戦略研究会を始めとする九條に誘導された者は大勢居た。
そして更に帝国軍と斯衛、そして米軍を戦闘に陥れた第5計画派の諜報員や後催眠暗示を掛けられた者が混じっていたのも確かだ。
今となってはそれが何処まで伸びていたのか、知る由もない。
仙台膝下の第14師団にも居て、新潟侵攻で消耗していた、としても何の不思議もない。



『・・・今朝方、仙台の駐屯地側で、若い男女の御遺体が発見された・・・。
両名とも頭部の損傷激しく身元の確認は取れていないが、女性は紫の髪[●●●]に “直衣”の装束、男性は国連の[●●●] BDUを着用―――。
・・・・今回この演習に参加している国連軍に、殿下が最も信頼されている御子神彼方大佐の姿が見えないが、どう言う事かね?』


異様な緊張が戦場を圧迫した。









もうすぐ、BETA殲滅も完了すると言うのに、空気が粘着くように重い。
安全圏である空からの攻撃は、乱入者の言葉に多少呆けたところで、BETAに撃破されることこそ無いが、残ったエリア8のBETA殲滅速度が明らかに落ちている。

流石に紅蓮閣下はその剣先が鈍ること無く、しかし、先程までの鬱憤を晴らすかのような高揚感は消え去り、一刻も早く余計な雑魚を片付けて、“殿下”の護衛に戻りたい意思を顕わにしている。


事情を知らぬ斯衛は、月詠大尉に扮した月詠中尉の“高度な作戦行動”という指摘に一旦は動揺が収まったに見られたが、“殿下”と“彼方”らしき遺体の発見という言葉に、再び揺れて見える。
殿下は兎も角、当初参加が予定されていた彼方の不在が何気に痛い。
ブルーフラッグでラプターを撃破し帝国の威信を取り戻したという立場の彼方は、嘗ての“弾劾者”であることや、斯衛での講演の影響もあり、信頼度抜群、斯衛の中での認知度はオレよりも余程高い。
評判の悪かった国連横浜基地がこの短期間に受け入れられたのも、その影響を無視できない。

ましてや、エリア8に展開している“鋼の槍”連隊は、ことの成り行きに、態度を決めかねている―――。



――― 一触即発 ―――。

そして既にいきり立って此処に来た第14師団第3大隊は自らの大隊長の言葉にも煽られ、今にも引き金を落としそうに見える―――。

斯衛と事を構える気はない、そう言いつつも彼らが逆賊と見なす今の〈Zois-01〉を庇う限り同列なのだ。
性能的には段違いの武御雷と撃震ではあるが、この場に於いてはその数は凡そ3倍。
総合司令室[HQ]周辺の通常戦力による警護部隊ですらどっちに着くか判ったものではない。
故に補給に回っていたA-01や、他の戦域にいる斯衛は、動くに動けない。





殿下と彼方と思しき遺体が見つかった―――。

これは、逆にオレの頭を冷静にさせた。
容貌の判別できない遺体が駐屯地[●●●]で発見された、それだけで明らかに帝国軍を煽るための偽物であり、それが逆に殿下と彼方の無事を知らせる。
本人たちを殺害することが出来たのなら、顔を潰す必要が無いのだから・・・。
尤もその遺体をどうやって調達したのかは知りたいとも思わないが、どうせ碌な事ではないだろう。

だがそれは一方で、殿下と彼方がやはり陛下の下に足止めされているのも確かなのだ。
それを見越して、九條は第14師団の合流するタイミングで仕掛けるよう仕向けたのだろう。

正にその思惑通り、そうとは知らない帝国軍、特に第14師団はいきり立っている。
いきなり斬りつけたのも、その流れ。
崇拝し、帰依しているかの様な殿下が弑逆され、その謀略の中心とも思われる成りすましが、目の前に居ると唆されたのだ。
彼らの憎む、米国、現政権、そして国連横浜基地に連なる者が・・・。


けれど、このまま乱戦と成れば誰が味方で誰が敵に成るのか、それすら読めない。
こんなことで多数の死傷者が出れば、帝国・斯衛・国連3方に甚大な被害と修復不可能の深い遺恨を残す。
九條に取ってみれば、どの勢力も最後には米国傀儡の障害となる戦力、今の段階で削って置けるならそれに越したことはない、と言う事なのか。
例え、後で殿下の生存が知られようが、事が起きてしまって居ればもはや事態収拾は叶わない。

殿下の大権奉還の動きを九條が掴んでいたのかどうかまでは判らないが、それすら出来なくなるのは確実だった。



―――これが九條の奸計―――。

彼方に警告されながら、想定外のBETA侵攻数に、九條のチョッカイなど完全に意識の外に飛んでいた。


元々第5計画派に取って第4計画は目の上のたん瘤ではあったが、幾多のループに於いても今の時期に何らかの邪魔が入った事はない。
秘密主義ゆえ表沙汰にならないが、実質00ユニット実用化に向けた進捗はなく、1周目のループ群にある様に、来月にも予定される国連大使の抜き打ち視察が実施されれば、HSSTの墜落など無くても年内には打ち切りとなる状況だった。
2周目の世界では、オレが元の世界に戻ったことで00ユニット完成の目処が立った為打ち切りにこそ至らなかったが、それでも新潟侵攻時には何も進んでいなかった。
要するに今の時期の第4計画は、一切取り立てて気にすることもない存在でしか無かった。



それが何時変わったのか?


先月の22日にオレが三度この世界にループしてから漸く20日経ったところ。

その間に為された、XM3、“森羅”、G-コアを基礎とする数々の装備、それに因って齎された米軍ドクトリンの破壊―――。
前のループでは、XM3の構想は愚か総合戦技演習にすら至っていないこの時期に、これだけの密度。
表立っては、まだXM3しか公開していないが、プロミネンス計画を巻き込んで全世界に頒布など、それだけでも最早第5計画派としては、震度7クラスの天変地異にも等しい下克上だったのだろう。


本来、そのスピードこそが第4計画、と言うかオレ達の最大のアドバンテージ。
状況を、未来を知っているからこその、電撃作戦。
―――第5計画派が、状況を掴み、反抗の体勢を整えるその前[●●●]に上位存在を陥とす―――。
そうすれば、後は人類側に多少の齟齬が在っても最大懸案のBETA側“対処”を封じることが出来る。


故に彼方は瑣末の九條など歯牙にも掛けない。
この世界に来て以来、彼方は九條は愚かその配下にさえ会っていないし、と言うよりも本来ネイティヴではない今は興味すらないのかもしれない。
九條側から絡んできたのは、XG-70の引渡しに関する00ユニット、乃至、XM3の開示要求だけ。
それもXM3にかこつけた彼方の誘い出しによる予防的な排除目的でしかなかったのだろう。
XFJ計画に於けるブルーフラッグ戦完遂要求は寧ろ帝国軍部の思惑が強いし、総合戦技演習の計画漏洩は逆に第5計画派からの要請であろうから・・・。

しかし、それらの目論見が尽く第5計画派にとって最悪の結果に成ったことで、九條も一気に立場を悪くした。



一方米国はBETAの攻勢に、確かに一度は日米安保を一方的に破棄した。
当時の勢いであれば、そのまま日本は壊滅してもおかしくはない。
BETAが突如転進して、横浜にハイヴを建設しなければ[●●●●●●●●●●●●●●]、間違いなくその予測通りに成ったはずだ。
突然のBETAの気まぐれが在ったにせよ、どうにか持ちこたえた日本帝国を軽視して居る訳ではなかった。
太平洋の水深が深く、BETAの海底侵攻は800m以上の深さを進まないとされたため、直接の米国本土防衛に関わるとは思えない。
しかし、バビロン作戦とて人類の自滅を解っていて推進しているわけではなく、本来BETAを駆逐するつもりなのは間違いない。第5計画の推進派に居ると目される傀儡級がバビロン作戦に寧ろ積極的だったのは、少しBETAの数を抑え、速過ぎる人類の減少速度を逆に緩めたい意思が在ったと言う可能性も考えられる。
考えてみれば、傀儡級と言え有する情報は人類のものであり、第5計画を策定した時点で、彼らが大海崩を引き起こすG弾の潮汐作用を把握していた、という確証は無いのだ。

そのバビロン作戦をすすめる上で、主戦場であるユーラシア東側への足がかりとしては、やはりBETA侵攻を土俵際で残した日本帝国が戦略としての地理的にも残っている兵力的にも望ましいのは確かで、その利があるから榊首相の要請にもある程度応えてくれているのであろう。

だが榊首相の本質は、米国傀儡とはかけ離れた存在。
意にそまぬ帝国を実質掌握するための、帝国軍を煽ったクーデターであり、米軍に依る臨時政府の傀儡化であった。
その準備は、今も着々と進んでいる。




そこに予定外の第4計画の成果とその台頭―――。


勿論、彼方の指摘でG弾の運用に疑義が生じているのは確実。
大海崩が米国本土に及ぼす被害も尋常ではなかったはず。
傀儡級がどの様な判断をするのかは判らないが、少なくとも傀儡級ではない良識派はG弾の運用を避ける方向に向かうことは確かで、それが通常兵器に依るハイヴ殲滅であり手段が戦術機なのも確定的。
ステルスが意味を成さないその対BETA戦において、今現在明確な実績を示しているのは“XM3”しか無いのであり、通常戦力に依るヴォールク攻略というハイヴ攻略戦術の可能性を示したのは国連横浜基地しか無い。


つまりは榊首相や、鎧衣課長の言うように、バビロン計画は別にしても第4計画を潰し移民計画を推進したい第5計画派も、そして米国の覇権は譲れないがBETA駆逐は目指したい良識派も、今現在の最もプライオリティの高い狙いが第4計画にシフトした事は紛れもない事実だった。


無論、―――彼方はそれらを承知の上で、XM3他それらの装備の価値を釣り上げ、対価とすることで第4計画による喀什攻略への路を拓こうとしているのだろうが―――。



ステルス看破の手法は兎も角、OSを換装するだけで、不知火弐型だけではなく、ACTVでさえF-22Aを凌駕する機動を見せた。
オルタネイティヴ計画そのものに批判的と言うか反対していたプロミネンス計画派でさえ、XM3を認めている。


95年に横浜の魔女、立案者である香月夕呼博士を司令官として、帝国が誘致し開始された極秘計画。
博士の理論を応用した量子電導脳を搭載する00ユニットによる、対BETA諜報と、齎された情報による対BETA戦略の構築―――。
その中に於いて00ユニットは手段であって目的ではない。
計画の進捗とは本来00ユニットの完成によって量るわけではなく、BETA情報の鹵獲とそれに対する人類の戦略・戦術が提示されれば良い、とも解釈できる。
勿論本来00ユニットである“森羅”も完成している訳であるが、それを隠蔽しても、XM3を用いたヴォールク攻略のプラチナ・コード提示は、言い換えれば第4計画の明確な“成果”であるわけだ。


ぶっちゃけ第5計画派は、接収という形で第4計画の成果が欲しい。


その第5計画派、ひいては九條に取って避けたい状況とは何か――。

それは、国連横浜基地の第4計画と、斯衛、或いは帝国軍の実働部隊・元帝国陸軍が近くなること。
事此処に至って、帝国軍下層と国連横浜基地が近づくのは不味い。
それはそのまま“クーデター”の誘導よる横浜の接収という手管の喪失に等しい。


実際、以前のループの様に第4計画が夕呼先生だけだったら、何も考えなくて良かった案件。
しかし、彼方というキャラクターが国連横浜軍に併属し、その“成果”を“殿下”の功績として融通したことで事情は変わる。
宋家である九條を切ってまで殿下を救った“弾劾者”。
その意味からも、本来なら、斯衛と国連軍、そして帝国軍の合同実弾演習などとても九條が認められるものではなかった筈だ。



―――それを、認めた。

九條にしてみれば、台頭してきた第4計画を潰し、帝国軍との距離を開くどころか敵対させる千載一遇のチャンス。
それが殿下が参加する“新潟実弾演習”であったわけだ。



“御剣冥夜”の存在も、国連横浜軍に在籍することも、承知の上。
“殿下”を拐かせば、“冥夜”が影武者に成ることを読んでいた。

その上で殿下を弑逆し、身柄の奪還に動くであろう彼方をも暗殺してしまえば、未だ帝国軍としては懐疑の対象である夕呼先生に全て擦り付けて、帝国軍と国連軍、更には斯衛軍の間に決定的な亀裂を生じさせることが出来る。

よしんば暗殺までは行かなくとも、殿下や彼方を最悪足止めさえ出来れば良い。

今現在、紫の武御雷に騎乗しているのは、紛れもなく冥夜[●●]なのだから。


それを覆せない限り、第14師団の有する根本的な懐疑を晴らすことは出来ない―――。
此処での戦闘や問答無用の制圧や口封じは、周囲の事情を知らない斯衛や、まだ戦っている第12師団にさえ疑惑を与えるだけ。





『・・・有間大尉、――その方に尋ねよう・・・・』


凛とした声が全チャンネルを通して響いたのは、その時だった。


Sideout




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