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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近
Name: maeve◆e33a0264 ID:c23374a1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/09/11 17:22
'13,06,07 upload  ※思いの他時間を喰ってしまいました
'15,01,24 語句統一
'15,08,21 誤字修正
'15,09,11 齟齬修正


Side みちる(国連太平洋方面第11軍A-01中隊)


「10時方向、残存BETA20! 距離2,000、接敵まで20秒!」
鶴翼参陣[ウィング3]で迎撃!」
『『『『『『 了解! 』』』』』』

CP[涼宮]のコールに応え下した指示に、いくつかの返答。
ヴァルキリーズは、即座に飛行編隊を組み直す。

「・・・エリア2内の残存BETAは、中型種以上で既に50程度。コレを狩ればA-01[コッチ]分は、ほぼ掃討かな。」

自然に右翼迎撃後衛の位置に後退しながらデータリンクをチェックした内容をCP[涼宮]ナヴィシートからの肉声が伝えてくれる。


新潟防衛の戦域全体で見れば、まだ1,000近くが残っているが、その殆どはエリア7と8。
上陸とほぼ同時に戦術機甲部隊が接敵した最後のエリアで、艦砲援護を受けていない為残存数が多い。
対応しているのは、帝国軍第12師団戦術機甲連隊“鋼の槍”。
艦砲援護が無いのは織り込み済みで、すでに擁した機甲部隊によるエリア内の光線属種・要塞級の全てを優先撃破している。
1,000体程度であれば、連隊規模戦術機が滞空の自由を得た戦況で、翳りは無い。

―――寧ろこれ以上国連部隊はでしゃばらないほうがいいだろう。




「接敵まで20秒―――。」


各自が87式突撃砲を構える。
その展開した鶴翼陣形から、僅かに突出する機体が在った。

「〈 Valkyrie-07[とおの]〉、出過ぎだ。
・・・・焦ることはない。」

『!!、申し訳ありませんッ!』

珍しいこともある。速瀬や涼宮(妹)ではなく遠乃。
どちらかと言えば普段から臆病で、寧ろ危機を察知しているように余り前に出ない、積極参加しない遠乃が焦るとは・・・。
網膜投影で確認する表情と今の様子では、戦況が極めて優位に推移していることによるトリガーハッピーと言うわけでもなさそうだ。

「・・・・・何か具申が在るか?」

『あ、いえ、そんな・・・。ただ少し胸騒ぎしただけです・・・・。』

「・・・・。」


上手く行き過ぎている故の不安心理か、或いは好調が裏切られたときのための防衛本能か・・・。

・・・そうだな、まだ終わったわけではない――。

遠乃の応えに自らも気を引き締める。
客観的にも状況が収束方向に向かっていることは確かで、そこに安堵と歓喜を感じることは確かだが、まだ状況が終了したわけではない。

それでも、A-0大隊はおろか、今回参加した斯衛軍・帝国軍に到るまで、人的損耗は未だ “0”。


―――誰も喪わない―――。

これを達成してこそ、何よりも嬉しい快挙なのだ。
その為にも、未だ気を緩めるわけには行かなかった。







元々A-01部隊は、国連太平洋方面第11軍A-01連隊[●●]だった。
この伊隅ヴァルキリーズとて、本来3個大隊108騎で構成される戦術機甲連隊の中の、第9中隊に過ぎないはずだった。

しかし、A-01連隊は現実に一度たりとも定数に達したことはなく、第1中隊から損耗しては後ろに補充するという形で維持されてきた。
事実、私が新兵として配属された時は創設からまだ半年と過ぎていない頃だというのに、既に第1から第3迄は存在せず、第4から第7中隊にも欠員がチラホラ存在する状況であった。
始めから欠番や定員割れがあったのも事実ではあるが、殆どは損耗してそうなったのかは明らかで、任官してからの状況を鑑みるに大方の予想はついてしまった。

――第9中隊とは、つまりA-01連隊の最後[●●]の中隊。
それは帝国という人員的にも、第4計画としての存在的にも、すでに時間的限界に差し掛かっていると言う事らしい。
その証拠に元々A-01の専用訓練部隊である207衛士訓練部隊には、今在席する207B以降の訓練兵が一人も居ない、と言う事を神宮司教官から聞いた。


そして第4計画直属の特務部隊であるA-01部隊の激務は、その損耗もまた激しかった。
簡単に言えば、出撃すれば半分は還らず―――。
ついさっき分かれて戦術機に騎乗した先達が、同期が、そして部下が、2度と顔を見ることすら叶わず、視界から消えていく。
横浜に至る前の首都防衛戦、間引き作戦、威力偵察、そして明星作戦―――そんな経験を、何度したことか。
彼らの事を語り継ぐ、その時間さえ中々取れず損耗していくばかり。

横浜に来てからも、何時かあの桜の下で―――。
そう互いに誓いながら喪う度に刻まれる想い。

それがA-01連隊の常であった。


第8中隊までの全てを損耗した今年年初の大規模な佐渡島間引き作戦以降、唯一生き残った第9中隊も春先には新兵補充でどうにか中隊定員を維持した。
その中にあって、ここ半年ほどがエアポケットの様な戦闘の狭間とも言えた。

勿論その間にも人類を取り巻く状況は、悪化の一途。
戦況的・統計的にも人類の生存はあと10年と言われる今の事態が好転したから戦闘が減ったわけでは決して無いのだ。
刻々と拡大している佐渡島ハイヴに対し遅々として進まない間引き戦術。
光線属種が支配する島嶼ハイヴという存在は、極めて間引きすら儘ならない存在だった。
その佐渡島からBETAが本格侵攻を始めれば、次は祖国が滅ぶ。
前線国家として風前の灯とも言える状況に世相は暗く、もはや諦念が支配し始めてすらいる。

それは比較的物資に恵まれていると言われる国連横浜基地内ですら例外ではなく、焦燥や自暴自棄に依るイザコザならまだ発散しているだけマシで、嫌戦や諦念に依る無気力症候群などの精神疾患さえ徐々に蔓延り初めて居た。




しかしその状況に一条の光を差したのが、先月唐突に横浜基地に現れた二人の男―――。

我々A-01とは別の次元で第4計画の特務についていたという極秘部隊の出自。
詳細は“NEED TO KNOW”であり、私にも明らかにされては居ないが、その技量と技術が途轍もない事だけは紛れもない事実である。

新兵と変わらぬあの歳で異常とも思える機動を熟し、“奇跡のOS”と呼ばれ始めたXM3の基本概念さえ創出したという白銀武少佐。

御子神彼方大佐は、その画期的なOS:XM3を基礎から組み上げただだけではなく、副司令の計画に於ける目的達成の為に必要な終局的目標であった装備の作成に付いても多大な貢献をした、と副司令自ら聞かされた。

そのXM3による戦術機機動の革新と、対BETA戦術支援システム“森羅”として実装された情報処理革命が、今のこの状況を齎しているのは、誰の目にも明らかだ。
これらの新装備によって光線照射の回避すら実現、的確な光線属種の早期排除を可能とし、空の自由を得た戦術機は総数20,000にも及ぶBETAを制圧していく。

勿論そのことに歓喜も希望も感じる一方で、同じ佐渡に何度も苦杯を舐めた経験を持つ者としては、何故もっと早く、という感情が湧いてくるのも確かで、理性では解っていても感情では割り切れないモノがあるのは詮無い事であろう。


単騎世界最高戦力と評される白銀少佐の技量は、当然シミュレーションの中だけではなく、この新潟防衛戦でも遺憾なく発揮されているのは、今更繰り返すまでもない。
ユーコン基地に於けるブルーフラッグ戦で、F-22Aを打破するだけの技量を持つ御子神大佐が何故参加していないのか、は聞かされていないが・・・。








『〈Valkyrie-02〉FOX3ッ!』
『〈Valkyrie-05〉FOX3!』

鶴翼[ウィング]の両端、速瀬と相原の突撃砲がBETAに機銃を浴びせる。




“特殊潜行部隊”と言う事で、基本光線属種の照射がないハイヴ潜行訓練を繰り返してきた我々は、フライトとトレイル、その双方を習熟してきた。
プラチナ・コードを手本とするハイヴ攻略は、接敵の無いスタブではトレイルで侵攻し、接敵してもフライパスするなど接触と弾薬の消費を極力抑え、BETAを後方に置き去る。
その為のスタブ内空間を最大限利用した3次元機動が求められていた。

勿論、この新潟防衛戦、昨日までは実弾JIVES演習に於けるシミュレーション、更に事前の斯衛軍合同V-JIVES演習にも参加し、地上防衛戦用のフォーメーションも練ってきていた。

それが、鶴翼参陣[ウィング3]である。


対BETA戦に於ける戦術機フォーメーションは、通常傘型[アロー]楔型[ウェッジ]陣形が用いられる。
物量で押してくるBETAに対し、接敵数を減らして集中突破し、内部から混戦に持ち込んで掃討、という思想である。

しかし、XM3による恩恵―――機動性の劇的な向上から、BETAの物量をいなし、あまつさえ光線属種の初期照射を躱せる可能性を得たことで、寧ろ密集し機動や射線の自由度を減じるフォーメーションの有用性に疑義が生じた。
ハイヴに於いても今までの接敵全数殲滅侵攻から、高速通過による撃破目標達成を目指すようになり、中央突破が必要となる余程密度が高いエリア以外では、空間自由度の高い鶴翼陣形の方が個々のBETAを回避しやすい。
地上戦でも光線属種込みで侵攻してくるBETA群に対しては中央一点突破で蹴散らし、BETAそのものを壁として照射を避けつつ殲滅する為にそれらの陣形が有用とされてきたが、白銀の示した光線属種の照射誘引と回避による線源位置把握と優先殲滅を実現するために検討した陣形も鶴翼[ウィング]だった。

両翼を低空先行させつつ、後続がその突入支援。光線属種の標的を左右に振ることで照準を付けにくくしながら、最後方が一時的に高さを取ることに依り光線属種の照射誘引を行う。
そうして位置の判明した光線級に、両翼先端が一気に突撃し優先排除する―――。

白銀はそのプロセスを単騎で行っていたが、我々凡人[●●]にはそうそう辿りつける境地ではない。
故に、部隊規模で効率的に実行する方策として取ったのがこのフォーメーションである。

それに合わせ、中隊の編成も一部変更していた。
元々右翼後衛をA小隊とし、隊長で迎撃後衛[ガン・インターセプター]の私以下、強襲掃討[ガン・スイーパー]を築地、砲撃支援[インパクト・ガード]に宗像、制圧支援[ブラスト・ガード]の風間で構成、B小隊は左翼後衛であり、小隊長辻村以下、涼宮(妹)、柏木、遠乃が、A小隊と同じポジションの左翼を担い、C小隊は小隊長を速瀬とし、相原、高原、麻倉の全員が突撃前衛[ストーム・バンガード]のポジションに着いていた。
中隊構成としては、強襲前衛[ストライク・バンガード]打撃支援[ラッシュ・ガード]を置かない陣容である。

しかし、傘型[アロー]楔型[ウェッジ]を多用しないことから、この新潟遠征に於いては、高原と麻倉を強襲前衛[ストライク・バンガード]とし、装備の砲撃強化を図った。

結果としては、突撃前衛の光線属種強襲に対する支援砲撃密度が上がって排除速度が向上する結果となり、更に実弾JIVES演習に於いて十分に習熟でき、光線属種を含むBETA地上戦に十二分に通用することが証明が出来た。


更に今回発生した、現実のCode991でも同様。
勿論今回のBETA侵攻では“森羅”情報を基にした安全策を最優先、艦隊艦砲や海中攻撃と機甲部隊に依る水際殲滅を敢行した為に早期の光線属種排除が達成され、部隊によるフォーメーション検証は試せなかったが、逆に地上戦における滞空殲滅を行うことと成った。

ここでも“上空”が使える状態では、傘型[アロー]楔型[ウェッジ]陣形は後衛からの射線を遮る陣形となる。
結果、BETAに対するより高い弾幕密度を稼ぐため、鶴翼[ウィング]陣形を多用する事となっていた。






「アンタ達の“死に場所”は、新潟[そこ]じゃ無いからね。
今回の遠征では、一兵足りとも損耗は認めないわよ―――。」

それが出立間際、副司令に言われた言葉。

突然の実弾演習参加や、傍目には無茶苦茶に見える新装備の先行配備などイロイロゴリ押しするからには、確実に何かあると感じていたから、その言葉も当然のように受け取った。
抑々演習だけで命の危険などそうそう無い筈なのだ。
なので突然のCode991もやはり来たか、と言う程度。
新任衛士でさえ殆どがこの侵攻を当然の様に感じていたのだから、先任者は全員予測していただろう。
何せ、あそこまでBETAの行動を予測する“森羅”がいて、そしてその予測はシミュレーションの世界だけではなく、現実でも使える、と言うのであるのだから。
あの情報収集能力と行動予測能力が在れば、侵攻予測くらい出来ても全く不思議はない。


二人の上官の帰還を受けて、A-01連隊は構成を一新し、A-0大隊として再編された。

A-00中隊が、“概念実証”、そしてA-01中隊は“特殊潜行”部隊と明記されたハイヴ潜行特務部隊なのだ。
だから例え、現実にBETA侵攻が生じても、今回の新潟防衛戦はA-01に取ってXM3慣熟確認と新兵の度胸付けが主目的であり、イザと成れば戦域を放棄し斯衛や帝国軍に押し付ける、或いは国土を犠牲にしてでも“生き残る”事を最優先にしろと言う意味。
例え帝国軍や斯衛軍が壊滅しても、A-01中隊が優先するのは年内に予定されているという“2つ”のハイヴ攻略。
それが為されなければ、“人類”が滅ぶと言う。

世界はもうその“瀬戸際”に居る――。







『〈Thor-01〉より〈Valkyrie-01〉』

唐突に網膜投影に映るバストショットが増える。
いままで常時通信を非アクティブにしていた大隊長殿の表情は、しかし何時もの年下らしい笑顔ではない。

「こちら〈Valkyrie-01〉、・・・なにか?」

『――残弾数はどの位残っていますか?』

「・・・ A-00中隊[そちら]が結構喰ってくれたからな。前衛で半分・・隊全体では弾薬・推進剤共に6割程度残している。」

『・・・了解。伊隅ヴァルキリーズは、今対応しているBETA群を掃討次第、総合司令室[HQ]に展開してください。』

総合司令室[HQ]に?」

『〈 Galm-04[みこと]〉だけでなく、〈 Fenrir-02[イーニァ]〉からも意見具申がありました・・・。
杞憂であればそれに越したことは有りませんが、今現在あそこの護りは薄いので。』

言われて先程の高原の表情が脳裏に閃く。


『こちら〈 Valkyrie-02[はやせ]〉、接敵BETA掃討完了、だ。』

「――――了解。
A-01部隊[ヴァルキリーズ]は、直ち[●●]に、総合司令室[HQ]に展開、周辺警戒に当たる。
各隊、ダイアモンドにて編隊飛行、行くぞッ!」

『『『『『『『『『『『『 了解[ラジャー]! 』』』』』』』』』』』』


――やれやれ。
もう一踏ん張り、と言うことか・・・。


Sideout




Side 真那(帝国斯衛軍第19独立警護小隊)


――――大勢は決した。

既にそんな雰囲気が、この総合司令室[HQ]周辺にも漂い始めていた。


突然のCode991は、当然地方・中央問わず、統合参謀本部にも通達されている。
既に東北方面からは喜多方を通過し、旧磐越自動車道沿いに西進していた後詰めの第14師団もあと20分程で戦域に到着する。
かなり速い対応だが、元々訓練でも第12師団の参加により防衛の空白域と成るエリアを想定して待機要請をしていた部隊であった為、予期せぬBETA侵攻を危惧して現場援護に早々に動いた、と言うことか。
空前の侵攻数に防衛線の崩壊も視野に入れた配備だろうが、実際迎撃戦の蓋を開けてみれば、今のところ圧倒的な優位で推移する戦況。
第1波の誘導殲滅、そして第2波での機甲部隊防護に成功したことが、此処まで優位に進められた勝因であることは明確であろう。

このまま上手く推移すれば第14師団が到着するその頃には殲滅が完了している為、彼らが完全に後片付け要員と成ってしまうのは必至。
早朝からの長駆に申し訳ないが、命のやりとりをしなくて良いのだから僥倖と納得してもらうしか無いと一人苦笑する。


『こちら総合司令室[HQ]、第14師団第3戦術機甲連隊に通達―――。貴隊の援護を感謝する。
現状、戦況は我軍優位に推移している。
戦線にて援護を必要とする状況は、報告されていない。
よって貴隊には今後の不測の事態、及び漏洩小型BETA種の殲滅に備え、後方待機を要請する。
第1大隊は新津付近、第2大隊は南蒲原郡周辺、第3大隊は旧三条市街に展開せよ。』


―――故に、総合司令室[HQ]の指示も微温い。






思えば私は事の当初より白銀少佐や御子神大佐と殿下との極秘会談に案内役で参加していたこともあり、現況はほぼ把握していた。
今思えば、一介の警護小隊に過ぎない私が国家どころか国際的な最高機密に属する情報に触れる事を許された事自体が在り得ないのだが、行く行くこうして巻き込む意図が在ったと言うことなのだろう。
最初は浜離宮で明かされた内容は驚愕の一言であったが、自分としては半分以上疑っていたのだ。

しかしその諸端でもあるBETA新潟侵攻がこうして現実に起こるとなると、その信憑性は一気に高まる。
殿下や首相は“最悪”を想定して対処を講じる必要があるため、当初から齎された情報に沿って動いたが、やはりこの新潟侵攻が一つの起点であることはかわりないだろう。

V-JIVESやJIVESに於ける“森羅”の性能が現実でも可能であるからこそ齎された情報であることは疑う余地もないのだが、この予測が正しいと言うことは、BETAの成り立ち、情報伝達構造や、人類に対する戦略構築に関しても正しい可能性が極めて高くなる、と言うことなのだから・・・。

―――それは、この後2ヶ月のハイヴ攻略の成否如何で、帝国の、そして人類の存亡が決する、と言う事に他ならない―――。




抑々帝国の危機は、知らぬ間に喉元まで迫っていた。
今の状況にしたところで、侵攻規模は完全に想定外―――。
もし、事前の予測に依るXM3の演繹、装備の拡充、そして斯衛の配備や連合艦隊への根回しがなければどうなっていたことか――。

佐渡島H-21ハイヴより湧き出て新潟に向け侵攻を開始した師団規模BETA群、中型種以上で15,000、総数予測では20,000に届こうかという佐渡島ハイヴ建設以来未曽有の規模―――。
それは今の内政的に複雑[●●●●●●]な状況などなんら関係なく、正しく祖国存亡の危機と言っても差し支えない状況で在るはずであった。

そして新潟に展開していた帝国軍第12師団1個、斯衛軍が合計して1個連隊規模、そして国連横浜軍は1大隊にも満たない2個中隊規模。
事前のJIVES演習でも総数10,000のBETAに漸く対処が出来る規模であり、相当の被害を見込んでも15,000が限界―――、その評価でさえ“XM3”と“森羅”の効果を見越して嵩上げされた斯衛軍を含む総合司令室[HQ]の戦力分析としては破格の数字でであったが、それでも到底及ばないBETAが押し寄せた事になる。
一気に防衛戦は瓦解、内陸への侵攻を安々と許してもおかしく無い状況だったのだ。


だが、しかし―――。

その想定外の状況にも拘らず、“常識”を遥かに凌駕した“森羅”の戦術展開は圧巻であった。
光線級・重光線級は最優先排除を完了、各エリア上陸の殿だった要塞級も殆ど陸を踏ませることなく水際で撃破した。
それをJIVESですら再現できない実戦に即した艦隊の艦砲や機動艦隊の魚雷攻撃、そして帝国軍の機甲部隊を有効に機能させることで、達成し得てしまった。


―――それは[ひとえ]に戦術機に“空”を取り戻す極めて重要な布石。

光線属種の脅威を排除し戦術機に空中の活路を確保出来れば、基本的に地面を蠕くだけのBETAはもはや脅威とはならない―――。
正しく相手の攻撃を一切受けず、一方的に此方が攻撃できる位置の確保。

“森羅”の驚異的な探知能力を駆使し、投入された全軍を極めて効果的に使役する事によって、20,000ものBETAをこの状況[ハメ]に追い込んだ。
恐らく既存の概念に凝り固まっていた誰もが想像もし得なかったこの戦術は、どのみちどこぞ[●●●]策略家[はらぐろ]が、“森羅”にインプットしていたに間違いないのだ。



上陸した14,000余りの中型種以上のBETAで、今も残っているの数は既に1,000体程度。
試製S-11X炸裂弾の実戦証明となったエリア1はその後エリア2と合流したが、残りは50程度。
上陸直後に第2艦隊の艦砲射撃で大きく数を減らしたエリア3から6までも、100体以下。
エリア7とエリア8こそ上陸した半数近くが残存しているが、対応する“鋼の槍”連隊にも焦りの色はない。
寧ろ接敵しては上空に逃げ、群れを散らさぬよう誘導しながら削る、そんな状況であり、あと30分もしない内に、掃討は完了する、と予測されていた。

勿論、防衛側の損耗が完全に0とは言い切れない。
爆破殲滅した第1波と違い、第2波の本隊では直接接敵して倒すことを基本とした為、現時点で戦術機の大破が2,中破9、小破31。
その殆どが残弾数と距離の関係により機甲部隊の砲撃で潰しきれなかった要塞級掃討の際の被弾であり、結果重傷1,軽傷6を出したが、それでも命に関わるケガではない。

―――つまり今のところ死者は皆無―――。


このまま推移すれば、対BETA戦闘に於いて、20,000を迎撃殲滅しながら人的損耗が0という、歴史的大勝利を収める。

と成れば、この実弾演習を提起し随伴した“殿下”には、見事に敢闘した部隊への労いの“お言葉”を掛ける必要もあろう―――。




“殿下”―――。

今は名を呼べぬ主を想う。
そしてフッと自嘲にも似た笑が零れる。

そう、“覚悟”を決められた“殿下”には、最早それすら既に杞憂であろう。





――幼少の頃より仕えてきた。

一族のしきたりに因ってその身に降り掛かった理不尽な境遇。
たった10数分の差―――その順番だけで、一人は光に一人は闇に分たれた。
今の世に何という暗愚、そう言う意見もあろう。寧ろ平民や海外であれば一笑に付される様な謂れの無い習わし。
それでも、そういった仕儀に拘泥してきたのが帝国における武家の在り方であり、そこに生を受けてしまった以上、不運としか言えぬ。

その名すら忌み名と言えそうな、影に生きるしかない者。
生まれてすぐ両親とも隔たれた遠縁に忌避され、その後も蟄居とまでは行かないまでも、殆ど隠遁する様な生活に近い。
客観的に見て、また例えばそれが我が身に降りかかったとしたら、どう考えてもヒネてしまいそうな境遇。



―――それでも真っ直ぐだった。



そして、双方がどれほど互いに慮っていようとも、その道が交わる事はない。

――――そう思っていた。ほんの3日前の夜までは―――。


BETA侵攻は終息の目処が立った。
しかし、今の事態[●●●●]は、全くの先行き不透明で、一過性の事なのか、今後永続[●●]する事なのかすら解らない。

寧ろもう一つ[●●●●]の状況は、これから始まるのかも知れない。





“殿下”の後ろに控える警護の“赤”が交代する。

更に後方には、神代・巴・戎の“白”が控えている。

元来この演習に於いて殿下の守護に当たるのは、当初第2連隊の2大隊から1個中隊づつの2個中隊と、第16斯衛大隊から1個中隊の計3個中隊36騎の予定。
それが、そのまま総合司令室[HQ]の直衛としても機能する。

しかし、発生した総数20,000という未曽有のBETA侵攻に、斯衛の編隊を変えさせたのは“殿下”。
第2連隊の2個中隊を戻し、第16大隊の1個小隊、つまり実際は第19独立警護小隊だけで良いと言い出した。

そなた等が護らねばならぬのは、このワタクシではなく、この国そのもの。
履き違えるでない、――と。

それは正しく殿下が言い出しそうなお言葉。
演じるのではなく、自らがその立場に在る者としての“覚悟”から出たものだろう思えるほど自然な立ち振る舞い。
事情を知らぬ総合司令室[HQ]周辺にも“殿下”の殿下らしさを印象付ける物腰だった。


流石に総合司令室[HQ]含めた警護にそれは罷り成らんと、紅蓮大将は自らの“金角赤”〈Crimson-01〉と第16斯衛大隊からヴァーテックス隊1個中隊12騎を“殿下”および総合司令室[HQ]の護衛として周囲に配した。

元々訓練兵“御剣冥夜”に付く帝国斯衛軍第19独立警護小隊は、今回の遠征に於ける警護を継続する為、空席だったA-00中隊に〈Freja-01〉から〈Freja-04〉とし国連部隊として紛れ込ませて貰う手筈だった。
正式任官とも成れば明確に警護対象から外れ、遂に私の手も届かぬ独り立ちと成るのだが、未だ“仮”で在る微妙な立場を利用し強引に警護継続をお願いした下りもある。
当然Code991の発生予測を知らない冥夜様は警護小隊の随伴を嫌がったが、“不測の事態における戦力の確保”という武殿の言葉に漸く首肯してもらえた。

そしてその設定も土壇場での“重大な事態の変化”に連れ、更にA-00中隊〈Freja-01〉から〈Freja-04〉は、第16斯衛大隊第3中隊〈Vertex-01〉から〈Vertex-04〉のコールサインにすり替っている。
特定の個人を警護している筈の独立警護小隊や、国連横浜軍に属するA-00中隊が現場で“殿下”をお護りするのは余りに不自然すぎるからだ。

本来は、殿下直衛である従姉妹の真耶と、周辺の隠密御庭番が埋めるべきコールサインであったが当然ながら〈Vertex-01〉は不在。〈Vertex-02〉から〈Vertex-04〉は、〈Crimson-02〉から〈Crimson-04〉として紅蓮閣下の下に着いていた。
元々殿下周辺の側仕え、真耶でも閣下でも同じようなものらしい。

“殿下”の周囲を護る者として、真耶の代わりに私が伊達メガネを掛け偽装している。
殿下の直衛である真耶と容姿が似ていることを、初めて幸運だと感じた瞬間でもある。
そして〈Vertex-05〉以降〈Vertex-12〉も、私の他に“赤”が3機存在する第16斯衛大隊の中でも殿下の守護に重きを置いた警護中隊に近い存在だった。



今も11月の木枯らしに悠然と佇む紫紺の武御雷“改”。
今までの“演習”と異なり、実戦である今、ハッチは閉じられ、管制ユニットに身を置いて何時でも動ける体勢にある。
無論、最高位の司令官が無闇にその姿を晒す事など無く、通信は音声のみ。その表情を窺い知ることも出来ない。













『―――“森羅”より警告ッ!!』

唐突に、その静寂は破られた。

『―――本土大深度地下に[]在り!
地下からの大規模侵攻[●●●●●]ッ!!
規模、集中し過ぎて総数不明なるも、観測された質量より予測、約5,000ッ!!』


え――――!?


“森羅”の抑揚を感じさせない筈の機械掛かった電子声音さえ強ばって聞こえる。


―――この段階に至って大規模地下侵攻!?
しかも5,000ッ!?、




『―――BETA予測出現位置、N37.620265、E139.00044―――ッ! HQ西北西500m地点ッ!!
進攻速度・・・、速過ぎる!? 地表出現まで約40秒ッ!』


データリンク画面、周辺の索敵情報に大きな円が出現。
立体視すると、直径200m近い縦抗の側壁一面を埋めた“管”が、壁面に沿って上昇しているのが判る。
その長さは下端が見えない為不明。
壁面を上がりつつ、上部を埋めていた土砂を、中央から下部に送るような動きは、個体であるはずのBETAが、正に“群体”として統一された意思を有するかのような動きである。

“森羅”の言う大深度地下がどの程度かは知れぬが、表示された地下範囲は最大で200m。
そこから壁面を迫り上がるBETA群体[●●]は、秒速5m程度で地表を目指している。
自転車程度の速度だが、地中を掘り進む速度としては、確かに異様に速い。
落とす土砂は一度掘り進めた後、埋めた偽装抗に近いのかも知れない。



『クリムゾン隊、ヴァーテックス隊、全機迎撃体制――ッ!』

閣下の指示が飛ぶ。

『展開している整備・補給部隊は、直ちに撤収ッ!、物資は構わん、置き去りにして即時撤退。機械化歩兵はその援護。』


地響きのような細かい振動が感じられる様になる。
なのに音もなく、前方、直径200m近い地面が突然消失するかの様に陥没した。
下からBETAが迫上って来るというのに、その深淵は深く、砂煙も立たない。
管形となった群体BETAの上昇は続き、地上までの土砂を全て落としたのだ。

そして土砂を全て落とし終わった後に下端に出現したのは、塊の様なBETA群体。
それは、壁面のBETAに因って、先程の土砂とは逆に、エレベーターの様に押し上げられていく。


その様子に戦慄する。


ほぼ垂直に開いた湧出孔。
壁面は垂直であり、この壁面を這い登れるのは、多脚を有する要撃級と戦車級、あとは要塞級が可能か否かだろう。
斜面を苦手とする他の種は、自力で登ることは出来ない。
しかし、BETAが群体として機能し、この様な[●●●●]行動が可能なら、垂直面は登れない筈の種族が地下から突然現れる状況も理解できる。
何しろ“抽送管”が送るようなその動作には、殆ど音も振動も無い。
先ほど土砂の崩落で生じていた微細な振動さえが、今は感じられない。

この為[●●●]に多脚である要撃級と戦車級の構成比率が高いのか?、とさえ思ってしまう。
両者の構成比率は各々30%、2種でBETA全体の60%に達するのだ。
他種族の“垂直移動”を補佐するとしたら、その比率も納得出来る。



総合司令室[HQ]、移動準備急げ!』

巨大なトレーラー型の移動式作戦本部。
だが展開しているテントや建屋内に移動した機材もあり、簡単に動けるものでもない。
今後の戦術の指針と成る、データリンクによる膨大な戦況の推移データは簡単に諦めるわけには行かない。


ヴァーテックス隊が、その湧出孔と総合司令室[HQ]の間を遮るように布陣する中、右手より飛来するバーナー炎を見た。


『―――此方国連太平洋方面第11軍 A-01中隊[ヴァルキリーズ]隊長伊隅、このまま湧出孔内部のBETAに攻撃を開始する!
A-01、湧出孔上空に鶴翼参陣[ウィング3]ッ!、
制圧支援[ブラスト・ガード]、残っている多目的自律誘導弾全弾、他120mm弾ある者、全部叩き込めッ!!』

『〈Valkyrie-06〉FOX1!』
『〈Valkyrie-07〉FOX1!』

流れるような淀みのない高い練度で湧出孔周囲に鶴翼参陣[ウィング3]を敷くと、その後衛に着いた制圧支援2騎が有する92式多目的自律誘導弾システムから自律制御型多目的ミサイルが放たれる。

既に“抽送管”は地表ギリギリ、湧出孔中央のBETA“群体”でさえ地表まで100mの位置まで上昇していた。

“あれ”が溢れ出せば、戦線が一気に瓦解し攝ない!

しかしこの位置まで上がって来てしまえば、既にS-11も艦砲も使えない。
せめて総合司令室[HQ]から2km離れていれば拡散する前に集中殲滅出来るのに!



「〈Vertex-08〉、〈Vertex-11〉、此方も92式在るだけ打ち込めッ!」

『『 了解ッ!! 』』


A-01が鶴翼に展開し、ミサイルと120mm砲による攻撃を始めた直後、そのウィング陣形が、不意に崩れる。

次の瞬間、奈落のような湧出孔の暗闇から、4条の光条が迸る。


『〈 Valkyrie-03[あきよ]〉ッ!?』
『〈 Valkyrie-05[みさ]〉!』


そのうち2機は躱し切ったが、初期照射警報に対応しきれなかった2機が被弾。

『クゥっ!、――被弾ッ!』
『キャァッ!』

警告を受けなかった数機が照射源と思われる付近に120mm弾を応射して沈黙させる。
1機は左の噴射跳躍ユニットを、もう片方は右腕を突撃砲ごと持って行かれたがそれでも声が出るだけいい。

『クッ、中央“群体”上部に、光線級が存在! 高度落とせッ!』


続く光条に、もう一機、92式多目的自律誘導弾システムを有する制圧支援[ブラスト・ガード]が左膝から先を持って行かれたが、自らが放っていた何発もの誘導ミサイルが命中したのか、光線級はそれきり沈黙した。

『〈 Valkyrie-07[ゆり]〉ッ!』

『大丈夫です! 全弾撃ち尽くしたら、後退します!』



ミサイルや、120mm砲弾の掃射に、“群体”の上昇速度が鈍る。
が、元々装弾数の少ないそれらは、瞬く間に撃ち尽くす。
拮抗は、30秒も持たなかった。

そして、湧出孔の辺縁から、遂にBETAが溢れ出す。
“抽送管”を形成していた多脚種が、地上に出たことでその結合を解き、拡がる。


『―――全軍、掃射開始ッ!!』



A-01も高度を落とし、被弾した機体は後ろに下がる。
ヴァーテックス隊、クリムゾン隊と共に、湧出孔周囲に展開し36mm砲の掃射が開始された。

しかしそれだけで地響きを伴う掃射も、湧出孔辺縁部から溢れる分を防ぐことで精一杯、中央を迫り上がるBETA“群体”を留めるには至らない。



「―――クッ! 神代・巴・戎!」

秘匿回線を開く。

『『『 はッ 』』』

「――“殿下”を後方に避退差し上『――ならぬ』・・・・」


間断無い掃射に周辺状況の確認まで取れていなかった。

気がついたときには、紫紺の武御雷“改”〈Zois-01〉は、既に両腕にサプレッサ[●●●●●]付きの87式突撃砲を構え、私の横、つまりは最前線に立っていた。

『――――わたくしとて斯衛軍の一員。戦える状態に在りながらBETAに背を向ける事なぞ出来ましょうか?』

「・・・“殿下”―――。」



葛藤する思いとは裏腹に、遂に巨大なBETAの“塊”が地表に姿を現す。

湧出孔を取り囲んでいた全員が、明らかに動揺し、射線が乱れた。



―――それは、余りに醜悪で巨大な肉塊、と言うか、肉柱。
生理的に嫌悪を催す色彩と、絡みあうように蠕く表面は悍ましいの一言。

上部に乗っていたと思われる光線級や、被弾して破壊された個体は既に群体から排除され、土砂と同じように下方に落とされているらしく、瑕疵は見当たらない。

何よりも、その径およそ150m―――。
無数のBETAが絡み合った、強大な肉柱を押し出す様にそれがムクムクと、上昇してきた速度のままに、見る間に聳え立ってゆく。
大きめのベースボールグラウンドが、そのまま盛り上がっていく様な、余りに圧倒的な、絶望的な、その質量――。

組まれた肉塊に取り込まれているだろう光線属種が、解けるまでは照射出来ないことさえ、救いにも思えない。
これが崩れ、解けた瞬間が脳裏に浮かんだ。


――――無理だ―――。


そう思った刹那、視界の半分を光条が埋めた。






―――それは、寧ろ光の奔流。


〈Zois-01〉が腰だめにした2丁の87式突撃砲から吐き出されるのは、10m程度にまで達する長大な蒼い火箭と、その先で幾重にも綾なす緩やかな螺旋を描く目映い光の残像。
重ねられた残像は光り輝く組紐のような文様だけを残し、左右上下に振れる。
それがライフリングで転旋する弾体が超高速で空気と擦過する事によって生じるプラズマ光だというのは後で知った。

その2条の光の組紐が、BETA“群体”を嘗めると、そこでも連続的な光体が発生し、瞬く間に“群体”を切り裂いてゆく。
その着弾点は連続的に稲妻が走る様にプラズマ化して輝き、“群体”は光に埋め尽くされるように弾け飛ぶ。
上に上に伸びようとする“群体”はすぐに切り裂かれ穴を穿たれて、上部が崩れそれが再び光条に触れて消滅していく―――。

周囲の者も、その余りの威力一瞬呆け、そして勢いを取り戻したように、掃射を再開する。
中央の“群体”とは別に、辺縁からも湧出は続いているのだ。


〈Zois-01〉は両方の突撃砲を左右に振ることで、目測均等に巨大な“群体”を光の奔流に飲み込んでいく。
当初の秒速5mに達する上昇速度そのままに目前をみるみる迫上っていたBETA“群体”、その上昇が見た目止まった。
地下からは、変わらず迫り上がりが続いているにも拘らず、上昇が止まったということは、たった2丁の掃射による殲滅速度が、上昇速度と均衡したと言う事。

87式突撃砲の連射速度は毎分900発、秒間で15発が吐露される。
連続する発射音こそ甲高いが、そのリズムは感覚的に同じで、その連射速度は変わらないのだろう。


しかしこの驚異的な威力は―――。

――――電磁投射砲!


まさか、カムチャッカで試射された筈のEMLが、改良されて既に装備までされていたとはッ!



その時、ボロボロと電磁投射砲の射線を外れてBETAが崩れた。
掃射を続けながら見上げた“群体”上部が、解け始めて[●●●●●]いる!


上昇速度と殲滅速度が均衡したと言うことは、すでに突出していた50m近い“群体”にまで手が回らないと言う事。

その解け始めた上部に、重光線級の姿が現れる―――。


初期照射警報が鳴り響いた瞬間、BETA“群体”上部に光が迸った。







本照射の開始される直前、連続的に発生した光芒が“群体”上部を埋め尽くし、削りとってゆく。

その光芒の向こう、上空に伸びる一条の光線を辿れば湧出孔の真上から、同じサプレッサ[●●●●●]付きの87式突撃砲を真下に向かって掃射する、一騎が存在した。

朝空に千切れ行く黒雲を背景に4条のバーナー炎を4翅の光翼の様に展開、上空で朝日を反射し蒼を帯びた白銀に輝く。


―――XFJ Evolution4――――。


Sideout




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