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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 11:55
'13,05,15 upload
'13,05,23 誤記訂正
'15,01,24 語句統一
'16,05,06 誤字訂正



Side 武


『S-11爆破防衛線[シフト]、第7、第8ポイント、20秒のインターバルで順次起爆します―――カウント、60秒。』


純夏に似た電子音声が観測されたS-11の起爆をアナウンスする。

背後、というか管制ユニットの着座姿勢的に頭上に近い配置で純夏の気配を感じているオレには、未だ違和感が抜けない。
通信から聞こえる“森羅”の合成音は、純夏の肉声と言う訳ではないのだ。

純夏は“森羅”のマルチタスクを使い、パラレルで音声をいくつも合成している。
管制ユニットのインカムを使い肉声でオレと話をしているその裏側で、個々の音声通信やデータリンクを部隊、或いは必要に応じて個別に振り分けている。
先の海底光線属種優先排除で、3個機動艦隊39艦艇分のターゲットを個別に適宜調整し、位置や進行方向を加味しつつ目標が重複しないように振り分けたのも“森羅”。
“森羅”が把握しているのは、なにもBETAの位置・動向だけではない。
データリンクと統合されたセンサアレイシステムであるAEGISを介し、位置や動向に付いて味方戦力に関しても把握している。
基本その隊付きCPの頭越しになるような個別音声通信はしないが、データリンクの情報には個々の優先殲滅目標を付加していたりするわけだ。
A-00に関しては純夏がCPを兼ねており、結構好き勝手にマルチタスクで“おしゃべり”までしているらしい。
これも、主に初陣の207Bメンバーに対し緊張を解きほぐすため、っていう効果を狙ったらしいが。
“森羅”の音声信号はデジタルの組み換え暗号で飛ぶから、ヘタをすると秘匿回線以上の対傍受性があり、“森羅”以外では解凍不可能の通信であるらしく、その内容は知るよしもない―――。



つまるところ“森羅”を装備した純夏はBETAの位置、動向、だけではなく、自軍の位置、目的までもを殆ど一人で掌握しているのである。

必要な情報を、必要な時に、必要な人に――。

それを並列処理でリアルタイムにヤッちゃう訳だ。
これがODL劣化に縛られない00ユニットの本領であるのだから、以前のループで脅威論が出るのも不思議はない。
今だって純夏はハッキングやリーディングを意識的に封印しているのだから・・・。
性能はぶっ飛んでいるがあくまで十分なAEGISシステムが用意されていること、が条件という見せかけの“枷”さえ設定している。




単独の閃光と、湧き上がる砂埃――。
“森羅”のカウントダウンで、更にもう一つ、目映い光が瞬く。



『第7、第8ポイント起爆完了―――。
・・・・S-11爆破防衛線[シフト]最終エリア、第9から第12ポイントまで、同時起爆します―――カウント、90秒。』


あの光の下で齎されている戦果に反し、どこか事務的なアナウンス。


「・・・なあ、純夏、第2波も爆破[これ]、出来ないのか?」

「ん―――、無理だよタケルちゃん。
次のでほぼ第1波を殲滅しちゃうから、やっぱり第2波の攻撃優先順位[プライオリティ]が変わっちゃったみたい。
第1波を半分以上殲滅した時、第2波の進軍全体が一瞬だけだけど侵攻スピードが緩んだから、“重大災害”を察知したかな・・・。
多分、今までは横浜ハイヴ侵攻のついでに邪魔者を排除して資源確保、って位の優先順位設定だったのが、今は“重大災害”に繋がる“障害”、特に “高性能CPU+人類種”殲滅がトップに成っちゃってる感じ・・・。
だから第1波ほど素直に進軍してくれないよ。」

「・・・・。」

「――何よりも第2波には光線属種が結構残っちゃっているから、戦術機が噴射跳躍での誘導が出来ない――。」

「・・・だよなぁ。
だから中型種10,000までなら、海中で光線属種完全殲滅が出来て、人的損耗0も夢じゃなかったのに・・・。
―――15,000なんて、反則だぜ・・・。

・・・この第2波が、正念場・・・・か。」



そう、オレ達[●●●]は本気で損耗0[●●●]での完全迎撃を狙っていたのだ。
連合艦隊第2艦隊の緊急参戦も不確定である上、JIVESでは海上からの佐渡本島攻撃など組み込めない設定であり、事前の演習では一切触れなかったが、海上安全が確保出来、光線属種の反撃がない海中での選択撃破が実現されれば、決して不可能ではない。
そして今回の場合、それは中型種以上で10,000までなら展開する3個機動艦隊だけで排除しきれる計算だった。

勿論、佐渡ハイヴが島嶼ハイヴであり、大量のセンサーを打ち込んでも喰われない小細工が可能な事や、BETA侵攻が海峡の渡渉を必要とする等の特殊性が多々在ってのことで、すぐさま大陸ハイヴの攻略に使える訳ではないが、少なくとも海底侵攻をするBETA群に対しては極めて有効な戦術であることは誰も否めない。
ドーバーで攻防しているEU辺りが協力要請してくることは間違いない。
台湾にも有効、米国だって、ベーリング海峡の防衛には是が非でも導入したいとか言いそうだ。




―――それが、遠征直前に生じた、まさかの殿下失踪。

そして、想定を遥かに超える規模のBETA侵攻―――。



前者は今までにない進度で帝国を主とした“人類側”の状況を変えてしまった為に起きた軋轢だとは思う。
傍系記憶には似たような?状況が在った気もする。
尤も、それはバビロン作戦発動以降[ザ・デイ・アフター]の話だし、その時のオレは国家機密に触れられる立場にも居なかったから、詳細は一切不明、そんな記憶はなんの役にも立たない。
委員長の推測で、一応の目処こそ得たが、今の段階でこちらから取れる手段は何もなかった。
今は殿下のことは彼方を信じて、こっちはBETAをどうにかする、それが昨夜の結論だ。


そして後者は・・・これが世界の持つ支配的因果律の修正、という奴だろう。
今の段階で、BETAに人類の、と言うか横浜の戦略など漏れていない筈なので、正にBETAの気まぐれとしか言いようがないのだが、それにしても、である。
“世界”の認識、趨勢がBETA優位なのだ、と思うしか無い。
記憶群にある新潟侵攻時のBETA数は確かにまちまちであったが、平均値は全数で6,000弱、多くても9,000までで、今回の様に中型種以上で15,000、概算全数で20,000超と言うのはもう支配因果律の凶悪な悪意さえ感じられた。








そしてまた、目映いばかりの白い閃光が視界を埋め尽くす――。


考え事をしていたせいで、もろに視界に入れてしまった。

センサーアイがオーバーロードする程の光量に、網膜投影の視界が一瞬暗くなりすぐ再設定されるが、それでも網膜には黒い起点が4つ、残像として残った。
やはり戦術機のセンサーを通してさえ、視覚に一時的な軽い瑕疵をつけるレベルの相当な光度だったらしい。


A-01が敷設したS-11爆破防衛線[シフト]の最後を締めくくる、最も東のエリア分4基が同時に炸裂した。
脳裏にはその前方に迫っていたBETAの津波が、光に呑み込まれて消失[ホワイトアウト]する様が刻まれていた。

光より2,3秒遅れて、もう何度目か、衝撃波と地面の振動がビリビリと機体に伝わり、それが4度通過した後に割れるような連続した起爆音が辺りを満たした。






BETA侵攻の第1波は、東の旧新潟空港跡地から西の越前浜までほぼ10分の時間差で上陸を開始、その後躊躇なく信濃川流域の新潟平野を順次真南に向かった。
その上陸地点は平坦地を好んで進むBETAの侵攻から大まかに8エリアに別れており、それに対応すべく8つに分かれて迎撃に当たった帝国軍・斯衛軍、国連軍の各戦術機部隊は、先行する突撃級を噴射跳躍により飛び越し、後方上空からの掃射によりこれを撃破。
その後ほぼ塊となって侵攻を開始したBETA本隊に対しては、適宜間引き攻撃を仕掛けながら誘導に徹した。
BETA本隊の進軍速度は時速約60km、つまりほぼ1分に1kmの速度となるが、それをくい止める事無くBETAが南進するに任せた。

最も上陸が遅かった最西エリア8:越前浜より約10kmの地点から、最も上陸が早かった最東エリア1:旧新潟空港付近より約25kmの地点まで、ほぼ東西20km弥彦山から金比羅山間に渡り平野部に敷かれたS-11爆破防衛線[シフト]
エリア1に最初のBETAが上陸してから約20分後、エリア8から誘導されたBETAがまず西側のS-11起爆により殲滅されたのを皮切りに、順次各上陸エリアから爆破ゾーンに入るBETA群に対し、東に走る割れ目噴火の様に次々に起爆された。

光線属種部隊という、後方からの上空制圧援護を欠いたまま横浜を目指そうとしたBETA本隊は、突撃級前衛を早々に喪い、敵性障害の上空回避に翻弄されながら追いすがり踏み込んだ地雷ゾーンで次々と炸裂するS-11に、上陸から25分で殲滅された。

爆破指向性を制御できるS-11は設置時にその向きを全て北方に向けていたため、爆破ライン後方3kmまで下がった避退エリアには、軽い衝撃波や振動以外爆風も殆ど及ばない。
S-11の威力は戦術核と同規模、TNT火薬換算で15kt級と聞く。
これは数字だけで言えば、元の世界での広島型原爆とほぼ同じだそうだ。
但しS-11は原子爆弾とは違い熱核反応を用いていないので、放射線は皆無、熱線量としても原爆に及ばない。
これが原爆なら、爆発時に生じる放射線や熱線には指向性も何も無いから、後方3km離れていても無遮蔽では結構な被害が出ただろう。
S-11の場合、寧ろ衝撃波や爆風に依る破壊が主となり、熱線による殺傷範囲は爆心から半径200m程度に限られる。
他方その衝撃波や爆風に依る破壊範囲は、広島型原爆より広い直径2km前後。
指向性を持たせた場合は、衝撃波や熱線が影響するため後方約200mまでが、そして前方には約1,800m程を完全に吹き飛ばす破壊範囲を有する威力である。

因みにS-11では、指向性を付けない場合キノコ雲は発生しない。
キノコ雲は、大気中で熱エネルギーが局所的に且つ急激に解放されたとき発生する上昇気流によって生じる積乱雲の一種であるが、純粋な爆風に依る威力が熱量に依る開放よりも大きいため、爆心地は兎も角、周囲は一時的に減圧状態となる。
よって局地的に発生するダウンストリームは爆心地付近の上昇気流よりも強く、即座に攪拌されてしまうため結果的にキノコ雲の発生に至らない。
今回のように最大偏心を付けると、発生しかかるキノコ雲を斜めに棚引かせる歪な形状となる。
それも発生過程ですぐ隣のエリアで爆発が起きるから、吹き飛ばされる気流にも散り、まき上げられた砂埃や、ダウンストリームの攪拌もあり、まともな雲は発生しない。
が、何れにしろ地表付近の視界が暫く悪くなることだけは、確かだった。


―――勿論、各隊が誘導してきたBETAを最大殲滅出来る最適なタイミングでS-11を起爆するのは、全ての爆破コードをA-01から受け取っていた“森羅”。
エリア8:A-00,が誘導して来た越前浜上陸分BETAの起爆は既に5分前、そしてほぼ同時に起爆したエリア7:四ツ郷屋上陸分を担当していたA-01部隊の皆は、避退後既に後方に設置された臨時基地で補給を開始していた。

だがA-00にその暇はない。
S-11爆破防衛線[シフト]は全て起爆完了したが、殆ど時を経ず直ぐに第2波の上陸が始まる―――。


「―――A-00中隊は、これよりエリア1:旧新潟空港周辺に急行、上陸する第2波より自走砲部隊を援護しつつ光線属種の優先殲滅に移る!」

『『『『『『『『 Yes, Sir!! 』』』』』』』』

「行くぞッ!」


スロットルを踏み込みスラスターに火を入れつつ、大地を蹴った。


まだ[●●]第2波の上陸は始まって居らず、光線級の上陸は、早くて07:21、それまでは、飛べる―――が、第2波先鋒が上陸するまで予測ではあと2分――。
旧新潟空港跡までの25kmを2分と言うのは、例え戦術機にとってもかなりシビアなオーダーだった。


と言うのも旧新潟空港の向こう、海辺の森付近には帝国軍の自走砲大隊:ブリッツ隊が展開している。
同じ第12師団の戦車大隊:シュトゥルム隊は、西側上陸地点迄の第1波要塞級上陸を撃破するためエリア東端・旧新潟空港跡から西端・越前浜まで駆け抜けたが、機動性や速射性に劣る自走砲大隊は次の第2波上陸に備え、海辺の森周辺に残っていた。

そう―――現実に、上陸する光線属種の水際殲滅に手が足りない。
この後、第2波では本隊上陸後半の約10分間で残り79体の光線属種が上陸する事が予測されている。


水深による威力の減衰と光線級の予備照射時間を考えると、水面から頭を出す前後±2秒が光線属種の撃破可能時間。
勿論、魚雷があればもっと以前に水中で攻撃可能だが、弾薬切れで撤収した機動艦隊が魚雷を再装填して出撃するには、最低でも30分掛かる。
海上での移動時間を加味すれば、第2波の上陸には到底間に合わない。
そして佐渡海峡に停泊して艦砲射撃を行なってくれている第2艦隊に砲撃してもらうには、今度は艦砲が強力すぎた。
否応なしに発生する沿岸での接敵中に、海側から46cm艦砲で海岸線ギリギリを狙うのは、破片や着弾地点の土壌飛散範囲から言ってもフレンドリィファイアの危険性がぬぐいきれない。


そんな状況を鑑み、実際第1波残存要塞級は、機甲部隊に任せたのだ。
BETA本隊上陸の後、光線級・重光線級の上陸する時間分が開いたため、本隊をやり過ごせた。
その後データリンクを起動しても、その時には本隊を戦術機でより強く誘引できる要素があった。

しかし次の第2波光線級は、殿の要塞級と違い本隊の直ぐ後に上陸を始める。
自走砲大隊がシステムを起動し、データリンクを繋げたら、今度こそ本隊にも狙われる可能性が高い。


――故に最も早く第2波上陸地点に最先行する事の出来るA-00には補給をしている暇はない。
第1波を誘導していた他エリアの戦術機各隊も補給が必要。
それを見越して、A-00は第1波誘導に於いて突撃級殲滅も本隊誘導も、弾薬の消耗を極力抑えた。
207Bメンバーの試製XFJ不知火弐型については推進剤を若干消耗しているが、それでも問題はないレベル。
ましてや他のメンバーのXFJ Evolution4や武御雷“改”は、G-コア搭載機体であり機動継続性に何の問題もない。


迎撃戦は、まだ半ば。
BETAもきっちり半分が残っている。






『―――BETA第1波殲滅を確認、中型種以上の存在を認めず―――』


飛行途上でも純夏に似た電子音声が観測された第1波の爆破結果を伝える。


総合司令室[HQ]通達。
―――第1波殲滅、誠に見事であったッ!
光線属種撃破から始まり、連携を行った参加各隊全ての鋭意の賜物であったと感じ入る。
・・されど、防衛は未だ道半ば、侵攻BETAの完全殲滅に向け、各隊の精勤を望む―――。

―――第1波殲滅に伴い、BETA誘導していた各隊は旧燕公民館にて推進剤・弾薬の補給後、第2波に備えよ。
若干数の小型種残存を認るも、第2波侵攻が近いため、設営地周辺のみ機械化歩兵にて対応。
各戦術機甲部隊は補給後、以下のエリアに展開。
エリア3を担当していた斯衛軍第2連隊第4大隊はエリア4、
エリア2及び1を担当したいた帝国軍鋼の槍連隊は、エリア5から8。
尚・・・・・』


総合司令室[HQ]が、珍しくらしからぬ興奮気味の賛辞の後、次の指示を出していた。




「――A-00、エリア1到着まで、あと1分。
・・・・やっぱり、機甲部隊が第1波要塞級撃破で結構ヘイト稼いじゃってるみたい。
敵性認識されてるっぽい・・・・あ・・! 旧新潟空港跡に上陸するBETAが直前、一部海辺の森に分かれたッ!
上陸まで、あと30秒―――!!」


モニターに映る全員の表情が緊張する。
ほぼ全力加速で半分まで来て、これからは減速に移る。


「 !! 
純夏、ブリッツ隊に警告、もっと下がらせろッ!
フェンリア隊は空港跡に先行して出来るだけBETA本隊を誘引!」

『心得た』『了解』『わかったよッ!』

「ガルム隊はこのまま海辺の森に急行ッ!
Garm-01[まりもちゃん]〉、小隊指示任せますッ!」

『わかったわ!
〈Garm-03〉[あやみね/rt>]は私と吶喊、但しブリッツ隊の射線に注意。
〈Garm-02〉[さかき]〈Garm-04〉[よろい]は隊上空で0721まで周辺援護射撃。
特に接近戦車級要注意!
0721以降〈Garm-02〉[さかき]は阿賀野川沿い側方防衛、〈Garm-04〉[よろい]はHIMARS中隊に付いて!』

『『『 Yes, Ma’am! 』』』

「〈 Thor-04[たま]〉は、21分迄後方上空から広範囲援護射撃! フェンリア小隊も視野に入れてくれ。」

『 Yes, Sir! 』

「BETA群先頭、上陸開始ッ! エリア総数中型種以上1,300! 内約10%が阿賀野川河口東岸に上陸ッ!
ブリッツ隊接敵まで30秒ッ!」

「チィッ――、散開ッ!」


光条を掃いて隊が散開する。

新潟侵攻迎撃、後半戦が始まった。


Sideout




Side ???(とある帝国軍機甲連隊75式自走155mm榴弾砲砲手)


――冗談はやめてよォ・・・。

“森羅”から接敵警告が来たのは、BETA第2波上陸の30秒前―――。
旧新潟空港に上陸予定の一部が、突如阿賀野川河口東岸に進路を変えた、と。
無論後退勧告もされたが、大隊長は動かなかった。

覚悟を決めて立ち上げたデータリンクに示される、光線属種の現在位置。
上陸予想地点と、その時刻。
戦域全体の残存数は、光線級42、重光線級37、内部に光線級を含むかも知れない要塞級が93。



つい先ほど、侵攻BETA第1波、総数で約10,000の殲滅が報告され、この狭い自走砲内も歓声に沸いた。
光線属種の排除、そして我が隊も大きく貢献した要塞級の殲滅が戦術機部隊による誘導を可能とし、S-11による集中爆破に結びついたのだ。
10,000もの迎撃撃破は、西日本を喪うBETA大禍以来、最大の戦果と言って良い。
しかも損耗0と言う、嘗て無い快挙!
防衛部隊の士気は、否応にも最高潮だった。
それを成し遂げ、そして貢献出来る位置に居ることが出来たのは、僥倖でも誉でもある。

実際、砲手として要塞級4体に8発ほど命中させているのだからあたしも同じ。
・・・・勿論、データリンクに基づいて操作してるだけなんだけどね――。


第1波の要塞級上陸阻止以降海辺の森海岸線から移動し、阿賀野川に並行して流れる新井郷川沿いに砲列を敷いていた。
新井郷川は幅30m程の水路のようなもので、そこそこ崩れているが川岸は5m程度の堤防となっており、射線が取りやすく、段差が一応の防御になるだろう、と言う理由らしい。


第2波の上陸に対し、避退勧告も出された。
第1波撃破の興奮も覚めやらない隊は、このまま第2波残存光線属種の排除を実施する、と言い切った。
勿論今、後退勧告にも動かなかったのは、元々自走砲の速度は、最高でも47km/hに過ぎないこともある。
機動を前提として設計された戦車とは違い、あくまで固定の砲台を動かすためのエンジンと車輪を付けた、と言ったほうが早い自走砲。
120km/hの突撃級はおろか、60km/hで侵攻するBETA本隊にだって余裕で追いつかれる。
そして、先の第1波で弾薬の約半分を消費したとはいえ、まだ半分残っている。
例え光線級と云えども、海面から顔を出す瞬間±2秒の間に砲弾を当てさえすれば、撃破できる―――。
その殲滅は、最終的にはBETAの殲滅に大きく寄与し、帝国の安寧に繋がる事が下っ端のあたしですら理解できた。

どうせ今更逃げても追いつかれるならば部隊が壊滅しようと、上陸する光線級を1体でも多く排除すること―――。

それが、要塞級殲滅に高揚し、第1波BETA群撃破に歓喜して浮かれた隊の総意でもあった。






―――けど、約600m先、阿賀野川東岸に怒涛の様な水飛沫と言うより水塊を盛大に跳ね上げて上陸を始めたBETA群を目にした時、あたしのその高揚は凍りついた。





正直あたしは、初陣――。
しかも16で訓練兵、半年で任官以降、自走砲砲手と言う事で訓練も遠距離砲撃しかしてこなかった。
この新潟で実施されたJIVES実弾演習でも、戦術機部隊が誘導する定点に指揮通り砲撃するだけで、極端な話BETAについては姿形は知っていても、生で近くで見たことなど無かった訳で。
先刻の海岸からみた姿だって、2km以上離れていたし。


だから、実距離600mで見たBETA群の上陸は、衝撃だった・・・。


要撃級でも高さは12m、突撃級は16m。
それと比べると周囲の戦車級がぴょんぴょん跳ねるハエトリグモかアメンボみたいにみえるが、あれでも高さは3m。
いくら戦術機位は見慣れていて、その高さが18mだと言っても、いわばスラリとした人間体型。
それがBETAは横幅だって奥行きだって高さ以上の、さながら巨大な質量の塊。
この位置からでも、目線が上に向く。

その4階のビル塊に相当する個体の群れが、集団で120km/hに達する速度で押し寄せてくる―――。
目前の高々2,3mの水深の水路や5m足らずの堤防など、なんの足止めにも成らないことを、初めて認識させられた。

既に主砲の照準はデータリンクで上陸する光線級に合わせてある。
しかも地響きを立てて突進を始めた突撃級前面装甲は正面からでは155mm砲でも弾かれるだろう。
ましてや副武装の12.7mmのM2重機関銃なんか効くわけもない――。
動けない砲台に回避手段は皆無。





―――あたし、死んだ―――。


光線級上陸まで、あと3分―――。
突撃級接敵まで、あと30秒―――。


思えば短い人生。
カウントダウンにもう、走馬灯さえ思い浮かばなかった。


















その先頭を地響きと共に突進する突撃級があと200m程に迫った時、その左下で赤いものが飛び散った。
途端に先頭は左に寄れて、隣の突撃級を巻き込み、もんどおりをうつ。
更にその巨体に進路妨害された数体が多重事故を巻き起こす。

元が膨大な質量、120km/hの速度は、直ぐには止まらず、周囲を巻き込んで100m位転がりながら、直ぐ近くにまで破片や小石などを撒き散らし、猛然と舞い上がった砂埃は折からの北風になびいた。




一体、何が――――?

その様を、呆然と見ているしか無い。






『―――国連太平洋方面第11軍A-00中隊〈Thor-01〉、援護するッ!』


耳に飛び込んできた通信の意味が最初解らなかった。

けど、その通信と共に1騎の戦術機が蒼いスラスターバーナーを纏いつつ、大群が割れたその地に降り立つ、と、その降下の勢いのままにくるりと右手一本で持った鮮紅色を放つ長刀を閃かせる。
先のクラッシュに巻き込まれ横転していた突撃級に立ち上がる隙も与えず2体の首が落ち、ズズンと地響きを立てて転がった。
横一列の突撃級の影になり見えなかったが、すぐ後方に迫っていた要撃級や戦車級で構成された本隊の群れに、左に腰だめのままの突撃砲を掃射して前衛をなぎ倒す。
そのまま、前方宙返りの様に倒立仕掛けた戦術機は、重力を無視したようにふわりと上昇、倒立したまま続く後続のBETAに36mm砲弾をばら蒔く。




―――ついこの前、試製01式と承認されたばかりの、不知火“弐型”。
―――鮮やかなブルーと白に彩られた国連カラー。
―――前衛的で立体的な変幻自在の“舞”とも見紛う、独特の3次元機動。
―――示されるコールサインは〈Thor-01〉[雷神]




――――あれ[●●]が、“白銀の雷閃”、白銀少佐――――。







気がつけば、白銀少佐の右先方、海岸線側に上陸したBETAを蹴散らしている2騎の“弐型”が見える。
さらには、あたしたちの上空にホバリングする2騎が接近する戦車級を撃破している。


助かった、と言う実感すらその時は思い至らない。
只々、目の前の、その余りにも鮮烈な姿を追う。




そう、余りの超高速機動に蒼いスラスターさえを、周囲に纏う闘気の様に棚引かせ、BETAを殲滅していくその姿に、あたしはこのBETA大戦に、初めて希望を抱いていた。


Sideout




Side 純夏


タケルちゃんの戦闘機動に身を任せながら、ほっと息を付く。

―――どうにか、間に合った。

分岐が1割、突撃級が10体程度でホント助かったよ~。




元々当初の侵攻数予測範囲内にBETAが収まっていれば、光線属種は沿岸の機動艦隊で全て平らげてもらい、機甲部隊は危険の少ない後方に回り長距離砲撃に依るBETA本隊の削減を担ってもらう予定だった。
けど、想定外の侵攻数に光線属種排除が間に合わなくなり、光線級が潜んでいる可能性がある要塞級撃破を任せた。
そしてその後の第2波光線属種の殲滅を優先した結果、機甲連隊は最前線に留まっている。

後者に関しては“森羅”情報を基礎とした機甲連隊独自の判断で、要請も出していない。
実際戦術の選択肢が増えてありがたいのだが、脚の遅い機甲部隊をこの最前線に残すのは、かなりリスクが高いのも確かだった。
攻撃優先順位が変わっている、
誘引すべき戦術機部隊は、補給中―――。

突撃級に跳ね飛ばされたら、それだけでどれだけの人が亡くなるコトか――。


75式自走砲の定員は7名24輌、HIMARS中隊だけでも56名、ブリッツ隊合計では200名以上が在籍する。
同じく西に居る90式戦車は、定員4名で36輌、シュツゥルム隊合計で144名。

――間違っても、殿下の大権奉還に与するこの新潟防衛戦で、そんな大きな損失を出すわけにはいかない。





「純夏、BETAの誘引は出来そうか?」

「・・・・かなり注目されてるみたい。
〈Thor-01〉って言うか、やっぱりわたし[●●●]がダントツ・・・。
殆どBETAがパパラッチみたいだよ・・・。」


げんなりとして言うわたしにタケルちゃんは苦笑い。

実際、今みたいに“森羅”の処理を全開にしたわたしは、見た目ちょっとばかり凄いことになる。
淡く発光した神秘的な霊光の周囲をプラーナが渦巻き立ち上り、元の世界のアニメで見た闘気とかの様に揺らめく。
結構な輝度で、霊視の素養がない人でも見えるし、背後には後光が差してる様だとタケルちゃんには言われた。
何故かモニターカメラには上手く映らないし、元々“森羅”は機密の関係上外部に一切個人の映像を出していないから他の人は知りようがないんだけど、これが素で無意識領域“虚数空間”と繋がる、と言う事らしい。

その“森羅”に対し、BETAがどう誘引されるか不明だったから、第1波のS-11爆破防衛線[シフト]も最後の爆破まで後方に留まった。
そのせいで、機甲部隊防衛がホント、ギリギリだったんだけど・・・。

最初に起爆ラインに達したエリアの担当だったから、BETAの動きが“森羅”の誘引か、元々のBETA群動向による横浜を目指した“南進”なのか、明確な区別は付かなかった。


けど、こうして最前線に来れば判る。
明らかにこのXFJ Evolution4のBETA誘引性が高い。
タケルちゃんが飛行進路を変えると、テニスボールを追いかける観客の視線の様にBETAの向きが変わるのだ。




元々、BETAは攻撃優先順位を持っている。
光線属種の様に飛翔体を第1位とする例もあり、属種毎の特性も有るので一概には言えないが、基本は、

創造主目標の確保 ≧ BETA目標収拾 > 自己保存

らしい。

例えば今回の侵攻第1波の場合、侵攻目標である横浜ハイヴ攻略は、インプットされた創造主の目的を確保するための戦略であると言える。
大きな目で見ればユニット落着最初期のユーラシア侵攻戦略や、今の地球全体に対する戦略もそれに則ったものなのかな。
BETAプロファイリングに依る行動予測でも、まだ確度が低くて断定できない。

更に素体候補が見つかれば、以前の横浜侵攻時の様に、“捕食”ではなく、“捕獲”に移行するのかも知れないけど、これらの行動様式の変化はその一例しか知らないから、これも予測ができない。
当時は闘士級と兵士級が出張ってきた記憶があるけど・・・。
現状では、わたしと言う“超因果体”は捕捉されていない、と思う。

他方、BETA自身がその行動を維持するために、増殖素材やG元素の収拾を必要とする。
これがG元素獲得を目的とする地中掘削や、炭素系生命体の捕食らしい。
CPUを狙うのは、それを構成する高性能半導体に於ける電子の動作が、G-9[グレイ・ナイン]を半導体としたときの動作と類似しているからと推測する事も出来る、って彼方君は言っていた。

逆に本来上位目的の為に“自己保存”は必要不可欠のはずなんだけど、そもそもプログラム体であるBETAには、“個”の概念はない。
BETAと言う集団全体が目的に至ればいいのであるから、その為に“個”は壊れても気にしない。
敵に対しては、平気で命を捨てるミツバチみたいだ。

そしてこれらの要素から、最終的に順位を決定するパラメータとしては、目標までの距離や状況、実行可能性といった項目が加味された上で攻撃優先順位が決まっている。


恐らくは今回の侵攻に於ける目標は、横浜ハイヴ。

けれど今第1波は完全殲滅された。
BETAは“個”の故障や脱落にはさして気を払わないけど、侵攻した“群”がまるごと潰滅したとすれば、これはもう上位存在が言う“重大災害”なわけだ。

故に創造主の目的を確保するための戦略を阻害する存在、当然“障害の排除”が第1優先になる。
つまりは、重大災害を引き起こす、“障害”としての認定がされたということ―――。


そして、世界各地でのBETA戦を時系列で整理していくと、徐々にこの“障害認定”と“高性能CPUの活動”を連結する傾向が出始めている。
要するに“重大災害”を発生する“障害”は、“高性能CPU”を装備していて、且つそこに炭素系生命体――“人類”が存在している例が多い、と言う事に上位存在が気づいた、ということだろう。
これは“有人兵器”がBETAの重大災害にたいする最大の障害、と認定されたコトに他ならない。


今BETA群の攻撃優先順位トップは、超高性能CPUとG-9[グレイ・ナイン]の重複―――“森羅”と、更にそして人類種の組み合わせである、わたし[●●●]、なのだ。


「―――今のBETA群の最優先目標はわたし[●●●]
だから、阿賀野川対岸にいい具合にBETAが集まってる。
〈Fenrir-01〉[篁大尉]がIRFG起動すれば、アレの制御には“森羅”の負荷低減版を作ろうとしてダメだった副司令の試作G-9[グレイ・ナイン]製MPUが使われているから同じくらい誘引してくれると思うけど。
渡りだす前に、壬姫ちゃんに言ってヤッちゃっ『〈Thor-04〉より〈Thor-01〉に意見具申。阿賀野川西岸にBETAが集結中、試製弾の使用による殲滅を提案します。』・・・・・同じ意見みたいね♪」

「・・・・・〈Thor-04〉[たま]、意見具申を肯定。試製弾を装填、発射準備。」

『 ! Yes, Sir! 』

〈Thor-04〉[みきちゃん]、仮想標的座標データリンクにて送信。
一応念のため、試製S-11X炸裂弾発射後に起爆コード解除する様設定しました。。
〈Fenrir-01〉、〈Fenrir-02〉、当該地域にて試製炸裂弾使用予定。
――現在位置なら問題有りませんが、効果範囲への接近注意。」

『『『 了解! 』』』

〈Garm-01〉[まりもちゃん]、コチラ〈Thor-01〉は機能上BETA誘引特性が強い為、試製弾起爆後対岸に飛びます。
ガルム隊は残存BETA、及び後続上陸BETA在れば掃討。
その後エリア1光線属種殲滅確認後の部隊行動は、〈Garm-01〉[まりもちゃん]に一任します。」

『了解したわ。』

〈Thor-04〉[たま]は〈Thor-01〉追従な。
可能であれば上陸する光線級を狙撃できる位置を確保。」

『 Yes,Sir! 』

「それじゃ、派手に花火上げるか! 行けッ! 〈Thor-04〉[たま]ッ!」

「―――光線級上陸まで、60秒。・・・対閃光注意!!」















「・・・・個人装備の威力としては、SDS[S-11]に次ぐ範囲殲滅か―――。
使いどころは難しいが、1発逆転の切り札としては、悪くないな。」


上陸してくる要撃級に36mm砲を無造作に撃ちこみながらタケルちゃんがつぶやいている。
右から飛び掛ってくる戦車級を右腕一本の長刀で、正中線唐竹割りに切り捨てる。
殆ど無意識に反射だけで群がってくるBETAを倒しながら、別の事を考えていられるタケルちゃんも十分マルチタスクだと思う。

試製S-11X炸裂弾試用後、上陸する光線属種が海面に顔を覗かせる前に、阿賀野川対岸に飛んだ。
河口付近川幅が600m程もある阿賀野川。
その対岸で犇めき、今にも渡ってきそうな群れに、〈Thor-04〉[みきちゃん]が放った試製弾は、想定通りの威力を発揮した。


試製S-11X炸裂弾の威力は、S-11:SDシステムの約半分、殺傷範囲は直径1.6km程の範囲内。
このエリア1では間もなく終わる本隊上陸の最後尾に光線級が居る。

既に本隊の9割が上陸済み。
その内1割はブリッツ隊周囲でA-00が殲滅、旧新潟空港跡地でも〈Fenrir-01〉、〈Fenrir-02〉が2騎で、既にその1割を削っていた。
試製S-11X炸裂弾は阿賀野川西岸に密集していた上陸済みBETAの半数近く、3割約400体前後を吹き飛ばした。

そして結果A-00が援護に廻り、ブリッツ隊の損耗を防ぎ射線を確保したことで、この後エリア1に上陸する8体の光線級、7体の重光線級については、水際殲滅の目処が付いていた。
と言うか、残存37体の重光線級については、基本全てHIMARSの有するM30ロケット弾で狙う予定。
但し、それ以前に飛翔体を目の敵にする先行上陸光線級を殲滅することが前提となる。


射程内の光線級対処を行った上で、遅れて上陸する要塞級を砲撃する。
小型の光線級と違い、砲弾数が嵩む要塞級の排除にはブリッツ隊の砲弾数がたらず、エリア2までの要塞級が殲滅しきれるか否か、と言うところだった。
全エリアの重光線級対処でHIMARSの残弾数もほぼ尽きる。
一方西側のシュツゥルム隊は、既に砲弾切れで、補給部隊が動いていた。
万全とは言えないが、エリア5から8に上陸する光線級は殲滅出来る目処がついた。
撃ち漏らしを防ぐため、光線級1体に対し、155mm砲弾は2発、120mm滑腔砲は3発打ち込もうと言うのだ。
その為、シュツゥルム隊もエリア5からエリア8の要塞級撃破で手一杯。


それは精度と残弾、時間との競争。


それでも残るエリア3と4の第2波要塞級とは、真っ向[ガチ]対決が避けられない。
そして全BETAの9割を占める本隊と衝突するのは、各戦術機甲部隊だった。、



今回の試用で多大な成果を上げた試製S-11X炸裂弾ではあるが、あくまで実戦検証。
弾数は4発しか無い。

40発もあれば絨毯殲滅も出来たかもしれないが、通例試製品が実戦検証なしでそんなに大量に造られることは無いのだ。
装備としてGコアに依存しないが、ミスった時に巻き込む味方の被害も考えると、おいそれと頒布する訳にも行かないし、それこそテロにでも使われたらとんでもないことになっちゃう。

わたしが試製S-11X炸裂弾の暗号化された起爆コードを最後まで管理しているのはその対策。
コードを解除しなければ、着弾しても起爆せず唯の120mm徹甲弾程度としてしか機能しない。


ただ、この数のBETAを相手にするとなると、せめてあと10発は欲しかった。
わたしや、〈Fenrir-01〉のBETAの誘引特性を利用してどれだけ効率よく集められるか、と言う事。






「ところで、純夏、先刻気になる単語を聞いたんだけど・・・。」

「え? 何のこと? タケルちゃん。」

「・・・夕呼先生謹製G-9[グレイ・ナイン]製MPUを制御装置に使ってるって言う、〈Fenrir-01〉の“IRFG”って何?」

「あ―――、えっと―――Inverse Ratherford Field Generator―――。
彼方君が魔改造[●●●]って呼んでた武御雷“改”の装備だよ。」

「え・・・? それって武御雷固有装備?」

「XFJ Evolution4は、肩部スラスターが在って機動が極端に難しくなるから付ける気は無いみたい。
でも、制御式や手法は教えてくれたから、“森羅”装備のわたしが乗った[●●●●●●●]Gコア持ち機体なら、実行できるよ。」

「・・・ゥ―――彼方ェ~何遣ったァ!? そして純夏、マジ、パネェェェッ!!」


Sideout



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