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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/10/07 16:50
'13,04,24 upload ※スポットです。再登場は無い・・・筈。
'13,05,10 誤記訂正
'15,10,07 誤字修正


Side XXX(とある帝国軍戦術機甲連隊指揮官)


『――!!ッ、え?、うそっ!?、BETAッ?』

『〈Bardiche-11〉ッ!?』


仮初の安堵は唐突な悲鳴と、バリバリと言う破砕音にアッサリと引き裂かれた。
我が連隊を展開した戦域に上陸したBETAをほぼ掃討したと思い、油断が在ったのかも知れない。
包囲殲滅に気が向いて、次波の上陸に気が回っていなかったとは、不覚以外の何物でもなかろう。

唐突に側面から襲われた〈Bardiche-11〉が要撃級に引き倒され、ぞわぞわと一気に戦車級が纏わり付く。


『〈Bardiche-11〉ッ!、今行くッ!!』

『え―――!?、いやぁ―――ッ!!、うそ、なんでっ!?、来ないで、来ないでッ!!、隊長ッ、隊長ッッ!!、たすけ』


要撃級前腕の一撃が、〈Bardiche-11〉の悲鳴とそして機体を、ぞぶりと断ち切った。


『〈 Bardiche-11[やよい]〉ッ!?、やよい――ッッ!!』。

『!!、BETA第2波、上陸確認、―――数・・え、嘘?・・・約4,000!!、内本連隊[スティルランス]担当域は、1,600ッ!!』。


遅い――!

心の中で愚痴り、唇を噛み締める。
だがそれをCP[神谷]に叩きつけたところで意味はないどころか、萎縮させてしまう。
これはCP[神谷]が遅いわけではなく、感知できない我軍の、即ち上官である自分の責任に他ならない。


「一旦散開、退けッ!、〈Bardiche-01[春原]〉、無理だ、距離を取れっ!?」


血の味を無視しながら叫ぶが、一旦混乱した陣形を即座に立て直すのは、約半分が新兵である今の隊には無理な注文だ。
コストと軍事資源の枯渇を気にしすぎて、AH戦やシミュレーターしか遣らせてこなかったツケが此処に来て露呈している。
あちこちで、悲鳴や怒号が上がる。
これだけ同時多発に起きては、個別に指示対処することさえできない。


実機による機動、そしてリアル―――。
今までのシミュレーターでは、感じることの出来なかった“恐怖”。
BETAの、無機質で不条理、理解出来ないがゆえに覚えるその感覚は、戦場に立ったものでなければ解らない。


一瞬の躊躇、それが戦場では生死を分かつ。
〈Bardiche-01〉は、未だ辛うじて胸部が原型を留めている〈Bardiche-11〉に後ろ髪を引かれたのか。ジャンプの予備動作に入った瞬間、影から突っ込んできた突撃級が機体を掠った。


「〈Bardiche-01[春原]〉ッ!!」

『隊長ッ!!』


機動重量20tを優に超えるF-15J 陽炎が、軽々と跳ね飛ばされ、悲鳴と硬いものがひしゃげる甲高い雑音が通信から迸る。
管制ユニットと強化増備で保護された搭乗者はまだしも、車に跳ね飛ばされた人体と同じ、機体はただでは済まず、無事な左腕を藻掻くだけ。
周囲には死肉を漁るハイエナの如く瞬く間に集る戦車級の群。
宛ら津波のようにBETAの群れが押し寄せていて、周囲が避退を我慢しつつ必死に応射するが、その物量を留めるには至らない。
その群れに押され、〈Bardiche-01[春原]〉の機体が呑み込まれる。


『ひぃぃ・・・!』


バリバリと炭素装甲の食い破られる音が響く。
なまじ機体が動けないのに搭乗者が生存している事は、必ずしも幸運なことではない。


『・・ぅぅ・・・私、私達・・・最後まで、頑張ったよね・・?』


プツン、と網膜投影の中のフェイスカメラがブラックアウトし、“NoSignal”の無機質なメッセージだけが残った。



『キャーッ!!』

『うわぁぁ!』


だが、それに一瞬の哀惜を抱く暇さえ無い。
先行した要撃級の間を縫うように乱入した突撃級により、陣形は完全に瓦解した。
通常先頭に来る突撃級が後方から不意を付いたことにより、混乱に拍車が掛かる。
BETAが戦略を使ったのか、とも畏怖したが、単に突撃級が上陸の際の段差に手こずり、それを苦にしない要撃級が先行しただけだと後で気付いた。

しかしその勢いは脅威、恐怖に駆られ慌てふためいて咄嗟に跳躍退避する新人達[ルーキーズ]


「!!、バカッ! 降下[さげ]ろッ!!」

『え!?、あ』


予備照射警報―――、いかなXM3とて皆が皆“白銀の雷閃[ヒーロー]”では無いのだ。

咄嗟に反応出来なかった陽炎2騎が、光条に貫かれて爆散した。


「―――――ッッ!!」


“部隊潰滅”と言う単語が頭を過ぎる。


『ばか者ッ、さっさと下がれェッ!!』


僚機の爆散に気を呑まれた中隊員を庇い、叱咤する〈Pike-01[小尾原]〉。
九州戦線以来の生き残りである彼女でさえ、混乱する戦場と、庇わなければならない部下たちになすすべもなく、要撃級の前腕に斬りつけた長刀ごと弾き飛ばされるその光景を視認してしまった。


『ぐあッ!・・ぅ、あァ・・・・・こんなところで、こんなところで――』

『〈Steel-lance-01[神田少佐]〉、ハルバード隊援護に入りますッ!!
―――陣形立て直しをっ!!』

「!!、〈 Halberd-01[七瀬]〉ッ、助かる、だが、無理するなっ!!」


Pike-01[小尾原]〉の断末魔に被るように、援護の声。
西側を固めていたハルバード大隊の数機が、突っ込んできて盾となる。
一瞬の安堵と共に、気付けば画面では既に〈Pike-01[小尾原]〉がシグナルロストしていた。


BETAの波は、突然現れ長刀を振り回す乱入者にターゲットを変える。
その隙に、残存するスティルランス大隊は離脱するが、突入したハルバード大隊の数機も、万全の状態どころか、既に満身創痍に近い機体状態だと見て取れた。
しかも、同様な混乱のさなか、西側のBETAを完全に殲滅するだけの余力などあるワケもなく、無理に暴れて誘引してきた、と言う表現が正しいと悟る。

―――!!、まさか!?


『・・・大尉、申し訳ありません、・・・わたしは、ここまでの様です。後、お任せします!』

『こんな中途で・・・お願いします、大尉・・・』


その溢れかえるようなBETAの渦に、やがて〈 Spear-01[御手洗]〉と〈Axe-01[川平]〉が沈む。


「!!!、総隊、即時跳躍後退ッ!!、匍匐飛行で、高度はとるなッ!!」

『・・・・・流石〈Steel-lance-01[連隊長]〉、恩にきます。』


既にハルバード大隊の残った若いのは、退避している。
強引な割り込みで特攻を掛けたのは、大隊長と苦楽を共にしてきた中隊長達。


「〈Steel-lance-01[神田少佐]〉・・・皆・・・・・・後を頼む。―――――喰らえッ!!」


刹那――目映い閃光が網膜投影全てを満たした。













『―――状況終了。

1148[ヒトヒトヨンハチ] 上陸したBETAの掃討を以て、“第1回広域JIVES合同演習”を完了とす。

・・・各隊員は原隊整備隊に帰還後、機体整備・弾薬補充を施し、喫飯に移れ。

以降、各連隊長の指示のもと、経緯評価[デブリーフィング]を実施。

尚、2回目の演習は、時刻を予告しない抜き打ちとする―――』


隊付きCP[神谷]の硬い声が通信で流れていく。

そんな自分の網膜投影の片隅、憔悴しきった中隊長達のフェイスカメラの脇には、結わえた紫髪を11月の木枯らしに靡かせ、今も微動だにもしない凛とした立ち姿。
・・・・1時間半を越えたこの演習中、その映像はずっと消えなかった。

武御雷Type-R――、唯一“紫”を許された専用機体をバックに、示されるコールサインは〈Zois-01〉。
―――12月の誕生石でもある紫紺の宝玉“タンザナイト”の鉱物名“ゾイサイト”から付けられたと聞く。
今回大幅に施された改修に併せ新たに付けられたコードらしいが、外観上の変化は見られない。
それでも日本帝国がいだく“紫紺の至宝”煌武院悠陽殿下乗機として、随分と洒落たネーミングをする物だと感心した。

背後に控える如何にも固そうな御側付から、演習経緯は逐次報告為されていよう。
真っ直ぐと戦域を透徹するような視線で、ただ前を見据えていた紫紺の瞳を、閉じる。
しばし瞑目し、そして踵を返したところで、画像が途切れた。









惨憺たる結果、と言うのだろうか。
デブリーフィングは、荒れるというより、奈落だった。


第12師団は相馬原基地に属する国内では最大規模の師団である。
戦術機甲部隊として、戦術機3個連隊を有し、その他に機甲部隊として、戦車部隊・高射砲部隊・自走砲部隊・MALS部隊を擁し、本土防衛軍東部方面隊の中核を担う。
日本海沿岸、佐渡を望む新潟もその守備範囲であり、今回の合同演習も当該地区を含む第12師団からの派遣が要請された。

応諾の結果派遣されたのは、我が鋼の槍[スティルランス]連隊3大隊、108機の戦術機を戦術機甲部隊の中心とし、戦車部隊・自走砲部隊を各1大隊計72輌の戦車・自走砲を含めた、正に通常の戦術機甲師団一個に相当する人員装備であった。


その中核であり対BETA最重要兵器である、戦術機甲部隊の半数以上、実に56騎を衛士ごと喪った。

軍事用語で言えば、40%以上を喪い、部隊として機能しえない“全滅”という状態なのだ。
残りの52機にしても勿論仮想上であるが、大破12、中破27、小破13であり、無傷の機体はない。
現実に機動をしているのだから、仮想BETA以外、つまり地面や障害物等と接触した場合は、現実にも小破や中破を生じている。
これが訓練で良かった、などと言える状態ではない。

もしこれが実戦結果だったら、今回派遣された師団長:加藤少将は更迭軍法会議もの、連隊指揮官である自分は、譴責・降格が妥当なところ。
そしてそんな責任論よりも何よりも、中部日本の防衛に大きな穴を開け、帝都ひいては日本帝国全土にBETAの侵攻を許しかねない、取り返しの付かない結果となっているのだ。


「・・・神谷、最初から経緯を頼む。」

「はい。

 0902、BETA群がH21主縦坑付近開孔10数カ所より湧出、両津湾に海中進攻開始。
 0936、BETA湧出停止、進攻規模は確認された中型種以上で約9,000。
 0943、海中侵攻にて総数の10%が南下に転じたことより、帝国軍東部方面参謀本部、
    及び、斯衛軍統合司令室は、師団規模の本土侵攻と断じ、Code991を発令。
    新潟を中心とする海岸線一帯にデフコン-1を通達。
 0948 帝国海軍日本艦隊所属、駆逐艦“夕雲”、“巻雲”、“風雲”を旗艦とする
    第34機動艦隊、第55機動艦隊、第56機動艦隊が哨戒艇・掃海艇にて機雷・魚雷攻撃を敢行。
 1004 BETA群第1時海防ライン突破。
    第56機動艦隊、旗艦“風雲”を含む全艦艇、佐渡島嶼からの光線属種攻撃により潰滅。
 1018 第34機動艦隊、第55機動艦隊戦線離脱。
    この段階でBETAは10%を殲滅せしめたと判断。
 1019 BETA上陸開始・・・後に第1波と確認。
    上陸地域が広範囲であるため、帝国軍東部方面参謀本部、及び、斯衛軍統合司令室は、
    北東部を第12師団、中央部を斯衛2大隊、南西域を国連横浜軍が担当と決定。
    これにより我隊は、北東部地域に戦術機部隊・戦車自走砲部隊を配備。
    該当戦域上陸BETA総数・・・中型種以上で1,800・・・。」

「・・・・中型種以上で1,800・・・か。小型種を含めば3,000以上。それを実質108騎で防げたぁ無茶言いやがる。」

「・・・二ノ宮、発言は許してないぞ。」

「Yes,Sir―――独り言であります。以後慎みます!」

「・・・・。」

「・・・続けます。
 1026 海岸部地雷原は小型種が接触し誘爆。
    BETA主要部隊は、ほぼ10kmに及ぶ帯状に侵攻。
    本隊は、戦車隊・自走砲隊を定点待機とし、戦術機甲部隊によりBETA群を3つに分断誘導。
    分断作業にて〈Luin-11〉、〈Pilm-08〉、〈Axe-09〉戦死。
    続く誘導中に〈Spear-08〉、〈Spear-12〉、〈Glaive-10〉、〈Pike-09〉、〈Halberd-11〉、〈Axe-07〉戦死。

 1046 BETA群、定点到達。
    集中砲火により、BETA群の6割を殲滅。
    以降、中隊単位で掃討継続。」

「・・・・ここまでは・・・まあ、いい。
誘導殲滅作戦も上手く行っていた。
向こうさん[斯衛・国連]も合わせれば、師団規模のJIVES演習など、我が隊でも初めてのこと。
このリアリティじゃ、全員ド肝を抜かれたろう。」

「――前に遣ったことのあるJIVESに比べて、格段にリアリティが上がってます!!
装甲を齧られて、頭を噛み付かれる所まで見えたんですからッ!!」


・・・余程、怖かったらしい。中隊長の春原までが涙目だ。

実際に戦術機を動かし、一方で網膜投影と閉鎖空間での通信によって、視覚と聴覚を支配されている為、尚更現実感が強い。
戦術機の感触も、匂いも、そして噛み締めた血の味さえ本物。
入ってくる音はとても合成音とは思えない迫力だし、何よりもBETAの動作、反応、質感が確かに以前とは格段に上がっている。

今までの対BETA訓練は、殆どがシミュレーション。
実際シミュレータの映像は、風景までも全て実写合成であるのだが、どうしても動作時にはその繋ぎに違和感が残る。
対してJIVESは現実の機体カメラ風景に、BETAや味方戦術機の損害シーンだけがオーバーレイする手法であり、そのリアリティは圧倒的に違う。
特に今回のJIVESでは、体験者に拠れば機体を喰い破られBETAにが醜悪なその姿を見せて襲い掛かって来る様に、本気で現実かと思い、“死”を覚悟したほど・・・・その瞬間までが、極めてリアルに再現されている、と言う事である。


「・・・シミュレーションで訓練狎れしたヤツほど、実戦でアッサリ死ぬ。
シミュレーション訓練でも“死”への強烈な忌避感を与える為に必要なこと、だそうだ。」

「・・・・。」

「ま、新兵がビビって竦み上がりチビる程のリアリティなら、言うことないだろう。
“死の8分”を越えられなかった9名、お前らにはまだチャンスが在る。
この経験を生かせるか否かで、イザ本当の戦場に立った時、生き残れるか否かが決まる。
怖いと思うなら、今回の自らを猛省し、次に何をしたら生き残れるのか、熟考しろ。」

「「「「い、「「「「「 Yes,Sir!!! 」」」」」」」」」

「・・・神谷、続き頼む。」

「はい・・・。
 1104 BETA第2波上陸開始。
    機甲部隊・戦車隊自走砲隊は砲弾切れにより既に撤退、
    戦域上陸BETA総数、中型種以上で1,600。
    残敵掃討中、海岸部に最も接近していた、スティルランス大隊と接敵。
    続いて、グレイヴ大隊、ハルバード大隊の順に交戦に入りました。
    状況は混乱―――。
    数が多いためコードは割愛しますが、スティルランス大隊にて15騎、
    グレイヴ大隊で13騎、ハルバード大隊で12騎が混乱の中喪われています。
 1114 〈Halberd-01〉、〈Axe-01〉、〈Spear-01〉が、ハルバード大隊と交戦していた
    BETA主要群を誘引。
    スティルランス大隊と合流、スティルランス大隊後方避退。
 1118 〈Halberd-01〉がS-11システム起爆。
    戦域BETA群の約7割を殲滅。
    以降、生存部隊により残存BETAの掃討に入ります。
 1148 残存BETAを殲滅完遂。
    本体の戦域掃討終了を以て、JIVES-CASE-141a 新潟侵攻防衛戦は完了しました――。」


・・・・・誰も何も口にしない。
それどころが、身じろぎする音一つしない。
そう・・誰もが判っている。

BETAの唯一にして最大にして戦略、理不尽と言われる物量。
人類の逃げ道を閉ざした、光条で制圧された空。
地面という身動き出来ないエリアに在って、この膨大な物量と対峙しなければならない。
実際〈 Halberd-01[七瀬]〉のS-11が分岐点、なのだろう。


「・・・七瀬・・・」

「はっ!」

「・・・判ってるな。」

「・・・・。」

「貴様の選択、軍としては上等だ。2階級どころか、3階級特進の上、勲章ものだ。」

「・・・・。」

「・・・だが、自分は一切評価しない。
貴様の行為は、後の責任を生きるものに押し付けた無責任な行為だ。
あれを、・・・部下に命じたなら評価しよう。
だが、自分で遣るのは、愚の骨頂。
部下にやらせない選択をするのならば、あの状況に陥らない[●●●●●●●●●]手管が在るはず!
それを導き出すのが、大隊長の責任だ!」

「ッ!!、はッ!!」

「・・今回はたった[●●●]3,400ポッチのBETAに、この体たらくだ。
今現在、佐渡島ハイヴに潜むBETAは、少なく見積もっても15万と予測されている。」

「「「「 !! 」」」」

「・・・・状況は極めて厳しい。
それでも我々は、この愛しき祖国を護り、佐渡からもBETAを駆逐しなければならない!

今日のこの数字は、・・・・・とても胸を張って“殿下”に報告できる数字じゃないな・・・。」

「・・・・・。」


それ以上、誰も、何も、言うことはなかった。






抑々、今回の合同実弾演習の誘いは殿下の思し召し、極めて僥倖だと思っている。
この連隊だって中部地区守りの一角等と言われながら、実態は構成衛士の50%近くが現実のBETA戦を体験していない新兵[●●]
基地のシミュレーションでは最大でも大隊規模36騎までしか演習できず、連隊や師団単位でBETAと当たる今回のような広域JIVESは、実施されることも稀なのだ。
相手が仮想映像でも実機を動かし、実弾を撃つのだから、噴射剤も燃料も弾薬も大量に消費する。
流石に環境の問題から今回劣化ウラン弾は使用していないらしいが、今回の演習に関しては、弾薬・燃料全て斯衛持ちらしい。

事前に大隊長以上で行った打ち合わせでも、斯衛も頭を痛めているとの事で、今回の目的の一つが、新兵[ルーキー]のキャリアアップと言われ、頷いてしまったのは確かである。
それでも、今回の演習規模・クオリティを見る限り、その効果は計り知れない。
ベテランでさえトラウマを深く植え付けそうなリアリティは、ここで“死の8分”を越えられなかった者たちにも次のチャンスを与えてくれる。
最悪PTSDを出す者も居ると言われたが、これでPTSDに落ちるくらいなら、どうせ実戦でも生存は望めない。
高価で貴重な戦術機と、周囲の僚機までも巻き添えにされる可能性を考慮すれば、さっさと戦術機を降りて、後方で頑張ってくれたほうが余程マシと言うものだろう。
この5日間に予定されている訓練は5回と聞く。
その5回で、どれだけのモノを掴むことが出来るか。
それが我々に課された課題であり、これから戦地に向かう兵士への殿下の餞と言ってもいい。

流石に今日の9時に集合ってことでありながら、何の挨拶もろくにしない内に9:02には演習用の偽Code991が発令されたのには呆れたが・・・。
師団長の加藤少将は、合同参謀本部ということで、帝国軍東部方面参謀本部、及び、斯衛軍統合司令室が合わさった臨時新潟防衛総合司令室内。
尤もこの状況じゃ指令も指示も何もない。
初回だって、おおまかな戦域の取り決めが交わされただけである。
寧ろ情報収集を行なっている、というところか。
帰ってきてからチラッと聞いたところによると、殿下はその司令室にも入らず、戦場を見据え屹立する武御雷のハッチに立って、ずっと戦場を見つめていたらしい。
・・・演習中ずっと片隅に展開していた映像のままに。

国土を護る衛士が身命を尽くしているのに、何故ワタクシが安穏としていられましょう?

・・そう言って演習が終了するまで、11月の木枯らしに吹かれていたと言う。
強化装備を着用しているから問題ないのかもしれないが、もう少し体も大切にして貰いたいところである。



一方で、今回の演習は、過日急遽頒布されたXM3の実戦検証の場、とも公言されている。


先月の末に、突如公開された衝撃的なシミュレーション映像。

光州作戦の撤退戦を模したと言われるCASE-29、難易度Sで獲得スコア340万。
噴射跳躍で光線属種の位置を明らかにし、即時殲滅していく。
無限に湧いてくるようなBETA群を巧みに翻弄し、NPCの友軍を撤退せしめた。

そしてCASE-01、ヴォールクでは同じく難易度Sにて、エレメントで突入。
最早世界最高記録どころではない。
今まで中隊規模で最下層到達が最高記録だったのだ。
反応炉破壊、ハイヴ崩壊、BETA殲滅70,000の上に無傷で生還。
その獲得スコアは4,700万と言う最早出鱈目。
プラチナ・コードと呼ばれるそれは、虚偽でも詐術でも無いことが各国の様々な解析によって証明されている。
シミュレーション故の甘さが在ることは否めないが、少なくとも正規の状況で、アレだけのスコアを叩き出せる者が存在する、と言うことは確実だった。

此処からは噂の域であるが、そのプラチナエレメント、α-1が、帝都城の一騎打ちであの[●●]紅蓮大将を下した“白銀の雷閃”白銀武国連軍少佐であり、α-2がユーコンのブルーフラッグAH戦に於いて、F-22Aを駆るインフィニティーズをたたき潰した“漆黒の殲滅者”御子神彼方国連軍技術大佐だ、と言われている。
斯衛の内部事情ゆえ正規な談話ではないが、少なくとも本人達も否定していないらしい、と。


噂は正直どうでもいいが、問題はその奇跡のシミュレーションや紅蓮大将一騎打ち、そしてブルーフラッグAH戦で多大な戦果を成し得たOSが、全て“XM3”と言う新しいOSであった事だ。
白銀少佐が提唱し、御子神大佐がプログラムしたOS、それがXM3。

しかもこれもまだ噂の域なのだが、BETA大戦の混迷に心痛めた殿下が、国連横浜基地に属する二人に依頼した、と言うのが専らの定説である。
抑々、御子神彼方大佐はもはや“伝説” と化している“弾劾”の実行者とされる。
極端な排他主義と徹底した利己主義に猛烈に毛嫌いされている横浜の雌狐なら兎も角、御子神大佐なら悠陽殿下が依頼してもおかしくはない、との話になっていた。
実際何の思惑があって二人が国連横浜基地に属しているのか不明だが、佐渡ヶ島ハイヴのみならず、元凶であるオリジナルハイヴ攻略すら視野に入れているから、と言う話も伝え聞く。
その真意はどうあれ、ダウングレード版とは言え、XM3LTEを世界にまで公開なぞ、横浜の雌狐では絶対しない、との事だし、自分でもそう思う。
一部で重要な軍事機密を何故?、と言う声も在ったが、二人が国連軍所属であること、引換に戦術機関連の重要パテントの相互利用や、現行CPUで動かす普及版のロイヤリティが帝国軍技術廠に入る事などもあり、参謀本部も黙ったらしい。

そして実際XM3は、殿下麾下の斯衛軍のみならず、帝国軍にも技術廠によって不知火どころか撃震のCPUにまで適合させたLITE仕様として極めて迅速に頒布されたのである。
生存率に深く関わる操縦性要素ゆえ、シミュレータで確認の上インストールの可否判断は操縦者に任せる、ということもあり、最初は怪訝な扱いではあったが、その導入効果は実際計り知れなかった。
何よりもその“硬直時間”の無い操作性は、素晴らしい。
最初こそ即応性に戸惑いもするが、一度慣れてしまえば、もとのOSに戻れるわけもなかった。
それに触れた衛士は、自らの生存率に直結することが理解できてしまったからこそ、それが例え当初米国の傀儡と見られる国連横浜軍から齎されたものであろうと、捨てる要素はない。
発案者と製作者が広く知られてからは、その嫌悪感さえ薄まった。
勿論、未だに懐疑の念が帝国軍から消えたわけではない。
未だに訝しむ者が多数存在していることも、確実。
それでも自分としては所属こそ国連軍ではあるがそれを置いても、少なくともかの二人が殿下の臣であることは、明白に思える。
と言うのもその後の、ブルーフラッグ戦では不知火弐型+XM3でかのF-22Aを下し、AH戦実戦証明が済んでいる。
つまりは、その行動でも米国の強さの象徴を砕き、帝国の威光を示して居るのだから。



そのXM3がBETAに対しても有効なのか、そのトライアルが今回の合同実弾演習の場であった。
プラチナ・コードの公開から言えば、僅か2週間でこの合同実弾演習に持ち込んだ、とも言える。

では、そのXM3はBETAに対して使えたのか、と言う評価をすれば、“極めて有用”とするしかないだろう。
自分とて連隊長、自らの隊の実力ぐらいは、ある程度正確に把握しているつもりである。
少なくとも、今回の演習規模の場合、旧OSでは唯の1騎も残らなかっただろう。
1連隊で旅団規模のBETAを殲滅し52騎が残るなら、本来上々の成果と言える。

だが、それではダメなのだ。
それは、七瀬が遣った特攻に近いのだから・・・。

佐渡ヶ島ハイヴは今尚ジワジワと拡大を続けている。
間引き作戦は島嶼に構築されたハイヴ故一向に芳しくない。
正直なところ本土防衛軍だけであれば、今回の様な師団規模どころか旅団規模の侵攻ですら持ちこたえられるかどうかあやしい。
今回の想定で師団規模の侵攻に耐えたのは、斯衛、国連軍が分担し、適宜防衛に当たったからである。
本格的な再侵攻が始まり、軍団規模が再上陸すれば、帝国軍も斯衛軍もないのだ。

それを理解しているからこその、合同演習なのであろう。





「―――さてと、落ち込むのがデブリじゃないぞ。
各人が“戦死”した状況や、そこに至る経緯、改善箇所は、後で中隊や小隊規模のデブリを行う時間を取るから、そこでしろ。
ここでは、“連隊”として取り得る生き残るための“戦術”をブレストする。
本来中隊長以上が対象だろうが、な。
・・・・例えば七瀬、何か具申があるか?」

「はっ!
では僭越ながら具申させて頂きます。
今回の様な広範囲に渡る侵攻に対する防衛戦で、重要と成るのは如何にBETAを誘引し、効果的に殲滅し得るか、と言う一点に集約されると愚考します。」

「・・・ほう・・。そのココロは?」

「はっ。
ご存知のように戦術機単騎の持ちうる36mm弾は、最大でも27,000発、120mm弾に至っては24発のみと成ります。
120mmは特に大型種に対する手段であり、また長刀による近接戦闘は実質10体も切れば脂肪様物質が付着し極端に切れ味が減退するため、我々の様な一般衛士には戦闘継続性に乏しく、緊急時以外の戦闘手段にしかなりえません。
故に、BETAに対する主要な兵器は36mm砲、と言う事に成ります。

実際通常集団で突進してくるBETAには、ほぼフルオートにて掃射が行われ殲滅しておりますが、これは毎分900発をばら撒く事となり、単純計算では実効30分で弾薬が尽きる事になるのは必至。
しかし今回のケースで見ても、相対したBETAは旅団規模、小型種迄いれれば約6,000としても、戦術機3個大体分の使い切った総数で勘案すると、BETA1体あたり、50発近い弾を使用していることに相当します。
BETA総数の8割が小型種・中型種であることを考慮すれば、この数字は殆どが無駄弾。
更に、戦車部隊や、自走砲部隊、・・・後の私の愚行で削減したBETA数を鑑みれば、正確には更にキルレートは悪化し、300近い数字になるやも知れません。」

「・・・つまり、戦術機のキルレートを上げなければならん、と?」

「はっ。
その様に勘案したします。
先の経緯に在るように、BETA第1波に対する、分断・誘導・殲滅の戦術は、極めて有効であったと評価します。
途中の損失は各自の練度や隊の連携を強化していけば防げるものであり、戦術そのものの失策ではない、と認識しております。
我々には、連隊や師団規模でシミュレーションを行う設備がなかったため、BETAに対する対抗手段の訓練は基本、各個殲滅、でありました。
勿論戦術機のキルレートを上げるためには、勿論戦術機の練度を上げ、無駄弾をなくす事も肝要ではありますが、衛士の技量が突然に上がる事は期待できません。
そしてBETAは集団で侵攻してきますが、決して密集はしてはいません。
そこで適宜BETAを誘引し、集結させることで集中砲火によるキルレートの向上が見込める、と愚考した次第です。」


成程。大隊長として考えていないわけでもない、と言うことか。
誘引に依る、包囲殲滅、乃至、S-11等の使用による広域殲滅。
その有効性は、戦車大隊や自走砲大隊との戦術でも証明されている。
小回りが利かず、前面には出せない彼らを効率よく使う手段とした戦術では在ったが、戦術機にも同じ事が言える、か。


「・・・他に具申はあるか? 日高、グレイヴ大隊長とてなにか在るか?」

「は。自分も七瀬の具申に賛成であります。
ただ、今回の演習は我が隊のBETA殲滅を以て完了しました。
同時に演習を行っていた、斯衛軍や、国連軍が如何にしていたか、参考にすべきと愚考します。
特に、白銀少佐の実機機動には、正直興味を引かれます。」

「・・・そうか、それも一理、だな。
そういえば、ダイジェスト映像が配布されていた。

・・・・では如何な戦術でBETAを駆逐するか、それを念頭に、“先駆者”でもある、白銀少佐の機動でも見てみるか。」


配布されていた映像から、国連横浜軍のファイルを選んだ。


Sideout




Side OOO(とある帝国軍戦術機甲部隊中隊指揮官)


何なの!? これは――――。

開いた口が塞がらないとは、こう言うことを言うのだろう。



昼飯の喫飯後始まったデブリーフィング。
戦術機甲連隊として、散々だった内容。

個人としても・・・・・正直凹む。
正面装甲を戦車級に喰い破られて、目があったときにはチビったし・・・。
強化装備が排泄処理機能を持っていてくれて、ホント助かったわ。
余りのリアリティに思わず本気で“死”を覚悟して恥ずかしい台詞まで吐いてしまった。
黒歴史だわ・・・。


此処は佐渡からの直射範囲に入らないよう、弥彦山を挟んで旧燕市公民館辺りに陣を引いた、合同参謀本部。
打ち捨てられた公民館の大ホールを借りての、戦術機甲連隊全員、衛士108名+CP1名の全体会議[デブリ]

合同と言いながらも、今まで訓練もしたことなければ、装備からして違う3軍。
斯衛軍は武御雷と瑞鶴だし、横浜軍は不知火か一部あの[●●]弐型と武御雷が居る。例のXFJ関連篁大尉の関係だろう。
ウチは不知火、陽炎、撃震の混成だ。
命令系統さえ全く異なる3隊は直ぐに連携など取れるはずもなく、取り敢えず第1回はエリア分け、となったのも仕方がない。
生“白銀の雷閃”観たかったなぁ・・・。


で、肝心の演習は誰が設定したのか、9,000にも登る旅団規模を越えた師団規模のBETA侵攻。
担当エリアだけでも合計で3,400、旅団規模に十分近い大集団だった。

それを、例え半数を喪ったとて、一個連隊で殲滅出来ただけでも本来なら特筆もの。
これも機動性を飛躍的に向上してくれたXM3の恩恵となれば、開発を依頼し、効果を見るや即時全軍への展開を計って下さった殿下への感謝に絶えない。
確かに連隊長が言うように、継戦維持と帝国の未来を思えば、まだまだ満足しちゃイケナイ内容なのは解かるけど・・・。
七瀬大隊長の指摘も理解する。

―――でもどうやって?
それが、正直偽らざる気持ち。


そんな中、連隊長が映し出したのは、他隊の戦闘情報だった。

――――のだが!





・・・確かに、見たことがある。
どことなく現実感の薄い“空”を翔け、放たれる光条を躱し、光線級を優先して潰しながら、上空からの広域掃射を掛けるその姿。

画面には、機体が肩部スラスターを配した不知火・弐型に変わったが、国連ブルーの配色は同じその姿。
その機体が、初冬の日本海側気候、どんよりと曇った本物の“空”を、切り裂くように飛翔する。

以前見たシミュレータ画像よりも、更に鮮烈に、鋭利に・・・。
一切の外連なく“空”を翔るその姿に呆然としていたが、いつの間にか涙すら浮かべてしまっていた。



そして驚愕から感動、漸く冷静になってくると、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”のその機動の意味も理解できてくる。

白銀少佐は、担当戦域海岸を一気に甞め、上陸した光線級を優先的に排除するとともに、浅い掃射で上陸したBETAのターゲットを取り、一気に誘引したのだ。

そしてエリア端に達すると、しばし近接戦闘。
基本地べたを這うしか無いBETAにとって、光線級を排除し制空権を確保した上で、宙を舞う白銀少佐は正に天敵。
勿論、佐渡本島や、隣のエリアからのレーザーも在るわけで、高い高度は取れないが、突撃級の背中をバック転で飛び越すような事をする人は、今のところ彼だけだろう。


そうやって周囲に突撃級を集めたところで、白銀少佐は先程来た道を折り返した。


スピードと言う点で言えば、BETAには極端に足の早い突撃級と、それ程でもない種の2種に分かれる。
故に距離があれば、どうしても到着時間に差が生じ、一気殲滅し難いのだが、白銀少佐はそれを承知で突撃級を集め、その上で向かってくる要撃級の群れに、単騎突っ込んだ。


そして要撃級と少佐を追った突撃級が正面からぶつかった時、十字砲火がその密集したBETA群を打ち砕いた。


白銀少佐が要撃級の群れのど真ん中を抜けた先には国連太平洋方面第11軍A-0大隊A-01部隊として今回参加した機密部隊、通称伊隅ヴァルキリーズが待ち構えていた。



元々国連太平洋方面第11軍、通称国連横浜軍に属するA-0大隊は、極秘作戦に従事するTASK FORCEであり、公表されているのは、ごく一部だけ。
A-0大隊長が白銀武少佐、A-00中隊長が神宮司まりも大尉。
A-01中隊長が伊隅みちる大尉、顧問として御子神彼方技術大佐がついている、ということだけである。
XFJ計画を成功させ、試01式を導入した篁唯依大尉も一時的に属しているのは、ブルーフラッグ戦の経緯もあって結構知られているが、それ以外の隊員については、名前すら明かされない。

そして、今回の第1回合同演習に参加したのは、A-01中隊12騎、A-00中隊からは、〈Thor-01〉白銀少佐ただ一騎。


その一個中隊+1騎で、誘引したBETA約800を上陸開始から僅か30分で殲滅せしめたのである。



戦力が一個中隊の規模故、担当したエリアが少なかったことは確かだ。
それでも、我々の凡そ半分のBETA群を、1/9[●●●]の戦力で、半分以下の時間で殲滅した。
しかも、BETA第1波による損害は、0。


・・・・背筋が寒くなるのは、仕方ないよね?



けれど、それは奇しくも七瀬大尉の主張と同じ。

徒に弾薬を消費するのではなくBETAを誘引し、密集度を上げ、固まった所で一気に殲滅する―――、その言葉を、理想を、既に実践しているのが白銀少佐であり、白銀少佐の元で鍛えられたに違いない、伊隅ヴァルキリーズのメンバーなのだ。






だが、更に驚愕したのは、そこではなかった。


その後、白銀少佐は手持ち無沙汰とばかりに、3大隊規模で、1,700のBETAと相対していた“隣”[斯衛軍]を手伝いに行ってしまった。
少佐自身は、そこでも見事な単騎翔けを行い、もう“作業”張りに戦域光線級を殲滅してしまった訳だが、流石に海岸線30km余りを駆け抜けたのである。
BETAが埋め尽くす海岸線は、そうそう簡単には戻れない。
当然残った伊隅ヴァルキリーズが、上陸してきた第2波BETAの殲滅を担当することになった。

それ故判明したのは、なんと、伊隅ヴァルキリーズの中にも光線級の照射回避を行える者が、少なくとも3名存在したと言う衝撃の事実!
勿論、白銀少佐の機動に比べれば、高さも低く回避行動もどこか危なげで心許ないが、確かに噴射跳躍から光線級の照射を誘い、それを回避しているのである。
光線級の次射へのインターバルを利用して強襲した他隊員が叩くという連携で、出現した光線級を次々に排除していった。

その様子を見るに、恐らくは彼女たちも実戦形式のJIVESでは初めての挑戦だったのであろう。

最初の跳躍や強襲はぎこちなくさえ在った。
だが、2度、3度と数を熟して行くに連れて、跳躍時のレーザー回避も、光線級への強襲撃破も、徐々に洗練されていくのが見て取れる。
全部を一人で実行してしまう白銀少佐の様な破格の機動は出来ないにしても、中隊として役割を分担することで、全く同じ成果を上げている!


大規模実弾演習というこの場で、白銀少佐にすら頼らない、中隊規模の対BETA防衛戦術構築に果敢に挑戦するその姿―――。

伊隅ヴァルキリーズは、それを目の前で実践しているのだ!!




――――この事実に気付き押し黙ったのは、私だけではない。

乗っている機体は不知火。使っているOSは正規とLITEの違いは在れ同じXM3。
聞いたところによると、光線級の照射回避はリミットレベル4の反射が行えれば可能、とも。
・・・つまり、我々でも切磋琢磨し、XM3に習熟すれば、あの戦術が使える、と言う事に他ならない。

確かに彼女らには白銀少佐という、偉大な先駆者にしてお手本、そして指導者が居た。
だが、それ以外の条件は同じと言っても過言ではない。
その戦術が、可能性が示されれば、出来ないことはない・・・筈。
・・・・というか、遣るしかない!


ふと気づけば、周囲の反応も同じ。

先程までの打ち拉がれた風情は、どこにもない。
XM3の齎した異次元の機動。
それを使いこなせれば、BETAの波を単騎でも突っ切るコトが可能。
それは例え単騎では無理でも、中隊が、そして大隊や連隊が連携すれば、より大きな戦果を齎し得る。

XM3が、単純に回避による生存率が上がった、などというレベルに留まらず、防衛戦術さえ変えてしまえる“可能性”を秘めたものである、と初めて気付かされた。


そう、このBETA大戦に参戦し、初めて見出した“希望”という可能性を・・・。


Sideout




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