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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 12:08
'12,12,22 upload  ※後片付けが膨大な事に今気がついた・・orz
'15,01,30 大幅改稿
'15,06,19 誤字修正
'15,09,03 齟齬修正
'16,05,06 タイトル修正



Side 霞


副司令を始め、A-00部隊の皆さんは殆どが11月の初めから不在でした。
武さんを始め、神宮司大尉と副司令は207B訓練小隊の総合戦技演習に南の島。
副司令は囮を兼ねたバカンスだとか。
御子神さんが大量のシャンパンを持たせたらしいです。
その御子神さんは、篁中尉はユーコン基地にXFJ計画の完遂に向け、ブルーフラッグ演習。
どちらかに連れて行こうかと言う話も在りましたが、何れも襲撃が予測されるため、今回はお流れとなりました。

実際、どちらにも強襲があった様で、まだまだ外の世界は怖いみたいです。


ワタシは留守番のA-01部隊の皆さんにかわるがわる護衛されながら、強襲のデータや御子神さんが構築したCCCAやMACROT、武さんが更にそれらを進化させたManeuver Concept of Linked Inertia Control:MCLICに付いて纏めたりしていました。



そして、今朝一足早く、ユーコンから帰ってきた御子神さんが連れてきた二人。


部隊執務室に入ってきた怯えたような姿を見たとき、ワタシはリーディングを使うまでもなく、解ってしまいました。

・・・彼女達は、在り得たかも知れないワタシの姿なのだと。








人としての範疇を外れた力。
その為に受けた嫉妬や畏怖。
造られた生命への軽視。
それ故に自ら閉ざしてしまった周囲への興味。
不自然なまでに刷り込まれた国家への忠誠。


それは、ほんの2週間前、武さん達が来てくれる前の、私の姿そのもの。

ヒトではない機械から生まれ、研究と試験だけの毎日。他の姉妹からさえ隔離され全ての意志を拒絶されながら育ったワタシ。
それは第4計画に接収され、副司令の下に帰属した後もさほど変わりませんでした。

ワタシの能力の全ては、覚醒前の純夏さん、その夢想の領域に向けられていて、その理解と解析だけが、ワタシの存在価値。
それが出来なければ、存在すら許されない、ずっとそう思い込んで居ました。

進展しない理論解析に、その頃の副司令の色は何時も刺々しくささくれていました。
不機嫌以外の色を見たことがない位に・・・。
その中でワタシは何の意志もないままに、ひたすら夢見る脳髄と向き合うだけの日々。
それはある意味“闇”。
“絶望”や“死”、“滅び”と向きあう様なモノ。


楽しい日常を、未来を、突然破壊したBETA。
深い、という言葉では到底表せない絶望。
陵辱と倒錯した快感の記憶になれば、憎悪と諦観の入り交じったハレーションに霧散する。

そこにたった一つ残って居るのは、“タケルちゃんにあいたい”、という儚い思念だけ。


意識のない純夏さんの思い出と繰り返し繰り返し同調するうちに、今迄に何の思い出のないワタシは、何時しか純夏さんの想いを自身の思いと重ねてしまって居ました。

けれど、それはある意味、凄惨な死に至る過程を、繰り返し体験するのと同じです。
そして、その先には、何の希望も存在しない。
純夏さんの望む“タケルちゃん”は既にBETAに殺されているのですから・・・。

明確な意識も無く、一種“狂気”にまで及んだ夢想は、既に認識すらしていないのかも知れませんが、ワタシには自分の理性があり、重ねながらも認識しています。

底なしの絶望・・・。
それでも其れと向き合うしかない日々。


それが2週間前迄のワタシの全てでした。





そのワタシの世界が変わったのは、10月の22日。
奇しくもワタシが人工子宮から出されたとされる日、所謂誕生日でした。


この日、横浜基地に顕れたのは、純夏さんの記憶にある“タケルちゃん”。
本来あり得ないその存在は、純夏さん自身が呼び込んだ他の世界群の存在だと言います。
そしてその武さんは、悲しくなる程の長いループの記憶を有しながら尚も進むことを止めない人でした。
武さんの記憶にあるワタシ。
武さんが傍系と呼ぶ記憶は普段読み取ることは出来ませんが、どの記憶でも武さんの隣にいるワタシは笑っていました。
ワタシの過去、あるいは未来を知り、ワタシの能力を知りながら全く忌避することもなく、許容してくれる存在。


純夏さんの記憶と自分を重ねていたワタシは、世界を渡って戻ってきてくれた武さんに、一気に傾倒してしまいました。


そして、その想いが純夏さんのものではなく、ワタシ自身の想いだと自覚した頃、武さんと同時に現れた御子神さんに依って、純夏さんは覚醒しました。
しかもその覚醒直後、純夏さんは爆弾発言。ワタシの存在を認めてくれる抱擁。




今思えば、あの誕生日に来てくれた武さん、そして純夏さんの覚醒と復活によって、ワタシは初めて自己の意志を持ち、この能力以外の存在意義を見いだせたのかも知れません。
そうなって見て、改めて外の世界に目を向ければ、副司令が実は何かと気に掛けてくれていたことにも気がつきました。勿論それ迄は副司令にも余裕がなく、生来素直じゃないので、極めてわかりにくいのですが・・・。
武さんと関わり、御子神さんと関わり、そして急激に他の人との接触が増えると、その優しさも解りました。
勿論、この能力を他の人に知られたとき、どんな拒絶が来るのか、それは今も怖いです。
それでも判ってくれる人もいる。
閉ざしていたワタシの世界は、漸く開かれ、世界が思っていたより優しい事も理解しました。






そんな、救われたワタシに比して、今、目の前に居るワタシの“姉妹”。

武さん達が来てくれて、そして純夏さんが復活する前だったら、もしかしたらワタシは彼女達に何の興味も示さなかったかもしれません。
第3計画から引き継がれたワタシの存在価値は、ただこの脳髄と向き合い情報を引き出すことでしかない・・・、そう思い込んでいたワタシと同じ。

私たちは強くないと、捨てられちゃう。
戦えない私たちは、要らない。

それは彼女達の忠誠心に依る戦うことへの脅迫観念。
ほんの2週間前まで、ワタシも彼女たちと同じトコロに居たのです。

そしてその存在価値であった戦うことが出来なくなった今、その刷り込まれた忠誠からも解かれ、自らの存在意義すら解らなくなってしまった、寄る辺ない存在。




彼女達を連れてきた御子神さんが何をしたいのかも理解しました。
それは、ワタシの希望と同じで在ることも・・・。


無理矢理に肥大させられた能力に対し、余りにも脆弱な人格。
すり込まれた忠誠と個人的な希望が葛藤する中で、取ってきたギリギリのバランス。

ボロボロの精神に存在するたった一つの暖かな感情。
崩壊寸前の自我を支えているたった一つの思慕。



ワタシが何をすれば良いのか、それも判ります。
それが出来るのがワタシの力であることも。

それが少しでも、助けに成るのなら・・・。






怯えながらもワタシを見る二人。
ワタシの存在が、どんな存在なのか、薄々気がついているのでしょう。


「・・・・・・一つだけ聞かせて下さい。
貴女方に前に進む“意志”はありますか?」


ロシア語で尋ねました。


「・・・・・・・私たちに出来る事は闘う事だけだ。
けれど、闘えなくなった今、祖国からも見捨てられた・・・・。」

「・・・・・・祖国よりも大事なモノを見つけ、それを優先したからこそ、護れたのでは無いのですか?」

「「 !! 」・・・・そうか。・・・そうだな。
私たちには祖国や自分を犠牲にしてでも、護りたい者が居た。」

「・・・今貴女方は、その人に護られているのが解っていますか?」

「 ? 」

「・・・今、貴女方の精神を支えているのは、その人への想いだけ。
貴女方の心を護っているのはその人です。」

「「 !! 」」

「・・・・もう一度訊きます。・・・・“前”に進みますか?」

「・・・・・。」

「・・・すすむ。
・・・ユウヤが好きだから・・・ユウヤが大事だからユウヤの負担になるのはイヤ!」

「! イーニァ・・・・。」

「・・・私にだって見える。
ユウヤは優しいから暖かい色が、・・・大事に思ってくれていることも判る。
でも私たちに無理させたこと、・・・悲しいくらい青かった・・・。」

「・・・。」

「私は前にすすむ。
・・・祖国が私なんて要らなくてもいい。
でも、ユウヤが私を負担に思わなくて良いくらい、強くなる!」

「・・・そうだな。
最早、前に進むしかないのだな・・・。」



少しだけ瞳に力を取り戻した女の子の前に立ちます。


抱いているのは・・・くまさんなんですね。
・・・・ワタシのうささんの方が可愛いです。

あと、・・・・その胸はちょっとずるいです。
でも・・・・2年・・・いえ、4年後は負けません。



「・・・ワタシは社霞です。
名前を教えてください。」

「! い、イーニァ・シェスチナ。」

「クリスカ・ビャーチェノワだ。」

「・・・ワタシは嘗てこの横浜に来る前、トリースタ・シェスチナと呼ばれていました。」

「「 !!! 」」


トリースタ・シェスチナ。
第6世代の300番目と言う意味。
それは名前ですらありません。
第3計画で作り出された人工発現体の最終プロダクト。

今は社霞という名前が、ワタシが、確かに存在するのです。


そしてワタシに与えられ、この横浜に於いて純夏さんへのリーディングとプロジェクション、更には御子神さんによるプロジェクションの電子化や、繰り返された純夏さんへのサイコダイヴでも磨かれてきた能力。


概念化した“許容”と“エール”、ワタシの最大出力でのプロジェクションを展開します。


「「あ・・・・・。」」


ワタシの得た全ての“優しさ”を込めるように。


Sideout




Side ピアティフ


207B訓練小隊の総合戦技演習に随伴した副司令よりも早く、今朝方ユーコン基地から帰国した御子神少佐、もとい御子神大佐は、篁中尉の他に、二人の国連軍C型軍装を纏った少女を連れていた。

この基地に帰属した時、20と言う歳で少佐であることにも驚きを覚えたが、2週間も経たないうちに2階級特進ってナニ? とも思ったが、今回大佐の為した成果を考えれば、当然の事とも思える。
そもそも最初に見せられたヴォールクシミュレーションで、普通で無いことは理解させられたから。

なので、今回連れ帰ってきた、雰囲気がどことなく社少尉に似ている二人も恐らく普通ではないのだろう。
一時的にA-00戦術機概念実証試験部隊に属する衛士であり、既に任官した少尉であると言うこと。
副司令からも取り敢えず宜しく、との連絡を受けていた。

但し実際には衛士としての配属ではなく、横浜での療養が必要とのことで、部隊エリアへのパスや、個室の手配等を朝一から頼まれたのである。

それらの必要なモノを一通り揃え、PXに出向く。


そこには先の4人に加え、社少尉も御子神大佐の隣に座っていた。



「・・・申し訳ないな、ピアティフ。
日曜日の朝早くから。」

「とんでもありません! それよりも、おかえりなさい、御子神大佐、篁中尉。
・・・・そして、おめでとうございます!」

「・・・は?」

篁中尉が何の事か判らないような声を上げる。

「昨日の朝、基地に臨時アナウンスがありました。
篁中尉が推進したXFJ計画によって開発された次期主力戦術機候補である不知火弐型が、ユーコン基地に於ける総合評価プログラム“ブルーフラッグ”の対人戦技演習で、米国のF-22EMDで構成されたインフィニティーズに完全勝利した、と。」

「・・・・臨時アナウンスで流れたのですか?」

「はい!
御子神大佐が指揮する弐型2騎・ACTV2騎編成のアルゴス試験小隊が、見事にF-22EMDを各個撃破した、と。
昼頃には、映像も流れました。
大佐が齎した装備でステルスを看破し、精密狙撃で相手指揮機を撃破したところや、新型のOSを換装したもう一機の弐型が見事な3次元機動でF-22EMDに打ち勝ったところなど。
XM3も弐型もウチの部隊が関わっていますから、嬉しくて!」

「・・・・。」

「・・・ありがとう。
そう言って貰えると嬉しい。
勿論、XM3などは、ピアティフや社も含め部隊のバックアップ在っての成果だからな。
コチラからも礼を言う。」


篁中尉は絶句しているが、柔らかく微笑んでそう礼を返してくれる大佐。


「そんな! 私なんてナニも。」

「謙遜しなくていい。
俺が手の回っていなかったA-00の入力履歴チェックや、慣熟度チェック諸々、自身の衛士トレーニングも始めた涼宮(姉)を手伝ってくれているのは、貴女だろう。」

「! ご存知だったんですか?」

「正当な評価だと思うぞ。」

「あ・・・ありがとうございます!」


・・・裏方を認めてもらえるのは、正直嬉しい。
直接戦う力を持たない私たちでも、一緒に戦っていると思える。
そう言うところまで気を配っているあたり、抜け目ない。
副司令は気付かないか、気付いていても気を遣わない人。
その副司令でさえ、それまでのピリピリするような近寄るのも怖い雰囲気が解消され、最近は随分と余裕が出来た。
それも御子神大佐が帰任してからだ。
それだけでも第4計画の補佐としては随分と助かっている。



「まあ、残り半分は弐型を彼処まで纏め上げたXFJ計画の功績だと思うがな。」

「!! 大佐、私には、過分の評価です。」

「・・・な、ピアティフ、謙遜も行き過ぎると少し嫌味にも思えるだろう?」


言われてアワアワする篁中尉が可愛く見える。


「フフ、そうですよ、篁中尉。
XFJ計画完遂は紛れもなく貴女の功績なのだから、誇るべきです。」

「・・・・私の・・功績?」

「言っただろう? XM3無しで此処まで動けるのは賞賛に値する、と。
俺がおべっかやヨイショを使うタイプに思うか?」

「・・・・ありがとうございます。」

「しかし・・・プロミネンスが情報公開も目的にしているとは言え、そこまで大々的に公開したのは、ハルトウィックの思惑だろう、・・・が・・・、これは帝国軍も大騒ぎだな。
・・・午後にでも帝都城に帰任報告に行くしか無いか・・・。
ピアティフ、この件も通知してもらって良いか?」

「はい、お任せください。」

「ありがとう。
・・・・・篁も昇格位覚悟しておけよ。」

「・・・・・は?」


篁中尉は、それでもまだ実感が湧いていない様子だった。




「さて、悪かったな、社、ビャーチェノワ、シェスチナ。
まずは食事にしよう。
その後、二人はこの綺麗なお姉さんから基地内のあらましを教えて貰え。
ピアティフ、自己紹介頼む。」


掛ける言葉は英語である。
二人は元々はソ連軍衛士であり、ロシア語と共用語である英語は不自由しないが、流石に日本語は話せないらしい。
私も副司令の極秘計画は殆どのメンバーが日本人で構成されており、部隊内では通常日本語を話すが、国連軍であり、多国籍で構成された基地として公用語は本来英語に成る。


「Yes, Sir。
・・国連太平洋方面第11軍所属、イリーナ・ピアティフ、階級は中尉です。
貴官達の着任を歓迎します。

この後貴女方の所属するA-00部隊は、基本的には極秘計画に属する部隊となりますので、基地内の事務は全て私を通す事になります。
・・・・宜しくね。」

「は! こちらこそ宜しくお願いします。私はクリスカ・ビャーチェノワ少尉、こちらは」

「イーニァ・シェスチナ少尉だよっ!」

「・・・・・・このとおり、まだまだ幼い為、言葉遣い等不遜で申し訳ありません。」

「構わないわ。
副司令も、御子神大佐もその辺は拘らないから。
じゃあ食事の摂り方から説明しますね。」


ビャーチェノワ少尉は兎も角、シェスチナ少尉は幼い。
実際社少尉と同じくらいだろうか。
・・・それにしては、幼さの残る相貌に比して身体の発育は良いみたいだけど・・・。
この歳でもう衛士だという事を不憫に思いながらも緊張するような辿々しさが微笑ましい。

歳が近い所為か、雰囲気が似ている所為か、社少尉とは既に親しげに見えた。



連れ立ってカウンターに行くと厨房から見知った方が顔を出した。


「おや、おはよう、ピアティフ中尉。
休みだってのに早いね。」

「おはようございます、京塚さん。」

「・・新人かい? !って唯依かい! おかえり! よく遣ったねぇ!!」

「あ、師匠、おはようございます。
・・・今朝方帰任しました。」

「よしとくれよ、相変わらず堅いねぇ。
それより、不知火であの最強とか威張り腐ってるラプターを撃破してくれたんだろう?
あたしゃ、胸がスッとしたよっ!」


京塚さんに捕まって、再びの思わぬ賛辞にオロオロしている中尉を尻目に、二人に食事のとり方を説明する。



「ルシェフ」

「ん? おや!彼方かいっ! アンタもよく遣った!」

べた褒め口撃に晒され、その絨毯爆撃で身動きの取れない篁中尉は、それを遮った御子神大佐に漸く救われた。
大佐は、BETA侵攻以前から横浜には脚を運んでおり、元々はこの地で開業していたという京塚さんのレストランの常連でもあったらしい。
因みに京塚さんは、BETA侵攻に備えて横浜の疎開が進んだ後も京塚食堂という形で暫く残り続けたと言う事だ。
その名残か、大佐は今も京塚さんをルシェフと呼ぶ。
良くは知らないが“Grand Chef RELAIS & CHATEAUX”なる称号をも持つ調理人だったと言うことだった。

適当な返事をしながら、大佐は大きな桐の木箱を京塚さんの前に置く。


「・・・・なんだいこれは?」

「ルシェフへのユーコン土産。」


そういって木箱を開ける。


「!!!・・・・・・これは・・天然モノのますのすけ? ってこんな立派な!!」


木箱の中から出てきたのは、光る銀輪も眩しい、まさしくキングサーモン!
しかも今まで見たこともない1mを優に超える見事な巨体。


「早起きして釣ってきた。
67lb(ポンド)だから、約30kgか。中々の型だろう?
内臓とエラは処理して、血抜き後一度冷凍してあるからこのまま刺身でもOK。
まあ、基地の規模からすれば微々たるもんだが、そこは当たれば幸運と言う事で、使い方はルシェフに任せる。」


鮮度や解凍具合を確かめる京塚さん。


「・・・そういえばアンタ、昔もいろんな食材持ち込んでいたわねぇ・・。」

「まあな。
一応、タイム、ディル、フェンネルは在るだけもらってきたから。」


抜け目ない。
木箱の蓋には、ビニールに入った大量のフレッシュハーブ。
京塚さんが嬉しそうにバシバシ大佐の背中を叩いている。


「・・・で、さ。
昨日207Bの雛っ娘達も総合戦技演習合格したと報告を受けた。
明日には帰ってくるから、コイツの一部使って、そのお祝いと、XFJ計画完遂の部隊内祝い、更にこの二人の歓迎会の料理を揃えてやって貰えないか?
人数は、凡そ30人。
食材は、他にもある程度ならユーコンから持って来て融通できるから。」

「・・・承知したよっ!! 久々に最高の食材! 腕がなるねェ!」

「感謝。
・・・あと必要なら、これは三枚に卸すけど?」

「・・・そうだね、こんだけ大きいと、あたしにゃ難儀だからお願いできるかい?」

「了解。」

「・・・・あの、大佐・・・。」

「ん?」

「その・・・師匠の弟子としては、是非私も解体も拝見したいのですが・・・・?」

「構わないが・・・・・、じゃあ食事摂ってからにするか。」

「はい!」

なぜか嬉しそうな篁中尉。



おかげで朝食後、厨房でキングサーモンの解体見学、と成った。
そんなモノの何が面白いのか、と思っていたが、それは私の認識不足。
サバイバルナイフ一振であんなに鮮やかに、ほんの5分も掛からずあの巨体を三枚に卸し、切り身にしてしまう人を初めて見た。
刃渡りに対し明らかに幅広の魚体に、背側と腹側から刃を入れるが、寸分の狂いもなく中骨を残す。
最終的に切り分けられた中骨は、光が透けるくらい、骨の厚さ分の身しか残って居なかった。
京塚さんも満足げに頷き、興味深げだった周囲の料理人からも感嘆の声が上がった。


因みに大佐がハラミ周辺や中骨・ヒレ周りのアラを手早く刺身や剥き身にしてくれたのは、見学者だけの秘密。
社少尉や、シェスチナ少尉も初めは生魚に恐恐としていたが、一口食べたあとは、瞳をキラキラさせて、大佐におねだりしていた。

・・・・私も、その気持は良く理解できた。
京塚さんが腕を振るうという明日の夜が楽しみになってしまった。


Sideout




Side 唯依


「こんな方法が在ったのですか・・・・。」

朝食とピアティフ中尉による基地の説明や手続きが済んだ後、機密区画に戻ると、早速ヘッドギアを付けてセルフダイヴと呼ばれる心理治療に入った二人。
社少尉がそのナビゲーションを行っている。



此処に還ってきて二人に最初に逢わせたのは社少尉。
同じ第3計画の出身者。
そしてESPと言う特殊な力も有すると言う社少尉は、彼女達の事を理解し、許容してくれた。
恐らく、それを理解したイーニァは、その胸に縋って泣いた。
そのイーニァを気遣うクリスカも、一緒に抱き込まれ、最初は戸惑いながらも、その小柄な少女に縋ったのだ。
実際社少尉がもっとも末っ子に見えるのに、その姿は姉の様でもあった。



「人格領域は、外部から手を加えるわけには行かないからな。
下手なことすれば齟齬が生じ、人格自体が不安定になる。
それを治すには自分自身による内的領域からのアプローチが必要で、現状それが出来るのは社、そして経験者の俺と鑑が居るここ横浜だけだ。」

「え? 経験者、ですか?」

「俺が落雷で昏睡だったのは話したよな。
それを自力で治したようなもんだ。
俺の場合は手探りだったんで、結局1年、掛かったけどな。
で、それを応用し元々は、鑑を覚醒させるのに使った技法だ。」

「 !! 」


軽く言うがどのような苦難の行程だったのか。
・・・それが大佐の勁さ、・・・か。


「・・・あまり急ぐわけにも行かないが、さっき社が俺が訊きたかったことも確認してくれた。
本人達の意志も前向きなら、1,2週間で殆どのニューロンを修復できるだろう。」

「けれど・・・社少尉はあんな技能を持っていたのですね・・・。」

「ま、謂わば第3計画の集大成・・・・ラストオーダーだからな。良い子だろ?」

「はい。」


否定する要素は何も無い。
寧ろ彼女らを許容し、導く様には感謝しかない。


「・・・それだけに、危険も多い。
サンダークには釘を刺したが、ソ連には他にもまだ未練を引きずっている輩もいるし、その力に過大な幻想を抱いている別組織も多い。」

「!」

「篁も気に掛けて遣ってくれ・・・と言っても社も、ビャーチェノワやシェスチナも篁の部下と言う事になるな。」

「・・はい。
上官としても彼女達の周辺には絶えず気を配ります。」

「ああ、頼む。
ところで、二人の事は一任したが、篁としては完治したらどうするんだ?」

「そんなに早く治るとは思って居なかったので検討しますが・・・・出来れば、ここで少し教導して、早めにユーコンに返そうと思って居ます。
大佐の許可が頂ければ、XM3とXFJで。
でも少なくとも決戦[●●]に巻き込むわけには行かないかと・・・。」

「・・・それも良いかもな。“紅の姉妹”がEvo4の機動概念を会得したらどうなるか、見てみたいな。」

「それは・・・・抜かれそうな気がしないでもないので、上官としては複雑ですが・・・。
あと、少なくともクリスカには多少でも日本の家庭料理を仕込もうかと・・・。
イーニァも先程刺身を気に入っていたので、興味を持つかも知れません。」

「・・・・。」


大佐の微妙な顔に、ちらりと作業に集中している社少尉を見る。
その動作に気づいて、部隊執務室に戻ってきてくれた。
今は他に誰もいない。


「お気遣い、ありがとうございます。
・・・・大佐にだけは、お伝えしておいた方が良いですね。」

「ブリッジスのことか?」

「はい。
彼は―――“兄”、なんです。
・・・父が母との成婚前、米国に戦術機の開発を習得に行った際の―――。」

「!・・・・成程―――」

「ユウヤの母、ミラ・ブリッジスさんは、懐妊に気付いた後全てを捨てて父にも誰にも、何も言わず、失踪し彼を産んだそうです。
その後居所が見つかり実家に連れ戻されたそうですが。
南部の所謂名家らしく、父も知れないユウヤは相当苦労したみたいで、彼の日本嫌いはそこから。
恐らく彼女の失踪後間もなく帰国した父は、彼の存在すら知らなかったし、母も知らないと思います。
知っているのは数人、私の知る限りでは・・・、ハイネマン氏と巌谷の叔父様だけです。」

「・・・そうか。」

「―――正直、まだ完全に割り切れた訳では在りませんが、私なりに納得し、篁家当主の証:緋焔白霊はユウヤに託しました。
その彼が選んだ女性ならば、幸せになって貰わなければ、困ります。
あの二人が本当に闘うだけの存在では、切なすぎる・・・。」


ぽんと、頭に手が置かれる。


「篁は・・・・・・いい女になりそうだな。」

「・・・・・・はい!」


Sideout



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