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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/03 21:01
'12,12,08 upload  ※武クン自由化?^^;
'12,12,12 誤字修正
'15,02,03 弐型改 → Evolution4


Side ???


南の島とは言え北半球、11月の朝はそこそこ遅い。
辺りはまた夜明け前の薄闇に包まれている。

それでも戦術機の光学センサーから網膜投影される景色は、弱冠色彩のトーンが落ちてはいるが、相当の光量に増幅されている。
孤島の美しい海岸線。それをもうすぐ血で染める。


目標はこの先。・・・ヌルイ任務だった。


目標の所在、演習先の情報は直ぐに確保できたが、その場所を特定するのに随分と時間を喰ったものだ。
広域監視衛星の位置情報そのものに欺瞞が掛けられていたことが判明したのは昨夜。監視衛星のシステムにどうやって潜り込んだのかは未だ不明だが、そんな調査は技術部に任せればいい。
コチラはどうにかその欺瞞解除にこぎつけ、漸く“雌狐狩り”と相成った訳だ。

帝国側からリークされた情報によれば、“目標”は護衛の女性士官と2名のみ上陸してコテージに宿泊中。そして訓練部隊は島のジャングルに展開して演習中。
他の演習スタッフは護衛艦に滞在の上、無人島故現地スタッフは居ない。

情報の隠蔽・欺瞞工作が完璧だと思っているのか、それとも狙われる可能性そのものを考慮していないのか、コチラが呆れる程の無防備さだった。
コチラとしては、好都合きわまりないので、何の文句もないのだが・・・。



――――できるだけ、惨たらしく殺せ。

それが命令主のオーダー。
“横浜の雌狐”・・・余程恨みを買ったらしい。あるいは見せしめのつもりか。
狙撃や炸薬榴弾による即死じゃダメだそうだ。


勿論、作戦立案に際し、強襲のリスクも検討した。

惨たらしく・・・陵辱拷問とも成れば、それなりに時間も喰う。
特殊部隊の中でも、その存在さえ秘匿され、専らこう言った汚れ仕事をこなしていく非合法部隊。
とはいえ、任務は任務。失敗はその存在意義すら失わせる。
メンバーは嗜好も性格も、そして性癖も飛び切りの変質者野郎ばかりだが、キチンとリスクヘッジはする。
但しそれも、今回の命令に関してはヌルイとしか言えない状況である。

護衛士官の戦術機が1機存在するからその殲滅の必要があり、基本戦術機強襲であり、万が一の伏兵も考慮して1個中隊の用兵としたが、正直過剰戦力としか思えない。コテージさえ制圧してしまえば、あとは犯りたい放題。何の邪魔も入らない状況。
どれだけ悲鳴を上げようが、護衛艦にすら届かない距離にある。

もし強襲に気付かれて戦術機戦になろうと、こちらは先行配備のA-12アヴェンジャー。F-22の技術波及でステルス性の高い機体故、この中隊で“巣”である横浜基地墜とせと言われても、不可能ではないポテンシャルさえ有していると自負する。流石にそれでは隠密にとは行かないから、しないが。

こうなると標的には憐憫さえ湧く。
特に相手が若い美女ともなれば、どれだけ細く長く苦しむことに成るのか。
・・・・考えただけでもゾクゾクする。

しかも今回は事後、ジャングルに散った訓練兵も喰っちまっていいらしい。
それぞれどんな酸鼻を極めた断末魔を見せてくれるだろう?
ここのところ潰すことすら躊躇われるハゲの肥えた標的ばかりだったから、それに比べたら、嗜虐心を満たす極上のオーダーだった。







網膜投影にコテージが映る。
光量増幅のため、僅かな照明さえがギラギラと光り、まさに誘うようであった。


「目標地点確認。赤外線センサーコテージ周辺感無し。
予定通り、ドライ小隊は周辺警戒、ツヴァイ小隊は敵戦術機を無力化、アイン小隊で包囲後突入。」

《《《《Yes,Sir》》》》

《・・・コマンダー、獲物の独り占めは無しですぜ?》

「・・・わかったわかった。では俗物共、雌狐狩り、開s《敵性存在確認っ!! 9時方向200、海上です!》、な?、チッ! 散開!」

その時には先程まで何も居なかった海面上に、一機の戦術機がホバリングしていた。跳躍ユニットだけではなく、肩部スラスターからも噴射し、そのX字状に展開する4条の蒼い噴射火炎は明けぬ海の上で光量増幅により拡がり、まるで蝶の様な4枚の羽を思わせた。

機種判別は、Type94 セカンド、塗装は国連軍、当然目標側護衛の伏兵。
突如現れた敵性存在。想定された事態であるし、その為の一個中隊投入。しかも相手は唯一騎。
何機かが牽制代わりの36mmをばらまく。

「相手は一機、包囲殲・・・・・」

そして指示を言い切る前に、唐突にソイツは動いた。

相手は1騎、そしてこちらは1個中隊12騎である油断が無かったとは言わない。

しかし、まさかと思った時には、超高速のバレルロールで幾条もの迎撃射線を躱しつつ、集団のど真ん中に飛び込まれた。


そのすれ違いざまに、接触したツヴァイ3、4、中央に着地後アイン3の3騎が袈裟懸けに頸から脇までを切り飛ばされ、突撃砲が宙を舞う。


《!!っ、野郎っ!!》

血の気の多いツヴァイ2が吐いた36mm弾が、コチラの足下に弾ける。
ソイツは、射撃を避ける噴射跳躍から、背面匍匐飛行に移り、射線が見えているかの様に追撃を躱しつつ旋回する。


「馬鹿者っ!! 散れっ!! 同士討ちする気かっ!!」


その銃弾を振り切った国連カラーのType94セカンドは、回避機動中に体幹を入れ替えて噴射方向を強引に変え、信じられないような超低空のホリゾンタルターンを噛ました。
その機動を認識したときには、既に再接近、回避行動の遅れたドライ3、4が反応も出来ず36mmに喰われる。



なんてヤツっっ!! ニ合いで半分近い5騎を持って行かれた!


「アインスっ!、ヤツの足を止めろっ!! 他は距離を取れ! ヤツのレーダー圏外からオフサイド攻撃!!」

《《《《Yes,Sir》》》》



しかし、足止めに入ったアイン隊からは、驚愕の言葉が漏れる。

《・・は、速いっ! マーカーが振り切られる!》

《!! この機動! 国連カラーのType94! まさか“白銀の雷閃[シルバー・ライトニング]”っ!?》

《え!? ・・・そ、そんなっ!?》


ターンして切り込んで来るその軸線に銃弾を撃ち込もうと、バレルロールと言うよりも、高速で錐もみするような回避機動でその悉くを躱しきり、回避行動に移り遅れた機体、背中の肩線から胸部搭乗ユニットの先端に抜ける面を瞬時に2騎連続で切り飛ばす。

衛士を殺さず、両腕とセンサー部である頭部を喪失させる斬撃に、為す術もなくアイン2、4が頽れた。


《う、うわぁぁぁぁ!!》

《ばかやろうっ!?》

ドライ2が叫びながら突撃砲を乱射しつつ突っ込み、ドライ1が怒声を上げるが、2騎を切り飛ばした勢いのまま急上昇しロールアウェイに移行していたヤツは、それを見越していたように倒立状態で突撃砲を構えていた。

胸部正面上部を横薙ぎに打ち抜かれ、2騎が吹き飛んだ。




《これは・・・本気で・・・・あの白銀少佐かっ!!》

そして、Type94セカンドのレーダー範囲外に出たはずのツヴァイ1、2の誘導ミサイルさえ、シザーズで躱し、至近距離の追撃にはキャニスターで迎撃。


爆音と共に視界が途切れる。


その爆煙が晴れたとき、突撃砲を持っていた右腕が打ち砕かれる。

そこには、既にType94セカンド以外、立っている者は無かった。



続く突撃砲の閃光を見た気がした。
回避機動をするまでもなく、激しい着弾を上部に感じ、殆どのセンサーがブラックアウト。



全機撃墜・・・・任務失敗。

躊躇なくロックを解除すると、スイッチを押す。

要人暗殺という任務の都合上も、そしてA-12と言う機密の都合上も、ここにメンバーや機体を残すわけには行かないのだ。

「・・・・特殊部隊一個中隊、12騎のA-12相手に、たった2分かよ・・・・。」

落とした最期の言葉は、制御ユニットを埋めた閃光と共に吹き飛んだ。


Sideout




Side まりも


「ほら言ったじゃない! 別に大丈夫だって!」


襲撃者は確かに、3分も経たない裡に白銀クンに無力化され、そして自爆した。
恐らくはA-12、配備されていても機密性が高く公式な発表もない米軍海兵隊のステルス攻撃機。
部隊員が捕縛されるわけにも、機体を鹵獲される訳にもいかないだろう。

ナヴィシートでむくれる夕呼に苦笑しながら応える。

「全部彼方クンと白銀クンのお陰でしょ? 夕呼がバカンスしたいって言うから、演習地[ここ]の周囲50kmを哨戒してステルスも効かないマルチスタティック・レーダー圏を構築してくれたんじゃない。
36mmの流れ弾にかすっただけで、人間なんかバラバラに成るんだから、文句言わないの!
この位は我慢しなさい。
その特製ボディスーツだって彼方クンに作って貰ったんでしょ? 羨ましい・・・・。」

階級上は上司とは言え、今はふたりだけ。しかも戦闘時の戦術機搭乗は、私と夕呼の身を案じた彼方クンの指示である。ホント過保護なんだから。
今夕呼の身につけているボディスーツもそう。
強化装備の人工皮膜を強化しつつ、逆に要らない機能はスッパリ排除して防御専用のプロテクターを構成している。
戦術機に於ける耐G機能も有しており、こう言った場合の万が一の高G機動にも耐えられる。
流石に通常時の排泄処理装置に関しては除外され、その部分に皮膜は形成されない。
長時間の戦術機搭乗に際しては、後付機構が存在するらしいが、夕呼の立場上それを使う状況にはまずならないだろう。
それ以外は頸部より上、及び手足を被覆しない。
極めて薄く、それでいて現状使用されているの強化装備以上の強度を誇る合成皮膜は、ハードプロテクト部分が殆ど無く、フィット感が半端無いと言うのが夕呼の感想。殆ど付けている気がしないらしい。それでいてバイタルチェックや体温・発汗調整、角質老廃物の除去までキチンとするし、網膜投影の機能も有している。
基本が着色のない透明であるが、ボディ部分にはサイドからシャープなストライプが入り、脚に掛けてはガーター状にストッキングの文様を描く。股間部の抜けた様相と相まって、それだけを着けた姿はかなり扇情的・・・はっきり言ってエロかったりする。
と言うか、表面色素を自在に変更することが出来るらしく、夕呼が自分で弄って遊んでいるとの事だった。
彼方クン、変なトコに凝るんだから・・・・・・・私も一つ貰おうかしら・・・。




そんな彼方クンに頼っている状況は解っているらしく、夕呼もそれ以上は文句を言わない。
夕呼に言わせると、彼方が勝手に遣るだけで、アタシが頼んだ覚えはない、と鼻を鳴らすが。


ここは“不知火改”のコックピット。

今回演習に持ち込んだ機体は、“不知火改”と“Evolution4”。
どちらも複座を持つ彼方クン謹製試製改造機体だった。

私の機体に関しては、護衛と言う事で初めから表に晒したが、白銀クンの“Evolution4”は、潜水艇で持ち込んだ。
流石に訓練兵が狙われることは無いと思うが、用心に越したことはない、という。

第4計画と第5計画の確執を知ってしまった以上、在り得ないことではないし、白銀クンの心配性も知っていたから反対する理由もなかった。
そして実際にこういう状況になっているのだから。

この機体と装備を以てすれば、私でも1個中隊位はなんとかなる。
白銀クンの様な無傷で3分とは行かないが・・・。



試作機慣熟。
それが演習を監修しながらこの2日私が行っていた任務。

彼方クンがどんな魔改造をしたのかはまだ知らされていないが、私が乗るこの機体だって、30%と言う信じられない軽量化と、推進剤残量表示の無い噴射跳躍システムが実現している。
しかもサプレッサ付きと思っていた87式突撃砲は、何と電磁投射モードまで搭載。
満タンで示された電力量は、この2日の機動でも、まだ1割も減っていない。
燃料補給の可能性が低いことを心配した私の危惧など、全くの杞憂だったわけだ。
この超低燃費と言うか、寧ろ高戦闘継続性がハイヴ攻略を意識したものであることは、直ぐに理解できた。
XM3の齎す高起動を維持し続ければ、通常兵器に依るハイヴ攻略も現実のものとなるからだ。

しかもその推力には、現状リミッターさえ掛けられている。
白銀クンの初機動では、とんでもない動きをした、とヴァルキリーズからも聞いている。

護衛と総合戦技演習の監修と言う立場で此処に来て以来、この“不知火改”の慣熟に勤しんでいたのだ。そのポテンシャルは肌で感じ取れた。

・・・その間、後ろでむくれている夕呼は、どう考えても場違いな露出度の高い水着で海岸に設置したデッキチェアーに寝そべり、彼方クンの差し入れだという超ヴィンテージもののシャンパンをパカパカ開けていただけだが・・・。
流石に任務中アルコールを摂取するわけにも行かず、ジト目で睨む私に、大丈夫よ、帰ったら彼方がサシで盃交わしてくれるからと、言われ黙ってしまった。
つい状況を想像して、思わずふやけそうになる表情を無理に引き締めるしかなかった。




「・・・それにしても、白銀はまた疾くなったわねェ。
公開したデータから付いた白銀の二つ名が“白銀の雷閃”だっけ? 凝り過ぎのネーミングに笑っちゃうけどまんまだわ。
弐型を引っ張ってきた彼方の慧眼と、明らかに人外に達した白銀の機動センス、てトコかしら。」

「・・・そうね。肩部スラスターの追加と、それを積極的に常時稼働する様な彼方クンの構築した近接戦闘機動概念(CCCA)の考え方が、戦術機の機動そのものを変えちゃったのよ。
過去の戦闘機開発でカナード翼と偏向スラスターがコブラやクルビットと言う異次元の機動を実現したように、戦術機はXM3と肩部スラスターによって本当の意味での3次元空間に於ける6軸機動を得た、と言ってもいいわ。」

「x,y,z方向と、それぞれの軸回り回転方向ね。」

「ええ・・・。腰部スラスターだけでは、モーメント制御が困難だった。スラスターの移動角から並進運動も制限が多かったし。それを肩部と統合制御することで、空力に依らない3次元機動が可能になった。」

「そのCCCAの枠を拡げたのが白銀。」

「そ。・・・・彼方クンのCCCAは、Cross Rangeの近接格闘戦を前提とした体幹移動に重きを置いているんだけど、それを空戦にまで拡張したのが、白銀クンの先刻の機動。
彼方クンからコンセプトが送られてきたのが一作日だというのに、もう習熟し拡張しているんだから、呆れるしか無いわね、白銀クンにも。
多分、元々白銀クンの実現したかった3次元機動の理想型がアレ何じゃないかしら。
もっとも“Evolution4”の暴力的な加速にも既に対応しているし、あのセンスにはホント脱帽だけど。」

「・・・・彼方の技術を得て、更に“進化”する白銀、ね・・・・。あら・・?」

「なに? どうしたの?」

「・・・・・ユーコン[あっち]で随分暴れてるみたいね、彼方は。
AH戦開始は現地時間で正午、此処の時間だとつい先程、5時から始まったみたいだから。
・・・AH戦は既に完勝。トラブルが発生してるみたいだけど、・・・インフィニティーズ、潰しちゃうみたいよ。」

「 !! 」

インフィニティーズのF-22EMDと、裏任務とは言え同じステルスを標榜するA-12の殲滅。
それは、ステルス性を前面に出した米軍事ドクトリンの完全否定。


世界を引繰り返す。

とんでもない男に惚れちゃったのね、と苦笑せずに居られなかった。


Sideout




Side 冥夜


遠い遠雷のような音に、目が覚めた。

低く響くような音は、恐らく爆裂音。しかし、それも直ぐ途切れ以降はまた静寂に戻る。
暫く緊急用の通信機を意識したが、何の連絡もないのだから何事もないと判断する。


総合戦技演習も今日で既に3日目。

既に手分けして行った各拠点撃破を為したエレメント全員が予定地点に合流し、あとはゴールを目指すだけ。
つい二日前、隊に合流しサバイバル訓練の機会が無かった純夏も、鎧衣と組んで全く問題無くこなしてしまったらしい。

横紙破りな純夏の身体能力なら、さもあらん。
私は兎も角、総合戦技演習ギリギリに編入され、しかも同じ演習を受けるという純夏の力量に、当初榊などは疑問を抱いて居ただろうから。


何しろ、アヤツは合流初日に、格闘訓練でやらかしてくれたのだから・・・・。









その日の午後、臨時のブリーフィングで集まった207Bの前に現れたのが、タケル同様BETAの横浜侵攻で喪われたと思って居た鑑純夏だった。
タケルから聞き及び、重傷だがその甦生が近い、という事も聞き及んで居たが、よもや殆ど健康体と変わらぬ姿で、207Bに編入してくるとは思わなかった。

思わず立ち上がった私は、満面の、昔と変わらぬひまわりみたいな笑顔に涙さえ浮かべた純夏に抱きつかれた。
最後に会ったのは中学の低学年であったので、4年ぶり。お互い成長するところは成長していたらしく、妙に柔らかい感触が以前の抱擁とは違ったが、記憶にある髪の香と、身に馴染んだ抱擁に、お互いハグしあってしまった。

教官の咳払いで慌てて離れたが。


「・・・・個人的な親交は後にしろ。」

声は厳しいが、どことなく諦めも入ったような教官の表情。それは言葉にも溢れていた。

「異例に次ぐ異例な事と成るが、今回207B訓練小隊に所属することと成った、鑑純夏訓練兵だ。
この土壇場での編入に、既に察していると思うが、鑑も白銀訓練兵と同じく、すでに特殊任務に就くことが確定しており、極めて重要な役割を担うことになる、と聞いている。」

「・・・・。」

やはり、と思う。周囲の皆も同じような、一種諦めた表情。

「しかし、白銀と違い鑑は現役の衛士ではなく、今後任官の必要が在るため、明後日の総合戦技演習に、参加する事と成った。
既に衛士としての訓練や、基礎体力は十分有しているとの事なので、遅れを取ることは無いと思うが、そこは榊、適宜対応しろ。」

「は!」

「・・鑑、自己紹介しろ。」

「はい。鑑純夏訓練兵です。突然の参加に戸惑うと思いますが、精一杯頑張りますので宜しくお願いします。
因みに武ちゃんと冥・・・、白銀訓練兵と御剣訓練兵とは、幼馴染みです。」


その言葉に皆の視線がキラリと光る。

ウム。

隊としての結束は、好ましい物に成ってきていると感じているが、それがある一面タケルへの求心力で在ることも理解していた。
全く、アヤツは自分の事を理解していないかのように、メンバーに接し、それぞれに信頼を勝ち得ているようにも見える。
その中でも幼き頃からの知己である私は、事タケルとの関係に於いては、何かと牽制されることもある。

そこに、さらにタケルと近しそうな幼馴染みが現れたのだ。
純夏のタケルちゃんという呼び方も、皆の警戒を呼ぶだろう。
それを敢えて自己紹介で触れたのだ。

宣戦布告、と取るのが妥当であろう。




なので、ブリーフィングの後、予定されていた近接格闘訓練に於いて、いきなり彩峰がふっかけた。

「・・・鑑、どの位強いの?」

「それほどでもないよ。近接格闘戦なら、タケルちゃんに勝てるくらいかな。」

「「「「 !!! 」」」」

「最近はずっと闘ってないから、今は判らないけど。」


私を除く全員の顔色が変わる。

近接格闘戦でもタケルに勝ったことのある者は居ない。実際に振り向けば傍観に徹している教官の横でタケルは苦笑いして肯定している。
一応頭部や腕、脚など打撃部にはフルコンタクト用のプロテクターを付けているから大怪我の心配は無いだろう。
・・・・・確かに私が知っている範囲で、タケルが純夏に勝利した事は目にしたことがない。スリッパ・カウンターなる技を持ってすれば迎撃も可能との話だったが、見たことはなかった。
大抵は純夏を怒らせたタケルが、純夏のフィニッシュブローで天翔る。


「・・・なら、5対1でも大丈夫かしら? 何時も白銀とはそうしてるんだけど?」

挑発と受け取った榊が応える。

「・・・いいよ。この格闘エリア内で行い、場外でも負けってことで良い?」

不敵に微笑む純夏。
演習場にある格闘エリア。レスリングと同じ9mのサークルが描いてある。
普段はどちらかと言えば控えめで、周囲には気を遣うタイプだが、ことタケルの事に関して純夏は引かない。

「じゃあ、それで行きましょ。彩峰もそれでいい?」

「・・・構わない。」


格闘戦もタケル相手に訓練を重ねた。1週間前ならいざ知らず、今なら個人で互角とは言わないまでも、チームでは凌ぐだけの物を皆学んでいる。
その自信が、榊を裏付けている。



「榊・・・。」

「・・・何? 御剣。」

「・・・侮るのは止めよ。」

「・・・・。」

「・・・純夏は幼少より私とも研鑽を重ねた身、・・・私が剣を持って7:3。無手なら2:8で屈する程の手練。生半可な策略は通じぬぞ。」

「!! ・・・そう、御剣にそこまで言わせるからには、挑発もハッタリじゃないってコトね。・・・面白いじゃない。
私たちだって、伊達に白銀や教官に鍛えられている訳じゃないわ。
彩峰、どうせ私の言うことなんか聞かないだろうけど、アンタも聞くだけ聞きなさい。」




そして、隊の歓迎を兼ねた格闘戦が始まった。


私の使う格闘技は無手の剣術に近い。柳生新陰流の流れを汲む無現鬼道流は、真剣白刃取りの様な無手奥義も存在する。
だが、拳闘を主体に鍛え、アウトボクシング・インファイトどちらでも行ける純夏に正面から行っても結果は見えている。
それでも、純夏のスタイルを知る私が牽制・・・というかその攻撃パターンを引き出すための先鋒だ。

中々に榊も聡い。

その意図に純夏も気付いたか、すっ、と脚を運ぶ。



つっ!!


無造作に放たれたアウトレンジからの右フリッカーフック。

間合いも、威力も不足、と見切った筈のそれは、思った以上の延びと撓りを以て、辛うじて迎えた私の左腕を撃った。
体を流して追撃を躱しながらも、プロテクター越しにもビリビリとしびれるような衝撃。

ディフェンスが一瞬遅れれば、それだけで顎先を掠め、一撃で意識を刈り取られていたかも知れない。

背筋が緊張する。
4年前とは、比べものにならぬ、技のキレ[●●]

5対1に、若干不満そうに無表情だった彩峰さえが目を見開く。


これが、つい最近まで病床にいたと言う者の動きか!

榊に忠言しながら、其れを知っていた私の方こそ、侮っていたかも知れない。

なるほど、では私も往こうか。

「無現鬼道流皆伝、御剣冥夜、推して参る!」











結局、私との攻防は10分くらい続いた。
純夏の攻撃を、私が捌き、いなす。

だが、剣術を基本とする私が無手で分がないのは衆目の通り。
純夏がバックステップを取ったとき、インファイトのラッシュの防ぎきってホッとしたその隙を突かれた。
ラッシュの息継ぎに距離を取ったと思った私に、一瞬の縮地から放たれた正拳突きの様な右ストレート。
まさかそこから、純夏が紅蓮師匠から会得した奥義【宇宙乃雷】を応用したオリジナル技が来るとは思っても見なかった。
正確に私の重心を捉えた一撃は、ものの見事に私の身体を場外にまではじき飛ばした。





「御剣!!」

「・・・すまん。此処までだ。」

「・・・上出来よ。鑑が口だけじゃないってことは、よーく理解できたわ。」

「・・・侮れない。」

「・・・・彩峰・・・。アンタなら解るでしょ」

「・・・オーダーキツイ。・・・でもそれしか無いね。」

「珠瀬、鎧衣、行くわよっ!」

「「了解っ!」」



私は目を瞠る。


鑑純夏という、恋敵な意味でも負けられない、と思っただろう強大な敵。

それに相対したことで、初めて見せる“チーム”としての連携。

今迄のシミュレーションでも、タケル相手の模擬戦でも、見せたことのない“意地”。

各個では、届かぬ極みにある相手に、自分の為すべき事を為す。



拳闘で、捌くのが難しい、左右からの同時攻撃を仕掛けた鎧衣と珠瀬。
その鎧衣に、ハートショットを咬まし、返す拳で珠瀬の顎先を打ち抜く。
手加減したのだろうが、一瞬鼓動を掴まれた鎧衣と、脳を揺らされた珠瀬は、立って居られず膝から堕ちる。

しかしそれは純夏の失策。


私のように場外まで運べば良かったのだ。
二人の息のあったタイミングに、その余裕が無かったのかも知れぬが。

結果自身の回避方向を限定してしまった純夏に、榊が迫る。

アウトレンジ、インファイト、何れも“離れている”ことを前提とする拳闘において、接触され、掴まれることが、最大の禁忌。
レスリングや柔道の寝技が、一番苦手なのだ。

掴んで引き倒してしまえば、その最大の攻撃力、“打撃”が封じられる。


正面から上体へのタックルに来る榊に、バックステップは無理と判断したのか、身体を竦めるように躱すかに見えた純夏。


!! アレはっ!!

その地を這うような位置からリーチが伸びるような一閃。

右拳が榊の下顎プロテクターを突き上げる。
周囲の空気まで巻き込んだような渦に巻き込まれ、榊の身体が錐揉みしながら宙を舞う。

純夏版【反重力乃嵐】!!




「彩峰ェっっ!!」

プロテクター故コークスクリューアッパーそのもののダメージを軽減できたが、受身の取れぬ錐揉み状態に在りながら、榊が絶叫する。

「・・・アンタの死は無駄にしない・・・。」

あの彩峰が榊の提案を受け入れ、榊が決死の覚悟で作った、大技フォロースルーの隙を見逃しはしなかった。
榊の真後ろから同時に接近していた彩峰が、榊と入れ替わるように両手刈りに近いタックルを敢行、初めて純夏の身体を捉えた。


一方、地面に叩きつけられようとした榊は、ちゃんと武が抱きとめている。
ウム、流石純夏。ちゃんとタケルのフォロー圏内を狙ったか。


「・・・死んでないって、全く」

図らずもその腕に抱き留められた榊は、役得であった。




遂に掴まった純夏。
相手はレスリング戦が得意な彩峰。

重心を崩されて寝技の応酬。
少しでも上位のポジションを狙いつつ、サブミッションを掛ける彩峰を、身体のバネを生かした素早い体の入れ替えで躱す純夏。
背後を取り合うドッグファイトならぬ、上位を取り合うキャットファイト。
マウントポジションの取り合い。

接触を切りたい純夏と、キープしたい彩峰。
純夏はスタンディングを狙い、彩峰は関節技を狙う。


息を飲む攻防に、コチラの呼吸のほうが苦しくなる。
彩峰の瞬発力と持久力は知っているつもりでいたが、これ程とはっ!
そして病み上がりだと言うのに、その動きに一歩も引かない純夏。


彩峰の執った腕が外せない純夏。
そのまま腕を抱えるのではなく、自分の身体を弾いてその腕に絡みつく彩峰。

だが、その移動で流れたベクトルをそのまま利用し、体躯を捻って腕を切る。その腕ひしぎを躱しきり、純夏がスタンディングポジションを取ったとき、しかし彩峰はその純夏のバックを取っていた。


腕ひしぎ狙いはフェイクか!!


がっちり腰に回した両腕で、強引に相手の体重を引っこ抜く彩峰。
それでも身体を捻り、ショートフックをレバーに叩き込んだ純夏。


彩峰の体勢が崩れたが、バックドロップで頭から墜ちた純夏に、彩峰の勝利かと思われたが、一方の彩峰も同じくもんどおり打ち、地面に投げ出される。




教官が、二人して目を回しているのを確認した。


壮絶なダブルノックアウト。


こうして5vs1の歓迎試合は、引き分けで終わった。





二人は直ぐに教官とタケルに活を入れられる。

怪我はなさそうで、軽い脳震盪と貧血状態にさせられた珠瀬と鎧衣も、すぐ回復した。




一時の休憩。

「鑑強い。・・・・最後のボディブロー、なに? アレで意識飛ばされた。」

「彩峰さんこそ強いよ。」

ニパッっと笑う純夏。これはライバル認定と言うことか?


「・・・最後のは、発勁だよ。」

「・・・中国拳法の不思議技?」

「えと、・・・彼方君に教えてもらったのは、純然とした力学技だよ。」

「・・・彼方君って・・・御子神?」

「知ってるの!?」

「夜一人で教導モードしてたら、たまたまシステムの調整してて、戦術機格闘戦の初歩を教えてもらった。」

・・・彼方といえば、御子神少佐のことか。恐らくは階級も言わず一介の技官みたいな顔しているわけだ。

「その後、戦術機の体幹移動モデル作りも手伝わせてくれた。・・・鑑知ってる人?」

「・・・わたしを蘇生させてくれた人。わたしとタケルちゃんの昔からの親友。」

「! そなんだ・・・了解。それで力学ってコトはわたしでも出来る?」

「あ、うん。こうやって、足指から足頸、膝、股関節、そして腰って具合に“捻り”を“撓めて”いくの。丁度弓を引き絞って行くように。“纏糸勁”って言うんだって。
・・・で、それを一気に解放する!
力が逃げないように“方向”と“タイミング”を揃えていくには、訓練するしか無いけど、決まればフルスイングと同じ“勁”を出せるみたい。
先刻のは足場が無かったから半分位の威力に成っちゃって、投げられちゃったけど。」

半分の勁で彩峰を昏倒さすとはどれだけであろうか?
インファイトだけではなく、レスリングの様な接触戦に於いても破格の一撃を有することとなる。


「・・・・教えて?」

格闘戦に長け、レスリングに近い超近接戦を好む彩峰には、この上無く魅力的なのは、詮無いこと。
思わず榊も驚いた台詞がその口から紡がれた。

「・・・ウム、私も教えを請いたいな。」

「そんな、狡い、ボクも!」

「私も出来るなら覚えたいです!」

「・・・全く。鑑、207B、貴方を歓迎するわ。・・・私にも教えなさい!」


そして純夏は、邪気なく笑うと嬉しそうに応えた。

「・・・・うんっ!!」


あの日、純夏という“強敵”、コト近接格闘戦に於いては個々に勝てない相手と対峙したことで、初めて隊として纏まったのかもしれない。


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