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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/06/03 19:20
'12,11,25 upload
'15.01.24 大幅改稿(pcTEに準拠)
'15,06,19 誤記訂正
'16,05,06 タイトル修正
'16,06,03 誤字修正



Side 唯依


挨拶すらそこそこに、いきなり御子神大佐は傍若無人なハルトウィック大佐の糾弾を展開。

最初はその事実に驚愕していたが、徐々に冷静になれば御子神大佐がハルトウィック大佐に突きつけた言葉は、全て事実。
しかしハルトウィック大佐自身の関与に付いては全てが状況証拠だけであり、司令官である大佐には、幾らでも言い逃れが出来る。
圧倒的に不利な欧州BETA戦線で、生き残ってきた戦士でも在るという大佐。
一筋縄ではいくわけはないし、今更それを軍事法廷に挙げたところで誰の何の得にも成らない。

なぜこんな無駄を? そう思い至った。


・・・そしてこの上官、そんな事は百も承知だったらしい。

気がついたのは、プロミネンス計画を存続するためにその理念を意見具申した私を見て、微笑んだ御子神大佐を見たときだった。
巌谷の叔父様が、BETA戦後まで睨んだ戦術機の開発を推進する国際舞台の裏側を見せたかった様に、この新しい私の上官は、どろどろに汚い世界にあって、直ぐ其処にある危険と、それでも喪ってはいけない理念を私に認識させたかったのではないか、と思わずに居られなかった。
・・・私の希望的観測を含んだ買いかぶりに過ぎないかもしれないが。

元々必要以上に人に関わることを避ける傾向にある御子神大佐である。
実質テストパイロット、兼、技術開発補佐として招かれた私は、既に御子神大佐の担当していた対外的な部分の殆どを任されていた。
交渉は女性の方がうまくいく、という理由だったが、実際これまで会った担当者に聞くと、必要以上の事は話さず、かなり取っつきにくい相手だったらしい。
普段の態度を見ていると、さもありなん、と思う。
その反面、香月副司令の言うように、“身内”にはかなり甘い。
私も御子神大佐の中ではそんな“身内”設定なのだろう、既にいろいろして貰っているのも確かだ。

そんな大佐が、たぶん彼の中ではどうでもいい相手に対し、こんな糾弾をなどまるで“らしくない”のだ。

・・・それが的外れではなく、私が自分の居る世界の醜さを再認識させられたのは、確かなのだが。




「・・・ウチの副官の意見はこうなんだが、成る程、アンタの事だ、テロ勃発の看過に付いては状況証拠以外残しているとも思えない。
それで?
アンタ方には米国のドクトリンが崩れても、篁が言うように、ATSFに拘らずプロミネンス計画を進める気はあるのか?」

「・・・公式な場での肯定や謝罪など決してしないが、この峻烈な上司を宥めてくれた篁中尉には感謝する。
彼女の言うとおり、プロミネンス計画はそもそもATSFやましてや米軍事ドクトリンに根ざす物ではない。
しかし、それに基づいて開発されたF-22が現状無敵で在ることによって、米軍も、そして其れに対抗すべく他国も、皆ATSFに引きずられていることも確かなのだ。
それは、君たちのお国の軍も同じだと思うが?
プロミネンス計画としては、それが間違いだと言うなら、寧ろ是正したい。」

「・・・たかが新しいOSを組んだくらいでF-22を倒せるなら、見せて貰うとしましょう。」

「ならば・・・こんな[ユーコン]まで呼び出されたんだ。
こちらの要求くらい呑むんだろうな?」

「・・・・可能な限り要望に応えよう・・・。」


御子神大佐、あざといです。
ユーコン事件の顛末にあれだけかまして、実質認めさせて、相手の要求など一切聞かず、自分の要求を通すのですか?

少なくとも、さっきまでの雰囲気は、XM3開示要求など商倫理から触れるまもなく粉砕。
心理的にも一度引いてしまった以上、認めたのも同然。


「―――まずインフィニティーズとのAH戦の実施。
これは帝国のXFJ計画からの要請だが、フェニックス計画としても異存は無かろうし、米国国防省からも通達が来ているんだろう?」

「・・・貴官等が今日、来ると聞いて、早速に新任基地司令がネバダに連絡していた、
明日、再びインフィニティーズがその為だけに此処に来るという。
コンディションを調整し、明後日が模擬戦となる。」

何となくその対応の早さに、きな臭い感じがしないでもないが、国防省、XFJ計画、フェニックス計画と全方位から要求されては、ハルトウィック大佐としても無視するわけにもいかないだろう。
曰く、ユーコン事件の終熄に最高の戦果を挙げたアルゴス試験小隊とインフィニティーズのブルーフラッグ頂上決戦、だという事。
もうひとつのイーダル実験小隊とは、既に評価試験で決着している。


「その際、撤退したとは言え、XFJ Phase3機体の残るアルゴス試験小隊を借りることになるが、フェニックス計画としてどうなんだ?」

「・・・2号機に関しては、主機の組み換え中で明後日には間に合いませんな。」

「それはこちらが持参した機体で俺が出る。
横浜でXFJ Phase2をPhase3相当に改修した機体だから、問題ない。」

「! 篁中尉ではなく、大佐本人が?」

「一応、プラチナ・コードの後衛[α-2]をしているんだぜ。」

「「!! 貴方が!?」」


公式にヴォールクデータの初攻略。
その突破の原動力はα-1と言われるが、反応炉破壊以降、BETAの大量殲滅については、α-2の功績と言われていた。
だが、α-1の驚異的な侵攻速度に殆ど推進剤を使わず追従する―――その難易度は信じられないくらい高いと言うことも判明している。


テロの終息後、今はネバダに帰還してしまったインフィニティーズ。
形としては、プロミネンス計画撤退を決定したXFJ計画から、最後のAH模擬戦として、やり残したインフィニティーズ戦を要望したことになっている。


「因みに、XFJはXM3の換装を以て計画完了とした。
・・・故にアルゴス隊機にはXM3を換装し、教導習熟させるが、構わないな?」

「!!、アルゴス隊に? ACTVにもですかな?」

「・・・そんな簡単にハックできるような物は渡さないが、換装と教導、そしてその後の運用は構わない。」

「ホォ、それはそれは、私としてはありがたいですな。」

「・・・。」


ポンと小さなものを投げる。
ハイネマン氏が受け止めたのは、USBメモリ。


「―――巌谷から聞いてる。
篁も世話になった。
あんたにやる。」

「・・・これは?」

「―――XM3 Ver2001.3の仕様書。
“供与”じゃないから、ソースコードは無い。
自力で組むならフルスクラッチ、好きにしな―――。」

「な・・・。」

「「「 !! 」」」


まさかそんな最重要機密とも言える仕様書をあっさり出すとは思っても居なかったのだろう。

但しこの仕様書からだけでは現実に動くソフトが組めないのは技術廠でも検証済み。
超高速とも言える現実機動[リアル]を制御するためには、極めて高いサンプリング周波数での駆動が要求される。
制御が動作に追いつかなければ “処理落ち”してしまうのだ。
その為に大佐は、XM3のソフトウェアアーキテクチャに多層構造のバックグラウンド逐次適応、等といった新概念を3つも構築している。
端的に言うと、仕様書から更に2,3ブレイクスルーしないと、現実の戦術機に使えるレベルのOSにはならない。
巌谷の叔父様曰く、ソフトウェアに関する技術基盤が10年は違うらしい。


「開示“要求”は、“依頼”と解釈した。
無駄な時間は掛けたくない。
とっとと“[]”と“[]”を進めろ。」

「・・・あんなガラクタでも、わたしの子達なのですよ。
例えそれが忌み子だとしても・・・。」

「・・・ゴネるなら構わん。」

「・・・本当にエイジの言った通り、いや、それ以上の存在と言うことですか。
―――私の権限に於いてこの案件は早急に推めましょう。
君なら、あの子達を無下にはしないでしょうから・・・。」


御子神大佐はもう一度、全員を見渡す。


「で、あと2つ。

基地シミュレータへのXM3の換装と初期教導を実施させろ。

そしてそれを体験した上で、希望する衛士へのXM3LTEの導入。

以上が俺からの“要求”だ。」

「「「「 ・・・は? 」」」」


―――3人が呆気にとられていた。

これを、“要求”として突きつけた御子神大佐に、3人の顔は、まさしく鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だった・・・。
この3人の、こんな顔を見たことがあるのは、私位だろうと思う。


「・・・・・・何故?」

「・・・別にアンタ等の為じゃない。
前線でBETAの脅威に晒される衛士達の為だ。
XM3教導をエサにすれば、撤退を検討している各国試験部隊も即時再編されるだろう。
そこから各国に広まれば、拡散も早い。

・・・元々の要望は“開示”、ま、普通だな。
“供与”なぞ通常望むべくもない。
大方、米国は開示さえさせれば米国内のソフトウェア開発力でなんとか複製出来ると思ってるんだろ。
特許が有ったって特許料[カネ]で話が付くからな。
他の国にはOSを基礎開発するだけの人的技術的余裕なんかない。
それならXM3を持つのは日本と米国だけで、戦術機の優位性を保持出来る。」

「っ!!、そ、それは・・・・。」

「どうせ第5計画派の基地司令に釘刺されたんだろう?
プロミネンス計画に、通常兵器でハイヴ攻略の可能性をもたらす、OS供与を願うなど、第5計画派としては到底認めないだろうな。
しかも米国一国が独占するわけではなく、各国が共有してしまうわけだから。」

「・・・・まさかっ!?」

「・・・けどこっちからの要求[●●]なら、通すしか無いわな。
代わりに第5計画派としては、是非とも行いたいF-22絶対優位を示す為のAH戦に参加しようと言うのだから。」

「帝国は・・・・、殿下は認めた言うのか?」

「別に所有者は悠陽だが、開発者の好きにしていいとの言葉は貰ってる。
敵は飽くまでBETA、そのレーザーを躱す機動―――その為のXM3だ。」

「・・・。」



―――対人戦など眼中に無い。

相変わらず、何というか・・・。
何処まで規格外なんですか?!


「実戦検証は、少なくとも横浜では済んでいると言う認識だが、どうせ自分たちで使ってみなければ信用などしないのが軍人だ。
各国で勝手にやればいい。
なので要求数に応じて頒布もしよう。
ここは帝国との協議になるし、勿論ライセンス料は貰うが、今のOSに掛かっているライセンスよりは格安になるだろう。」


XM3を客寄せパンダとするプロミネンス計画を利用しての頒布活動と第5計画派の牽制、しかも利益までちゃっかり見込んでいる。

すでに御子神大佐は、殿下、白銀少佐、香月副司令、そして帝国技術廠の巌谷の叔父様と連名でXM3関連の特許を申請している。
特許申請と言うのは基本のアイディアを出せば良いというモノでもない。
既存の仕様に比べた場合の利点・効果を示し、新たな構造を提案する。それが基本特許となるのだが、実はそれだけでは収まらないのだ。
基本から派生すると考えられる構造の代替機構が存在する場合、その代替機構を他社から特許提出されてしまうこともある。
その場合、基本特許はこちらが持っているため、他社はパテント使用料をこちらに支払うのだが、もしその代替機構をこちらが使いたければ、逆にその部分のみの使用料を、こちらが支払うことになる。
更に、数値限定という裏技もある。
基本特許を使用した場合、その機構の中で特に重要なパラメータが在る範囲に在ると、性能が向上する場合が存在したとする。その効果を明確に示し数字範囲の有効性が証明されると、それも特許として成立してしまうのだ。
つまり基本特許を持っていながら、他社にその数字を抑えられてしまえば、その領域を使う時には使用料を払わなければ使えない、という事になってしまう。(勿論その限定特許以前に、その数値範囲を使用していることが証明できれば除外にはなるのだが。)
なので、基本から抑える大きな特許の場合、使える可能性のある代替機構、そしてその中で実際に使っているパラメータ範囲の限定まで付けるので、付帯項が延々と続くものになる。

御子神大佐の出した特許申請書類は、担当した弁理士が唖然としたほど、多岐・微々細々にわたっている。
聞けば過去にこの手の問題でもめたことも記録にあるらしく、その内容は特許防衛に関しても鉄壁だった。


そして如何にも御子神大佐らしいのが、これだけ細かく技術を開示していながら、そのプログラム・アーキテクチャーに関しては、一切触れていない事だった。

通常特許は、権利確保をすると同時に、特許構造を模倣されることによる技術流出の懸念が常につきまとう。
実はそのプログラムで何を為し、何を実現するか、と言う効果効能には特許性が存在する。
しかし、それをどのようなプログラム・アルゴリズムで実現するか、と言うことについては、余程特殊な例を除いて特許性自体が認められていない。
つまり、5の二乗を求めるのに、5^2と言う式でも、5×5でも5+5+5+5+5でも求められた答は同じなのである。そしてその求め方で効率は異なっていても、“数式”自体を特許化出来ないように、プログラム構造そのものは、効率が異なっても殆ど特許性を持たないのである。

今回の場合、公開される特許請求の内容を見れば、確かにXM3モドキが作成できる。
特許資料も仕様書と変わらないレベルだから海賊版の作成は、そう難しい事ではない。

しかし、それを戦術機に使える反応速度でCPU上に実現出来るか、といえばそれはやはりまた別の話。
確かに香月副司令の供する高性能CPUがあれば、コンボや先行入力、キャンセルなどの個別機能は実現出来るだろう。
しかしそれらを含む統合機動制御や、戦術機を使ったシミュレータまでは載せられるとは思えない。

御子神大佐は先の積層構造の構築に加え、アルゴリズムの点でも制御の直交性を用いてその演算量を極限まで絞っているらしい。
例えるなら、昔流行ったルービックキューブ? と言われた。
特定の2点間を入れ替えるパターンさえいくつか覚えれば、6面完成は出来る。過去小学生の時に確かにそのやり方で揃えた。時間は掛かるにしても。
しかしこれが超上級者になると、パターンなど覚えない。どうせ使わない。6面の配色を頭に入れながら空間的に一気に揃えていく。
その最短を示すのが制御の直交性を利用したアルゴリズム。
それにより、統合機動制御を今の戦術機に載せられたCPU上で実現した。

今後頒布するインストーラは小さなUSB形式である。
インストーラとハードウェアライセンス認証を兼ねる。
インストールしてもUSBが刺さっていないと、XM3LTEは起動しないと言うことだ。
USB自体には、勿論プロテクトが掛かっていて、複製はほぼ不可能。
御子神大佐に依れば、絶対のプロテクトなど存在しないと言うが、今のところ他の人には理解できない[アストラル]領域でロックを掛けているため、向こう20年は解除できないだろう、との事だった。


これでXM3に関しては、完全に独占状態。

御子神大佐の目標は確かにBETA殲滅だが、その後の世界、最大の敵である人類との戦いを全く無視しているわけではないのだ。


汎用CPUで動くXM3Liteは、既に巌谷の叔父様が、帝国軍にも頒布している。
とある国連軍衛士と協同で開発した、という触れ込み。
実質横浜の名前は表には出ていないが、先週の斯衛教導や、白銀少佐のシミュレーション・データやプラチナ・コードも公開された。
なので皆薄々気付いているが、その実効性に黙ったらしい。
当然選択肢を与えたものの、元のOSが良いと言う者は一人として居ないと言う。
自らの生存性に直結する戦術機機動を目覚ましく向上するのである。
衛士として当たり前のこと。


ここで正規版とLiteの違いは、戦術機によるシミュレーションや、ナビゲーション・アグレッサーAIの実現が出来ないこと、そしていくつかの細かい制限はあるが、機動に於ける最大の違いは、その演算速度によりレベライズの限定解除が出来ないこと、だった。
即ちLiteに於ける最大の機動速度は、レベル5となる。
勿論限定解除のレベルにあるのは、今のところ公式には白銀少佐だけ。
未確認だが恐らく御子神大佐も届いていると思う。
数少ないシミュレーションや実機の操作ログを洗い直した私の結論だ。
そして近いうちに届きそうな面子には、既に正規版が渡されていると言う。


一方、今国連を通し、今後各国に頒布されるのはXM3LTE:即ちリミテッド・エディション。
このXM3LTEでは、レベライズによる最大機動速度が、レベル4に制限されているのだ。
つまり衛士一般の機動性を向上し、光線級の照射を避ける機動性は確保しつつも、最上位者に於ける戦闘では、帝国軍、さらには斯衛軍の優位性をちゃっかり確保している。
しかも言い訳としては、帝国で運用される米国製・帝国製CPUに対し、より能力の低いCPU水準に合わさざるを得なかったため、と言うのだ。

狡い。

尤も実は衛士数で言えば、レベル4で2シグマ、レベル5で3シグマ、限定解除は4シグマの確率分布、と聞いたからそれで本当に効果が在るのか判らないが、主に帝国向けの言い訳らしい。
実際にXM3の拡散による各国衛士の機動性向上を図りつつ、帝国の優位性も残す。
XM3を頒布する事に対する危惧に対して執られたこの措置に、悠陽殿下も巌谷の叔父様も、苦笑して国連や他国に頒布することを了承したと聞いた。



「アンタのことは信用しないが、篁も言った様に、アンタが死ぬまでアンタの立場とプロミネンス計画を、利用させてもらう。」


その答えに、なるほど黒い、と苦笑するしかない。


「さっきの言葉は嘘じゃないんだろ?」

「・・・・。」

「ATSFが歪んだ過去のモノだというのなら、その“先”を模索することが、ひいてはプロミネンス計画の基本理念じゃないのか?」

「その先?」


御子神大佐は、上を指差す。


「地球上BETA殲滅の“先”は、人間相手じゃない。
・・・月や火星だ。」

「「「 ばかな! 」」」


あれだけけなして置いて、・・・とことん利用する気なのですね、御子神大佐。

驚いて大佐を見つめる3人。

その内実を知らなければ、誇大妄想と取られても仕方ない。

しかし彼らを見返す大佐の瞳は、澄んで透徹し、底知れない深さを思わせる。


「・・・無理だ・・・。出来るわけがない・・・。」


搾り出すように応えたのは、ハイネマン氏。


「・・・“戦術機の鬼”も耄碌じゃなく、成仏して仏に鞍替えか?
米国が血眼になって求める物質・・・地球上のハイヴがユーラシアにしか無い以上、次に何処を目指すのか、予測も付かないのか?」

「「「 !!! 」」」


そして差し出した一葉の紙。

そこには、たった2つの数字。


「・・・このクラスの“リアクター”が、戦術機に搭載可能だとしたら?」

「「「 え? 」」」


3人とも戦術機の開発を総括している人間である。
その数値が如何に出鱈目な数字か、理解できるだろう。
出力だけでも今の戦術機の約10倍、エネルギー総量、つまり継戦能力に至っては100倍近いモノがある。
尤も安全率を掛けている分、私の知るG-コアの数値より低いが。
それでもこれだけのエネルギーがあれば、どんな構成でも可能。
仕様・装備の選択肢は無限に広がる。


「・・・なんの冗談かね? こんな数値が戦術機に載るサイズに出来るわけがないだろうっ!?」


逆ギレしたハイネマン氏に御子神大佐は笑っている。


「・・・今の人類の技術では、・・・な。」

「・・・。」

「しかし・・・・・・BETAなら、どうなんだ?」

「「「 なッ!? 」」」

「・・・少なくともハイネマンは知っているんじゃないのか?
第4計画はブツ[●●]のシッピングを要求したんだぜ?」

「!!、―――まさかアレ[●●]が本当に完成したというのかッ!?」

「さも無ければ、 あんなもん[XG-70b ]なんて危なくて使えないだろ。
まだ、調整[戦技演習]中なんで今見せるわけには行かないから今回は避けたけどな、来月[●●]にはきっちり使ってみせるさ。」

「・・・・・・。」


思い当たったらしい。
横浜基地がそれを読み解く、“鍵”[00ユニット]を持っているかもしれないことを。
大佐から第4計画の中身についてはある程度説明を受けた。
本来炭素を基とする生物とコミュニケーションしないBETAが特殊な人工脳[00ユニット]を介せば情報の相互伝達が可能であることを。
無論その“鍵”を作ったのが香月博士であるのは予想できても、そのヒントを齎したのが目の前の傍若無人な人物だとは、間違っても思ってもいないだろうが・・・。


そう、確かにBETAなら可能なのだ。
落着ユニットについては、重力制御すらしていた可能性が示唆されている。
宇宙空間でも活動可能な強靭な組織、MW級のレーザーを連発するエネルギー総量。
ありあまる未知の技術。

何よりも先に御子神大佐自身が明言した、反応炉破壊位置や、ハイヴ壁強化の様に・・・。


「・・・こんなリアクターが実現できたら、戦術機の世界は変る・・・・。
第5世代、いや世代で言えば、0G適応は世代隔絶した、第6世代相当だ!」

「・・・与太話と思っているなら、それでも構わない。
ハイネマン、あんたがこの話をどうするのか、それもどうでもいい。
新たな戦術機を創造[●●]するのか、社に持ち帰って第5計画派に喰い物にされるか。
・・・確証も確約もなにもしない。
唯の一つの可能性、ってところだ。
・・・それでも間違ったドクトリンに沿った戦術機を模索するよりは、余程有意義だと思うがな。」

「・・・それを公開する保証があるのか?」

「そもそも存在するかどうかもわからないものに保証なんか無い。
・・・ただ“オルタネイティヴ4”も曲がりなりにも国連の計画なんだぜ?
本来第5計画の様に、一国が占有するものではない。」

「・・・・。」


それは得られれば、公開する事も厭わない、と言うこと。
と言うか、既に存在しているし、事が成ればばらまく計画で居るんですがこの人は。・・・なにか?

確かに・・・この御子神大佐なら平然とやるだろう、と思うだろう。
何よりも今時点では最高機密であろうXM3をあっさりと公開するだけではなく、頒布するのだから。

そう考えると、御子神大佐や白銀少佐、第4計画のメンバーは本当に突き抜けているのだなと思う。

そんな国同士の争いを全て尻目に、BETAの総本山であり参謀本部である喀什を陥とす・・・。

それが彼らの、・・・そして今の私の目標。


来年になれば・・・・。

時折御子神大佐が口にする、期限。
それは既に世界が変わっているか、いないかの刻限なのだ。


もし事が成ったとき、此処に居る彼らは何を思うのだろう?

そして私は、その時を何処で迎え、何を考えるのだろう?


此処を去る時には思いもしなかったほど、既に変わってしまった私の世界なのだ。











「・・・それは我が国にも開示頂ける、と言うことですか?」


ずっと黙っていたサンダーク大尉が発言した。

相変わらず、利には聡い。
プロミネンス計画に携わって来るのはこんな狐狸ばかりと言うか、クリスカ達にやった内容を思えば、魑魅魍魎ばかりと言うところか。
こんな魔物達が跋扈するその中で、色恋沙汰に気が行っていた自分のなんと危機感の無かったことか。
あっさり狙撃もされる無警戒ぶりということだ。


「ソ連もプロミネンス計画に正式に参画したんじゃないのか?」

「・・・・。」

「帝国になにか後ろめたいことでもあるなら除外するが?」

「!、まさか、その様なことは、在りません!」

「―――帝国には無くても、篁には在るんじゃないのか?」

「・・・何の事でしょう?」


眉ひとつ、一切動かさない。


「・・・流石の反応ではあるが、プロファイリングから言うと、想定外の唐突な質問に全く驚かない、と言うのも“黒”なんだぜ。」

「・・・。」

「ロゴフスキー・・・だっけ?」

「・・・。」

「まあ、厳格なソ連軍、しかも本人KGB上がりじゃ上官の意向には逆らえないよな。
・・・なあサンダーク、一つ賭けをしないか?」

「・・・賭け、ですか?」

「ああ。XM3の実力、知りたいだろう?」

「・・・。」

「今、さっき言ったとおり、この基地でマトモに動いているのはアルゴス実験小隊とイーダル実験小隊くらいのもんだ。
アルゴスはこの後、インフィニティズとのAH戦があるの対象外。
ならばイーダルのエースと、実害を被った篁で模擬戦しないか?」

「!」

「・・・それは、此方が勝てば我等にも譲って頂ける・・・と?」

「ああ、それは勝敗に拘らずモノになれば、ハイネマンと同条件としよう。
が、・・・賭けを受けないなら、XM3も供与し無いけどな。」

「!・・・では我々が負けた場合のリスクは?」

「篁が触れた機密そのもの・・・“紅の姉妹”でも貰おうか。」

「・・・!!」

「“繭”とも、・・・“白き結晶”とも言わんよ。
そして、勝てばいいだけのことだ。」

「・・・判りました。
大佐は第4計画関係者。
であるなら、此方の機密も何も在ったものではない。
そのリスクを負うことで過去の過ちを流して頂けるならお受けしましょう。」

「・・・流すとは言ってない。
悪戯には、相応の罰が必要だろ?
その位のペナルティは覚悟しとけ。」

「・・・。」


そんな会話を他所に余りの展開に固まっている私の肩を、御子神大佐がポンと叩いた。


Sideout




Side ユウヤ


誰もいない屋上から見る空。

真っ昼間だって言うのに、地平線を這いずる様に高度の低い太陽は、夕方のような黄昏れた雰囲気。
冬至に近く成るにつれ昼間も冥く沈む天気はまるで今の自分の気分と同じだった。

底知れない虚無感―――。





9月に発生した大規模なテロ、そして捕獲BETAの解放によるレッドシフト危機。
生命の瀬戸際を切り抜けた後もクリスカとイーニァは容態不明。
そこに加えて唯依の被弾―――。
一時は訃報が流れアルゴスの関係者・整備兵全てが暗く沈んだ。

その中で始まったSu-47との評価試験。
クリスカとイーニァの復帰を喜んだのも束の間、その反則的な実力にXFJは一気に追い込まれた。

唯依の生きた証を残したくて我武者羅に纏めた改善策―――。



結局の訃報は、暗殺の追撃を逃れるための欺瞞で、唯依は無事帰ってきたし、その後いろいろ話もして、その流れで刀まで貰っちまった。
機体もPhase3に更新されて、申し分ない。
結果、Su-47も不本意ながら勝利したが、万事OKとはならなかった。

機密漏洩疑惑―――。

そこで知らされた、様々な裏面。
自らの立場。
そしてクリスカとイーニァの能力や真実。
更に米国の思惑、クリスカとイーニァの今置かれた立場、ソ連―――元を辿れば国連が行っていた生体実験。
唯依の狙撃。

そして―――唆された、拐取と逃亡。

実際クリスカとイーニァを取り戻し、唯依の誇りを護る為に決意を固めたが、実行されることは無かった。




全ての捜査が、突如中止された。
査察の手続きは即時停止、機材の封印さえ即刻開放され、何の咎めもなくメンバーも還ってきた。
そして何故か連動するようにクリスカの措置も変えられたらしいと、引き上げる際のウェラーから聞いた。
事実、翌日にはクリスカとイーニァの元気な姿も見ることができた。


但し釈放直後、本国に急遽呼び出された唯依は、慌ただしく帰国。
そしてそれと時を置かず、日本のXFJ計画はSu-47との評価試験を以て当初目標の達成、とのコトで、プロミネンス計画からの撤退を通知してきた。

正直ショックだった。
考えてみればたった半年なのだが、ぶつかり合い、認め合い、そして同じ目標に向かって進み、命さえ賭けて戦い抜いた日々。
その日々が、これからも続くように思いこんでしまっていた。
それが、余りにもあっさりと、軍の指示という一言で変わってしまう現実。
しかも、余りのタイミングに機密漏洩に関することは本当なのかと疑いたくなってしまった。

そして当初は継続を強硬に具申しすぐ戻る、と言っていた唯依であるが結局戻らず、詫びのしたためられた手紙と共に送られてきたのが、帝国で開発されたという新OSを積んだType94 “不知火”のシミュレーションとJIVES実戦映像のデータだった。


もたらされた映像の、余りにも現実離れした内容。
現実を知る衛士として。最初は何の冗談と思い込み、始めは驚きもしなかった。

だが厳格な国際規定に則ったデータには齟齬がないことが、検証により証明された。


衝撃―――。


光線級の照射回避から、光線属種を優先的に殲滅していく“作業”。
ヴォールクを文字通りたたき潰した攻略。
甘いのは寧ろシミュレーションデータの方で、知られていなかった偽装抗や、全く同じ位置に爆薬設置すれば、反応炉破壊や、ハイヴが崩落させられるコトまで確認された。
それを難易度Sと言う状況で軽々と実行するエレメント。

それらが欺瞞でないことを証明するような、JIVESの実写映像。
ここに至っては、オレが当初苦労した不知火・壱型丙の更に低出力版という原型機Type94に乗りながら、あのType00を圧倒する3次元高機動。
しかもType00に騎乗しているのは、帝国のインペリアルガード最強と言われる紅蓮大将だという。
Type94に搭載するだけで、Type00を凌駕してしまう驚愕の新OS。

それはプロミネンス計画をも激震させる内容だったのだ。
即ち計画そのものの存在意義すら問われかねない。
いつもにやついている技術顧問のフランク・ハイネマンですら驚愕してメガネを取り落とした。



あの機動がPhase3で再現できるか。
自らの存在意義[レゾンデートル]を問うようにトライし続けた。

結果、そこに在ったのは自律制御の壁。
その動きを突き詰めれば突き詰めるほど、搭載された今のOSに依る硬化時間が発生し、足が止まる。
発生しないギリギリを狙えば、Type94の動きをトレースしきれない。
出力・機動性、全てが向上されているPhase3を以てしてすら・・・。
既にハードの問題ではなかった。


開発衛士を永く遣っていたから判る。
アレは完全に次元の異なる領域なのだ。


―――オレが、唯依が、文字通り命がけで自分たちが遣ってきた事は、何だったんだろう。
帝国に戻ってこのOSに触れたとき、唯依はどうやって納得したのだろう。

XFJ計画が撤退したことで、片翼をもがれ、宙に浮いたアルゴス試験小隊はどうなってしまうのだろう。
もともとXFJ計画のためにこのユーコンに呼ばれたのだ。再びネバダに還るのだろうか・・・。



唯依が戻ってしまい、昼間でも暗鬱な気候と同じく、明けない夜に向かっていくような気分だった。





そんな取り留めのない思索をぶち破ったのは、いきなりアナウンスされた模擬戦だった。

慌てて部隊詰め所に戻ってみれば、VGとチョビ、ステラが既にモニターを注視していた。



「 ・・まさかっ!? 」


その映像に映っていた機体に瞠目した。

機体はイーダル試験小隊のイーダル1、先日評価試験で遣り合ったソ連の最新鋭機Su-47。
そして対するのは、見慣れた感のある機体、イエローカラーのType00 武御雷―――唯依の機体に間違いなかった。

一瞬、唯依が還ってきた事に喜んだが、それは直ぐに驚愕に変わる。


・・・オレの知っているTpye-00は、こんな動きはしない・・・、出来ない!
これは・・・・XM3!?


そう、パワーと機動性で勝り、先の評価試験でオレが散々手こずった、イーダル1相手に正しく舞うような機動で翻弄する。
Type-00は、まだその長刀すら抜いていない。

以前聞いたことのある唯依の修めたという示現流の流れを汲む流派の極意。
刀を抜くのは、ただ一撃必殺の覚悟で死を極めた時のみ。刀を抜かざる境地こそが、その極意。
それを体現するかのように大型で、高出力故に大振りになるSu-47の常に内側に入り込み、その攻撃を躱す。
時にあの映像で見せられた白銀少佐の空中機動すら見せる。

流れる様な機動は、高速化していながらどこかにカクカクとしたロボットらしい印象を残すSu-47に比べ、まさに人の動きにちかい。そして以前の唯依なら使わなかった戦術機ならではの動作さえ織り交ぜる。

そしてこの嫌な感覚・・・これはあの時[●●●]の二人と同じ!
薬物と後催眠の二重使用で応答性を上げると聞いた。
だがその実質はESP能力の相互作用に依る意識の融合、その状態で発現する数秒先の確定した未来の観測。
それを最大限に上げたとき、イーニァの破壊衝動のみになって、止められなくなり、絶命するまで破壊し続けると言っていた時の感覚!

その先読みされるが如き機動は凄まじく、オレと唯依が決死の覚悟で漸く止めた


だが・・・。

唯依が長刀を構えた。



一閃―――。

それを知っていたように躱す、が、追うように返す刀を弾いて引くSu-47。

間髪を入れず、再び武御雷が斬り込む。

避けるSu-47を追う斬撃。

目まぐるしい攻防。

しかし攻めているのは一方的にType-00。


そして攻めこむほどにSu-47の回避にだんだん余裕が無くなっていく。

明らかに、武御雷の追撃速度が上がり、それ以上回避が追いつかないSu-47が追い詰められてゆく。


・・・・今のXFJ Phase3を以てしても、オレがまだ至れない境地!

その境地に、既に唯依は達したのか・・・・。

取り残された様な、複雑な感情が湧き上がる。



コックピットで苦悶するクリスカと泣きそうなイーニァが浮かぶ様だった。


その焦りが産んだ失墜。

操作が乱れ、刹那の動作硬直。


その隙を見逃す今の唯依ではない。

流れるような踏み込みをしながらType-00は、その機関部を薙ぎ払った。





―――圧倒的。

おそらくはプラーフカを全開にしていた紅の姉妹に掠らせもせず、切り伏せた。


一緒に模擬戦を見ていたVGもチョビもステラも一言も口をきかない。


常に先回りするような“紅の姉妹”の動き。

だが、先回りしようとしたその先に、武御雷は居ない。

読みが刻々と変化する流れの中で、自機が反応する前に、対応してくる機体がある。

変化する読みを後から超えて来る相手に、後手にしか回れない。


―――そして閉ざされていく逃げ道。

―――閉塞する未来。




唯依は羽化[バケ]た。






そしてまたアナウンスが流れる。

『・・・こちらクラウス・ハルトウィックである。
プロミネンス計画に関わる全衛士諸君に告げる。

只今見て貰ったのは、この度帝国より提供[●●]されることとなった新OS、XM3のデモンストレーションである。
既に基地シミュレータには、XM3とその教導モードが導入されている。
今日午後より、プロミネンス計画各衛士に於いては、XM3のシミュレータによる試用を許可する。
今後、試用した各衛士の希望により、戦術機への限定版供与も約束されている。

依って各衛士は、速やかに試用を実施する事を要請する。

以上。』


・・・提供!? 超高ランクの軍事機密を!?


ユーコン基地に、再度激震が生じた。


Sideout



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