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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 12:03
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'15,01,24 大幅改稿(pcTEに準拠)
'15,06,05 齟齬修正
'15,06,19 誤字修正
'16,05,06 タイトル修正



Side 唯依


昨夜、巌谷の叔父様に呼び出しを受けた私はその後、御子神少佐、もとい御子神大佐[●●]と共に慌ただしく宇宙へと駆け上がった。

行き先は国連太平洋方面第3軍・ユーコン陸軍基地。

そう、ほんの数日前直ぐに戻るつもりで同じように慌ただしく旅立ち、そして今度は当分戻ることはない、とさっきまで思って居たユーコン基地だった。



巌谷中佐からの指示は表向きひとつ。

やり残したブルーフラッグ戦、というよりも対F-22戦、即ちインフィニティーズとの模擬戦闘完遂だけである。
但し、実施の可否判断は現場の上司、つまり御子神大佐に委ねるものとする、と言うことだった。

テロの終息から既に一ヶ月以上が経ち、その爪痕も漸く消えつつあるユーコン基地。
XFJ計画については横槍の在ったソ連製戦術機との評価試験も既に終了。
それに付いてはプロミネンス計画責任者であるハルトウィック大佐も、ボーニング社技術顧問であるハイネマン氏も了承していた。
その際に本来帝国国内で実施予定だったPhase3への換装も済んでいる。
計画は全て完遂という報告は帝国の装備検討会議でも受理されている。
が、国内ではその上、防衛大綱諮問会議にて保留とされた。

XFJ計画そのものもXM3という画期的なOSがもたらされた今、数字上の目標が十二分に達成されている事が確認されている。
しかしF-22を、即ちステルスを相手にする実績、その一点についてのみ拘る輩がいるらしい。
対人戦の装備でしか無いステルスに拘り、ステルス無くばF-22に太刀打ち出来ない。
次期主力で在るならば、F-22と少なくとも同等であるべき、との主張。
XM3がBETAに有効なのは理解した上で、対人戦[●●●]に於いても凌駕しうるのか?
その疑問がXFJ承認派の興味もくすぐったのは、致し方ないことかも知れない。

今、背水の陣でBETAに戦いを挑もうとする孤高の志士達が居る反面、ただ砂上の楼閣上にあぐらを掻き、対人戦の算段を執る暗愚もまた居る。
だが、第4計画と第5計画を知らされた今、その主張の裏も予測できた。


実際勝つことが条件ではなく、結果如何に関わらずXFJはその実施を以て試製XFJ-01の開発記号が付き、次期主力戦術機候補として試験運用されることは叔父様の努力で決定していると言う。
もし、現場の判断でAH戦が実施されなくてもどうにかなるから、と笑っておられた。
それも横浜の実態を知ってしまった今、よく分かる。

そして、本来なら私一人が戻る所であったが、今回御子神大佐が同行と成ったのは、私の突然の帰国、そのわび代わりに送ったデータが元で、その開発者を招聘したい、という強硬な要請が日本政府に在ったためらしい。


完成したばかりのXFJ Evolution4、しかも例の“サプレッサ付き87式突撃砲”まで2門装備してカーゴに載せた。
勿論2つあるカーゴの2機目は山吹の武御雷である。
AH戦は、遣るとしたらタリサの代わりに大佐自らが参加するとの事だった。



更に巌谷の叔父様に極秘で呼ばれ、殿下との謁見もした。
なんでも国連横浜基地に籠もっていて手出しが出せない御子神大佐を付け狙う輩が居る、と言うことだ。
G-コアという叔父様にも殿下にも言えない秘密を知ってしまった今、在り得ない事ではないと思う。
それのみならず、御子神大佐は多方面に多大な影響を与えているのだ。
宗家の九條を初めとし、敵対する第5計画派も、今や彼を最大の阻害要因とみなしているだろう。
G-コアについては、帰国後大佐自ら話しをするので、いまは黙っている様に、との事だった。

そう、御子神大佐の直衛が、私の裏の任務なのだ。

なので、今回の遠征に際し派遣期間に限り、異例の措置で御子神少佐は大佐に昇格されていた。
これは香月副司令も同じらしく、国連軍でも昨日付けで技術大佐に昇格している。
少しでも、ユーコンでの立場が強くなれば、というお二方の心配りであった。
まあ、本来大佐の齎す技術内容が知れれば、大佐程度では到底収まる範囲ではないので、それに付いては全く異存はない。





しかし・・・。

専用機を仕立て秘書官と言う名の護衛官をつけると言った殿下の提案は却下したらしい。
今は未だ公にやれば、何かと角が立つ、と。
悲しそうな殿下に、くれぐれもよしなに、とお願いされてしまった・・・・。

と言っても、そもそも自前のXSSTに、同じくらいの全長を持つ再突入カーゴが設置できてしまうのである。
中に戦術機を2機収めれば、離陸荷重[ペイロード]は自重の凡そ3倍。
その状態でも、大気圏離脱は愚か、垂直離着陸までこなしてしまうと言うのだから相変わらずデタラメである。

御子神大佐を知ってまだたったの4日だが、もう大抵の事では驚かなくなったいた、・・・筈なのに・・・。





目が覚めると、まだ機内に居た。
時計は6時。
毛布が掛けられている。
何時に間にか眠ってしまったらしい。

日本を夜20時に出ると、実質フライトは1時間程度だが、夜中の2時に着いてしまう。
と言って24時に出ると朝6時着になり、翌日は完撤状態。
なので、時間を調整し、機中泊で5時間ばかりの仮眠時間を取ってくれた。
確かに定期便や、他に大勢の運用スタッフがいる専用機では、ここまで自由がきかない。


気がつけば、周囲は錚々たるユーコンの遅い夜明け。

レーダーをチェックすれば、基地の位置を遠く外し、無人域の河川敷に着陸したのだろう。
入国許可は取っているとはいえ、本来なら密入国もの。
ステルスに光学迷彩まで持っている機体ならでは、である。
こんな僻地に夜中に着陸したら、判るわけがない。


目の前はユーコンの大河。


基地よりもかなり下流域になるのだが、川幅は寧ろ平地が拡がる基地周辺より狭いはずだった。
それでも悠久なる大河は、薄暮のような遠い明け空に向こう岸は見えず、水面には棚引くような靄が立つ。


緯度の高いユーコンでは、10月の終わりともなると、太陽が顔を出すのは朝も9時過ぎ。角度がゆるいため、今時分から地平の際は明るいのに、太陽は中々出てこない。
そしてもうすぐ日の登らない薄暮の季節がやってくる。
緯度の関係から、太陽は昼でも地平線を這いずるだけでまた沈む。

私が来たのは、4月、逆に夏至近く白夜に近い状況だった。
テロ後も2週間は療養、復帰後もこんな早朝に起きたことはない。
初めて見る薄暮の朝だった。


約半年・・・。

此処で過ごした、17歳の、二度と来ない季節。


―――そしてあと2ヶ月。

人類の命運を賭けた、極秘計画が進んでいる。
何の因果か、その中枢を知ってしまったのだ。

数奇な、と言えば数奇な運命なのかも知れない。



目を覚ますのに、機外にでる。

そこでバッタリ会ったのは、勿論御子神大佐なのだが・・・。


「はあわッ! た、たっ、大佐っ!? それは一体っっ!!??」

「おはよう。
・・・コレ? キングサーモンだけど。
70にはちょっと届かないけど、67lb(ポンド)かな。
シーズン最終日にしては、良い型がでた。」


キングサーモンの秋のシーズンは、例年9月から10月と言われる。
日付変更線を飛び越えた今日は、確かに10月31日。

間違ってはいないが・・・、間違っていないのか?
御子神大佐は私服のまま、ジーンズにフライトジャケットの袖をまくり、そしてその手には何と!丸々と肥えた1mを優に超えるキングサーモンを担いでいたのだ!


「・・っっっっっいったい、どうやってっっ!!??」

「一人でスキップできるバス用ホバーボートをカーゴに積んできたから、ちょっと朝マズメのトローリングで試してみたら、釣れた。
丁度いいから普段世話になっている京塚のオバチャンへの土産かな。」

「く・・・・・。
ユーコンでの釣りにはライセンスが必要と聞いておりますが・・?」

「持ってるよ。ほら。」


orz
何かと出鱈目な上司である。
今の時代にそんなバス用ボートを所持していたり、任務に持って来たりするのも何だが、それを使ったって、そうそう獲れるものでもない筈だ。

そして・・・横浜の師匠の名を出されると弱い。

志願して弟子入りし、まだ二日だが、その料理に対する含蓄在る薫陶は、何物にも代えがたい。
確かに師匠なら、これだけ立派なキングサーモン、さぞや究極やら至高やらをも凌ぐ、超越の逸品に仕上げるに違いない。
それだけでも横浜基地のPXが明るくなりそうだ。


しかし、・・・しかし・・・、この荘厳な雰囲気と、あの私の決意は・・・・。



グルグルと思考が回っていた私の頭に、ポンと掌が置かれる。

「気に病むな。
・・・締めるところは締め、緩むときは緩む。
言い古されているが、極意だぜ。
篁を見てると張り詰めすぎて、この先切れそうで怖い。」

「!・・・・。」

「もう一本、小さめの40lb級も上げたから、今夜刺身にしてやる。
今殺菌のため冷凍してるから。
ああ、お望みなら手鞠寿司も付けよう。
マリネとムニエルは今一得意じゃないから・・「私がやります! あ・・・」」


美味しそうなメニューに乗せられたことに気付いて真っ赤になる。
だって天然モノのキングサーモンなんて・・・。
初夏の遡上シーズンに初めて食して絶句した。
脂の乗る秋口の旬にはブルーフラッグとテロがあって、それどころじゃなかった。
コーホーやシルバーはまだしも、キングサーモン丸ごと一尾はこの地元だってそうそう出回るものではないのだ。

優しげに笑う大佐を見ながら、巌谷の叔父様に続いて、どうやらこの上司にも私は勝てそうにない、と溜息を落とした。





「大佐・・・。」

「なんだ?」

「・・・・一つ留意頂きたいことがあるのですが?」

「訊こう」

「“紅の姉妹”、プロミネンス計画に参画するソ連のイーダル実験小隊に属するビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉のことです。
恐らく、私が狙撃されたのは、その機密を垣間見てしまったから、だと愚考しております。」

「また狙われると?」

「いえ、もう巌谷中佐にも伝えてしまいましたので、報復以外では今更それはないかと。
そして此処で私を撃って、XM3の情報を放棄するような愚挙は起こさないでしょう。」

「どんな内容なんだ?」

「・・・はい。ΠЗ計画、ソ連のサンダーク大尉が推進している計画です。
・・・薬物と後催眠暗示の多重掛けで人間の反射を極限まで早める手法―――。
テロの時、レッドシフトを発動させないため、彼女たちはその“プラーフカ”を最大値、・・・絶命するまで破壊を続ける領域まで掛けたそうです。
・・・彼女たちの希望で。
・・・たった一人、ユウヤを守る為に・・・。
BETAは殲滅しましたが、正気を喪った彼女らは、タリサも撃墜しました。
止めたのは、私と・・・ユウヤです。」

「なるほど・・・。
―――それで、篁は彼女たちをどうしたいんだ?」

「・・・いえ、ユウヤ、失礼しましたブリッジス少尉が気にかけていましたので少し・・・。」

「・・・そのブリッジス少尉が、篁の意中の人? なら留め置くけど・・・。」

「!!、あわッ、あ、いえ、意中と言うわけではなく、ちょっと複雑な関係というか・・・。」


私は何を馬鹿なことを頼んでいるのだろう。
大佐には、何の関係も無いのに・・・。

わたわたと慌てている私の頭に、再びポンと掌が乗る。


「・・・深くは訊かない。が、―――悪いようにはしない。」

「・・・はい。」











09:00・・・。

一度離陸し、ステルスを解除すると、管制の指示に従い正規ルートから滑走路にアプローチ。
戦術機を背負っているのに、滑走路を100mも使わずランディング。
以前のような―――心配していた何の障害も無かった。

迎えの車に乗り込む。
カーゴはまだ手つかずのまま、格納庫に誘導される。

此処を離れて1週間も経っていないのに、随分と懐かしく感じた。





国連太平洋方面第3軍・ユーコン陸軍基地司令。
テロで負傷し帰国したプレストン中将にかわり、基地司令に赴任してきたのは、ハロルド・アッカーマン米国[●●]陸軍少将だったが、来賓応接室で挨拶だけをすると早々に退出した。
事前情報では、出自が英国陸軍と言われていたが、フタを開けてみれば英国陸軍に出向していた米国将官を配置転換しただけ、という詐欺紛いの手口。
テロの終息とともに待ち構えていたように赴任してきた時も思ったが、相変わらず何を考えているのか判らない司令官である。

そして、実質的に基地の実権を掌握しているのは、プロミネンス計画の最高責任者であり計画指揮官であるクラウス・ハルトウィック西独陸軍大佐であった。
秘書官であるレベッカ・リント少尉が控えている。
今、ここに居るのは、ハルトウィック大佐と秘書官の他、フェニックス計画を主導しXFJ計画の技術顧問であったフランク・ハイネマン氏、テロにより殉職したアターエフ大佐(2階級特進)に代わり、昇格し東側諸国の利益代表者となったイェージー・サンダーク大尉。
今も、イーダル試験小隊を指揮して、プロミネンス計画そのものに参加している。




「・・・先ずはコチラの強引な召還を承諾頂いて感謝する。
まさか昨日の今日で来ていただけるとは思っても居なかった。」

「・・・強引だとは、理解しているんだ。
こっちは今日の今日だがな。
何かと予定が立て込んでいて今しか時間が取れないだけだ。」

「フム・・・。技術少佐と聞いていたんだが・・・。」

「敬語の嫌いな俺のために、悠陽と夕呼が勝手に付けただけだ。」


ぞんざいな英語に鼻白む。
英会話が苦手、と言うわけではないらしい。


「・・・・日本人は和を尊ぶと聞いたが?」

「尊敬できない相手におべっかを使う気がないだけだ。」

「・・・尊敬出来ない・・・と?」

「・・・心当たりでもあるのか?」


・・・いきなりのけんか腰である。
XSSTに搭乗前、香月副司令に言われたことを思い出した。


アイツ、場合によったら全部潰すつもりだからね。
だからアンタにとって大事なモノが在るなら、キチンと主張なさい。
アイツを縛れるのは、親しい人の情だけよ。


・・・巌谷の叔父様、私にそれが可能でしょうか?



「・・・成程。命令権は認めない、と言うわけか。
無論、命令などする気はない。
礼を欠いたのも、強引だったのも十二分に理解している。
それに付いては幾らでも謝罪する。

だが・・・、あのデータは衝撃的すぎた。

光線照射を機動で躱し単騎で連隊規模のBETAを屠り、エレメントではヴォールクを文字通り陥落させる。
シミュレーションデータが甘いのは理解していても、その甘い設定ですら反応炉到達さえ他には誰も出来ていないのが世界の現実だ。
そして一切甘さなど無い実戦に於いても、圧倒的な性能差がある機体でインペリアルガード最強の武神を撃破してみせた。
勿論衛士の腕も尋常ではないが、それを支えたのが新しいOSとなれば、その理念を世界に演繹しないわけにはいかないのだ!」

「・・・・それが、アンタの否定する第4計画の産物だとしてもか?」

「!!・・・・・・。
―――別に否定してなどおらん。」

「子供騙しに引っかかった世界最大の詐欺、―――じゃ無かったのか?」

「―――理解できなかっただけだ。
BETAとの意思疎通、情報収集、そこに何の意味が在るというのだ?」

「そう今も思っている時点で明確な否定だろ?

・・・反応炉をS-11、2発で破壊する位置。
反応炉からのエネルギー供給により強化されているハイヴ壁やモニュメント、それを断てば爆破崩落も可能であること。
幽霊部隊での数々のハイヴ威力偵察経験から生まれた機動概念を元にしたOS・・・。
・・・・これらがBETA情報収集以外のなにから得られるんだ?」

「「「 !!! 」」」

「・・・俺に言わせれば、プロミネンスは女を見ずに、自分のナニを弄るマスターべションにしか見えないが。
そんな命令に従うしか無かった開発衛士が報われない。
隣とナニだけ比べてどうするんだ?
デカイ奴が女を落とせるわけじゃないんだぜ?」

「「「 ・・・。 」」」


た、た、大佐っ! 下品ですっ! スラングぐらい、私でも判ります!
乙女の前なんですから、もう少し表現を控えてくださいっ!!


「・・・そこに居る、ハイネマンや、サンダークと違い、大佐の望みは通常兵器での欧州奪還・・・ああ、それでエレメントでハイヴ攻略を成し遂げる可能性を見せたXM3を形振り構わず求めたか・・。
第4計画は否定しておきながら、その成果だけは欲しがる。
・・・随分と身勝手だな。」


しかもこれまでにないくらい舌鋒は辛辣。
ここの開発部隊にいた私ですら身を竦めてしまう。


「・・・・・・・・認めよう。
確かに私はBETAを訳の分からない脅威と見做し、理解することを放棄した。
そこに踏み込み、そして人類に多大な成果を齎したオルタネイティブ4に付いて最大限の敬意を表しよう。」

「アンタの敬意なんか要らん、と夕呼は言いそうだ。
・・・が、流石は合理的なゲルマン民族、感情にも流されず、そう来るか。
・・・まあ、その位できなければ、テロリストを誘い込んだりしないな。」

「 え? 」

「・・・・・・他は驚かないと言うことは、暗黙の了解があったか、薄々気付いていたと言う事だろう?
篁も横浜でオルタネイティブ計画の内容を知ったなら、このユーコンがどんだけ微妙なバランスの上に在るのか、判るだろう?」

「・・・・。」


元々掲げる理念が魑魅魍魎を招きやすい土壌。
言われるまでもなく、その頂点も同類・・・それだけのことだ。


「プロミネンス計画サイドは、先刻も言ったが、膨大な予算を喰いながら成果が上がっていなかった第4計画、そしてそもそもの戦術ドクトリンが衝突する第5計画とは対立していた。
まあ第4計画はワザワザユーコンにちょっかい出したりしないが、第5計画はそうでもないらしいな。

前司令官も第5計画派だったし、そこに居るハイネマンも本来なら第5計画派のボーニングからの派遣だ。
社内でも派閥が在るだろうから、いろいろだろうが。

あのテロは、お互い[●●●]にキリスト教恭順派や難民解放戦線のテロリストを利用して、相互に排除を狙った諜報戦・・・だよな?」

「・・・・・。」

「もともとテロ誘導を計画したのは、第5計画派だろうな。
それを察知したアンタは茶番を演じてMPにワザと拘束される。

テロリストは機体の強奪に、各国部隊を次々に殲滅、つまり第5計画派はプロミネンス計画の構成人員・機材の損耗と各国の離反を狙った。
ただし第5計画派も協力者というわけではなく、ただそうなるよう誘導しただけだから、それ以上の拡大は困る。
だからテログループ殲滅用の米軍まで配備して対処した。
協賛国の戦術機奪取・施設破壊が十分行われた段階で介入に踏み切った。
インフィニティーズもその一つだろう。
・・・理由は他にも有りそうだが、このメンバーには関係ないか。

一方で、プロミネンス計画側は、逆にテロリストに本部ビル潜入を敢えて許し、逆に米ソがこのユーコン基地に抱える最重要機密、“レッドシフト”の暴露を目論んだ。
プロミネンス計画側としては、国連基地でありながら影響力の強すぎる米ソの排斥を狙ったわけだ。
アンタの指示か担当者の独断か知らんがな。

アンタに取っては米ソの悪虐を晒し自分の有利にコトを運ぶための最後の賭け。
まあぶっちゃけ杜撰過ぎるが、乾坤一擲、と言うわけだ。

ところが、そんな事は知る由もないテロリストが試験区域のBETAを開放したことで、米軍航空部隊は潰滅。
第5計画派としては目論見が完全に外れた。
と同時にプロミネンス側も、暴露どころかあわや発動という瀬戸際まで追い込まれた訳だ。
―――薄氷―――だな。

それでも第5計画派としては隠したかったコトを暴露され、重体の准将も後送された。
つまりギリギリの線でアンタが賭けに勝った訳だ。

・・・結果民間人を含む3,000余人を見殺しにして、な・・・・。」


私はハルトウィック大佐を睨みつける。
その判断で、知り合いだって何人も死んだ。


「・・・・それが気にくわんか?」

「・・・そうだな。
仕掛けられたのは寧ろアンタだし、司令官という立場なら、犠牲を厭わないその果断さも時に必要となる。
・・・既に人類は数十億の人間を切り捨ててきたのだから・・・。」


!!! それが為政者の判断、司令官の視点だと言うのか!?


「・・・だったら何が気にくわないのかね?」

「―――それでアンタは実質[●●]何を得たんだ?
中身の無い、看板だけのハリボテの計画か?」

「 !! 」

「ブルーフラッグに参加していた10カ国11チームの試験小隊のうち、6チームが文字通り壊滅―――。
人的にも装備も全損、1ヶ月以上経った今も人員装備補充の見込みさえ立っていない。
基地警備や所属部隊についても、その70%を損耗という状況。
辛うじて残った暴風試験小隊、アズライール実験小隊(中東連合(イラン陸軍)所属)、 スレイヴニル小隊(欧州連合(スウェーデン王国軍)所属)に付いても衛士、機材共に損害は大きく、実働に至っていない。
そりゃそうだろう、今の世界にそんな余裕のあるところなど後方支援国家しか無く、その後方支援国家はこの計画に参加すらしていないからな。
健全に残ったのは、唯一インフィニティーズのみだが、これはスポット参戦なので既に居ない。
アルゴス試験小隊も、タリサの弐型2号機は大破。バックにボーニングがいたお陰で復帰は果たしているが、逆にXFJは先の評価試験を以って完了し離脱。
後は事件後正式参加したイーダル実験小隊のみ。
それすらテロ時の無理に依る衛士不調で2週間も評価試験を伸ばした。

すべて、テロの計画を知りながら何の対応もしなかった司令官の責任―――。

自らが選んだ今のプロミネンス計画の状況、その何処に中身が在るんだ?」

「・・・・・・。」

「対価がえられるからこその犠牲[コスト]
アンタがあのテロで得たものは、支払ったコストに見合うのか?
最小限のコストで最大の対価を得てこそ名指揮官。
たかが米国の監視を外すためだけに、中身の70%を喪った指揮官の何処に尊敬できる要素がある?
しかも米国の監視については本当に外れたかどうかすら未だ不明。
それはそうだろ?
第5計画派がテロを誘導したと言う明確な証拠は無いのだから、誰に憚ること無く“次”を押し付けてくる。
レッドシフトが暴露されたところで、簡単に言えばここ[●●]は米国の土地。
撤去を約束されれば、国連とて借主の意向を無視するわけには行かない。
結局―――惨憺たる被害は、全て無駄死ってことだ。」

「「 !!!・・・・・・。 」」

「―――もう一つ、訊こうか。
米国・第5計画派支配を弱めて、そしてアンタは何をしたいんだ?
各国間の情報・技術交換を主目的と言いつつ、各国軍事機密・企業間の利益優先に阻まれ、何も出来て居ない。
先週XFJが掛けられた嫌疑、プロミネンス計画そのものが本来透明化しておくべき案件じゃないのか?
そこに居るサンダークとハイネマンは宜しく遣っているらしいが、それすらプロミネンスの成果と公に出来ない代物。

アンタが多大なコストを支払ってまでやりたかった現実的・具体的な施策内容を教えてくれ。」

「・・・・・・。」

「―――何が気に食わない?――よくそんなセリフが吐けたもんだ。
今の惨状に当然、参加各国の信用を失った。
具体的成果が何も見えないプロミネンス計画そのものを疑問視する国も多い。
アンタの母体である欧州連合ですら未だ補充が来ないのは、それらの国々が今の現状を招いたアンタを信用していない、そういう事なんじゃないのか?」

「それはあんまりですッ!、大佐だってテロの規模「それ以上言わないほうがいいぞ。」・・・。」


口を挟むリント少尉を遮る。


「―――テロの規模や行動を想定していなかったなんていうのは、自らの指揮官としての想像力、危機管理能力が欠如していましたと言う事と同じだろう?」

「!!――ッ」

「プロミネンス計画を危うくしているのは、第5計画派じゃなく、この惨状にあってのうのうとそんなセリフを吐くアンタ自身だろうが!」



峻峰激烈な糾弾。

ハルトウィック大佐の判断が、あのテロを呼びこみ、状況はレッドシフト寸前まで至った。
そこに生じた多大な犠牲。
人類の存続を誰よりも優先する御子神大佐からしたら、余りに無能な指揮官、と言う事になる。


此方を見返す瞳はまだ力を失っていない。
が、返す応えもない。
さっきまで糾弾する御子神大佐を睨んでいたリント少尉は、完全にうなだれている。
握りしめた拳が、ぶるぶると震えていた。


「・・・・・・来年に成れば、部品の量産体勢も整う。
XM3の供与と教導を条件に、横浜で各国部隊を受け入れることも可能―――。
第3国の信頼を盛大に喪ったアンタがXM3を客寄せパンダにしたかったらしいが、そもそも信頼に足る根本が欠落している。
こっちはプロミネンス計画そのものが、無くなったって全然構わないんだぜ?」


「―――それはちょっと困りますな。
何よりもOSを開示頂けなければ、我々の願った条件に叶わないのですが?」


それを遮ったのは、フランク・ハイネマン氏。
プロミネンス計画でフェニックス計画を推進する以上、その喪失は認められないだろう。


「―――勘違いされては困るな。
別にプロミネンスの危機を招いたのは俺じゃない。
だが口を挟むと言うことは、今回の開示要求、ボーニングがプロミネンスを通し、XFJにされた物、との解釈でいいわけだ。」

「・・・案件は私の預かりですから、そうなりますな。」

「・・・Hi-MARFに関わり、F-14、YF-23を設計し、F-15ACTVを担う“戦術機の鬼”とまで言われた男が、ライバル会社に接収され、重役になって技術顧問なんかやってる所為で、すっかり第5計画派の言いなり・・・の振り[●●]か。
―――ま、あんたがこんな最果ての地で何をしたいか、巌谷の話とXFJ Phase3で大方理解したけどな。」

「・・・。」

「よほど気になったらしいが、そもそもボーニングがここで開示要求する事自体、XFJの契約違反[●●●●]だって事、認識しているか?
―――何しろ契約書には、帝国の技術等開示不要[●●●●]と明記されているんだからな。」

「!!――ッ」


―――そういえば叔父様に聞いたことがある。
XFJの調印でボーニング首脳陣との間にそんなやり取りが在ったと・・・。


「成程―――、これは失念していました。」

「―――再度XFJではなく第4計画に要求しても無駄だぜ。
別条件を提示され受諾した時点で第4計画は責務を履行した。
だが、XM3の所有権は悠陽[●●]にある。
最終的に開示の可否を決めるのは、悠陽だからな。」

「・・・ユウヒとは、一体何方なのです?」

「・・・。」


大佐は応える気がないらしい。
知っている人は、此処には居ない。


「―――大佐の仰るユウヒとは、煌武院悠陽日本帝国政威大将軍殿下に御座います。」

「「「「な・・・!?」」」」


驚くのも無理はない―――。
今は未だ雌伏しているとは言え、帝国の全権を任された者。
米国なら大統領に相当する存在を、平然と呼び捨てにする人など大佐しか居ない。
初めて聞いたときには唖然としたが、殿下自身から望まれたと聞けば納得もする。


そして米国は、いわば契約社会。
口頭ならまだしも、正規に取り交わされた契約に於いて曖昧さやなあなあ[●●●●]が通用しない。
逆に言えば、契約条項は厳格に遵守する意識が強い。
違反などすれば、国内外からの信用を一気に失う。
つまりボーニングは、自ら契約違反に当たる条項を代替条件としたことで、無条件に責務を履行しなければならない状況に陥った訳だ。


「ふ、・・・本社連中の驕り昂った意識が招いた自業自得と言うことですか―――。
―――それでは、君は・・・何をしに此処に来たのかね?」

「売られた喧嘩を買いに―――。
F-22を墜すことで、G弾に歪められた軍事ドクトリンや、捻れたAFST至上主義をぶっ潰しに来た。」

「「「 !? 」」」

「―――随分と大きく出たものです。
ATSFが間違っていると?」

「ばからし―――。
元々ATSF計画で要求された内容は、
・戦術機を含む対人類保有兵器戦闘能力
・高度なファストルック・ファストキル能力
・各種電子機器による被発見率の低減=ステルス能力
・低燃費高速巡航および長距離飛行能力

前提がBETAが早期に排除できることを見込んだ狸の皮算用。
BETAを殲滅する手段が今は第2世代機からG弾に成っただけで、米軍ドクトリンの体現と目されるが、要するに最後の項目以外、全て対人仕様。
逆に言えば、極高価な割にBETA戦には使い物にならない機能ばかり。
高すぎるせいで、コンペに勝ってさえ配備に10年も掛かっている。
此処まで追い詰められた今の人類が必要とするのは、高いだけで配備もままならず、他国に売ることすら出来ない、まるで使えないポンコツじゃない。
これ以上こんな戦術機を目標にしたガラクタが増えるのは困るんだ。

そう訊いてるハイネマンは自分でも判っているんだろう?
ACTV、Su-47、そしてXFJ Phase3。
―――あんたがしていることは、米国が蔑ろにした、本来BETAと対抗するための戦術機を進化させ、リボーンし、安く、大量に賄う。
どう考えても、ATSFになど則っていない。

まあ―――裏でF-22に勝てる程度の細工はしているみたいだがな。

事実プロミネンスとボーニングは一蓮托生。
―――というよりも米国以外の次世代戦術機を一手に引き受けるハイネマンと同体と言うこと。

―――それが、その温床を醸したことがプロミネンスの唯一にして最大の功績。

ハルトウィックが俺の罵倒に一言もないように、表向きには決して言えない内容だがな―――。」

「「「・・・・・・。」」」

「・・・しかしそのAFSTの結果であるF-22が今も最強である時点で、それを目指すことは仕方なく、また人類がこれ以上追い詰められれば、例の作戦が発動されるのは必至―――。
米軍のドクトリンは揺らがないのではないのですか?」

「!リント少尉ッ!」

「!ッ、失礼しましたッ!」

「・・・構わん。」


返答と共にバサリと投げられた資料。

それは“於地球上G弾使用による大規模重力偏向と大規模潮位変動予測”と書かれた論文。
所謂“大海崩”を予測した、通称“香月レポート”と呼ばれる代物。


「―――第4計画で、横浜に於けるG弾の影響を調べ、比較的簡単なシミュレーションで導き出した謂わば“重力津波”の発生予測―――。
もうじき国連を始め、全世界の研究機関や、マスコミにもばらまかれる。
既に米国内の第4計画協力者やステークホルダー達にはリークされ始めている。
ハイネマンもサンダークも技術職なら部下にやらせてみれば良い。
水の固有値解析が出来れば割と簡単に予測できる。」

「「「・・・。」」」

「第5計画派がG弾戦略を実行したら、今の後方支援国家の2/3が海中に没する。
それは米国も例外じゃない。」

「「「「「 !!! 」」」」・・・第4計画はそんな情報まで・・・」

「―――これで第5計画の運用でG弾は使えない。
あとはF-22最強伝説を撃墜すれば、米軍事ドクトリンは全面立て直し。
BETA戦を蔑ろにしたAFSTも無用の長物と化す。」

「「「・・・・・・。」」」



投下された爆弾の数々。

この資料の信憑性が確認された時点で、G弾は使えない。


「ハイネマンの中で既にSu-47とXFJ Phase3は巣立ったはずだ。
あとはACTVだが、これも既に調整を残すのみで今更大幅な変更はない。
F-22を撃墜するのに、いろいろ策を練っていたらしいが、悪いな、喧嘩を売られたのは俺だ。」

「・・・XFJの流用疑惑が余りにも早く政治決着したのは、これ[香月レポート]のせいですか。」

「―――だろうな。
第5計画派は第4計画が年内に打ち切られると確証を得て先鋭化した。
中でもG弾至上主義者はプロミネンスもハイネマンも当面不要と考えてるんだろ。
あんたがPhase3の1号機に何を仕込んだか、掴んでいるみたいだぜ。」

「・・・。」

「あとは国防省にリークすれば当然機密漏洩でハイネマン以下XFJメンバーは投獄、XFJも、その土壌を醸したプロミネンスも打ち切り。
ま、其れに対抗する仕掛けは準備していたんだろうが、発動する前にその資料を掴んだ同じ第5計画派の慎重派が、至上主義者の独断専行を抑えた、って言うのが妥当だろ。」

「・・・。」


・・・まさか、高度な政治決着にはそんな裏が・・・。
だから御子神大佐をご存知の叔父様が納得した顔をしていたんだ―――。


「何れにしろ、プロミネンスであんたが遣りたかったことは、F-22を墜とせば終わる。
ハルトウィック、悠長に構えてるが、本当に次に遣ることが無いと、ハイネマンにまで切られるぜ。」

「く・・・ッ」





―――確かに大佐の言うとおりなら、プロミネンス計画は潰れる。

それは指揮官の招いた危機であり、御子神大佐が手を下すわけでもない。

・・・でも、それでいいのか?

XFJのみならず、各国の衛士が集ったこの地。
計画を興したのがハルトウィック大佐であっても、集った者はそれぞれが希望を抱いているはず。
日々競いながらも、願う事は同じだったはず。
その道半ばで散った彼らの遺志。

―――私の護りたいのは・・・・。





「―――待ってください御子神大佐、・・・発言を許可していただけるでしょか?」

「・・・・ああ。」

「ありがとうございます。
プロミネンス計画の概念は確かにATSFを意識していますが、米国の様にそれだけに縛られたものとは思えません。
最強を目標とするのは、兵器開発に於いて致し方無きこと。
しかし本来その基本となるのは、各国間の情報・技術交換、それによるブレイクスルー、設計思想の硬化防止により世界的な技術水準の向上を目指すモノです。
勿論、国連が掲げる“東西陣営の協調”“人類の大団結”という理想には遥かに遠いのも現実です。

しかしだからこそ、今此処でそれを諦めてしまって良いのでしょうか?」

「・・・。」

「―――本来その理念そのものは、御子神大佐の求める思想と反しているとは思えません。

仰るように来年になれば、横浜で教導を立ち上げる事も可能でしょう。
けれどそれはそれで、必要に応じ別に興せばいいだけのこと。

何よりも御子神大佐の本来の目的が、帝都の講演で仰った[●●●●●●●●●]様に前線衛士の生存率向上で在るならば、一国の思想に支配されずに演繹の機会を広げるプロミネンス計画を利用しない手はないと愚考します。」

「・・・。」

「それにプロミネンス計画は、第5計画の敵対勢力。
ハルトウィック大佐を今更迭してしまうのは、尚早です。
もしハルトウィック大佐が、ユーコン事件の顛末を本当に恥じ、道半ばで不本意に散らざるを得なかった彼らの遺志を継ぐのなら、更迭や軍事裁判などでなく、本来プロミネンス計画が目指した本来の理念を死ぬまで追って頂きたいと、具申します。」



暫く私の顔を見つめていた御子神大佐が、フッと微笑む。



「まあ随分と甘いが・・・そんなとこか。

・・・良かったな、篁が生きていて[●●●●●]。」


大佐はサンダーク大尉を見ながらそう言った。


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