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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 12:03
'12,11,18 upload  ※やっちまった感が無いわけでもない・・・
'12,12,14 誤字修正
'15,01,24 伏線追記(pcTEに準拠)
'16,05,06 タイトル修正



Side 唯依


私はXFJ Evolution4と試製01型電磁投射砲筒:EMLC-01XによるBETA新潟上陸戦をシミュレートしていた。



今朝、6機の弐型搬入を確認した。早速2機はリアクターや跳躍ユニットの組み付けに入り、残りはフレーム変更に入る。
今晩には実機のXFJ Evolution4が一応の完成をみる。

肩部スラスターも、XFE112-FHI-400。
宇宙に於ける主に衛星姿勢制御用の小型スラスターSE112-FHI-500を転用したXナンバーが試作機が組み立てられていた。
推力は最大40t近く、肩部スラスター一基だけでも飛行できる計算に成る。
これでも主機に比べれば可愛いモノだと思ってしまうようになった自分が怖い。

そして今朝届いたパーツの中には、例のEMLC-01X関連試作部品も在った。

今の予定では、11月末までにEvolution4、つまりG-コア化される弐型は今の試作も入れて18機。オリジナルハイヴ攻略は侵攻組2個中隊規模なので、足りない分は基本的に不知火への換装で補う予定。

最終的に全部品が揃うのは、12月の半ばになる頃だ。

その間に設計変更が在っても、基本は現場対応で熟すしか無いスケジュールであった。






87式突撃砲を構える。

36mm砲の銃口には、突撃砲全長の半分ほどのサプレッサが装着されている。
勿論120mm砲の射線を妨げないよう、フレームに固定された銃身下部の2本のヒートレールを兼ねるガイドレールに保持されていた。
重量・バランスとも悪くない。
寧ろ若干のフロントヘビーはバレルが跳ね上がる連射に於いて、抑えやすいと言える。
単体設計図では長めに感じたが、取り回しも全く問題ない。
対物ライフルの様に長かった99式とは大違いだった。

流石にCNTレール部は、プラズマ・アーマチャーによる摩耗があるため、約50,000発で交換となるが、その程度の損耗は当たり前で、耐久性含め、なんら問題は見あたらなかった。
作戦遂行時36mm弾の最大携行弾数が27,000発であることを考えれば、充分対応出来る。

連射性能は、87式に依存し毎分900発、その全てを20km/sの速度にまで加速する。
この速度で当たった36mm劣化ウラン弾は、着弾点半径30cm程をプラズマ化し、そこから前方30度の円錐状に半径10m程度を完全に吹き飛ばす威力を発生する。
固体や液体に当たるとプラズマ化してしまう速度域の為、貫通力は余りないが、その威力は突撃級を正面から一撃で撃破し、要塞級でも数発で無力化出来る。
戦士級ならまとめて数体を吹き飛ばす威力だった。

勿論新規設計すれば、更に効率の良い構成も可能である筈だ。
しかし、BETAに蹂躙され資源すらままならない現状に於いて、全てを新作していたのでは間に合わないのも現実なのだ。

それがサプレッサ一本の追加で超高速のレールガンが得られるなら、既存装備の有効利用の点や、弾薬の共通性を考えれば、最上の選択であると言える。



正面にBETAの一群。

36mmの射撃モードをEMLに変更する。

トリガーを引き絞れば、連続的な蒼いプラズマ火箭は10m程度にまで達する。
チャンバー後方からガスブレーキのガスが小気味よく抜けていく。
弾体が120mmに比べ軽いことと、このガスブレーキのお陰で、反動は威力に比べればかなり少ない。


目前に群がるBETA群に対し水平に薙ぎ払う。

弾道は光の螺旋が纏う様に、そして着弾点は連続的に稲妻が走る様にプラズマ化して光り、突進してくるBETAを根こそぎ薙ぎ倒す。

ユーコンで実際に見た99型の透徹した威力にこそ及ばないが、その圧倒的な平面制圧能力に背中がゾクゾクしてくる。


・・・・・・栄誉ある斯衛軍衛士としては些か破廉恥だとは思うが、その胸のすく威力に思わずに居られない。


―――カ・イ・カ・ン・!


これは・・・クセになりそうだ・・・。






その一方で、XFJ Evolution4であるが、この作業が膨大であった。

主機の換装と跳躍ユニットの交換で、大幅な重量減と出力増が折り込まれており、それに併せたシミュレーションデータと成っている。
昨日の白銀少佐の全力機動で、ほぼ推進器としてのリミットも解り、既にそれに合わせたシミュレーションパラメータと制御システムが組まれている。
出力増に合わせた電磁伸縮炭素帯の増加や、電磁クラッチによる各部関節の強化、主骨格の補強などが今後段階的に施されてる予定であるが、今のところはオリジナルのまま。
単純に主機出力が数%上がっただけでも、安全率ぎりぎりで設計されている戦術機はフレームさえ保たないのだが、それを保たせてしまうのもXM3の妙味。
動的な負荷分散をして応力集中を起こさない。

それでも弐型オリジナルに比べれば4倍強の出力向上にあたり、やはり根本的にはフレームや関節部の補強が必要となる。

その為の基礎動作を含めた機動確認だった。

この作業はユーコンではユウヤが遣っていたことだ。
テストパイロットとして優秀だった彼であったからこそ、Phase3が完了したと言う側面もあったのだ。
それを行うのが、私でいいのですか?
そう御子神少佐に尋ねたのが、構わない、と言うのが応えだった。


勿論、口で言うほど簡単なモノではなく、それに合わせ、推進器制御や、バランス調整をしなければ成らないのだが、当然自由度が高い分、パラメータが膨大に多い。

加えて、サブの肩部推進器の制御も初物であるため、さらにパラメータが増える。
これがくせ者だった。

その制御自由度は、3次元であり無限の組み合わせが可能となる。
その中から、何を基準に選んでいけばいいのか。


膨大な組み合わせの中から絞り込む作業に辟易しながらも、実は私は心が弾むのを抑えられない。

ユーコンにコレが在ったら、状況は変わっていただろうか。

何を世代とするか明確な定義はないのだが、XFJ Evolution4はもはや第4世代どころか、一世代飛び越えて、第5世代と言っても良い様な性能。
今は勿論機密だが、行く行くは全世界に拡げるのは確実なのだ。

御子神少佐達の目標は、人類の存続であり、帝国のみの繁栄ではない。


対BETAの、破魔の剣となるこれらの装備も、やがてユーコンに居るユウヤたちの目にもとまるだろう。
その時“彼ら”はどんな顔をするだろう?






誘われて昼食を一緒に摂る。

基本、私がシミュレート、御子神少佐が測定とそれによるパラメータ変更を行っていく。
膨大なデータを瞬時に解析し、パラメータに反映していく。
それは、信じられないような解析速度。

ユーコンで1週間掛けて遣っていたことを、恐らく少佐は1時間で済ませてしまう。
確かに向こうでは実機を元にした改修であったし、その整備や変更にもいちいちハンガーに戻ることが要求される。
ここでは、実機機動をほぼ完全に再現したシミュレーションに因って模しており、少佐のキーボード一つでパラメータも変更出来るのだ。
搭乗直後はピーキーだった性能が、どんどん良くなっていくのが乗っていて解る。
だが、複雑に絡み合うパラメータを読み解き、トータルとしてよりよい方向に持って行くには、豊富な経験とずば抜けたセンスが要求される。
それを事も無げに進めていく。

これが、香月博士をして神と言わしめた開発力。

その突き詰めた設定が、今夜にも実機に載せられ、検証されてゆくのだ。



「やっぱり、凄いです、少佐の調整力。
動きが良くなっていくのが、実感できます。」

「・・自分の操縦がかなり助けに成っているって、理解してる?」

「え・・・?」

「・・・多少無理言って引っ張って大正解だった。
ここまでは期待してなかったから嬉しい誤算。
・・・・まあ巌谷中佐の人を見る目も確かだけど。
・・・良いよ、篁。」

「・・・?」

「流石ずっと開発に居ただけある。
操作にブレがない。
それでいて操作のヴァリエーションが広い。
俺なんか気がつかない挙動を、ちゃんと織り交ぜてくれる。
抜けがないから、確信して次に進める。」

「・・・・あ、・・ありがとうございます。」


ストレートな褒め言葉に真っ赤になった。
役に立てている、それが素直に嬉しい。


「自分がテストパイロットで良いか気にしてたけど、俺としては、そういう操作ができる方がありがたいね。
センスだけなら、飛んでもないのがいるからさ。」


其れはそうだろう。
白銀少佐と比べたら、ユウヤも、紅の姉妹も及ばないに違いない。


「あ、でも白銀少佐とかでも出来ますよね?」

「まあ一応、出来るとは思うけど、・・・きっとそれは武の専用機にしかならない。
武と俺の機動は、ちょっと特殊だから。」

「・・・」

「優れた兵器は、ルーキーが乗ってもそれなりの動きが出来るものでなければ成らない。
極一握りの規格外に合わせた仕様なんか意味はないさ。」

「!!」


そうだった。
少佐の兵器開発概念の根本はそこだ。


「かと言って、ルーキーにテストさせても、勿論何も解らない。
彼らには模範となる動作が必要となる。
そう言う意味で、篁の操作は、基本なんだ。」

「基本、・・ですか?」

「ああ。
ただし、その基本を高めて高めて、そして更に極めて、今の篁の動きがある。
これは俺が考えるテストパイロットとして、理想的だ。
・・・まあ尤も、この機体については、その範囲にルーキーは含めないから、求める平均値はかなり上だけどな。」

「・・・・。」


それはそうだ。
この機体は、ハイヴ侵攻スペシャル。
しかも今後世界に468基しか作られないG-コアを搭載する選ばれた機体。
恐らくはXM3のレベリングに於いて、4や5クラスの熟練者に与えられることになるのだろう。


「まあ昨日言ったようにその分、篁に足りないモノも理解したけどな。」

「え?! それはっ!?」

「今のテストが一段落したら、試してみたいモノがあるから、旨くすればそれで判る。」

「あ、はい。」






午後、シミュレーションテストを繰り返しながら少佐の言葉を反芻する。

成る程、と思う。
白銀少佐の専用機を作るわけではない。

それこそルーキーからベテランまでが乗る汎用機を作るのが兵器開発。
間口は限りなく広く、そして何処までも奥深い。
誰にでも一定水準以上の機動を可能としながら、極めれば更に応える。
兵器というものの在り方をキチンと理解している。

XFJはどうだったのだろう。
そう考えれば、乗りにくい、そう言ったユウヤの言葉も理解できる。
・・・子供だったんだな、お互いに・・・。

当初、日本人に反発していたユウヤ。
一方、全権を任せられた開発一辺倒で余裕が全くなかった私。


そう言えば・・・、・・・あら?


感じたのは、違和感。
定常では発生しないが、挙動の変化時に生じる姿勢の乱れ。


「少佐。」

『ん?』

「・・・・跳躍機動初期に、主推進器周りで乱流が発生していませんか?」

『・・・暴れる?』

「違和感、程度ですが。初期加速度が高いほど顕著に感じます。」

『ん~~~、データ取るから少し、連続機動してみて』

「了解です。」




その後、私の機動によるデータと、CFD(Computational Fluid Dynamics)による挙動時の乱流計算が行われ、特に推進気流に脚を巻き込む後方跳躍で乱れが大きく、跳躍速度に依存して増大すること、高機動時は実害在るレベルまで増大することが判明した。

で、原因究明から、解析までも早いが、その後が凄まじい。
あっという間に乱流を抑制する噴射制御から、各部形状変更まで3系統4案別の策を打ち立てる。

部品の全取り替えは、コスト的にも割に合わず、比較的簡単な形状変更と噴射制御を組み合わせてほぼ問題無いレベルの改善が可能であることが解った。

今、改修しているXFJ Evolution4の組み立て班に指示が飛ぶ。



「・・・凄いですね。あっという間に直してしまいました・・・。」

「・・・いや、これは篁のお手柄だ。
気がつけば、どうにでも対処も出来るが、気がつかなければ、後手に回るからな。
流石だよ。ありがとう、助かった。」

「!!」


ストレートな賛辞と率直な感謝。
こんな言葉を聞いたのは、何時以来だろう。

そして自分はこんなに素直に感謝を言葉に出来ていたのか?

少佐の言葉に盛大に照れながらも、つい前の自分と比較してしまうのだった。


Sideout




Side 悠陽


「・・・・これは!!」


帝都城、政威大将軍の執務室。
報告に上がっていたのは、鎧衣課長。


「面目次第も在りません。・・・まさかこのような条件を突きつけてこようとは・・・」

「・・・・。」


それはXG-70bの接収に関して、米国政府が示した条件。


・・・まだ、なのです。
まだ、ワタクシはお飾りでしかないのです。
せめて、せめて大権奉還以降であれば、対処する手段も在りましょう。
ですが、今の段階ではワタクシがお力になれることは、何も無い・・・。


「・・・取り急ぎ、香月博士に報告を・・・。」

「は。」


ワタクシは、ただ瞑目し、先を案ずることしか出来ませんでした。


Sideout




Side 唯依


夕食後、御子神少佐を捜す。
何となく、だが、思ったところ、戦術機ハンガーに行ったらそこに居た。


「あれ? 珍しい。ここに用事?」


恐らく、A-01部隊の乗機と思われる不知火をチェックしていた少佐。
既に一般整備は終わっている筈だが・・・。


「いえ、・・・少佐のお時間が在れば、昨日の続きをお願いしたいと思いまして・・・」

「ん、ああ、そうっだったな。
OK、これだけ換装するから待ってて。」

「! 少佐が為さるんですか?!」

「ああ。大した手間ではないし。
皆今XFJ Evolution4の大詰めにさしかかっているからな。
邪魔はしたくない。
それに俺が整備兵呼び出して換装させると、見落としと言うことで整備長まで責任が行きかねない。
これは本来の規定で言えばそもそも見落としではないからな。」


手慣れた動作で装甲を外すと、内部にあった電荷収縮炭素繊維索の一つを外し、同じ部品を取り付ける。


「これ、なんだか解るか?」


外した部品をみせられる。


「? ・・!! 内部捻糸欠損!?」

「そ。・・・コイツの衛士は動きは良いんだがちょっと癖があって、関節を捩り気味なんで、危惧してた。」


このまま気付かなければ、一部が捻れた炭素索は周囲に拡大し、遂に動作中に最悪断裂、転倒に繋がる。
訓練中なら怪我位で澄むが、BETA相手の場合は死に直結しかねない。


「明日、ちょっと名前借りるぞ。俺の立場で言っちゃ角が立つからな。」


(そして実際、開発時に経験のあった篁が見つけてくれた、とし、現在の規定では検査できず見落とす可能性が高いことから、早急に検査手法と規定を見直すように指示が出た。)






昨日と同じ、武御雷に乗って教導を受ける。


『篁の分割入力は、やっぱりどこか固いな・・・。』

「駄目ですか・・?」

『いや、駄目じゃないし、基本だし、実際早いんだから良いんだが・・・どっちかと言うと、今良いモノが、更に良くなる余地が在る・・・。』

「お堅い、って言われました。」

『まあそれは個性だろうから好みの問題だろ・・・、じゃあ篁ちょっと降りてきて。』

「・・・あ、はい。」


私が機体を降りると、彼はすでに降りて待っていた。


「・・・・・」


まじまじと見つめられる。

そう言えば斯衛山吹とはいえ、強化装備は色しか違わない。
すなわち胸から下腹まで黒く着色はしているが、ほぼシースルーに近い。
それを改めてあからさまに見られて真っ赤になる。

斯く言う私も、つい少佐の細身ながらしなやかな大胸筋や、8つに割れた腹筋をチェックしていたりする。
・・・衛士として完成されてた様な、筋肉。
そう言えば、白銀少佐に比べ、御子神少佐の武勇伝はあまり聞かない。
記録に残っているシミュレーションデータもプラチナ・コードしか知らない。
それも地味で作業に徹していたりする。


「・・・っと、不躾だったな、失礼。
ソフトに体格登録させてもらった。
・・・・強化装備、ちょっと触るけどいいかな?」

「え、あ、はい」


すっと遠慮無く手を伸ばす。
項辺りの、ユニットに何か取り付け、弄っているのだが、微妙に気恥ずかしい。


「・・・これか。
一瞬ぴりっとするけど我慢してくれ。」


身体の中を微かな電気が流れ、私はぴくんと反応した。


「・・・OK、本当は着替えて貰うのが妥当だが、手間だったんで、そのまま遣らせて貰った。
違和感はないかな?」

「・・・はい、大丈夫です。」

「じゃ、戦術機乗って。」

「はい・・・」


今一、意味がわからなかった。


『じゃあ、まずコンソールにRSProjection、って入力して。』

「はい。・・・!!! 少佐、これ、なんですか?」


途端に視界が一瞬ぶれ、感覚が広がる。
いや、視界は網膜プロジェクションが全視界に拡大しただけだが、もともとその景色は戦術機のメインカメラからのものだ。
しかし、今はサブカメラさえがオーバーラップし、背後まで認識できる。
そして、操作スティックを握る以外に、腕や足がある。


『Real Sence Projection・・・つまり戦術機の操作系を、強化装備のスキンを介して擬似的な肉体として認識させた。
教導の為のシステムとして検討していたんだが、まあ折角だからサンプルになってくれ。

網膜投影の拡張だと思ってくれて構わない。
さっき強化装備に付加したのは、バイタル情報のインターフェースに極微量のバッフワイト素子を介して感覚の入出力を行う部分を追加した。
今は、戦術機とのリンク感覚を薄くしているから、それほど違和感ないと思うが気持ち悪くないか?』

「・・・吃驚しましたが、大丈夫です。」

『無理はしなくていいが、慣れたらそれを動かしてごらん。
戦術機がどんな物か、認識できるから。』

「! 操作できるのですか?!」

『自分の腕ではなく、感覚の中の戦術機の腕を動かすんだ。』


二重化した感覚は、暫く慣れが必要だった。
だが、それに慣れてしまえば、戦術機を手足のように動かすことが可能になった。
正に戦術機であやとりが出来るのだ。


「・・・・これ、凄いです!! XM3より自由に動けます。」

『だろうねえ。神経直結の完全エミュレータだからね。』

「・・・なぜこのOSを使わないんですか?」

『弱いから。』

「え?」

『・・・そうだな。
篁や紅蓮大将みたいな、剣の達人ならそこそこ戦えるだろうな。
でも殆どの衛士は本格的な格闘技なんか出来ない。
エミュレートする以上、搭乗者の動ける範囲でしか動けない。』

「あ・・・。」

『XM3は違うよ。
パターン化することで、動作だけなら凄腕の人の動作を再現することができる。
つまり格闘の素人でも、一定以上の強さを有することが出来るわけだ。
極めても人の動き以上の機動ができないRSPに対し、XM3は反射速度を凌駕した域まで達することができる。
汎用の戦闘OSとして、優秀なのはXM3だろ?』

「じゃあ、なぜこれを?」

『言ったジャン。
教導の為、さ。
人の動きと戦術機の動きの差を明確に理解して貰うため。

・・・さっき篁の動きは、基本だと言ったよな、基本を極めている、と。
ただ、そこにはもう一つの意味もあって、篁は動きの範囲が人の枠にはまって居るんだ。
つまり、戦術機の機動を無理矢理人の枠に押し込んでいる。

昨日、高木主任が言ったのもそれだ。
戦術機の可動範囲が、人のそれと同じ範囲しか動いていない。
主任はフレームの摩耗度合いからそれを見抜いた。
本来戦術機にはもっと自由度があるのに、そこを使っていない。
それ故に、勿体ない、と称した。』

「・・・・。」

『コレばっかりは純粋に感覚の領域なので、いくら言葉で説明しても理解できない。
これは、そう言った違いを理解して貰うためのプログラム。
他の奴の教導にも使えるかどうか、取り敢えずサンプルとして試して貰いたかったんだけどな。
・・・バッフワイトが必要だったんで、1日待たせたけど。』

「あ・・・」

『確かに篁の動きはルーキーには取っつきやすい。
人の身体の動きそのままだから。
けれど、そこから徐々に拡げていくことも重要。
篁は、元の機動スペックがなまじ高かった故に、人の動きのままで、全て何とかなってしまっていた。
なので、その領域に拡張することもなかった。
けれど篁にも、その枠を乗り越えて欲しいのさ。』



目から鱗とはこのことか。

感覚が掴みきれなかった私が初めて実感した“戦術機”。
それは、決して人ではないのだ。
飽くまで人体を模したもの。
間接の動き、可動範囲、力の入れ方から、重心、感性、体捌きまで全て違うのだ。
解っていると思っていたが、感覚が理解していなかった。

例えば、器用な衛士は自分の指示と戦術機の反応を感じて、少しずつ修正し、誤差を修正していく。
機動スペックが高かった故に対処されず、常に纏う違和感として残り続けた。
その違いは、十分強いが故に誰にも指摘されず、言葉にしても理解できず、そして私の中にだけわだかまり続けた感覚。

それが。
戦術機のセンサーと駆動系を直接体感することで、初めて理解できたのだ。



自分がした挙動を、戦術機の挙動で再現してごらん、と言われ、私が自分の機動を、おおよそ戦術機で再現したとき、改めて疑問が湧いた。
確かに、このOSは弱い。
動作で言えば、パターン化した操作や、先行入力のほうが早いのだ。
それが、自分でも判る。


「・・・こんな操作が機動の向上に繋がるのですか?」

『ん、今の機動はXM3でも並行認識して機動細分化と最適化、そしてコンボ登録を掛けている。
じゃあ、XM3に戻って機動してみな。』

「・・・はい!」



大刀を振るう山吹の武御雷。
その動きは以前にも増して、迅速でダイナミック。
今までの人の型にはめた動きとは次元を異にする。


『・・・羽化し[バケ]た、な。
流石篁は、基本を極めてるからな。
感覚さえ掴めば応用は自在に拡がること・・・』

「・・・・・。」


自分でも、判る。
人という枠に囚われていた機動が、解放された。
動きが、疾さが、違う!

・・・これが。
これが戦術機の、武御雷の本領!

人では無いのだ。
自分の身体ではないのだ。

力の入れ方、可動範囲、慣性の大きさ、バランス、重心移動。
はじめて自分が行いたい機動を戦術機の感覚で動かした。

初めはぎこちなかったが、感覚で直せるのだから、直に再現できた。

そしてXM3に戻った今、最速に成るように細かく細分化されたコンボとして、登録されている。
初期の機動から、選択しうるコンボが現れる。
戦術機の動きをモニターしながら、タイミングや間をモジュレーションで調整する。



凄い・・・。

自分でも解らなかった停滞の理由を僅かな時間で看破し、それを解決する手段を短期間で作り上げ、自らが気付くように導く。


『・・・・OK、・・今日はここまでにしよう。』

「はい。・・・・あ、ありがとう・・ございます!!」


・・・・万感を込めて。




呼び出しのコールが入ったのは、その時だった。


Sideout




Side 武


「・・・これが米国側の回答って言うわけ?」

「・・・・残念ながら。」

B19フロア、夕呼先生の執務室。
今、ここに居るのは、先生と彼方、俺とそして鎧衣課長。

もたらされたのは、XG-70bの接収に関する米国側の条件だった。


00ユニットの実在証明。
簡単に言えば、米国に来てXG-70bを制御して見せろ、という内容だった。


もともと米国の第4計画協力派や日本国政府と、米国政府との間で交わされた取り決めは、00ユニットの完成を条件に譲渡する、という内容だけだった。

オレの経験した前の世界では、調整中の純夏を紹介しただけで、程なく話は纏まった筈だった。

だが、今回は前回に比べ1ヶ月以上早い。

そう順調だったのだ。余りにも。
・・・それがこんな所に落とし穴があろうとは。


「・・・・支配因果律、ですかね・・。」

「・・・そうでしょうね。
確かにBETAには何の影響も与えていないけど、アンタ達の復帰は余りにも政局周囲に影響を与えすぎたわ。
まあ、想定内ではあるけれど、タイミングは不味いわね。」

「・・・・。」


明日からは繰り上げた207Bの総合戦技演習である。
既に戦術機シミュレーションも実施している今、シミュレーションによる試験も打診されたのだが、城内省からクレームが付いた。
手心が加わる可能性が高い、と。
実際城内省でも冥夜の扱いは苦慮しているらしい。冥夜の存在を知っている上層部でも、さっさと衛士任官させて切ってしまえという派閥と、後方配備とし存在を隠したい派閥で綱引きが行われている。
前者は出来れば将来の禍根になりかねない冥夜の存在自体を消したい派閥だから、厳しい総合戦技演習で死亡事故でも起きてくれれば一番ありがたい。
そして後者も簡単に通って貰っても困る、ということで、実地による演習を避けることが出来なかった。

なので、部隊員となっている純夏は勿論、まりもちゃんや、参加はしないが内緒の護衛としてオレも随伴することが決まっている。月詠さんたちが随伴できない為だ。
まあ、先生が付いてくるのは、お約束。
00ユニットの製作に一段落付いた為のバカンスだが。

11日の侵攻に備えるためにも、今更その日程は変更出来ない。


「・・・多分俺の復帰に危惧した九條あたりが、第5計画派に進言したんだろ。」

「・・・その可能性が一番高いわね。
此処じゃそうそう手出しできないから、国外に誘い出して、って見え見えよね。」


そう。

そのXG-70bを渡すもう一つの代替条件として、今回新たに提示されたのが、プロミネンス計画に送りつけたシミュレーションデータ、それをもたらしたOSの開示、だったのだ。
しかも、技術的に説明できる開発者付きで。

これはどうやらXG-70bを開発した殆どのメーカーを接収しているボーニングからの提案らしい。
それが出来れば、無条件でシッピングするという。


テロによるアラスカ基地の損害で頓挫しかかっているプロミネンス計画。
日本のXFJ計画は一抜けたが、フェニックス計画を推進しているボーニングとしては、まだ退けないものがある。
その中で提示されたデータは、かなりの衝撃を与えたのだろう。
第5計画の推進派でありながら、戦術機ではF-22でロックウィード・マーディンに水をあけられた形の戦術機部門でも、主導権を取り戻したいボーニングにしてみれば、看過できない内容だったということだ。


「それに関しては、巌谷中佐からも一つ相談がきているわ。
帝国国防省の防衛大綱諮問会議で、XFJ計画の完了が保留されたそうよ。
プロミネンス計画脱退は認めたモノの、XFJの開発要件である他国の第三世代機と同等以上の機動性及び運動性、つまりF-22に対しての優位性を示してない、ってゴネたバカがいるらしいわ。
これも本土防衛軍らしいから、九條絡みね。
テロでもF-22の部隊は損害なく健在、対してXFJはBETA相手に損害を受けている。
テロ後の評価試験でSu-47は下したけど、相手はステルスではない。
ブルーフラッグの続きは出来なくても、F-22部隊戦はやれって事みたいね。」

「・・・それもボーニングの思惑がらみか。」

「でしょうね。
OSは開示させて、おいしいところは取り、後は第4計画を潰すために、第5計画と九條の意向で事故にでも見せかけて彼方を亡き者にする。
ついでにXFJに土を付けて自分達のフェニックス計画による中古改修機を大量に帝国に配備させる。
弱った獲物は徹底的に貪るのが奴らのやり方よ。」

「・・・・・。」

「選択肢はいくつかあるわ。
まずは、XG-70が本当に要るか、ってトコね。」

「・・・無くてもどうにかなる可能性はあるが、因果律量子論的には、在った方がいいだろう。」

「・・・そうね、アタシもそう思うわ。
そうなると、今は引き延ばして殿下の復権を待つって手もある。」

「・・・余計な負荷は架けたくない。」

「・・・・過保護ね、彼方。」

「夕呼にも十分甘いつもりだぜ。
・・・・・クリュグ、ローラン・ペリエ、ルイ・ロデレール。バカンスのお供に冷やしてあるんだが。」

「!!・・・・判ったわ。
・・・・貴方がその気なら止めない。」

「そうなれば、00ユニット[かがみ]を米国に赴かせるなど問題外。
まあ、武も夕呼も居ない間に、丁度いいからちょっとアラスカで70ポンド級キングサーモンでも釣ってくるさ。」

「・・・・」

「・・・明らかに罠よ?」

「それが?
この程度の支配因果律抵抗など想定内、ここで退いたら益々泥沼に嵌るだろう?」

「・・・・・・そうね。」

「その代わり、今夜組み上がるXFJ Evolution4と“EMLC-01X”、持って行くぜ。
どうせユーコンで糸曳いているのはハイネマンだろう? 
・・・俺は御子神[ネイティヴ]ほど気長でも優しくもないんでな。

ああ―――あと鎧衣課長、ちょっと相談がある。
ユーコンでメカニック[●●●●●]、調達できるか?」

「―――ウチ[●●]の “メカニック”ですか?
出来ないことはないですが・・・現地で整備用のツール[●●●●●●●]が調達出来るか微妙です。」

「“TOOL”はこっちで用意する。」

「・・・判りました。準備しましょう。」



彼方が珍しく獰猛な、漆黒の気を纏った。



・・・・あーあ、可哀想に。
本気にさせちゃったよ。


Sideout



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