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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/03 20:59
'12,11,15 upload
'12,11,17 一部修正
'12,12,12 誤字修正
'15,02,03 齟齬修正


Side 唯依


午後になって基地内の案内を行ってくれたのも御子神少佐だった。

ハイヴ跡地に建設された横浜基地は、BETAの開けた広大な地下空間の一部を利用している。
機密エリアの指定も覚えたが、戦術機や装備を開発する関係上、ハンガーについては、パスが発行された。
出向ではあるが、私の所属はA-00戦術機概念実証試験部隊。この横浜基地で唯一の開発試験部隊であり、その存在すら機密レベルはトップシークレット。流石にB-19以下の機密研究エリアへのパスは付かなかったが、御子神少佐や白銀少佐が居れば問題なく入れる。更には70番ハンガーへのパスは貰う事が出来た。
この広大な空間を有するハンガーは、ハイヴの主広間跡に建設されたらしい。

そこでは整備兵にも紹介された。
A-00、A-01等機密部隊専属のメカニックは、当然高い資質を要求されていた。
OSがXM3に換装されたことで、メンテ作業そのものは楽になっていたらしい。しかし、先週末頃から70番ハンガーに搬入され始めた多数の部品によって、再び作業の密度が上がったという。

その第1弾が、午前中に見た試作機“不知火・改”だったと聞いた。

彼らの“成果”を話す表情が明るい。
ノリがユーコンと近いのは、偶然なのか、もともと整備兵はそう云う資質が高いのか。

勿論今日の午前中に行われた機動試験は、此処でもモニタリングされ、そのぶっ飛んだ性能が、それを組み上げた彼らにも希望を齎したのは確かなのだ。

XFJ計画Evolution4関連の組立・整備は、全てこの最重要機密区画で行われる。
カタチとしては帝国軍兵器廠からの極秘委託で国連横浜基地の第4計画が請け負った、と言う事になる。
今後は、その部品管理や運用試験、そのスケジュール調整も、私が担当することとなる。


予備機の跳躍ユニット換装。
リアクター主機の組み立てと、その換装。
それに伴う、燃料系配管系・燃料電池系の撤去や、大電流を流すCNTケーブルを接続する作業。

基本はまだ試作であり、ライセンス生産と成っていないため、部品をばらしてメーカーに試作を依頼し、ここのハンガーで組み立てる。
最重要部品、つまりG- リアクターについては、強化装備にバッテリーと倍力機構を取り付けた装着型のパワードスーツを着込み、御子神少佐本人がすべて遣っていたという。


跳躍ユニットへの組み込みは、推進器周りを担当する北見主任と顔突き合わせて貫徹したとか。
元々主機周りのメカニックとして、孤高とも言える腕を有する北見主任についていける整備兵自体が僅かしか居ない。精緻な技術と兵器としての信頼性。その矛盾する事柄を成立させるのは、最後の最後は人の腕だ。
如何に設計者が良い設計をしても、機械寸法がそれをファールしたら、望んだ性能は実現しない。
そして最後はそれを組み合わせるメカニック次第で設計は活きも死にもする。
サブミクロン単位でそれらを擦り合わせる“感覚”を有しているのが超一流のメカニックと呼ばれる“職人”だった。
但し、それ故に偏屈な人も多いと聞く。腕に自信がある為に階級などお飾り程度にしか思っていないのだ。
技術少佐という階級ではあるが、実質一週間前に帰任したばかりの若僧が、北見主任と対等に遣れること自体が整備部隊では既に驚愕だったらしい。

その内容も、見せられて驚いた。

元々跳躍ユニットの推進器はジェット推進を利用しているため、ターボプロップに依る大気圧縮を行っている。つまり、それなりに大きな質量の回転体が存在している。
回転体には、その回転軸を傾けようとする力に対し、コリオリ力が掛かることが知られている。
航空機などの機動ではそれほど問題に成る力ではないのだが、瞬時に姿勢を変える戦術機に於いては、咄嗟の機動で推進ユニットが暴れたり、想定外の挙動をするなど弊害が存在した。
戦術機全体の機動に関しては、左右の跳躍ユニットの軸回転方向を逆転させるなどして対応しているが、主機の方向そのものを個別に制御する場合などは、発生するコリオリ力が抑制しきれていなかったのも事実である。
そして今回は、XM3による3次元高機動。
白銀少佐の機動でログを整理していても、今まで騎乗していた不知火では、このコリオリ力の対処がネックに成っている箇所も散見されていた。
弐型開発中の推進器暴れも、この所為かも知れないと、今更ながらに思う。

それを、今回の跳躍ユニットに於いては、膨大な電力を背景にターボファンそのものを電動化し、且つコリオリ力が発生しないよう、同軸同心二重ファンを搭載していたのである。
勿論ファンそのものは初物で、試作を担当したFHIはその設計に対し目を剥いて飛びつき、異例の速さで完成させ、もうはやそのライセンス生産のオファーが来ているらしい。
二重化部分は差動機構を組み込んだ機械式であり、現行のジェット推進器にも搭載可能という事なのだから当然か。
航空機なら全く問題にならない力であるため、誰も対応などしてこなかった。だが、戦術機の跳躍ユニットとなり、その噴射方向も瞬時に変える機動において、その対処は不可欠なのだ。

そして、その初物の組み立て・擦り合わせを行ったのが北見主任と言うことだ。
整備中の2機目用、見せてもらったのは回転数の同調機構まで組み込んだ巨大なターボプロップファン。私の片手で触れると、フッと抵抗なくファンが回り、差動回転で逆に回る外周ファンまでが暫く回り続けたのを見たときには、その精緻な“組み”に、背筋がゾクゾクして感動すらしてしまった。
米国で納品されたプラッツ&ウィットニーのターボプロップも回したことはあるが、こんなに軽く動くものではなかった。


既に明日導入される6機の弐型についても既に換装作業のスケジュールが組まれている。
元は富士に搬入される分5機を回す筈だったが、主機、跳躍ユニットはどうせ組み替える事から、完品はそのまま富士に納品し、フレームのみの完品を後のロットから引き抜いた。

既に“不知火改”で経験が在るため、2機先行と言う形で明日夜には組み上がるとの事だった。


そのフレームには何点かの強化部品を除いて、基本は大きな変更はない。
勿論、こちらもフレーム担当の高木主任と今後の変更は検討しているらしい。
この人も気難しいらしく、先ほど搬入された山吹の武御雷はA-01部隊用の機密ハンガーに置かれることとなったのだが、早速機体チェックを行った彼は、チラリと私を一瞥しただけだった。何か呟いた気がしたが、聞き取れなかった。

基本大きな外観の変更はしないが、電磁伸縮炭素帯の締結方法や位置の変更、各種センサー位置の変更等、XM3に併せた変更が予定されていて、こちらは検討しながら残りの4機に施される。
これら6機の試験運用結果を以て、次ロットで11月末に納入される12機に反映される事となった。

そう・・・、組み立ては終わる。
しかし私の仕事である評価試験はこれからなのだ。





そう思いつつ部隊執務室で、まず理解してねと渡された技術資料や各パーツの仕様書とにらめっこだった。
主機と、推進器の構成や原理の理解に努める。


・・・というか。

既存の戦術機の基本構造は、電気で動く電磁伸縮炭素帯で構成された人型機械、であり、それを動かす為のバッテリーと燃料が重量の大部分を占める。
跳躍ユニットはそれとは別に付き、ジェット+ロケット技術のハイブリットで、戦術機を垂直上昇させるほどの推力を持つが、推進剤の消費が激しく、長時間運用が出来ない代物だった。
現在最強と見なされているF-22でも、ロケット推進による全力機動は8分と言われていた。

今回、不知火弐型に換装されるのは、リアクタ主機と跳躍ユニット。
その中身は、マイクロML機関を応用したG-リアクターとMPDアークジェット推進器。
つまり、燃料電池もバッテリーも全廃して超小型超高効率の発電機を設置し、その膨大な電力で電磁伸縮炭素帯は勿論、跳躍ユニットや、肩部サブスラスターまで賄ってしまおう、という発想。
これにより、燃料・バッテリーという稼働重量が大幅に削減され、フレーム内部空間がまるまる空いたことになる。今後の拡張性を考えるなら大きなマージンも得たことに成る。

その結果齎される戦闘継続性は、F-22の100倍近い。
今後、装備にも膨大な電力を食うことになるので、御子神少佐はその半分、とは言うが、それだって破格。
常識を遥か後方に置き去りにした仕様だった。


尤も、是だけの技術が在るならば、新規に作らないのですか、と訊いた私に、今はその余裕がない、との答えをしたのも御子神少佐だった。
確かに今から新型を作っても、その設計から試作部品が揃い、組み立てて試作機がロールアウトまで、短くても1年を要する。
そして既存の戦術機ですら激しい損耗に生産が追いつかない現状、新型の開発など設備・資源共に余裕など何処にもないのだ。巌谷中佐がXFJ計画にボーニングの手を借りざるを得なかったのも、技術やコストの他に、生産と開発で汲々とする国内メーカーの事情もあるのだろう。

そう、この横浜基地が目指すのは、年内の喀什攻略。その為のEvolution4。


その根幹をなすのが、G-リアクター・・・・マイクロML機関を応用した素粒子変換技術。
G-11さえあれば、膨大なエネルギーが得られ、且つ戦術機にすら搭載可能なサイズ。

“破滅級の技術”、と御子神少佐は表現した。
使い方によっては正しく人類を滅ぼしかねない技術。
ハイヴ戦を想定したその性能は正に破格。
戦術機や、装備の在り方すら変えてしまいそうなインパクトを有していた。


その技術的にもBETA戦略的にも、今人類の突端に居る・・・。


私は身震いすると共に、再度気を引き締めざるを得なかった。





そして、その技術資料に記されたもうひとつの装備。

EMLC-01X。

過去に試製99型電磁投射砲 EML-99Xの開発に携わっていた私としては、唖然とするしか無かった。


もともとEML-99Xはハイヴ攻略、特に突入戦を想定し、旅団・師団規模のBETA群の面制圧を可能とする事を目的とした電磁投射式速射機関砲(レールガン)であった。
磁力が発生させるローレンツ力によって砲弾を飛ばす電磁投射砲は理論的には古くから知られており、実験的なレールガンも多数存在しているが。レールの耐久性と大量の電力確保が、携行用の装備として確保できず、軍事兵器への転用が為されていなかった。
帝国軍兵器廠は、此処国連横浜基地より提供されたブラックボックスを得て、初めて試作機を完成させたのである。
火薬に依らない加速機構のため、エネルギー効率が良く、初速も連射速度も向上し、余計な排莢機構も必要ない利点を有していた。
その一方で、ローレンツ力の発生のため、弾体に電流を通す必要があり、99型では砲筒内部に設置した2本の金属レールと、砲弾を包んだアーマチュア(導電性稼働接片)を接触させることにより通電を可能としていた。
高速で発射される弾体と接触する金属レールの発熱や摩耗は激しく、また化学レーザーを用いた発電部も加熱を防ぐため、冷却材循環システムを必要とする。
ユーコンの実戦では、確かに師団規模に近いBETAを驚異的な短時間で殲滅したが、その機能を維持することは出来なかった。
その度に砲身カートリッジを交換したとしても、それでも他の損耗部品の劣化から100%の性能維持が困難なほど継戦能力に乏しい欠陥兵器であった。



それを根本から覆してしまったのが此処に記された、試製01型36mm電磁投射砲筒:EMLC-01Xだった。

それは、87式突撃砲の先端に装備する放熱ガイドの付いたサプレッサ・チャンバーの様な形状をしていた。
つまり、完全に突撃砲への後付装備と成っているのである。組み付け機構によって、36mm砲なら何でも付けることが出来るだろう。
これにより、弾体の発射機構や連射機能を、全て既存の、信頼在る[●●●●]突撃砲に委ねていた。

一方で、チャンバー内には、金属レールの代わりに、入射口にブラシが配されたソリッドCNT(カーボンナノチューブ)のレールが設置されていた。
銅の1,000倍以上の高電流密度耐性を有し、鋼鉄の20倍の強度でありながら、入射時は細長いブラシが傾倒することにより、極めて優れた耐摩擦性能を有しながら接触を確保し、流される大電流で弾体後部を一部融解、プラズマアーマチャーを形成する。
以降はソリッドCNTによりプラズマアーマチャーの通電が確保され、弾体を加速する。
摩擦係数が低い為発熱自体が少ないが、その発熱さえも銅の10倍に達する高熱伝導特性により、筐体の空冷で十分に排熱される。

レールと絶縁された直角方向には、やはり磁場を発生させる多重コイルがCNTで形成されており、
通常の発射により高速で筒内に飛び込んだ砲弾は、初速に上乗せされる形でローレンツ力により、更に加速されることとなる。
弾体は電気を通す伝導体であれば何でもよく、今の劣化ウラン弾も可能で、その重量であっても秒速20km/sまで加速する、という性能を持っていた。

そして、その膨大な電力は、全て機体から供給される。故に複雑な発電機構も、冷却機構も必要ない。
極めてシンプルで、可動部や硬い褶動部がないことから、殆ど故障の心配もなく、万が一故障しても36mm砲としては使用できる。機体からの印加電力供給も、スイッチによりオンオフも出来るから、装備していても状況によって即時使い分けも可能。
機体が稼働する限り供給される電力は、所持する36mmの装弾を全て撃っても余りある。
世界共通規格であり、装弾数携行数にも余裕ある36mmをつかい、既存の装備をそのまま利用でき、大幅な威力向上が認められる装備は汎用性の点でも申し分無い。

もはや、絶句するしか無かった。



そして。

“破滅級技術”・・・・。その言語の意味を、改めて垣間見た気がした。

しかも一方で、御子神少佐はその技術に枷を嵌めたのだ。
この攻撃能力が無秩序に拡散しないように。

つまり、この攻撃能力を有するのは、G-コアを持つ者だけ、という枷を・・・。





ふぅ、と息を付く。

・・・凄いな、と純粋に思う。


そう、私は憧れていたのだ。

あの、プラチナ・コード:ヴォールク完全攻略の映像を見せられてから。



最初は白銀少佐の撤退戦に於けるXM3の性能に釘付けになった。
紅蓮閣下を不知火で落とす、その機動に自分は何をしてきたんだろう、と言う思いしか存在しなかったし、自省が高じて一種自閉に陥ったのも確かだ。


しかし、そこから立ち戻り、見返してみてみれば、彼らの為した成果は素晴らしい物なのだ。
昨日、此処に出向するに当たり、叔父様や隊の皆と、再度そのデータを詳細に検討した。

故にXM3の性能をフルに使いこなす、白銀少佐に目が向いた。

英雄の資質、と言うのだろうか。
華麗で、派手で、人目を惹いた。

だが、続いて見たハイヴ攻略戦は正しく驚異以外の何者でもなかった。

最初眼を惹くのは、やはり白銀少佐の突破力。
勿論、それ無くしてハイヴ攻略はあり得ない。

しかし、生還とそれに続く大殲滅を成し遂げたのは、御子神少佐の戦術に他ならない。
突破を白銀少佐に任せ、それに追随しているだけに見えた御子神少佐がどれだけ凄いことをしていたのか。

私はその動きを、後から総て解析するまで気がつかなかった。


最初は生還のために推進剤を極力抑制し、追随する。
それ自体の技量も凄いとは思うが、結局は白銀少佐の突破力に頼る帰還。
往路のルート取りも拙策。
BETA殲滅に至っては劣悪。

悪い印象しかなかった。

解説がない状態で見せられたため、S-11設置によるハイヴの崩落すら半ば偶然と思っていた。
そんな印象しか無かったし、あの映像を知る周囲の評価もそんなものだった。


しかし、詳細な解析で明らかになったのは、往路からのルート選択、反応炉破壊後のBETA撤退を見越した的確な足止め、たった2発での反応炉完全破壊、ハイヴ地下構造への炸薬設置。
何よりも強固なハイヴを崩落させる上部モニュメント質量を利用した爆破攻略と気化爆弾の効果的運用。

適度な地盤を上層から崩落することで、下層に対する加重を増し、その連鎖崩落で広範囲の最下層まで達する崩落を可能にした。
形成炸薬は、上部加重を分散させている網目構造を断ち切ることで、崩落の方向を決めるためのものだった。
これにより、生じた力は分散することなく大崩落に繋がった。


往路での何の意味もないと思われた遠回りが周辺BETAを陽動し、行動制限を掛けた大型BETAで狭窄路を塞ぐ。
その結果総BETA殲滅数は70,000にも達した。

それは、無駄と思われたルート取り、そして回り込むような陽動でいつの間にか集められたBETAが反応炉に到達する時間、反応炉の反対側にいた残存BETAが主縦坑に達する撤退の時間、それら全てを考慮に入れた奇跡のタイミング、正しくタイム・トラップ[●●●●●●●●]が炸裂した瞬間なのだ。

反応炉の爆破、モニュメントの崩落、そのタイミングが1分ずれたら、殲滅数は50,000台に下がる、そんなBETAの行動予測シミュレーション結果すら出た。
まさに最大数のBETAを殲滅する瞬間を狙い澄ました事前準備と爆破であった。


それを、あの限られた時間、たった2機でやり遂げたのだ。


この解析を巌谷中佐と隊の皆で行った時、周囲の技官含めまさに戦慄した。

神算鬼謀とか深謀遠慮とかのレベルではない。

それを、事も無げに実行するエレメント。


ハイヴ戦によるBETAの脅威は、反応炉破壊そのものではない。
それも過日質疑の中から知らされた。

もちろん、それ自体もまだ一度も達成されていないのだが、たとえば白銀少佐級の衛士が居れば特攻覚悟でなら達成できるだろう。

だが最も困難なのは、反応炉を喪う事による、残存BETAの殲滅。
全方向に向かうBETAの氾濫は、生半可な包囲網など瞬く間に食い破る。
ハイヴの突入がなるべくBETAとの接触を避け、反応炉の破壊を優先するものでありながら、最終的には大量のBETA殲滅を求められる矛盾。

今までの戦術は、反応炉破壊にのみ特化し、それ以降に発生する二次災害は適宜対処、という状態だった。

その矛盾する双方を満たしたのが、御子神少佐の示した戦術だった。


彼の動きを解析し、それを知ったとき、私は背筋が震えた。
感動で、暫く粟だった肌が収まらなかった。

技術者として。
衛士として。
そして軍師として。

その理想型が其処に存在していた。


故に憧憬した。

英雄たる白銀少佐ではなく、見かけ上その補佐に徹する御子神少佐に。


それは、父様や叔父様に憧れ、技術将校たらんとする私の理想の姿でもあった。






初日の作業を終えて、機密エリア付きの食堂で夕食を食べようとしていたら、御子神少佐がPXへ誘ってくれた。
横浜基地の食堂は、どこも比較的レベルが高いが、そこのPXにはそのオリジナルレシピの作成者である伝説の料理人がいると言う。

そして定食を口にして驚いた。

・・・・合成食材でありながら此処までの味に仕上げるとは!!
私の少し自負のあった料理人魂に火が付いた。



後日、私が志願して京塚のおばちゃんに弟子入りしたのは別の話である。



「で、だ。この後どうする?」

「この後ですか?」

「基本は自由時間だからな。
 1・初日でつかれたから、寝る
 2・技術理解の続きをやる
 3・A-01と斯衛軍第19独立警備小隊に混ざり、武の教導をうける
 4・俺の個人教導をうける
選択肢は、こんなもんか」

「!! 御子神少佐が教導して下さるんですか?」

「あぁ。篁の武御雷も、既にXM3インストールされているし、まだ慣らしも兼ねて必要だろ?
そこにいきなり月詠中尉とかと一緒に武じゃキツイかな、と」

「・・・4で、お願いします。」

「・・了解。」





演習場に私は山吹の武御雷で立ち、他に“不知火改”の姿があった。

シミュレータはA-01や第19独立警備小隊で占められている為、先日の戦術機換装シミュレータで行ってもよかったのだが、実機感覚を持つために、空いていた演習場にでた。

“不知火改”は換装性能試験用に試作された機体で、午前中に白銀少佐が振り回した機体だ。

その機体に御子神少佐が乗っている。




3日前、初めて操作したXM3は正しく驚愕だった。

最初こそ遊びの無さに途惑ったが、慣れればそれすらが動作の連係に繋がると解った。


御子神少佐は、白銀少佐の教導を、“感覚的”と表する。

確かに、慣れと圧倒的な挙動の経験により自分の機動を組み立てて行くことを目指す。
実際、それが在ってあの高みに彼は在る。

だが頭の固いと自分でも思っている私は、最初理詰めで解説され、理解した上で確かめていける御子神少佐のやり方が、合っていたのかも知れない。

感覚だけで言えば、仕組みを理解して無くても動かせる。
それは、骨格や筋肉の仕組みを理解しなくても、手足を動かせるのと同じ。

しかし先に理論を知り、仕組みをすることで、どの様に動けばいいのか考え、それに沿って試していく。スキーを習うのに、いきなりゲレンデに出るのと、ボーゲンやターンの仕組みを知り、あるいはスクールに言って習うのとの差である。
所謂運動神経の良い人は、前者でもどうにかなるのだろう。XM3には白銀少佐というお手本があるのだから。

それにしても。

御子神少佐は3次元機動が出来ないわけではなかった。

試しに、と言ってビルを壁を使った三角跳びや、跳躍ユニットを駆使したムーンサルトも遣って見せてくれた。

しかも機体は“不知火改”。
ピーキーな出力を物ともせず、いとも簡単に行う。
組んだのは御子神少佐なのだ。
その繊細な操作は天衣無縫の域だった。

3次元機動を普段しないのは、必要が無いから、と事も無げに言う。
そして地に足が付いていれば主脚動作で立ち回れるが、空中では推進剤が挙動を支えており、使うと途端に燃費がわるくなる、そうだ。

勿論、G-リアクターとMPD推進装置の換装で、今は問題ないらしいが。


兎に角、少佐の教導は、感覚に任せない。
言葉にすることで、何故そうなるのか、を理解できる。
理解できるから、どうすれば良いか、考えられる。




『・・・なるほどね。』

「? 何がナルホドなのですか?」

『ああ、昼間ハンガーで高木主任に会ったとき、言われたコト覚えてる?』

「え? 何か言われたのですか?」

『ああ。・・・曰く、勿体無い、と。』

「・・・勿体無い?」

『あの人はフレームの程度で大凡の衛士の腕を量れるからな。・・・その意味が判ったからナルホド、さ。』

「・・・・それは、何か私に・・・?」

『・・・何となく自分でも限界かんじてるんじゃないか?』

「・・・・・・・・はい、恐らく・・・。」

『まぁ、口で言っても上手く理解できないと思うから、明日にでも用意しておく。
・・・・今日のところは、こんな所だな。』

時間を見ればそろそろ10時。いい時間だ。

「・・・・あ、はい。・・・ありがとうございました。」

網膜投影の中の御子神少佐は、薄く微笑んだだけだった。


Sideout




Side 武


夜の教導を終え、行く宛てなく部隊執務室に逃げ込んでいた。

ノックもなく入ってきた人影にビクリとする。

「?、今夜は初夜じゃ無かったのか?」

「ああ、彼方か。・・・・ちょっとな。」

「早速喧嘩でもしたのか? 犬も喰わないから止めや。明後日は南の島で、明日の夜は厳しいだろうから昨日急ぎ再生してやったのに、肝心の婿がヘタレてたら仕方ないだろ。」

・・・さりげなく気を使う奴。

さっき純夏にも言われた。オレと同じで、オレの持つ元の世界群の分岐世界の純夏の記憶まで持っているのが今の純夏だ。
武ちゃんに振られた世界では、彼方くんと一緒になったこともあるんだよ、と。
当然元の世界での未来の記憶だから、今の彼方が知ることはない。

そして彼方くんも、他の男性も全部知ってて、その上でやっぱりわたしは武ちゃんがいいの、と。


「・・・鑑が207Bで何かしたのか?」

「・・・まあな。冥夜とハグしあったあと、他の娘と拳で語りやがった・・・。」

彼方は盛大に笑い転げた。

“森羅”を付けても純夏は純夏だった。
まりもちゃんのお陰もあって、かなりのチームワークも獲得した207Bだが、勿論前の世界の桜花作戦当時の一体感はない。
総合戦技演習を前に、その蟠りが我慢できなかった純夏は、格闘訓練で喧嘩を吹っ掛けた。
余りにもギリギリな参入に危惧したメンバーの不安払拭の意味も在ったのだろうが。

で、なんと今回の純夏はDMPだけではなく、【宇宙乃雷】や【反重力乃嵐】まで使うのだ!

小さい頃から盆暮れの長い休みは冥夜と一緒に遊び、剣の稽古にもついて行った。
そういえば純夏は紅蓮大将に気に入られ、可愛がってもらっていた。

オレは知らなかったが、その時に剣だけではなく拳闘でも使える奥義を伝授してもらったらしい。

縮地からの正拳突きの様な右ストレート、地を這う様な位置からのコークスクリューアッパー。

怖すぎる・・・。


結果、委員長のリングアウト直前のアドバイスを受け入れた彩峰と相打ちとなり、その実力を認めさせてしまった。

「凄ぇな、鑑、その拳で蟠りをぶち抜いたか!」

そう言ってゲラゲラ笑う彼方。

「・・・・良い嫁さんじゃん。」

「・・・だといいんだけど・・・」

そしてさっき、貸してという部屋の鍵を渡してから言われたのは・・・・。


「さっき冥夜と話したの。

ドクターストップが解除されたから今夜する[●●]って。

抜け駆けっていわれないよう、冥夜さえよければ、一緒にどうかって。

・・・・・待ってるからね、武ちゃん!」




話を聞いた彼方は暫し沈黙。

「・・・そっか、頑張れ武。
しかし初めてが3Pって、スゲェなお前の嫁さん達。

男は黙って遣ればいいってことさ。」

「・・・けどなぁ、まさか純夏がいいだすなんて・・・。」

「よっぽど前の世界の結末がショックだったんだろ。
最初は無意識だろうが、お前をこの世界に呼びこんでから、果てしないループの末に漸く結ばれたのに、自分には既に未来がなく、武を元の世界に戻すには自分が消えなければならない。
その罪滅ぼし戦で、別のループではお前の選んだ他の娘も皆他ならないお前に生きて貰う為に死んだんだ。
好条件で戻れた今、皆で幸せになりたい、って言う思いは、全て知っているだけに、誰よりも強いだろ。」

「・・・・・。」

「・・・武、おまえ理解しているか?」

「え?」

「・・・鑑が力を喪って、鑑が消えるまでの間、つまり前回の桜花作戦でお前が死んでいたら、お前は元の世界にも戻れず、よって元の世界も救われず、この世界にも二度とループすること無く、人類は滅んでいたんだぜ。」

「!!!」

「207Bのお前の嫁さん達は、身命を呈して2つの世界を救ったようなもんだ。
鑑もそれを解っているから、恩も感じ一緒に幸せになりたいって本心から思ってる。
・・・なのにお前だけが未だウジウジしてて、彼女らの気持ちを無碍にするのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・判った。」

純夏の言った通り全ての記憶がある今比較しても純夏が一番なのは間違いないし、純夏もそう思ってくれていることも知った。
それでは残った他の皆を放って置けるのかと言えば出来ないのも確かで、今の時代良い出会いがそうそう在るとも思えない。
全ての女性をなんて事は間違っても言えないが、こんなオレにこころ寄せ、そして未来の記憶においてオレや元の世界まで命がけで護ってくれた彼女たち。
ならば彼方の言うとおり、彼女たちを愛するのはオレの義務であり権利でもあった。




「ところで彼方、この世界、・・・アレとか無いよな?」

「・・おいおい、初めてなんだから無粋なことするなよ。
ちゃんと奥でイってやれ。」

「な!?」

「特に初めての娘は、まだ自分に自信がないから、相手の男が自分で満足してくれたかどうか不安なんだぜ。
中途半端は逆に傷つけるだけだぞ。」

「・・・・無茶言うなよ、今妊娠なんかさせられないだろ?」

「ああ・・・、じゃあ避妊しといてやる。」

「は?」

「BETA由来じゃないよ。内気系の、・・・・謂わば気功に近い。
一時的に精子を不活性化するだけで、効果は約1ヶ月だ。」

「!! んなこと出来るのかよ?!」

「アストラルバディ持ち舐めんなよ。期間内は効果保証するぜ。」

そう言って彼方は掌の上にふわふわ浮く気玉を形成する。
・・・初めて見た。

「・・・ほら、後ろ向け。」

言われるままに後ろを向けば、腰の下あたりに一瞬鍼でも打ち込まれたような感覚があったが、痛みはなく直ぐ消えた。



「・・・・・・彼方。」

・・ムズムズする。なんか勝手に血が集まってくる。

「ん?」

「・・・これ、避妊だけか?」

「ああ、ちょっとだけサービスで“精力増強”の気功も付けといた。いきなりで二人相手だからな。
ヘタレて勃ちませんでした、とかないように。・・・・ちゃんと満足させてやれ。」

ニヤリと笑う彼方に見送られ、オレは隊の執務室を出た。



・・・・そうだな。

オレは皆を護ると決めたんだ。

ならば、迷うことはない。


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