<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[35536] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/03/06 21:07
'12,11,12 upload
'13,01,19 誤字修正
'15,03,06 誤記訂正


Side 唯依


説明内容の機密度が高いと言うことで、部隊執務室ではなく香月副司令の執務室に移動した。
此処に居るのは、香月副司令以下、白銀少佐、御子神少佐と私だけ。
着任したばかりの私は良いのだろうかと、一瞬躊躇したが、既に説明されているんでしょ、アンタの機密開示レベル管理は彼方よ、と気にもされなかった。
御子神少佐は、開発を任せてくださるのだろうか?


その大型モニターに示された今回の不知火に換装された噴射跳躍ユニット。

XFE512-FHI-1500。

Xナンバーが試作機であることを示している。
その構造が示されているが、暫し唖然とするしかなかった。筐体含め、ターボプロップ、コンプレッサ関連は見慣れた感のあるFE-108-FHI系、しかし肝心の推進器は、SE512-FHI-2000の文字。


「・・・・・何なのよ、これ・・・・。SE512-FHI-2000って、外宇宙航行用の電気推進器じゃない! 月や火星の着陸船に搭載されている奴でしょうっ!?」

「そうだよ。藤川島播磨工業(FHI)製の名機。
先週藤播に頼んで、その心臓部を同じFHI製のFE-108-FHI系筐体に押し込んだのが、今回テストした実験推進機XFE512-FHI-1500。
まあ謂わば推進剤にアルゴンを使っているSE512の代わりに、ターボプロップで圧縮した大気を推進剤にしている訳だ。」


SE512-FHI-2000。
宇宙推進用MPDアークジェット(Magnetoplasmadynamic thruster)の名機と呼ばれた推進器。
今通常の不知火に搭載されているFE-108-FHI-200でジェット推進時の最大推力は、240kN(キロニュートン)、概算で24t(トン)程度である。
それは戦闘荷重が18t前後の不知火を、片肺でも十分飛ばせるだけの推進力を有する。
ロケット推進時でも300kN程度だが、その場合はジェット推進に比べレスポンスが向上する。
それが極限までチューンされたType-R用FE-108-FHI-227に至っては、ジェット推進時408kN、ロケット推進時510kNとなる。

しかしSE512-FHI-2000は、宇宙空間での推進時、最大2000kN強を発揮する推進器だった。もともと着陸船用の小型推進器、確かに推進部分のサイズ的には問題はない。
電気推進器故、ジェット・ロケットと2系統ある煩雑な燃料配管系など周辺機構を丸々撤去できる。
代わりに同軸構造に於いて設置される、陰極(カソード)と陽極(アノード)間に数kAの大電流を流すことにより推進剤を電離、一気に高密度のプラズマを生成すると同時に、電極間に流れる放電電流とアンペールの法則によってその電流周りに生み出される磁力との相互作用(ローレンツ力)により、生成したプラズマを強制排気するという推進コンセプトである。
確かにSE512-FHI-2000もFE-108-FHI系も、それぞれに熟成された、謂わば十分に“枯れた”推進器であったが、それを組み合わせたからと言って、すぐ物に成るとも思えないのだが・・・。

スペック表に依れば、推進剤を大気としたことで噴射気体重量が軽くなり、若干の推力低下があるが、それでもその数値は破格、実にType-Rの3.5倍となる1812kNの推力を確保しているのだ。

だが、最大の特徴は最大推力ではなかった。
つまり全て電流により制御される推進器故の、レスポンスと制御性。
それは推進器に燃料をぶち込んで、その燃焼を待たねばならないジェット推進や、ロケット推進に比べ、一桁違うレスポンスを実現していた。


「・・・この推力からは、不知火で3Gの初動を得るには足りない気がするのですが?」

「ああ、機体も軽量化してるからな。
電気推進器にしたことで、ジェット燃料もロケット推進剤も必要ない。
その他も併せて、機動重量を約30%ほど低減出来ている。」

「 !! 」

30%の軽量化!
それはそうだ。電気推進機にしたなら、稼働重量を押し上げる推進剤燃料は必要ない。

「・・・コンプレッサで約10気圧まで圧縮され4kl(キロリッター)のチャンバーに充填された大気を、約0.01秒で電離・亜音速まで加速する。
これで初動に於ける一基当たり1.8MN(メガニュートン)、約180t(トン)の推力が得られる。」

「 !!! 」

両方の推進器で得られる推力は360t。30%軽量化なら推定12tの不知火を30m/s2で加速する。
なるほど30m/s2・・・・ほぼ3Gに相当するわけだ。


「で?・・・・・問題はそこじゃないでしょ。
SE512-FHI-2000はパルス制御でも最大推進時はMW(メガワット)クラスの電力が必要になるのよ?
そんな膨大な電力を、一体何処から引っ張って来るって言うの?」


・・・・そうなのだ。
外宇宙推進では、電磁投射砲と同じ、過酸素水素や水酸化カリウム、塩素ガスの化学反応によって得られる赤外線エネルギー、所謂化学レーザーを変換し電力を発生させてた筈だ。
しかし示されたこの構造には、そのジェネレータが見当たらない。
マグネシウム燃料電池では、到底無理。その燃料電池スタックの在るべき位置には、Geom.React.との略号を持った円盤状の装置が組み込まれている。

だが、既にその機体が現実に動作している。
言葉だけではない暴力的なまでのその加速も、この目にした。

かつてユーコンで、ボーニングの技術者が、如何にも見下したように技術開示した資料。
限定的な開示でありながら、そこに技術の差を感じずに居られなかった私に取っては、その遥か上を翔けていくようなその姿は、ある意味晴れやかにも思えたのだ。

これ程のモノを齎せる叡智が帝国にもある・・・。
契約時に帝国側の技術開示など不要、と取り澄ましたと聞くボーニングの首脳にコレを見せたら、どんな顔をするのだろうか。


「夕呼謹製のブラックボックスからさ。」

「「「 !!!っ 」」」

しかしそれは・・・余りにあっけない答え。

「・・・まあかなり改造はしたけどな。」

「・・・・。」

・・・ジト目で睨む副司令。

「・・・長くなるけど、全部説明する?」

その視線に仕方なさそうな御子神少佐。
・・・・私もお願いしたい。
これだけのモノを見せられて、今更内緒じゃ、生殺し過ぎる!

「・・・・当然。」

「・・・りょーかい。」

御子神少佐は、肩を竦めて見せた。





ソファに座り直す。
仕切り直しにコーヒーを配った後、徐ろに御子神少佐が切り出した。


「で、まず共通認識確認な。・・・篁、G元素について、何処まで知ってる?」

「は? はい、人類未発見、BETA由来の元素と。
米国が撃墜しカナダ・アサバスカから回収したBETA着陸ユニットの残骸を、米国ロスアラモス研究所が解析し、ウィリアム・グレイ博士が発見したため、その名を取ってG元素と呼ばれていると聞き及んでいます。確か発見順に、G-6、G-9、G-11が在ると聞いています。」

「模範解答だな。で、その中のG-11に電磁場を掛けると、G-11はある値を堺に臨界に達し、ラザフォード場と呼ばれる重力場を発生する。
この電磁場のかけ方を工夫して重力制御を可能とする新機関にしたのが79年に完成したムアコック・レヒテ型抗重力機関、というわけだ。
ML機関はそれこそ制御用のコイルの化け物だからそれなりの大きさに成るが、その臨界から更に電磁場を掛けていくと、超臨界に達する。
この時G-11は多重乱数指向重力効果域を形成し、その全質量が喪われるまでその領域を拡大し続ける。この境界面がML即発超臨界反応境界面(次元境界面)であり、そこに接触した全ての質量物をナノレベルまで分解する。・・・これがG弾だ。

・・・此処までは良いよな、武も。」

「・・・ああ。」

「・・・実は、このG弾でG-11の励起や減速に使われているのが同じG元素のG-9だ。」

「 ! 」

「センセに言わせるとトップクラスの機密らしいが、G-9の性質を考えれば直ぐわかる。
G-9は309K、すなわち約35℃以下での超伝導が可能という特徴を持っているから、常温で作動する超小型の超伝導コイルが作れる。
G-11励起用の超伝導コイルと減速用の偏向コイルを組み合わせれば、ミサイル弾頭にも搭載可能なサイズの五次元効果爆弾が構成できるわけだ。

で、それをそのままML機関の機関部に応用して、超小型のML機関を構成したのが試製99型電磁投射砲の機関部にも使われた夕呼謹製のブラックボックス。
99式ではラザフォードフィールドを直線状に展開する事により、暴れやすい加速初期での砲弾の直進性を高めた。ついでに剰余で発生するプラズマ場からMHD発電で膨大な電力を獲得し、必要な磁界発生も補佐することが出来る。」

「 !! それが99式のコアモジュールなのですかっ!?」

「・・・彼方にも一切説明してない筈なんだけど・・・。まったく抜け目ないんだから・・・。
でも、アレには致命的な欠陥が在るわ。実機では使えないわよ?」

「・・・燃費だろ?」

「判ってるみたいね。・・・そうよ。燃料としているG-11の消費量[コスト]が多すぎるの。とてもじゃないけど今保有しているG-11の量で部隊展開なんかしたら、あっという間に枯渇するわ。」

「・・・・オッケ、じゃあそこから行こうか。」

御子神少佐は薄く微笑んだ。




「・・・じゃあ、G元素ってなんなんだっけ? 武?」

「わ、俺? ・・・さっき篁中尉が言ってたジャン? 違うのか?」

「なら、そもそも元素って幾つあるか知ってるか?」

「えと、100?」

「まあ概ね正解。・・・1997年に超ウラン元素と呼ばれる人工元素の呼称が決まるまでは、103個が教科書に載っていた。1997年に決められた当時の元素数は111。尤も、その数そのものはあまり意味はないけどな。
・・・・で、G元素はその周期表には載らない。」

「あ~! そこ何時も疑問だったんだよ。
元素の種類はそれしか無いはずなのに、G元素が“元素”と言われるのはなんでって・・・。」

「周期表の元素番号は極性の数、つまり陽子の数で決まって居るんだ。
G元素の研究は主に、と言うかロスアラモス・ラボだけで行われているが、今はあまり進んでいないらしい。
着陸ユニットからは回収された試料も少ないし、横浜で獲得したG元素は国連と折半の上、G弾を作るのに大部分を軍に持って行かれた。今の世の中理論研究者も少なく、その理論的な項目は殆どが不明、というのが実情。


なので、ここからは、殆ど独自理論としての仮説だと思って欲しい。」

「・・・・。」

「・・・人類未発見、BETA由来元素と言われるが、色々検証した結果、どうも実はG元素の原子番号は、ぶっちゃけ[]と考えられる。」

「「・・・え?」」

「・・・つまり陽子の全く存在しない、中性子だけで構成された元素がG元素。
そしてG元素の番号は、発見順だから全く意味はない。全部質量数の異なる同位体、という事になる。

ま、この仮説が実証されれば、何れは質量数でソートされると思うけどな。

一般的にはG-6,G-9,G-11しか知られてない。
・・・と言うより中性子だけによる原子核は、クラスタって呼ぶ人もいるけど、幾何学的にも安定的でないと相当に寿命が短いらしい。

中性子は、電気的に電荷0だから、核力(大きな相互作用)以外の力が働かない。

ところがこの核力、力自体は素粒子間に働く力の中でも最も強いんだが、その効果半径が中性子の大きさそのものと同じくらいしかないから、中性子同士が殆ど接触していないと働かない。

なので、中性子同士がくっついて、且つ基本的に中心からの位置が等距離に成らないと構造的に不安定になる。
そう言う意味では、G-9が正四面体の質量数4,G-11が正八面体の質量数6と言うことになる。
負の質量を持つというG-6については、少し特殊なのでここでは省く。

G-11は11番目に発見された、って事は最低でも11個は発見されているってことなんだけど、他は不安定らしく、接収されたBETAの着陸ユニットであるプレ反応炉の中でしか見つかっていないらしい。
立方体である正六面体辺りは存在しそうなんだが、内部隙間が大きすぎてバランスの取れない構造は生成されてもすぐ弾かれて、G-9かG-11に落ち着くみたいだな。

実際には、研究用のプレ反応炉や加速器は今や米国以外には無いから、研究可能なのは米国だけ、当然その殆どの情報を米国は秘匿しているのが実情だ。


そして、言ったようにG元素には電荷がない。
このもともと電荷のない中性子は観測が非常に難しい。単体では自然界に存在しないとされ、加速器で生成しなければその確認も出来ないシロモノ。
G元素が今まで発見されなかったのは、電荷が無い故に、一切化合物を作らず、何の試薬にも反応しないからだ。単結晶は作るがその性質上、極めて微細。サイズも数十ミクロンオーダー。
それ故に人類には存在を見落とされていた、と考えられる。」

「・・・確証はあるの?」

「無いよ、仮説だから。
現状のG元素の作用に見合う様に、量子力学のシミュレーションを用いて構造の逆同定最適化を繰り返した推測だからな。
ただ、G-9に当たる正四面体同位体は、中性子クラスタとして実験的に発見されているはずだ。現在の量子理論じゃ存在しないとされていたから、理論が不十分なんだろうな。
発見当時はその量が少なすぎて、基礎的な実験も出来てないが、性質は共通する部分が多い。」

「・・・・続けて。」

「話ついでに、G-9について言えば、G-9は中性子4つの塊。幾何学的にも非常に安定的。
特徴的な性質である常温超伝導については・・・・、篁、中性子を分解すると何になるか知っているか?」

「は? え、・・・いえ。」

「じゃあ、クォークって聞いたことがあるか?」

「・・・在ります。」

「基本的に、物質を形作る粒子、陽子や中性子は、このクォークで構成されていると考えるのが今一番妥当と考えられている量子力学の標準モデルであり、今現在物質の最小単位はこのクォークであると考えられている。
つまり、電気的に中性の中性子も、それを構成するクォークとしては電荷+2/3のアップクォークと電荷-1/3のダウンクォーク2つで出来ている、とするのが今の標準モデル。
つまりG-9にはマクロで見て核としての電荷がないから電気抵抗は無限大に思えるけど、ミクロでは中性子自体を構成するクォークの電荷が偏心している事によって、接する4つの中性子間に生じている隙間は、あるルートで電子に対し誘い込みはじき出す、という効果を持つ。そのときその方向に対し電気的な抵抗は0。
その為、G-9の向きを電磁界で揃えた状態で半導体化すれば、在る方向に対して常温で電気抵抗0という半導体素子が作れる。
逆に陽子を持つ通常の原子核では、陽子の電荷と釣り合う周囲の電子が邪魔をして、電子が原子核の隙間に飛び込む事が出来ない。

これが、G-9による常温超伝導物質だ。」

「それって・・・・・・一種のトンネル効果って事?」

「量子力学の観点で見なければ、正しくそう見えるだろうな。」

「・・・・・・あり得ない話では無いわね・・・・。
現実の事象を上手く説明してる。G-9の半導体作成には、確かに電磁場を掛けるわ。
・・・・・それで、G元素が中性子クラスタだとすると、G-11はどうなるわけ?」

「そのG-11なんだが、さっき言ったように質量数は6,構造は一見安定的に見える正八面体なんだけど、よく考えれば正四面体に比べると中央には当然隙間を有している。つまり、中性子間の距離は接しているが、三角と異なり四角は歪みやすい。
G-9に比較して不安定なクラスタだと考えられる。
特に大きな中央の隙間に対し、正八面体の対角を為す3組の中性子が互いに引き合う、核力振動を起こしやすい。

これが原子核全体が電荷を持っていて、電磁力の拘束がある通常の元素に於いては、電荷による電磁力がダンパーになって安定収束するのに対し、電磁力減衰のないG-11だと交差する互いの振動が逆に増幅し合い、拡大発散を引き起こす。

さっきも言ったが、中性子内の電荷は偏心しているから、外部から電磁場を掛けるとその自励振動は直ぐに大きくなる。
振動方向は、正八面体に於ける対角軸、つまり互いに直交した3軸で、ベクトルとしても互いに干渉しない。
けれど核子(中性子)は互いに接触しているから、一種の三相ハウリングを起こしてしまう。

これが所謂G-11の“臨界”。」

「 !! 」

「臨界に達した核子(中性子)は、けれど核力(大きな相互作用)に縛られている。この核力はさっきも言ったとおり核子を結合している電磁力よりも強い。その為、G-11クラスタが核分裂するよりも先に[●●]、核子である中性子の崩壊が始まる。
・・・直交する3軸が共振崩壊するから、ジオメトリ崩壊[●●●●●●●]と名付けたけどな。」

「・・・・それってつまりミクロ的な空間崩壊[●●●●●●●●●]って事?」

「・・・正解。」

「・・・・・・・・面白いわっ!!
確かに3軸自励振動で核分裂の前に、核子である中性子崩壊が始まれば、そのエネルギーは核力の枠内で3軸、つまり空間に穴を空け、その過剰エネルギーをそこに発散すると共に、穴の空いた空間はそのエネルギーで歪み、重力偏差を発生する、と言う事ねっ!?」

「ああ・・・。
他から中性子等がぶつかって原子核が毀れる核分裂や、原子核同士が激しく衝突して合わさる核融合と異なり、原子核を構成する核子自体の自励振動、しかも、中性子同士を結合している核力のほうが、中性子と構成するクォーク同士を結びつけている電磁力より強いもんだから、核自体が分裂するより先に、中性子質量そのものが自壊してしまう。
これは正しく素粒子質量のエネルギー変換であり、そのエネルギーは中性子が電子を伴わないため電磁励起されることなく、全て3軸破綻で開けた空間へ流れ重力場に変換される。
その際に形成されるのが多重乱数指向重力効果域、つまり周囲の重力場崩壊を引き起こす。
これがG弾であり、崩壊量を制御すれば、ML機関によるラザフォード場の成形になる。

あと、重力場崩壊は効果範囲に存在する通常元素を巻き込んで、電離させ大量のプラズマを発生させる。
そのプラズマからMHD発電で回収されるのがラザフォード場に於ける剰余電力になる。
2次発生したプラズマによる電力だけで、荷電粒子砲すら撃てるという途方も無いエネルギー総量を誇るわけだ。
元々のG元素には電子が無いから、そんな2次効果でしか電磁波が発生しないが、もし中性子崩壊の素粒子変換、そのエネルギー総量を電磁波で放出されれば、水爆の数兆倍、つまりG弾一つで太陽系が吹き飛ぶ規模になっているんだぜ。
実際そう心配していた研究者もいたし。

G弾がそうならないのは、変換された重力エネルギーの殆どは、さっきの空間の穴から次元拡散して減衰する。
つまり場を歪ませるエネルギになって消費される。

これがG-11。」


・・・・・・人類未発見と言われるG元素。その構造を、G元素がもたらす事象だけから導き出したと言うのか?
だが、話を聞くほどに現在観測されている状況を的確に説明できるその理屈に納得してしまう。


「・・・何処までがハッキング情報で、どこからが独自理論よ?」

「・・・ロスアラモスでは、G-11が核子崩壊で素粒子重力子変換を起こすことくらいは理解している。
けれどその組成、構造や理由は掴んでいないっぽい。
相手が電荷のない中性子だから、今までの元素判定方は殆ど意味を成さない。まだG-6が負の質量を持っていることくらいしか掴んでない。それも事故で散逸させてる。

サイクロトロンなら、旨くすれば判るが、ぶつける粒子がそもそも中性子だったりすると、それすら判らない。ぶつければ結果には中性子しか出ず、消えたように見えるからな。
そもそも掴んでいたらもう少しマシな使い方するだろ。

電子が電磁波である光子を励起するように、そこには重力子を励起するレプトン(作用子)が存在しても良いと思うけど、標準モデルには重力子を規定するレプトンが存在しない。
量子力学の観点からも、G元素を解明するには、新しいモデルが必要、と言うのが今のロスアラモスのメインテーマ。
間違っては居ないんだが微妙にズレてる気もする。現実的なBETAの脅威すら忘れて、理論構築に没頭してるよ。
事実一般市民から見れば平和でしかない、米国ならでは、だな。

ML機関やG弾で現実発生した重力子の殆どは次元転移しているから、いっそ因果律量子論の方が、モデル構築出来る可能性が高いと俺は思ってる。
G-11の中性子崩壊は殆どの質量を、重力子エネルギとして変換し、質量が0になるまで連鎖する、ある意味究極の素粒子変換作用。
その行き先が何処なのか、因果律量子論を突き詰めれば判るかも、ってとこだ。

行く行くのモデル構築はセンセに任せるとして、現象解明だけなら、ロスアラモスに比べてもこっちは、計算能力の次元が違うからな。」

「・・・・・・そう、[あなが]ち間違ってない推察のようね。」

「元々重たくて、人間に比べれば悠久の刻を生きるだろう珪素系生命体ならでは、の技術だろう。
G元素そのものの生成は、少なくと現状の人類の技術レベルでは到底不可能。
BETAだって全宇宙規模の現地調達で集めている。
どうやらG元素を抽出することは出来るがG元素そのものを生成することは、BETAにも出来ていない。

本来G元素は、質量を有するモノには超が付くほど微少量で含まれているらしい。
レアアースよりも稀に、気相や液相ではなく、固相の構造中に。
分子間が流動する気液相は元々電荷のないG元素が留まりにくい。

そして、大がかりな時間的分散予測をすると、どうも有機構造、ようするに地球の生命基盤であるタンパク質に於ける含有率がほんの僅かだが、高いという結果が出ている。

だからBETAは炭素系生命体を優先的に食い荒らす。
総質量がでかいのに液層メタンで出来ている木星や、土星を避け、さらに固相でも有機構造生命体の多い地球を目指してきたのは、そういう理由も在るようだ。」

「「「!!・・・・」」」

「・・・なんでBETAがG元素を集めるんだよ?」

「・・・BETA頭脳級では、この中性子崩壊をほぼ完全にコントロールして、エネルギーの無駄な次元拡散などさせず、膨大なエネルギを得ているみたいだな。」

「・・・えっっ!?」

「そもそも反応炉は、何を反応させているのか、BETAは何をエネルギーに動いているのか、疑問だった。
カナダのプレ反応炉内でG元素が見つかったように、どうもBETAは現地調達のG-11を使って活動エネルギーの全てをまかなっているらしい。」

「「「!!」」」


それは、そうだ。
呼吸もせず、地上でも真空下でも活動できる。あの小さな身体で、数MWに達するレーザーを連発する光線級。
それをもたらしているのが反応炉。
膨大と思われるBETA活動のエネルギー。
それを何で得ているか誰も知らなかったが、その全ての活動源がG-11の素粒子変換によるエネルギーだというのだ。



「・・・で、BETAに出来るなら、人類にも出来るだろうってことで組んだのがコレさ。」

「・・・なんでそう云う思考になるのよ?」

「・・・BETAのしてる事なんて、高がマテリアルフェイズの事象じゃん。・・・・無意識の鑑がやらかすイデアルフェイズの事象なら挑戦する気にもならないが、な。」

「・・・・。」

私にはその意味する所が判らなかったが、副司令や白銀少佐には通じたらしい。
妙に納得した顔をした。

御子神少佐は、部屋の片隅にあった機材のシートをはがす。
そこに在ったのは、直径1m、厚さ50cm程度の管状コイル。勿論複雑な配線やサブコイルが廻りを埋めていた。
モニターの中で試作不知火に搭載されていたGeom.React.そのもの。


「・・・夕呼のマイクロML機関と“高天原”のコアに使っている重積カーボン・ナノフラーレン・チューブによるコイルを組み合わせた。
これは名付けるなら“G-リアクター”かな。Gは“グレイ”ではなく、“ジオメトリ”だけど。

目的は、G-11のジオメトリ崩壊に於ける3軸の完全協調制御[●●●●●●]
G-11臨界時の空間歪を最小限に抑え、重力子として流出するエネルギー反応を制御しつつ素粒子変換のエネルギーを徐々に取り出す仕組み。

結果は流石に頭脳級BETAの予測される変換効率60%には、まだまだ及ばない、と言ったところ。
それに、態々電力に変換しているんで、そこでも効率がかなり落ちる。電離してMHD発電というプロセスが必要になるからな。
・・・それでも、20%程度の変換効率にはなった。」

「・・・・20%って、どういう事?」

「・・・中性子の質量の完全なエネルギー変換、その20%が電力として取り出せる。
これが今回使ったG-11のアンプル。」

差し出された透明な樹脂の中に極微量封入されたG-11。アンプルのサイズ自体がボールペン位しかない。

「今回の試運転で使ったのは、0.1グラムのG-11。と言うか、それ以上まとめて搭載すると制御が難しくて連鎖崩壊に陥りやすい。
それでも、0.1gの量が完全にエネルギーになると、【E=mC2】の式そのままに、8,987,551,787,368J (ジュール)、概算で約2,500,000kWh(キロワット時)になる。

今回の推進器XFE512-FHI-1500が馬力換算すると、まあざっと300万馬力くらいだから、その推力変換効率が10%程度としても、推進だけ[●●●●]なら約10時間ほど、全力機動が出来る計算。
実際には、兵装にも電力を使う予定だから、実機動時間は半分程度になるだろうけどな。」



「・・・G-11 0.1gで・・・」

「あの機動を10時間・・・・?」

「っっっっ!!、規格外すぎるわよっっ!!!」


・・・・香月副司令の叫びを聞きながら、私は呆けて魂が抜けるような気分を味わった。


そして・・・。

事実が事実として理解できてくる。

込み上げてくる涙を必死で抑える。


けれど思い出すのは、ユーコンでの屈辱。
プロミネンス計画の責任者はそうでも無かったが、基地司令までが、JAPのしかも女に戦術機なんか開発できるのかよ、というあからさまな侮蔑を含んでいた。
そういえば、“彼”でさえ、私と一戦交えるまでは、その様な態度で在った気もする。最初は米国の戦術機コンセプトに拘泥し、他のモノを否定した。
まあ、徐々に理解を示してくれて、多大な成果を残してくれたことに感謝しか無いが・・・。

しかしその米国至上に奢り高ぶった彼ら既存技術を置き去りに、遥か高みを往く技術。

これが帝国技官(今は国連所属だが)から齎されたことが、何よりも誇らしかった。






「推進剤関係だけでなく、ジェネレータ交換に伴ってMgイオンタンクも予備バッテリーも殆ど抜いている訳ね。道理で機体を30%も軽くできる訳だわ。」

「バッテリーは抜いたが、重量バランスやバックアップに戻しても良い。実際は、パワーもこんなに要らない。
俺が遣りたかったのは、補給のないハイヴでの機動継続時間延長が元々の目的。
・・・武たち潜行組に取っての命綱だからな。」


確かにあのパワーは魅力だが、BETA相手には必要ないだろう。ハイヴ攻略に求められるのは、その継戦能力。補給など到底望めない状況。
白銀少佐が頷いている。
ハイヴ潜行経験の多い少佐だからこそ、その重要性も誰よりも理解している。
本来BETAに対し、機動に勝る筈の戦術機の撃墜理由は、光線属種の照射に次いで、推進器関連のトラブルや推進剤切れが多いのだ。
勿論死の8分を越えた後の話だが・・・。


「けど・・・確かにコレだけの電力があれば、電磁投射砲も荷電粒子砲も可能、ってことね。
そういえば彼方オール電化とか言っていたわね・・・。」

「電磁投射砲はまだしも、荷電粒子砲を新規にこの2ヶ月で作るのは無理だな。ソフトならいくらでも早く出来るが、ハードは信頼性の検証も含め、そうも行かない。
実際俺も新規で作ったのは、G-リアクターだけだし。他は皆、既存部品の流用や、組み合わせだけだ。
まあ、鎧依課長がアレ引っ張ってきてくれれば、弐型から機関部外して作ることは出来るだろう。
サイズ的に20m近い装備になりそうだけど。」

「・・・妥当なところね。弐型はラザフォード場の制御も甘いみたいだし。」

「アレも燃費悪いからなぁ。ラザフォード場を使うんじゃ無ければ必要無いくらいだ。」



「・・・・・・。」

香月副司令が黙って御子神少佐を見る。

「・・・・・判って居るんでしょうね?」

「・・・・・・・ああ。コイツも一種、破滅級[●●●]の技術さ。
・・・全く、BETAだけじゃなく、人間も相手にしなきゃ成らないとはな。」

「・・・どうする気?」

「ばらまくよ、喀什が終わったら。」

「「「え・・・・?」」」


余りにあっけない言葉に、3人が虚を突かれた。

「G-リアクターを作るのに必要な重積カーボン・ナノフラーレン・チューブは、今から用意を始めても製造装置が出来るまで10年は作れない。
この前の“コア”が作れるかどうか、シャノアに頼んでこの世界に残っている素材をかき集めてみたが、やはり“コア”作成は当面無理。
その分の素材をG-リアクターに回すと、今現在で468基、丁度39個中隊分作れる。」

「別の機構で作れないの?」

「出来ないことは無いが、戦術機に載るサイズではなくなる。小型化するにはG-9で構成すればいいと思うが、ブラックボックスで知っていると思うが、超電導コイルは制御性が悪いからな。」

「ああ、一回電流通すと流れ続けるから・・・、あれ邪魔なのよね。」

「大型化覚悟でインフラ用を組むにしても、核融合と同じジレンマに陥るはずだ。」

「・・・プラズマの抑制に取り出す電力以上の電気を食うわけね。」

「そ。その辺は、今のところ俺しか知らないし、素材が無い以上、俺でも作れない。

世界にたった468基、これが全部。
これを6個中隊分だけ国連に残し、残りを全世界に配る。」

「 !! 」

「H21以降のハイヴ攻略は各国にも負担して貰うつもりだし、ばらまけば機密もなにも在ったモノじゃない。月以降の次世代機については、各方面の色々なアイディアも欲しい。
いくら(マルチ)思考が出来ても、所詮俺は一人だからな。開発は色々なところで進めた方が良い。

そして決まった数しか無いからな、“開発”や“運用”にはさぞや[●●●]気を使ってくれるだろう。
・・・なにせ壊したらおかわり[●●●●]は無い。」

「・・・隠しもせず、独占もせず、増やせない数をばらまく、・・・・か・・・。」

「独占すれば全ての視線は此処に向くが、ばらまけば、その分力も分散する。
なにもしなくたって、相互監視網が出来上がるだろ。
さしずめ、研究用も含め、帝国、米国、EUに4個中隊分、ソ連、中国に3個中隊分、あとは国力に合わせ、前線国家を含むアラブ、中央アジア、東アジアに各3個中隊分、オセアニア、中南米、アフリカ後方諸国に各2個中隊分を分ければ、国連に残す分を合わせて丁度468基だ。」

「・・・管理を自分でせず、国際バランスに任せるって訳ね。」

「何処かの(世界の)天才兎のマネだけどな、メンドクサイことは丸投げる。
それに、G元素確保も必要だから。さぞや各国ハイヴ攻略を頑張ってくれるだろう。」

「・・・呆れた。ハイヴ争奪戦が起きるわよ?」

「・・・一番簡単な資源を忘れてる。」

「簡単な資源?」

「BETA。
・・・BETAにG元素が使われているのは、周知の事実。あとはアトリエ解析して抽出方法を解明出来れば、あの山のようなBETAからG元素が回収できる、ってこと。
地球系有機生命より余程G元素含有率は高い。
少なくとも、1体0.01g位は、使っていそうだから、兵士級なんか1t当たり0.1g、平均含有率としては破格だな。」

「・・・それって最も有りがちな生物種の絶滅理由よね?」

「まだ月にも、火星にも、うじゃうじゃいるから、いんじゃね?」


白銀少佐が呆れた顔をしている。

私もそう思う。

・・・御子神少佐に掛かると、BETAさえ絶滅危惧種の様な扱いだった・・・。


Sideout



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032104969024658