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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 12:01
'12,11,10 upload
'12,12,06 誤字修正
'15,01,24 大幅改稿(pcTEに準拠)
'15,08,21 誤字修正
'16,05,06 タイトル修正



Side 唯依


今日から国連太平洋方面第11軍、通称国連横浜基地に赴くことになった私は、早々に基地司令への挨拶を終え、香月夕呼副司令とともにA-00部隊執務室に案内された。
陰口で横浜の女狐とか魔女とか呼ばれる博士は、切れ長で怜悧な瞳に理知的な煌めきを宿すクールビューティ。
儀礼的な挨拶を交わすその存在感に圧倒されそうになった。

・・・この人が極秘計画、オルタネイティブ4の立案・総指揮者。
上位存在、創造主の意図を探り当て、そして今、人類の存続を賭けてオリジナルハイヴ攻略を目指す人類の希望。
白銀少佐や御子神少佐が横浜基地に拘る理由も理解した。


そう、一昨日、此処に出向が決まった後、開示された極秘情報に唯々圧倒されたのだ。
本来尉官になど開示されないレベルの情報。
けれどXFJ計画のEvolution4を推進するその目的そのもの。
オルタネイティブ4のど真ん中に出向するのだから知らせない訳にもいかない、と言う判断だった。

そして悠陽殿下直々に、命令書を受け取った。



帰任した時に叔父様に言われた、それどころじゃない、と言う一言。
それはXM3によるXFJ計画の完了云々の話ではなく、人類そのものの存亡という局面にまで来ていることを初めて認識した。
少なくとも年内[●●]に対処出来なければ、帝国が崩壊する。
それを指し示す全てのデータ。
そして帝国が壊滅し、BETAの太平洋への出口が出来てしまえば、残されたオセアニア、南北アメリカ大陸も危機に瀕する事になる。

人類は正に崖っぷちの瀬戸際。
悠長にユーコンで次期主力戦術機の開発や恋の鞘当てなどしている状況ではないのだ。


―――何という危機感の無さだったことか。

勿論これらは極秘中の極秘故、この情報を知るものは、10数人のみ。
確かに何も対案のない状態でこの情報を公表などしようものなら、世界が瓦解しかねない超弩級爆弾。


・・・・喀什を墜とす。

その為のXM3であり、極秘のXFJ計画Evolution4であった。
人類存続の計画、その総本山がここ国連横浜基地でなのだ。




「篁唯依中尉・・・巌谷中佐のトコの秘蔵っ子ね。
99式はどうだったの?」

「え?」

「ブラックボックスはちゃんと機能したかしら?
アタシが提供してたのよ。」

「!! は、ありがとうございます!
ユーコンでの試射は滞りなく終了し、BETAに対する多大な威力も確認できました。
・・・ただ、砲自体の耐久性や、連射性能と言う面では、未だ未だ改良の必要が在ると、言わざるを得ません。」

「そ。・・・まあ、それも彼方が弄ってたから、何とかしてくれるわ。
ところで固いわね。
公式な席でない限りあたしには敬礼とか敬語とか無駄なことも必要ないわよ。

・・・使えるか使えないか、それだけ。」

「・・・は、はぁ・・・留意します。」


流石、あの御子神少佐の上司である。


「・・・で、受け入れ担当の彼方は何処行ったのよ?」


部隊執務室に行くと、うさ耳の髪飾りを付けた女の子がカタカタとパソコンに向かっているだけ。
その彼女も、副司令が入ってくると椅子を立ち、私に向かって敬礼してくれる。


「国連太平洋方面第11軍A-00戦術機概念実証試験部隊付き社霞特務少尉です。
宜しくお願いします。」


この綺麗な、まだ徴兵年齢にすら達していない娘が特務少尉?と驚きつつ、答礼を返す。


「帝国斯衛軍中央評価試験部隊、調布基地所属白い牙中隊中隊長、篁唯依中尉だ。
このたび本日より国連太平洋方面第11軍A-00戦術機概念実証試験部隊に技術出向させていただく事となった。
馴れない場所故何かと世話になることもあるが、宜しく頼む。」

「はい。」

「・・・で、彼方は何処行ったの?」

「御子神さんなら、武さんと演習場に行きました。
昨日届いたパーツを予備機の不知火に早速組み込んだので、そのチェックと聞いてます。」

「・・・そう言えば昨日言ってた試作機ね。・・・内容まだ確認してなかったわ・・・。
じゃあ行って見るしか無いわね。
相変わらずアイツは探すと居ないんだから。」


副司令はやれやれと呟きを落とした。


Sideout




Side 武


昨夜目覚めた純夏、今日の午前中は医療センターで各部身体チェックとなる。
午後には207B訓練部隊に合流と成るが、さっきそのことを告げたまりもちゃんは、流石に引き攣っていた。

それはそうだろう。総合戦技演習を明後日に控えた今に成って、ド素人が参入するのだ。
オレがまりもちゃんでも頭を抱える。


しかし、純夏は“森羅”を装着しての参加となる。
一部アストラル思考が出来る純夏にとって、00ユニット“森羅”が在れば、通常衛士の動作モデルを自分の肉体にロードすることなど何でもないらしい。
前の世界では考えもしなかったが、自分の脳の記憶野思考野再生まで手がけたのである。
脳内モデルの構築など朝飯前とか。
流石に筋肉や関節が違うので、男性衛士そのままの真似は出来ないが、彼方が鍛えた筋肉は、十分女性トップガンに匹敵する。
そこに理想的な動作モデルを構築すれば、近接から射撃、狙撃まで標準以上の成績をたたき出す。
チームワーク以外は、脚を引くことはないだろう。
そのチームワークも冥夜も居るし、さほど心配していなかった。

勿論そのやり方を教えたのは彼方だ。
聞けば純夏はBETAと戦うオレのために、遺伝子操作の可否まで彼方に尋ねたらしい。
彼方は安易にそんなことするような奴では無いが、それ以外、つまり身体機能の訓練や、00ユニットやアストラル思考の使い方は教えてくれたとの事。
それらの身体能力、そしてハッキング能力を使えば、戦術機すらレバーも使わず自分の意志通りに動かせる。マンマシンI/Fを介さない操作は、それだけでもオレのZONEに匹敵するとか。
まあ、その殆どが“森羅”に依存する能力であり、外せば普通の能力しか持たない普通の女の子であるのだが。
但し、研ぎ澄まされた究極の筋肉だけは、普通とは言えないが・・・。


そんな多大なメリットを有する“森羅”であるが、大体がこの“森羅”も相当なものである。
今のところ、適合するのは純夏だけ。
実際オレも試してみたが、脳内がかき回されるような感覚に、直ぐ音を上げた。
それこそBETAの蹂躙にも耐える程の耐性がまず必要になる、との事だった。
因みに彼方に関しては、動作もしなかった。完全なアストラル思考体とでは、反発するのでは、と言うのが夕呼先生の推測だ。
と言うか、彼方の能力の方が、たかだか半導体150億個分の能力など包含してしまった気がしないでもないが・・・。
もともと00ユニットは、150億個分のユニットが異なる世界群間での多次元連結をすることにより、膨大な思考空間を形成するものである。
ユニット素体だった純夏なら、連結先は在りそうだが、彼方にその必要はなく、単独であればその能力は限られたものでしかないだろう。


その“森羅”を装着して平気でいるのだから流石、超因果体と彼方が名付けた純夏だけある。


彼方に言わせると、純夏の純夏のDMM[どりるみるきぃまぐなむ]DMP[どりるみるきぃふぁんとむ]が被験者を大気圏外にまで運んだり、元の世界で純夏が夕呼先生のランチア・ストラトスに跳ねられてもかすり傷で済んでいる、と言った事象は、無意識にイデアルフェイズに踏み込んで居るのかもしれない、との事だった。
その発動条件は、相手もある程度の資質を有すること、つまり00ユニット素体候補になるくらいのアストラル領域接続適性があること。
つまりオレや夕呼先生、あとはA-01、207Bのメンバーだ。
そして一般人がそれを目撃しても平然として騒がないのは、皆が持っている“集合的無意識” が作用し、その事象がイデアルフェイズに及んでいることで不思議に思わないのではないか、と彼方は推論していた。

理由なんぞどうでもいいが、オレ的にはあんまり嬉しくない事象である。

正直言って、素で大気圏突破と大気圏突入は避けたい。
イデアルフェイズの事象で在る以上、“超常の力”に護られている、と言われたってその“恐怖”は何ら変わらないのだから・・・。


いずれにしても、この適合性の厳しさから00ユニット増産計画は、一時棚上げ。
作っても適合する使用者が居ない。
使用者の負荷を大幅に減らすか、何らかの耐性訓練をしなければ成らないだろう。
先生は一応、負荷軽減を検討し始めたらしいが・・・。



そしてオレが午前中、彼方に頼まれたのが、昨日届いた山ほどの試作パーツから、早速予備機の不知火を改造した試験機のテストだった。

搭乗前に眺めたが、所謂国連カラーの不知火は、何も変わることが無かった。
唯一、跳躍ユニットのノズル形状が少し変わってる? と感じたくらいだ。


強化装備をフィッティングし、ポジションを決める。

ジェネレータを立ち上げると微かに高い音がしたが、それも直ぐ消える。燃料電池のジェネレータは殆ど音がしないから、微かに違和感。


燃料は?

と見れば、電池残量は示されているが、推進剤のジェット燃料、ロケット燃料共に、表示自体が消えていた。

違いと言えば、それだけ。


『武、行けるか?』

「ああ。今回のテスト、噴射跳躍は無しか?」

『まあまずはハンガーを出てくれ。
因みに機体重量が30%程軽くなっている。
バランスも狂っているから、暫く主脚移動して、OSテイミングしてくれ。』

「30%?、スゲェな、別物だぞ、それ。」

『ああ。何しろじゃじゃ馬だからな。
乱暴な操作すると吹っ飛ばされる。』

「・・・了解。気を付ける。」


あの彼方がここまで言うのだ。
生半可では済まない。

オレは、慎重にレバーを押し込んだ。






ハンガーから演習場に出たオレは、片隅で一通りの機動をチェックする。
反対側にはA-01の不知火も見えるが、機体テストと言うことで、管制が敷かれている。
流石の速瀬中尉も絡んでこない。


しかし・・・機体が“軽い”。

確かにバランスは完全に狂い、OSのテイミングをし直す必要はあったが、10分も色々な機動を試していると、それも収束してくる。
その上で、機体が軽い恩恵をまざまざと感じた。
跳躍ユニットは切っているが、主脚を主とした全身機動だけで、相当な3次元機動が出来る。
何よりも慣性が少なくて済み、次の機動までの繋ぎが小さい。
特に下肢廻りの質量が減っているらしく、重心が中央に寄っているのも大きい。


『・・・だいぶ馴れたか?』

「ああ。ご機嫌だな、コイツ。
スゲェ良い動きする・・・。」

『じゃあ、本命に行こう。
跳躍ユニットを起動してくれ。』

「え? 燃料在るのか?」

『あるよ。
・・・ただし、今回のコイツは、組んで初めて。
データも何も無い。
なので、滅茶苦茶ピーキーになっている。
暫く馴れるまでは、上方30°以上にしか跳ぶな。
特に今後相当慣熟するまでは、機体を回転しながらの噴射はNG。
安全の為、高度100mまでは制御ロジックでも上方には噴射しないようになっているから気を付けてくれ。』

「・・・・・了解した。」


ゴクリと鍔を飲み込む。

あのチートな彼方がそこまで言う機体。
底知れないものが、背筋を這い上がる。

この一見不知火にしか見えない機体に、何が潜んでいるのか。


そして慎重に跳躍に入った瞬間、襲いかかった余りのGに、視界が暗くなり、一瞬意識が遠くなった。


Sideout




Side 唯依


・・・・・これは、・・・・・なんだ?

周囲に居る他の管制官も絶句して見ている。
演習場に居た、他の衛士達も、上空であり得ないようなジグザグ機動を繰り返す機体を見上げ、惚けていた。

思考が、追いつかない。

それほどデタラメな機動を、その不知火は行っていた。


弐型なんか問題にならない。
ACTVも、Su-37も、F-22EMDやSu-47だってこの機動について行けるとは思えない。

戦術機で有りながら、初動が無拍子。
何の予備動作もないまま、虚空瞬動するかのようだった。

それを、空中[●●]で行っているのだ。


傍では、その不知火を御子神少佐が自ら管制している。


「・・・大分馴れたか?・・・・。」

『・・・ああ・・・。
マジぶっ飛んでやがる・・・飛んでもないじゃじゃ馬だ、コイツっ!!』

「ああ、停止からの初動加速度は、機体が耐えられるギリギリ3Gだからな。お前の対G適性が無ければ、とっくの昔にブラックアウトで落ちてる。」

『・・・初動が3Gかよ。・・・道理で視界が暗くなったり赤くなったりしてると思った。』

「いきなりソイツに乗って其処まで動けるのは、おまえ位のもんだよ。
・・・・OK、水平機動までは制御制限解除する。
降下だけは自由落下使え。」

『・・・・了解。』


その普通に見える不知火のスラスターが、一瞬大きく光りそして細く鋭く蒼い火炎を噴く度に、機体は蹴飛ばされるように位置を変える。
それが連続する機動は、最早目では追えず、スラスター火炎の残像だけが残る。

初動が3G。

時折降下に使う自由落下が、やけにゆっくり見える。



・・・・・コレは、なんだ?

制御で実現するなんてレベルのモノじゃない。
圧倒的に暴力的な迄の空中機動。


・・・・・・・スラスターっ!!

その驚異的なレスポンスがこの機動を生み出しているのだ。

不知火の機動重量が約18t。
それを3Gで動かす力は概算480,000kgf、推力で言えば4.8MNにも達する。
概算すれば、一機当たりの瞬時出力が、Type-Rの約6倍!!


途方もない数値だった。

今のジェットにもロケットエンジンにも、そんな数値をたたき出す機関はない。
いや、実験上は存在するかもしれないが、在っても燃料消費量が半端無い。
戦術機の中に在る燃料だけでは、一回使用しただけで空になる。
それほどの数値なのだ。

それをあの不知火は、既に自分が副司令と此処に来てからでも10分以上続けている。


異常、と言うより他に無かった。



だが、その早さに漸く目が馴れてくると、その機動の欠点も見えてくる。

機体全体は、余りにも早い跳躍ユニットに引っ張られ、平行移動動作の直後はまともな姿勢が取れていない。
完全にスラスターに振り回されているのだ。
大きな質量を抱える上肢が特に暴れていた。早すぎる機動に、四肢がついて行けてない。

さらに、高速機動時、四肢や頭部が暴れているのも判った。
機動に対する空力特性の改善。
弐型の開発がPhase2に進んで、肩部スラスターが追加されたことにより、自分が散々苦心していた事項。


これは・・・各部空力特性の向上と、肩部にスラスターが在れば補正できる!

その為には・・・・・・。

ユウヤのまとめた分厚い提案書。
ハイネマン氏に提示されたPhase3の内容。
自分の頭にその内容を反芻し、実行できるプランを描きながら、尚も機動を続ける不知火を目で追った。





「・・・OK、武、終了だ。」

『・・え!?・・・・・あ、・・・了解・・・』

「・・・おまえ、ZONE入ってた[●●●●]?」

『ああ、多分。
・・・コイツ、飛んでもなくヤバイ機体だ。』

「・・・まあ、一発目でこれだけ飛べれば十分。・・・それに不知火そのままじゃ使い物にならないことも判った。」

『え?』

「本命は明日届く弐型。ソイツを本当にその速度域で機動するには、空力調整や、肩部スラスターが必須だろう。」

『あぁ、成る程・・・。了解、帰投する。』



御子神少佐がその特殊な不知火の帰投を確認し、インカムを置く。


その肩に手を置いたのは、香月副司令。


「・・・随分面白いことになってるじゃない。
詳しく[●●●]説明して貰おうかしら?」


周囲の管制官が引き攣るような迫力の笑顔。

それに全く動じることもなく、ニコリと笑みを返す。


「Yes、Ma’am。・・・どうせ昨日の資料目も通していないんだろ? まとめて説明する。
・・・・篁中尉。」

「は!」

「今更自己紹介は必要ないな。
貴官の着任を歓迎する。」

「は!、篁唯依、着任します。
宜しくお願いします!」

「部隊内は特に敬語など必要ないが・・・、まあ好きにしろ。」

「・・・あれ弄らせるんでしょ? 使い物になるの?」

「元々弐型開発の主幹だし。国連軍戦術機実験評価部隊で揉まれてたみたいだから。
XFJとしては、Su-47との評価試験も済んだし、実質完了って事だろう。
極秘のEvolution4で、XM3の最適化とアレ[●●]のフィッティングをして貰う予定。
弐型や、元となった不知火の構造は熟知してるだろうし、何よりも今のを見て既に腹案組み立ててるみたいだぜ。」

「・・・・成る程ね・・・。
あんたが城内から好みで引っ張ってきたのかと思った・・・。」

「残念ながら、そんな悠長な事やってる時間的余裕なんかないな。
現状、装備の方は当面他じゃできないだろうし。
使えないと思ったら引っ張らない。」

「実弾演習に間に合うの?」

「当面試作2機、上手く行って4、5機かな。
まあ武以外に扱えるレベルに出来るかどうかは微妙だ。」

「・・・また飛んでもないモノ作った訳ね。
・・・覚悟しとくわ。」


魔女と呼ばれる副司令と気安い軽口を交わす上司。

・・・これが御子神彼方少佐。

XM3の製作者にして、殿下が絶大な信頼を置く男。
私と上総の恩人でもある。

明日の希望を見せてくれた男は、一体どんな未来を描いているのだろうか?


Sideout



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