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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/16 18:30
'12,10,26 upload  ※リク、書いてみました
'12,10,27 一部追記・誤字修正
'12,10,30 矛盾修正
'12,12,16 誤字修正


Side 真耶


庵に誂えた食事を摂った後、控えの間に退いた。
榊首相以下オヤジ連は、二人の少佐と話しをしている。
成る程、丁度息子と言っても良い年頃なのだろう。
どちらもヤンチャな息子だろうが。

この後、帝都城内にもどり、XM3のシミュレータへのインストール、戦術機の換装、閣下が望んだ白銀少佐との模擬戦、という流れ。

そして、その後まだあるという。
あ奴の話は終っていないらしい。
・・・・一体何が飛び出すやら。




4日前、御子神彼方が還って来た、と言う報告を聞いたとき頭痛がした。

その段階ではまだ確定情報では無かったが、主である殿下の様子は当然尋常ではなかった。
鎧衣に確認を命じ、その結果を心待ちにしていた。


そして・・・確定。

一人涙して喜ぶ殿下に、しかし私は嫌な予感しかしなかった。

聞くところによれば、当の本人には記憶の欠損が在るという。

それは手放しで喜ぶ殿下にとって、寧ろ悪い結果にならないか?
殿下が再びあの悲嘆に暮れる姿は、もうみたくない。
漸く最近、思い出さなくなっていたのに。

会談の日取りが決められ、ウキウキする様な殿下のご様子に、私の頭痛は酷くなるばかりだった。







御子神彼方は、長年に渡る私の頭痛の種。

私が、唯一敗北を認め、そして殿下の傍に在るべき存在と一度は納得し、そしてそれを行方不明という結果で手酷く裏切った男だった。
こちらの勝手な押し付けなど知らん、とあ奴なら言うだろうが・・・な。


殿下が6つの時、10で護衛見習いとしてお側についた私。
将来の政威大将軍候補と目されていた殿下は、当時から聡明であらせられた。
最初は、護衛のはずの私が、逆に気を使われてしまう始末。
その凛として気高く在りながら下をも慮る佇まいに、主として相応しい、と子供心にすら思ったものだ。
そんな殿下には将来の政威大将軍として当然五摂家をまとめる立場が望まれ、記憶も考え方も固まってくるその年のころから、様々な方々と接し、交友を広く持つことが求められた。
相手は、主に赤以上の武家の子女。
当然殿下よりも年上が多く、実際殿下はどなたにも可愛がられていた。殿下の方もたおやかな笑みを浮かべ相応に応対していたが、その実、誰に対しても決して心開くことも懐くことも無かった。

・・・たった一人、御子神彼方を除いて・・・。

何故選りに選って御子神彼方なのか。そしてその御子神彼方が最大の問題だった。


表向き従容としながら、裏で何をしているか分からない五摂家の一角、九條。
御子神はその九條分家、一條二條に続く3位の分家、赤を纏う家系だった。
表面上、九條から煌武院に対する直接の作為はない物の、当時の政威大将軍に対する陥穽謀略の数々、その黒幕が何時しか一條二條と知れ、裏で糸を引くのは九條であるとに認識が既に在った。
具体的には官僚や軍部上層部からの具申と言う形であり、そこに九條は愚か、一條二條の名前も表には出ないため、単なる噂に過ぎないという見方もあったが、火のない処に煙の例えもあるとおり、全ての放火現場に一條二條の影がチラついていたのも確かなのだ。
故に、御子神彼方が紹介されたとき、殿下の周囲は、私も含め全ての者があ奴を敵視した。


元々平安貴族に祖を持つ九條は武家社会と微妙に異なる感性を有している。
斯衛にも殆ど組みせず、本土防衛軍を創設したのも九條閨閥。そこから寧ろ帝国軍に関係することが多い。
血筋をたどれば、いくつかの時代で皇帝陛下の血縁ともなっており、今生陛下も曽祖父が同じという親戚筋にも当たる。結果覚えめでたく・・・と言うよりも、陛下ですら少し引いているフシが見受けられた。
五摂家の一角でありながら、政威大将軍という職制そのものを疑問視する意向だけは伝え聞く。実際裏では疎んじ、蔑ろにし、それでいて利権だけはいつの間にやら手の届く範囲に寄せている、そんな疑惑が多い存在であったのだから、その分家筋が政威大将軍筆頭候補である殿下に近づくなど、怪しくないわけがない。


なのに、殿下はそんな周囲の危惧も知ってか知らずか、他の誰よりも御子神彼方に心を許し、一緒に居たがった。兄と呼ぶことを乞うまでに・・・。
そして何度説得をしても兄さまは九條ではない、の一点張り。
あまりしつこく言うと、逆に言った者を忌避しはじめる。

勿論表面上御子神も殿下に危害を加えるようなことは全く無く、むしろ殿下を気遣う様は、本来望まれるべく仕儀にも至るほどの有り様だった。
・・・・出自が九條繋累である、と言う事を除けば。


だが、子供の頃から周囲の大人に九條の悪口を聞かされ、その一門が如何に汚いかに憤慨していた私は、しかし、殿下に当たることは出来ず、結局御子神本人に当たることも屡々。
それを一度殿下に見咎められ、殿下が涙を浮かべられた時は、その後一週間口を聞いてくださらなかった。以来直接的な行為は避けるように成ったが、あ奴が嫌いで、警戒していることは変わらない。

・・・いつも護衛としてだけではなく、それ以上に私を慕ってくれる殿下が、御子神に関してだけはそちらを優先する、今思えばそれに嫉妬していたのかもしれないが・・・。


それは、殿下が10の齢になる前後、次期政威大将軍として内定し、私が任官と共に正式な護衛として着任した後も変わらない、
否、頻度は少し減った物の、その行動は、益々エスカレートしていた。

どんな魔法を使っているのか、帝都城を抜け出すなど朝飯前。何処をどう連れ回しているのか知れないが、実際約束された時間に戻っていないことはない。
要職内定者ではあるが、その行動を拘束されているわけではないので、抗議も出来ないのだが、護衛である私を悠々と振り切り、何処ぞとも知れぬ危険に晒すのは我慢ならなかった。
が、殿下にワタクシが望みました、と言われてしまえばぐうの音も出ない。泣かれると困るのは私だ。

尤もあの“弾劾”の後、それがXSSTまで用いた世界規模の“お散歩”だったことを知った時には、流石に絶句したのだが・・・。



それにしても御子神は私以外のどんな妨害もそれを飄々と躱し、殿下に求められるままに面会を途絶えさせることは無かった。

何を目的にと訝しみ、一時はあ奴に偏った性癖でもあるのか、とまで怪しんだが、その方面に付いて殿下は未だにまるで何も理解しておらず、それ故にその嫌疑は水泡に帰した。

何をしているのか、聞いても答えてくれない殿下ではあったが、何時も側に侍る護衛である、気を配れば薄々感じられる。明確な答えではなくても言葉を重ねれば端々に見える輪郭。


そして私が得た結論。
・・・それは、謂わば“疑似体験”。
幼き頃は、話して聞かせ、徐々に長じて来れば、身体を動かし、体験させ、経験させる。実体験で在ることもあったし、映像やシミュレーションで在ることあったらしい。様々な事を“教える”でもなく、“諭す”でもなく、“一緒に体験”させ、“一緒に考える”。
幼き殿下にとって“最高の遊び”で在りながら、“最高の勉強”。
それを与えてくれるあ奴に、殿下が懐いた理由を理解すると共に、逆に他の誰にも心許さなかった理由も察せられた。
身分や将来に縛られた殿下にとって、今の状況は籠の鳥。それを追認させるだけのお仕着せの“友人”など欲しくはないのだ。儀礼とか格式とかに縛られた彼らは、幼い殿下にとっての、“籠”そのものなのだから。
その“籠”を易々とぶち破るあ奴は殿下にとって紛れもない憧れ。
しかし聡い殿下は、それが自分の運命であることも理解し、従容と受け入れていた。だからこそ、殿下はあ奴の見せる世界を、体験し理解しつつも、飛び出すような暴挙には及ばない。

・・・そして、あ奴はそんな殿下をじっと見守っていたのだ。
8年間もの永き間・・・。


あ奴のやっていることを理解した頃には、何故、九條一門が? と言う疑念とは裏腹に、信じてもいいのかも知れない・・・という淡い期待が生まれていたのも確かだった。




そしてそれも踏みにじる様に、訪れた動乱の日々。
'98,7,7、遂にBETAは、日本帝国にその矛先を向けた。

余りの“量の暴力”に、抵抗むなしく、BETA侵攻は僅か1週間で姫路にまで達した。
1,200年の栄華を誇った帝都京都の防衛ですら、九州の陥落と共に増したBETA物量の前に、1ヶ月抵抗するのが精一杯。
帝都は燃え落ち、東へと落ち延びるしか無かった。

更に東進を進めたBETAは、先鋒が新潟の半分まで至った時点で、佐渡にハイヴを建設し始めた。この時点で信濃川から諏訪湖を通り天竜川に抜けるラインより以西が、BETAに占拠されていた。
内陸深くに侵攻されたため、艦砲射撃が届かず大規模な殲滅が敢行できなかった事に加え、避難民の犠牲を顧みない強行作戦や首都京都を蔑ろにした防衛戦構築で帝国軍と対立したと噂される米軍は、この時点で日米安保条約を一方的に破棄し参戦しなかった為であった。
その為、京都陥落後僅か1ヶ月足らずでBETAの津波に飲み込まれた当該地域で在ったが、そのエリアに居た住民及び避難民2,500万人を、殆ど欠くこと無く避難した事は、“奇跡の逃避行”とまで謳われていた。
BETA対応に追われる軍、日米関係の悪化から事態の収拾に追われる政府は、なんら組織的な避難手段を講じることが出来ず、住民の自主避難に任せるしか手が無かったにも関わらず、である。
何らかの介在が噂はされていたが、次なる侵攻や、慌ただし遷都に相次ぐ政府には関与している余裕など何処にも無かったのだ。


暫し佐渡ヶ島ハイヴ建築に腐心していたBETAは、しかしその2ヶ月後、またも唐突に東進を再開する。
その間、既に在日米軍は完全撤退を敢行しており、一時的に東京に置かれた首都も、先の侵攻戦を見越し、仙台にまで退いていた。
主に太平洋側を東進した主力BETAは、一気に冨士川防衛ラインを食い破り、山梨、神奈川を制圧、白銀少佐を襲ったという横浜侵攻も怒涛の侵攻速度による避難遅れが招いた悲劇であった。

それは東京すらそのまま飲み込む勢いであり、一時はその壊滅すら危ぶまれた。
しかし、なぜかBETAはそこで一転し、伊豆半島を南進して唐突に侵攻の波を止めた。
その後、佐渡に続き横浜にもハイヴを作り始めた事が判明、以降99年の明星作戦まで、多摩川を挟み間引き作戦を繰り返す小康状態が続いていた。




その状況の中で訪れたあの日・・・。




■'99,01,04(Mon) 10:00 仙台第2帝都城 特別会議室


年始恒例の年次報告会、通称“評価”。

国政に於いて前年の状況を顧み、年初の抱負を皇帝陛下に言上する。
報告は各省庁及び統合参謀本部が上げ元枢府(五摂家)が取りまとめ、基本その取りまとめ役となる政威大将軍から陛下に献上することが建前だったが、実際は通過儀礼的なもの。その取りまとめやプレゼンテーションも、全て五摂家筆頭である九條が取り仕切っており、将軍はそれを追認する、と言うのが通例だった。過去にそれが問題に成ったことは一度もなく、故に九條専横に口をはさむ余地が無かった。
それに対して、日本帝国の象徴である陛下も、基本口出しはせず、いくつかの質問だけで承認と言う流れである。

・・・通例であれば・・・。


しかし、前年のBETA大禍により、3,600万人という犠牲と共に、帝都京都を含む国土の半分を喪い、横浜と佐渡に新たなハイヴを建設された。その国家的・経済的打撃は計り知れず、日米安保が一方的に破棄される状況にも陥っている。
今後横浜ハイヴが本格稼働すれば、BETA北進は間違いなく、今や日本帝国存亡の瀬戸際に立たされているのだ。
現実に御身も過酷な退避を体験された皇帝陛下の憂慮は深く、荒れる、と言うのが大方の予想。
その場で責任問題になれば、2,3人のクビが飛ぶどころではなく、最悪政威大将軍の罷免、という皇帝陛下の大権発動さえあり得る。


もともと我が国は、維新による大政奉還以来、一貫して立憲君主制を維持してきた。
維新後は陛下を主君とし、倒幕派大名と将軍家が五摂家として元枢府を構成、陛下の補佐をする。その代表が政威大将軍であり、その下に行政と立法、司法を執る内閣、帝国議会、帝国裁判所が設置された。皇帝が選挙のない大統領であり政威大将軍が補佐官、行政を内閣が司るフランス型の政治形態に近い。
この形態が今の形に変化したのは、大東亜戦争(第二次世界大戦)終結時の条件付き降伏にある。
世界の趨勢であり、米国からの強い民主化圧力に対し、我が国は飽くまで主権在君の維持を図った。その妥協として、政治形態を変化させた。
つまり、主君として有していた政治軍事に関する全権を、政威大将軍に委任、但し皇帝陛下はその政威大将軍の任免・罷免権を有する、という形態である。
政威大将軍は五摂家の推薦により陛下が任命し、その罷免権は皇帝のみが有する。それ以外の全権は政威大将軍が有し、皇帝陛下は帝国の“象徴”として国事に参加する事と成った。
それを以て国号も大日本帝国から日本帝国に変更された。

しかし、現実としては、行政に於いて経験と人脈を構築してきた官僚や、閣僚、軍内部で派閥を形成した軍閥により、徐々にその権限が抑制され、内閣・閣僚の罷免任免権、議会解散権等にひもが付いたり、帝国軍に対する命令権限そのものが統合参謀本部に委譲されたりして、執行権が干犯されてきたのが、現在の状況であった。


つまり、戦後改訂された政治改革により制定されて以来、唯の一度も使われたことのない陛下の大権。

伝統格式を重んじる武家社会に於いて、一度任命されながら初の罷免ともなれば、もはや切腹物と言う話すら出ていた。
・・・実際、紅蓮閣下は、殿下の身代わりとしての覚悟を決め、内側に白装束を着けている。



特別会議室は、相応の広さを有し、正面に巨大なスクリーンを前にし、中央に皇帝陛下と侍従、そして陛下の直衛に当たる五摂家一角、崇宰現当主崇宰信朋以下警護数名。
左手に報告者である悠陽殿下が紅蓮閣下、榊首相を従え、最前面に立ち、護衛である私もすこし下がった位置に侍る。
その後方には、残る五摂家当主とその主要門閥、更に斯衛軍将官が並ぶ。
一方の右手には、統合参謀本部を初めとした帝国軍関係者、各軍将官、そして国政を預かる各省事務次官級が列席していた。

どの様なプレゼンが為されるのか。
殿下は報告者でありながら、九條に全て握られ、再三再四の要請にも関わらず、その内容を一度も見ていない。
追認するだけだった今までの政威大将軍に問題はなかった、と言う。
しかし今回に限って言えば勿論、その内容が九條や関連する統合参謀本部に有利な報告になっていることは間違いなく、陛下の怒りを買えば、政威大将軍という職の罷免にも関わる。

それを従容と受け入れざるを得ない立場に居ながら、殿下はその場にスッと背筋を伸ばし、正面を見据え、凛と立つ、その心情が慮れた。



そして皇帝陛下へのプレゼンターとして、そこに現れたのは、御子神彼方だった。



!!、この為にかっ!!


振り向き睨みつけた九條兼実の顔は、取り澄ました公家顔に、哄いが張り付いているようだった。

殿下が慕い、懐いた御子神彼方を以て、殿下の立場を糾弾する。
今までのあ奴に対する殿下の信頼を、無残に打ち捨てる裏切りそのもの。

あまりの憤怒に血管の2,3本切れたのだろう。視界が真っ赤になっていた。

事、此処に至っては、何も出来ない。
これが、廊下であれば殿中構わず刀の錆にしてくれたものを・・・!!


殿下の陣営からそれだけで殺せそうな視線を浴びながら、中央の御子神は、それには頓着せず、寧ろ不安気な視線を九條当主、兼実に向けた。

「・・・・案ずるでない。プレゼン開始以降、質問が許されるのは陛下のみ。
どんな知己[●●]であれ関わり無く、真実を告げれば宜し。」

「そうだそうだ、大舞台だからって親類縁者に頼んじゃねえぞ!」

当主の言葉に軽い野次と笑い。それは殿下に対する嘲笑すら含んでいた。



・・・理解してしまった。
どんなに規格外に見えても、結局は武家社会の枠に生きる者。
あのふてぶてしいあ奴が、九條当主の前では借りてきた猫に見える。

当然、殿下に紹介し、思いの外に上手く殿下があ奴を慕っていることを知り、この若造をプレゼンターに仕立て上げたのは、紛れもなく九條兼実。赤とは言え、尉官如きが出席できる会議ではないのだ。私だって殿下直衛の立場でなければ、内容は愚か、開催日時さえ知らされないだろう。
御子神彼方も・・・・所詮、九條繋累・・・・。
・・・いきがっているだけの小僧に、何の力も無いか・・・。


私を支配したのは、脱力感を伴う、深い諦観だった。





定刻と共に、プレゼンか開始される。

あ奴は、開始前当主に対し見せた一種縋る様な風情など微塵もなく、皇帝陛下を前に優雅にさえ見える拝礼を以て、説明を始めた。

その内容は、政治・経済・軍事の多岐に渡る。

年度末に向けて各省庁がまとめる年次報告、所謂白書の先行版。
いつもは基本、数字だけのその報告が、色分けし、統一されたフォーマットのグラフ化してあり、極めて分かりやすい報告になっていた。
通例、今までの報告では各省の報告をそのまま並べるだけなのだが、その見せ方はプレゼンターに一任される。
数字の改竄さえ無ければ、問題はない。

そして、逆にその見やすさ故に、昨年から今に続くBETA禍による被害の大きさが浮き彫りに成った。

特に、国勢、経済、外交、そして軍事。

国土の半分を喪い、人口の1/3を喪ったその国勢状況は、目を覆う。
戦闘による男子の損耗が激しく、婚姻適齢年齢に於いてはその比が1:8にまで広がっている。
昨今の男子激減の折りから昨年には、女子の徴兵年齢が16に引き下げられたばかり。
うら若き少女を戦場に送る、その法案にもどれほど殿下が心痛めたことか。

経済も軒並み通年の半分以下。今後年度末までの増加も全くみこめない状況にある。
殊に、生産の極端な縮小から慢性的な食糧難に陥った状況は甚だしく、秋から開始されたバンクーバー協定に寄る最前衛国家に対する食料の無償援助でくいつないでいる、と言った状況が浮き彫りにされていた。

外交の最大の失点は米国との安全保障条約が一方的に破棄されたこと。
避難民を犠牲とする殲滅作戦、京都を灰燼と化す琵琶湖運河防衛構想は、到底受け入れられるものではなく、決裂は如何ともし難いものであった。


皇帝陛下は、ただ黙ってそれを聞き、殿下は身じろぎもしなかった。


被害事実の積み上げ。

しかし、それだけでも殿下には針のむしろ。
本来、政治軍事の長として、全権を陛下から委任されている立場なのだから。

けれど、実際当時、碌な引き継ぎさえ行われず、就任したばかりの殿下に何が出来たと言うのか?
本来政威大将軍に在るべきその権限を、永きに渡り徐々に干犯したのは、そのデータを揃えた官僚どもと、九條ではないか!
陛下から委託されている筈の、国勢に対する執行権は、内閣閣僚や、酷い時には各省庁にまで落ち、それに対する罷免権すら内閣の承認が必要と制限されている。
軍に対する命令権限も、今は斯衛軍に限定され、帝国軍に関しては作戦執行の承認・否認権すら統合参謀本部に帰属する。その斯衛軍は、武力行使が皇帝皇族、五摂家及びその有力分家の守護に限られ、本来守護される側の五摂家有力諸氏が自ら陣頭に立たなければ、遠征も出来ないという捻れた機構に貶められている。
全権を有する大統領制に近いはずの政威大将軍という職制が、何時しか単なる名誉職として蔑ろにされているのが現在の姿。
・・・にも、関わらずこんな時だけは、非難の矢面に立たねばならない。


理不尽。
・・・正にその一言に尽きた。





それでもプレゼンは進み、軍事関連の資料に差し掛かる。
日本帝国に未曽有の被害をもたらした、元凶、BETA西日本侵攻に説明は及んだ。


それは一瞬の違和感。

示された一枚の資料。
目に入るのは、殆どが数字の羅列。


今までは、全ての数字が、見事な迄に視覚化され、見やすいグラフや簡潔に纏められた表に姿を変えていたため、正しく違和感を感じるほど、解り難い資料だった。


暫し数字を追っていくと、漸く内容が伝わってくる。
そしてそこには、明確な悪意が見て取れた。


まあ簡単に言ってしまえば、本土防衛軍は緒戦で5000を殲滅した。
けれど2日後、北九州から山陰まで上陸されたのは、範囲が広範囲にわたり、また折しも大型の台風の影響で海上からの援護が出来ず、如何ともし難い状況だった。
(本土防衛軍は頑張った。損耗数を見て? 死して国土をまもってるんだよ。)

姫路の最終防衛戦に於いては、政威大将軍の御出陣まで賜り、斯衛軍中心で対応するも、民衆の避難が遅れ、戦場が混乱したために、大規模な援護射撃も出来す、壊滅に至った。
(だめじゃん、将軍士気高揚しないし、斯衛も役に立たないね。)

急遽、前任政威大将軍の戦死に伴い、煌武院悠陽に政威大将軍が任命。
斯衛軍は京都を動かず、そのまま31日の防衛戦に突入。
(もう、ムリムリ。姫様将軍にはむりっすよ。)


悪意に満ち満ちた裏の声が聞こえてくるような、まとめであった。

つまり、この資料が言いたいのは、姫路以西が堕ちたのは、台風という不運の所為で、本土防衛軍に非はない。寧ろ死を賭して、最大効率でBETAを道連れにした。
帝都防衛第1次防衛ラインが突破されたのは、不甲斐ない斯衛と、無能な指揮官(政威大将軍)の所為。
以降、次の政威大将軍は京都防衛まで斯衛軍を動かさず、京都落ちたのもその所為。

と、明確に謳っているばかりの資料だった。

当時実際斯衛は、京都決戦に於いて要人警護に当たっていた。
五摂家なのに九條一門には斯衛所属者が極端に少ない。部下の居ない名誉職の将軍が一人だけ。後は御子神宗家のみ。因みに、前任政威大将軍の一次防衛戦に赴いた斯衛の中には、御子神の前当主である両親も含まれていた。

そして、その要人警護に最も多くの斯衛を割かれたのが、九條からの警護要請だった。
五摂家の要人警護が主たる任務であるため、言われてしまえば出さざるを得ない。
通常各五摂家の御庭番が斯衛となり、主筋傍系の一部までを警護しているのだが、九條は分家一門まで斯衛から警護を出させ、引き回していた。

にもかかわらず、斯衛軍を有効活用出来ず、その指揮を悠陽が出来なかった、と結論づけていた。


・・・・政威大将軍不適格。

簡単に言えばそれを結論づける内容だった。
京都が堕ちたためにBETAの進軍を抑える事が出来ず、首都も喪い、今の帝国が危機的状況にある。
その主因は、前任政威大将軍の敗戦と新任政威大将軍の指揮能力不足。
そう読まれても仕方ない、というか其れを誘導するような数字だけが並べられていた。




目の前が暗くなる。
いままでの説明で積み上げた被害の“大元”が、殿下の指揮能力不足、と言われたような物。
皇帝陛下がそう断じれば、当然罷免。


「・・・・御子神。」

「は。」

「・・・何故この資料だけ体裁が異なる?」

「・・・この資料に付いてのみ、提供者から一切の変更を禁じられました。」

「これは・・・つまり要約すれば、斯衛を動かせなかった悠陽が帝都陥落を招き、この未曽有の大過を齎した、と言うことなのか?
・・・・・・・・これでは解からん・・・・。」

「・・・・では、この数字を別角度で見た資料が御座いますのでそちらを説明いたします。」




スクリーンが変わる。

会場が一瞬ざわめいた。

それは極めて精密な3次元の俯瞰図。うっすらと透ける日本地図に赤い輝点が現れ侵攻していく。
一方で現れた緑の輝点と、防人防衛線。
赤と緑は佐賀・長崎辺りでぶつかる。

左上に、日時が出ていた。


説明を受けるまでもなく明解に理解できる。
これは7月7日に対馬上陸で蓋の開いた地獄の釜。
そこから溢れでたBETAの進軍と帝国軍の抵抗を、時系列に視覚化したものであった。


重慶と鉄源ハイヴの拡大から、本土決戦は来年年初と見込んでいた帝国には、今回の侵攻は完全に虚を突かれた形となった。
それでも、構築した防人防衛線は、有効に機能し、斥候と見られる師団規模のBETAを短時間で殲滅せしめた。


だが、その後が不味かった。

BETA侵攻地点を防人防衛線と見越した本土防衛軍は、日本海沿岸に展開していた海軍、陸軍を移動した[●●●●]のだ。
防人防衛線から赤い輝点は消えたが、後方から集結する緑の輝点。

そして2日後、特に山陰に展開していた緑の輝点が移動し消える頃になって、再び今度は大量の赤い輝点が、その防衛線が薄くなった北九州、山陰に現れた。折しも接近した大型台風で波立つ海から上陸したBETAは薄い防衛戦を一気に突破、殆ど抵抗も無いまま北九州から山陰までの広い範囲に上陸を許す事と成った。


会場がざわつく。

統合参謀本部、本土防衛軍の将官が、赤くなったり青くなったりしている。

「御子神、きさ「控えおろう[●●●●●]・・・。」」

さっきあ奴を揶揄した縁者の怒声に、ポツンと呟いたような低い言葉は、しかし何故か騒然としだした背後の喧騒よりも、深く勁く耳朶に響き、背筋に冷気が這い登るような、底知れない迫力を以てその声を封じる。

「・・・御前である。陛下以外の発言は受けぬ。・・・この場に親類縁者の関わりは無い。」

「 !!! 」

先程の揶揄を冷徹な視線と厳然とした言葉で制したその態度は、とても高が17の若造には思えない。聞いていただけでも背筋が粟立つ。
無数の修羅場を潜って、尚静謐とした気配。
借りてきた猫など、とんでもない。猫かぶっていたのは、途方も無い猛獣。
・・・まるで長大な剣牙を持つ漆黒の迅豹が身じろぎしたかの様だった。

誰も声を発しない。発せない。

見れば九條兼実は、一人瞑黙している。


永きに渡り雌伏していた猫が、本性を現し何でもないことのように本家に叛旗を翻した瞬間であった。







画面で進む状況は、後は知られるとおり。

画面に現れた黄色の輝点は住民・避難民を表し、嵐の中、防備の薄くなった海岸線を易々と抜けるBETA群。上陸を果たしたその赤い輝点は、直ぐ様侵攻を開始する。
地図上のいくつかの基地、及び集中していた西九州から緑の輝点が散り始めるが、折りしもの台風で、九州に向かった艦艇がもどるには時間を要し、避難用の大型船舶の接岸さえおぼつかない。
逃げ惑う避難民と入り乱れた戦況では、如何な有効な戦術も取れず、為す術無く諸共赤い輝点に飲み込まれてゆく。

画面上部右側には、別の角度から、と確かにあ奴が言った様に、先程の資料に示されていた数字、BETA殲滅数、帝国軍将兵損耗数、斯衛軍将兵損耗数、そして住民・避難民の犠牲者数が、カウントされていた。


「・・・コヤツらは、何処から来たのだ?」

「先の防人、そして北九州に上陸したBETAは重慶ハイヴ起源、山陰に別れて上陸したのは鉄源起源と思われます。どちらも状況からの推定ですありますが、それぞれに10万を超える規模かと。」

「・・・20万規模の侵攻であったか・・・」


更に日時は進み、7月の12日。
姫路に一次防衛線が集結しつつ在る。紫の輝点、斯衛軍が中心となった部隊だった。
海岸線の住民は非難させ、問題は無い。
相手BETAは既に4,5万に膨れ上がった軍団規模。
戦力比から次々に損耗する状況で、戦力の逐次投入をしてどうにか維持している戦線に、何を思ったか、北のBETAに追われた避難民の移送部隊が合流した。

それはどう見てもおかしなルートだった。そのまま中国道を東に向かえばいいものを、態々姫路で南下したのだ。

結果混乱した戦線は、一気に瓦解。敗走へと追い込まれる。
この一戦で前職の政威大将軍が喪われたのだ。斯衛赤を纏っていた御子神少将・大佐夫妻と共に。


「・・・・この転進を指示した者は誰か・・・?」

「私には、観測された事実以上の、“指揮系統”を伺う権限は与えられて居りません。」

「・・・・統合参謀議長、二條宗房。」

「は・・。・・・そ、早急に調査いたします。」

指名された中将は今にも倒れそうに狼狽えながら、必死に言い繕う。

「・・・既に5ヶ月も経つ今になって、前将軍職を喪った原因すら掴んでいない、と言うことか。」

「 !!! 」

「この事実からは、本土防衛軍が斯衛軍の足を引っ張ったとしか思えないのだが、どうか?」

「そそ、それは、わが軍には、けして、その、そのような意図は・・」

ブルブル震えながら、言い募る姿は、何か裏がある、と思われても仕方ないくらいの動揺。
混乱の中隠されていた事実を知り、斯衛将官には憎悪の目で統合参謀本部を見る者さえ居る。

「恐れながら言上致しまする。」

割り込んだのは、九條兼実。

「・・苦しゅうない、申せ。」

「・・・成程、御子神の集めたデータは確かに事実、当時の流れに相応な経緯と存じまする。
されど、当時戦線は乱れ、将兵・避難民とも疲弊し、このように俯瞰的な状況が見えていなかったことも事実。今になって分析すれば、という事でございまする。
BETAどもに蹂躙された山陰から逃げ延びた輸送隊が、船舶による移動を求め南の海を目指しても、致し方ないかと愚考したしまする。」

「・・・・・・では、その判断は正しかった、と?」

「・・・それは在り得ませぬ。
状況を勘案し、相応の処罰を科すことを、我の名においていたしましょうぞ。」

「・・・あい、判った。」

九條兼実の能面のような顔の、僅かに唇が歪む。
御子神の醸しだした場の雰囲気と皇帝陛下の鋭い舌鋒が、九條の予定を大きく逸脱したことは、確かなのだ。



そしてそれは、続く帝都防衛戦の推移に於いて、皇族・五摂家を守護しながらも、果敢にBETAを殲滅し、帝都の最後まで残り続けた斯衛に比べ、残された本土防衛軍は右往左往するだけで定まった戦術がなく、皇族・五摂家に先行する形で東に逃げ堕ちたことも暴露され、冷たい視線にさらされる。
皇族・五摂家は帝都と命運を共にすべきでは、と具申した一條基良本土防衛軍少将が、自分も同時に逃げていたことを指摘され、その場で顔を真っ青にして貧血で崩折れた。
その茶番のせいで、更に優秀な斯衛軍将兵を多数喪ったのだから。

現実的に損耗数の少なかった斯衛は、戦闘を忌避していたわけではなく、寧ろ損耗当たりの殲滅率が高く、瑞鶴や武御雷が配備されるその実力も明示されたのである。
先程の資料では意図的に隠されていた撃墜率が示された所為だった。

・・・・・・私とて、当時第16大隊に属し、皇族・五摂家の避難に随伴した。
殿下ばかりでなく、斯衛も含め臆病で無能と断じられかねない先の一葉の資料には、一角ならぬ憤懣を感じていたのだ。
それは、本土防衛軍の指揮の下に従った帝国海軍や陸軍も同じような指示に疑惑を募らせていたらしく、疑り深い眼差しで、参謀本部・本土防衛軍上層部を見るばかり。


斯衛を動かせなかった殿下が帝都陥落を招き、この未曽有の大過を齎した、と取られかねない数字が、あ奴の集めたデータから別角度で時系列に解りやすく見せる事により、本土防衛軍の判断ミスこそが、容易い西日本の陥落を招き、前職政威大将軍すら喪わせたことを暴きだしたのだ。



胸のすく思い、と言うのは此の様なことなのであろう。



猫を被っていたあ奴は、初めてその本性を九條に晒し、あからさまな叛旗を翻してみせた。
長年の雌伏、殿下との友誼、何も出来ぬ小物を使って殿下を突き落とす、と言うのが九條のシナリオ。いかにも九條らしいやり口。あ奴を侮った九條を完全に謀り、そしてそのやり口を知るあ奴は、その口裏に乗るように見せかけて、牙を剝いた。
くみやすい猫と侮ったあ奴は、その片腕毎リードを引きちぎった、獰猛な迅豹。

流石の九條もカンペキにやりこまれ、表情が硬い。






だが、あ奴の仕掛けたギミックは、それだけに留まらなかった。


「・・・・では、皇帝陛下に一つ種明かしを致します。」

「・・・なんと?」

「西日本に於いて、在住した4000万のうち実に3600万人もの臣民を喪うに至りました。この事に大変心痛めた殿下は、国際的な非営利組織である“シャノア”に、避難民の補佐を依頼しています。
その際の的確な指示が“奇跡の逃避行”を実現しました。」

「!、なんと、あの逃避行は悠陽の指示であったと申すか?」

「然様にございます。」

「どのような的確な指示をしたのだ?」

「それは、ご本人にお尋ね下さい。」

まさかの指名であった。
殿下がそんな指示を出していたなど、私でさえ知らない。

殿下は一度あ奴を見た後、口を開く。

「愚考ながら申し上げます。
大規模な避難、つまり移送では、ボトルネック、即ち最も狭く、通過量が絞られる箇所を如何に抜けるか、によって全体の移動速度が決定されます。
今回の避難に於いて、最大の難所は、紀伊半島に残留していた避難民が集中し、且つ絞られる大河川である木曽川、そしてその先、天竜川、富士川がそれに次ぎます。」

「ウム。」

「それでは、ご覧下さい。これが実際に推移した避難状況、及び実際の映像です。」


続けて流れるシミュレーション。
舞台は、京都壊滅後の避難状況。

避難指定区域から一斉に動き始める黄色い輝点。追うように侵攻する赤い輝点。
黄色い輝点は徐々に集まり、流れと成るが、殿下の言ったように紀伊半島からの流れは、ボトルネックと成った木曽川で滞る。

が、そこで新たな流れが生じた。


海へ。

画面右下に映像が映し出される。

木曽川の護岸壁に連なった小舟から、避難民が海に出、そして大型の船舶に収容されていく。民間から借り上げた船舶も含め、実に数千隻。それが生き物のように連携し、多くの避難民を収容していく。

ボトルネックの流量を削減する事により、自主避難を続ける人の流れも、その速度が飛躍的に上がった。

それは、避難が進行するにつれ、天竜川や富士川でも行われた。


結果、避難民の殿は、一度もBETAに追いつかれることなく、全てが関東以北に逃げ切ったのだった。


「尚、これはこの措置が執られなかった場合の避難状況です。」

先のボトルネックに於ける大渋滞。後方に続々と集まる避難民に対し、通過する量が明らかに細い。

やがてBETAが殿に食いつき、北に散るが、それでも追いすがられ、結果2500万の避難民のウチ、1/3に当たる800万人が喪失される結果と成っていた。

“奇跡”と言われ、“マジック”と言われた撤退戦逃避行。

それが、まさかこの席で種明かしされるなどとは、誰も思っていなかった。



「実に見事である! 誠に天晴れであった!!」


ずっと渋い顔をしていた皇帝陛下のご尊顔が、今日初めて輝いた。







「ウム、日本帝国にとって、今後は益々厳しい状況になろう。
しかし、悠陽、そちは、新たな希望をも抱かせてくれる。
今後の帝国を頼もうぞ。」

「勅命、謹んで拝領致します。」

「ウム。・・・・御子神。」

「は!」

「宗家に此処まで楯突くなど、中々剛毅な性格をしておる。
朕の名に於いて、今後もその家名、赤を纏うことを許す。」

「ありがたき幸せに存じます。」

「・・・悠陽を頼むぞ。」

「は!」

「・・・なにか、望む物は在るか?」

「望む物は在りませぬ。望む事は帝国の安寧。
故に、大変心苦しい仕儀でありますが、もう一つ、事実を報告いたします。」

「・・・申してみよ。」

「・・・・武家の在り方として、義に背けば親でも弾劾[●●]致します。

先程お伝えした、前年における食料供給と消費つきまして追加データ、実際の配分量と、消費量を並べたものです。」

スクリーンが変わった。


ガタン、と音がする。
正面の参謀本部、官僚の何人かが青い顔をしている。



会場がざわつき始める。

「・・・これは・・・、配分された筈の量に対し、消費された量が、余りにも少ないではないか!!」

「・・・これらの供給元は、バンクーバー協定に基づく、国連からの無償供与。
その配分を決めているのは、“何故か”軍である統合参謀本部と関連する少数の閣僚・官僚です。
無償供与分の“輸送量”詳細と担当官が、こちらになります。」


最後の最後に投下された爆弾の直撃に、流石の九條兼実も、顔面を白くし、引きつった。







・・・思いを馳せる。

そう、あの日、私はあ奴を認めたのだ。

負けも認めた。私には出来なった、殿下を、殿下としての立場を、護りきった男。

本来護衛としてお護りする立場の殿下に、何の力添えもを出来なかった自分に対し、周到に、綿密に、来る災厄を予期し、その対処を構築しながら、九條兼実をも謀り切った鬼謀。
後で殿下にお聞きすれば、移送に於けるボトルネック問題は、以前に提示され考えた。その時シミュレーション映像も見ていたらしい。
話を振られた一瞬でそれに思い当たった殿下は、避難に際し問題点と成る箇所を的確に示した。

その呼吸に、あ奴が殿下の隣に並び立つことが悪くない、とも思ったのだ。

結果的に奇跡の逃避行を成し遂げ、マジックを仕掛け800万人もの臣民を救ったのは殿下、と言うことになった。
“シャノア”の設立者があ奴であることは、その後で知ったが。
黒猫とは笑止。黒豹でも足らぬわ。


その後、“行方不明”という最大の裏切り行為で姿を隠していたが、今日、再びその姿を見せた。
私が懸念していた状況には、陥る前にあ奴は自分でその事を殿下に認識させた。

・・・その上で、協力しようと。

記憶が無いのは本当らしいが、確かにこの手口、御子神彼方だなと、一瞬で理解してしまった。

ならば記憶に無くても記録にあるという、過去のあ奴があれだけ可愛がった殿下を、今のあ奴が無碍にするわけはないのだ。








「・・・時に、真耶、一つ訪ねたいのですが、先程の榊の言葉、どう云う意味なのでしょうか?」

「・・・イケマセンね、殿下。そこは素早く察知して、一声掛けるべきでございました。」

「?・・・・」

「・・・・後ろ盾とは、役目としての意味はでは御座いません。
榊殿の言葉通り、“殿下の後ろに立つ者に君がなれ”、後ろ、つまり、背に立つ君、背の君[●●●]になれ、と言う意味かと。」

「え・・・背の・・、!!!!っ・・・・・」

・・・・漸く認識したらしい。

まさに茹で蛸レベルまで赤くなり、硬直している。普段自らを律する殿下にしては、珍しい。

「勿論、殿下が望まないなら榊殿の話は単なる先走り。」

「・・・え?・・あ・・・・」

「・・・そして、一切の記憶をなくしている彼方殿に、殿下が望まれなければ、これもなかった事になります・・・。」

「 !!! 」

殿下は幼い頃からずっと“兄さま”として接していたせいか、ご自分の感情には今ひとつホヨヨンとして無頓着だったりします。
他人事、特に冥夜様の事には聡いのに・・・。
ですが、殿下ももうすぐ18、そろそろキッチリ認識ハッキリ自覚していただかないと困ります。

私が殿下のお相手として認めるのはあ奴だけ、そして記憶を喪ったとはいえ、強かなあ奴の心獲れるか、殿下のご努力しだいですわ。


Sideout




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