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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/01/23 23:22
'12,10,22 upload  ※テンプレが外れんっ!
'15,01,23 誤字訂正


Side 悠陽


水平線上に見えた“それ”は、輪郭のぼやけた靄の様にも見えました。
光学迷彩とはいえ、完全に透明化するわけでは無いので、視線を凝らして意識を向ければ判りますが、余り航空機の飛ばない昨今、低空で超音速による衝撃波でも出さない限り、空を往くこの機を認識する方は稀でありましょう。
速度は出ていません。今はラムジェットもカットしてほぼ滑空しているようです。
佐渡から約400kmはなれたこの地、佐渡の最高標高がほぼ1,200mでありますが、途中北関東に2,000m級の山地が在り射線を遮るため、ここ東京周辺はほぼ5,000mまでの高度が安全圏であると言われています。ですので安全の為というより秘匿姓に配慮し高度50m程度、機は海面を舐めるように進入してきました。


「!!、馬鹿者っ!! 進入速度が速すぎるっ!、此処は滑走路では無いんだぞ!?」

着陸管制していた担当官が悲鳴に近い叫びを上げます。
チラリと視線を戻せば、既に光学迷彩を解除したXSSTは、ランディングギアを降ろし、かなり接近しています。再突入艦艇らしからぬ機動性を追求した前進翼を広げ、そのまま滑走路進入をするよう滑り込んで来ました。

「!!、突っ込むぞ!?」

周囲、数少ないとはいえ、数人の護衛もざわめいた時。
XSSTは僅かな逆噴射と共にカナード・尾翼を最大に立てて軽いコブラ[●●●]に移行、さながらに獲物向かい着地する猛禽類のように主翼を立てます。
そこに空気を掴み一気に減速、ヘリポートすれすれで一瞬その場にホバリング、そして何事も無かったかの様に後輪から接地し、フワリと大型のヘリポートサークル内に舞い降りました。
落下荷重を支えきったダンパーが戻る時、僅かに身を震わせたXSSTの姿に懐かしさを感じます。

地面に突っ込み爆散する機体を予期し、叫び声を上げ掛けた皆が、口を開けたまま絶句していました。


・・・・・・・・・相変わらずです。

あのXSSTの機動は一線級の戦闘機に近いとはいえ、実際30m近い再突入艦でこんな着陸をするのは、兄さまくらいしか知りません。
・・・・VTOL機能も在るのですから、使えば宜しいのに。。
確かにVTOL噴射をした場合に比べ、その方法[●●●●]はヘリポートへの損傷が少ないのは認めます。

でも見る方が見れば即座に兄さまと判ってしまいます。御自重くださいまし。
あのコブラでフワリと浮く感覚が、クセ[●●]になるのは、お察しいたしますが・・・・。

苦笑している紅蓮と真耶に、何事も無かったように話しかけました。

「・・・それでは参りましょうか。」









専用車で停止した機体に近づきます。
上部ハッチからは、既に3人の姿か現れ、地上に降り立ちました。

赤の斯衛軍服に身を包んだ月詠中尉、国連軍のC型軍服を着た2名の佐官。
一人はその面影に見覚えのある白銀武少佐。

そして、・・・・そして。

直衛の紅蓮と真耶に続き車を降りるワタクシを認め、颯爽とした敬礼を取るその姿。
紛れもなく、あの日喪った存在。
・・・・御子神彼方兄さまでありました。



「殿下御身自らのお出迎え、恐悦至極に存じます。」

真那を含む3人は、その場で拝跪をし、深々と頭を下げます。

「ようこそいらっしゃいました。此度は非公式の会合故、堅苦しい儀礼には及びませぬ。・・・・皆、面を上げて下さい。」

「は。斯衛軍第19独立警護小隊隊長・月詠真那、勅命により国連太平洋方面第11軍所属白銀武少佐、及び御子神技術少佐をお連れ致しました。」

「大儀でありました。・・・・[]はご健勝でありますか?」

「は。万事つつがなく。・・・・詳しきは、そこな白銀少佐がご存じになって居られます故。」

「!、然様ですか、それは重畳。後ほどゆるりとお聞かせ願いましょう、・・・ね?、白銀少佐。」

未だ少年と言って差し障りない風貌ながら、甘さを削ぎ落したような精悍な顔に、打って変わった子供のような邪気のない笑顔を浮かべます。
あの娘[●●●]の幼馴染にして、今の、仮初ではありますが同期。この屈託の無さがあの娘の心を捉えたのでしょう。

「勿体ないお言葉です。・・・・お久しぶりです、殿下。
国連太平洋方面第11軍横浜基地A-00戦術機概念実証試験部隊部隊長白銀武、先日帰国と共に着任致しました。」

「誠に重畳でありました。無事の帰還を大変嬉しく思います。」

「ありがとうございます。此度は突然のお願いにも関わらず、この様な機会をもうけて戴き、重ねて深く感謝いたします。」

「構いませぬ。なにやら重大な案件もある様子、こちらこそ期待しておりますよ・・・。・・・そして御子神少佐。」


逸る気持ちを必死に抑え、儀礼通り順番に挨拶を交わして来た。

「・・・・同じく戦術機概念実証試験部隊部副隊長御子神彼方。過日着任致しました、殿下[●●]。」

・・・その固い言い方に少し戸惑います。
兄さま[●●●]なら、儀礼には及ばない、と言った時点で砕けてくると思って居ました。

「・・・・・お久しぶりです。兄さま[●●●]。ご生還、・・・誠に、誠に、喜ばしく思います・・・。
どうか、昔通り“悠陽”とお呼び下さい。口調も兄さま[●●●]らしく在りませぬ。」

「そう・・か。では口調は戻すが・・・。
こちらも、久方ぶり・・・と言うのが筋なんだろうが、悪いな。
記録は知っていても、俺自身は一切覚えがない。」

「!!・・・・」

え・・・?

「・・・・・月詠中尉や鎧衣課長から聞き及んでいると思うが、既に記憶野は一度完全に喪われ、個人的な記憶の回復可能性は絶無。
・・・つまり殿下[●●]の知る御子神彼方は、あの日落雷で喪われた。
今此処に居る御子神彼方は、殿下の知る御子神彼方とは別人[●●]と思ってくれ。」

「・・・・・・・・・・・・・・それは・・・兄さま[●●●]、・・・では、ない、と?」

あまりの言葉に強ばるワタクシ、周囲も緊張します。
姿も、声も、その口調、雰囲気、全てが兄さまです。それは間違いが無いのです。
けれど記憶の消失・・・。

それは確かに兄さまにとって見ればワタクシは見知らぬ相手。その記録を知ったとしても、ワタクシ自身の事を記憶では一切何も知らないと言うこと。
ワタクシはワタクシの主観でしか見ていませんでしたが、相手の立場に立てばその戸惑いも理解は出来ます。
と言うよりも、指摘されて初めてその事実を、漸く理解したワタクシ・・・。


「・・・ああ。そう呼べば、殿下は前の俺を期待してしまうだろう?
・・・・申し訳ないとは思うが、俺はそれに応えることが出来ないんでね。」

「!!・・・・・・。」

再会の喜悦が凍り付き、顔から血の気が引いていきます。足下が崩れていくような喪失感。
けれど・・・それが厳然とした事実。

「・・・それを認識して尚、名前で呼べ、と言うのならそうしよう。」

「・・・ではワタクシには、“兄さま”ではなく、御子神と呼べ、とでも?」

混乱のまま、八つ当たりのように言葉を叩きつけます。


「・・・いや、悠陽[●●]が嫌でなければ、“彼方”と呼び捨てで構わない。」

「 !!! 」


“悠陽”・・・。その声で、同じ言い方で真っ直ぐ呼ばれ、身体の芯を何かが疾りました。


・・・・・・・・・嗚呼・・・。

確かに、この方はワタクシを知らないのでしょう。
・・・けれど、これは確かに兄さま、いえ、ワタクシの知る“御子神彼方”その人なのだと、改めて思います。
ワタクシが“兄さま”と呼んだ“過去”に応えることは出来ない、けれどその名の示す通り“彼方”として“未来”に応えよう、と言ってくれているのでしょうか。


・・・・そうですね。

彼らが此処に来たのは、ただ旧交を温めに来たわけでは無いのです。
香月博士の名代として、この国、ひいては人類の“未来”の為に何を成すべきか、それを話に来たのですから・・・。


・・・ワタクシは、まだまだですね、彼方[●●]
そなたに苦言を呈される今の今まで、政威大将軍としてではなく、煌武院悠陽としてしか此処に居なかったのですから。

確かにワタクシは、サヨナラをする必要があるようです、・・・・“兄さま”と、そしてその“甘え”に。
共に過ごした過去は既に貴方の中から喪われました。けれど、ワタクシの中には今も確りと残っています。ワタクシを慈しみ、育んで、そして護って頂いた、大切な記憶として。
けれどワタクシは、これからのBETA大戦を生き抜いて、民を護り、国を治めて行かねばならない立場。
その責を有するワタクシが、またも“兄さま”甘えるなど、許されることではないし、何よりも“兄さま”が望んだワタクシの姿では在りませんでした。

そして、それでもその未来に向い、彼方[●●]は今も生きて、ワタクシの傍に居てくれる、と言うのですね・・・?。



「・・・承知いたしました。・・・それでは、宜しくお願いしますね、“彼方”。」

「・・・・・・・ああ。」

しばらくワタクシを見つめた後、そうぞんざいに応えた御子神彼方は、けれど先ほど眼にして以来、初めてワタクシに向けて、太々しいくらいの笑みを刻んでくれました。


Sideout




Side 榮二


人目の多い帝都城を僅かにはなれた、浜離宮庭園、その一角にある茶室。
悠陽殿下自らが亭主となり、茶を点てていた。

先に通され、待っていたそこに遅れてきた客は、国連太平洋方面第11軍横浜基地A-00戦術機概念実証試験部隊部所属、白銀武。
先日渡されたデータの中で、光線属種を翻弄し、BETA制圧を唯の“作業”としてこなした単騎世界最高戦力。
そして所属を同じくする御子神彼方。こちらはかって、かの“弾劾”を仕掛け、今の殿下の立場をお護りし、そして今回提示されたデータではヴォールク攻略に於いて奇跡の戦術を立案・実行した男。

彼らがその“奇跡”を成し遂げた原動力、新概念のOS、それがオレがこんな固い席に呼ばれた理由だろう。
何しろ他の列席者は、斯衛軍副司令官紅蓮醍三郎大将、日本帝国内閣総理大臣榊是親首相、情報省外務二課課長鎧衣左近という、錚々たる面子なのだから。


先程茶が点てられるのに先だって、鎧衣課長より彼らの来歴が紹介された。オレと榊首相が知らない為だ。

それによれば、白銀少佐は98年のBETA横浜侵攻で被災。BETAに襲われ辛うじて命を長らえた物の、記憶喪失に陥った事と、たまたま救助したのが極秘活動中の機密部隊。しかも助けてくれた戦術機のパイロットが負傷する中、その戦術機を操縦して危機を脱し、そのまま戦地任官で極秘部隊所属となった、とのこと。
強化装備無し、簡易のヘッドギアでいきなり戦術機の操縦など信じられなかったが、彼の戦術機適性値を聞いて唸る。恐らくは数値的に世界最高、通常の値から完全に1桁ずれていた。これだけあれば、生身でも細かい統合制御は無理としても、移動操作位なら可能だろう。
そのままその極秘部隊で過酷な任務を2年間経ながら、今年の春先にその所属した部隊は壊滅。その時のショックで逆に記憶を取り戻した彼は、最後の作戦の際に使用した彼の機動を実現する新概念のOSを上梓するために正式任官となり、今までの成果とOS発案の勲功により少佐として今の国連横浜基地に帰属した。
一応正式訓練経験が無いため、訓練校にも併属し、そこでは殿下の縁者である御剣息女、そして榊首相の息女、更には鎧衣課長の息女とも同期で在るということで、暫し話が逸れたが・・・。

一方で御子神少佐は、99年の明星作戦の時G弾の爆発影響により発生した落雷に撃たれ、昏睡状態に陥ったという。当時周囲の配慮により敵の多い国内を避け極秘裏にハワイで治療を受けていた。どうにか年初に覚醒した彼は、その時点で個人的な記憶野をほぼ喪っていたが、PC上に残した自らの記録を辿り、リハビリを実施。たまたまその地で邂逅した白銀少佐の特異な機動概念を実現するOSに興味を持ち、彼とプロトタイプをくみ上げた。
その地で他にもいろいろな技術を習得した彼は、作戦唯一の生還者・白銀武と共に、本格的に新OSを組むため、同じ横浜基地に技術少佐として帰属したという。
99年の行方不明以降、斯衛軍に在った軍籍は一時凍結しており、こちらも復帰を果たせば併属となる。


「・・・しかし、何故横浜基地である必要が在ったのかね?」

「それを今から説明致します。かなり衝撃的な話と成りますので、殿下に点てて戴いたお茶で心鎮めて下さいね。」

そう言う白銀少佐は、年相応に朗らかに笑ったが、その眼は真剣だった。




茶が饗される間に、茶室には不似合いなモニターが展開する。
一応極秘のプレゼンも可能な賓室でも在るわけだ。



まず、そこで示されたのは、・・・・・オルタネイティヴ4 という極秘計画についてだった。

95年に横浜の魔女、立案者である香月夕呼博士を司令官として、帝国が誘致し、開始された極秘計画。
博士の理論を応用した、量子電導脳を搭載する00ユニットによって、BETAに対する諜報を行い、その情報収集を目的とする。
更には、それらもたらされた情報による対BETA戦略の構築をめざし、現在国連横浜基地で推進中の計画だという。
その誘致には榊首相が積極的に関わっており、それは一方で予告無しのG弾による戦果に気を良くした米国が提案した計画、G弾によるハイヴ殲滅とバーナード星系への10万人規模の移住がセットになった米国案抑止の為、正式採用された経緯もあるらしい。
但しその米国の計画は、今も米国のごり押しによって第4計画の予備計画となっており、もし第4計画が失敗した場合、直ちに発動されるという。
その為第4計画には、第5計画やそれを推進したい米国主流派の妨害工作が頻繁に在るとの事で、香月女史の秘密主義も漸く一部が納得できた。


・・・・しかし第5計画は酷い計画だ。

母なる大地を汚し、10万人ぽっちで辿り着くかどうかも判らない異星に向かう。
元々フロンティア精神ばかりが旺盛な米国人が考えそうな計画だった。その開拓によって過去、一体どれだけの原住民族が犠牲になったのか。全く理解も反省もしてもいない訳だ。


「そして今回の報告は、全てこの第4計画に基づくモノとお考え下さい。
そもそも、オレが所属していたのは、その第4計画、香月博士麾下の威力偵察部隊、通称ハイヴダイバーズでした。」

「「「 !!! 」」」

「・・・これがオレの、その部隊での最後の作戦、“銀河作戦”の映像です。」


次に示されたそれは15分程のダイジェストでは在ったが、その壮絶な映像は、色々な意味で衝撃だった。

広間に溢れるのは、なんとフェイズ3ハイヴの総BETA数にも相当する15万と言う規模のBETA。
そこを“機動”で切り抜け、殲滅する部隊の何という高みに至った“技量”、それでも届かない“果て”。
聞いたこともない非合法の部隊。しかし所属していたのは、寧ろ“自らの意志”で、死地を求める戸籍のない“死者”達。
結局、白銀に託された試作00ユニットによるオリジナルハイヴ[●●●●●●●●]威力偵察は、白銀を残し部隊の壊滅と共に、貴重な“上位存在”との会話ログをもたらしたのだった。

「そして、コレがその時の会話ログです。」




茶室を沈黙が支配する。

これを以て第4計画は完遂、と言い切っても構わない内容。
しかし、その会話の内容が、衝撃的すぎた。

「・・・・・・・つまり、端的に言うとBETAは創造主が作った、資源回収用の炭素系ロボット[●●●●●●●]、と言う訳か?」

「そうです。意志も思考もない、ただのロボット。
そして地球上の全てのBETAを統合し、“災害”に対して“対策”を講じるのが、この会話をした上位存在。地球上のBETAがこの上位存在を頂点とし、通信によって各地のハイヴを統べる箒型の支配構造を有することも判明しています。
ですが、この上位存在ですら重頭脳級と名付けたBETAの一種、謂わば地球に於けるロボットの分隊司令塔に過ぎず、事実上位存在は自分自身すら生命と思って居ません。
当然、人間のことも、唯の“現象”であり、抵抗は“災害”としか認識していない・・・。」

「・・・意志の疎通や、ましてや和解など到底不可能。・・・・其れが10の37乗、存在って・・・・」

「人類の逃げ場は無いって事です。
上位存在は計算上と言っていますが、もしBETAの生存率が鰯並の0.01%だったとしても、存在数は10の33乗体存在、一方で全宇宙の恒星数は密度の概算により7×10の22乗個と言われています。切り上げて10の23乗としても1恒星系当たりに10の10乗、即ち100億体のBETAが存在する事になります。

・・・・事実、このグラフを見て下さい。
左上が移住計画の目的地であり、地球型惑星と見なされるバーナード星系第1惑星の、60年代のスペクトル分布。左下が同じくBETA侵攻前の地球のスペクトル分布。
右上は最近ハッブル宇宙望遠鏡で観測されたバーナード星系第1惑星のスペクトル分布。そして右下は最近の地球、特にユーラシアをメインにした解析結果です。」

「「「「 !!! 」」」」

一目瞭然とはこのことだろう。何を言うまでもない。



「・・・我々はこの地球を護り、太陽系からBETAを駆逐しなければならないのです。」

「・・・・・・・・・コレは・・・、日本帝国云々よりも、国連に持って行く内容ではないのか?」

「当然、第4計画は国連の管轄下ですから、勿論香月博士以下、我々はその準備をしています。
しかし今、明確な打開策が無いままこれを公表したら、どうなると思いますか?」

「「「「 !!! 」」」」

・・・そうだ。我々ですら絶望的な、暗鬱な気分で居るのだ。


「・・・・・・・世界規模の恐慌と、第4計画完了による米国暴走、G弾による殲滅戦強行か・・・・。」

「・・・恐らく。それが人類滅亡の引き金になると言うのに。」

「「「「・・・・・え?」」」」

「・・・・横浜はG弾の影響に晒された唯一の地域です。
その横浜の重力異常観測結果から、ユーラシアに集中するハイヴへG弾の飽和攻撃が行われた場合、どの様な影響が出るのか、彼方がシミュレートしました。
結果、G弾の集中使用により、地球上に大規模な重力偏差が生じ、数100mから数1000mに及ぶ海水の異常分布が発生する事が判りました。
このシミュレーションに依れば、ユーラシア大陸はほぼ水没、大量の海水が移動した主な大洋は逆に干上がり、一面塩の平原に変貌。
当然海水移動により世界各地は異常気象に晒され、残されていた南半球の穀倉地帯も潰滅。
更に重力偏差は人工衛星軌道さえねじ曲げ、衛星通信網壊滅、電離層異常まで引き起こして地上通信をも途絶させる可能性が極めて高い、・・・・との予測です。」

「「「「 !!! 」」」」

「そしてこれは現在検証中ですが、フェイズ5以上のハイヴでは、G弾が無効化される可能性が懸念されています。」

「な!?、迎撃不可能と言われるG弾をどうやって防ぐのだ?!」

「G弾は既に横浜で使われています。
BETAにとって重要なハイヴを破壊した“重大災害”として認識されていない筈が無いのです。横浜戦では全てのBETAが殲滅された訳ではなく、むしろ早期に撤退し、佐渡や鉄原に逃げ延びたBETAが確認されています。そこからの情報は、全て上位存在に集められ、結果取られた“対策”を、下位のハイヴに伝達する事でBETAの戦略は進化します。
BETAによるG弾の対処方法は、彼方が予測しました。

G弾の爆発は核爆弾と異なり、グレイ元素の連鎖反応による消失に、ある程度の時間が掛かります。核の連鎖反応が分裂や融合による“僅かな質量”をほぼ一瞬で熱エネルギーに変換するのに対し、G元素は崩壊により“全ての質量”を多重乱数指向重力のエネルギーに変換し、それを維持拡大することで消費するのに時間を要するからです。
なので爆発初期、G弾の多重乱数指向重力効果域が拡がる前にそれを包含する[●●●●]規模の偏向電磁場を形成してG-11の崩壊そのものを減速してしまえばいいのです。当然初期多重乱数指向重力効果域内に関しては破壊できますが、それ以上は減速され、多重乱数指向重力効果域は縮小・消滅すると考えられます。
ハイヴを殲滅する為には、ハイヴ近傍でG弾を爆発させる必要が在るので、起爆エリアは絞り込めます。
ただし小規模の、例えばフェイズ4以下のハイヴでは、ハイヴ規模の方が小さくて機能しない可能性は在りますが・・・。」

「・・・・・・・つまり大災害覚悟でG弾を使っても、フェイズ5以上のハイヴは生き残る、と言うことか。」

「・・・そして、当然その情報が提示されても、疑心暗鬼や先鋭化した第5計画派が納得する訳がない、・・・・と言うことですね?」

「その通りです。
我々はこの事実、第4計画の成果公表に際し、実行可能[●●●●]なBETA攻略戦略を明確に示さなければ、なし崩し的に第5計画が発動し、人類が自決に追い込まれる可能性が高い、と予測しています。

現在我々は、その準備を始めて居ます。
そして、その為の後ろ盾として、日本帝国の盤石[●●]が、不可欠なのです。」

「「・・・・・・。」」


話がでかい。一介の技術左官に聞かせる話ではないだろう。しかし、実際の帝国国民、そして地球人としては人事ではないのだ。

BETA大戦が勃発して以来、ソ連、中国と言う大国が殆ど全ての国土を喪い、今はその権力維持に汲々とする支配者が今も国際社会に害毒をまき散らしている。
その中で実質一切の被害を受けていない米国は、専横を恣にしているのが実情だ。南半球の国々は、基本的に軍事的に強大な米国の庇護下にあり、離反することは考えられないし、国土の殆どを蹂躙されたEUにもかつての力はない。石油を喪ったアラブ、アジアアフリカ諸国も言わずもがなである。

その中で国土の半分をBETAに囓られながら、米国の一方的な国際条約破棄や、事前通知すらなかった勝手な大量殺戮兵器による被害に遭いながら、未だ自国のみでBETAに対する継戦能力を有する日本だけが辛うじて米国に意見できる、と言うのは理解できる。


「・・・その一端が、示されたそなた達のシミュレーション映像・・・・新OS【XM3】の力なのですね?」

「はい。示したのはヴォールクデータですが、先の映像で示したように、オリジナルハイヴの情報が既に存在します。それを元に、いま必要な戦力を分析し、今後詳細なシミュレーションを行う予定です。
これが、現在構築している新装備を使った場合の、計画成功率概要です。」

オリジナルはイヴ攻略戦を実施した場合の、各段階に於ける陽動部隊の損耗率、そして、ハイヴ侵攻部隊の損耗率が示されていた。
それぞれ、35%と40%で、先ほどの映像で見た上位存在、反応炉の殲滅が可能とある。


決して低い損耗率ではないが、不可能ではない数字。
・・・・これは、正に希望。


「・・・今考えている装備でもなんとか攻略可能な数字です。
しかし、残るハイヴを考えれば、まだまだ高い損耗率ではありますが・・・・。」

「・・・オリジナルハイヴを真っ先に攻落するというのは、対策されることを防ぐためか?」

「はい。
新装備を考案しても、他のハイヴで使えば、何れオリジナルハイヴに対策されてしまいます。上位存在が人類の抵抗を“災害”としか考えていない今しか、人類に反撃のチャンスは無いのです。」

「・・・それ故に、そなた達は、国連軍に所属している・・・と言うことですね?」

「そうです。帝国軍や斯衛では、海外のハイヴ攻略に於ける中心的な立場には成り得ませんから。」

「・・・成程、それを見越しての国連軍所属か。」


皆の表情がさっきと比べ明るい。
絶望的な状況だけ示されれば、誰でも逃避や暴挙に走る。それが今まで専横してきた米国なら尚更だ。


「・・・・しかし、何故そんなに急ぐ必要があるのかね?、シロガネタケル。」

「・・・急いでいる、と感じる鎧衣課長には理由の一端は判って居ると思います。
そして彼方を蛇蝎の如く嫌っている派閥も・・・。」

「ウム、・・・やはり気付いていたか。」

「・・・ま、それも在るんだけどな。今回はそれ以上に問題が在る。」

「・・・なに?」


モニターに展開される地図。
・・・佐渡島。

そして地図は3次元透視図に変わり、俯瞰するように旋回する画面に、光る点群が打たれていく。

「・・・・衛星、航空、海洋、無人装置による諜報、音紋・・・・全てのデータを総合して見ると、H21に属するBETA数は、年末までに30万を突破する。」

「「「「 !!! 」」」」

「これを我々第4計画メンバーは、日本、特に横浜を目指した再侵攻が近いことを示していると考えている。そして、過去のBETA侵攻パターンを詳細に分析すると、大侵攻の前には師団から旅団クラスの斥候行動、威力偵察が実施されていることが確認された。
今の増加速度とH21の規模を勘案すると・・・・・恐らくそのタイミングは11月上旬、師団クラス以上の侵攻が起きる可能性が高い。」

「「「 !! 」」」

「・・・11月に、BETAの侵攻が?!」

「統計的には・・・10日を中心とした前後5日の間に起きる可能性が最も高い。
そして其の侵攻がどういう結果になろうとも、そこから約2ヶ月後に次は10万を越える規模の再侵攻が発生する。」

「「「・・・・・。」」」

「つまり、今後の人類存続を叶える為の礎として帝国の安寧を図るには、
11月上旬に師団クラス以上のBETAを迎撃し、
その後年内にはオリジナルハイヴを攻略した上で、
新年年初までにH21を殲滅する、
と言うプロセスを完遂する必要がある。」

「むう・・・・・・」


2ヶ月・・・・。
今、帝国には、10万を超えるBETAの侵攻を止める術はない。11月に在るという、師団規模の斥候でさえ大規模な被害が予想される。


「・・・・お恥ずかしい話ですが、未だ帝国はBETA大戦に対する挙国体勢が整っておりません。
ワタクシとて、未だお飾り、歯がゆく思い、ソナタ達の要請に応えたい、と切望いたしますが、届くに至っておりません。
・・・・それでも尚ワタクシとの会見を望んだ、と言うことは、ワタクシが為せる事が何か有るのですか?」

白銀と御子神が顔を見合わせ、御子神が嬉しそうな笑みを口元に刻む。


・・・なんとなく、判ってしまった。コイツ過保護だな。

多分、御子神が殿下に求めたのはただ一点。
自らに力なきことを自覚し、周囲の献策を素直に受ける度量を示せるかどうか。

政威大将軍自らが、力を持つ必要はない。必要なのは、その時々に於いて、適切な判断が下せるか否か。そしてその判断の末に生じた結果を受け入れる覚悟が有るか無いか。
だからそれを示した殿下に、笑ったのだ。

記憶が無いのは確からしいが、コイツが殿下、ひいては帝国を思っていることは間違いないらしい。



「では、謹んで献策させて頂きます。
11月上旬と見られるBETA斥候部隊の侵攻に於いて、XM3ほか、提案装備の実戦検証を行いたいと考えます。その為にXM3を斯衛軍に頒布・教導を実施します。」

「斯衛か?!、いくらBETAの侵攻とはいえ理由なく出られんぞ?」

「・・・ご心配なく。悠陽殿下に前線に赴いて頂きます。」

「「なっ!?」」

「ばっ!?、馬鹿な事を申すなっ!!」

「・・・殿下の護衛であれば、堂々と参戦できる。しかもBETAの侵攻は此処に居る皆様の他は、誰も知りません。
時間が立てば侵攻が起きる日の確度が上がります。今最も怪しい10日を中心に前後3日、1週間の本土防衛に即した本土防衛軍の実戦演習とし、殿下の視察とともに斯衛も参加すればいいだけのこと。

・・・・尤も、斯衛には師団規模のBETAから殿下をお守りする力がない、と、閣下が言うのであれば、この策は、撤回させていただきますが。」

「・・・・くっ!!、言うに事欠いてっ!!」

「勿論、最大限の協力をさせていただきます。許可がいただければ、本日にもXM3を城内のシミュレータに換装致します。また戦術機のXM3搭載に必要な交換用のCPUボードユニットも、必要量供給したします。更に、明日より3日間、オレ自身が教導を行います。」

「実戦証明もされていないOSをいきなり使うのか?」

「先程のオリジナルハイヴ威力偵察は、XM3を使用して行われました。XM3でなければ、成功していなかったのは明らかです。公に出来ないだけで、実戦証明は、既にされています。
それに、検証は巌谷中佐がしてくれるものと考えています。
更に一つ、OSの換装に付いては、戦術機に実戦証明に明確な規定が有りません。元々のOSもバグ取りなどの小規模なバージョンアップが施されていますが、誰も騒いだことが有りません。彼方に言わせると、電磁伸縮炭素帯なども、ファームウェアは頻繁に変更されているようです。」

「ソフトウェアの更新に、そこまで無頓着だったと言うことか!?」

「ええ。それでも心配なら、選択肢を設ければ良いかと。XM3を試した上で、どちらを使うか、衛士自身に選ばせれないいのです。」

「・・・うむ、それなら構わぬ、か。」

「あと、ただ、申し訳ありませんが帝国軍に関しては、今回の11月までに全量を揃えることが出来ません。また横浜製と言うと、反射的に嫌悪感を抱くものも居ります。
そこで巌谷中佐。」

「む、オレか?」

「彼方が、現行のCPUでも動くダウングレード版のXM3Liteを作成してくれました。連携数が制限されていたり、高位の機能は有りませんが、反応性6%の向上と、主要な機能は実現しています。
これも評価し、使うに価すると判断されたら、帝国軍に頒布してほしいんです。」

「!!、現行CPUで実現したのか?」

「はい。」

成程、その為にオレを呼んだか。
確かに“横浜謹製”ある意味忌避されかねない。

こうして話を聞いたからこそ漸く理解できるが、オレとて国連横浜軍で極秘計画が進められているらしい、と言う位しか聞いていないし、、その計画を親米派と見られていた榊現首相が誘致したことは知っていた。故に横浜は米国の占領地であり身中の虫と言う認識だったのだ。博士の事も、帝国軍の腐敗を知るに連れ少しは薄らいでいたが、相変わらず気に入らないことは同じだった。

それが米国の手先、と思っていた榊首相は、逆に殿下の盾となり動いているし、国連横浜基地は米国の専横に対抗する第4計画の牙城。あの女狐、もとい香月博士が難癖をつけ、帝国軍に情報を流さないのは、今の政府に流せば、米国に筒抜けになるからと言うことだ。

随分とオレも視野狭窄に陥ったものだ。

「・・・・成程、評価させて貰おう。」


「XM3・・・、それを用いた貴様の腕は判った。しかし、他の者にも効果があるものなのか?」

「その点に関しては・・・既にどの程度のモノか、月詠真那中尉が一昨日から体験しております。」

「・・・然様ですか。・・・真那。」

「はっ!」

躙り口に控えていた月詠中尉が応え、中に入ってきた。。

「・・・ソナタの体験したXM3、如何な仕儀で有りましたか?」

「は・・・。正直に申しまして、その恩恵は計り知れません。
OS一つで、此処まで変わるのか、と驚愕されられたほどの激変でした。」

「ほう・・・真那をしてそこまで言わせるか・・・」

「・・・一昨日警護小隊の武御雷4機に導入、教導を行って頂きました。
慣熟後、昨日検証を行った戦術機の機動評価項目に於いて、全機軒並み15%以上の向上を果たしております。」

「!!15%以上!?」

「・・・それはまた・・・」

戦術機の基礎的な機動性能を顕す機動評価項目。複数の定形機動に於ける能動性を評価する。
それが20%違えば、1世代違うとも言われる。
第3世代の最後発、もっとも第4世代に近いと言われる武御雷で15%向上と言うのはそれだけで破格だ。

「既存の操作と少し違いがある故、転換当初は若干の慣れが必要ですが、小官を含めた使用後の隊員の感想は、皆口を揃え“2度と元のOSに戻れない”、です。」

「むう・・・、そこまでのモノか?」

「・・・更に、このOSには、画期的な機能が搭載されていると聞き及びました。
搭乗者のモニタリングによるパーソナライズ機能が搭載されている、と。」

「・・・それは?」

「操縦者の熟練度による機体反応速度の調整、だそうです。
先程の数値は、ほぼ初心者レベルの反応速度で出した数値。
機動に習熟し、反応速度が向上すると、機体がそれに応えてくれる、と言うことだそうです。」

「!!、それはつまりルーキーが過剰な制御に振り回されることがない、と言うことか?」

「はい。初心者から、超上級者まで、経験と技量に合った反応をしてくれるOS、と。
実際我らは一昨日使い始めたばかりでまだレベルIですが、先に教導を始めた国連軍の機密部隊では、すでにレベル3に達した者も居ると聞き及んでおります。
尚、白銀少佐の見せた光線種のレーザー照射回避は、レベル4以上なら可能であり、最高レベルが5だとか。」

「むう・・、それがXM3を使いこなす白銀のレベルか・・・」

「・・・武に関しては違うな。レベルって言うのは制御抑制レベルの事だからな。武は一切の抑制が入らない限定解除だ。」

「な、なんと?!」

「・・・武御雷へのXM3導入前に、XM3搭載の“吹雪”を駆る武殿と、小官の小隊で模擬戦を行っています。
・・・・お恥ずかしい話ですが、武御雷4騎で一矢も入れること叶わず、撃破されました。」

「「な・・・・!?。」」


絶句。
武御雷と吹雪の性能差を知っているだけに。それが事実であるならば、大変なことである。
しかも衛士は斯衛でも指折りの手練、月詠真那なのである。
ハードの改造なしに、吹雪を武御雷並にしてしまうOS。
勿論、限定解除で在るという白銀の出鱈目さも在るのだろうが、4騎を相手に一矢も受けない、と言うのは桁が違う。





「白銀・・・・協力は有り難く思います。このOSが普及すれば、将兵の死傷率が下がることは明白です。
・・・・けれど、XM3、そしてXM3Liteの頒布、供与、その対価は、いかなるものでしょうか?」

・・・そうだった。これらは全て[●●]第4計画の成果。あの雌狐が、一体どんな対価を吹っ掛けてくるのか。

「ああ、夕呼先生ですね。ご心配ありません。
このOSは、オレが発案し、彼方が組みました。全てオレ達の自由にしていいと言われています。」

「!、それは」

「そしてオレ達が望む対価、それは悠陽殿下の大権奉還[●●●●] です。」

「!!、なんと?!」

「今回オレ達は、提供する情報を、全て[●●]悠陽殿下の指示による成果、とする準備があります。
その実戦検証である演習で、突如現れたBETAを殲滅。
その功績と実戦経験を以て、殿下には大権奉還を行って頂きたい。」

「「「「 !!!! 」」」」

「・・・・その為のOS・装備と、殿下ご自身のご出陣かっ!?」

「そして、大権奉還が成った時、政権や軍部に巣食う親米派、特に第5計画推進派の粛清を行っていただきたいのです。・・・・帝国の磐石のために!」

白銀は、そう言い切った。












閑話休題




「しかし白銀・・・・その腕、後ほど確かめさせて貰っても良いか?」

強いモノに目がない紅蓮大将の一言。・・・・オレも以前は何度付き合わされたことか。
知っているのか、白銀は苦笑い。

「やっぱりそう来るんですね・・・。口だけでは理解されないと思いましたので、強化装備だけは持参いたしました。彼方なら1機10分ほどで換装いたしますので、機体を貸していただけるなら、お手合わせ出来ます。シミュレーションでも良いのですが、物足りないのでしょう?」

「うむ!、その意気や佳し!、・・・・流石冥夜の選んだ婿だけのことはある!」

「え?、なぁっ!?」

「・・・・照れんでも良い。月詠より聞き及んでおる。雷電にも通知済みだ。
“年内”と言った言葉に、これ程の“真意”と“覚悟”が含まれていたとは思いもよらなかったがな!」


何か壮大な誤解が在ったのか、orzにヘタレる白銀と、カッカと高笑いする大将。

しかし・・・そうか・・・、白銀は売約済みか。
・・・少し残念だ。
丁度良さそうな相手だと思ったのだがなぁ。

御子神は・・・・殿下があやしい? 記憶を喪ったとはいえ、アレだけ世話になった相手だ。
九條さえどうにかなれば、成婚も視野にしているだろう。血筋上は全く問題ない。
むしろ九條が取り潰しとでもなれば、一條二條は同罪だから、御子神が五摂家という可能性すらあるな。

うーむ、男が少ない時代だからなぁ、婿探しも難儀なことだ。



「・・・殿下、その件につきましては、香月博士より伝言を承っております。」

まだ入り口に控えていた月詠中尉が言葉を挟む。

「博士が?、なんと?」

「・・・願いが成就した折り、今後を見据えて抜本的な人口対策を行わねば国力の低下は必至、とか。」

「・・・そうですね、早急なる対策が必要となりますね。」

「実は、白銀少佐には冥夜様がライバルと目する方が居られるのです。ですが、博士曰く、優秀な遺伝子ほど多く残す義務が在る、とのこと・・・。」

「・・・!!、正しく、その通りですわ・・・。
・・・・博士には万謝とともに、確と承りました、と伝えなさい。」

「は!」


む・・・、少し黒いがイイ笑顔だ。

これは・・・マズイぞ唯依ちゃん!
早く参戦せねば、乗り遅れかねん!
確かに、優秀な遺伝子の確保は重要だ!
今夜には、帰国するはずだから。明日の教導に参加させるしかないかっ?!


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