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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/06 11:58
'12,10,19 upload  ※幕間 ダイジェスト風味
'12,11,01 題名のみ変更
'15.01.24 大幅改稿(pcTEに準拠:Side榮二)
'15,01,30 誤字修正
'16,05,06 タイトル修正



Side 悠陽


「・・・・・では、過日横浜基地に現れた御仁は、紛れもなく兄さま[●●●]である、との事ですね?」

「疑う余地も在りませぬな。
月詠中尉の報告通り、不幸な事故により細かい記憶は完全になくしている様子ですが、ご自分の“記録”に残されていた過去は、全て承知して居るようです。
何よりもあの飄然としたその佇まいは、御子神彼方以外の何者でも在りませぬ。」

「・・・・然様ですか、それは誠に、・・・僥倖でありました・・・・。」

ワタクシは震えそうになる語尾を抑えます。

「・・・では、紅蓮、月詠真那に連絡を。
帝国斯衛軍第19独立警護小隊の機体に対する新OS・XM3の搭載を許可します。
早急に新OSの導入、及び教導を依頼しその評価を下しなさい、と伝えなさい。
尚、本件に関わる全て事項は以降、ワタクシ煌武院悠陽の名において、最重要特級機密事項と致します。
その旨も中尉に伝達を。」

「了解いたしました。」

「鎧衣には、引き続き情報管制を。ワタクシはお飾り将軍ですので、当日の休みに那須に休養、と言う事で影武者の手配を。相応の警備もお願いしますね。」

「は。承りました。」

「・・・しかし、空路ですか。さすれば浜離宮のヘリポートが適当ですわね。周辺地域の可能な限りの人払いをお願いします。」

「彼の機はステルス性が高かったと存じます。BETAは兎も角、光学迷彩も可能だったかと存じます。」

「・・・然様でしたね。ですが兄様の意図をお聞きするまでは、九條に知られる訳には参りません。念には念を入れ、事に当たって下さい。」

「は、確と。」

・・・・思い出しました。
そういえば、XSSTの秘匿姓を良いことに、帝都を抜けだしていろいろな所に連れていってくれたのも兄さまでしたね・・・。


「・・・・紅蓮、鎧衣・・・・。」

「「は・・・」」

「・・・・ワタクシは、・・・・・あの方[●●●]が望んだ“政威大将軍”足りえているのでしょうか?」

「殿下・・・・、胸をお張り下さい。」

「・・・そうですな。それこそが彼が殿下に望む姿かと存じます。」

「・・・・その通りですね。・・・・・そなたらに、感謝を。」

諫言を心に刻む。












2年前、横浜にG弾が落とされたあの日。

それはワタクシに取っても、正に世界が変わった日でありました。

兄さま・・・御子神彼方が、忽然と姿を消した日・・・。


いつもふらりと現れる兄様は、ちょっと見てくる、と仰って出かけられてた後、消息が途絶えました。
そして伝えられた、事前通告なしの米国軍によるG弾の投下とその被害。
ハイヴと共に残された将兵を巻き込み、そして横浜は永劫の不毛の地と化したあの日。


・・・・そして、ワタクシが本当の意味で、“覚悟”を有した日。






BETAの西日本侵攻が始まり空前絶後の混乱の中、前将軍の死。
帝都防衛戦の直前、なし崩しの様な決定を以て齢15で“政威大将軍”に任じられたワタクシには、当初縁者である御剣家、警護にあたる月詠家、剣や戦術機の師匠筋に当たる神野・紅蓮両閣下以外に、心から信頼を寄せられる者が居りませんでした。
・・・・たった一人の例外、“兄さま”と呼ぶことを許された、御子神彼方を除いて。

その後帝都陥落、放棄により東へと落ち延びる中、鎧衣を紹介してくれたのも、思えば兄さま。
それ以前も、榊首相や珠瀬国連大使等、錚々たる重鎮と極秘裏に繋累を結んで戴きました。

何の後ろ盾も、庇護もなかった15の小娘。その往くべき道を指し示し、淡く照らして呉れた兄さま。


そもそも、7つの誕生日に知り合い、“兄”と呼ぶことを許されて以来、すっとその庇護の中に居たことを、あの日喪ったことで、漸く理解したのです。
憂えるばかりで、何もしない・・・・、そう、出来ないのではなく何もしなかったワタクシに対し、
兄さまが裏でどれだけの事をしてくれていたのか、知ったのはその存在を、庇護を喪ってから・・・。






7つで紹介されたとき、ワタクシの親戚筋・仕える殆ど全ての者が、兄さまを疑いの目で見ておりました。
紹介者が、九條。そして、九條繫属の御子神家宗主直系。
九條の家は五摂家の中でも、その祖を平安貴族に持ち、当時の皇家血筋とも交わりのあった家系。武家体質の他家とは趣を異にする存在。

現当主の九條兼実も表面鷹揚とし、穏健で意を発しない、と見られていますが、裏では何をしているのか判らない、という風評でありました。
武家の仕来りや、斯衛にすら距離を置く五摂家としては異端であった故、兄さまの紹介は、あからさまな懐柔手段、としか見られなかったのです。
曰く、九條の回し者、密偵。
犬とまで呼ばれていた事を知ったときには、怒りよりも哀しくなったものです。
それを承知の上で、しかし兄さまは、事あるごとにワタクシの元に足を運んで呉れ、やがてワタクシにとって、もっとも頼れる存在となりました。
そう、“兄さま”と呼ぶことを願うほどに。

当時他にも紹介を受けた有力各家の子女は数多くいらっしゃいました。
その中で、唯一兄さまだけが、ワタクシを“7つの子供”と見ず、“煌武院悠陽”として見て呉れたのです。
他愛ない遊び相手や、子供の世話を言いつけられた年上、と言う立場ではなく。

兄さまの語る世界。そして、実際に見せてくれる数々の事象は、子供心にも深く響きました。
それは、今になって漸く理解できる“政威大将軍”として求められる素養、“現実”を知ること。
おべっかや、虚飾に埋もれた綺麗事ではなく、ただ其処にある生々しい事実。
心躍るような成功事例も、そしてやがて長じるに従い、目を覆いたくなるような悲惨な出来事も包み隠さず伝えてくれる。そして其れに対する、背景の考察やどうすれば善かったかという対応まで。
それらを物語のように聞かせ、興味深く語りながら、ワタクシが自分で悩み、考え、決めることを黙って待っている、そんな兄さまでありました。

当然ワタクシ自身は、早くにそういった知性に触れ、尊敬し、誰よりも私淑していましたが、ワタクシの周囲にはそれを一切顕すこともなく、従容とその酷い評価に甘んじていた兄さまです。
兄さまを私淑するワタクシへの忠言、諫言も数え切れないほど在りましたし、恐らくはそれ以上に皮肉や暴言をぶつけられていた筈です。
けれど、兄さまから訪れる以上、それを力ずくで止める事は、明確な五摂家間の対立と見なされるために表面化しませんでした。
結局、兄さま自身はどんな誹謗中傷も何処吹く風で、ワタクシには一切嫌な顔も見せず。
その誤解に悲嘆するワタクシに、実害はないから構わない、むしろ宗家に警戒される方が厄介、と取り合ってももらえませんでした。
宗家にバレると会いにくくなるからね、と言われれば、黙るしかありません。


そう。

今思えば、7つの邂逅から、折りにふれ説かれた、その心構えや考え方、示された事象と考察。勿論、幼き子供に諭すのに、最初は寓話や、他愛ないお伽話のような形態をとっていましたが、今思えばそれらは全て為政者の考え方、そして民衆の考え方を、幼いながらに考えさせ、認識させるもの。
中学就学年齢以降は、それが更に政治から、経済、行政機構や、社会の在り方といった内容にまで及んでいました。

それが全て帝王学に近かった事を漸く認識できたのは、中学で次期政威大将軍候補の筆頭になって以降でした。






そして、’98年BETA西日本侵攻の混乱の中での政威大将軍就任と敗走。

西日本の前線が為す術もなく崩壊し続け、潰走に潰走を重ねる中、喪われた3,600万の命。更に危機に晒された2,500万人に登る避難民の、実に半分以上を輸送したのはNPO “シャノア”でした。

それは歴史にも残ると言われた伝説的な撤退戦。
将軍は帝都と命運を共にするべきという、九條兼実の茶番を撤回できたのも、迅速な帝都周辺の避難があったからからだった、と知りました。
当時マジックと評された其れは、誰もその全容を把握して居なかったのです。

一方で、兄さまは衛士資格を有しながら、戦術機に一切乗ることもなく居た帝都防衛戦。
BETAに臆した衛士、と言うのが兄さまの評判でした。


当時九條側にも、そしてワタクシの傍に於いても、周囲は敵ばかりで、そしてワタクシに対しては過保護だった兄さまは、誰にも知られず、準備を進めておりました。


・・・・・・知り合ってから実に9年間、兄さまが行方知れずになる数ヶ月前、`99初頭に兄さまが起こした“弾劾”まで、その実態を隠し続けたのです。








翌年初頭の恒例報告会、皇帝陛下の評価は、極めて厳しい物になる、それが大方の予想でした。
通過儀礼的な意味合いが強いとはいえ、陛下とてご意見をお持ちになります。
昨夏に於ける西日本の喪失と、3,600万人もの人命が喪われ、更に帝都まで陥落放棄したこと。

それは、その直前に大将軍就任したとはいえ、あってはならぬ損害。


その時、そのプレゼンを行ったのが、兄さまでありました。




会場にはニヤニヤ顔の九條一統。
顔色を無くし、やはり九條の犬、真耶などはそう言って罵っていました。

報告は当然ワタクシにとって厳しいものに成るはずで、このタイミングでのあからさまな背信、離反を示すその抜擢。
それは、もはや九條が政威大将軍と言う職そのものを、見限った証。
箸にも棒にもかからない者として、更なる奈落に突き落とさんと、ワタクシが慕い懐いていた兄さまをして糾弾する、と言う悪意がアリアリと透けて見えました。

ワタクシの周囲の皆が、歯を食いしばり、臍を噛む中、けれどワタクシだけは、不思議と落ち着いていたのです。



始められたプレゼンは、純然たる事実の積み重ね。その意図が無かろうとも確かにワタクシにとっての針の筵。
九條に指弾されるまでもなく喪ったのは何もしてこなかった、出来なかったワタクシの罪。
そう思い唇を噛み締めて耐えることしか出来なかったワタクシは、場がざわざわとどよめいていることに、気づくのが遅れました。


九條一門からの質問や制止を、御前への説明中である、の一言で切って捨て、更に示された資料。


いつの間にか、資料は、本土防衛軍が冒した失策から、防衛軍全体が如何に崩れていったか、という趣旨に代わり、戦域全体に渡るシミュレーションへと展開していました。
BETAに対し甘すぎた見通し。奢り。本土防衛軍の立てた戦略自体が不足していたこと。
その裏で行われた、米国の安保条約放棄。

一方でNPOに協力を求めた撤退戦では、本来喪われるところだった1,500万の難民を、安全圏まで避難させたこと。
戦線と避難が交差することで混乱する陸上輸送に対し、BETAの手が届きにくい海上輸送を展開、ホバークラフトによる機動性。海上に展開された大型の貨物船団。
陸上輸送に於けるその総量を最適に間引くことにより、混乱や渋滞を減じ、避難全体の速度を速めたその手段。
当時、誰も知らなかった避難の手の内を、その場で全て晒したのでした。

・・・・全てワタクシ[●●●●]が執った指示[●●]として。



更には、その時点で情勢も鑑みずに献策された首都居残りの為、更に友軍の損害を拡大したこと。

シミュレーションによる動画で、緻密に構成されたそのプレゼンは、そこを指揮していた者でなければ分からない情報まで付加され、付け入る隙もなく、圧倒的な説得力を以て、訴えられました。

それは、プライドに固執し状況も鑑みず徒に被害を拡大した本土防衛軍と九條、実利を鑑み人民の生命を最優先で避難せしめたワタクシ、という構図が見事に示されておりました。

そして、あからさまに叛旗を翻した兄さまを睨みつけていた九條一統を涼しげに見やると、武家の在り方として義に背けば親でも弾劾致します、と前置きした上で、その後搬入された始めた国連の支援物資、その裏帳簿を暴露したのです。

流石にそこに当主・九條兼実の名は見当たりませんでしたが、シンパや側近の名が見え隠れし、参謀本部と九條一統が支援物資を蚕食したことは火を見るより明らか。

其処にいたり、初めて兼実が顔色を喪う結果となりました。


世間的には、完全に宗家に尻尾を振るだけの犬、と双方に見なされていた兄さまが、その雌伏を止め、飼い主の片腕を引きちぎって離反した瞬間でもありました。

それも最高のタイミングで・・・・。









衛士資格を有しながら戦術機に一切乗ることもなく、その一方で大規模な撤退戦の陣頭指揮に当たっていた事を知ったのは、鎧衣に教えて貰うまで知りませんでした。
“シャノア”を設立、指揮していたのが、兄さまだ、と言うことも含めて。

首都防衛戦では、自らの両親さえ亡くしているのに・・・・。


そして皮肉なことに、ワタクシの周囲が兄さまを初めて認め、ワタクシが政威大将軍としての立場を確かな物にしていくに連れ、逆に兄さまの足が遠のいていました。

・・・・・・明星作戦の実行と、兄さまの行方不明が報じられたのは、そんな折りでした。







以来、ワタクシは、その兄さまの志を継いで、あやふやだった“足場”を更に固めてきました。

斯衛の掌握、そして帝国海軍。

時の内閣、そして国連大使とも連絡を密にし。



・・・けれど、未だ力足らず、想い届かず。



力なきお飾り、と今尚思われている状況を、一気呵成に転覆するには、まだ足りない・・。

今こそ奸臣を排し、国家挙党が必要なこの時に。











その杞憂を払拭するが如く、もたらされた吉報。
それが、さる23日、冥夜の護衛として国連横浜基地に赴任している月詠真那から齎された、未嫡ながら血筋上、斉御司家次期当主に準じる白銀武殿、そして“兄さま”御子神彼方殿の生還という情報でした。


しかも翌24日には、驚愕の映像を携えて。

当然その真贋を確かめるべく、鎧衣課長に確認をお願いしました。
簡易のDNA検査では、既に9割9分、本人に間違いないとの結果も得ています・・・・身体的には。
記憶の欠損等もあり、兄さまについて真那では判別がつかなかった為です。


本当は居ても立っても居られなくなったワタクシですが、10年に渡って兄さまに鍛えられた自制心は、どうにかその逸る心を封じ込めました。


極秘事項。
特に、近頃またなにやら画策しているらしい九條に兄さまのその生存を知らせるわけにはいきません。

“弾劾”以降、事実上断絶している九條と御子神。
兄さまを目の敵とし、MIAとも思える行方不明で溜飲を下げた彼らが、再び御子神排除に躍起になることは間違いないのですから。





そして。

落ち着いてくると、今度は不安に駆られます。


ワタクシには、兄さまに合わせる顔が在るのでしょうか?

兄さまが幼い頃から諭してくれた“政威大将軍”たれて居るのでしょうか?

しかも、兄さまは個人的な記憶を喪っている状態、どの様な顔でお会いすれば宜しいのでしょうか?




ワタクシの心は、嬉しさと不安で、千々に乱れるばかりです。


Sideout




■14:00 技術廠 第壱開発局

Side 榮二


モニターを前に、一人座り、腕を組み、瞑想する。





今日、極秘、という事で紅蓮大将直々に呼び出されたオレは、一つのデータを渡された。

曰く、横浜で開発された、新しい概念のOS、それを使用したシミュレーション映像、との事だった。
横浜、―――魔女のお膝元。
あまりいい気分ではなかった。
魔女の名に恥ぬ秘密主義で、計算高く、同胞の命すら秤に掛ける、唾棄すべき女、という認識が強かった。
極秘計画の一旦という名目で明かされないブラックボックス。にもかかわらず、その代償として関わる技術を根こそぎ持って行った強欲な女。

何故それが中佐に過ぎないオレに、とも思ったが、どうやら先方のご指名でもあるらしい。何でも他の技術者は、信用が出来ない、とか。


またかとも思ったが、皮肉にも腑に落ちてしまった。
最近になって、オレも漸く魔女殿の警戒が理解できるようになったのか。



技術廠は国防省の管轄下であり、階級こそ陸軍中佐ではあるか、本土防衛軍には属していない。

あの“弾劾”により、統合参謀本部と本土防衛軍は、自己粛清を実施し、刷新されたことになっている。だが実態を見れば、ポストの名前を変更し、シャッフルしただけだ。実質何も変わっていない。
糾弾する統合参謀本部と糾弾される本土防衛軍が同体なのだから、粛清もなにも在ったものではない。

大陸派兵や西日本侵攻で消耗した陸軍は、現在その殆どが本土防衛軍麾下、となっている。
使い潰されるような、派兵もザラだった。


今の技術廠も、内実はその派閥ばかりだ。
海外の実力も知らず、国産に拘る国粋主義。
一方で米国に擦り寄る親米派。
どうも米国が極秘裏に進めている計画に関係が在るらしいが、ソレ以上の情報には触れるだけの権限がない。
オレの居る第壱開発局が唯一孤立している状態だ。
逆にだからこそ、参謀本部にも米国にも情報が流れない、と言う事で、オレの所に話が来たわけだ。

更に最近では国粋右派の、画策の件もある。
戦術機開発を国産に頼るべきでないと言うのなら、ソ連製戦術機までをもXFJ候補に入れよとの要求。
国粋主義者、と言うより反米・嫌米主義者なのだろう。
先のユーコンテロの際、不知火弐型Phase2二番機が2.5世代機と言われるSu-37に撃墜されたことに端を発し、ソ連指導部が色気を出し、ロビー活動が展開された為らしい。
そもそもイーブンとは到底言えない状況に於ける撃墜である。
それを理由に断ることにした矢先、―――ユーコンであの娘が凶弾に倒れた。


テロの混乱に紛れあの娘が何らかの機密に触れた事実も在ったが、恐らくはプロミネンス計画に参画している不知火弐型のXFJ計画を擱座せしめ、その隙に入り込もうという魂胆。
売り込みを掛けているソ連上層部がプロミネンス計画に参加している実験小隊に捩じ込んだ結果であろう。
追撃を避けるため虚偽の死亡報告をし、手を尽くした結果、幸いにも一命は取り留め、以後の経過も順調との事だった。
安堵したものの、意識を取り戻したあの娘には即刻の帰国を命じたが、しかしそれには断固として抗命された。


自分は正しく身命を賭してこの計画に従事している。
謀られた陰謀に何の対応もないまま別の者が来ても同じく命を狙われるだけ。
叔父様が軍の上官として送り出した以上、殉職の覚悟は“中佐”もお持ちのはず。
先方の要求が単に評価対象とすることで在るならば、実力で退けて見せる。
何よりも其の様な卑劣な横槍で帝国防衛の未来を担うXFJ計画を頓挫させるわけにはいかない。
・・・と泣きながら、しかしその勁い眼差しを一切逸らさずに・・・。

生真面目で自省癖の強いあの娘のこと。
正論であるその意思を曲げさせて帰国させれば、確実に折れる。
ヘタをするとそのまま切腹もしかねない。

親友の忘れ形見をこんな陰謀で失うわけには行かないのだが、軍人として武家として生きようと足掻くあの娘の矜持を蔑ろにすることも出来なかった。


苦渋の選択の結果、ソ連機の評価試験を了承し、あの娘は療養先からユーコンに戻った。



この人類の末期に来て、未だそこここに跋扈する魑魅魍魎。
未だ曙光は見えず―――。



さて、この深い宵闇に横浜の魔女はどんなモノを見せてくれるのか―――。









―――そして、件の映像を見たオレは、打ちのめされた。






・・・・判ってしまったのだ、技術屋のオレには・・・。
発案者と製作者だという2人の衛士、コイツ等が何を為したのか。


発想が違う、と言ってしまえばソレまでなのだが、我々戦術機の開発に永く携わってきた者が、今や“常識”と断じ、強固な固定観念で一切触れなかったもの。
・・・それを根底から覆した。

そしてその事が齎す意義に付いても、予測ができてしまった。


帝国の未来を信じ、謂わばあの娘の命まで差し出して拘泥したXFJ計画さえが霞む。
否、意味をなさなくなる[●●●●●●●●●]くらいの、甚大なインパクト。


この異次元の挙動を実現するのに必要な部品は、実質CPU1個だけ。
高性能とはいえ、量産すれば数千円単位の部品、そしてソフトウェアと言う製造コストすら必要のない“概念”で、XFJ計画が弐型で目指す以上の動きを実現してしまった。
今後、弐型が当初の予定通り仕上がったとしても、或いは秘めているPhase3まで仕上がったとしても、光線属種の照射をここまで確実に躱す機動は実現できない。



そして気づく。

そもそも[●●●●]、戦術機は、コレを実現したかったのではないか?
光線属種に予測されやすい前進機動しか出来ない航空戦力に代わり、多様な機動性を以て照射を躱し、BETAを殲滅する事をコンセプトに作られた兵器。
それが戦術歩行戦闘機、所謂戦術機であり、目指すべき到達点であったはずだ。

しかし、主機の出力を上げ、炭素帯の構成を変えて世代を上げても、未だ其処には到達しなかった。

何時しか、その大本のコンセプトさえ無理だと諦め、偏った方向に流れていたのではないか?
この舞うような機動を見ていると、そんな思いすら湧いてくる。




―――次には、笑いが湧いてきた。


技術者としては、負けた。完敗だ。この発想は、無かった。

しかし、米国が主流で、今もその殆どの特許を押さえられている戦術機の現実に於いて、そのど真ん中に穴を開ける特大の一発。
戦術機の在り方そのものに革命を起こしうる技術。
それを同じ帝国の衛士がなしたのだとすれば、コレほど痛快な事もない。
漸くフランクに一泡吹かせることが出来る、と言うものだ。



何よりも、BETAの侵略に冒される地球人類として見れば、これは希望。
今ある戦術機の継戦能力を一気に大幅に高め、人類を勝利に導く明らかな希望だ。



国家間の技術情報交換を行い、より高みを目指した次世代の戦術機を開発しようと言う高い理想の元に集まりながら、未だ機密に固執し出口さえ見えないBETA戦後を見越した政治的意図、利権絡みの企業間対立。
あの娘にその現実を知ってもらいたかったのも事実だが、それだけに終始するなら理想だけを謳い実態の伴わないプロミネンス計画が馬鹿らしく思えてくる。





紅蓮大将は、このOSを開発した衛士が、殿下と秘密裏に会談すると言った。
そこにオレの同席を求める、とも。

相手は、シミュレーションとは言え遙かな高みにある技量を示した、白銀武少佐。

そして、明星作戦以降行方知れずとなり、死亡認定まであと僅かだった、御子神彼方技術少佐。
―――そう、あの“弾劾”を起こした当人。
もっとも、ハイヴの崩落という驚天動地の戦術を構築したのが彼だと知り、妙に納得してしまったのだが・・・。
敵も、そして味方すらも9年間に渡って謀り、殿下の窮地を救った規格外なら、この位遣るだろう、と。






・・・・面白い。


あの御子神彼方が、例え魔女の元に居ようが、おとなしくしているわけがないのだ。
これに乗らない手は無かった。





唐突に、デスクの電話が鳴った。
思考を中断して受話器を取り上げる。


「巌谷だ。」

『中佐殿でありますか、情報部の都筑であります。
つい先程、アラスカユーコン基地に関して秘匿通信で連絡が在りました。』

「・・・内容は長いか?」

『あ、いえ。』

「・・・訊こう。」

『・・・“問題解消なれど、経緯詳細一切不明”・・・との事です。』

「・・・了解した。」

『は。失礼いたします―――。』


その連絡に唐突に思い至る。

いっそ・・・・・あの娘も、呼び戻すか?




あの娘の命を盾に迫られたソ連機との比較評価も一段落した。
衛士の不調とのことで暫く先延ばしにされていた評価試験が漸く実施されたのは現地時間で昨日、10時間程前だ。
結果はソ連製最新鋭第3世代機を僅差だが退けたとの知らせが、今日早朝に届いていた。

しかしその直後、Phase3改修前倒しにフランクが何やらやらかして呉れたらしく機密漏洩疑惑が掛かった事も複数筋から舞い込んでいた。
確かに形状は似る部分も在るため疑惑の対象にもなろう。
刺激をしない為にもPhase3に関しては国内での展開を予定していたのだから。
機密流用に関わると相当デリケートな問題となるためこちらも迂闊に動くわけには行かない。
危惧しつつも、先ずは何が起きたか、情報収集を各所に依頼していたところだった。

今の連絡は、それに関する続報である。
なぜか突然問題解消されたと成れば、何らかの政治決着がなされたという事だろう。
フランクが仕掛けたか、はたまたハルトウィック大佐か・・・。

捜査中拘留されていたと見られるあの娘からの報告はまだ無い。
ならばこのタイミングの帰国には抗命すまい。

―――オレは、時差を考えつつ、受話器を手にした。


Sideout




■15:00 B19シリンダールーム

Side 霞


昨日のサイコダイヴで覚醒し、前回の記憶をも得た純夏さんの状態は極めて安定していました。

プロジェクションで再生の方法を伝えた後、純夏さんはBETA からの過剰刺激により欠損していた脳神経節の自己再生を開始。
ほぼ問題なくエレメンタルフェイズで思考出来る様になるはずです。

ワタシはその後、御子神さんから教わった手法で、リーディングとプロジェクションを強化、純夏さんのアストラル体による強化を受けて、内的領域にお邪魔しています。

純夏さんは、まだ感覚器のない脳髄だけの状態だし、御子神さんのようにアストラルフェイズの知覚は出来ないので、私のプロジェクションが唯一の外的刺激、らしいです。
寂しいから来てよ、と言われ、遣ってみたら出来ました。


今も傍で早く出せーと騒ぐ脳細胞は、内側から見ても順調に回復しています。

それは、余りにも過剰な性的刺激に蹂躙され、壊された尽くした組織ではありません。
純夏さんが、自らの“意志”で再生した、真っ新のうぶい神経節。


そして同時に氾濫した脳内物質によって破壊された記憶領域も補修されて行きます。
記憶野を再構築するその作業によって、逆に忌々しい記憶はむしろぼけたので、丁度いいとか・・・。

代わりに白銀さんが虚数空間から持ってきた前の世界の記憶を上書きしていきます。
と言っても未来の純夏さんの記憶みたいなもので、白銀さんと同じ時系列の未来情報がある、と言う事になります。



ワタシは、その中で、見てしまいました。

純夏さんと、武さんの、えっとその、・・・・ハジメテのその時。

前も白銀さんの記憶で少しだけ見た事がありますが、今度は目の前で。
顔を手で覆いつつ、指の隙間からしっかり見えちゃった純夏さんの記憶。



初めはぎこちなく、初々しく。

でも、1度目が終わる辺りから、様相が違ってきて・・・。



・・・・・・・・・・・・。



・・・武さん、ケダモノですぅ!

・・・純夏さん、BETAに蹂躙されてたときより、アヘ顔もとい、蕩けた顔じゃないですかぁ!?


・・・こんな、こんな激しいなんて!?









霞ちゃ~ん?


うさみみがピクンと硬直して、固まりました、
振り向くと、指の隙間から目が会いました。

黒くは無いのですが、イイ霊光[オーラ]を纏っています。

「・・・ホント武ちゃんは、ケダモノよぅ! 
あんな、あんな激しく毎晩求められたら、BETAより壊されちゃうじゃない!

だ・か・ら、霞ちゃんワケワケ宜しくね!」



まだダメです。禁止です。もう2年は待って下さい。お願いします。

・・・御子神さん、それでもワタシの小さな身体、保つでしょうか?

・・・鞍替えしたら、副司令は赦してくれるかな・・・? 


Sideout




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