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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/08 22:10
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Side 夕呼


「・・・・サイコダイヴ?」

アタシは聞きなれない言葉を鸚鵡返しした。





まったく、彼方ときたら、次から次へと何でも出てくる魔法のポケットの様だ。

・・・・・・しかも、自分の能力をあっさりとカミングアウトしてくれちゃって。


けど、アストラル体による思考体の構築って、何よその反則!?
本気で量子電導脳クラスの思考体を自前[●●]で持っているなんて!


アタシは因果律量子論から量子電導脳の発想に至り、それが普遍的・集合的無意識領域、彼方の言うイデアルフェイズに至る可能性を見つけた。母生命や、根源、涅槃とか表現していたけど、確かに精神であるアストラル体を介して、繋がる魂の根源と言う意味では、全て同様の概念かもしれない。
一方の彼方は、落雷の結果突き落とされた奈落の底で、アストラル体の存在を知るに至り、そこから抜け出すために思考体を構築、その過程で“根源”を知り、そこから因果論に接近した。

だからこそ因果律量子論との類似性に気がついた。

アプローチは全く違うけど、いずれも“真理”を目指す知的好奇心の塊。

前の世界のアタシが、側に置いたのも頷ける。
ズルイわよね、こんな隠し玉が在るならアタシが届かなかった数式にも至れるハズだわ。BETAの由来物質が無くても、量子電導脳の領域に至り、別のアプローチで因果律量子論を語れる“相棒”がいるんだもの。

・・・・・此処の彼方はアタシのモノ、絶対返さないわよっ!





それにしたって・・・・。

10年の孤独。感覚を全て遮断された自意識。
夢に逃避したと言っていたが、そんな環境に人の精神は耐えられるのだろうか?
何も感じない、出口もなく、自殺さえ出来ない、救いの全くない圧倒的な恐怖。
この彼方をして、早く殺せと感じた底知れない絶望。
“そこ”から、まともな精神のままで、現世にまで這い上がってきたその強靭な自我[●●●●●]こそが、彼方最大の天禀なのだろう。

究極を超越した引き篭もりと表現してたけど、救いがそこに在るなら、没頭するのも理解できる。
けれどそれにもまして、知りたい、という好奇心だけで、更に100年の孤独に自ら突進した、“天才[バカ]”。
その見方で言うと、自分の興味にトコトン嵌り込むと言う意味らしいオタクという表現も[あなが]ち外していないって訳ね。







「サイコダイヴ・・・・・・・まあ、正確に表現すれば、ナーヴリンク、感覚共有による意識領域重合、かな。サイコダイヴは直感的な、イメージ先行の言い方。

社のリーディグを発展強化して、平面的に捉えていた鑑の心理ヴィジョンを立体的に感じられ、恰も周囲に存在するよう体験的に知覚出来るようにし、更にプロジェクションも発展強化して、その“世界”に於ける作用を“行動”として実行出来るようにする事。鑑の意識の内的領域から繋がるアストラル体を探索するわけだ。
オカルティックな表現では、“アストラル投射”と言う技法らしい。
社の能力を、俺が“思考体”でサポート・強化することで、実現できる。」


見れば、社がコクンと頷いた。
鑑の調査や、手法の検討で一緒だったのだろう。彼方に対しても全く警戒していない。
この娘にすれば、珍しい。


「どうすんの?  そんなコトして?」

「さっきも言ったように、鑑は自己防衛のため、破壊された思考野から“アストラル体”に“自我”を退避させている。
けれど、そこには思考体を構築出来たわけじゃないからな、“自我”のプログラムを、まるごとバックアップしたような物、つまり眠っている様なモノだ。
社がリーディングしていたのは、辛うじて残っている神経細胞に流れる、その自我情報の断片、“夢”みたいなもの。
勿論、思考野とアストラル体は繋がっているから、社が施したプロジェクションは、眠っている鑑の“自我”を刺激している。特に、武が来た後、その“思い出”には、反応していた筈だ。
それを続けて起こすのも在りだが、如何せん今のボロボロの思考野では、まともな“自我”が保てない。
武の前のループでは、それが完成された00ユニット上で展開されたから問題なかったがな。

なので、先ずは鑑を起こしに行く。

アストラルフェイズの自我が目覚めればそれを元に、BETA技術を応用して神経細胞のDNA分化を促進し再生する事が出来る。鑑の自我に沿った範囲の、最低限の思考野を構築する事が。
後はアストラルフェイズにある“自我”を戻す要領で、神経細胞の分化を継続させれば、鑑の“自我”に即した“思考野”が再生される。」

「・・・・・・可能なの?」

「鑑が起きるかどうか次第。・・・・・・だから武が必要なんだ。
武と夕呼センセは、社のようなESP系の力は未顕現だから、VRシミュレータを介して、同行してもらう。」

「!! だからあんなの作った訳?!」

「ああ。武をそこに連れていくことが主目的で、207Bへの擬似体験プログラムの方がオマケ。・・・なにせ、鑑を起こせる可能性が最も高いのが武だからな。
・・・・・・どうする? 武は行けるか?」

「勿論!!」

「・・・・・・現段階では、BETAに壊された鑑の心の残骸だ、そこに至るまで、千切れてバラバラにされた記憶野の残骸を“感じる”ことに成るから、相当の衝撃がある。
・・・・・俺が表現した過酷な状況よりも、更に厳しい事実を“体験”するかも知れないぜ?」

ナルホド、アタシでも不快に感じた歯に衣を着せないBETAによる鑑の陵辱表現も、白銀に耐性を付ける事前の心理的訓練か。

「聞くまでもない。全てを受け入れると、約束した。」

・・・・・・男の子ね、白銀も。

「・・・で、・・・・・・アタシが必要な訳は?」

「センセは理論の構築者だろう? 後で説明するだけでいいなら、留守番でも構わないが。
サイコダイヴなんて、普通は無理だ。
健常なら“自我”は強力だからな。自分の心に侵入する異物[●●]を、抵抗なく受け入れる筈がない。」

「!! ・・・そうね、勿論行くわ。」

「じゃあ、全員の意志が固まった所で、行くか・・・。」






用意されたベッドに楽な姿勢で寝かされ、ヘッドセットを付ける。彼方が、すぐ側にいる気配。

社には、白銀が付いている、というか、ヘッドセットを付けているのは白銀なので、社が側に付いている、と言うのが正しい。

それなりに危険もあるようで、場合によってはPTSDも引き起こしかねないとか。

壊れかけの意識故に無意識の抵抗や、混乱もある。
それでも、白銀は基本的根源的に鑑の求める相手であり、彼方はもう言わずもがな、こんな事をやってのける手練であるから咄嗟の時の備え、と言うことだ。肉体の物理的位置が近いほうが、把握しやすい、とか。

社は白銀の腕の中で少し恥ずかしそうだが、アタシとしては今更照れる相手でもない。



「じゃあ、始める。」

その言葉と共に、導眠されるように意識がふっと薄れ、気がつくと“そこ”にいた。





これは・・・。

これが“思惟の世界”と言うのだろうか?

何に例えればいいだろう。

宇宙空間? いや、纏わり付く様な雰囲気の密度は、むしろ粘度のある液体、サラダオイルの中に浮いているかのようだ。
そして、その中にところどころ何かの残滓が漂っているような何かが浮いている。

全体的に薄暮のような明るさと視界しか無く、漂う何かは、明滅を途切れさせながら流れ行く。

何処か茫漠とした、虚無の空間。


――先ず“自分”という存剤を強く認識しろ

背後に気配。見て確認にしなくても、誰かはわかる。

頭に、と言うか意識に直接流れ込む“声”
耳という感覚器ではなく、言葉として直接認識させる。

なるほど、意識が薄れると、“存在”が霞む。
手が、指が、歪んで油の中に流れそうになる。

――・・・本来表層意識がある場所なんだがな、流石にカラッポか・・・・。


ふと、目の前に流れた淡く瞬くモヤみたいなカケラに手を伸ばす。


!!!

その瞬間、腕にそのカケラが纏わり付く。

全身が一瞬で総毛立つ。

ソレが絡みついた腕にもたらされた、なめくじが這い回るような嫌悪感と、身体のシンを蕩かすような快感がごちゃ混ぜに成った、おぞましい感触。
正しく、腕を犯されて[●●●●]いるような、それが危険な事と分かっていながらつい委ねたく成るような、矛盾に満ちた感覚。

ゾワゾワと背筋を這い登るのが、嫌悪感か、快感か、区別が付かなくなる。
腕の神経が蕩かされた様に、痺れて動かない。

そいつは、更にズルリと肘から二の腕に這い登る。


――ヒッ!!!


微かな悲鳴を上げた瞬間、背後の気配が一閃。

何をしたのか分からないが、纏わり付いた気配から、粘性が消え、サラサラと流れていく。
虚空に流れたソレは、そのまま煌めくように消えて行った。


それでもがくがくとアタシの膝が笑い、ヘタリ込みそうになる。
浮いているのだからそんな訳はないのだが、地上なら、既に立っていられないほど力が入らない。
全身の筋肉がプルプルと微かに震えている。


マズイ・・・。

強力な催淫成分でも含んでいたのだろう、全身の感覚が異常に鋭敏になっている。
敏感な所にざわざわと血が集まり、そこが服と擦れるその感触だけで、声が漏れてしまいそうだった。
否応なく紅潮させられる肌。高まる動悸。



その意識に、ふわりと何かが被さる感覚。
それは過敏になった神経に障ること無く、浸み込むように満たしてゆく。その滲み込むなにかが、キチキチに先鋭化した感覚を徐々に宥めてくれる。
強制的に興奮させられた熱量が引き、動機や酩酊感、偽りの多幸感が薄らいでゆく。

背後の存在に安堵感を抱きながら、それらの感覚が収まるのを待った。



――表層に漂う残滓は、鑑が受けた陵辱の記憶の断片。気を張ってないと、喰らわれるぜ。

簡単に言ってくれるが、あれで断片。

おぞましいことは分かっているのに、女の性を直接舐る様な魔性。

それを理解させるために、敢えてしばらく放置したのだろう。


・・・・アレはヤバい[●●●]

昏く何処までも堕ちてゆく様な感覚。

2度と浮かび上がれないタールの海。

それさえも鑑が囚えられた“地獄”の一端でしか過ぎないのだ。それを漸く実感した。



進むとも無く、進む。

天地もなく、浮遊感が強く、歩いているわけではないので、定かでは無いのだが、深く沈んでいくという認識がある。

確かに、感覚的なイメージで言えば、深海に潜りゆくダイヴ。

周囲は変わらず昏く空虚で、時折ぼんやり光る深海魚みたいなカケラが過ぎ去って往くが、2度と手は出さない。



茫漠とした空間はやがて薄ぼんやりとその全景を浮かび上がらせる。。

闇に侵された空間は欠損だらけの心。
散らばる記憶の残滓は果てし無き悲鳴、底知れぬ悲嘆、漆黒の闇にまみれた絶望、ねばりつく諦観、際限なく繰り返す怨嗟、全てを憎む憤怒・・・。

社の言う、暗く、激しく、尖って、そして哀しい。
紛れもなく、社がリーディングしていた世界そのものが、そこに広がっていた。



――奥に進む。その表現が正しいのかもわからない。深く沈む、の方がしっくりするかしら。


どこまで行っても空虚。

時折こびり付く、冥いどす黒い快楽の塊。
身を引き裂かれる様な悲嘆。


BETAに蹂躙された精神の成れの果てがこれであった。




――まずいな。武もこっちに!

聞こえた瞬間、世界が崩れた。
奔流、激しく明滅する視界。鳴動する世界。

それは、憎悪。

昏く、熱く、激しい。

社がハレーションと表するその激流。

深層心理への侵入に対する防衛反射だという。

その怒涛を、往なし沈めながら何でもないように彼方は潜行する。




その波濤の水底、ハレーションの根源に、ソレは存在した。




深層心理の最奥部。

その空間を埋め尽くしたのはまるで海底に沈む荊の繭。

荊棘の蔓の塊が、浮いているように見える。

自己を守るように伸ばしたその刺は、剣のように長く、細く、鋭く。




そこで、事態は膠着した。












白銀が、幾度呼びかけても、社が何度投影しても、その荊棘は開くこと無く。

既になんどもその荊棘に吶喊した白銀は、血まみれだった。


――予想以上に、自己防衛反応が強い。これ以上武が怪我すると、心理的にPTSDを発症する危険性もある。
鑑の蘇生を諦めて、義体をつくるしかないか・・・・。


ここが鑑の内的空間で在る以上、それを破壊してしまう事は出来ないのだ。


――最後にもう一度だけ、遣らせてくれ。


血塗れの白銀がそう言い切った。






絶叫に近い白銀の呼びかけ。

そしてその中心に向かって投げられた、小さな塊。

荊棘は“それ”を攻撃すること無く、排除すること無く、受け入れた。
やがて荊棘は左右に分かれ、その小さな塊まで、道か現れる。
開かれた荊棘。



――何投げ入れたんだ?

――サンタウサギ。

――・・・・了解、キーアイテムだったな。・・・まあ、まずその血塗れ直せ。

え?

思惟の世界だ。強く思えば消える。

あ・・・、そうか。





そして進んだ荊棘の奥には、眠る鑑としての存在。



――純夏っ!!



白銀は、鑑をゆすり、声をかけるが、眠っていると言うよりは、死んでいるかのようにピクリとも反応しなかった。


――これ、本当に眠っているのか? まさか手遅れで・・・・

――相手は眠り姫なんだ、やることは一つだろ?

――!!

――口づけ キス ベーゼ 接吻、なんでもいいぜ。
・・・・粘膜接触って言うのは結構重要なんだぜ。体液の交換や、一種相互の遺伝子を交換する象徴。
互いに相手を受け入れる行為そのものだからな。



そして観念したように、白銀が鑑に唇を重ねた。








ぴくりと睫毛が震え、うっすらとその瞳を覗かせる。



「・・・・・・・タケルちゃん?」

「・・・ああ」

「・・・・・・タケルちゃん、
・・・・・タケルちゃん、
・・・・タケルちゃん、
・・・タケルちゃん、
・・タケルちゃん、
・タケルちゃん、
タケルちゃん、
タケルちゃん!
タケルちゃん!!
タケルちゃん!!!
タケルちゃん!!!!
タケルちゃん!!!!!
タケルちゃん!!!!!!」

鑑が白銀に抱きつく。白銀は何も言わず、受け止めた。







再会。

若いわね・・・。

白銀にとっては・・・主観記憶では4日ぶり? 大した事無いじゃない・・・。
まあ、生身の鑑とは、この世界で横浜侵攻の時以来だから、お互い3年ぶりと言うところかしら・・・・。
尤も、まだ生身とは、言えないわね。

あら?

そして喜び合い熱い抱擁を交わす恋人たちを尻目に、何故か彼方がorz状態で凹んでいた。

・・・・浮いてるのにorzとは器用な奴ね。

社が肩を叩いて宥めているのが、妙に哀愁を誘った。





そして“この空間”の主が目覚めた為か、ねば付いていたサラダオイルがサラサラと随分軽い密度に変わった。

なので、話せば声が聞こえた。

「・・・・・・ところで武ちゃん、なんでこんなトコに居るの? 夕呼先生や、霞ちゃんまで・・・・。ってか、向こうの世界の彼方君!?  なんで此処って、・・・・・そもそもわたし死ねば武ちゃん元の世界に戻るはず・・・ってわたし死んでない!? ・・・って、此処何処?! 天国?」

そして漸く落ち着いた鑑からの第1声は、正しく驚愕のセリフ。そして再びのパニック。

「え・・・?  純夏なんで前の世界の記憶在るの?」

「わかんないけど、00ユニットとして復活して、えと、・・・いろいろあって、桜花作戦で脱出して、いろいろ考えてたら、眠くなって・・・」

「お前だ、おまえ!!」


なんか投げやりの彼方。


「「え?」」

「・・・・・武が鑑のその因果情報を持ってたんだよ。
鑑の記憶は飽くまでこの世界の記憶だからな。因果特異体として虚数空間から記憶として持ってきたんだ。
当然自分の記憶ではないから、武自身は認識など出来ない。

それをキスによる粘膜接触・・・此処では概念だけどな・・・で鑑に渡した。

武は延々この世界をループしてるんだ。
ってことは、この世界群の中で、鑑純夏は常にこいつ一人。
武の記憶にある鑑も、未来の鑑そのものだ、一つの可能性としてのな。

因果導体ではないから、他の世界群の情報は引き込めないが、この世界群における、自分のループで蓄積した因果情報は、記憶として持っている。
その持っていた00ユニットとしての因果を、一気に鑑のアストラルフェイズに転写しやがった。

つまり、00ユニットで鑑純夏の意識として動いていた構成を、鑑のアストラルフェイズに転写、要するに思考体をいきなり構築したって言うこと。

・・・・・・・・このバカップル、俺が10年掛かったことを、キス1発[●●●●]で済ませやがった!!」


・・・・成程、それで凹んでいたわけね・・・初めてね、アンタのそんな様子。
普段絶対見せないだけに・・・・ちょっとそそる[●●●]わね。

それでも、一頻り喚くと、気が済んだらしい。
面倒な再生が丸投げ出来るからそこはラッキーか、と小声で愚痴っていたけど。

ふと、思う。

「・・・・今後白銀が他の娘とキスしたら、同じように因果情報が流れる可能性が在るのかしら?」

「・・・・否定はできないが、可能性としては少ないな。
確かに皆00ユニット候補だからな、それなりにポテンシャルはあるだろうが、今の鑑と違いまだアストラル体に一切触れていからな。緊急避難とはいえ、“自我”を一度転写した鑑とは違うだろ。」

「そうか、白銀の持っている情報はアストラル体だから、受け側にその資質が整わないと渡せないのね。」

「たぶんな。」




漸く状況を説明し終わったとき、鑑は目を白黒させていた。

そもそも此処は現実空間ではなく、鑑自信の意識空間で在ること。
今は鑑ではなく因果特異体となった武によってループした2001年であり、その時点でまだ鑑の知る仲間は誰も死んでなく、生身の鑑は脳髄だけであること。
前回のループで鑑に解放された殆どの武は、鑑の再構築した元の世界に戻り、ドタバタやっているだろうこと。
その際に、この世界に必要な彼方を元の世界の分岐世界から集めて引っ張り込んだため、彼方が居ること。
彼方がBETAを解析し、鑑の肉体を再構築できること。
ただしそのためには、壊された思考野を鑑自信が再生することが必要であること。

そしてBETAを駆逐するため、いろいろ画策していること。


全てを説明し終わったとき、鑑はまた泣き出し、しばらくまた白銀がなだめることとなった。

前のループで望んだ通り、呼び込んだ白銀は元の世界に戻り、それでも残ってくれた白銀が、今度は鑑を求めてループしたのだ。つまり、今の白銀は、他の世界から拉致して引っ張りまわした白銀ではなく、この世界の鑑だけの白銀、と言う事になる。
しかも彼方というオプション付きで、生身で蘇生できる可能性はあるわ、前回死なせてしまった皆は生きているわ・・・・。

これ以上無い、と言う状況なのだ。
話が出来るように成るまで、更に時間を要した。





「じゃあ、鑑も全て前の世界の事を覚えているわけね。」

「はい、先生。あ、でも、00ユニットとして貯めたBETAのハイヴのデータとかは、無いっぽいです。」

「それはいいわ。そもそも鑑はまだ再生もしていないんだから。けど、今此処でアストラル思考体ってことは・・・つまり鑑は彼方と同じ存在?」

「・・・初歩の思考体だけだけどな。00ユニットとは違うから、イデアルフェイズ接触は無理。
今後00ユニット装着すれば可能だろうけど、自我が確立していて、過去に繋がった記憶も在る以上、必要ないだろ。“超越”も今回はさせる気ないしな。」

「? なんだ“超越”って?」

「前回の武の記憶で、桜花作戦の最後の最後、何故か一瞬で荷電粒子砲のエネルギーが充填され、ラザフォード場に対応された筈の触手攻撃も弾いたんだろ?」

「確かにあの時、信じられないような力が出てた・・・・」

「鑑は、そのこと覚えているか?」

「・・・・武ちゃんの声が聞こえた気はするけど、はっきりとは・・・」

「・・・・恐らくは、無意識状態で、イデアルフェイズにシフトし、その力を使った為だと思うぜ。
なにせ、イデアルフェイズの力は、世界の力、神の力、“根源の力”、そのものだからな。」

「!!!!」

「まあ今後は使う機会もないし、極限状況の無意識状態でしか使えないとは思うが、00ユニット装着しても絶対遣るなよ。
無理な上位フェイズへのシフトは、逆に人間としての存在を喪失させてしまう可能性が高いからな。

ソレじゃなくても鑑は、世界連結や、因果導体誘引、世界ループ、と無意識の裡に、“根源の力”を使い捲っているんだ。
せっかく今回は武と念願の、“生身でラブラブモード”に入れるのに、これ以上使うと世界に弾かれるぜ。」


鑑は顔を青くしているが、それはそうだろう。

世界そのものの在り方を変えてしまうような力は、“根源”にしかありえない。
無意識とはいえ、それにアクセスしたのが“超因果体”である鑑なのだ。


「・・・じゃあ、今の純夏は?」

「・・・元のポテンシャルが高いから、武が思考体を移したことで、リーディングやプロジェクション位は出来るだろうけど。
ハッキングは・・・微妙だな。00ユニットとして電子機器へのI/Fが無いしバッフワイトも未装備だし。
・・・それでも非常識に高性能だけどな。流石“超因果体”と、“因果特異体”のカップリングだぜ。」

「複雑な気分~。BETAなんか来なければ、こんな力知らずに済んだのに。」

「逆だ、逆。」

「え?」

「BETAは鑑みたいな存在を目的に地球に来た。
外宇宙からタイタン、火星、そして月、地球っておかしいだろ。
BETAまっしぐら、だ。
奴らの求めているのが鉱物資源なら、外惑星やその衛星にだって豊富にあるはずだ。」

「ちょっと待って、タイタンてなによ?!」

「ああ、太陽系に最初に漂着したハイヴ。頭脳級の記録に在った。」

「はあ、マーズ0じゃ無いんだ・・・」

「人間を目的って・・・・奴ら人間を生命体と見なしていないんじゃないのかよ?」

「見なしてないよ。」

「え?」

「相手は創造主、珪素を基質とした生命体だぜ。恐らくだが代謝は極めて永い。
例えるなら・・、地球は生きていて意識があります、と言われるようなものだ。」

「・・・・・・・」

「例えば地球に意識が在ったら、地球にとって人間は何だろうな。
ただのタンパク質がくっついては崩れる“現象”か、表皮に生みだしてやった“被創造物”の“細菌”がいいところだろう?」

「「・・・・・・」」


「創造主は“他の珪素系[●●●]生命”には手出ししないんだから、地球は生命ではないんだろうな。
少なくとも、“思考”し、“自己増殖”し、“散逸”する構造を有していない。

けれど、そんな“存在”が居ることは否定できないし、実際BETAの創造主は、そう言う存在なんだろ。」

「・・・・」

「恐らくは進化の過程も全く異なり、当然水を媒体としない生命。
下手すれば寿命や、生殖と言った概念さえなく、彼らに取っての人間は、いつの間にかあって、そしてすぐ消えていく、我々にとっての細菌みたいな“現象”。
時間軸も、歴史も、全てが異なる異生物、・・・・それが創造主。」

「・・・・じゃあ、じゃあ奴らの資源てなんなんだよ? なんでBETAなんて使う?」

「人間だって、有用な細菌を選別し、培養して使うよな。」

「「!!」」

「その細菌を集めたり、殺したりするのに、同じ細菌の遺伝子を弄って使ったりするわけだ」

「!!」

「人間と細菌やウィルスは、下手すれば同じ起源を持つ炭素基質生命だから、生命としている。
しかし珪素基質の創造主にすれば、試験管培養の細菌に過ぎないってことだ。
だがその中に創造主にとって極めて有用な個体があれば、宇宙中にBETAを飛ばしてでも探索に当たる、と言うこと。」

「・・・有用な個体?」

「・・・おまえ、鑑はどんな存在だと思っている?」

「え?」

「・・・おまえにとっては、何でも言い合える、ちょっと抜けてて短気だけど、誰よりも愛しい幼馴染み、かもしれないけどな。」

白銀・鑑真っ赤。

「端から見れば、この世界と他の世界を繋げてしまえる存在。
繋げた他の世界から因果導体を連れてこられる存在。
そして一つの世界“群”を閉じたループにしてしまうことが出来る存在。
すなわち・・・根源に至れる存在、だ。
だから、超因果体[●●●●]、ってところだろ。」

「!!!」

「・・・夕呼センセ、そんな存在の現れる確率は?」

「・・・・・・詳しくは計算が必要だけど、ざっと10億分の1くらいかしら。」

「妥当な線だな。
しかも、前回の事例から見れば、武と結ばれることで成就、霧散してるから、下手すると思春期限定かもしれない。
てことはこの地球上にも2,3人しか居ない超稀少因果操作技能者、ということだ」

「・・・じゃあ、私の所為でBETAが?」

「それは違う。
鑑が超因果体でなくてもBETAは来た。
求める存在が、創造主の言う炭素系寄生物に発生することは既知だろうから、見つけるまで侵攻を繰り返す。
寧ろ鑑がつかまって、BETAの目的がその調査になったことで、横浜ハイヴがつくられ、BETAは転進したから帝都が助かった、と考えるべきだ。」

「BETAは目的を達したのか?」

「鑑がここに居るんだから達していない。他は知らんが。
鑑に関しては、素体の確保には一端は成功したが、発現に至る前に奪還した、って考えるべき。
創造主はともかく、末端のBETAには訳のわからないアストラルフェイズに鑑が引き籠もったことで、発現を諦めていた感も在るけどな。
10億で1人なら、今までに4,5人、そして残った人類にあと1,2人、居てもおかしくはない。そっちを探すだろ。」

「・・そもそもなんでBETAは超因果体を?」

「・・・これは推論でしかないけどな、珪素質生命体である創造主が植物のように動けない知性体だとしたら?
そして超因果体には世界を渡る力がある、と思うぜ?」

「!!・・・じゃあ、全ての並行世界に?」

「・・・可能性の一つとしては。」

「!!!」




成程。
以前にアタシが考えた推論には彼方も至ったらしい。
そして更に創造主が珪素系生命であれば、その理由もあり得る。
人類の最初のミスは、相手を自分たちと同類としてしか対応してこなかった、と言うことだ。
目的も同じ。
BETAの侵攻に波があるのは、主目的が鉱物資源ではなく、炭素型生物の攻略状況に拠るのだろう。

・・・ん?

「ちょっと待って。
じゃあ何故BETAはその重要な資源となりそうな“人間”をああも無残に食い散らかすのよ?」

「・・・一応バッフワイト素子みたいな小技も持っているBETAだからな、“目標”の大体の位置は分かるみたいだぜ。」

「「「!!!」」」

「横浜襲撃時、鑑とその周辺に居た避難民は、その場で殺されずに、“検査”されたわけだろ?、“目標”周辺を全部確保、と言うわけだ。その後、最後まで残されたのは、襲撃時点では不明だったが、その後は“目標”がハッキリしていた可能性が高い。」

「・・・・。」

「・・・だいたい、俺が向こうの世界で、覚醒後に柊高に編入したのも、元はといえば鑑が居たからだしな。」

「「えっ!?」」

「・・・・・アストラルフェイズの知覚から見ても、超特異な存在だったんだぜ、鑑は。
・・・武が居なかったら、・・・・手、出してたかもな。」

「え!? でも色々アドバイスしてくれたし・・・。」

「武が余りにも鈍感だったからなぁ・・・。・・・鑑が可哀想過ぎて同情した。
あの後、飾りなんか一切付けずに直球ど真ん中で告れ、と言うつもりだったんだぜ。・・・温泉旅行が実現しそうだったから。」

「!!!」


・・・微妙な顔をしているのは白銀と鑑。
コイツ等は過去未来のいろんな世界の多岐に渡る記憶を持っている。
その中に、該当しそうな記憶が在るのだろう。


「・・・けど、それでダメなら後釜狙うつもりもあったんだ。・・・・尤も、その前に・・・、俺の方も見つけちゃったけどな。」

「?  なにを?」

「・・・アストラル体やイデアルフェイズの概念すら無いのに、唐突に因果律量子論なんてものを構築しちゃった“天才”ってヤツを、・・・さ。」


「「「!!!」」」




・・・・・・え!?


それって・・・・彼方が惚れたのっ?! アタシっていうか、向こうのアタシに?!

・・・・それはアタシじゃないけど、でも無意識領域で魂はつながってて、・・・・やっぱりアタシィ!?

ちょっ!! 完全な不意打ちじゃないっ!

・・・あ、ダメ!、そんな瞳で見つめるなぁっ!!

くっ、マズイ!、急速に顔が熱くなってくる。・・・・・やだ、どうしよ!? 抑えられないっ!


・・・・白銀や鑑、社までが口を丸く開けて、アタシを見てる。



うぅ・・・うるさい、うるさい! うるさいっ!!


アタシは心のなかで絶叫した。

・・・・彼方ァ、覚えてなさい! ぜっーたい、イジメてやるんだからっ!!













「・・・・そっか、じゃあ神経細胞を再生出来れば、私の身体を蘇生出来るの!?」

「俺にはプロジェクションなんて器用なスキルは無いから、社にプロジェクションして貰う。
あまり此処来ると、逆に心理的負担になって結果的に鑑の再生の邪魔になるしな。・・・・・社、構わないか?」

「はい。それが純夏さんにも御子神さんにも負担が少ないのですから。」

「Thanks」

「ありがとう、霞ちゃん! それでね、霞ちゃん・・・」

何を思ったか、鑑は社の手を引いて少し離れたところに行くと、耳もとでコソコソ。
話を聞いていた霞、吃驚眼のあと、徐々に紅潮して、真っ赤。

「純夏さん!」

「もう、決めちゃった!! お願いね!」

さっぱり顔の鑑、アワアワオロオロしている社。・・・・なにヤッたんだ鑑?




「・・・何を言ったんだ? 純夏・・・・?」

若干引き攣りながら白銀が聞く。

「ああ、私が身体再生されるまで、武ちゃんを宜しくね、って。
ホントは冥夜や、彩峰さんや榊さんにも言っておきたいんだけど、伝える事できないし、さ。
・・・・今度こそ仲良くしたいじゃん!」

「冥夜って、・・・ああ、純夏も当然この世界の記憶も在るのか・・・。冥夜もライバル宣言していたしな・・・。」

「それヤメるの。」

「・・・・・へ?」

「武ちゃん、判ってないなぁ~、もう。
今のわた、純夏さんには、元の世界の分岐世界から、武ちゃんのループ世界で無意識のわたしが消しちゃった全ての記憶があるんだよ? つまり武ちゃんの辿った全てのループを同じように知っている唯一の存在なの。・・・私がループさせたんだからね。」

「あ・・・・」


言われて顔色をなくす白銀。

そう言われればそうだ。
数多のループをたどった、しかし本来白銀の記憶の中にしか無かった“消えた歴史”、その白銀の全てを知る唯一の存在、それが鑑純夏だ。

そして要するに白銀の主観記憶と呼んでいる記憶以外は、途中死亡した失敗を除き、全て[●●]、鑑以外の女と結ばれる記憶。
言ってしまえば、膨大な浮気の記憶なのだ。
ほっといても女が寄って来る“恋愛原子核”、殊によればA-01のメンバーはおろか、アタシやまりも、悠陽殿下とかも在るのかもしれない。社なんか即落ちだろう。

それを、全て[●●]知る嫁なのだ!


「前の世界でも知っちゃってから、ずっとずっと悩んだんだよ?
違う世界から武ちゃんを連れてきちゃうし、数えきれないくらいループさせちゃったし、私以外の娘と幸せになった記憶は消しちゃって、歴史自体無かったことになっちゃって。
えっとその、前回想いは叶ったから、あとは私が消えれば、武ちゃんは戻せるけど、他の皆には悪いなって思って、そして武ちゃんと皆の償いにあ号潰そうと思ったのに、結局皆の方が先に逝っちゃってさ。
帰りのシャトルで私の意識が消えるまで、ずーっと考えていたのは、皆で幸せに成りたかったよ~ってことだったんだから。」

「え・・・・?」

「だって武ちゃん、考えても見て? 今帝国でも適齢の女性に対し、男性の数は1/8なんだよ? つまり単純計算でも1人の男性は、最低でも8人の女性に子供を産んでもらわないと、人口が激減しちゃうって事! 1/8だよ!? 大変なんだよ!?
それでなくても、帝国の人口は既に3,000万以上減ってるし、世界でも40億人以上死んじゃっているんでしょう?
この後BETAを駆逐できても、50年後には帝国の人口が1000万人を切っちゃうんだよ?
このままじゃ、人類が滅亡しちゃうよ!!」

「・・・・・・・純夏が微妙に頭回って・・・・・確かに言ってる事は正論だが、・・・それは、つまり・・・・・」

「そうだよ!。ここは平和だった武ちゃんの元の世界と違って、相手を1人に絞る必要は無いんだもん。
きっと悠陽殿下を説得すれば、法律も変えられるし、皆を悲しませることもない。
・・・皆で幸せになる世界じゃダメ?」

白銀は救いを求めるように彼方を見るが、彼方は目をつぶって、静かに首を横に振った。
あ・き・ら・め・ろ、と・・・。



「・・・・・オレは・・・お前とだな・・・。」

「うん、それは嬉しい!!
・・・・・・でも、じゃあ他の娘は泣かせるの? 皆を笑顔に出来る手段もあって、武ちゃんにはその力もあるのに?

そんなに武ちゃんは甲斐性なし[●●●●●]なの?」




白銀轟沈。

・・・・遣るわね、鑑、天晴だわ!


残ったのは、空間に浮かびながら見事なorz状態の白銀と、何故かもう和気あいあいの、嫁候補二人の良い笑顔だった。


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