SS投稿掲示板




No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[35536] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/10 07:00
'12,10,13 upload   ※ご都合[チート]設定、炸裂します。突っ込み所満載だなぁ^^;
'12,10,14 誤字修正
'12,10,30 矛盾点修正


Side 夕呼


網膜投影に映る、仄蒼い隧道を不思議な感覚で眺めていた。

流れるような景色は、速い割に揺れることも耳障りなこともない。
機動する戦術機に乗るのは初めてだが、こんなに安心して乗っていられるとは思わなかった。
・・・・尤も新品が納品されるたびに、管制ユニットのビニールシートを破りにコックピットには乗り込んだが・・・。

強化装備は無いが、戦闘機動をするわけではないので、問題ない。
網膜投影を行う簡易型のヘッドセットだけは、付けた。
そして操縦者は、彼方。
電磁伸縮炭素帯をフルに使い、作動音すら殆どしない程、音と振動を抑制しているのだろう。


俺にはハイヴの単騎攻略なんか到底出来ないよ、と言うが、戦闘機動はともかく、事戦術機の制御に関して彼方以上の存在はないだろう。何しろ戦術機機動の基礎である電磁伸縮炭素すら弄っているらしい。

OSは、操縦者の意志を反映し、統合制御で機体に信号を伝えるI/Oを行うが、それを動作にするのは炭素帯である。入力された信号に対し、どの様な応答速度でどの位動くのか、単純にいえば大電流を流すリレーの制御は炭素帯自体のファームウェアが行っている。OSの制御がどんなに細かくても、それを力に変える末端は結構泥臭かったりする。
聞けば、今までのOSでは問題にならなかった領域だが、白銀の概念を元に彼方が組んだXM3は、アタシの試作CPUをフルに使っている。OSの緻密な要求に対し、今までの炭素体ファームウェアは“粗い”そうだ。
で、ファームウェアに対しても、クロックアップと出力の非線形に対する補正を掛けた、と言う。
信号入力のビット数は変わっていないが、クロック周波数が上がったことで、出力の緻密さは8ビットが16ビット相当になり、非線形領域の補正で立ち上がりと高出力領域でのピーキーな特性がなくなったとか。
パーツなんか一流の設計者でも納品されたままの性能を如何に使い切るか、が腕だと思っている節があるから、戦術機そのものの開発に余程深く関わらない限り普通は気付かない領域なんだけど・・・。


その結果が、この絹みたいな乗り心地、だと言う。

・・・ま、戦闘力も上がるんだから何も文句はないけれど・・・。



今、この“海神”が通っているのは、横浜ハイヴの外郭に広がるスタブの一つ。
横浜基地自体は、地下茎構造がフェイズIVクラスだったH22の、主縦坑を中心とした範囲に構築されている。
しかし半径で10kmに及ぶ外郭スタブに関しては、埋戻す手間もなく、基地外郭で閉鎖しただけで、そのまま残されている。

彼方はあろうことか、基地最深部のスタブ構造から、気がついて居なかった偽装抗を抜け、この周辺スタブに潜り込んだのである。











「ちょっと出かけてきたいんで、海神[わたつみ]貸して貰えるか?」

彼方がそう言ってきたのは、昼食時間も終わり、午後の作業に入った頃だった。
相変わらず唐突なやつ。
・・・・・・しかも昨夜の今日だというのに、全くかわいげがない。

アタシと言えば、今朝はこの上ないくらいすっきりしてたし、午前の設計もサクサク進んで上機嫌だったのに。
・・・・・尤も、それで我が物顔で馴れ馴れしく成るような奴なら願い下げだが。


「海神?  そんなの、ここに在った?」

「格納庫の隅に1機、ホコリかぶってた。朝一でA-01に教導プログラム渡した後、整備しておいた。
サンプルか、海底作業用だろう?」

「なら・・・・・別にいいけど・・・、なにするの?」

「・・・昨日少し話したこの世界の“御子神彼方[ネイティヴ]”が、用意していた遺産[●●]を確認しに行く。」

「・・・・こっちの世界のアンタ、ね。何してたのかしら?   ・・・でも海神で出歩くなんて目立つのはイヤよ。」

「ああ、そこはどうにかする。・・・・・・いっそ夕呼センセも行く?  ココの海神は複座だったし。」

「・・・はぁ?」


話によれば、所要時間は4時間、夕方には帰ってこられるという。
素子化作業が思いの外はかどり、今は試作待ち、時間に余裕の在ったアタシは、興味本位に話に乗った。


・・・・・・・・デートなんて思ってないんだからねっ!






そして仄蒼い坑道を抜けた小さな広間には、水面がゆらゆらと壁の蒼を映して光っていた。

「ここ、どの辺り?」

「昔の地名でいう八景島あたり。スタブから海中に直接出られる唯一のルートらしいな。」

・・・・・・抜け目ない奴。
確かに機密区画からスタブに抜けて、そのまま海中に出られるのなら、誰にも見咎められない。

そしてその後は、仄暗い海の中をおよそ40分。

移動速度が20ノットだから21、2kmかしら、浅めの海底が、急に崖のような深い深淵に変わる。
その淵にそのまま潜行してすぐ、薄暗い海中に巨大な構造物を認めた。
彼方は臆することもなく、その底部に回る。
その人工構造物[●●●●●]の気密ハッチと覚しき場所にたどり着いた。





何をどう操作しているのか、シークエンスが進む。水深は100m程度と推定、それなりの水圧はあるのだろう、減圧エリアを抜けて、プールに浮かぶ。そのままドックに上陸した。

・・・・・・広い。

横浜基地の戦術機ドックくらいある。
殆どがらんとした空間に、小型の再突入HSSTだけが佇んでいた。
あれって・・・前進翼の実験機じゃ無かった?

周囲はシンとしていて、他に動くものもない。
勿論人の気配なんかない。
しかし自動的に証明が点くところを見ると、この施設は生きている[●●●●●]のだ。



彼方は適当なところで海神の膝を着くと、ハッチを解放した。
彼方は、少し高い位置からの着地に手を貸してくれる。




「・・・・・・なによ此処は?」

御子神[ネイティヴ]が9歳から行方不明に成る18歳までの10年間で構築したメガフロート・・・、今は沈めてあるからメガシンク、だな。
少し斜めだが、東西方向に2km、南北方向に5km、高さは平均50、最大100mの海中基地。

・・・・ま、今は唯の倉庫だけどな。」


・・・・目眩がする。

幅2km、長さ5kmのメガシンク?

・・・・・覚悟しとこうかしら。この世界の彼方も、トンでもなかったみたいね・・・。



と、彼方はアタシの手を引き、そのまま近くのエレベータに乗る。

「・・・知ってるの?」

「MAPは見た。手近なコントロールルームに行こう。」

「・・・・・こんな規模のモノが10年で出来るものなの?」

「・・・・・壊滅状態の横浜に2年弱であの規模の基地を作った人に言われちゃ、御子神[ネイティヴ]も立つ瀬がないが、このメガシンクは結構面白い作り方してる。
落雷喰らってないから“覚醒”してない筈なのに、技術的[●●●]に俺よりチート[●●●]っぽいな、御子神[ネイティヴ]は・・・・。
こっちの世界のほうが、ある分野技術的に進歩してた事もある・・・、のかな。

エネルギーを供給する“[コア]”ブロックを最初に作って、その周囲にメタンハイドレートを利用した炭素系モノマーから高靭性ポリマーを成形している。しかもハイヴ壁と同じ思想・・・導電繊維に電圧かけると、強化される構造してる。」

「!! それって成長できるってこと?」

コントロールルームには、いくつもの制御盤、それに付随するモニターや、端末が並んでいる。
今は、その全てが自律制御しているらしい。

片隅には給湯コーナーもあり、置いてあった缶を開封し、珈琲を入れてくれた。

大きなモニターを有するミーティングコーナーに座ると、キーボードを叩いてこの施設の全容を示してくれた。

「・・・・外殻で生成して、徐々に硬化蓄積。珊瑚みたいな成長だな。材料次第で成長速度は桁違いだが。
この場所では材料になるメタンが無いからこれ以上は無理だが、メタンハイドレートの堆積している外洋大陸棚に行けば、1年でギガフロート位になるだろう。
あんまり急ぐとメタンハイドレートの堆積層そのものを崩落破壊しそうだからそんなに無理は出来ないが・・・御子神[ネイティヴ]の遺したプロセスによれば、3年で30基は行けるか・・・水稲と野菜類の水耕栽培位は出来るな。」


「30基、・・・・って?」

「ギガフロート30基。1基で1ギガ平方メートル、つまり1000平方kmが30基ってこと。」

「・・・・・ちょっと待って!?  確か東京都の面積が・・・2000平方km位じゃなかった?」

「2,200弱、かな。当面農業プラントしか出来ないから、1000万人の移住には、ちょっとまだ足りないが、5年在れば何とかなるだろ。」




・・・・・・絶句。


覚悟はしてたのに・・・・。

彼方をして技術的にチートと評した御子神[ネイティヴ]


「・・・・なるほどね、・・・これが帝国への援助ね?」

「・・・・俺のポケットには大きすぎらぁ。」

「・・・・なにそれ?」

「気にするな・・・、一度言ってみたかっただけだ。」

「・・・・でもコレだけの技術が在るなら、なぜ御子神[ネイティヴ]はもっと早く使わなかったのよ?」

「それが、本家との確執だな。」



・・・・九條。

五摂家の一角でありながら、一番穏やかで、波風を立てない、と言われている。
御子神の家は、九條家の分家、元は2位か3位の家格だったはず。

御子神[ネイティヴ]のブログによれば、と言うか元々武家には商売に関わることを軽蔑する気質が在るんだろ?  異世界産の俺には感覚的に馴染めないが。」

「らしいわね。」

「だから、御子神[ネイティヴ]が提案する技術を使った事業化にも悉く反対した。まあ押し潰した、と言う方が表現としては正確かな。
ところが、提案に猛反対した筈の技術が、とある財閥系の企業から特許として申請され、大々的なプラントとして推進される事が公表された。
当然御子神[ネイティヴ]と内容を知っていた御子神家は九條に抗議、返ってきた答は、たまたまその企業が同じ事を研究推進していたのだろう、と。
寧ろ御子神[ネイティヴ]こそ、その技術を盗んだのではないか、という𠮟責。
当時まだ9歳だからな。
当然、その財閥から九條に多額の寄付という名目で裏金が流れていたのは掴んでいたが、結局表沙汰には出来ず、以来御子神[ネイティヴ]は一切の表だった活動を止めた。」

「・・・何の技術だったのよ?」

「合成半透膜による淡水化プラント。」

「え?  でも其れって確か・・・・・。」

彼方がニヤリと哄う。

御子神[ネイティヴ]も俺と似たような性格らしいな。
九條に提出したプラントモデルには、重大な欠陥を紛れ込ませていたらしい。実験室レベルの規模では判らないが、大規模プラントの本格稼働には致命的になるようなヤツをね。
当然計画を推進した企業は、プラント工期の終端になってそれが発覚。当然天から振ってきたような技術、内容を深く理解しているような技術者は居なかったから、改善策もお手上げで大損害が確定した。下手すると会社が傾くかってほどのな。」

「・・・・覚えてるわ。画期的な技術と言われながらの致命的欠陥騒ぎで、政治的な責任問題にまで発展してたもの。」

「・・・一方でオリジナルを知っている御子神[ネイティヴ]はちゃっかり裏で小さな会社を設立して、その改良特許を被せていた。其れに気付いたその企業は言い値で買ったらしいぜ、その改良版を。
今でもそのプラントが生み出す利益の8割は、その支払いに充てられてるらしいから。当然その後、その財閥と九條は疎遠になった。御子神[ネイティヴ]を𠮟責するわけにも行かず、当主は微妙な貌をしていたらしい。」

「フフッ!目に浮かぶわ。・・・・・・・ワル、ね。」

「俺じゃないし。」

「魂魄は繋がってんでしょ。」

「・・・・まあ、俺でもその位はするかもな。

で、表面上は経済活動から一切手を引いた。
その頃、悠陽とも引き合わされている。本家の意向でな。

その時点で悠陽は、次期将軍候補って所だったが、一応の抑えだったんだろう。他に年の近いのが本家・分家筋にも居なかったし、当時表向きは従容としていたらしいからな。

で、その裏で手がけたのが、ロジスティックス、だった。
表に出ないよう、密かに協力者を集め、NPOを立ち上げて、絡んでいった。


当時、世界はボパールハイヴが出来、喀什のBETAが本格的な東進を開始した頃だから、軍関係の物資を除いても、食料や避難民と言った大量の輸送が必要だった。
そして帝国はまだ後方国家扱いだから、特に北米や南米からの物資の一大中継基地になっていた。
勿論、海運が中心なんだが、各社の動きがバラバラで、余りにも無駄が多かった。
それを統合したのが、NPO: Chat Noir [シャノア]ってわけだ。」

「彼方、そのNPOって?」

「ああ、ハワイに知己が居るって言っただろう?  ビデオチャットで話をした。
雷の直撃喰らってずっと昏睡、ようやく意識は戻ったが、記憶野は個人的な領域が再生不能、と言ってある。
電子記録を確認した範囲で、前の知識が在ることも。
そのまま代表権も渡そうとしたんだが、それは保留にされた。
既に2年不在だったから、実質奴が代表なんだがな。」

「そういう事ね・・・。」

「まあ、やり方は構築したからな。
ニーズとシーズを収集・分析し、必要な輸送を最低限の手数で叶える、一種の輸送最適化だ。
それをグローバルからローカルまで展開する。そんな活動を展開した。

なにせ、NPOだからな。
各社の調整はするが、金は取らない。はじめは訝っていた各海運会社も効率が良くなって稼働率そのものを高められるから、稼ぎも上がる。当然徐々に信頼され、更に情報が集まる。
やがて日本を通過する貨物を主とした活動から、2年後にはアジア、オセアニア圏まで網羅する物流の統括となっていった。

アフリカを除けば、世界の食糧の8割を生産する地域の、太平洋・インド洋航路を殆ど統括していた、というか今もしている。
例のプラント騒ぎの特許料やその他もあって資金もあるから、自前の運輸手段も揃えていった。特にホバークラフトによって内陸の戦地まで届く陸上輸送を手がけたのが“シャノア”だったからな。

で、最終的に一手に引き受けたのが、“前線国家への食料調達”だったわけだ。」

「・・・・・初めから狙っていたの?」

「そこはブログに書いてなかったから、定かではないが、どちらかというと、日本が侵攻されたときの避難場所と避難手段を想定していたらしい。
だからこんな施設も作ったし、ギガフロートの生成プロセスも考えていた。数千万人規模の輸送を想定していたんだろ。

だが、予定外だったのは、中華戦線のふがいなさと帝国軍の壊滅が余りに[●●●]早かったこと。

重慶ハイヴからの東進に、中華戦線は一切の抵抗を放棄して早々に撤退したこと。
そして台風の影響が在ったとはいえ、既にソ連・中国の軍は大幅に損耗していたから、当時の世界で言えば第2位の軍事力を保っていた帝国が、僅か1週間で九州・四国・中国地方を喪い、帝都防衛さえも1ヶ月足らずしか継戦出来なかったこと。
当時の戦力を冷静に検討すれば、流石にいくら何でも半年は保つ、と考えていたらしいから、1週間しか保たなかったのは完全に想定外。
と言うか可笑しいだろ、それ。九州から京都までの距離を考えれば、BETAの進軍を全く留めることが出来なかった、と言うことになる。帝国陸軍の壊滅的打撃と3,600万人もの犠牲を出していながら、な。


結局、その半年が致命的な遅れになった。

実際、ギガフロートの展開準備が全て終わったのは、明星作戦直前。
そして明星作戦後、実施という段階に至って、今度は当の御子神[ネイティヴ]行方不明[●●●●]、という事態に陥ったわけだ。
死亡ではなさそうなんだけど、実際この“世界”に御子神[ネイティヴ]気配は無い。まあ、居れば俺が来ることは無いだろう。
御子神[ネイティヴ]は、悠陽の協力者ということで、一応斯衛衛士と言う立場だったらしいが、現実は情報部みたいなことばかりしてたらしいから、G弾の影響範囲には居なかった筈だが、此処が在るからな、横浜付近に居たことは確実だろう。
当時G弾の影響でいろんな現象が起きていたらしい。外縁部では局所的上昇気流によるスーパーセルも発生したから、俺と同じ落雷ってのも可能性が高い。それで何処かに飛ばされた、かな。

そしてこのギガフロート計画そのものは、完全秘匿、“シャノア”の幹部や悠陽にさえ詳しい内容は伝えて無かったらしいから。」


判らないでもない。計画が大きければ大きいほど、その抵抗も強い。
オルタネイティヴだって、例に漏れない。
コアさえ作成してしまえば、極少人数でも推進できる計画。それだけに漏洩したときの被害も大きい。
完全秘匿が絶対条件になるのは安全上仕方がない。



「・・・・話が前後したが、そう言った訳で、92年頃から、“前線国家への食料調達”を引き受けた“シャノア”だが、その成果というか、結果というか、お零れがコレだ。」

「・・・・・・・」


目の前のモニターに映されたのは、コンテナの群。5段ぐらいに積まれたそれは、白く凍り付いているが、白く霞む冷気の所為で、並べられた横幅と奥行きが判らない程、膨大な量[●●●●]


「・・・・1992年から1998年の6年間に、主に中国やソ連に送られた食料、国連のバンクーバー協定に基づく最前線国家への無償供与、その一部。このメガシンクで-50℃に保管されているその総量は、約1000万トン。」

「!!! 荷を抜いた[●●●]って言うの?!」

「まさか。・・・・・・考えても見ろよ、無償[●●] って言うのは、ある意味、最も無責任[●●●]って事なんだぜ。」

「・・・・・・」

「もともと、当時の中華もソ連も腐りきってたからな、食料を送り出しても、それが前線に届く頃には、その量が1/10に成っている事など、珍しいことではない。“シャノア”が直接前線まで届ける分はそうでもなかったらしいが、普通の海運で港に下ろされた荷物は、大体そこで当時の権力者に、散々に蚕食された。

なにせ、“ただ” だからな。

国連や送り出した国は、その荷が送られた、という証明さえあればいい。責任は果たした、と言うことになる。受け取った後の使い道なんか知ったことではない。
コレが有償だったら話が違う。届かなければ費用の支払いが滞り訴えられるわけだから、ちゃんと届いたかどうか、そこまで気を配る。
無償であるが故に、送り出した、という事項を以て責任は完了する。ああ、良いことをした、という満足感だけ残して、な。そこに受領証明なんか必要ないんだ。

そして平気で焦土作戦を敢行するような無能な権力者に、それを全量戦地に送る意識など全くない。横流しして自分の懐を暖めることに腐心した。
結果、前線が崩壊し、自国が滅ぶ事になっても、金を蓄えた自分たちは、いくらでも行くところがある。」


BETA大戦で、初期の主戦場となった中国とソ連による戦略の失敗は、明かである。初期の段階で、封殺が出来ていれば、今の状況は無かったのだ。
奢りによる状況判断の遅れ、そして何よりもその腐敗[●●]が致命的な失敗を招き、そして今尚、国連常任理事国という立場からその責任さえ明確に問われていない。
前線を犠牲にしてぶくぶくと肥え太った権力者が、今も2つの国を牛耳っている。


「・・・・・そしてもう一つ、それが絶望的なまでの前線の後退、さ。
今此処に眠る荷の殆どは、“行き先”を喪った出戻り[●●●]
予定より早い撤退であれば、勿論それは運が良い方で、殆どはBETAの怒濤に飲み込まれ、破壊し尽くされた基地や、避難所、集落だったりしたわけだ。」

「!!!」

「そして、一度送り出した荷物[●●●●●●●●●]を国連が受け取ることは、無かった。
さっきも言ったように、“無償”だからな。送り出すことまでが、責任範囲。戻ってくる輸送費や、新たな送り先を選定・再送する手間は省きたい。
当初は戻そうとしたらしいが、廃棄を指示された。ほっといても次の“無償供与”の荷がとどくからな。」


・・・・・愚かしい。余りにも・・・。

人類の生存を賭けたはずの戦争。人類の9割近くが死にゆく中で、近視眼的な思考しかできない権力者の無明が、今の事態を招いた。


「・・・で、御子神[ネイティヴ]は全てをこのメガシンクに集積した。来るべき国家危急の時に備えて。恐らくは、誰にも伝えず。」

「それは・・・・。」

「さっきも言ったけど、西日本を1週間で陥とされた無能な指揮者集団。その1998年の西日本陥落まで、この国の上層部にそんな危機感が在ったと思うか?
10年以上、関わっている夕呼センセが、最もよく分かっていると思うが?」

「!!・・・」


今の立法と行政の乖離。
そもそも行政権力の多重構造。
この人類の瀬戸際に在ってさえ、一国レベルでも纏まれない人類という、種。

人類の最大の敵は、BETAでも国際社会でも、国家でもなく、各個の裡に在るのかもしれない。







「・・・・・ちょっと統計を調べてみたんだが、西日本が壊滅する1997年まで、帝国の食料消費量は、年間1億トンに近い。
が、実はこの数字は、少し異常だと思わないか?   
いろいろ異論もあろうが、人一人食事1回当たりの摂取量を300gとすれば、1日3食で0.9kg。年間でも330kg程度だから、1億人居ても消費量は本来1/3程度で済むはず。」

「!!」

「つまり、その1/3は最初から、食用から飼料に転換されより高級な食材、畜産物へと変えられる。
そして残りの1/3は簡単にいえば色々な課程で廃棄される。
つまり日本人は年間に実際に食べる量と同じだけの量を家畜に与え、そしてまた同じ量を、捨てていた、と言うわけだ。

それが1998年、BETAの侵攻によって、3,600万人の犠牲者、2,500万人の避難民を生じた。
生き残った人口は7,400万人と推定されているが、当然農業・漁業生産は半分以下に落ち込み、今も回復していない。
避難民の内、計1,000万人はいくつかの国に分散して海外に移住し、残りの内500万人は避難先で何らかの定職を確保したが、残る1,000万人は未だ非生産難民。

結局BETA侵攻以来、国内に残る5400万人の稼ぎで6400万人を養う、と言う構図が出来上がっている。


そして現在の食料受給は、国内生産量が年間1,500万トン、輸入が1,500万トン。

それに佐渡と横浜にハイヴが出来たことで、最前線国家に指定を受け、国連から与えられる食料支援、これが500万トン。



先の試算では、飼料や廃棄の無駄を除けば、避難民も含め国内では十分3食が確保できる筈だった。

普通なら1,000万人の非生産難民を維持するなど到底無理なんだけどな。
ところが500万トン在るはずの支援食料が、避難民に届く頃には、1/10に減っている。


その差は、何処に行った?


御子神[ネイティヴ]を暗鬱とさせた中国やソ連の上層部と同じ事を遣ったのが、九條と統合参謀本部[●●●●●●●●●]だった。」


「!!!!」



御子神[ネイティヴ]が調べた範囲でも九條は先の財閥への技術横流しなんか些末で、いろいろ遣っていたらしい。
時の政府閣僚や、現場を取り仕切る高級官僚を抱え込み、そこと結託して前職の政威大将軍の時から何かと文句を付け、その権限を形骸化させていった。
当時の事は、電子文書の形で残ってないから憶測でしかないが、五摂家として元枢府から政治に参画し、将軍に進言しながら、その穴を政府官僚に漏洩し、責め立てる、そんな事を繰り返し統帥権干犯を推し進めたらしい。
扱いやすし、と踏んだんだろうな、’98年の政威大将軍の就任に当たって悠陽を強く推したのも、九條だ。
その当時で既に将軍の意思が政治に反映されることはほとんど出来なくなっていたからな。

国連からの最前線国家特権で供与される物資を取り仕切ったのは政府・省庁、そして統合参謀本部。それも、殆ど九條の息が掛かった者ばかり。喰いたい放題の“無償”物資に群がった。
“蛇の道は蛇”で、大陸で中国やソ連の上層部が遣っていたことを知っていたらしい。

政威大将軍の権限を制限しながら、その職そのものを完全に消さなかったのはそのため。
政府の管轄でもない、将軍の管轄でもない、非常に中途半端な位置にしたかったらしい。その中途半端を、軍需というBETAに瀕した状況に訴え、参謀本部と言う本来口出しできない組織が引っ張った。


そして、本土防衛でまさか手を抜いた、とまでは言えないとも思うが、九條が仇敵と口では言っている米国国内に、相当の預金が在ることも確認した。
・・・・・・第5計画派に近しいことも、な・・・。」


「!!!」


「権力者ほど、今の世界の悲観的な状況が理解でき、目敏い者ほど微かな希望、移民計画にすがりたがる。
もし、九條が数年先ではなく、10年先を見ていたとしたら、3,600万人を切ってでも、濡れ手に粟の“無償供与”を呼び込みたかった可能性は、0じゃない。どうせ10年後、10億は死に絶えるのだから。」

「・・・・・」

「・・・・そもそも九條は斯衛軍にはあまり近く無い。実際五摂家でありながら今の斯衛将官に、九條縁の者は居ない。
佐官の御子神遥華・・・まあ、御子神[ネイティヴ]の姉で、今の御子神当主だな・・・が居る位。

代わりに何故か、統合参謀本部には将官・佐官併せて4人が在籍している。更に本土防衛軍にも3名。
尤もこれは99年の初頭に御子神[ネイティヴ]が起こした“弾劾”の所為でもある。」

「・・・・・あの話は本当だったのね?」

「ああ。・・・・供与食料の横流しを名指しで指摘された九條は、決定的に御子神[ネイティヴ]と決裂した。

若いね御子神[ネイティヴ]も。

よりにもよって、皇帝陛下が国政について審問する評価会に於いて、武家の在り方として義に背けば親でも弾劾する、と前置きした上で、本家を提訴した。
形骸化した儀礼的な意味合いしかない評価会だが、出された動議が国際的にも信用を失墜しかねない動議、しかも証拠が決定的だっただけに無視できなかったし、武家の在り方を言われてしまえば、九條も分家絶縁すら出来なかった。現実的には以来交流は無いだろうけど。

結局、動議そのものは武家社会の恥とされ隠蔽されたが、九條は宗家の重鎮に責任を被せて切るしかなく、縁者の斯衛将軍職も辞した。代わりに本土防衛軍に入っただけだけどな。



そもそもこの本土防衛軍と言うのは変な組織なんだ。
実戦部隊を一切保たず、実際の戦闘には帝国軍を招集。その指揮だけを取るという上位パラサイト。
統合参謀本部と結託というか、統合参謀本部そのもの。

結局大陸派兵にビビった上位の腰抜けが、ポスト確保のために作った実態のないハリボテ、と御子神[ネイティヴ]は見ていた。
しかし、逆に大陸に派兵した有能な将官は、軒並み損耗した。主に荷抜きをする以外能のない中華戦線のお偉方に前線配備された所為でな。

現実に軍を動かす指揮官が激減した所為で、本土防衛軍は益々つけあがった。


その結果が惨憺たる本土防衛であり、極めつけが京都防衛戦。

それ迄の敗戦も画策したように酷いが、本土防衛軍と名をつける者が、皇帝や将軍がそこに居ることを良い事に、斯衛に丸投げして真っ先に逃げ出した。
将軍に成り立ての悠陽をして、将軍・五摂家は帝都と共に在るべし、なんて茶番を仕掛けたのも九條。裏で本土防衛軍と名の付く者は逃げておいて、だ。
敵前逃亡と変わらない状況だって言うのに、提訴するべき統合参謀本部と裁かれる本土防衛軍が実質同じだって言うんだから、嫌疑さえかからなかった。

彩峰中将の時は舌鋒峻険だったらしいけど。
陸軍が統合されて、今その下で猿回されている狭霧はいい面の皮だ。


しかし、こうして御子神[ネイティヴ]の記録を紐解くと、このコトだけで外伝どころか、一大長編が書けそうだけどな。」



「・・・・何処でも波瀾万丈の人生送ってるのね。・・・けどなんで、そんなの相手にする必要があるのよ?」

「・・・・面倒なんだが・・・俺達の計画が進み年内に佐渡を奪還すると、日本国内にはハイヴがなくなるわけだ。」

「・・・・・あ!・・・、最前線国家から外れる訳ね!    」

「そ。その瞬間500万トンの食糧援助が有償になる。輸入量が一気に33%増、支払いはすべて国庫。

一瞬で飛ぶ[●●]だろ。

デフォルト、債務不履行。

普通に行ったら、国内に抱えた1000万人超の非生産難民を養えるわけがない。
所得がないから税金も取れないばかりか、生活保障にはその何倍もの金がかかる。
さっきの比率で行けば、避難民一人養うのに、5人分の税金が使われる。
・・・・現実的には、ジェノサイド位しか手がない所まで、本気で来ている。

勿論国の借金は無理、そもそも飛んだら国債が成立しない。


ギガフロートはその避難民を農業に当てるための設備であり、この備蓄は、生産が軌道に乗るまでの、その間避難民を養うための備蓄。
まあ3年以降、荒廃した国土をどこまで取り戻せるかは不明。
そこまでは、責任持たんよ。

けど、これを邪魔をするなら、俺は本気で九條と統合参謀本部、本土防衛軍を潰す。俺には何の柵もないからな。」

軽く言い切る彼方。
コイツがその気になれば、潰すだろう。
御子神[ネイティヴ]みたいに尻尾切りで済ますこともない。
・・・遣るなら徹底的に。










「しかし・・・・大した遺産だわ。3年間、帝国を支えきるわけね。」

「上位存在殲滅は、人類安寧の第一段階に過ぎないからな。
月、火星、その先を考えれば、今経済的にも帝国を滅亡させるわけにもいかない。
まあ最悪米国のシンパと組んで乗り換える、と言う手もあるが、あの国はあの国で面倒くさいし。」

「で、一つ良いかしら?」

「・・・・・・・なんなりと。」

気付いているらしい。彼方が諦めたようにため息をつく。

「この世界の御子神[ネイティヴ]が居なかったら、否、居ても此処まで準備されてなかったら、どうするつもりだったの?」

「・・・・・・ここの“[コア]”と同じものを供与した。」

「・・・コア?」

「夕呼センセなら、いずれ気がつくとは思って居たけどな・・・。隠せるなら惚けていようと思ったんだけど。
コレが御子神[ネイティヴ]、そして向こうの世界でも“俺”がたどり着いたこのメガシンクのキー・テクノロジーさ。」

そう言って、モニターに示したのは一葉の論文。


『相対性プラズマ励起場に於ける準高温領域核融合炉の実現』

「・・・!!!!」

「・・・実際俺も元の世界でも公表出来なかった革新的核融合技術。これは向こうで取り敢えず書いた論文だけどな。
公表してたら石油メジャーや中東産油国、各国エネルギーメジャーから暗殺者が、各国家から拉致者が来ること間違いなしの超弩級爆弾、さ。
これがギガフロートのポリマーを構成し、1000万トンもの食料を冷凍し続け、3万平方kmもの米や野菜の水耕栽培を実現し、1000万人の生活を支えきる“[コア]”。」

「・・・・・・・」

「水さえ供給すれば、勝手にそこから重水素を取り出して供給する、いわば永久機関。
但し、炉の製作に必要な重積カーボン・ナノフラーレン・チューブがこの世界で作れるのは、生産設備構築含めて10年位掛かるかもな。」

「・・・核融合の壁を越えたの?」

地球上で熱核融合を引き起こすのに必要な温度は1億℃と言われる。それに対し温度が上がれば上がるほど、それを縛る電磁場を維持する電力コストが跳ね上がる。
最終的に、発生できる電力量より、消費する電力量のほうが多くなり、何の意味もない事になってしまう。

太陽内部では1000万℃程度で出来ているがそれは電磁場ではなく、重力場そのものでプラズマを維持できるからに過ぎない。

「読んで貰えば判るが・・・特殊な場に於いては10万℃程度で、核融合が励起できるとしたら?
10万℃程度、レーザーの集光で直ぐ届く範囲。そして10万℃でも、核融合自体を維持できれば十分プラズマ成形されているから、MHD発電で電力発生出来る。
重積カーボン・ナノフラーレン・チューブは環状巡回で、常にプラズマ維持をしていて熱排出をしないから、水蒸気・タービンと言う発電過程が必要ない。」

「それって・・・・・・」

「・・・そうだ。理解してるよ。
社会構造へのインパクトで言えば、革命[レボリューション]級を越えた、破滅[カタストロフ]級の技術ってこともな。

俺も、恐らくは御子神[ネイティヴ]も、暗殺なんかどうでも良いが、社会に及ぼす影響の、余りの大きさに公開を控えた。

人間の、と言うか生命の歴史なんて、言い換えればエネルギーを如何に取り込むかという歴史。
太古、酸化硫黄や熱からエネルギーを得ていたた細菌からやがて酸素を生成する光合成を経て、生み出された酸素そのものを使用する構造に進化、さらにはその細菌を取り込むことで、組織として進化した細胞。
如何に効率よくエネルギーを取り込むか、の歴史に等しい。

人の社会も同じ。
やがて知恵を付けた人は外部エネルギーの果実を享受し始めた。

物を燃やすことで得られる熱から、様々な物を作り、やがて使い勝手の良い電気へと進化する。
水力・火力、そして原子力へと変遷しながら、効率の良い、そして永続できるエネルギー源を欲してきた。
いま、各国首脳が欲してやまないG元素。
それすら桁違いな発電効率所以であって、大戦初期の消極的なBETAの排除は、このG元素が欲しかったから、という側面さえある。

実際エネルギーさえ供給されれば、何でもできるからな。食料の生産も、水も、合成してしまえばいい。
空気や環境すら整えられる。

それが、無尽蔵に供給されるとしたら、究極的に人は、働く必要がなくなる[●●●●●●●●●]わけだ。

つまり、この技術が公表されれば、世界が変わる・・・、と言うか人の在り方すら変える可能性がある。


この世界では、既に80%を越える人口の激減によって、すでに人類文明が存続不可能な所まで追い込まれている。
この技術は、人類文明の再起には必要不可欠な要素でありながら、ひとつ用法を間違えれば、ショック死をしかねない劇薬ともなる。


だから[●●●]、“鬼札”さ。
“自身”を滅ぼす可能性さえ在る、な。



御子神[ネイティヴ]の遺産が無かったら、コレを餌に、先ずは中華の欲張り辺りを丸め込んで、大東亜連合でも立ち上げ、帝国を最前線国家待遇に持って行くか、と考えていた。
国連や、米国にもちらつかせれば、すぐ承認するだろ。
ハイヴ攻略にも“国内”と同じ扱いで、本土防衛軍に当たらせるとかできそうだし。
その上で、国内環境整備、と言った流れだっただろうな。


まあ当面御子神[ネイティヴ]のお陰で、そこまで黒いことせずに済みそうだ。
ポリマー生成の際の剰余メタンで動いている発電機、とでも言ってしばらくはごまかす。


まあ残念なのは、小型化は難しいことから対BETA戦略としては、人類の基礎体力強化以外の使い道はなさそうだけどな。」




成る程、彼方が言うように規格外の“鬼札”だ。
少なくとも、もう少し“人類”全体が成熟しなければ、劇薬ともなるだろう技術。

特大の隠し球。


・・・・それでも、まだ底が見えない[●●●●●●]

・・・それが頼もしくもあるけど・・・。

楽しくなってきた、と思うのは不謹慎かしら?


Sideout




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.031284093856812