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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/08 11:06
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'15,02,08 誤字修正


Side 冥夜


コレは何だ?
コレが武の辿ってきた道、武の体験だと言うのか・・・・・?

こんな・・・・こんな事が現実に・・・。















今朝は予定していた座学内容を変更し、そのまま鎧衣美琴の入院しているB5フロアの入院施設エリアに移動、個室に赴いた。
武と鎧衣訓練兵の簡単な紹介の後、神宮司教官が言われた。

「今回、新たな衛士訓練の一環として、衛士訓練兵たる貴様等の目指す“衛士”と言うモノを知って貰う事にした。それ故本日の教習内容では、今まで掛かっていた機密制限も一部解除してある。
当然、貴様等にとっては全てが初めての体験に成るだろう。

このプログラムは、白銀武が前の部隊を去ることと成った最後の作戦を元に構成されている。
今回はその白銀の“体験”をそのまま“追体験”してもらう。
無論、制限以上の機密に関わる部分は、削除されたり、隠蔽されたり、変更されたりしている。
・・・が、基本は白銀が潜り抜けてきた修羅の道だ。

これから総合戦技演習突破を目指す貴様等に、今一度衛士になると言うことがどういう事か、考えて貰うために実施が決定された。

その事を忘れずに体験してこい。」

「「「「「 了解! 」」」」」


その言葉と共に、目まで覆い隠すヘッドギアを渡され、装着するとそれぞれ用意されていたベッドに横になる。
鎧衣も、皆も同じ。


そのまま待つこと数十秒。動いている周囲の雑音が収まると共に、それは唐突に始まった。




一瞬、目を閉じていたにも拘わらず、視界にノイズが走り、目前に視界が広がる。

『・・・これは、仮想現実[VR]シミュレータと言う。
通常の戦術機シミュレータでは、戦術機外部の地形状況や、BETA・僚機の動きを視覚・聴覚・加速度情報として再現しているが、このシステムでは、外部の情報を全て神経に直接刺激として与えている。
故に視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚までリアルに再現出来る。

今、貴様等は不知火のコックピットに座っている筈だ。
そして貴様等の目の前には、フェイズV以上の、とあるハイヴの突入抗がある。

勿論、これは“追体験”なので、白銀が捉えた五感を再現している、が、勿論思考や感情を再現するものではなく、また能動的な操作や変更は出来ない。』




まず驚いたのは、そのリアルな世界だった。

視覚、聴覚、触覚、そして嗅覚や味覚さえある。
握ったレバーの固い感触、戦術機の“匂い”、強く噛み締めた唇の、微かな鉄の味すら感じる。
勿論コックピットに鏡など無く、網膜投影の中のモニタもコミュニケーション用のウインドウは開かず、サウンドオンリーに成っている。これは恐らく機密対処なのだろう。
それ故VRの中の自分の顔は確認できないが、視界に入る強化装備に見慣れたはずのふくらみは無く、腕も男性の筋っぽさがある、と言うか間違いなく武の腕だ。私が見紛うワケがない。


そして網膜投影に映るレーダーには、5騎の僚機。自機がM01-ω00、隊長機がM01-α00、以下M01-α01、02、M01-ω01、02の2個小隊からなる中隊編成。

本格的な戦術機演習については総合戦技演習合格後だから、戦術機特有と思われる細かい事は判らないまでも、知識が皆無という事でもない。強化歩兵装備等でも、同様なフォーマットの網膜投影が行われる。


『本作戦は、“銀河作戦”。

目的はハイヴ反応炉区画への到達による情報収集。特殊な情報収集ユニットが必要であり、それはメビウス1である白銀機、つまり貴様等の機体にしか搭載されていない。その直衛にメビウス中隊5騎が随伴する。当然情報を持ち帰るためにメビウス1の帰還が作戦の成功条件となる。』

「「「「「・・・」」」」」



・・・ハイヴ潜行威力偵察作戦。
当然公開されていない極秘作戦。
私とて、昨夜武に聞き及んでいた故今更驚かないが、初めて聞くだろう榊達の驚愕が目に浮かぶ。


成る程、この“追体験”なら、神宮司教官をして遥かな上と言わしめた武の実力も“体験”出来る訳か・・・。


『今は、私の声が届いているが、ハイヴ突入と共に、生身の感覚は全て遮断され、貴様等はVRの世界に完全に入り込む。もちろん、接続中貴様等のバイタルはモニタリングしているから、万が一危険な状態に陥ったら接続を切る事となる。
・・・それ以外は、作戦終了まで体感時間で約2時間、離脱は出来ない。

細かい質問は、後で受け付ける。


それでは、・・・・・・・・地獄へ行ってこい。』


神宮司教官の声と共に、機体はハイヴに突入した。









仄蒼いハイヴ内に突入した6騎、そしてその直後、そのスタブの内壁に張り付いていた醜悪な物体が一斉に蠢き始める。


・・・・これがBETA!!


態と嫌悪感を抱かせるようにしたとしか思えないような、毳毳しい配色。
おぞましさをかき立てるだけの、粘着質且つ無機質な動き。
生理的な嫌悪しか湧かない笑みを貼り付けたような、頭部と思わしき部位の表情。




『スルーするぞっ! 装備・弾薬の消耗を最小限に抑えろ!!』

メビウス0:α00が中隊長の支持が飛ぶ。

『・・・必要な排除はする。』

すかさず揶揄を入れるメビウス3:α01。

『・・・・・・ったく。少しは控えろメビウス3。』

『・・・それでBETAが退くならな。』


あからさまな舌打ちにも、武を含め他の4人は何も言わない。
今の時代には珍しく、この中隊は全てが男性だった。


『・・・行くぞっ!!』








そして瞠目する。

・・・・・・何という入力速度!!
其れによる自機の、閃光の様な切り込み。

長刀と突撃砲を携え、地面の見えないBETAの海に突っ込む。
襲い来るBETAを躱し、跳躍、その僅かに空いた隙間に機体をねじり込む。


・・・一重の極み。

相手の攻撃に対し、大げさな回避行動を取らない最小限の見切りが、反応の自由度を増やし、隙間のない死地に新たな活路を切り開く。


躱し、躱し、躱し切り、どうしても躱せない時のみ、切り払う。
其れすらも最小限の動作。
力任せに叩き切る、のではなく、円を描く長刀の、その切っ先の軌道に斜めに滑らせる様に撫で斬る。
刀に負荷を掛けない、日本刀の描く反りを有効に使った理想的な当て方。

時折、36mmを単射。
それは的確に蟹の様な大型種の、貌に見える部分を潰す。

一瞬、その意味が判らないのだが、2,3挙動先に、その動きの鈍った大型種の背中を足場にしたりする。





勿論BETAそのモノをこれだけ間近に見るのも初めてだが、戦術機による近接戦闘を見るのも初めてだ。


しかし、その技量は・・・・。


到底殲滅不能と思えるBETA密度。
単純戦力比で対抗するには、1個大隊以上が必要となろう大群。



だが、武は単騎でもその海に飛び込み、接敵数を周囲に絞り込み、そこに最小限の穴を穿つことで、前進し侵攻を深める。
その速度が尋常ではない。
光線属種が照射をしないと言われるハイヴ内、長駆となる噴射飛行をすれば距離も時間も稼げるが、限り在る推進剤が瞬く間に底をつく。
なので、主脚移動を基本としながら、驚くべき速度で侵攻していく。

そうすることで、BETAの物量を後方に置き去りにし、無力化する。
追撃しようにも、そこにも健在なBETAは残っており、それ以上接近できないのだから・・・。



勿論、今までそんな戦法は聞いたこともないし、出来るとも考えていなかった。









これが武の力!

その機動が尋常ではないことは、見ただけで判る。
もはや何をしているのかさえ判らないようなコマンド入力。BETAの動きを予測しているとしか思えない様な予定調和にも思える先読み。

自分が見た、過去のどの衛士よりも、その機動が滑らかで速い。






そして、周囲を見ればメビウス小隊のメンバーも、それぞれが百戦錬磨。
単純突破力では武に劣るかも知れないが、武の突破によって誘引されたBETAの隙を旨く使い、武ほどではないまでも、見事な機動を駆使し、それぞれが最小限の消耗で、BETAの隙間を縫ってくる。
・・・・・時に、相互扶助さえしながら。

視界に入る範囲の印象では、α01:メビウス3とω01:メビウス2は近接戦に長け、武に次ぐ突破力を有する。メビウス3が総合体術的な機動でBETAを翻弄するのに対し、メビウス2は直線的な閃剣でBETAの海を割る。

α02:メビウス4はその射撃精度が尋常ではない。自機がBETAを躱し、次の挙動に入るその一瞬の“間”で、先行する武の頭上に振ってくる中型の蜘蛛の様なBETAを打ち抜いている。
武が一瞬の注意を上に向けた瞬間、その胴体が打ち抜かれる光景が何度か繰り返されるのだ。

α00:メビウス0は隊全体の進行度と、振動探知による戦域BETAの動きを見ながら、細かい指示を飛ばし、ω02:メビウス5は直感的な危機察知なのか、偽装抗の存在や、進路上の危険地形を示唆する。

確かにこの乱戦に於いては陣形など在ったモノではなく、武、そしてメビウス3は突出しがちではあるが、何れもメビウス0の想定範囲であるのだろう。手数・弾数も確かに多いが、それで後続の進路が楽に成っていることも確かなので、皮肉以外の𠮟責は飛ばない。






・・・第一印象で感じた空々しい雰囲気など無く・・・・・・・羨むような理想的な中隊・・・・。












しかし、その一方で、喜悦も生じていた。

人類は・・・、戦術機は、此処まで出来る!
“此処”まで技量を磨けば、中隊規模でもハイヴ侵攻が可能。


私は、その事に、逆に“希望”を見いだしていたのだった。


・・・・・・そこまでは。












反応炉に通じる“横抗”。

そこに、“隔壁”が2つ、存在していることはハイヴの調査から判っていたらしく、その開閉装備も持参していた。但し、その隔壁に開閉作業に掛かる時間は、約600秒。さらに隔壁が潜り抜けられる様になるまで、約300秒が掛かる。
一方でその第1隔壁が存在する“主広間”には、音紋分析から推定される数は15万のBETAが犇めいていた。・・・デタラメな数字。一国が陥ちるほどの数。

それを6騎で突破しようというのだから。



今までの様に、闇雲に突破しても、隔壁の開放に掛かる15分の時間は稼げない。
BETAの海に沈むだけである。

そこで隊長から提示された作戦は、戦術機の機動によってBETAを振り回すモノだった。



まず、主広間の入り口で、全開戦闘。主広間内のBETAを全て誘引。
全体を半分よりこっちまで引きつけたタイミングで、噴射跳躍を用い一気にBETA群を抜け、第1隔壁まで到達。
そこでメビウス5とメビウス4が隔壁解放作業、残り4騎が、UターンしてきたBETA群を誘引しつつ再び主広間入り口に戻る。
主広間端の底部にS-11を設置、BETAを誘引しながら4騎は入ってきた横抗に退避。
メビウス5とメビウス4が戦術機が通れる大きさまで隔壁が開き、第2隔壁の解放に先行した段階で、S-11を起爆。主広間内のBETA一気殲滅を謀る、という内容だった。


無論、異論はなく、その妥当性を確認すると、互いに装備を調える。
明らかに素晴らしい作戦、と思えたそれは、しかし主広間に突入した瞬間疑問に変わる。、

これを陽動するのか!?





主広間は、正しくBETA地獄だった。


全ての壁面を埋め尽くすBETAは、既に“一面”ではなく、何層にも折り重なって存在し、互いの脚部が区別できないほどに蠢いていた。
それが侵入者である自分たちに向かって押し寄せる様は、まるで主広間の壁自体が内臓のように収縮し、迫ってくるような感覚。

急速に潮が満ちてくる浅瀬に取り残された様な焦燥感の中、目に見える範囲のBETAを殲滅し、そして其れに倍々するBETAを引きつける。

接敵すれば足場が確保出来ない。
噴射でホバリングしようにも、天井からBETAが“塊”で降ってくる。

空間を見つけ、大型種の背を足場にしながら擦り抜けるが、脇を落ちてくるBETA塊から、飛びついてくる蜘蛛の様な中型種、大型種の背にも無数の“腕”が伸び、一度それに捕まったら、確実に“沈む”。









それ故、メビウス0からの合図と共に、噴射跳躍でその“地獄”を一気に突き抜けたときは、全身から力が抜けた。
その時になって背中から踵まで、背面の神経がビリビリと震え、肌が粟立っている事を、ようやく認識する。







しかし、第1隔壁にたどり着いた時、振り向いた先には、再び転進を始めたBETA群。

今度は此処であの群れを引きつけなければならない。



その進軍してくるBETAの波頭が、津波のように徐々に高まっていく。


先に入口方向に誘引した時、一様に散っていたBETAは主広間の入り口に殺到した。
当然足の早いBETAが先に到達し、足の遅いBETAが後方に取り残されながら入り口に向かっていた。

それが今転進した為、最後尾から一気に先頭になった足の遅いBETAに対し、後方になった足の早いBETAがそれをを乗り越えるようにのしかかる。
そして管状の広間に於いて、それは底部だけではなく、壁や天井に於いても同じ現象が生じていた。

結果それはBETAの波頭を高く盛り上げ、距離800を切るころには、最後の隙間すら消え、完全に主広間におけるBETAの“壁”、そのものとなって迫りつつあった!    





『混乱のマージンを取って600まで引きつける!
BETA壁突破後、端部底付近へのS-11設置は俺がやる。
メビウス5は隔壁が必要量開く3分前に通信、乃至“黄”の信号弾で、準備完了を通知。

陽動班は、入ってきた狭路に退避して耐爆に入れ。工作班は隔壁が開き次第横抗侵入し、メビウス5は第2隔壁の解放作業に入り、メビウス4はこちらに知らせてくれ。
通信が繋がらない場合は、“赤”の信号弾を狭路内に打ち込んでくれ。それが済んだら隔壁横抗側で、耐爆姿勢。』

『『『『『 了解[ラジャー] 』』』』』

『ここが正念場! 行くぞ!!』



陽動班は、BETA誘引のため、BETAの壁に無差別攻撃。
勿論、そんな攻撃で容易く崩れるようなBETA密度ではなく、その圧力は恐ろしいまでの地響きとなってハイヴ全体を振るわせているかの様だった。





『600!!』

その合図と共に、4騎が翔た。

四方に散った“目標”に、不自然に“壁”が震え、示し合わせた様に同時に放たれてた120mm炸薬弾が中央少し上部、尤も“薄い”部分で炸裂する。
完全に閉じていたBETAの“壁”の、その部分がほんの僅かだけ崩れ、向こう側が見えた。


その僅かな隙間を縫うように、一気に翔けた4騎は、衝突するとしか思えなかった。

しかし恐らくは1m以下、もしかすると数cmというタイミングとクリアランスまで、4騎は一瞬収束し、そして同じタイイングで散開した。


戦術機の噴射跳躍による超高度なアクロバット飛行でも見られないような、4騎同時の1点突破。


しかも示し合わせた様な全騎の、続くBETA壁背面への一斉掃射に上部のBETAが巨大な塊のまま落下し、下部のBETAを盛大に巻き込んで渦巻く。



連鎖する様に尚も五月雨のように降り注ぐBETAに、僚機の姿すら見失いながら、躱し、掃射し、切り飛ばし最大限誘引する様、攻撃を続ける。




残弾は既に半分を切った。推進剤ももう4割しかない。
自機である武機は脱出用に推進剤増槽を付けており、兵装は僚機より少ない。
長刀にしたところで、いくら負担の少ない切り方をしていても、10万を優に越えるBETAの中で戦っているのである。耐久度の低下は、推して知るべし。









・・・・・・これが、ハイヴ。

これがハイヴ侵攻戦。


ハイヴがBETAの巣であり源である以上、ハイヴ殲滅は人類永続の必要条件である。

それは理解しているし、いずれはそういう事もあろう、位には考えていた。


しかし・・・。

・・・衛士に求められる作戦とは、こんなにも厳しいモノなのか・・・。

これが、自ら目指した“衛士”なのか・・・・。













武は、漸く降り掛かるBETAを振り切って、豪雨の範囲を抜ける。

噴射剤節約にすぐ底部に降りると、そこにメビウス2と、メビウス3も居た。既にメビウス0はS-11設置作業中らしい。





目前で渦巻くBETAは、それ自体が集合体となった巨蛇の様にとぐろを巻き、そしてそれがそここで崩れ、再びこちらに向かって進軍を始める。

BETAそのもの1体1体の脅威は、そんなに大きくない。
長大な足を持つ超大型種でも無ければ、戦術機でも十分圧倒できる。
しかし、BETAには数万、数十万という物量がある。しかも、基本的に同じ種でも全く周囲に関心がないBETAは、その周囲の仲間の死にさえ、なんの関心も示さないらしい。

唯、只管、前進、のみ。

恐れすら知らない愚直な前進。それが最大の脅威であり、不気味さなのだ。


転回し突進してくる犀の様なBETA。
36mmすら弾く正面装甲を照準から外し、僅かに見える前肢に掃射する。
被弾し、前肢が高速突進の回転について行けなくなった個体は、盛大に周囲を巻き込みつつ、転倒する。
しかし、それすらを直ぐに飲み込むように、蟹に似たBETAが大量に乗り越えてくる。



その時、その向こうから、黄色の閃光を曳いた信号弾が駆け抜けた。

早い!

10分と想定した作業が、7分掛かっていない。
だが、助かった事には変わりはない。
このBETAの波が、こちら側に押し寄せるのはあと3分も掛からないだろうから・・・。








迫るBETA群を尻目に、横坑に避退し耐爆姿勢を取ろうとしたとき、メビウス2がぼそりとつぶやく。

『崩落させた広間44が、貫かれた・・・』

『『『 !!! 』』』

『・・・接敵まで・・・・、先頭は3分! BETA数約3万、・・・・いや、その後続は・・・・30万だな・・・。』

とメビウス3。

『・・・・さっき突入前に調べて置いた。ここ[●●]の横抗も、構造的に弱い箇所が2カ所ある。主広間上側からS-11で爆破すれば、多分崩落させられる。』

データリンクを示しながらメビウス2が告げる。

『・・・但し、この構造強度だと1発では不足、BETAが切迫した現状では、退避しながらの順次爆破も無理だな。・・・・2発同時が必要だろう。』

「・・・ここは放置して先の横抗に逃げ込む手もある。」

『・・・希望的観測、だ。
ここでは曲がりなりにも、俺が隊長を任されている。具申は認めるが異論は認めない。

時間がない、もうすぐ赤の信号弾が、この横抗に飛び込んで来る。
すぐさまS-11を起爆次第、メビウス1とメビウス2は、第1隔壁に急行、隔壁閉鎖準備を開始。
そしてS-11による主広間内残存BETAが1万以下なら、俺とメビウス3も残存BETAを殲滅しながら隔壁通過し、隔壁閉鎖後S-11で隔壁脳を破壊する。
しかし残存BETAが1万以上の場合は、・・・・・隔壁閉鎖作業とS-11設置作業が困難になると判断、俺とメビウス3は此処に残り、主広間内残存BETAの誘引をすると共に、メビウス2の具申した位置にS-11を設置、残存BETAの殲滅と後続BETAの遮断を実施する。』

「!!!・・・・」

『・・・異論ではない。・・・けれど何故俺じゃない?  自分で具申した内容を人に押しつけるのは性に合わん。』

『メビウス1には反応炉探査の重要作業が残っている。任務達成条件が反応炉の探査と情報回収である以上、メビウス1にこの選択は無い。そして接続作業中無防備になるメビウス1の防御には、近接戦闘のスペシャリストが必須。そこまで行けば、司令塔など必要ない。』

『・・・・』

『そして・・・、これだけ言っても何一つ言ってこないメビウス3には、選ばれるだけの理由があるのだろう、・・・・違うか?』

『・・・・嫌みなくらい良く見てる・・・。
そうだ、さっきの混乱で推進剤の増槽をやられた。長駆は、あと1回。隔壁まで一気に跳躍したところでエンプティだ。』

『「 !!! 」』

『・・・と、言うことだ。ま、残存BETAが1万以下なら、イヤでも連れていくがね。』

会話はのんびりだが、追撃BETAの先鋒は、既に狭路内に侵入し、あと200まで迫っている。

主広場内の津波も、もはや端に達しようとしていた。




その時、そのBETAの群を縫い、狭路の中に、赤い曳光弾が飛び込んできた。
あの距離で、弾道のブレやすい信号弾を平然と挟路に打ち込む腕は、珠瀬をも超えるか、と思える。



『メビウス1! BETAが10000以上残った場合、この起爆を0として、ジャスト60秒で崩落起爆させる。爆風が通過次第、BETA残存数に構わす、行け!!』

武の返事は、爆音にかき消された。








押し寄せていた主広間内のBETA、そして狭路を進んでいた追撃の大群、その先鋒は、逆流した爆風に薙ぎ飛ばされた。

「・・・・クッ! Good Luck・・・。」

それだけを残し、岩陰から飛び出し、噴射跳躍に入る武。
追従するメビウス2。



その途上、オープンになった音声がつぶやく。

『主広間内残存・・・・15,000か。まあそんなモンだろ。』

『・・・・全く、死出の旅までアンタと一緒とはね。』

『・・・俺は嫌いじゃなかったが?   ・・・退屈しなくて良い。』

『・・・あぁ、もう、最期まで付き合いますよ、・・・・・・隊長。』

『・・・押しつけて悪いが、後は頼むよ、・・・武・・・。』


それを最後に、通信は、雑音にかき消された。










そして武とメビウス2が隔壁を抜け、耐爆姿勢に入った時、一つにしか聞こえない爆音が、主広間全体を振るわせた。












『メビウス1、今の爆発は?』

「メビウス5・・・。広間44が突破された。主広間の残存15000と、狭路を崩落するために、メビウス0とメビウス3が・・・・。」

『・・・・そう、・・か。
・・・・・。

こっちは第2隔壁の解放作業が終わった。あと3分ほどで、通れる。
解放次第、通過してくれて構わない。
オレは第1隔壁の閉鎖作業に入る。メビウス4は最後のS-11設置してくれ。崩落は足止めにしかならない。確実にBETAを留めるには、隔壁を封鎖し、開かないように脳を破壊するしかない。』

『・・・了解だ。』

『何、閉鎖準備はすぐ終わる。S-11設置次第横抗に入って閉鎖後、S-11の有線起爆だ。』









そう言って、彼らは隔壁の向こうに消えた。














『閉鎖準備完了。X-11ももう終わる・・・・って・・・・何だ?  この振動・・・!・・・・っ!!! 』

『っ! これ何だ?  というか・・・・BETA!?  でかすぎだろう?  これは・・・、うおぉ!?』

「!! メビウス5! メビウス4!」

『メビウス4っ!?・・・・・・クッ!! 流石ハイヴ、いろんなびっくり箱が在るな。
出現したのは・・・・目視直径170m、全長は埋まっていて不明、推定1000m、超特大のBETA。シーリングマシンみたいなヤツだ。しかも中にBETAてんこ盛り・・・数は約10000、要塞級までいやがる・・・・。』

「!!! 今行く!」

『来るな! 問題ない』

「っ!?」

『今、隔壁閉鎖開始した。』

『「 !! 」』

『閉鎖まで2分。俺とメビウス4はここでS-11を隔壁が閉じるまで此処を死守する。至近S-11の爆発で脳は破壊しても隔壁自体は耐えられる。』

「だったら、内側で・・・」

『S-11が囓られて、不発に終わる。隔壁を閉じても脳が破壊出来なければ、再び隔壁が開けられる。
メビウス4はそっちに行かせたかったが、さっき新種超大型BETAに直撃食らって、主脚がいかれたらしい。』

『・・・悪いな。ようやくお役はゴメンだ。
・・・ここからは俺の、俺だけの、狩りの時間だ。・・・・邪魔はするな。』

『そういうことだ。
・・・・まあ俺等は世間的には皆もう死んでいる存在だからな。
2回目にしちゃ、なかなか良いシチュエーション。・・・お前等は生き残れよ、じゃあな。』











第1隔壁が閉じるのと同時に、ハイヴが揺れ、そして第2隔壁、地獄の最後の門が開いた。











この後、武が何をしていたのか、隠蔽されていて判らない。
反応炉との接続作業なのであろう。

しかしその間の網膜投影による外部の映像は、そこに異様なモノを映していた。




あれが・・・・・・反応炉っ!?

・・・私も未経験故、間近に観察した事もなく、定かな事は言及出来かねるが・・・アレは、アレの形では・・?

こんなモノが反応炉??






突入後その異様な形のモノから伸びる触手のような刺突は、半端のない速度であり、武の護衛に付いたメビウス2が良く凌いでいる。

その剣技に見惚れる。

何処の流派というわけでもない、しかし、直線的な、というか無駄なモノを全てそぎ落としていったような剣閃。
傍目でさえ追い切れない変幻自在な刺突を弾き、逸らし、躱す。

遥かな高みにある技量。此処まで至るのに、どんな苦難を乗り越えてきたのか。
決して天賦の才だけでは至らず、そして弛まぬ精進をした者にしか至れない境地。



哀しいとさえ思わせる、その極み。






「!! コンタクト、完了したっ!! メビウス2、離脱するぞ。」

唐突に武のコントロールが戻る。

『・・・・行け』

目にもとまらない連続刺突を凌ぎきる。反した刀が引き際の触手を薙ぎ、その一本が飛んだ。

「・・・・え?」

『・・・俺に構わず、行け。』

「・・・メビウス2?・・・」

『俺が下がった瞬間、触手が飛んでくる。・・・コイツは俺を逃がす気は無いらしい。俺が戦っている限り、お前は脱出できる。』

「・・・・」

『生きて還ったところで、もう俺には何も残っていない。守るべきモノも、コイツの所為で全て喪った・・・。』

「!!・・・」

変幻自在に分裂する触手までも、凌ぎきる。

『・・・以来俺は、コイツに一太刀浴びせることだけを望み、24時間戦術機と刀の事だけを考えてきた。
そうすることで、俺は漸くあいつらの所に逝ける・・・・。』

「・・・・」

『さっきもメビウス3と代わってやるつもりだったんだがな。まあお陰でこうしてコイツと切り結べる。メビウス3には感謝だな。

そしてメビウス5も言っていたが、俺たちは死んだ人間、戸籍も名前も喪った人間だ。

しかも其れでいい、と皆が納得していたのは、戸籍や名前以上に、大切なモノを全て喪って、今更戻ったところで何も無い連中ばかり、生きることには諦観しちまった人間ばかりだからだ。」

「!!」

『・・・・・俺達は皆、“死に場所”を求めてさまよっている、それだけの存在なんだよ。


行け[●●]、武。お前は、違う[●●]

だから接続探査ユニットは、生還者たるお前に託された。』

「!!!」

『・・・・・・だから、行け、武! お前は行って、明日を掴め!

それが、名もない俺たちへの、最高の手向けだ・・・・。』



メビウス2に切られ、飛来する触手がまた増える。

今はその触手10数本と、平然と切り結ぶ不知火・・・。














そこで、唐突に感覚がぶれた。



気がつけば、ヘッドギアを付け、ベッドに横たわった私が居た。



「・・・・終了だ。

このまま、少し休憩に入れ。・・・・気分が悪い者は、具申しなさい。」

神宮司教官の声が聞こえる。






終わった?  ・・・・ああ、終わった、のか・・・・。


しかし、今の“現実”が寧ろ儚い幻の様に思える。

あまりの事に、頭がぐちゃぐちゃで、感情も思考も、整理が付かなかった。

・・・・・・・ただ黙って、瞑黙するしか、なかった。


Sideout



Side 武


彼方の組んだ“ストーリー”をなぞる。

基本はオレが前の世界で体験した、“桜花作戦”。
どうやら作戦名までもじっているらしい。

霞にリーディングして貰ったオレの桜花作戦時のイメージを一部映像化もしている。
それと、ヴォールクデータや、横浜ハイヴのデータを組み合わせ、さらにはシミュレーションに使われるBETAや戦術機の機動映像まで取り込んで、一つのVRデータを構成していた。




その状況で“再構成”された桜花作戦もどきの銀河作戦。

登場人物は、少しだけ、アイツ等の性格を投影しているらしいが、基本オリジナル。
にしては、ありえないほどのリアリティが在るんだが・・・。

オレの記憶に残された状況から判断された、その“過程”。
だが、委員長や彩峰、タマや美琴がどんな風に散っていったか、その一端を初めて知ったような気がする。


現実、と言い切るには確かに語弊がある。
オレの記憶にある事だって、厳密には今のこの世界では“未来に在るかも知れない可能性”の一つに過ぎない。
それでもオレの記憶はオレにとって紛れもない現実であり、その現実を元に再構成されたこのデータの状況は、現実と言っても差し支えなかった。
勿論、幾多のループを覚えているオレは、皆の気持ちも理解している。
前回の桜花作戦で何故皆で示し合わせた様に守って呉れたのか、それも理解はしていた。
皆に見せるのに流石にその描写は避けて欲しく、彼方にアレンジを頼んだ。

そもそも今回のVRデータでは、凄乃皇四型はなく、純夏も霞も参加していない設定であり、オレも不知火で参加しているが、前のループでは凄乃皇四型で先行し、恐らくはハイヴに於ける通信遮断さえ利用して、オレに一切の負担を掛けないよう気を配って呉れたのがあの結果なのだ。
・・・・冥夜がオレに対しずっと皆の欺瞞情報を送っていたように・・・。


当時はあ号を確実に殲滅出来るのが凄乃皇四型の荷電粒子砲だったため、最優先で先行させられた。

崩落させた後方の広間をこじ開けた20万を越えるBETAの大群。それはデータで再現されたスタブを埋め尽くす激流そのもの。
そのなかで、連携自爆で見事狭路を再度崩落させた委員長と彩峰。

さらに主広間に突如現れた母艦級。
今でこそその全容を知っているが、当時としてはあり得ない状況の激変。
その激変の混乱の中でも、達成された第1隔壁の閉鎖・脳破壊。
それを達成しながら母艦級の出現により、結果BETAの奔流に飲まれたタマと美琴。
記憶ではS-11の爆発は無かったが、何らかの方法で達成し、散っていった事は確かなのだ。


命を賭した、アイツ等の成果。
朧気ながら、或いは若干の誤差は在るにしても、未来で喪った仲間達の最期を漸く知れた気がしたのだ。




そして冥夜。

此処は記憶する状況とは、敢えて全く変えてきた。
恐らくは、この部分だけ、今年の春まで本当に存在したという幽霊部隊の記録から引っ張ってきたのだろう。
流石にもう一度BETAに侵食される冥夜を見たくないし、その冥夜を自分の手で殺す場面もみたくなかったので正直オレ自身が助かった。

そして、オレの記憶にない範囲でも大勢の衛士や兵士、そして一般の人までもが理不尽な死に追いやられ、そして生きている人さえ何かを背負って生きている、その現実を思い起こさせてもくれたが・・・。
記憶を失っていたなら、記憶が戻るキッカケともなるだろう、一幕になっていた。









・・・そう今はまだ喪っていないこの仲間達。


そして、このデータに彼方が反映した“今の”オレの練度とXM3、そして“期待値”として組み込まれた冥夜達の目標ともなるアバター達の練度。

其れに準じる練度が実現できれば、凄乃皇無しでもたった1個中隊で結構行けるんだなぁ、と改めて思う。

勿論本来は、まずは入り口のSW115に至るまでが滅茶苦茶大変なのだが・・・。


それでも前の世界では、純夏のラザフォード場を頼りに、相当強引に突破したBETAを、このデータでは殆ど置き去りにし、広間を利用した部分崩落で時間を稼ぎ、主広間でも強行突破と陽動によるBETA誘引で隔壁解放の時間を確保、最終的にS-11で殲滅する戦法を取ることが出来るのだ。

あとは、あ号標的を破壊するだけの火力さえ温存出来れば、純夏に負担を掛けることなく桜花作戦が実現できる事になる。
勿論、現状の装備では、まだまだ決して容認できない犠牲が出ているが、それは誰よりもこのデータを組んだ彼方が認識している。







桜花作戦では凄乃皇四型という、謂わばBETAに対抗した物量で殲滅しながら侵攻したが、その大きさが逆に仇となり、本来戦術機最大の利点である機動的な作戦が取り難かった。

この再構成されたVRデータでは、凄乃皇四型のもたらす物量は無いが、その戦術機機動にものを言わせ、同等の侵攻を果たしていると言える。


問題は火力・推進力不足と、そして彼方の言う反応炉破壊後残存するBETAの汪溢か・・・・。






そして、このデータには、本来訓練兵などには到底見せられない最高機密がてんこ盛りである。
夕呼先生も、これを訓練兵に見せる事には、当初難色を示したらしい。

だが、オレのループから得られたBETAの情報、特に上位存在との会話ログに信憑性を持たせるために丁度良い設定であること、そしてもう一つ・・・。

それは、この世界の人類が感じている厭戦ムード、と言うか、既に諦観とも言える逃避、他人への転嫁、自暴自棄。あと10年と言われる現実による圧力。それらを払拭し、人類に未来を示す為にも、今後は徐々に情報公開をせざるを得ないと判断したらしい。


そう言われれば、狭霧大尉のクーデターすら、無意識の諦観による責任の転嫁、とも言える。
殿下が大権委譲さえ為されれば、あとはどうにかなる、という無責任。
BETAの侵攻が齎す重圧や諦観故の自棄、という一面が在ったのも否定できないのだから。

だからこそ、米国の裏工作とは別に、あれほどのメンバーが賛同したのだろう。
高位の者、練度の高い者ほど、BETAに対するその無力さを感じていたのだから。







年内に、喀什を陥とす・・・。

最終的に夕呼先生は、その為に必要なら、訓練兵への開示など些末にしか過ぎない、そう判断したのだろう。







さて、この“追体験”がアイツ等にどう映るか、どう受け止めるか。

それはアイツ等次第。


自らの望む衛士と言う存在。
このデータにある状況は、少なくともここ横浜の訓練学校を出る限り、もっともあり得る可能性の高い未来であるのだから。




それでも、オレは期待し、待っている。

アイツ等が、此処まで来ることを・・・・。


Sideout




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