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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/15 19:59
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’13,05,15 誤字修正


Side 武


それは耳に馴染んだ声、見覚えのある面影。
並行世界を少なくとも2回、主観記憶では合計で2年近く渡ってきたため、随分昔、とも取れるのだが、同時にさっき流入した記憶の中には、つい最近の元の世界の記憶もある。
それ故、相手が誰なのか、理解できる。

「!!! 彼方っ!?」

並行世界と元の世界の記憶の混乱に少し困惑しながら。

「・・・ああ?  何故久々に会ったような疑問系?」

「って!?  どうしてお前ここに・・って・・・。」

「寝ぼけたか?  ご挨拶だな。昨日課題終わらんと泣き付いてきたヤツが。」

「ッ・・・・・」

そう、思い出した元の世界の昨日の記憶。その中に確かに宿題の解決に泣きついた、という記憶がある。
実際元の世界のどの記憶でも、課題の解決に純夏や尊人がアテになるわけでもなく、しょっちゅう頼っていた相手なのだから。

つまり今回ループした俺は、元の世界では彼方に課題の手伝いを頼んでいた俺で、そのせいで俺の部屋と共に彼方までもこっちに引っ張り込んだってことか!?


困惑する俺を尻目に、外の異変に気付いたのか、彼方は寝袋を抜け出すと窓の外を眺める。

「・・・ちなみに、ここは何処だ?」

「え?」

「・・・世界が違いすぎる。・・・近所に人の気配すらない。」

彼方は戸惑うこともなく、淡々と口にした。

「えっと、その・・」

何処まで話していいものか?
少なくとも今までの自分の経緯を話すことは、この世界に於ける軍事的最高機密にも触れることだ。
元の世界と余りにも違う軍部が突出したこの世界で、元の世界の常識しか持ち得ない“BETA”世界初心者の友人に全てを話して良いモノか?

「・・・しかも、この部屋と外の世界は一種隔たりさえ感じる。・・・訳は・・・知ってるみたいだな。」

だが、既に現状の異常を悟り、ゆっくり振り向いた親友の、勁い眼光には抗えるはずもなかった。




閑話休題




「・・・成る程ね。随分と壮絶なことに。・・・ん、いや・・・、そっか・・・頑張ったな、武。」

最初の転移から主観記憶における殆ど全てを話し終えたとき、この極めて冷静で、恐ろしく聡明な親友はそう口にした。

「!!!っ!」




話の前に、と着替えた後、必要と思われるモノを持ち一旦外に出た。やはり確率の状態だった部屋が廃墟に変わった。
確率の霧のまま永く話しては不安定になりそうなのと、衛星通信を試した彼方から、不安定な霧の中からでは、通信が繋がりにくい、という主張があったからだった。

再度廃墟と化した部屋に入り、適当に座る場所を作って落ち着くと、オレの永い永い、経験の話をした。
彼方はPDAと一旦持ち出したモニタを繋ぎ、オレの話を聞きながらも何か操作もしていたが。
もちろん廃墟に電源は通っていないから、モニターに繋いでいるのは彼方持参の簡易電池。
交流100Vの簡易電池など元の世界でも他では聞いたこともないが、彼方は普段から持ち歩いていたので気にしない。気にしたら負け、なのだ。

彼方は話を聞きながら、小さな携帯用アンテナを展開し、片手間で通信衛星との接続を試みていた。

お、繋がるじゃん、衛星通信のプロトコルは同一規格か・・・。
とか、
セキュリティは、・・・・甘甘だな。
インターネットは、・・まだ公開されていない、か。
とか、
まあ基幹はあるし、そこそこ整備はされてるし、公官庁、研究設備さえ繋がってればいいから充分だな。
とか時々呟いていたのは、ご愛敬。

そんな操作をしながらも、しかし意識は聖徳太子の如く確かにオレに向いており、長い話に時折質問を交えて、微に入り細に入り2度のループに渡る殆ど全てを話し終えたときには、すでに2時間が過ぎていた。

その間彼方は、どう聞いても荒唐無稽なオレの話そのものには疑問を挟むこともなく、そして途中からは、ずっとその話を整理するように自分のPDAに何かを打ち込みながら聞いていた。

最後に、本来なら純夏に再構成された“元の世界”に戻ると予想されたはずが、何故かBETAの居るだろうこの世界で目覚め、三度目のリセットだろうと思われることを伝えると、暫しの沈黙のあと、この2歳年上の同級生は前述のように言ってくれたのだ。

それは話を訝しむとかではなく、オレの経験した過去への慰撫に他ならない。
実際、大事な仲間を亡くしたのは、オレにとってほんの一昨日のことなのだから。


「あ・・・」

それを理解して、鼻の奥がツンとする。

「・・ってっ!おまえ、こんな荒唐無稽な話を信じるのかよっ?!」

込み上げる涙を堪えるように誤魔化すように叫ぶ。

「・・・この現状の説明には最も納得できる話だ・・。何よりもここで武が俺にそんな壮大な嘘を言う必然性が全くない。」

「か、彼方・・・・・・」

「武が説明したこの世界の状況や、過去の事件が、この世界の現実と一致している事もネットで確認しながら聞いていた。
因みに、お前の言うとおり、今日は2001年の10月22日だ。俺自身の記憶でも、昨日武の家に来たのは10月21日だった。

武の話は、“初めて”飛ばされたとしたら、知っているわけが無い事実ばかり。
それにお前自分で気付いているか?  今のその身体は俺の記憶にある“元の世界の武”と違い、十分その2回目の世界のTOPGUNの身体だぜ?
少なくとも元の世界じゃ、武の腹筋は8つに分かれてない。
・・・もっとも世界を超えて、身体は鍛えられたって言うのに相変わらずの感激屋だけどな。」

茶化すように、目元に悪戯っぽい笑みを刻んで涙ぐんでいたことを揶揄されると、自覚が在っただけに顔が熱くなる。

「う、うるさいっ!!」

「デレツン乙。そこは三連呼が正しいが、まあどうでもいい。・・・さてこれからどうする?」

「あ、・・・ああ。」

鉄板なつっこみでからかわれ、噴き掛けた思考に、冷や水。
さり気なく掌の上で遊ばれてる気がしないでもないが、この冷静さが今は頼もしい。

「・・・取り敢えず、横浜基地に行くことは必須だと思う。夕呼先生の協力は不可欠だからな。」

「・・・お前としては、鑑やおまえの仲間、ってかこの世界でのクラスメートが横浜基地に居る以上、避けられない、か・・・。」

「だな。・・・成り行きとは言え、彼方にもこの世界の最高機密も全部ばらしちまった様なもんだし・・・。」

「フム、で・・・?  お前その夕呼センセの数式、覚えているのか?」

「え?  まさか。数学が得意でもないオレにあんな複雑な式、覚えられるはずないだろ」

「・・・それは・・・・・・。・・・まあいいか。」

「え?」

意味ありげな沈黙に引っかかる。その疑問顔を察したのか、彼方は説明モードに入る。

「・・・そもそもさっきの話では、“2周目”の世界で鑑とリア充ラブラブHして因果導体と言う存在から外れ、その後その世界の鑑が機能停止したから還る筈、だったんだよな?」

「!っ・・・露骨な表現を控えて貰えると助かるが、まあぶっちゃけ、そうだ。」

言葉から“その”ことを鮮明に思い出してしまって赤くなったり、一方で、喪ったことに落ち込んでみたり。

「・・・三度この世界に戻ってきたのは、元因果導体であった武の未練と我が儘以外原因はないだろうが、経緯に因果導体から外れている事実が在る以上、今の武は因果導体ではないだろう?」

「恐らくそうだけど・・・・、あ!・・・それって・・!! 元の世界行って数式回収が出来ないってことかっ?!」

「・・・鋭いな。恐らくそうだ。
そもそも普通の人間がBETAの居ない異世界に転移できるなら、とっくに避難してる。
世界を渡る裏技なんぞ、本来無理。
夕呼センセの仮説で言えば、鑑がこの“BETA世界”と俺たちの“元の世界”を繋いだ。
そして向こうの世界群から、集めた武を2つの世界の因果を繋ぐ存在:“因果導体”としてこの“BETA世界”に引き込んだ。
だからこそ因果導体のお前は、その2つの世界を繋ぐ“繋累”を辿って元の世界に戻れた。
因果導体である事と、武の言う社嬢のサポートが在ったとは言え、それでも本来は相当低い成功率だろ。
それを実行したって事は、夕呼センセらしくもないが・・・、余程、切羽詰まってた、と言うことか。・・・まあ、あと2ヶ月!と期限切られれば仕方ない、な。

それが、鑑の望みの成就に因って、武の因果導体は解消され、その“繋累”は既に切れている筈だ。
“繋累”が無くなった今、無数にある分岐世界群から目的の世界を探し、転移して、また同じ世界に戻ってくるなど出来ないよ。」

「・・・・じゃあ、数式は回収不可能?  00ユニットは・・・完成しない?  純夏は・・・っ!?」

「・・・落ち着けって。・・・ふむ、だから世界は俺を選んだな。」

「は?“世界”・・・?」

「夕呼センセの論文は発表されて居るんだよな?」

「あ、ああ・・・。」

DB[データベース]を探してみるか。」

「・・・・・。」

沈黙。
モニタを高速で流れる文字列。

学会系の論文データベースから、論文リスト表示、検索。元の世界と違い、インターネットなど、まだ整備もされていないこの世界。しかしその元となる“経路網”は既に在るらしい。

検索に勤しむ彼方に、問いかける。

「・・・なあ、彼方、この世界は“ループ”して再構成されたんだよな?」

「ああ。お前の経緯を聞く限り、そう考えるのが妥当だろう。」

「じゃあ、“戻った”と言うことは、オレが因果導体であることも戻った、と言うこうじゃないのか?  ここにいる純夏も、オレを引き込んだんだよな?」

「・・・・」

モニタから視線を外し、人の顔を興味深そうに眺める。

「?  何だよ、人の顔マジマジと・・」

「いや、複数の並行記憶の所為か、頭が回るな、と。
けど、残念ながらそれは無いな。お前の死で、今日に戻る閉じたループが続くこの世界とはいえ、その直前、つまり昨日までは確率分岐が存在していたはずだ。
ループ時の再構成に当たり基礎となる選択肢は多い。なので同じ様なループでも、過去は微妙に違っていたりしなかったか?」

「・・・ああ。そう言えば、そうだ。
今まで記憶が主観一本だから気にもしなかったが、傍系記憶では、過去がかなり違う場合もある。」

「で、因果導体に縛られた世界は、ループの度に様々なパターンに分岐した。それはお前が因果導体で、その在り方によってルートが変わる為。
逆に言えば因果導体が世界の在り方を変えられる。
本来並行[パラレル]に進む分岐世界が、因果導体のループによって逐次[シリーズ]世界になったようなものだ。
そしてお前は前回、そのループそのものを起こしている原因、鑑を解放した。」

「・・・つまり原因が消えれば、結果が消える・・・ってことか?」

「そ。話が早くて助かる。
その上で再構成されたのが“此処”。
一見タイムパラドックスにも思えるが、そもそも因果律量子論では時間なんか相対的な指標でしかないからな。“此処”で言う支配的な時間の流れは、因果導体だったお前の“経緯”。
つまり鑑の希望を叶え、因果導体から開放された、という“因果”の“因” 。
その“因”を過去として持っているお前の居るこの世界の鑑は、既に“元の世界”から“シロガネタケル”を呼び込めてない、と考えるのが妥当なんだ。」

「・・・・」

本来多数にあった確率分岐世界。
純夏が“その力”を得たことで、オレが引き込まれ、閉じた世界。その“主因”が無くなり閉じた世界は開放された。
この世界は、“主因”がないことを前提に再構成された世界、と言うことだろうか。

「オレが因果導体でないのは、因果の “結果”、じゃないのか?」

「因果は当然繋がっているから、見方に拠れば、というか武の経緯で言えば、確かに結果だ。
だから、その結果に合わせる様に、原因も変わる。
ここで再構成された世界は、お前が因果導体ではない、という結果に繋がる世界、つまりこの世界の確率分岐の中で、鑑が他の世界の“シロガネタケル”を呼べない世界さ。
因果導体である“シロガネタケル”には来れない世界だが、この世界の一部となった今の“白銀武”なら存在できる世界、ってところか。」

因果導体で無くなった事を前提とした再構成世界、と言うことか。

「・・・・・・あ、これか・・・。フム・・この論文の理論式を見れば、間違いくらいは解るな。」

自分の考えに黙り込んでいたら、検索からヒットしたらしい、彼方が声を上げる。

そもそも今のネット環境は、公開用のホームページなど存在しない。リモートログインで、直接サーバやコンピュータシステムにアクセスしている、らしい。
どう控えめに言ってもハッキングという犯罪行為そのもの。
普通IDもパスも無いはずなのに、あっさり入り込む。
彼方に言わせればまた公開が前提とされていない世界なので、そこらのホストはセキュリティが相当甘いそうだ。メンテ用のシステムIDとパスワードがそのまま使える所も在ったとか。

尤も、それ以前に衛星と通信できている時点で破格、なのだが。

そう言えば、彼方がこんなハッキングスキルを有しているのを知ったのも、物理教科室のPCで、夕呼先生とあちこちの実験結果を漁っていた所を見たからだ。

「!!! 彼方そう言えば、向こうで夕呼先生としょっちゅう議論してたよな?!」

「・・・だよ。多分、該当する理論の議論も出来る程度に、な。だから、“世界”は俺を選んだんだろう。」

理論が完成する希望が持てたことに、歓喜が沸き上がる反面、背筋が重い冷気に晒される。
これでは、彼方が夕呼先生に巻き込まれること確定だ。

「けど・・、いいのか?  それじゃ完全に巻き込まれることになるけど?」

「今更、っていうか、武が気に病む必要もない。元の世界でだって、センセと連んでいたんだぜ?   世界違ったって、本質的な魂は同一だしな。
仮に、このまま武と別行動したトコで、この年齢の男子は殆どが既に兵役なんだろ?
異世界転移してこっちの身元もあやふや、悪ければスパイ容疑で射殺、次点でも違法難民扱いで留置は確定。
こっちの俺が死んでいれば戸籍すら無いわけだし。
よしんば開放されても、軍属してどっかの戦線に歩兵として送られて、それでおわりだ。」

「!!」

この世界に来た時点であり得ない話ではない、と言うか、今の時代背景からすれば、それは確定した未来に思える。勿論、このチートが服を着ているようなコイツが黙ってそんな事になるとは到底思えないまでも。
初めて来た時、俺がそれを理解したのは何度も営倉で過ごした後だったと言うのに、コイツはもう理解している。
何というか、驚異的な適応力?

何れにしても、そんな状況に巻き込んでしまったことの想いが僅かに表情に出たのか。

「・・・別に俺が来たのはお前の所為じゃないから、お前が気に病むこともない。
世界に選ばれた時点で巻き込まれることは決まってる、と言うか、武と居ることが最も効率が高く、使えるカードが多いことが解っている。
お前の目標は? 仲間を護り、人類を永続させることじゃないのか?」

「! 勿論!!!」

「俺としても別に無為に死にたい訳ではないし、BETAに喰われる様な事態は全力で避ける。
この世界の人類を永続させる事に異存も反論もないし、知り合いの死に目に遭うのも遠慮したい。
世界が相手じゃ、俺が因果導体とは思えないから元の世界に還る手立てはほぼ無いし、ここでの人生を考えれば人類の永続には寧ろ積極的に貢献したい。
目指す目的は、同じ、だったら最大限サポートさせてもらうさ。
・・・おっと、あ、・・ここか・・・。」

「?! 彼方・・・?」

彼方の目がモニターに留まる。モニターでは流し読みしていた夕呼先生の論文。

「・・・成る程、“元の世界”の夕呼理論とはちょっと違うな・・・。
向こうの夕呼センセに言わせれば一世代前の考え方、たしかにセンセの言い方では “古い”な。
これは・・・階層の概念が入ってないのか・・・。
・・・例の数式は何とか出来そうだぜ?」

悪戯っぽい笑みと、呆気ないばかりの言葉に唖然とするしかない。
“世界”が選んだという彼方は、数式回収という最大の懸念をあっさりと打破してしまった。


・・・・・・まあ、これが、彼方、だ。

世界は最適な存在を引き込んだらしい。





最初にこの世界に来たときは、何も無かった。

何故ここに来たのか、純夏の事情など何も知らず、今思えば、ひ弱で無知で何もない、情けないまでの自分。
そんなオレを置き去りに、人類はほんの僅かの人数で、遙かな宇宙への逃避行に奔り、そして残りは玉砕戦に討ってでた。
それは、絶望の終焉でしかなかった。


無意識の内に何度もループし続けた末に辿り着いた2周目には、1周目で培った力は在った。
その記憶もあった。
けれどやはり未だ、精神的にはまだまだ幼稚で甘甘な、ガキだった。
この世界で本当に生きていく、その覚悟すら無かった。
XM3の成果が思いの他在った所為で傲り、そこから生じた失態でまりもちゃんを死なせ、あげく逃げ帰った元の世界のまりもちゃんや純夏にさえ重大な因果をもたらした。
決意と共に戻ってはきたが、結局最後まで甘ちゃんは抜けず、207Bみんなの命と引き替えに、助けて貰って生き延びただけだった。
彼女たちの凄絶な生き様死に様を伝え、散った者の分まで全てを負って生きるのが努め、そういまわの際に冥夜と約束しながら、それさえ反故にして流され、元の世界に還るしかない、そう納得してしまった最後の最後まで情けない男だった。

殆どの仲間を失い、オリジナルハイヴは墜としたものの、人類そのものの傷は深く、生き存えることは微妙であるのは漠然と理解もしていたのに・・・。

そう、結局異邦人でありこの世界のものではない構成因子は、いつも、どのループでも、たった一人だった。



だが、今回は違う。

傍系記憶も合計すれば、ざっと100年を越える経験、力も在る
まあ、スタートが同じ時系列の、しかも蓄積のないループなので、精神年齢はたいして上がっている気はしないが。

それでも、覚悟は出来た。


そして、はっきり言ってオレが知る限り、元の世界で最もチートな親友。
彼方には元の世界で、実は世界を相手に喧嘩を売る力があった。
元の世界の冥夜を以てして、規格外、と評した頼もしい相棒が来てくれた。

今度こそ、絶対、皆を守る!

心の中で固く決意する。




「・・・さて、論文関連の理解は、こんなトコでいい。
じゃ基地行く前にもう少し話させろ。経験者の、武の意見を聞きたい。」

「は?」

「・・・人類がBETAに勝つ方法について、だ。」

彼方の口元には、あるかないかのアルカイック・スマイル。
これは・・・・彼方が猫を被らないときの表情。

・・・あ、BETA死んだ・・・。
あ号は阿部定確定だな・・・。


背筋に寧ろ薄ら寒いものを感じながら、どうにか曖昧に、ああ、と応えた。


Sideout




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