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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/20 17:51
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‘12,10,06 誤字修正


Side 夕呼


ノックの音に返事を返す。
どうせ此処まで来れるセキュリティパスの持ち主は、社と2人の新任少佐しかいない。
丁度、素子化の術式が一区切り付いたところ。

案の定、変わらず飄々とした男が入ってきた。

「・・・何か用?  丁度休憩しようと想ったところだから、珈琲入れるけど、要る?」

「ああ、チョットばかり内緒話。あと丁度いい、これは異世界の土産だ。」

「?  !!」

渡されたのはブルーマウンテン100%。しかも手煎りと書かれた重厚な缶。
プルトップを切って香りを確かめるが、近年ではかいだこともない芳醇ともいえる芳香。
極上の逸品に間違いない。

「こっちで言う天然物。ま、異世界産だけどな、武に珈琲好きだって聞いた。」

「・・・随分気が利いてるわね。
でもこんな物、所持品検査の時には持っていなかった筈だけど?」

「・・・ちょっと裏技。
そう・・・だな、一種のESPと言うか、正確にはPKの一種と捉えて貰うのが良いか。社とは方向性が明後日に違うけどね。なのでリーディングやプロジェクションは出来ない。
・・・そう言う意味ではハッキングは出来る、ってことになるかな。
詳細は、武にも言ってないし。」

「・・・成る程ね。電子操作系の能力者って方向ね。
でも良いの?  あたしにバラして?」

「此方が信頼しなきゃ信用なんて得られない。少なくとも俺は元の世界の夕呼先生を信頼していた。」

「・・・他の女と比べられるのは面白くないわね。」

「他の女じゃない。・・・魂魄は繋がっている筈だぜ。」

「・・・・」

茶化したアタシに平然と切り返しながら、てきぱきと珈琲の準備をする。
アタシはその作業を明け渡し、ソファに腰掛けた。

無意識領域の共有・・・。確かに繋がっていてもおかしくはない。





理論は完成したのだ。
早速、情事の要求かとも思ったが、そうでも無いらしい。



「で・・?  内緒話ってなによ?」

「あぁ、武のこと。」

「白銀?  なんか問題在るの?」

「・・・昨日はああ説明したけどな、事態はそう簡単じゃ無さそうだ。」

「・・・え?」

アタシはその含むモノに眉を上げる。





「今の武は何だ、と考える?」

「・・・元因果導体・・ってだけじゃなさそうね、その言い方は・・・」

「・・・俺の予測じゃ、少なからず近いうちに、この世界群は崩壊する可能性がある。」

「!?・・・どー言うこと?」

「・・・武が因果特異体[●●●●●]だからさ。」



沸いた湯をネル式のドリップに落とす。
細く途切れなく注がれる熱湯に、馥郁と言った芳香が匂い立つ。


「・・・・言ってみなさい」

「俺と武の居た世界を“元”の世界群とし、この世界を“BETA”世界群とする。
BETA世界群で鑑はBETAに捕まり、そしてG弾の効果も加わって元の世界群を此処と繋げ、そこから武を因果導体として引っ張り込んだ、これがBETA世界群の最も確率密度が高い事象で、此処までは一本道だ。」

「・・・」

「鑑が想いを遂げられなかった武の一周目の世界は、夕呼センセの言ったように閉じていて、武が死ぬたび特異起点、つまり昨日10月22日に戻った。
そして武自身は分けているが1周目と2周目の差は、1周目で鑑以外の誰かと結ばれたか否かの一点。記憶は似たようなケースがあって重複してるから、武自身数え切れていないが、当然かなりの数をループしている。
その中で誰とも関係を持たず、且つ第5計画に移行して直ぐ、何かの要因で早々と死亡した事で、漸く2周目の世界に繋がった。
それまでは鑑が女性関係を消去するのに、結局丸ごと記憶や経験を消していたが、それが行われなかった為に記憶と経験を引き継いだまま2周目が始まった、と言うわけだ。
ただ、その2周目も鑑に辿り着かなければ、同じ条件で起点にもどる。

つまり武は因果導体故に、このBETA世界に様々な確率分岐を発生せせる事無く、延々とループを繰り返したわけだ。

で、前回、遂に鑑に辿り着き、結ばれ、武は因果導体と無くなったことで、本来ある元の世界に戻る。」



話しながらもゆっくりと落としたドリッパーから、カップに注ぐ。


「因果導体が消えれば2つの世界を繋いだことが原因である事象が消え、再構成される。
少なくとも“元”の世界群は再構成されたはずだ。
因果導体を解かれ、大部分の武は戻ったからな。」

「それの何が問題なの?」


差し出されたソーサーを受け取りながら聞いた。


「その原因が消失したことで、この“BETA”世界群も再構成された。それが昨日、10月22日。」

「・・・・」

「・・・因果導体で在った武が影響したこの“BETA”世界は、因果導体の消失による再構成ではなく、そのまま未来に進む筈じゃなかったのか?」

「!!」

「事実、今回の武の傍系記憶には、“因果導体じゃなくなった”のに、留まり続けた分岐世界がある。
本来、この“BETA”世界は、2002年の1月2日、そこから確率分岐し、武の存在に関わりなく、それこそ残った“武”が死んだ後も続いていく筈だったんだろう?」

「・・・それが、“起点”に戻った・・・これは、本来有り得ないループ・・・と言う事ね?」


考えを巡らせながら、カップに唇をつける。

・・・香りそのものを飲むような体験。
鼻腔を満たす馥郁と、口腔を刺激する甘い苦みや僅かな酸味が混ざり合い、得もいえぬ快感として落ちていく。

甘い、と言えるほどの苦みに、頭の中がすっきりする。

・・・淹れ方が完璧よ、・・・・・良い仕事するわね、アンタ。




「・・・いろいろ傍証はあるんだが、・・・鑑純夏が途轍もない存在[●●●●●●●]だと言うのは同意できるか?」

「・・・・・・そうね。
無意識の狂気に近いとはいえ、目の前で死んだ男に会いたいからといって、隣の世界群から引き込んで、その相手を因果導体とし、自分と結ばれるまでループさせ続ける・・・。
その為に“世界”を閉じてしまうような存在だものね。
G元素やG弾の効果が在るとは言え、そのポテンシャルは計り知れないわ。」

「なら・・・その鑑に応えられるだけの武が、唯の一般人だと思うか?」

「!!」

「・・・夕呼センセのいう00ユニット適合可能性、実は武の方が高いんじゃないか?」

「・・・可能性はあるわね・・・」

「・・・と言うか、俺は逆に“白銀武”こそが世界震駭者だと思う。
恋愛原子核、とも元の世界の夕呼センセは呼んでたけどな、武に惹かれる女子は、総じてポテンシャルが高い。
ここの207BやA-01が00ユニット適格者候補を集めていると聞いているが、元の世界のクラスや学校にはごろごろ居た。」

「なによ?  恋愛原子核って。」

「前の世界の夕呼センセが命名した武の二つ名。
原子核に引き寄せられる電子の如く、女子を引きつける、って意味で。」

「成る程ね。ハーレムなわけだ。」

「いや、本人はその手の感情に鈍感で無自覚だっていうので、逆に始末が悪いんだがな。」

「・・・平和な世界ね。」

「ところが、言葉ほど安穏とした物でもない。
向こうの言葉で言うと、無自覚フラグ構築体質[エロゲ属性の一種[なんだけど、現実の物となるとギャグじゃすまない。
しかも、武の周囲に集まるのは、矢鱈ポテンシャルの高い娘ばっかり。
これが武がテレビタレント等有名人で、と言うならまだ解る。
なのに、偶々の生まれた土地や学校、つまり地縁や職縁で集まったに過ぎない一高校で、あたかも意図的に集められたように周囲に存在し、且つその殆どが武に惹かれるって言うのは既に異常。
夕呼センセやまりもセンセですら、その一端だからな。
実際、向こうの夕呼センセは、恋愛原子核と因果律との関わりを探っていた位だから。」

「・・・そんなに凄いの?」

「少なくとも夕呼センセは、ここのA-01部隊を、全国規模で集めたはず。
ポテンシャルの高い、00ユニット適合性という観点で。
けれど、元の世界では、今残っている隊員の殆どが、多かれ少なかれ武の近辺に存在していた。」

「・・・・」

「寧ろ鑑ですら運命的に武に引き寄せられた存在、と思われる。
そんな武がこの世界では、重い後悔を重ねながら、果てしないループを繰り返してきたんだぜ?」

「・・・つまり、鑑に匹敵する所か、凌駕する程のポテンシャルが、数知れないループで重積した後悔と願望が寄り集まり、強烈な“意志”として自らループ可能な存在に至った・・・と言うこと?」

「・・・・・まあな。
鑑と違い、G弾やG元素の補助はないからな。当然鑑以上のポテンシャルは必要だろう。
今の武は、主観記憶は、“支配因果律”に近いけど、肉体や経験は、むしろハイヴに潜り続けた“最強の衛士”さえ越えている。経験が全て畳み込まれてる様だ。
戦い続けた分岐では、やむを得ずG弾を使ったケースも在るらしいから、その影響も全く無いとは言い切れない。

因みに俺に付いても、殆どの武が戻った時消失する繋累にその反動を利用して“元の世界”群から、もっとも都合の良い存在、“武の[●●]無意識領域”にあるもっともチートな存在を、再構成する際に連れてきた、と言うのが妥当だろうな。
“武が”、とか言うとアイツの性格上悩みそうだから、説明の都合上“世界”が、なんて言っているが、本当に“世界”なんかに擬人化された“意志”など在るかどうかは、疑問。
・・・まあ無意識領域を“世界”と定義すれば、あながちウソでもないけどな。」

「・・・・」

「要するに・・・武は遣りすぎた。
鑑に至るのが遅すぎて、なのに諦めが悪すぎた。
アイツの無限にも思えるループ、その中で達した成果。
XM3、甲21号、桜花。この世界の存在、と認められてしまったから、一部分岐では残り続けた。
それでも尚、届かなかった世界。
そしてもとの世界に戻った武“群”も、ループの間に濾過された膨大な“想い”を全て虚数空間に残した。

過去のループで夕呼センセが武に言ったように意志の強さが世界をすら変える。


全ての記憶が持っていた、それぞれの“シロガネタケル”の絶望と後悔、皆を守れなかったという懺悔。
それは紛れもなくこの世界群のものであり、それが凝固して元の存在を再構成した。

それが今の“白銀武”だろう。

つまり、今の武は、 “この世界に認められた武達”を核に、虚数空間に残された、この世界に於ける全ての武の記憶、その集合体、といった所。

で、その膨大な未練の集合体である武が、今回のループを引き起こした。


それが・・・因果特異体[●●●●●]


・・・俺はそう考えている。」



彼方の言葉を反芻し、頭の中で構築する。

「つまり・・今回のループは、結ばれて力を失った鑑ではなく、白銀自身が望んだ、と言うことね・・・?」


喪ったモノが大きすぎるのか。
それ故に自らを捕らえてしまったのか。

直列に並んだループ世界での膨大な経験は、それに対する救いではなく、後悔と懺悔の蓄積。

死ぬ度にループする存在は、忘れ去ることで経験が蓄積されず、何時も大人になりきれない、割り切れない精神だけが虚数空間に蓄積されていく。

結局、幾多に渡るループですら白銀の望むようになった世界は一つも無いのだ。




この世界からBETAを殲滅したいと望むのは歓迎だし、一向に構わないが、その“過程”に固執されたら、厄介だ。
飽くまで“BETA”駆逐による人類の永続が目的であり、その完遂の為に必要な犠牲なら、迷わず選択する。


基地の綱紀が緩んでいるなら、再度の捕獲BETAとその開放も実施する。
それでまりもが再び死ぬことになろうとも・・・。

これまでもそう選択し、推進してきた。
結果的に死に追いやった部下も既に一桁や二桁ではない。
ヴァルキリーズだって、それが必要ならば総て00ユニット化する。

その覚悟は変わっていないし、変えられない。
それこそが世界を救う事を目指したアタシの覚悟だから・・・。






「・・けど、それが何故世界の崩壊に?」

「・・・そもそもループってそんなに都合の良い事象なんだっけ?  延々と同じ時間を繰り返す世界が・・・。」

「・・・・因果世界で時間概念は無意味、だと思うけど?」

「数多の世界群の中では、総じてそうだろうな。けれど、世界は隣の世界と何の繋がりも無いのか?」

「・・・」

「少なくとも元の世界群と、BETA世界群が似ている、と言うことは、そこに超次元的な繋がりがある。武が因果導体であった繋がりほど、明確で強固ではないにしても・・・。
世界間が遠く離れるほど、繋がりも薄れその類似性は薄くなるだろう。

その似たような世界群の中で、トポロジーが完全に閉じ、周囲との繋がりを無視して巡り続ける世界が在ったとしたら?」

「・・・・歪が溜まって来る、という訳ね・・」

「それでなくとも武が関わったこの“BETA”世界は、周囲の世界群に対し、かなり“遅れている”。
一方で“元”の世界は、このあと滞りない未来に進むだろう。
でもこの“世界”は?」

「・・・すすまない、いえ、すすめない・・。
・・・つまり白銀が無意識でもループさせる力を持っていた場合・・・・・・白銀のループ条件を解消しないと、ループが発生し、時間弾性が周辺世界との歪に耐えきれなくなったら、この世界そのものが崩壊する、ということね・・・?」

「・・・時間概念がどの程度歪みに影響するか、によるな。
けれど、正直俺自身は因果導体でも特異体でもない存在だからな。
今回は武の無意識願望が入っていたので引っ張られたが、次のループ先で存在できなかった場合は、以降数式回収が極めて困難、と言うことに成りかねない。」

「・・・そうなれば、いつかは歪が破綻する、のね・・・。」

「いや、時間歪みが存在しなくても、その状態に陥ったとき、この世界群のトポロジーは、白銀武に付いて完全に“閉じる”。」

「・・・」

「完全に閉じた世界、前に進まない世界は、その存在意義[●●●●]すらあるのか?」

「!! トポロジーの破綻!?」

「・・・もう一つ、その無限ループが始まったとき、武の精神が持つと思うか?」

「!!!」


「・・・アイツは今回、メインとなる1周目と2周目の記憶を主観記憶、他を傍系記憶として区別している。傍系記憶は、謂わば本や映画で見た他人の人生、みたいな扱い。
けれどそれは、アイツの無意識による心理防衛措置だろう。全部のループを“自分”のことだと認めてしまったら、きっとアイツの心は保たない。
この世界にとっては再構成で、繰り返したループは無いことになっているが、アイツの記憶には全て在って、それは全て本物だ。
取り敢えず今回は、“まだ”喪っていない、やり直せるんだ、と意識誘導したが・・・今回失敗してループした先では今回の記憶も全て、今度は自分の事、として残る。
それを繰り返せば、傍系記憶もやがて自分の事だ、と認識される。

それじゃなくても一度喪った記憶が在るだけに、その喪失感を覚えているだけに、再び喪うことに対して過剰に臆病になっている。

そこで繰り返される喪失と絶望。そこに・・・出口は、ない。

・・・・・・・・・・少なくとも、俺はやだね。」


・・・同意だわ。
あの過保護な白銀が、再び喪うことには、耐えられないだろう。
当然そうなれば、白銀の精神は破綻し、世界をループさせている因果特異体そのものが崩壊、世界はその暗黒に飲み込まれるコトは間違いない。


・・・時間弾性限界、トポロジーの破綻、そして白銀の精神崩壊。
・・・何れもこの世界の崩壊には違いないのだ。

そして、それが現実の有り得る未来。



「・・・・・・つまり、どっちにしろアンタが存在する今回がラストチャンス、ってことね。

・・・問題の白銀のループ条件は・・・」

「・・・まあ、それがアイツの後悔と未練、懺悔だから。

アイツの未練の元、仲間の「“全員生存”、だろうな(ね)」





・・・否定できない。
言われればそうだ。

白銀も、鑑と同じにBETAにも捕縛された個体。
そして、鑑と共に最後まで残された固体[●●●●●●●●●●]

喪った存在を隣の世界群から引っ張ってくる鑑も凄いが、それに応え続けた白銀も只者ではないと言われれば、そうなのだ。





ため息付いて再び珈琲に口を付ける。
こんな重い話をしていても、瞬間珈琲に意識を引き摺られるほど、芳醇。

こんな話の共では、最高の珈琲が勿体ない、・・・いや、寧ろ救われたのか。

ほっと息を付ける自分が居る。








「・・・・・・・・いきなり難易度上げてくれるわね。」

「問題はアイツの意識で言う“仲間”の範囲。
当面、207Bと鑑。
なんだったら、ハーレムに誘導してやる。
あとはまりもセンセと夕呼センセ、社。此処までは確定。

後は喪ったA-01ヴァリキリーズが微妙。特に問題は前回武と面識が無くて、今回は“まだ”生存しているメンバー、だな。
守りたい対象をあえてメンバーから外すのもありだが・・・戦力の低下に繋がるし、それで武が納得するのかは不明。」

「・・・つまり、大枠の歴史を変えずに、達成条件をクリアする必要があるってこと?」

「・・・大枠はすでに変わってきているからさほど問題ないだろう。
それでも無理ゲーぽくて激しく厭だけど・・・。

思うに、兎に角甲1号と21号をA-01と記される死者を0でクリアできればOKだろうな。

戦闘自体に死者0等有り得ない、って言うことは理解し納得してるしな。
先々検証は必要だが。」


そして一息つくと真っ直ぐ見つめてくる。白銀程華は無いが、端正と言える相貌。
真剣で理知的な眼差し。底知れない深淵を湛えた瞳。

・・・結構、好みなのよね、と思う。

悔しいから言わないけど。



「・・・この世界に、この世界の人間として、武の存在は迷惑か?」

「・・・そうね。
その仮説が正しければ、知らぬ間に閉じているループ。個人の死に世界が引き摺られて、挙げ句の果てに世界が消えるかもしれない存在・・・。
迷惑っちゃ迷惑だけ、どうせあと10年と言われる人類だから、個人的には気にしないわ。

寧ろ、白銀が因果特異体で因果に直接干渉出来るなら、一発逆転も可能って事よね?
ラストチャンスみたいだけど、本来人生なんか常に一発勝負だし、もし白銀の願うような形であ号を倒せれば、閉塞した今の人類に、初めて本当に未来が開けるわ。」

「・・・」

「・・・けど、因果特異体、とはね。
アンタ、同じ世界出身の白銀にすら内緒にしてアタシには言う訳ね。」

「それで世界が滅んじゃ、本末転倒。
そして、武本人が知ってしまうと、アイツの性格上なにかと弊害が出る。と言って、司令官である夕呼センセと共闘しておかないと、色々な意味で拙そうだからな。」

「・・・アンタ・・・随分大人ね。ループした記憶のあるアイツより随分判っているじゃないの。
・・・比べてアイツは何度もループしてるはずなのに未だ青臭いったら。」

「・・・こっちはループはしてないがいろいろと、ね。」


やはりコイツとも共犯者なわけだ。
BETAを蹂躙する技術を有していたとしても、白銀と言う縛りを開放しない限り、この世界に未来はない。
それを為すのは、ここ横浜でしか出来ない。


けれど、これで二十歳ね・・・。

“元”の世界のアタシがコイツを認めたのも理解できる。
青臭い白銀では、到底届かないほど、狡い“大人”だ。







「・・・で、白銀、或いは世界が選んだお助けキャラは何してくれるわけ?」










「センセ、それ判って言ってる?」

「なぁに?」

「・・・・ここに来てから俺がしたことは、情報の収集と分析、それに基づくプログラムと戦術構築だけ。
・・・・本来十全な00ユニット[●●●●●]なら楽にできる[●●●●●]レベルだよな。」



「・・・・・そうよ・・・・。

アタシが真に00ユニットに求めたのは、それ[●●]だもの。
世界規模のハッキングとクラッキングによる情報の収集・統合。
BETAの情報鹵獲による戦術構築。
無意識領域情報取得による技術進化。
前の世界の鑑では、そもそもBETA由来の雑多な問題でその10%も達成出来なかった見たいだけれど。

アタシの目指した理想を体現して呉れちゃったのが、御子神彼方、・・・・アンタ[●●●]よ。

こんだけ成果見ちゃうと、リスクが無いなら、それこそA-01全てを00ユニット化したい位だわ。

00ユニット脅威論が再燃するかも知れないけど。


それを、BETAも居ない世界で単独で、しかも安定してリスク無く実現している、それがアンタの最大のチートね。」


アタシは、甘く鋭く、彼方を睨む。
・・・コイツにそれをアタシに教える気が在るのか無いのかも判らない。

・・・・・・勿論逃がす気など、サラサラ無いわ。




アタシは立ち上がると彼方の横に腰掛ける。
彼の頬に指を添え、動揺もしない涼しげな口元に、軽く自分の唇を押し当てた。

・・・昨日会ったばかりの男だというのに。
まあ、今朝は理論完成にはっちゃけて、既にキスの雨降らせているけど。


「・・・最初あたしを望んだとき、所詮下衆か、と思ったけど・・・確かに悪くないわよ、アンタ。
元の世界のあたしを墜としたんなら、ここでも墜として見せなさい。」

彼方は対価としてアタシを望んだ。
言葉遊びレベルの、一種譲歩であった事にも気付いている。
小狡いコイツは分かっていたのだろう。・・・自分が、アタシの興味の対象であることを。












当初の交渉で、彼方に比べ一方の白銀はアタシにとっても必要と思われる事しか要求しなかった。

アタシの野望、この絶望的な状況からBETAを駆逐し、人類を永続する目的を果たす。
そのBETA戦略的に、白銀はアタシが喉から手が出るほど欲しい情報を暴露し捲って、実際の要求は本当に些末だけ。無欲すぎて逆に裏を考えさせずにおかなかったのも事実。
旨すぎる話には、必ず落とし穴がある、そう思わずには居られなかった。

今確かに、巨大な落とし穴、此処に来て難易度を大幅に上げてくれちゃったのだが・・・。
・・・これは本人の意図ではないので文句を付けても仕方ない。


ループによる未来情報は白銀しか持っていない。
その中には、いっそもう00ユニット無駄ぢゃね?  と思うような情報も存在する。
BETAの指示構造や、ODL通信など。
他にも説明し切れていないが、多数在るのだろう。それが判って居る今となっては、当初考えていた使用法だけでは、00ユニットの情報流出のリスクに対し、旨味が少ないのは確実。

それもこれも全て白銀情報。

これだけの戦略的に重要な情報をぽんと出しておいて、今更第5計画の罠も何も無いとは思うが、清廉すぎる相手とは、交渉しづらいのも確か。そこには付け入る隙もないから。


それ故に、彼方のあけすけな、平然と女を要求する俗物根性が、逆にアタシにとっては当初信用が出来た。
差し出された譲歩、というのが、アタシの深読みしすぎだったとしても。
対価に、他でもない自分を選んだ、と言うのが自尊心を満たした、と言うのも在るかも知れないわね。




そして、白銀の求める理想。それを叶えるためにのみ白銀武は此処に在る。
しかし醒めた目で見れば、それは余りにも青臭い理想。
理想を持つのは大切だが、固執されたら厄介でしかない。

対して彼方は極めてリアリストだった。
現実が俯瞰できている。白銀の足りない穴、アタシの足りない穴を即座に見抜き、予測し、そして対処する能力もある。BETAを凌駕できる技術も既に提示された。何れ戦略レベルまで上げてくる。
更には過剰な技術提供がリスクを高くすることも理解している。

それでいて素直な自身の欲望も隠さない。
それは、生きることに達観も飽きもしていないと言うこと。欲のない聖人なんかの相手はまっぴらだ。


実際にコイツの理論に対する示唆は的確で、渡された数式は見事にアタシの言いたいことを表してくれていた。
大本の因果律量子論は階層化による僅かな修正が入るだけで、大筋は変わらない。
しかし、素子化という段階では、彼方の示唆した階層化と確率密度が大きく寄与する。
その整理も粗方付いた。
すでに理論式は完成し、あと少し展開すれば、設計図に落とせるところまで来た。
浮かれてちょっと年下に靡いても仕方ないじゃない?




オルタネイティヴ4の完遂に、それこそ命を賭けているアタシにとってその推進の為なら、自分の身体など差し出すことは些末だった。
それで数式の完成が出来ると言うのなら、どんな嫌いな相手[キモデブ]にだって股を開くことも厭わない。
そう言う意味では、彼方が寧ろ好みの範疇に入っているのは嫌悪感が沸かない、と言う意味でもラッキーだった。


なぜって。
00ユニットという物の実現は、戦略的にはBETAに対するコミュニケーションの手段であるが、それだけでは無い。
アタシにとっては因果律量子論という異端の理論を実証する存在[●●●●●●]、そのものでもあるから。
BETA情報の先取りが出来たとて、必要性の有無抜きに完成することが、アタシのエゴ。







そして今彼方に指摘されたように、00ユニットにはもう一つの意味があった。
その可能性も、白銀の話から確証を得ていた。・・・・つまり無意識領域に至る[●●●●●●●●]こと。

まあ、それさえも察知していたのか、足下を見るように対価に女を指定した時点で当初彼方を俗物、とも判断したわけだが。






















そしてアタシからのキスに、どんな反応をするかと見ていたら、流石にちょっと吃驚した顔をした後、優しげに微笑んだ。

・・・・・・やるわね。

身体の要求も、実は少しはポーズかとも思っていたが、今度は彼方からキスを落としてきた。


少しだけ開いた唇から、浅く舌を絡めたが、深追いすることなく直ぐ離れる。
一応、求められているらしい・・・。
・・・悔しいから絶対言わないが、久々の感覚に腰が甘く痺れた。



「・・・光栄だな。じゃ、ま、色々遣るさ。」

彼方は薄く微笑むと、更に深いキスを落とされた。







世界ならぬ“白銀”は随分と都合の良い人間を引き込んだことだ。

白銀に感謝しなきゃいけないかしら・・・?


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