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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/02/08 11:03
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Side まりも


ピアティフ中尉の至急、という呼び出しに、座学していた訓練兵を自習させ、シミュレータルームに着いた。

「御子神、行けるの?」

ドアを開くと、夕呼がインカムで指示している。
その表情が、何処か明るい。
また徹夜したのか、目の下にうっすらと隈があるが、ここ数ヶ月、見たことのないほど活き活きとしている。

『ああ。』

シミュレーター内の音声が管制室のスピーカーにそのままオープンになっている。
そこから知らない若い男の声がした。

『さっき発生した小さなバグは、全部取り終わった。』

「! 動作中にプログラム変更したの?」

「シミュレータだからな。一機しか動かしてないから制御は余裕あるしバックグラウンドに3本走らせて、都度修正掛けた。」

「・・・ったく、本当デタラメね。それも終わったんなら、アンタも逝きなさい。」

何となく字面が違っている様な気がする。
悪魔のような蠱惑的な笑みを口元に携えてた夕呼だもの。
背筋を厭な予感が走る。こんなノリノリの夕呼を見るのは、本当に久しぶりだ。
それだけに、これから被る被害が怖い。

オペレーションにはピアティフ中尉、社助手も傍らで見ている。
そして教官も?と小声で疑問を呈した嘗ての教え子、伊隅大尉が居る。


「白銀・御子神、次の状況よ。アンタ達の“力”見せてみなさい。」

インカムでそう言う夕呼の顔に、悪い予感しかしない。
何か、飛んでもないことが起きる、そうとしか思えない。

『Yes,Ma'am。状況は?』

「勿論白銀お得意のハイヴ戦よ。
ヴォールク・データ、難易度はSランクね。初期装備以外の補充は無し、エレメント突入、地上陽動率10%よ」

隣で、伊隅大尉が息を呑むのが判った。私も同じ様な反応だろう。
・・・・一言言うわ夕呼、それ無謀。

『―――了解。けど、ドSっすねー、俺等フィードバックデータすらまだ無いんですよ?』

別の、やはり若い男の声が何でもないように言う。ドSってなに?
と言うか、強化装備のフィードバックデータは戦術機のGを緩衝、衛士を保護する機能。シミュレーターとは言えかなりのGを発生する機構があるから、データ無しでは強烈なGが掛かる。はっきり言って、通常の機動さえままならない。
それをSランクのハイヴ攻略、衛士としての立場で言えば、狂っているとしか思えない。
それほどまでに、ヴォールクは厳しいのだ。

人類史上初めて当時フェイズIVのH5:ミンスク・ハイヴに挑んだソビエト陸軍第43戦術機甲師団ヴォールク連隊の陣容は、突入部隊27個小隊、戦闘車両240両、機械化歩兵500名、歩兵1800名、工兵2300名に登る。この内、ハイヴから生還したのは30分毎に観測データを運び出した7組14名の衛士のみ。その規模の連隊が僅か3時間半で“絶滅”したのだ。
隊はその名をデータに残すのみ、なのだ。

隣で伊隅大尉が引き攣った笑みを貼り付けている。
彼女だってどれだけ無謀なコトなのか理解しているだろう。
ハイヴ攻略は、挟路であるため、数を揃えればいいと言う物でもないが、少なくとも成果を上げるには中隊以上の規模は必要である。
しかも難易度Sランク、トップガンを揃えた中隊でも、今のレコードは中層到達の筈。
エレメント単位では、ほんの数分で終わってもおかしくない、というか終わる、そんな状況なのだ。

夕呼は一体何を期待して、こんなシミュレーションを見せたいのか?
小さなため息を付く。


『・・・武のFBDは、さっきのシミュでBASE DATA構築しておいた。逐次適応修正するから動けば動くだけ楽になる。多少の無理はいける。』

『おー、流石彼方、Thanks!    』

「・・・さっきの一回でデータ作成?  逐次適応?  ・・・言うのもバカらしく成るくらい半端無いわね、アンタは・・・。で、アンタ自身は大丈夫なの? 戦術機は初めてじゃなかった?」

戦術機は[●●●●]、な。同じ様な機体の経験はバリエーション含めかなりある。
それに、機械で操作するモノはどれもさして変わらない。操作量と挙動量の応答モデルを構築すれば良いだけだから。』


・・・流石に呆れを通り越して、怒りすら覚える。
初めてでヴォールクSなど狂気の沙汰。と言うか、舐めているとしか思えない。
こんな茶番を見るために、大事な教え子を置いて来た訳じゃない。

「副司令、一つお聞きしても宜しいでしょうか?」

「相変わらず、硬っいわねェ。今は身内しか居ないからそんな呼び方は無しよ、ってか禁止。伊隅も良いわよね?」

苦笑する伊隅大尉。

「・・・・・」

毒気を抜かれて、やっぱり夕呼だし、と思いつつ、訊きたいことを訊く。

「・・・・どうしていきなりこんなシミュレータを見せるの?」

隣で伊隅大尉も同じ様な困惑顔。

「あぁ・・そうね、これからあんた達に見て貰うのは、戦術機の新概念に基づく新しいOSよ。今、不知火に乗っているのは、その提案者と制作者。
かなりの戦力向上が見込めると踏んだから、近々あんたたちの教導も行ってもらう予定。」

「新OS・・・ですか?」

「そうよ。・・・そうね、さしずめ人類の希望の階。
まりもには、207Bの戦術機演習にもこれを使って貰う予定だから、先行してA-01と一緒に慣熟して貰うわ。」

「「・・・了解」」

・・・今ひとつ納得いかないモノを含みながら、伊隅大尉の返事とかさなった。




「さて、白銀・御子神、そろそろ逝ってきなさい」

『『Yes,Ma'am』・・・って字違うし・・・』

何で当てた字が解るのだろう、と思いつつ、夕呼の合図と共にモニタールームのモニターには、2騎の戦術機情報が左右に映し出される。


「では、CASE-01、開始します。

状況:ヴォールクデータ、フェイズIVハイヴ侵攻戦。
戦況:エレメント突入、CP通信不可、データリンク機能エレメント間のみ有効。
達成条件:反応炉破壊 可能な限り生還。

―――3、・2、・1、・状況開始してください。」

ピアティフ中尉が宣言と同時にシミュレーションをスタートさせた。


画面には、主観カメラと、その後方視点。
画面は軌道降下終端、2騎はハイヴへと続くスタブ入口に向かい突入する。

『ルートは?』

『任せる』

『了解。適当に後ろから指示する。武は後ろ気にせず自分のペースで突っ込んでいい。』

『解った』

交わされた短い会話。
片方は初めてだと言うのに、言葉には微塵のゆらぎもない。機体の操作も極めて安定している。
それ以外の機体経験はある、と言った。それなり、と言うことか。

2騎はそのまま、殆ど最大降下速度で、BETAひしめくスタブに飛び込んだ。
仄蒼い光に包まれた、一種幻想的なハイヴの壁が映し出され、同時にそこここに張り付いていた無数のBETAが弾かれたように、2騎の不知火へと動き出す。

『行くぜ!』

『ああ。』

明確な意志を携えた宣言に、抑揚無く返す声は何処までも落ち着いていた。






そして画面には、何の躊躇いも感じさせず、淡々とBETAの群に切り込んでいく不知火。
ハイヴという通常は厄介でしかない閉鎖空間を巧みに利用し、壁、時には天井さえ駆け抜ける3次元機動。空を抑えられた地表に於ける平面機動とは全く異なるその操作。
異常な速度でハイヴ内部に侵攻する機体。

口元の笑みを深くする親友、何処か哀しげなその余りにも年若い助手。そして明らかに何かを期待するようなオペレータ。
そして、隣で驚愕する嘗ての教え子。

だが私自身周囲の人間の様子など、既に認識の外にあった。




・・・・・有り得ない・・!!

現在のハイヴ攻略戦術は、ルート選択と殲滅による。つまり、反応炉までの最短距離にでてくるBETAを全て撃破し侵攻する。それが基本だった。

しかし、このエレメントは違う。
BETAの持つ物量を、可能な限り後方に置き去りにする。一切足を、留めない。留め無いどころか、下手をすると足を地面に付けない。体操の床運動の様な機動、果ては、壁や、天井すら“駆け抜ける”。攻撃すら最小限、進路上邪魔な個体や、障害となるBETAしか排除しない。
跳び、廻り、捻り、かわす。
時にはムーンサルトのような、それらが複合した動作すら存在する。それとて、密集したBETAの触手を交わす、最小限の動作だったりする。
それでありながら、天地反転挙動中にも、天井から降ってくる障害BETAを正確に撃ち抜く。時に、地上の突撃級すら足場に、進む。


ただ、奥へ。

それは驚異的なスピードだった。



やがて私は気がつく。これは、“有効”な手段なのだと。
いままでのハイヴ攻略概念とは全く思想を異にするが、極めて有効なのだ、と。

だとすれば教官である自分がすることは、何時までも驚いてみていることではない。
その機動概念を、そこに必要な技術を見極める事だった。
どんな操作をすれば、この動きになるのか。
何を判断すれば、その選択をするのか。

自分の記憶に当てはめて分析していく。


そして、違和感。

「ねぇ、夕呼。あの不知火、おかしくない?」

「なにが?」

「動きが・・・、そう、“硬化時間”が、一切無いのよ」

「・・・そうよ。その為の新OS【XM3】だもの。」

あっさり返された返事に驚愕する。

「・・・コマンドの入力時に、次の動作を連続して打ち込める“先行入力”、そして状況が変化したときや、機体の自動硬直すら割り込み処理で中止させる“キャンセル”。
この2つの新概念を実現したこのOSでは、各操作の間の繋ぎや、“硬化”時間そのものを殆ど0に近づけているの。」

「そんな! オートバランサーや、緩衝の為の硬化時間が無くなったらどうなるのよ?」

「・・・例えば、人間だってバランスを崩したとき、その場に踏ん張ることも出来る。でも敢えてそのまま前転し、柔道の受け身を取ることも出来るわ。いっそバランスを崩した方向に斜め跳躍して離脱するという違う動作に繋げる事も出来る。
緩衝だって、ダンパーのストロークを使い切ることも方法の一つだけど、関節を円を描くように回し、力を分散することも可能だわ。今のα-1の様にね。」

「!!」

「今までは、それを全て戦術機任せにして硬直した動作しか出来なかった。
でも先行入力と、キャンセルの概念は、入力待ち時間を無くし、その取り得る選択肢を増やしたの。その状況に於いて、最適な行動が取れるようにね。」

「「なっ!?」」

・・・・何よそれ・・それが本当なら戦術機の世界が変わる!!

「勿論シチュエーションは様々だし、取り得る動作の選択肢が増えるから、その入力も大量になる。
でもね、当然取り得る最適な行動パターンは、動かしている内に幾つかに絞られてくるものよ。
そうして絞られた一連の行動パターンを一つの動作として登録する機能が、“コンボ”よ。」

「コンボ?」

「例えば、回避・噴射跳躍・反転・照準・銃撃、この動作を対象選択と回避・噴射跳躍まで入力すると、あとは勝手にそれ以降がセットされるとしたら?」

「「!!」・・・、でも相手が常に同じ動きとは限らないわ?」

「その時の選択肢は2つ。
1つはモジュレーション、先行入力されたコマンドを“繰り上げ”て早めたり、逆に“間”を持たせて発動を遅らせる。
もう一つはキャンセル、全く新たな入力をして、決められた一連の動作自体をキャンセルするか、ね。」

話を聞きながら、背中がゾクゾクと総毛立ってくる。
自分の操作に当てはめてみれば、その計り知れない効果が、恩恵が、即座に理解できるのだ。

今まで、何処かぎくしゃくとしたロボット然とした戦術機の動きが、いまハイヴ深く侵攻する滑らかな動きに変わる。

「・・・基本的にこのOSは、適応進化するOSなの。ハイヴ戦や、迎撃戦において、使うパターンは頻度が異なるはず。
でも状況により、コンボの優先順位を変えれば、その状況にあったコンボが設定できる。更にはコンボ自体や、その最良なタイミングは部隊間や軍内部でデータリンクによってより効率の高い物にシェイプすることも出来る。勿論個人による動作蓄積により、個々の好みを反映した上で、ね」

「!! それって、じゃあ、訓練兵がいきなり彼の機動をすることも出来るの?」

「理論的には、ね。勿論Gに対する身体的限界とか、あとは使いどころの選択とか、制限は多いはずなのはまりもならわかるわよね。」

そんなことは、解る。
寧ろ自分でさえ、この異次元と呼べるような機動を直ぐ行えと言われても、今は迷うだろう。

しかし。
これは、確かに希望の階。
このOSが実装できれば、衛士の損耗率が格段に下がる事は明らかだ。
・・・このOSが完成したら私の教え子達は、いえ今BETAと対峙している衛士は、死ななくて済むかもしれない。

その想いに視界が滲んだ。
霞む視界を拭い、更にモニターを見据える。
“希望”を実現する、その機動を更に理解するように・・・。


「・・・しかし、副司令、あの挙動は余りにも飛びすぎではありませんか?
エレメントの動きはまだ理解できますが、光線種のいる地上では不可能では?」

伊隅大尉がその先鋒が見せる挙動の異常性を指摘する。

「・・ああ、後で見せるけど、白銀、α-1の方ね、このCASE-01の前に単騎でCASE-29遣ってるわ。
アイツはあの空中機動で師団規模のBETAを向こうに回し、重光線級8、光線級56、要塞級行動規制27、要撃・突撃級に於いては無数、小型種を除き計1000体超の撃破数をカウントして見せた。
その上で障害物にしか成らない僚機NPCを36騎生存させたまま、援軍合流、自己被弾0,損耗は弾薬推進剤だけ。・・・最終的に上げたスコアは、340万よ。」

「「??!! 340万!?」」

「・・跳躍飛行で面制圧、光線級の照準照射を緊急回避しつつ光線級の位置をマーク、その光線級を優先的に撃破しながらあげた戦績よ。知っての通りシミュレータの光線級照準は安全を考えて照準照射が短めに成っているから、実際には余裕でかわすわね。」

「!!・・・・」

光線級の存在する空を翔け、光線級を撃破していく。そんな機動と、それを顕現至らしめる新OS.
それが本当なら、対BETA戦術は、革命が起きる。




そんな中でも画面の状況は進む。

『武、次、2時下30』

『了解』

そしてモニタを見ていた誰もが、え、と誰もが思う。
管制室のサブモニタでは、エレメントが今何処に居て何処に向かっているのか、解る。しかし戦術機内ではハイヴの全体構造は把握できない。特にデータのない未攻略ハイヴの場合、そこは完全な3次元迷路なのだ。
そこで通常スタブ侵入後は、基本的にハイヴ中心を目指し、兎に角最下層を選択する。それが最短のルートで在るからだ。
しかし、α-2:御子神と言う衛士の選ぶルートは、侵攻途中から弧を描くようなルートに変わった。
そのまま前進すれば、大きな障害無く反応炉に到達できると言うのに、態とBETAを誘うようなルートをとるのだ。

特に今の指示は、明かな遠回り。勿論、モニタールームでは全体に於ける位置を俯瞰できるので、その間違いが如実に解るのだが、指示としては大きなミスとしか思えない。
ハイヴは初めてと言っていたから、異常とも言える進行速度を有するその前衛の機体に、全く遅れることなく追随するだけでも相当のモノかも知れない。しかし革命的なまでの機動を魅せる前衛に対し、なんとか追随しているだけ、という感は否めない。

その機動は僚機と比して殆ど目立たず、むしろ先鋒の影のように付き従うが、よくよく見れば、時折前衛の着地位置を的確に確保していたりする。それも着地点そのモノではなく、その着地点に落下してくるBETAや、蝕腕を振り回すよな要撃級のみを排除する。
そして実際彼の攻撃の殆どは、後方から迫るBETAへの牽制だ。
常に大型種の前肢を狙い、攪座させるのだが、そのタイミングが遅い。殆どが狭路を抜けた後に行う為、後続のBETAが次々と狭路を抜けてきてしまうのだ。

むしろ狭路前なら有効なのに・・・、と思う。

どう見ても圧倒的な経験不足。
つまりこのハイヴの侵攻に対して、なんの貢献も出来ているように思えず、寧ろ回り道の指示は、侵攻を遅延し無為に攻略難易度を上げているとしか思えない。
それが現時点α-2の評価であり、それは隣の伊隅大尉も、そして夕呼も同じ感想らしかった。

華麗なまでの前衛に対し、余りにも稚拙、それが見ている者の総意だった。


唯一不思議なのは、見る限り相当豊富な経験を有して居るであろう前衛が、この不可解な指示に一切疑問を呈さず、従っていること。



「あ、やっぱり・・・」

ルート取りの失敗から、BETAに前後を挟まれる形になる。
前衛は更に回り込む形になり、後衛は未だに徒に、意味のない大型種の足止めだけ行う。
塞がれたBETAの壁に、主縦坑の周辺をほぼ1周する形で、漸くBETAを一時引き離した。



『さて武、機体交換するぞ』

一時的な安全地帯に着くと漸く機動を止めた2騎、そんな台詞が飛び出した。

『え?』

『おまえ推進剤使いすぎ。このあと地上まで保たない。機体は同じだし、今までの機動蓄積データは差し替えるから機動やフィードバックデータに違和感はないよ。・・ああ、背中の担架は交換してくれ。』

ハッとして、モニタールームの全員が機体状況を確認する。

前衛α-1の推進剤は残り2割。実際にはそれだって驚愕だ。フェイズIVとはいえ、補給なしでハイヴ最深部まで至ったのである。
しかし一方のα-2に至っては到底信じられないことに、なんと7割を残している。
基本追従する位置だったとはいえ、常識では考えられない驚異の速度で進行したのだ。
それを7割残していると言うことは、追従する動きの殆どを、跳躍ユニットを使用せずに来たと言うことである。
太刀もα-1の損耗度が7割に比べ、α-2は1割にも達していない。他方、砲撃支援していた36mmや120mmは残弾が4割のα-2に比べ、α-1は7割が残っていた。

・・・つまりは、この状況を想定してα-2は機体の保持に徹していたと言うのか?
初めてというハイヴ戦で?


背が粟立つ。
何か、全く未知なるモノの片鱗を見たような気がした。



モニタの中で二人はシミュレータを乗り換える。

『・・・って、こんなに残ってんの?!』

『こっちは殆ど推進跳躍してないからな。遠慮無く使え。』

『!・・・Thanks!・・』

『ところで、このシミュレータ、ヴォールク隊の観測データそのまま使って居るんだよな?』

『ああ、そう聞いてる』

『なら、・・・そこに偽装坑が在る。中にBETAはいない。シミュレーションのBETA配置状況設定が既知の坑だけなんで、実際とは相当異なるが、な。
武の分のS-11を渡してくれ。
偽装抗抜ければすぐ主縦坑だから、一気に降下する。目標には、そっちの機体に示したポイント2カ所にこのS-11設置する。その間の援護を、頼む。』

『・・・了解』

そしてα-2の放った120mmは、何も無かった壁で炸裂し、ボロボロと崩れた先に、偽装坑が出現した。





「!!!」

「こ、これは!?」

驚愕するモニタールーム。
確かに言われたように、ヴォールクデータは観測された地下探査データを直接使っている謂わば3次元データだ。ハイヴ内からの超音波エコーの集大成であり、地質の情報も含まれてはいる。
勿論、ヴォールク隊が遭遇した偽装縦坑・横坑のデータも入っている。

しかし、遭遇していない偽装坑については、確かに未チェックだ。

「!! 副司令、こんな設定があるのですか?!」

「・・・アタシも初めて知ったわ・・・。流石、“天才”技術士官ね・・・。ヴォールク情報を精査して見つけたんでしょ。」

「“天才”技術士官、ですか?」

「そ。彼はこの新OS・XM3を実質1日で組み上げたわ。」

「!!」


モニタの中では、易々と偽装坑を抜け、再度土壁を壊した先には、最下層から続く主縦坑。
BETAひしめく壁を、一気に降下する。
メインホールから、一間抜けたその空間に、蒼くそびえ立つ反応炉があった。

「反応炉、到達!!」

エレメントで反応炉到達!!
それだけでも快挙。
そしてこの異端の2騎は、未だに余力を残している。

しかし、そこはBETAの海。
地面や壁が見えないほど隙間無く要撃級や突撃級がひしめき、小型種がその足下を埋め尽くしている。要塞級まで何体か見える。

その中に、2騎は一瞬の逡巡もなく、飛び込んだ。

反応炉に取り憑くα-2。その作業は、流れるようで淀みない。
このヴォールク・シミュレータですらBETA無しの異常な状況設定以外、誰も遣ったことのない作業にも拘わらず、この超高密度のBETA存在下で、淡々とすすめる。。

そして・・・。

α-1は、光線種が存在しないハイヴメインホールにおいて、反応炉の前面にホバリングし、両手に抱えた突撃砲を乱射する。左右照準の余りのデタラメさに、最初はただの乱射か、と思えるほどだった。しかしその着弾点を追って、私は震撼した。

デタラメに撃っているように見える機銃のキルレートが、9割。
これは突入時からの総計で、時間で切り出した先刻からのテンポラリキルレートは、99.8%。
つまり2000発のマガジンで4発しか外していないのだ。
それも、左右別の方向に撃っているにも拘わらず、120mmは、要撃級と突撃級の前肢を、36mmは小型種の頭部を、ほぼ1発で破壊していく。
前肢を破壊された突撃級は、その場で無為な旋回を強いられ、足下の小型種を挽きつぶす。
滴のように落ちてくるBETAも、あっさりとかわし、S-11を設置している僚機の周囲に降ってくるBETAは、空中で撃ち抜く。

・・・何という近接射撃技量!!

けれど当人もそう思ったらしい。

『・・彼方、コレ、なんかした?』

『これとは?』

『突撃砲。バーストモードでのキルレートがあり得ない数字出してるんですけど・・・』

『ああ、夕呼センセ謹製のCPUにキャパあったから、2秒以上引き金引きっぱなしすると、自動照準と予測射撃で射撃制御するアビオニクス組んだ。』

『・・・なるほど』

『尤も、ストッピングパワーが激しく不満。
戦術機サイズで36mmって、対人22口径の更に半分相当だからな。まあ重量比を考慮しても22口径相当。戦術機サイズのBETAには所詮豆鉄砲だ。
まぁ、これも何れ何とかするさ・・・。』

『・・・ああ、頼む!』

・・・もう絶句するしか無かった。

『設置完了、離脱OKだ。避退ルート転送する。飛び込んだらそのまま突っ切れ。
爆破コントロールはそっちだから、カウント10で爆破』

『了解。』

メインホールに躍り出て、跳躍に移るα-1。
続いたα-2は、最後に背中に担いでいた担架をメインホールに投げ捨てると、α-1に追従した。





2騎は一気に推進跳躍。主縦坑を抜ける。
主縦坑を一気に中層まで翔け上がると、ひしめくBETAさえ足場に、垂直跳躍、弾幕で空けた側坑に飛び込む。
主縦坑上部には、光線種もちらほら。これ以上の飛翔は、下からの光線級の照準にされかねない。
α-2に指示されている避退ルートは、主縦坑周囲のスタブを螺旋状に駆け上がる。


『・・・カウント、3、2,1,爆破!!』

スタブを駆け上がる画面をよそに、反応炉を映したモニタが白く輝く。

「!! 反応炉機能完全停止!! 崩壊します!! 周辺BETAは多数殲滅、15000超!!」

「!!!」


爆風がメインホールから主縦坑を駆け上がる。その下層の壁に張り付いていたBETAが爆風に舐められると、ボロボロと落ちていく、
なるべく殲滅を避けていたとはいえ、それでなくとも突出していたα-1の撃墜数が跳ね上がる。
キルレートの個人カウントは、装備の所有権に依るからS-11の設置はα-2でも起爆はα-1なのだ。
総数は既に17000に達している。
対するα-2は、僅かに140。

だが。
たった2発のS-11で、的確に反応炉を破壊した。通常破壊には5,6発必要と考えられていたのだ。
モニタを操作して確認していた夕呼が呻る。

「・・・アイツ、反応炉の構造も調べ上げたんだわ。」

「・・・どういうこと?」

「実は、ここのシミュレータの反応炉モデルは横浜のデータを使っているの。ヴォールク隊とはいえ、反応炉には到達できていない。メインホール近辺は外周から把握した精度の荒い物だけよ。なので横浜のデータで補完してある。
だから、一応正確ではあるんだけど、御子神がS-11を設置したポイントは、そうね人間に例えれば、頸動脈。
反応炉そのものの活動を維持するエネルギの流れで、もっとも外皮に近い部分よ。」

「!!」

そして、その瞬間、BETAの動きが変化した。2騎の不知火に向かっていた全てのBETAの動きが、一方向に向いた。それは、最も近い隣のハイヴの方向。

「!! BETA撤退を始めます! α隊、上層到達、地表まで350!」

すでに最優先目標を撤退に切り替えたBETA。
そのBETAの波に乗るように、残った弾で殲滅しつつ駆け上がるα-1と、追随するα-2。



「・・・アイツ、なにやってんの?」

夕呼が怪訝そうに訊いた。

「え?・・・あ・・・。」

装備をチェックしたピアティフ中尉が確認する。

「・・α-2は、拡張装備に土木工務用破砕装備を携行しています! それをスタブ壁面に打ち込んで居るようです。」

「土木工務用破砕装備?」

「ハイヴ戦での工作を想定して考案された装備です。
ハイヴ突入したことが無いので、実際には殆ど使われず、シミュレーションでもデータとして残っているだけですが・・・」

「・・・!!    アイツ! 
ピアティフ、BETAの撤退状況チェックして! 特に2騎の侵入方向。たしか、いまのBETA撤退方向を巡るように侵入したわよね?!」

「はい! ・・・・・あ」

絶句したピアティフ中尉に、画面を見る。


そこには・・・・。

折り重なり、空間も埋めるようにひしめくBETAの塊が、其処此処に幾つも発生していた。
そう、ボトルネックとなる狭路に於いて、抜ける度に大型種の行動規制をしていたα-2。
行動規制をしていた大型種が、撤退と共に狭路に向かったせいで、ボトルネックの口が、更に狭くなったのだ。
そこに、螺旋を描くような彼らの侵入で、結果的に中心部に集められたBETAが、撤退を始め殺到した。

結果・・・。
お互いの邪魔はしないが、決して協力はしないBETA。相互のコミュニケーションは希薄で、光線種のフレンドリファイアこそないが、隣が傷ついても関しない。故にこのような状況に於いては、譲る、障害を排除する、連携する、回避する、そんな行動が見られない。
ひしめき合うBETAは、ほんの僅かに抜けていく小型種以外、そこここで、“停滞”していた。


「・・・御子神の無意味に見えた後方射撃は、これを狙って・・!?」

「技術屋だから、機動では白銀に及ばないのは解っていたけど・・・、やってくれるわぁ。
アンタ達、面白いモノが、見られるカモよ?」

「「え?」」

「α隊、第1層に至ります!    え?  ・・・S-11?」

「なに?」

「α-2、モニュメント下部にS-11設置中。」

「?  なぜそんな所に?  今更モニュメントを壊すのか?」




『武、ちょっと飛びたいんで、外の目玉潰しておいて呉れる?』

『了解、彼方のお蔭で推進剤十分だからな、余裕余裕』

言って地表に飛び出し、翔上がる不知火。

スタブからわき出るようなBETA群。群れは一方向を目指し、その流れに乗ったBETAからは光条がこない。しかし湧き上がった直後や。行進方向が此方を向いている個体からは、幾条もの光が空を薙ぐ。α-1は、その悉くを回避し、光線級のみを排除していく。

「・・・これが、戦術機の機動か・・・?」

改めて伊隅大尉が絶句した。



それを幾度繰り返しただろうか。唐突な通信で状況が進む。

『設置完了。モニュメントを爆破する。低空飛翔でレーザー回避しつつ、SW-18に着地』

『了解』

『・・カウント、5,4,3,2,1,爆破』

抑揚のないカウントの終端と共に、2発のS-11が爆発した。




足下を崩され、やがてスローモーションのように崩れていくモニュメント。その中で、間欠的に地下から爆発音が連続する。


「・・・え?」

そして、信じられないことが起きた。

崩れ落ちたモニュメントは、地表に積まれることなく、更に“落下”する。
それは、ドミノ倒しの様に、更に崩される地層という質量を以て、次々に“階下”を押しつぶす。
当然、そのスタブに“停滞”していたBETA群諸共。

それは、まず工務用破砕弾を設置した主縦坑を螺旋状に崩落させ、その重量と、要所要所を削られた“支持構造”は、崩落する上部質量を支えきれず、良くできたドミノ倒しのギミックを見ているように、連鎖的に崩壊していく。

「・・・ハイヴ主縦坑周辺、中層まで・・・崩落・・、主縦坑、・・・埋没します・・・」

惚けたように、状況だけ報告するピアティフ。
そして膨大な質量がメインホールの空気を圧縮した瞬間、メインホールを再び閃光が埋めた。
上から加圧されながら発生した爆風は、各ボトルネックで停滞していたBETA群を後ろから圧殺するのに余りあった。
暴力的な迄に数字が飛んでいくカウンター。

「・・α-2キルレート・・・・40000越えました・・・」

それは、御子神の狙いを予め察知した夕呼ですら惚けたように口をあけたまま、唖然とさせる結果だった。


後日このデータが、プラチナコード、後に理想のエレメント・理想のハイヴ攻略戦として流布され、世界中の衛士の目標とされるとともに、後年、実際にこの戦術をアレンジしたハイヴ潜行部隊によってミンスクハイヴを堕とすことになる。


モニタールームには、もはや言葉もない。
ただ呆然と驚愕のレコードスコアが記されたモニタを見やるだけだった。


Sideout




Side みちる


突然呼ばれたシミュレータルーム、そのモニター室。
突然見せられた若い男性と想われるエレメント。そのたった2人の衛士が叩き出した空前絶後の結果に、私は暫く自失していた。


・・・・コレハナンダ?


A-01が中隊規模でも、中層440mがレコードのヴォールク・Sランク難度。
その状況に於いて、到達深度1200m。
反応炉到達。破壊成功。
自爆を覚悟のハイヴ攻略による反応炉破壊すらままならない現状に於いて、ハイヴ完全攻略から更に脱出・生還。

そして、考えも及ばなかったハイヴ構造の崩落。

総BETA殲滅数、7万。
設定数が10万だから、その7割を殲滅したことになる。


戦術機損耗、0。

極めつけは、これだけの戦果をもたらした衛士のひとりは、ハイヴ戦初挑戦の、技術将兵だと言うことだった・・・。




なにかとおかしい。

・・・今までと余りにも異なる機動概念。
BETAの行動原理、反応炉の構造、ハイヴの構造、全てを熟知した上で構築されたとてつもない戦術。

そう、初めは前衛の鮮烈な突破力に目を奪われた。新OSのもたらすだろう戦果に、瞠目した。
そこに於いて、後衛は前衛に追従するだけの、そして余りにも拙い初心者にしか見えず、エレメントとして余りにアンバランス、そう思わざるを得なかった。

何故か後衛に任せたルート取り、不的確なBETAの足止め。
私ならもっと旨く出来る、そう思ってさえいた。

反応炉直前で機体の交換を行った辺りからその機動の意味を徐々に理解させられた。
それでも前衛の突破力を持続する為の、極めて消極的戦術、としか思えなかったが・・・。



しかし、誰も気付かなかったヴォールクデータに隠された地殻情報。そのデータから偽装坑を発見し、主縦坑に抜けると、一気に反応炉到達。
挙げ句、たった2発のS-11で反応炉を完全破壊した。





そして、・・・そして!!

反応炉破壊後のBETA撤退を想定したと思われる、これまでのルート、BETA行動規制。
メインホールで最後に投げ捨てた担架にすら、気化爆弾が残されていたのだ。それはS-11爆発後に噴出し、気化ガスをハイヴ内に充満させた。
結果、モニュメントの落下重量さえ利用して、ハイヴの連鎖崩落を引き起こし、気化爆弾の爆発を連鎖させ、最終的に4万ものBETAを殲滅に至らしめた。

快挙?  偉業?
否、殆ど、神の御業にしか思えなかった。







筐体から、若い男が降りてくる。
強化装備から覗く身体は細い乍ら引き締まり、一流の衛士にもひけを取らないのは解る。しかし2人とも、どう見ても年下だ。1人は最近配属した新任少尉と変わらないのではないか?


「・・・完全に突き抜けちゃってるわね、あんたたち・・・。
あっさり世界記録塗り替えた、じゃ済まないわ・・・・・。獲得スコア5700万ってなに?
もう、あんたたちで甲21号、堕としてくれない?」

「夕呼先生が言うと、冗談に聞こえないから怖いですけど・・・、反応炉破壊辺りで死にますよ。現実のハイヴに比べたら、BETA数・出現設定共に甘すぎます。そもそも偽装坑にBETA居ないなんてあり得ないから。」

「これを実現するために、装備の準備をするさ。現状課題は山ほど把握したから。」

「・・・あっそ。それでも反応炉破壊までは出来るんだ。
ま、手持ちの世界最高戦力をそんな賭け事で使い潰す気はないわ。

で、皆に紹介しとくわね。
特務って事で、暫く外での任務に就いて貰っていたけど、今回呼び戻したの。
白銀武少佐と、御子神彼方技術少佐、よ。」

何故かニヤニヤとした副指令の言葉に、白銀少佐が若干引き攣りながら応える。

「え?  あ、白銀武少・・・佐です。宜しくお願いします。」

・・・何故敬語?
しかも私と神宮司教官を交互に見て、目が潤んでる?

「・・御子神彼方技術少佐だ。宜しく。」

こちらはそんなのも何処吹く風で飄々としていた。

「は! 国連太平洋方面第11軍、A-01連隊 第9中隊隊長・伊隅みちる大尉であります。宜しくお願いします。」

「同じく国連太平洋方面第11軍所属、イリーナ・ピアティフ中尉です。」

「はい、あ! あー、すいません伊隅大尉・ピアティフ中尉、ってかお三方にお願いが在るんですが・・・」

「「「は?」」」

「オレ、少佐ってことですが未だ17で年下だし、その、年上の綺麗な女性に敬語使われるのは、かなり気恥ずかしかったりするんですよ。
一応しかるべき場所以外では気をつけますんで、普段は敬語も階級も抜きで普通に話して貰えませんか?」

「はぁ!?  え・・、あ・・、しかし・・・」

「・・・・・・右に同じ・・、だな。俺は敬語も使わないが、夕呼センセの部下だと想って納得してくれ。宜しくな。」

「「あ、は、はぁ・・・」」

神宮司教官・ピアティフ中尉と共に目を白黒させるしかない。

17なら確かに年下だろうが相手は佐官・・・、と言うか、17で、あの技量!?  それも世界最高のエレメント戦力だというのにこの態度!?

・・・・・・まあ、驕り高ぶった人格より遙かにマシ、と割り切るか・・・?

「・・・もしかして、私もで「勿論宜しくお願いします! まりもちゃん!」・・・はぁっ!?  まりもちゃんっ!?」

「あ・・・、いけねっ! すみません、同じ名前でにた雰囲気の知人がいたもので。」

そう言って神宮司教官を見つめる白銀少佐は、心なしかさっきより明確に、もう涙ぐんでいるように見える。
何というか、捨てられた子犬みたいな!?

その懇願と期待に満ちた白銀少佐の視線に明らかに途惑う教官。
その横でニヤニヤしながら経緯を見守る副指令は悪魔のよう・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ、もうそれでも良いです。

国連太平洋方面第11軍、第207衛士訓練部隊教導官、神宮司まりも軍曹、です。宜しく・・・ね、白銀君、御子神君。」

永い永い逡巡の後、神宮司教官が折れた。

「!はいっ!! 宜しくお願いします!!」

短い尻尾を千切れんばかりに振るチビ犬が透けて見えるのは私だけだろうか?

「宜しく、な。」

御子神少佐さえ苦笑している。

「で、さっきも言ったけど、白銀は今回の新OSの発案者で、成長するOSの基礎挙動概念の構築者ね。見て貰ったとおり、恐らく単騎でも世界最高の戦力よ。」

「!!」

そうだ。17だろうが、子犬に見えようが、あの技量は掛け値無しの本物。

「・・・今日からでも、あんたたちに新OS教導をしてもらうわ。彼の教導を受けられることを名誉に思いなさい。」

「「はっ! 宜しくお願いします!」」

普段通りといわれつつも命令にはそう返してしまう。

「御子神は、此方も見てもらったとおり、世界最高の戦術家、新OSのプログラマーでもあるわ。普段は新OSの調整や、新戦術の創出、新装備の開発を担当して貰う。
見たとおり白銀とのエレメントは戦力としても別格だから、重要な作戦には参加して貰うけど。
組織や小隊の変更については追って連絡するわ。」

「「了解です」」




「ところで御子神・・・、一つ質問が有るのだが・・・?」

一瞬躊躇したが階級は省いた。

「どうぞ」

柔らかい応答、これで良かったらしい。

「・・・ハイヴと言うのは、ああも容易く崩せるモノなのだろうか?」

「ああ、崩落のことか・・・。
そうだな、このシミュレーションに使われている地殻情報は比較的正確とは言え、実際は通常出来ないな。」

「・・・通常、とは?」

「このヴォールク・データには反映されていないが、・・・ハイヴ構造壁にはBETA由来の強化が施されている。ここ横浜もそうだが、エネルギーを通す事によって強度を増す地殻構造材だ。」

「?! なによそれっ!?」

「突撃級の衝角なんかも同じなんだが、・・・気付いてなかった?
じゃなければあんな構造力学を無視したモニュメントが核に耐えられる訳がない。
モース硬度15って言うのも固体の分子間力を遙かに逸脱している数字だぜ?

ついでに言えば、構造壁を通るそのエネルギが電波遮蔽もするからハイヴ内は通信がし難いし、BETAがハイヴ内に地下侵攻しないのもその所為だ。
・・・仄蒼く光っているのがそれなんだがな。」

「・・・はぁぁん、・・・そう言うことね・・・。」

「もっとも強化構造壁のエネルギ供給源は反応炉だから、反応炉を先に止めれば、さっきのように強度はヴォールク・データ通りとなり、地殻情報に従ってハイヴ崩落を引き起こす事が出来る。
今回は手持ちの火薬が少なかったからあの範囲だけだったけど、中隊構成なら、もう少し崩せる。
勿論、最小手数で落とすには、適切な位置への爆薬設置が必要だがな。」

「・・・成る程。しかし、そんな事をせずに反応炉を破壊するだけなら、もっと早く出来るのでは?」

侵攻時誘導するように迂回し、各所に弁を設置した手間を除けば、最速で反応炉撃破出来るはずだ。
しかし、御子神少佐はこの問いに微妙な顔をした。

「・・・大分認識が違うんだが、武も同じ意見?」

「・・・いや、ハイヴ攻略がスピード勝負なのは確かだけど、彼方の戦術は理想に近い。・・・いや、本来在るべき姿・・・かもな」

「それは勿論そうだが・・・反応炉破壊が第1優先ではないのか?」

「・・・なら聞こう。
佐渡のハイヴを速度重視で反応炉を破壊したとしよう。当然BETAは置き去りにしたからその時残存BETAは20万。
・・・・・・奴らは何処を目指すんだ?」

「・・・!!!!」

「!!・・横浜・・ここ、か?」

「反応炉破壊だけに絞れば攻略はもっと早く出来るだろう。
XM3に習熟し、武並みの機動をマスターすれば、少数精鋭で到達するのはそう困難でもない。
中隊規模で自爆覚悟ならすぐ墜とせる。
問題は反応炉破壊後の汪溢BETAを如何に殲滅するか、と言うこと。フェイズIVクラスの撤退BETA群とまともに相対したら、XM3の高機動くらいじゃ到底抑えきれない。
一度ハイヴを出て拡散されたら、手の打ちようがない。
集中しているBETAを一網打尽に叩く、通常兵器によって高い効率を上げるための方策が、先刻の戦術なんだけどな。」

「!!!」


この日、最大の価値観の激動だった。


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