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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室
Name: maeve◆4e73cb56 ID:56336505 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/03/30 00:03
‘19,03,27 upload  ※ストックの2/4
‘19,03,28 誤字修正  似非京都弁滅茶苦茶やorg



Side シルヴィオ・オルランディ(欧州連合情報軍本部第六局・特殊任務部隊“ゴーストハウンド”中尉)


国連横浜基地研究棟―――地下19階。
ここに来るのは何度目になるのか。

元々H-22:横浜ハイヴの真上に建てられた基地であるが、研究棟は正にそのメインシャフトに蓋をするように造られている。
明星作戦の攻略時フェイズ2と見積もられたハイヴの規模は、想定外のファイズ4相当―――。
B-19・20は横浜ハイヴに捕らわれた虜囚を収めたシリンダールームを中心に構成されたフロア、だったらしい。
ここで俺は前回、元は少女だったという生きている脳髄に出会ったのだ。
B-19と表記するが、その深度はむしろ反応炉に近い900m、核は愚か実際に地表で炸裂したG弾にビクともしなかったエリア。
通常の建物にすれば地下225階相当―――筑波山の山頂に近い高低差である。
非常階段は存在していても、それを使って登り切るのに3,4時間は掛かるという代物だった。


ノックをすれば、一呼吸おいて返事。
何時ものやり取り、何時もの光景。
先の襲撃でドクターは表向き消息不明だが、A-0大隊の部隊内秘匿通信では普通にアポが取れた。

相変わらず散らかった執務室には香月夕呼[横浜の主]がいる。
だが、今回は遅い時間だというのにドクターとアスタの他に、何故か社特務少尉と鑑少尉が控えていた。
社少尉は前回会っているが、今回は“特務”との名目で殆ど会話していない。
無論横浜の誇る“スパイフィルター”、このトライアルで大忙しというコトだ。

そして鑑少尉に至ってはあのPXで白銀少佐とアーン交換していたのを目にしただけ。
名前すらその時美冴に教えてもらった程度で、直接話したこともない。
何故此処に?、という疑問は在ったがドクターが認めているなら問題ないのだろう。



「突然のアポイント了承頂き感謝する。
そしてこんな時間に申し訳ない・・・が、欧州でも大事があったらしく、緊急の帰任命令が在った。」

「緊急・・・ね、此方にも連絡は来てる・・・仕方ないわね。
まあ、アタシもこの後直ぐニューヨークだし、そっちの護衛は頼んでないから構わないわ。
―――ご苦労様。」


唐突なアポに皮肉でも来るかと思ったが、別口で連絡があったなら予測していたのだろう。
中身は妥当な応えと月並な労い。


「・・・。」

「―――なに?」

「・・・突然の帰任で、世話になった宗像中尉には何も言えていないが・・・宜しく伝えて欲しい。」


実は此処に美冴が居なかったことにちょっと落胆していた。
無論ここはB-19、彼女が携われる機密ランクの関係上、仕方ないことでもある。
寧ろ鑑少尉がここに居ることが不自然なのだ。
今朝方テロが起きる前には、HSSTでミーミルに帰る八雲達を見送ったばかり。
ヤツの搭乗前に貰ったボディブロー一発が恐らくは答え。
その後のテロ発生と、どんな言葉よりもずっと明確だったその後の美冴の行動。
しかしテロ後は、起きた事態の後始末や受けた負傷の加療に慌ただしく追われる中での緊急連絡、再び会えないまま自分まで帰国となってしまった。


「そう・・・。
でも、それは帰ってから自分で言いなさい。」

「―――は?」

「・・・ユーロファイタスのウィルス駆除に行った彼方が、ついでにアンタの部隊の戦術機にXM3正規版を換装したわ。
―――当然現地に置いてきたアンタの機体にも。」

「え・・・?」

「知ってるかどうかは知らないけど、XM3正規版はデータリンクも通常とは別に、専用の超高速[エクステンデッド]ネットワークを有している―――。
そして、これは殆ど知られてないけど、それのAdministratorは彼方だけだから、今のところ個別の秘匿回線は実質フリー、なのよ。」

「な―――。」

「ま―――アンタと・・・宗像への個人的な報酬―――って思ってもらっていいわ。」

「―――。」


―――成程、労いの言葉は随分軽かったが、欧州と日本・・・遠く離れる俺たちにとっては何よりも喜ばしい破格の報酬だ。
そして今や世界的に名高い正規版の先行導入となれば、俺を送り出した部隊に対しても望外の報酬と言えるだろう。
個別回線の私用など軍機上問題ないのかとも思うが、管理が大佐である以上構わないというコトか。
要するに表向き口にはしなくても、個人的報酬を出すほどに感謝されている、と言う訳だ。
―――この意地っ張りめ。


「・・・結局、今回も全部仕組まれてたのだな。」

「酷い言われようね。
不確定要素は幾らでも在ったわ。
そもそも、表裏一体と思っていた恭順派と第5計画派が別々に仕掛けて来るなんて想定外も
いいとこ。
―――その中でも、アンタは最良の選択をしてくれた・・・ってコトよ。」

「・・・美冴を信じると決めただけだ。
撃たれたと思った衝撃が、実は空砲に連動して胸の血糊を破裂させるギミックで、それを仕込んだのがアノ時の美冴自身だったからな。
・・・ドクターがアスタとたった二人で指揮車に乗ってきた時点で気付くべきだった。
全てが“誘導”だ、と。
俺の左義眼も、俺が撃たれたのも、―――それ以前、大佐を研究所に向かわせたのも、全ては嵌められたように見せかける演出―――って訳だ。」


前方とは言え衣服を吹き飛ばして血糊を撒き散らす威力を持ったギミックである。
本当に撃たれたかと思うほどの衝撃があった。
しかも心臓の直上、所謂ハートショット―――膝が落ちたのは演技ではないのだ。
そんな愚痴にも魔女は妖艶に呵うだけ。


「・・・なあ、何故そんなにも自分の命を BET[賭け金に]する?」

「最高の釣り餌だからに決まってるじゃない。
―――無論、考え得る限りの安全策は採っているけど?」


そう言いつつも、その瞳には一介の迷いもない。
愚問、か―――。
この基地の独立性、つまりはBETA殲滅への突破口を護るため、2,000人の要員殲滅をも命じた孤高の指揮官。
俺たちが暴徒を沈静化できなければ、そこに躊躇はなかっただろう。
それは即ち、自らの命すら賭けているからこそできる覚悟、なのだろう。


「さっきも言った通りユーコンでATP系の自爆ABSが出てたから、次は威力を求めてニトロ系って言う行動予測は付いていたわ。
蛋白質そのものに複雑な機能を持たせようとすればするほど、それがレトロウイルスに近くなって行く、ってこともよ。」

「―――だから逆にレトロウィルスに有効な八雲のワクチンを導入した・・・。」


そして実質基地の壊滅を防いだのはその知略。


「―――ま、執事[バトラー]がサイブリッドということも高い可能性が出ていたから、ね。
この横浜に潜入するんだからそれなりにデキる奴が来ると思っていたけど、襲撃者が執事[バトラー]単独で、逆に安全だったわ。」

「は?」

「アナスタシア自身が言ってたけど、実際この子の体術なんておまけ。
この子の本質はBETAにも迫れる強力なリーディングやハッキング能力よ。
執事[バトラー]は偉そうに豪語してたけど、人類が考える防止策[ファイアウォール]なんて薄紙みたいなもの。
その点では流石“似非恭順派”の些事を管理していたNo2は美味しかったわ。
予測された執事[バトラー]が来る確率は60%―――最初は感知できなくて誘いに乗らなかったのかとも思ったけど、まさかの多重人格とはね。
副人格は何も知らなかったけど、主人格は関連情報をたんまり持っていたから、戦っている最中は無防備、リーディングで取り放題ってわけ。」

「!!・・・。」


・・・あの時、それなりに戦えるアスタが加勢する素振りすら見せなかったのは、そう言うことか!


「まったく、うちの子[アナスタシア]を舐めないでほしいわ。
その気になれば何時でもハッキングだってできるんだから。」

「!!、・・・つまり、アスタが傍にいる限り、サイブリッドなら俺も含めて何時でも制圧できる・・・と?」


悪寒を感じ傍らを見やれば、ニヤリと嗤う魔王。
偉そうに講釈たれていた執事[バトラー]が滑稽に思える。
第4計画側には、まだまだ明かしていない伏せ札が在ったというコト、―――成程、確かに今回の襲撃に対する安全策は万全、か。
だからこそ大佐が単独で行動できたのだ。


「そーゆーこと。
でも[ハナ]からそうしちゃうと、語って[●●●]呉れないじゃない?」

「・・・目標を誘き出し、圧倒的に有利な状況を与えて油断させた・・・しかし結果的にはセンサーアイを遣られて、ビデオ記録は出来ていな。」

「用心深いヤツみたいだから、アンタを相手にした時点で真っ先にカメラを潰しに来ることは想定内―――当然別口でライブ配信を行ったわよ?」

「―――は?」

「アンタはその場にいて、その後治療だから見てないのも仕方ないけど。
2機目[●●●]のSR-71がバッチリ撮影して、配信したわ。
そのために態々地上に出てあげたんだし。
無論、機密に係る単語を含んだ会話はピーしたけど、恭順派と指導者[マスター]の関係は全世界に、ね。」

「!!ッ
まさか、この緊急帰任もそのせいかッ!!」


あの物騒な会話が配信[公開]されたら・・・それが故の大混乱か!


「―――だからあの時、態々会話の節々に指導者[マスター]難民解放戦線[RLF]の名前まで出したなッ!
トライアルで敢えて1機目[●●●]を意識させ、更にオレの目を潰すことで油断を誘ったって訳だ!」

「裏の裏を掻くのは最早常道・・・、もう一捻りしないとあのクラスは嵌ってくれない。
特殊戦2機目は完全秘匿要員だからね、アタシですら逢ったこともない。
“幻のミュー[美優]”って二つ名を持つ特殊戦香月中佐[ミツコ]の一番[弟子]・・・らしいわ。
00ユニット等の機密をばらす訳には行かないから、アンタとの格闘シーン以降だったけど、アンタの録画機能を知っていれば、当然迂闊に答えもしないでしょう?
全ての障害を排除して、アタシ達を確実に殺せると踏んだら口も軽くなる。
つまりカメラを潰された上で、アンタに死んだふりをして貰うことは、台詞を引き出す必須要件だったわけ。」

「・・・それでもまさか、恭順派のNo2ともあろう執事[バトラー]が、アレほど口の軽い男だとは思わなかったがな。」

「・・・向こうのABSを完全にブロックしたのよ?
ABS由来の自白剤なんていっくらでも知られてる。
参加者の食事はコッチが支配しているんだから、ちょっと特殊な刺激を与えれば口を軽くする程度の指向性蛋白を盛って、アナスタシアの微かなプロジェクションをトリガーに煽ることなんて、簡単だとは思わない?
知っての通り此処にもβブリッドの研究施設はあるわ。
向こうの知らない自白剤もあるし、寧ろ多重人格だった訳だから副人格はそこまで用心深くない。
普通に食事してたもの。
ABSで好き勝手やっていた組織には丁度よい意趣返しよ。」

「!!―――、それで、ABSキャリアも早期排除せず証拠集めに徹した。
―――では、美冴に催眠暗示キーが効かなかったのも?」

「その点について向こうの仕手を完全にブロック出来たのは、アンタのライバル・八雲鷹徳のお蔭だけどね。
βブリッド関連で画期的な研究を続ける若手医学者、短い時間ではあったけど、ここで、トモコの研究とBETA鹵獲技術を融合して、いろいろやってくれたから。
ニトロ化ABSはレトロウィルスに極めて近かったけど、実際その辺の区別は微妙で通常のABSには効かなかったわ。
けど普通のABSだって単独じゃ何も機能しない。
特定細胞や酵素に取り付いてその機能を阻害したり改変したりする作用を持つわけ。
今回新作のA-ABS[アンチ指向性蛋白]は、その取り付きそのものをブロックする―――抗レトロウィルスのワクチンの発展形よ。
流石に試作だから一般区画の人員分までは確保できなかった・・・諸々危惧して隔離したのにね。
第5計画派まで拡散系[フィトンチッド]でしかも一般区画を狙うことは想定外だったわ。」


一般要員とは言えこの巨大基地の根幹で機能する人材なのだ、2,000人の喪失は唯じゃ済まないだろう。


「その発症した基地職員は・・・どうするつもりだ?」

「・・・前回アンタが抽出してくれたABSキャリアだけど、少なくともここ、横浜基地のキャリアに関しては、全員クリーニングした上で元の職場に復帰している。
今回だって問題なければ同じよ。
幸いニトロ系みたいにタンパク質構造そのものを改変してしまうような凶悪なものじゃないからね。」

「・・・そうか・・・それは良かった・・・。」


言葉を区切る。
真っ直ぐにドクターを見据えた。


「―――では、最後の質問だ。
前回此処のシリンダーに閉じ込められていた唯一の生存者・・・あの脳髄は・・・?」


フッ、とドクターが息を突いた。
想定内の質問だったのだろうか?


「―――残念ながら、今の人類には脳髄だけで生かす技術はない・・・。
それは、サイブリッド体を用いても無理・・・だから“意識”を量子電導脳に移植することで、非炭素系擬似生命体[00ユニット]となる。
―――当然BETAの元を離れた脳髄は医学的に死亡するわ―――」

「・・・・・・。」


形振りなど構わない・・・そういうことだ。
答えは聞くまでもなく判っていたが・・・どうしても聞きたかった。
躊躇なく発症した2,000人の殲滅を命じたのだ。
ましてや、それが有用で必要なことなら、たった一つの脳髄に固執するわけがない・・・。
この魔女は何人でも生贄に捧げるだろう。
例えどんなに親しい間柄であっても―――それがBETA殲滅に繋がるなら、迷うことはない。
凄絶なまでの覚悟。

そう―――頭では理解している・・・。
綺麗ごとを並べるほど俺自身も清廉ではない。
それでも、やり切れない、ドロドロした澱みが渦を巻く。
・・・感情はそうそう艦単に割り切れるモノではない―――。


「―――但し・・・それも計画当初の話ね。」

「・・・は?」


いつの間にかそばに立っていた鑑少尉が更に一歩出る。


「改めてご挨拶します。
国連太平洋方面第11軍A-0大隊A-00概念実証試験中隊所属少尉、鑑純夏です。
そして―――貴方が守ってくれた私の未来、確かに返して貰いました。」

「な?!」

「もっとも私、その時は夢の中で聞いただったけど・・・なんとなく覚えています。
たしか・・・『名も知れぬ悲劇の少女』と話しかけてくれました。
勿論当時は聴覚もありませんが、霞ちゃん・・・社少尉がイメージを伝えてくれていたんです。」

「!!、まさか・・・!?、君があの・・・!?、」

「・・・お友達の全身完全再生を見ているのに、気づかなかったわけ?
脳髄だけシリンダーから取り出したら生かせないけど、今の横浜ならその脳髄から全身を再生することが出来るのよ。」

「・・・・・・ファンタスティコ―――。
BETAは結局君の何をも奪えなかったということ―――か・・・!
正しくコレに勝るリベンジはない!!」

「ま、この分野はアタシの専門じゃないから、遣ったのは今アフリカやら南米やらのβブリッド研究施設を破壊しに行っているアイツだけどね。」

「―――は?」

「フィトンチッド型とか、アスベスト型とか、拡散系は無差別も無差別、物騒すぎるでしょ。
横浜[ココ]じゃ無かったら完全にヤラれてた。
これ以上大規模な無差別テロは御免だから、鹵獲した執事[バトラー]の情報も追加して潰しまわってるわ。」


それは・・・。
俺は今回、件の大佐には会えていない。
テクノ・モンスター[技術チート]との噂は聞いているが実際にどの程度なのか知らない。
初日こそ基地に居たらしいが、挨拶を交わす間もなく外の対応に出ているとのこと。
だが・・・、現地はさぞや受難だろう。
その一方で音に聞く苛烈な“漆黒の殲滅者[ダーク・アニヒレーター]”。
ラプター4機を炭素屑に変えたことで着いた二つ名。
欧州では辣腕で鳴らしたあのハルトウィック大佐をこき下ろしたという噂さえある。
執事[バトラー]よりも余程物騒だと思うのは俺だけか?


「成程、・・・しかし、ドクターも結構口が軽くなった。
その自白剤を自分でも服用しているのか?」

「そんなわけないでしょ。
これすらも、より良い未来を掴むための布石、よ。」

「・・・。」

「これはアタシの因果律量子論に基づく仮説。
小難しいことは端折るけど、要するにこの世界の天秤は、まだBETA優位に傾いている。
それを人類側に傾けるためには、総人類の“強い意志”が重要であり、それを得るには、臭い表現だけど“希望”が必要なの。
だからそれに繋がる表に出せるモノは大々的に出し、隠すものは存在すら知らせない。
今度のトライアルや緊急動議だってその“希望”を灯すことも一つの目的なんだけど、・・・それ以外にも小さなことからやってるわけ。」

「小さなこと?」

「ぶっちゃけ一番手っ取り早いモチベーションは、“恋愛”なのよねェ。」

「!!―――」

「とりわけアタシの周囲は対BETAの最前線―――ここでの“希望”は最重要事項なのよ。
アンタだって宗像を選んだんでしょ?
―――そして宗像も、八雲[過去の男]ではなく、アンタ[未来の男]を選んだ―――。」

「―――ああ、そうだ。」

「なにせ今、優秀な男は貴重だから使えそうな種はウェルカムなのよ。
本当は八雲やアンタにも、A-01からもう2,3人種付けして欲しかったんだけどォ―――。
前島は伊隅がガッチリ“確保”して、行く行く四姉妹丼もイケるみたいだし、基地内でも他に2人付けたから、これがまあ唯一及第ね・・・。」

「な―――?」

ミーミル[彼方配下]で今後も接触が望める八雲はともかく―――アンタは宗像にしか勃たないんじゃ、しょうがないものね。
あ、でも、風間なら3Pでイケるかしら・・・?」


何やら貞操観念的に良からぬ算段をし始める魔女。
クリスチャンで日本国民でもない俺にどうしろと!?
―――本気か・・・?、本気なのか!?
クッ!、流石、“魔窟”とも“万魔殿”とも呼ばれる横浜基地―――。
テロリストだけでなくサキュバスまで出るとは!
絡み着かれ、搾り取られないように気をつけねば・・・。


咳払い一つ、そろそろ時間だ。


「それは別として、・・・近々―――恐らく、遅くとも年内[●●]―――か?」


話を強引に変えた俺に、微かに目を見開いたドクターが直後に浮かべたのは、まるで人とは思えない程、凄艶な微笑。

乾坤一擲―――。

この魔女にしか見えない血塗れの聖女[Bloody Mary]は持てる総てをそこに賭けている。
その戦いこそが、そのまま人類の命運を分ける―――。

やはり―――全ての布石、全ての疑問が、そこに繋がる・・・か。


「・・・また、逢いましょう。」

「・・・ああ―――。」


問に対する答は、ない。
それが答。
けれど今は、これだけでいい。
俺には俺の戦場があるのだから。


Sideout




Side ロア・ヴォーゼル(国連太平洋方面第2軍臨時准将相当官 [CIA Dept.D])

ニミッツ級戦術機母艦 “ジョージ・ワシントン” 司令官室 23:00


ノックの返答もそこそこに、乱暴にドアを開ける。


「デフコン3に移行とは、どう言うことだッ?!」

「・・・行方不明[MIA]のハンター中隊に対する基地側の回答だ。」


執務室に飛び込んだ私の、怒気を湛た問いに返ってきたのは、いともあっさりした艦隊司令の声。
無論、未だにハンター中隊は帰還しない。
ユーコンのブルーフラッグ戦で堕とされたとはいえ、米国最新鋭機F-22A[ラプター]のMIA―――。
経緯を知る身として未帰還も当然だが、表面上は未帰還の米国民を思っての怒り、コイツももっと問題としてしかるべきだ。
・・・実際には遅々として進まない状況へのいらだち。
というのも、横浜基地に発生した暴動は訳も分からず唐突に収束し、整備兵を乗せたバスも襲撃はおろか、何の障害もなく、無事帰還した。

以降、デフコン1を維持しつつ基地側にハンター中隊の消息を尋ねたが、今までずっと調査中とはぐらかされてきた。
それがここにきていきなり空母側がデフコン3への移行。


「―――これが中身だ。」


差し出された文面を見る。


曰く―――

当基地はテロリストによる破壊行為、暴動の煽動により混乱。
現在暴動を鎮圧し、収束に向け更なる調査推進中。
問い合わせのハンター中隊に関しては、当基地の待機命令を無視し一方的な命令権離脱を宣言。
同時にテロリストによる通信網破壊の影響もあり、データリンクからロスト。
依って当基地は、命令権離脱以降、該当中隊の行動に関知しない。
尚、当基地としては該中隊が指定区画以外で発見されることの無きを望む。


最初は意味が解らなかった。

・・・勝手に移動した中隊の消息など関知しない、という意味をどうにか飲み込んだ。
だが、それどころか、混乱に乗じてスパイ行為を行った疑義がある・・・というコトか?

想像して、背筋が泡立つ。
真実はどうあれ、もしハンター中隊の機体が機密区画で見つかった、とされれば、それがスパイ行為の結果。
殲滅されても抗議すらできない・・・だと?!。
しかも不味いことにハンター中隊の機体はステルスを有するF-22A・・・実際ソビエト他に対し諜報活動の実績も多々ある機体―――。
加えて、今の横浜基地は各国垂涎の重要機密の宝庫、当然そのセキュリティが厳重を極めることも周知の事実。
これが他の国であればF-22Aの鹵獲を狙った、という見方もできるが、ここ横浜に関しては件の御子神大佐自身がF-22Aを撃墜し、称して“BETA戦に使い物にならないポンコツ”と貶めたことも有名でこれまで一切興味を示していない。
一物ある機体でテロの混乱に乗じた最重要基地での諜報・・・誰もが納得する状況でしかない。


「・・・隠滅―――かッ!」

「―――国連軍指揮官殿[●●●●●●●]が実際に極秘裏の諜報活動を指示していなければ[●●●●●●●●●●●●●●]、な。
だが、現実こちらのデータリンクもロストしていて、ハンター中隊の行動は一切不明。
仮に機密区画で残骸がみつかっても、向こうの言い分に抗議する物的根拠もない。
ついでに言えば、―――文書には、強引な帰還を命じた担当司令官とのやり取り音声もしっかり添付されていた。」

「!!―――ッ」

「・・・暴動が収束した以上、デフコン1維持は威力侵攻の意志あり、と見做される故の措置だ。」


その声には強い侮蔑すら含まれている。

―――不味い・・・不味い、不味い!、不味いッ!!

このままではその可能性が極めて高い。
ハンター中隊をウィルスまで使い嵌めたのだ。
“発症者”の乗る警備部隊が接近していたのも分かっている。
事態が収束した今もって誰も帰還しない以上、中隊が殲滅されたコトは確実である。
しかしその残骸を機密区画に移動されれてしまえば、こちらにはもはや抗議も出来ない。
それどころか、不自然な命令をはじめ、幾つもの状況証拠が残る私に明らかなスパイ行為指示の嫌疑がかかる!

・・・全てが裏目に出た。

状況を漏らさぬため態々通信途絶させた、それがゆえに行動の痕跡がない。
命令権を離脱しようが工作員[エキスパート]さえ帰還して居ればその証言が得られたのに、それすらない!
米国民の死者がいても、それがスパイ行為の上の殲滅となれば、むしろスパイ行為を指示した者に非難が集中する!!

これでは第4計画を接収するどころではない。
XM3という技術の公開トライアルという謂わば善意のイベントで、卑劣な諜報を行ったと明らかになれば米軍、ひいては米国の信用は地に堕ちる。
糾弾する口実を相手に与えてしまった。


「―――ところで、アンタは“恭順派”か?」

「は?―――何のことだ?」


唐突な質問にぐるぐるしていた思考が止まる。
話が跳び過ぎだ。
しばし“恭順派”の意味すら掴めなかった。


「恭順派?―――キリスト教のか?」


私自身は恭順派ではない、しかし第5計画の大物スポンサーに恭順派が多数いることは聞き及んでいる。
“あの方”と指導者[マスター]が近いことも。


「―――その様子じゃコレも見ていないのか。」


傍らのキーボードを操作すれば、モニターに映る映像―――。


『―――そろそろお別れとしましょう。
貴女方さえ居なくなれば、もうBETA[使徒]の道程に障害はない。
人はみな等しく“神”の御元に召されるのです。』


血に塗れた強化装備の慇懃な男。
何処の3流ドラマかと思うような始まり。

だが、そこからの会話は衝撃的―――。


神・・・?
・・・BETAの創造主[●●●]だと?

指導者[マスター]鏖殺[ジェノサイド]を先導!?

確かにこの顔は、難民解放戦線[RLF]のリーダーかッ!?

恭順派のカリスマたる指導者[マスター]の望みが人類総自決―――!!

しかも対峙していると思われるこの声、第4計画の最高責任者である香月夕呼ではないか!?


『・・・さあ、貴女方も[創造主]の御元に召されなさい!』


悪魔のような嗤いを湛えたその台詞で、映像は停止した。


「―――こ、これは・・・!?」

「・・・4時間程前、各国のTV・新聞をはじめ主なマスコミ、政府及び政府関係機関、更には国連関連機関に匿名で配信された実写映像だ。
現在各国が慌てて裏を取っている。
映像に映っている背景は国連横浜基地―――つまり今回のテロを起こした、乃至テロの混乱に乗じ、会話している人物を襲ったテロリスト・・・。」

難民解放戦線[RLF]執事[バトラー]がか!?」

「・・・画像に映った骨格、声紋からも、確定している。
―――この映像が合成ではないことも、な。
そして、会話の相手は、やはり声紋から香月女史であることも判明している。
だが、最大の問題は、会話の中身―――」


BETA侵攻が熾烈になるにつれ、厭戦感や諦念感を背景に巨大な勢力となって行ったキリスト教恭順派―――。
その精神的支柱であると言われる指導者[マスター]が、実は教義を蔑ろにし、BETAに組するような鏖殺者[ジェノサイダー]
それをNo.2が暴露したようなものである。
他方難民解放戦線[RLF]にしてもテロリストとはいえ難民の味方であり、国連や米国の専横に抵抗する勢力と見られていた。
なのに最前線で鏖殺[ジェノサイド]を繰り返していたことさえ自らが認めている!

―――恭順派は・・・求心力を完全に喪失―――千々に割れる!


「本国や英国を始め、欧州各国・ローマ教皇も移設先で大混乱という状況だ。」

「―――基地司令・・・いや実質トライアルを指揮していた副司令との会談を申し入れる!」


形振りや経緯になど構っていられず、そう叫んだ私に、呆れ果てたような艦隊司令が首を振る。


「それも出来んな。
この映像には続きがない。
騒動は収束したがこの個人アタックの成否は不明―――横浜基地副司令・・・第4計画最高責任者は、現在MIA[●●●]―――、とのことだ。」


足元が消失したような、墜落感が私を襲った。


Sideout




Side 山城上総

シャノア病院船“ミーミル”  19:00(GMT+3)


11月末とは言え、赤道に近いアラビア海アフリカ東岸ソマリア沖の風は穏やかさ、横浜の刺すような冷たさはない。
人類の永続に関わり、達成すれば歴史に残る作戦に携わるだろう“戦友[とも]”の行く末を案じつつ、隣でムスッとしている顔を覘く。

此処は、排水量で原子力空母にも匹敵する巨大病院船“ミーミル”。
そのフライトデッキのテラスだった。
横浜での全ての作業と追加の要請を終えた私たちが様々な機材と共に午前中に横浜を発ち、ミーミル所有のHSSTで母船まで帰投したのは先刻。
今はそれら機材の搬入作業中。。

依頼された仕事は何の滞りも支障もなく完遂されている。
この男が未だむくれているのは、偏にプライベート―――。


今朝の光景を思い出し、クスリと笑ってしまう。


発つことを伝えた時、宗像中尉に朗らかな顔でハグされたのは、私だった。

―――軽佻浮薄な従兄だが、宜しく頼む

そう言われて・・・。
それが彼女の答。
思い返せば、ハグを慌てて引き離したのは彼――――――




「何しとんのやァ!」

「何、親愛のハグだ。
鷹兄の嫁なら、当然私の姉・・・。
―――年下で日本人形のような凛とした姉・・・ジュルリ、うん・・・、アリ[●●]だな。」


そう言って再度手を伸ばす。


「あほかァ!!、触んなぼけェッ!!」


彼が遮るとニヤリと笑いながら踵を返し、背中越しにヒラヒラと手を振る彼女。
どう考えても相手の方が上手だった。


「―――クッ!」


隣で苦笑していたオルランディ中尉に、悔し紛れのボディブロー一発。


「・・・泣かされへんなや。」




――――――その一言が精いっぱいの強がりだった。
そう、実際には既に初日の邂逅後の面会で、それはもう散々に遣り込められたらしい。


曰く――――――




「鷹兄が生きていてくれたことは素直に嬉しい。
だが、しかし!」

「せやかて、・・・美冴かて機密部隊所属で行方も分からへんかったさかい・・・。」

「私は先月までずっと欠かさず月に一度、斯衛に消息確認を続けていた。
KIA認定されるその時まで続けるつもりだった。
生きているなら、一言斯衛に伝えれば良いだけの事ではなかったのかな?」

「う、ぐっ―――。」

「―――あまつさえ、今や私の中では黒歴史ともなった告白を、曖昧なままはぐらかして置きながら、再会早々先般の態度は如何なものか?」

「そ、そらやな・・・。」

「あの時、YesならYes、NoならNoと断言してくれていたらまだ割り切れたのだ。
煮え切らぬ態度のまま、逝ってしまったと思っていた私がどれほど悩んだか―――。
それを今更―――?」

「せやかて、こん問題には時間が必要で、オレかて整理しはる必要がおしたんや!」

「ほう・・・では此度随伴された山城嬢とは何の関係もない・・・と?」

「ぐ―――。」




――――――それからは優柔不断・不義理・下半身思考―――云々。
流石幼馴染の従妹、紡がれた峻険な言葉に一切の容赦がない。
弱点を重点的に、それはそれは盛大に詰られたらしい。
・・・今度、私もコツを聞いておく必要がありますわね。


「―――しかも終いには、上総に懐きよってェッ~~!!」


海に叫ぶな。


「・・・だから言ったではないですか。
私の存在は話を拗らせる、と―――。」

「―――アカン。
今のオレには、上総の存在なしに話を進めることはでけへん。」

「・・・あらあら。
約束の相手に振られたら、返す刀でそれですか―――。
だったら、その不貞腐れた態度を改め下さいな。
他の女の事で何時までも不機嫌でいることは、私に対しても不義理ですわよ?」

「・・・そやな―――。」


隣に立つ。


「・・・・・・本当のコトを、伝えなくて宜しいのかしら?
彼女に不義理だと思われているなら、その誤解を解いておくことも必要でしょうに・・・。
生まれた時、八雲の宗家を護るために、数時間違いで死産になった宋家の継嗣と入れ替えられた実の兄[●●●]であることを、あの時知らされた、といえば、それで済むのではありませんか?」

「・・・今更―――や。
ま、オレが悪モンになって、美冴が幸せになるならそれでいいんや。
所詮、3年前に煮え切らへんかった時点で、切れとったってことやろ。」


あらあら、未練たらたらですわ。
―――と言うか、それを伝えに来たのでしょうに・・・不器用だこと。


「・・・あら、オレの後を追いかけてきた美冴ではあらへん。」


強がりですね。


「・・・そうですわね。
帝都陥落以降、私たちはリハビリという苦行こそありましたが、逆にミーミルに拾われたことで衣食住は足りていた。
残された方々は、失われたモノを忍びながら、また別の地獄を歩んで来たのでしょう。」

「・・・・・・そやな。
故郷の喪失。
母の死に背を向け。
オレの死に目を逸らし。
只管訓練に打ち込み―――やけずっと空虚におったそないや。

ま、そらオレもおんなじ―――。

全ての時間に勉強ちゅう理由を詰め込むことで、逃避してや。
本当にしなきゃ行けへんことを忌避し、忙しさを言い訳に、やな。

それを・・・ビンタ一発で吹き飛ばしてくれたんが、上総やからなァ・・・。」

「当然です。
態度がちゃらんぽらんでも、多少女にだらしなくても赦しますが、己の矜持に反すなど、武士[もののふ]の風上にも置けません。」

「・・・結局、時間が必要やったんやろ、オレかて、美冴かて・・・。
これで良かったんやな。
昔の2人んままやったら、共依存になること請け合い、どっかで断ち切る必要やった。」

「・・・。」

「それが話しいてようわかった。
適々その切っ掛けが、美冴はアイツで、オレは上総やった、ちゅうことやな。」

「―――それで?
もし、彼女が逆に貴方を選んだら如何なされたのかしら?」

「勿論、娶るで―――上総と一緒にな。」

「あらあら・・・血を分けた実の妹と致せるなんて、涼しい顔をして鬼畜ですこと。」

「とゆーてもな・・・。
ちっさ頃から少なくとも性的好奇心バリバリん中坊までそのつもりだったんやで?
医師、助産婦、宗像の母と、八雲の宗主・・・オレと美冴の、真の血縁を証明出来るモンはとーに一人も居らへん。
戸籍上養子の記載もあらへんし、法的な障害は皆無や。
ま、知らされたときはビビりもしたやけ、美冴を大事に思っとるんは本気や。
碌な男がいーひんのやったら、傍に置くで。」

「・・・それは単なる保護者ですわ。」

「そないコトないて。
実際もしこんままBETAに追いつめられて、人類が二人きりになれば、オレは例え母であろうが娘であろうが、子を成すで。
寧ろ純血を保つちゅう名目で赤子の交換が行われ、ほんで養子縁組で血が濃くなるんは、武家にばまま在ったことやし。
先天障害にはちびっと気をつけなければいけへんが、今ならそこらん遺伝子操作も可能や。
そん時は躊躇やらなんやらせぇへん。

―――もしもや、オレが上総の兄やったら・・・それも可能性ん一つ・・・したら、上総は諦めたんか?」


無論私は宗像の父を知らない。
彼が物心付く前には他界したと聞く。
だが浮気な男だったらしい。


「いいえ、何も問題有りませんわ。
まあ、私は両親がしっかり判っているので、その可能性は皆無ですが・・・。
例え貴方が実の兄であろうと。
私も貴方と同じ、一度は四肢すら無くして死に瀕し地獄を見た身、恐れることなど何も在りませんコトよ。」

「頼もしいこっちゃ・・・宜しゅう頼むで―――。」


漸く機嫌が直ったらしい笑顔に、微笑み返す。
人類という種がまだまだ先を―――未来を紡いでいけるように。


Sideout




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