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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット
Name: maeve◆4e73cb56 ID:56336505 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/03/26 22:16
‘19,03,24 upload  ※何年振りでしょう?
            取り敢えず4編ストック 順次上げます
‘19,03,25 表記バグ修正



Side シルヴィオ・オルランディ(欧州連合情報軍本部第六局・特殊任務部隊“ゴーストハウンド”中尉)


「―――これは・・・。」


本館近くで美冴の〈Valkyrie-04〉に拾われ、そのままBゲートに来た。
先のアンテナ爆破により、部隊間以外の通信が途絶、HQからの指令が来ない。
それでも正常な基地職員は本館方面に逃げ、“発症者”は北部PX外に屯していた。

周囲を疎らに囲む機械化歩兵―――火器管制が敷かれたまま通信途絶しているため、今のところ衝突はない。
スタン・グレネードは使用可能であるが、どうにも包囲する側の数が足りない。
先行して放った者が数名居たらしいが閃光と爆音では鎮静化仕切れず、かえって一気にヘイトを集め、同じ機械化歩兵に集られて動かなくなっていた。
攻撃しない限り、彼らの“対象”は基地職員ではないらしく、積極的に襲ってくることはない。
しかしその裡に篭った最早“憎悪”とも呼べそうな怒りはその矛先が見いだせないだけで、静まることがない。
通信が途絶しているため、指揮系統も分断され増援もなく、現場判断で無理に鎮圧を試みようにも今いる警備部隊の歩兵では、只々凄惨な状況にしかならない。






Kill yankee

祖国を返せ

ユーラシアから出て行け


叫んでいる言語や言葉は、様々でも怨嗟の対象は一つ。

兵の他に、戦闘に関わらない一般職員も多数いる。
包囲に当たっている警備部隊側も内心気持ちは同じ、膂力で鎮圧すれば双方に死者が出るし、基地内の兵士感情に大きなシコリを生じるのは確実―――。


故に今のところ包囲した機械化歩兵との全面対決には至っていない。
だが、抑圧されたヘイトは出口が無いまま鬱積している。
戦術機に乗っていた衛士には、米軍戦術機という明確な“対象”が存在したが、一般区画で発症した彼らには当面それがない。
内部的に周囲から嫌われていた対象や、幾つかのグループ間では小競り合いが在ったようだが、今はその憎悪が徐々に包囲する機械化歩兵部隊に向いている。


一触即発、臨界点まで幾ばくも無かった。




『“ Valkyrie-04[宗像]”ッ!!、聞こえるッ!?』


その時、唐突に通信が回復した。
網膜投影に飛び込んできたのは、ドクターの姿。
背景から狭い司令室―――移動戦略作戦室だと推測する。
成程、移動戦略作戦室で基地域内の通信カバーをしたか!
しかし―――まさかッ!?
ドクター本人がB19[絶対安全圏]を出る、だとっ!?


「―――Yes,Ma’am、」

『いい?、―――よく聞きなさい。
基地の通信が途絶していた間に、米軍が使っていた外部ハンガーから整備要員を載せた大型バス2台が、出たわ。
今HQから停止を命令しているところだけど、空母からの帰還指示だと抗命・・・これは強行するわね。』

「・・・まさかッ?」

『・・・3分後に、北部ルート、そこ[●●]を通過するわ―――。』

「なッッ!!」

「え!?、あの星条旗の描かれたバスですかッ!?」

『そうよ・・・。
そんなコトになれば何が起きるか・・・解るわよね?』


“発症者”の攻撃対象は明白、現状単に対象が見当たらないから動いていないだけ。

時間が経過することで鎮静化するとはとても思えない。
“発症者”は一部に警備兵が混じっているが基本一般区画の軍属、管制下の今、火器はない。
とは言え、機械化歩兵の膂力なら数体でバスを転がすことなど造作もない。
一方で全ての火器持ち込みを禁止した米側整備要員。
状況を知らないバスがこの集団を蹴散らして進むこともないだろう。
止まってしまえば多勢に無勢・・・。
通信途絶前に漏れ聞いたアスタの言によれば、ぶん殴って気絶させれば異常興奮は停まるらしいが、普通の整備兵と2000を超える暴徒である。


「・・・そう言う事か―――。」

『そーゆーコトよ。
G弾を失った第5計画派は、この横浜基地の強制接収を目標に変えた―――。
その際一番厄介な自国内の世論を誘導する為に、米国民の犠牲を作るつもりね。』


テロリスト[恭順派]の狙いは第4計画を潰す事で、一般区画とは隔絶したから問題ない、と思っていた裏を掻かれた。
そう、ここで基地要員の襲撃により米兵に死者が出たら、基地司令部の責任問題。
ましてや、戦闘員ではない無抵抗の整備兵を2000人の暴徒が襲ったら・・・。
米国の世論は横浜基地を敵視し自国の管理下に置くべきとの意見に穏健派さえ同意せざるを得なくなる。
例えそれがテロによるモノであると証明できたとしても司令部に大幅な干渉が入ることは拒み切れない。
その為の生贄―――。


「―――“A-01[ヴァルキリ―]”機の火器管制は外れてるわ・・・。
―――暴走した発症者を確実[●●]に止めなさい。」


!!―――。

息を呑む。

幾ら戦術機とはいえ1機で理性のない2000人を、無傷で抑える術はない。
つまりは、暴徒とはいえ生身の人間相手に、戦術機の火器を使うというコト。


「・・・り、―――了解・・・」


美冴の返答が震える。
普段飄然とした美冴をもってしても・・・。
BETAを・・・人類からBETAを駆逐する為の火器を、守るべき人たちに向ける。
その結果の凄惨さは言うまでもない。
現状置かれた状況から仕方ない命令だと理解はする。
米国の横槍を阻止し、第4計画の独立性を死守するための、ある意味こちらも生贄。
何より揺ぎ無いドクターの指示には“覚悟”さえ感じられる。


だが―――。


「・・・ちょっと待った。
―――1つだけ、試させて貰えるか?」

『・・・・・・何?』

「俺は博士にテスターを貰って以来、思考波を制御する訓練を行って来た。
自分の意志で出せることが判明した以降、以前は無軌道に放出していた思考波を、ギリギリまで絞ることで、過剰な反応を起こさず探るコトを試してきた。」

『・・・それが?』

「実は―――抑制とは逆に、目一杯、謂わば衝撃[バースト]と言えるまでに一気に解放する事も試して来た。
異常行動さえ起こさせず一気に無力化出来ないか、とな。
結果、キャリアでテストしたことはないが、逆にキャリアじゃない健常者がちょっとビクっとするくらいの強度で出せることも判った。
・・・今回仕掛けられたABSの様態からも敵に俺の情報が流れているのは確実で、中途半端な刺激で起爆するよう対応されていたとも考えられる。」

『・・・・・・。』

「部隊通過まで―――まだ3分あるなら、それ[バースト]を試させて欲しい。」

『・・・いいわよ、制圧の方法は問わないわ。
但し米整備兵の犠牲は認めない・・・確実に止めなさい。。』

「了解。
美冴、刺激しない範囲で接近を。」

「・・・わかった。」



とは言ったものの・・・。

この切迫した極限状況を前に、“妄想”というのも言うほど楽なものでは無かった。
平常時に基地内を巡回するのとは全く違う。
国連横浜基地[ここ]は殺伐としたエゴむき出しの、陰惨極まる殺しあいの場なのだ。
視界の端には、拉げて血塗れた機械化歩兵の残骸すら存在する。
しかも、切られたリミットは既に3分無い。
つまりは血生臭い戦場を目前にしてその時間内に出せ[射精しろ]、と言うようなもの。
殺人淫楽症[性的異常者]ではないのだ。
凄惨な状況は幾度も潜り抜けてきたが、それに性的興奮を覚えたことは一度としてなかった。

気ばかりが焦る―――気持ちを落ち着けようにも、焦れば焦るほどイメージがブレる・・・。



「・・・シルヴィオ、当人がすぐ傍にいるのに、妄想するわけ?」


唐突に隣から声がした。


「―――え?、いやしかし・・・。」

「当人を目の前にして頭の中の女に欲情されるのって、例えそれが自分でも凄い侮辱よ?
と言うわけで副司令、―――宜しいですか?」

『ナイスよ宗像!、―――犯っちゃいなさい!!』


いつの間にハーネスを外したのか、躊躇なく柔らかいものが絡みついてくる感触に。一瞬、呆然となった。
抗う間もなく首に両の腕が回される。
薄い強化装備越しの圧倒的なまでに生々しい触感。


―――ありがと・・・私の為よね?


囁くような熱い吐息が耳朶を擽る。


人類滅亡の瀬戸際に来て、人間同士の殺し合いなんてもうたくさん。
―――私達は愛し合い、命を繋いでいくために生まれてきたの


鼻先を擦るような位置から見つめてくる瞳の煌めき。


・・・・・・ああ、そうだな。


唇を奪われる。
甘いぬめりが口腔に侵入したと理解した時には舌を絡め取られていた。
右手は既に左手で膨らみに導かれており、膝を割った強化装備の太ももで股間が擦り上げられている―――。

元々強化皮膜は速度感応型の素材、速い速度には極めて硬化するが、人体の動作程度には薄膜のまま伝える。
つまりは、素肌に触れている様な感触で、指に余る柔らかさその傲慢なヴォリュームを知らしめる。
指の間に感じるシコリは、もはや明確に自己主張してくる。
指を窄めて挟むと、舌を絡めたまま小さく呻き、左腕で抱きしめるしなやかな背が震える。



―――焦がれた女が、全身で求めてくれている――――。

その全身全霊に訴える暴虐とも言える感触は、無論妄想の比なんかじゃない!!

身体の奥底から生じるのは際限ない高揚感―――。
背筋から裏筋に集まってくる滾り―――。

本来の目的を忘れてしまいそうになる誘惑・・・このまま熔けて混ざり合いたい。


どこまでも昂奮する感覚を、ギリギリと矯めて、矯めて、更に矯めてゆく。
相手の頂を導くように抑制し、自らのぶちまけてしまいたい爆圧を無理矢理にでも拘束し、只管我慢する。

右手にみっちりと揉みしだく心地良い感触、尖った先端を指の股で転がせば、ビクビクと肢体が跳ねる。
先刻まで首に回されていた右手は、胸に滑りこみ素肌を撫でるようにまさぐってくる。
薄い強化装備の滑らかな腿を擦りつけられる股間は最早猛々しいまでに熱く滾っている。。
支えるよう背から回した左手で掴む尻たぶが、クイクイと早く小さく動く。



―――嘗て無い歓喜。


もっと、・・・もっとこの腕の中にある女体を感じたい。
融けて、交ざって、一つに―――。
無意識だろう、薄く開いた瞼は、恍惚として瞳色が滲んでいた。



―――だが、この掛け替えのない存在を護るためにも、今はやるべきことがある!!。


溜める―――のみならず、更にギリギリと圧縮してゆく―――。


甘くさえ感じる粘膜、唇の隙間から漏れる熱い吐息。
掻き抱いた身体の柔らかさ、求め弄られる指の滑やかさ。

背筋の泡立つ痺れが丹田に凝縮されていく。
ドロドロとした熱い粘りつく塊が抑えきれずに吐出口を求め這い登ってゆく。


霞む視界の端に、星条旗を描いたバスが映る。








――――――光輝一閃。






ギリギリと圧し続けていたモノを放つ―――。
溢れる思慕、迸る欲望、荒ぶる激情―――その全てを一気に。

ドクンッ!と熱い塊が迸った刹那―――、意識までが弾けた。
視界に閃光が溢れ、全身が浮遊する感覚。
腕に固く抱いていた肢体が鋭く跳ね、二度、三度と痙攣した。


Sideout




Side ロア・ヴォーゼル(国連太平洋方面第2軍臨時准将相当官 [CIA Dept.D])

ニミッツ級戦術機母艦 “ジョージ・ワシントン” 司令官室 18:15


「何故救援部隊を出さないッ!?」


激昂して拳を叩きつける。
演出も時には必要なのだ。
―――だが、今は少々頭に血が上っているのも確か。
拳に感じる疼痛さえが忌々しい。


予定外の早期発動―――、仕込みの全ては終わっておらず、故にチャンスを逸したかに見えた。
しかし参加していた戦術機大隊が逐次帰投という選択をした為、最後に残ったハンター中隊に対して工作員[エキスパート]が仕掛けた。
キャリア[パペット]を操り残っていた通信を潰し、ソフトウェアBomb[ウィルス]を発動させた、ということだ。
電磁帯のファームウェアまで管理している正規版や、限定版でもOSレベルで深層データリンクされた機体ではウィルスも無効化されるらしいが、スタンドアロンの機体に限り既存のCPUやファームウェアのセキュリティホールを用いた機能阻害が有効だった。
XM3仕様書の入手以来、ほぼ1カ月が経とうというのに米国ソフトウェア産業の総力を以てしても、未だ全く複製の目途は立たず、こんなお茶を濁す程度のジャミングに留まっている。
その不甲斐なさには呆れもするが。

それでも限定的ながら使い様はあり、実際、既にハンター中隊は艦のデータリンクから消失し、衛士のバイタルも途絶している。
工作員[エキスパート]の“仕掛け”が少なくとも途中まで成功したのは明らかだが、本来は救難信号とともに工作員[エキスパート]だけが帰投する段取り、後は友軍の救助と暴動の制圧という名目で部隊の投入、という流れだった。


だが―――。


「・・・国連横浜基地からも、主権国家である日本帝国からも支援要請はない。
ここで勝手に武装した戦術機を派遣すれば、侵略行為とみなされ撃墜されても文句は言えん。
実際この艦と基地との間にはA-01[伊隅ヴァルキリーズ]が展開している。
―――あの装備[●●●●]と遣り合うのかね?」

「アレはシミュレータだけのブラフに過ぎんッ!!
今もってハンター中隊が帰投せず、通信途絶、バイタルさえ消失したんだぞ!?
更には整備兵の乗ったバスが暴徒に包囲されているとの情報もある!
米国民が殺されるのを貴様は黙って見ていろと言うのかッ!?
・・・構わんッ!
臨時司令権限で出撃を命じるッ!!」

「―――勘違いされても困るな。
貴方は国連軍に参加した“横浜トライアル派遣部隊”の臨時司令であって、本第7艦隊の司令ではない。
トライアル現場にいて、実際の脅威を視認しての命令ならまだしも、国連軍の代行権には、ここ[空母]に待機している米軍の司令としての権限はない。
―――これ以上の戯言[越権行為]は、軍規上冗談では済まんぞ。」

「ぐッ―――」

「・・・通信途絶というが、ハンター隊からのエマージェンシーコールもなく、暴徒に囲まれているという連絡バスからの救難要請もない。
明らかな施設破壊があり、暴動を起こしたのもユーコンの様なテロリズムの可能性がある以上、要請やエマージェンシーコールさえなしに動けば明らかな国際問題となる。
―――そもそも、勝手にトライアルの終了を宣言し、基地HQの待機命令を無視させて強引な帰投命令を出したのは何方かな?」

「・・・出した時点では暴動の情報は無かった。」

「・・・情報の有無、指示の経緯はログを見ればわかること。
気がつかなかった、としても[●●●●]司令官の資質を問われるコトになるがね。」

「・・・。」

「何れにしろ我先に現場を放棄し尻尾巻いて逃げてきた、状況も読めない部外者に口出しは無用。
―――ラングレーでお気楽にシミュレーションするのと違い、空母で動かす部下は貴方の言う生身の米国民なのでな。」

「クッ―――」



そう―――、状況は我々[第5計画]にとって芳しくない。
工作員[エキスパート]が出すはずの救難信号もなく、帰還もしない。
現況を掴もうにも残っている工作員[エキスパート]は既になく、細かい指示などできない他国部隊のキャリア[パペット]では使い物にならない。
最初は有利にも思えた横浜基地の通信途絶も、逆にテロリストの介在を明確にしてしまった。
偶発的な暴動ではなくそれがテロリストの煽動となれば、米兵に被害が出ても基地管理資質の疑義を提起しずらい。
確かに事前のシミュレーションでは常に何事もなく推移し、横浜基地の強制接収まで達した状況に、そこここで齟齬が生じている。


だが―――、まあいい。

ここで強行突入して基地司令部を抑えられれば早かったが、既に米兵にバイタル途絶が出ている以上、以降の展開次第で確実に基地の責任問題に持っていける。
ここで制圧部隊を向けなければそれだけ残留部隊の被害は増える。
逆に援護要請が無かったことで被害が拡大したなら、今後の介入に対する日本帝国のクレームも抑制できるだろう。
整備兵の全滅は勿論、工作員[エキスパート]が最後の離脱でしくじったことも、尊い米国民の犠牲が増えただけの事。
米兵の被害が大きければ大きいほど介入がたやすい。

そして・・・仮に最終的にはテロによる不可抗力となろうが、その査問過程では司令部の人間、特にトライアルの指示を出していた第4計画の最高責任者を尋問する機会は、米側国連軍の指揮官として確実に得られる。

・・・つまりは―――堕とせる―――。

組織などトップがワンマンな秘密主義であればあるほど、頭さえ抑えてしまえばあとはどうにでもなるのだ。


・・・そう考えれば・・・否・・・寧ろ・・・状況は変化している。

強行突入による強制接収は日本帝国の反発を招く恐れもあるが、ならば第4計画を現状のまま手にする方が利得は大きいのか?
噂されるBETA鹵獲技術が本物なら、いっそ米軍の有象無象に接収させることこそ勿体ないではないか?!
米軍の接収となれば、穏健派だの慎重派だの余計な横槍が入るのは必定・・・思うままに使うにはむしろ今のまま秘匿するほうがベター。
何しろ“アムリタ”の依存性はマーキング、つまり最初に性的支配した者にのみ向くという。
そう―――私が、ひいては我々・第5計画こそがその全てを手にする方が望ましい!


成程・・・、こんな極東くんだりでクソみたいな任務と思っていたが、そう考えると悪くない。
淫獄に堕ちた魔女麾下、すべてのBETA鹵獲技術、白銀の雷閃やAmazing5、オリジナルハイヴを攻略できる東洋の戦乙女までも、全てをほしいままに扱える、と言うことなのだ!
当然、私の第5計画内部での地位も極限まで上がる!


「―――ッフンッ―――。」


私は艦隊司令を睨みつけたまま、こみ上げる笑みを全て押し殺し、憤然とした態度で踵を返した。


Sideout



Side 夕呼

国連横浜基地メインゲート 移動戦略指令車両 18:45


『避難・状況、終了―――米整備兵を乗せたバスはミニッツに到着しました。
当該部隊については負傷者0、機材の損害も0。

先程東地区に移動戦略指令車両が搬出されました。
現在臨時HQ設置作業中、あと10分で稼働開始します。

Bゲート付近、機械化警備兵の死者は3、負傷者6。
“発症者”側は死者0、負傷者は現在カウント中―――。
また、失神した一般職員の救護搬送進行中―――。

第6戦術機甲大隊[06bat]は、現在調査中。
A-00[ヴァルハラ]が制圧したので死者は在りませんが、軽度の負傷者、及び、戦術機には相応の損傷が出ています。

あと・・・米・ハンター中隊に付いては』

「あ、それはいいわ。
詳細な調査が終わるまで存在ごと隠蔽して。
今の発言も削除―――。」

『了解』


通信で聞く“Valkyrie Mam”[若宮(姉)]からの報告。
大規模なテロにも関わらず、思ったより被害は少ない。

―――ま、これも強烈な思考波を爆発させたシルヴィオのおかげだけど。
でなければ数千人単位の基地要員を失うところだった。
ここは素直に感謝、ね・・・無論、本人には言わないけど。
今の位置では僅かに感じた位だったけど、HQに居たピアティフはかなりクラッと来る鋭い酩酊感や浮遊感を感じたと言うから、今のアイツは指向性もある程度制御できるみたいね。
キャリアや発症者に対するカウンター・・・うーん、手元に欲しいトコだけど・・・ま、宗像が居れば何時でも呼べるか。

で、問題は、米軍―――。


「・・・米軍[みなと]の方は?」


アナスタシアに聞く。


「・・・まだデフコン1は解除されていない―――、バスや他の5戦術機中隊は何事もなく戻ったが、ハンター中隊が・・・、な。」

「未帰還12・・・ね。
当面A-01[伊隅ヴァルキリーズ]が空母哨戒継続、ハンター中隊はA-00[ヴァルハラ]が後始末中。
・・・GhostHo[シルヴ]ッ!!」


バシュンッ!、という空気の射出音を置き去りに、アナスタシアに抱えられたアタシは、何が何だか判らないうちに緊急脱出ハッチから転がり出た。

次の瞬間、劈く甲高い金属音と共にハッチから噴き出た紅蓮の火炎が地面を舐め、熱風が脇を抜けて行った。
は?・・・強固な装甲を有する移動戦略指令車を“貫いた”?


「・・・徹甲焼夷弾?、火器の持ち込みは出来ないハズなんだけど?」


そこに居たのは薄いアルカイックスマイルを張り付けた温和な紳士然とした男。
頭部だけ外した強化装備は大東亜連合、手には煙を立ち登らせる太い鋼鉄のパイプ。


「おや、流石に堕天した器[00ユニット]ですか、勘の宜しいことで。
少しぐらいは与ダメージを期待したんですが・・・なけなし[ハンドメイド]の徹甲焼夷弾でも無傷ですか。」


穏やかな口調で物騒な内容。
紳士と言うより雰囲気は執事?
今回トライアルに参加した衛士には違いないが、事前調査[フィルター]でもリストアップされていない。
明らかに襲撃者、手には鉄パイプ[手製砲塔]、腰にはコンバットナイフ。


「剣呑なジジイだ・・・。」

「とは言え、“魔王”も排除対象、毀して差し上げましょう。」


一歩出たアナスタシア、男が言うなり鉄パイプが疾る。


ガギィン!


アナスタシアの手にした扇子とぶつかり合い、派手な火花と金属音を撒き散らす。


「仕込み・・・いえ、鉄扇とか言うのでしたか―――優雅なものです―――、しかし」


―――ガィン、―――ギィン、―――ギンッ


躱す間もなく幾度も鉄パイプが疾り、その度にアナスタシアが鉄扇で往なすが、徐々にその余裕が失われているのが素人目にも解った。
アナスタシアの頭脳は量子電動脳、身体は元は鑑に用意したサイブリッド、とはいえ稼働バランスを考慮してサイズは軽量化されている。
総じてパワーは小さい。
通常なら十分往なせる“技”はあるのだが、相手の“技量”も相当に高く、尚且つウェイトにこれだけ差がつくと威力を流しきるのも困難と言うことか。
そのマージンが連撃によってがりがりと削られていく。


「・・・良い動きです―――が、惜しむらくはパワー不足―――。」


キンッ!!


ついに弾かれたアナスタシアは、崩れた体勢を翻し、ズザザ―――と地面を滑った。


「どこまで“覚醒”しているのか知りませんが、リーディングもハッキングも対処済み、無駄です。」

「・・・何処の所属かと思ったけど、アンタ、“執事[バトラー]”ね。」

「おォ~、ご明察、流石博識でいらっしゃる。
不肖ながらこの。執事[バトラー]めが指導者[マスター]の命と、貴基地のご招待により参上致しました。」

難民解放戦線[RLF]のTOPが恭順派の犬として単独潜入[スネ―キング]ってことかしら。」


"執事[バトラー]" は難民に迫害を加える者を粛清するという名目で結成された、反国連を掲げるテロリスト集団「難民解放戦線」のリーダーとされる。
だが、恭順派の支柱と言われる“指導者[マスター]”に帰依したとも噂され、以降の難民解放戦線の行動は一部で結成当初の名目に反している行動を繰り返す。
何れにしろ反国連、反オルタネイティヴを謳うテロリストには違いないが・・・。
今まで何の兆候も見られ無かっただけに外道しか釣針に掛からなかったかと思いきや、まさか超大物[No.2]が単独潜入とは―――。
目標が釣れたのはいいが、要するに他のメンバーはバレるリスクを増すだけで不要というコト。
敵もそれだけ勝算を見込んでいるのは、あのアナスタシアをあしらう動きに伺われる。


「・・・“指導者[マスター]”の命は[創造主]のお言葉ですから。
“勇者”のガラでは在りませんが、先ずは手ごわい“魔王”から殲滅致しましょう―――」


嘲りの皮肉にも眉一つ動かさない。
しかも[創造主]の存在を明確に認識している。
やはり恭順派TOPは相当に深度の深いBITA[傀儡級]と見做せる。

静かにコンバットナイフを抜き、左順手にした。
本気―――。


つ、とアナスタシアが一歩前へ。

だが、一転身を退いた。

空かさず詰める執事[バトラー]
振るわれる鉄パイプでアナスタシアの退路を限定し、受けても躱しても刃の圏内。

数本の金髪が散る。
唸りを上げて迫る鉄パイプを、正に紙一重で躱し、同時に鉄扇を翻す。


ギャリンッ!


刹那の交差、今度弾かれたのは執事[バトラー]の方だった。

そして斬撃を止めたアナスタシア、一瞬動きの止まった執事[バトラー]を弾き飛ばし、その間に立ちはだかったのは。


「おやおやまあまあ―――、ここで“フェニーチェ”の見参ですか。」

「―――アンタが執事[バトラー]か。
ユーコンでは行き違ったようだが。」


遅れて拳銃を構えた“ Valkyrie-04[宗像]”が駆け寄ってきてアタシを庇う様に執事[バトラー]にエイミング。


「やれやれ・・・流石に多勢ですな―――。」

「・・・投降することを勧める。」

「これは異なことを―――圧倒的に有利なのに何故そのような必要が?」

「・・・有利?」

「“魔王”、“牝狐”、“不死鳥”・・・排除対象が纏めてこの場にいる。
これが有利でなくて何なのです?」

「・・・。」

「惜しむらくは未知数故に不気味だった“漆黒”が居りませんが、これは私の責任ですから。
リークしたABS研究所の対応・・・ですか、今頃は地球の裏側でしょうな。」

「・・・陽動のダミー情報ってコトか?」

「いえいえ。
本物であるからこそ、あの“漆黒の殲滅者[ダーク・アニヒレーター]”が自ら動いたのですよ。
無論・・・別口[第5計画派]の、ですがね。」

「―――つまり、此処でのアンタの余裕は仕込んだABSにある・・・ってことかしら?」

「ご名答。
吾等はフィトンチッドではなく、アスベストですから。」

「「アスベスト?」」


アスベスト―――無機繊維状鉱物の総称よね。
繊維1本の太さがサブミクロン・・・髪の毛の数十分の一から数千分の一。
その綿状体は耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に極めて優れ、且つ安価であったため、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されてきたはず。
けど、空中に飛散した繊維を長期間大量に吸入すると肺癌や中皮腫の誘因となることが解り規制対象になった物質。


「ええ、なかなかに気難しい嫌気性ABSでして、フィトンチッドでは構造上酸化防止が出来ないのです。
そこで岩塩をアスベスト状にして内部に密封し漸く実用化に漕ぎ着けました。」


“塩”のアスベスト様物質か・・・考えるだけでも厄介ね。
塩なら残留する石綿なんかに比べ、皮膚についてもほんの僅かに痒みを感じるかどうかって言う程度だから、散布されても気付き難い。
そして粘膜に触れればそこで塩は溶けて凶悪な内容物が人体に付着する。
問題は、内部のABS―――。
しかもGhostHound-01[シルヴィオ]の存在を肯定しているということは、効果においても対処されていると思っていい。
つまり―――意識に干渉しないタイプ。
ここは・・・発動させないに越したことはないわね。


―――FIRE


意識的に思考を送る。
その強い意思をバッフワイト素子が電気信号に変換し、拳銃を保持したままの Valkyrie-04[宗像]の強化衛士装備に秘匿通信として伝える。


BANGッ!

チィィ―――ンッ!


通常弾の徹りにくい強化装備を避け、一瞬で意識を刈るヘッドショット―――。
躊躇なく放たれた銃弾は、しかし執事[バトラー][]に弾かれていた。


「!!、サイブリッドかッッ!」


驚愕がGhostHound-01[シルヴィオ]に一瞬の隙を生む。
外連なく動いた執事[バトラー]の速度は、先程とは違い人間の範疇を凌駕した。
軽量級とはいえサイブリッドであるアナスタシアを圧倒出来ていたのはそのパワー故・・・スピードを敢えて抑えていたことで生身と勘違いさせた。
反応したGhostHound-01[シルヴィオ]も飛びのいていたが、翻ったナイフの切っ先が左目を掠める。

避けた先で、パタパタと血が落ちる。
致命傷ではないが、義眼は切り裂かれている。
GhostHound-01[シルヴィオ]は録画機能を失っただろう。



「ク・・・!」

「―――未だ若い・・・切り札は見えないように伏せておくものです。
君の左義眼[映像記録]は、君が死んでも残る厄介モノなので、先んじて対処させていただきました。
別途このイベントには電子戦の方もいらした様ですが、当面覗き見される心配はないでしょうから。」

「チ・・・流石知ってるわけね。」


執事らしい端正な笑顔を見せる。
感情の一切乗らないそれは、むしろ綺麗なだけに不気味。
実際SR-71、あの特殊な機体は運用に難が在る。
一度軌道降下を敢行すると、熱であちこちが歪み、その整備に2日は掛かるシロモノなのだ。


「ま、どのみち皆さんは死んでしまうので、教えて差し上げましょう。。
今回吾等のABSは外部トリガーによる強制発動・・・意識に干渉しないタイプなのですよ。
当然、君の思考波にも一切反応しない。
体内に摂取すれば、2,3日で増殖・全身の細胞に取り付き潜伏。
一たび発動すれば3分程で人体の筋組織をNTN並みの爆薬[●●]に変えて起爆します。
このABS入りアスベストをマッドカーペットに加工して機密区画のエレベータホールに設置させて頂いた、という訳です。

発動時、此処でどれだけの爆発が起きるか、見ものですな。」

「なるほど・・・アンタね、基地のアンテナ塔を爆破したのは。」

「おやおや、何を根拠に?」

「・・・大方その新作ABS入りの肉でもその辺に撒いたんでしょ。
周囲に葉の茂る高木が存在しない今、基地のアンテナ塔はカラスの[ねぐら]になっていたわ。
15000の人員を擁する規模の基地、一部は再合成してもそれなりに残飯が存在するから横浜に少数残るカラスは、ほぼ全てこの基地にいる。
そして第5計画派[MOB]の計画が発動した事に便乗した
さっきの即席徹甲焼夷弾も一羽捕まえてそのABSで高性能火薬を精製した・・・ってとこかしら?
少なくとも基地内にそうそう火薬の原料となるモノは放置してないわ。」

「―――実に聡明ですな。
獲物を巣穴からおびき出すのには聴覚を殺せ[情報を途絶させれ]ば良いのですよ。
・・・そういう意味では、第5計画の茶番も陽動として有効に機能してくれました。
同志[●●]に頭でっかちのエリート司令官を仕立ててもらい、精々派手に動くよう要請したのです。
“吾等”にとって、向こう[第5計画]の目的や成否はどうでもいいことですので・・・。」

「・・・。」


全く別軸で動いていながら、 “恭順派”は深く静かに潜んで“第5計画”を利用していた、と言うことね。
なかなかにやってくれる・・・。


「私の成功条件はたった一つ―――。
なにせ、いきなり巣穴ごと爆破してしまっては生死の確認が取れず、絶対確実とは言えませんので、念を入れさせて頂いた次第。

やはり自らの手で命の潰える瞬間を見届けさせていただかないと、マスターへの報告が曖昧となってしまう故。
潜入するには、少々手間取りましたが、ね。」


確かにこの男、フィルターに掛けているのにレッドマークはおろか、グリーンマークすらついていない。
これだけの悪意を社や鑑が見逃すわけはない。


「・・・アンタ、乖離性同一性障害、所謂多重人格者・・・ね。」

「お見事―――正解です。」


・・・と言っても特殊な例のはず。
今の攻撃的でありながら穏やかな、いかにも執事[バトラー]という主人格に対し、記録にある基地受け入れ時の副人格は、存在感が希薄で実直、控えめな性格だった。
恐らく主人格は、任意に人格の入れ替えも可能で副人格の記憶も有するが、逆に副人格には主人格の記憶はないのだろう。
この主従タイプだと副人格の記憶にない主人格は、社や鑑にも認知出来ない。


「・・・潜入、工作、体術、隠蔽―――ずいぶん多芸ね。」

「お褒めに預かり恐悦至極―――しかし、そちらのお嬢さんは誠に残念です。
私の斬撃を受け切った体術―――サイブリッド体でも過去あそこまで見事に捌いた者は居ません。
史上最高峰の傑作ボディと言っても良い。
・・・だがしかし、悲しいかな、ウエイトが軽すぎる―――つまりはパワーが圧倒的に足りない。」

「フン―――、私は基本、物理攻撃要員ではないのでな。」

「それでもその脳内モデルは生前の研鑽の賜物・・・全く、量子電動脳[(00ユニット)]などにさえならなければさぞや“最上の聖杯”だったでしょうに・・・。」

「―――生前[●●]の研鑽?」

「おや?、君は00ユニットの由来をご存じないのですか?
驚異の量子伝導脳を持つという第4計画[オルタネイティヴ4]の切り札―――。
BETA情報に接続できるのは、生体反応ゼロ、生物的根拠ゼロという意味の非炭素系擬似生命[●●●●●●●●]とされているのです。
つまりは・・・。」

「―――まて。
君はあの脳髄を取り込んだサイブリッドではないのか?」

「―――私の本質はガイノイド、簡単に言えば、量子電導脳に個人の資質をアーカイブしただけの疑似生命体だ。」

「・・・・・・。」

「ははは・・・、今更です、な。
成程成程、前回パペットを欺瞞に嵌め、脳髄[]を護ったのは[フェニーチェ]だった、という訳ですか。
しかし00ユニットを生み出すために、君が護った脳髄の主は殺されたんです。
・・・この香月夕呼という狂人にね。」

「・・・・・・。」


一歩出た執事[バトラー]、それでも合わせるように無言のままシルヴィオが動く。


「・・・おや、まだ遣る、と?」

「・・・契約だ。」

「君の意志を無下にした相手を、ですかな。」

「貴様には関係ない。」

「―――では、まず君から屠りましょう。」


サイブリッドであることを暴露した執事[バトラー]の動きは先刻と異なる。
それも今現在の技術で考え得る最高性能なのだろう、当然アタシの目じゃ、その動きすら正確に捉えられない。
残像だけでも多数見える唸る鉄パイプ、無数に閃く白刃。
対抗できるのはシルヴィオのみ―――。
影と影の交差、硬いモノがぶつかりあう衝撃波。
斜めに断ち切られた鉄パイプが飛び、甲高い音を立てて転がる。

息が詰まるような十数合の攻防、その一瞬、ナイフの斬撃をナイフで迎撃しながら僅かに引いたのか。
振りぬいたシルヴィオの拳が一瞬流れた執事[バトラー]の顔面を捉えたのが見えた。

弾ける体躯。

油断なく、しかしダメージを回復する為かゆっくり立ち上がろうとする執事[バトラー]に、シルヴィオもフィニッシュブローの残身を解く。


「・・・起爆しないのか?」

「言ったでしょう、手ずから屠らなければならないと。
所謂一つの私の“矜持”ですから。
ABSは保険みたいなものです・・・使わなくても勝てますので。」

「ならばその矜持ごと潰え」


BANG―――!


シルヴィオの台詞を途切らせたのは、再度の銃声。
その胸の中心から赤いものが飛沫き、執事[バトラー]顔面に散った。
それを舌で舐めながら立ち上がる執事[バトラー]


シルヴィオの膝が落ちる。
振り向いたそこには、虚ろな瞳で硝煙燻る拳銃を構えた Valkyrie-04[宗像]の姿。


「・・・何故、美s・・・。」


その上体が崩れる。


「―――だから言ったではないですか、切り札は伏せるモノだ、と。
そして切り札[それ]は1枚とは限らないのですよ。
サイブリッドと言えど心肺は常人・・・でしたか。
・・・この出血では、もう聞こえてないでしょうが。」

「クッ!、・・・宗像に・・・仕込んだってわけ?」

「ええ、彼のバディには以前PXで自販機の使い方を聞くのに話し掛け、うまい具合に捕捉できたので試作品を使わせて頂きました。
何度かエレメントを組んでいるのを拝見しましたので。
彼が自分の近しい人であれ、触発出来るのか、賭けでしたが。」

「シルヴィオの“触発”制御が上がったことが、逆に仇になったってコトかしら。」

「さあ、それは何とも。
βブリッドの傑作指向性蛋白―――、それも一番引っかかりにくい、単命令ですから。
とはいえやはり無意識に周囲の者には抑制していたのですかね。
いやはや・・・全てが巧く行きすぎて怖いくらいです。」

「・・・。」


アナスタシアがアタシの前に出る。
が、ゆっくりと歩み寄る執事[バトラー]に、アナスタシアに庇われたまま後ずさる。


「・・・日本語では三味線を弾く、と言うそうですね。
もうその必要は無いので、本気で参ります。
そろそろお別れとしましょう。
貴女方さえ居なくなれば、もうBETA[使徒]の道程に障害はない。
人はみな等しく“神”の御元に召されるのです。」

「・・・とんだ恭順派ね。
アンタの言う“神”とやらは邪教の神[●●●●]・・・BETAの創造主[●●●]のことでしょ。
そんなのに詐称されたらキリストでも激怒するわ。
結局、人類に引導を渡す最悪のテロリストそのものじゃない。」

「おや、ご存知なかったのですか?
―――その通りです。
我が指導者[マスター]の願いは全ての民に救済[●●]を与えることです。」

「言ってることは“救済”でも、遣ってることは鏖殺[ジェノサイド]ってことかしら。
実際既に難民解放戦線[RLF]のリーダーであるアンタは、キリスト恭順派って言うカルト集団にかぶれて、BETA支配地域に近い難民キャンプから順番にジェノサイドを行って来たらしいわね?」

「・・・流石によくご存知で。」

「本来キリスト教は自殺も殺戮も許しては居ないと思うけど?」

「今や人類の唯一の救いは[創造主]使徒[BETA]が齎す平穏にこそあるのです。」

「・・・それはつまり、指導者[マスター]とやらの望みは、キリスト教も恭順派とも、実は全く関係無い人類総自決―――と言うことかしら。」

「・・・そうですね。
元を正せば私はアラーの信徒・・・今はそれ[信仰]さえも捨てましたから。
ただ祈れば救いを与えてくれる[偶像]など居るわけがないのです。
私は創造主[]の御心を体現しているだけですから。」

「・・・・・・。」

「さあ、貴女方も[創造主]の御元に召されなさい!」


凶気に満ちた貌が、ニタリと歪んだ。




ドンッ!!



鈍い音がした。
強化装備の薄い皮膜を強引に貫通して、胸に突き出た鉄パイプを不思議そうに眺める執事[バトラー]
多少の衝撃では打ち抜けない強化装備を貫いたのは、シルヴィオの全体重を乗せた渾身の突き。
角度次第で銃弾さえ弾く強化装備も、尖った切っ先には比較的弱い。
パイプ周りから鼓動に合わせて鮮血が溢れる。
緊縮した筋肉が血止めとなっているが,直径で5,6センチの穴が穿たれた心臓。
余りに綺麗に穿たれたため、逆にその鼓動を喪っていないみたいだが、二度と修復されることはない。
やがてその機能を失う。


「―――サイブリッドと言えど心肺は常人・・・だったな。」

「・・・馬鹿な・・・、何故君が・・・。」


執事[バトラー]が崩れ落ちる。


「何時までも同じ手法[ABS]が通用するなんて思ってないでしょうね?
ABSというネタが割れたら、当然対策は立てるモノよ。」

「・・・暗示に・・・掛かった振りを、した・・・と?」


シルヴィオの傍らには、怜悧な瞳で執事[バトラー]を見下ろす宗像が立っている。


「・・・要するに時代遅れってことよ。」

「・・・フッ―――私の闘争も、ここまで・・・ですか。
まあ、起爆キーは私のバイタルに直結してありますからじき発動、解除は不能です・・・。
―――起爆まで3分・・・逃げ切れたら貴女の勝ちですな。」

「・・・そんな時間保たないから、冥途の土産に教えてあげるけど・・・ソレ、起爆しないわよ。」

「な・・・?」

「何のために八雲[スペシャリスト]をミーミルから呼んだと思ってるわけ?
フィトンチッドやらアスベストやら媒介の新形態も在ったようだけど、所詮特定の機能を有する蛋白質。
既に爆裂系のABSはユーコンで見せてもらったわ。
性能向上を求めてベンゼン環合成を狙った発展形くらい予測できなきゃ到底BETAになんか挑めないのよね。
その為の“00ユニット”、よ。
人の筋肉にベンゼン環込みのニトロ基を生成する遺伝子なんて、ABSと称していても結局一種のレトロウイルスじゃない?
HIVを取り付けなくするワクチンがそんな杜撰なモノを寄せ付けるわけ無いでしょ。

ま―――、流石にカラスにまでは気が回らなかったけど?」

「フ―――
・・・成程・・・“魔王[00ユニット]”とはそこまでの存在ですか。
創造主が・・・求めただけの、ことは・・・あ・・る・・・。」

「・・・切り札は伏せるモノ・・・ってもう聞こえないか。」


現在判っているだけでも数万人の虐殺を先導したジェノサイダー。
その実態は創造主[]に帰依した狂信者。
敵は “創造主” ―――そう言い切った彼方の言葉が実感として理解できる。


「―――宗像、此処は任せるわ。
司令車両も潰されちゃったし・・・。
ソイツの身体は当面隠蔽、アタシの消息は不明ってコトにしておいて。
[緊急動議]の仕込みするから。」

「―――Yes,Ma’am、」


恭順派―――の名を借りたBITA集団、その指導者[マスター]・・・。
明確な創造主像、そしてそれを他者にも認識させる何らかの術を有している。
侮れない・・・。
彼方が警戒するだけの存在・・・ってコトね。


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