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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/06/10 23:26
'2016,06,10 upload  ※ごめんなさい、データに不備があり、修正しました



Side 夕呼


ドクンッ!、と一瞬だけ鼓動が跳ねる。

ずっと“A-01[伊隅ヴァルキリーズ]”の活躍を見ていたモニターでも、トライアルの終了とフェアウェル・パーティーの告知をしていたピアティフのセリフでさえが一瞬途切れた。


「・・・今のは?」

「・・・特に変わった動きは・・・・・・いや・・・ちょっと待て―――。」


目を閉じるのは集中するときの癖か。


「・・・・・・・・・この動き、・・・恐らくは“IGNITE”。」

「!!―――ッ」

「―――先刻レポートが来ていた例の件[●●●]が“発動”した、と捉えるのが妥当の様だ。」


応えるのは、アナスタシア。
他の第4計画メンバーは皆トライアルその他に出払っていて、此処B19に2人しかいない。
今の彼女は、この穴蔵のような執務室に居ながらにして、基地内外に設置された数多のセンサアレイを統合し、多重層デジタル・ビーム・ホーミングにより基地内人員全てのリアルタイム・トレースを行っている存在。
先刻の応えはその挙動に“異変”が生じた、と言う事に他ならない。


例の件[●●●]だとするとプラントの交換からまだ2日だったわよね?
たしか“臨界”まで4,5日ってあったけど・・・早くない?」

「さてな、・・・此処は横浜[●●]だからであろうな。」

「!!・・・そういう事、ね―――。
しかも“発動”したってことは、宗像も居ないのにシルヴィオが仕事してたワケ?、規模は?」

「・・・芳しくないな。
多点同時で生じている可能性が高く、範囲が広い。
警備部隊の戦術機大隊が担当警戒エリアを逸脱しようとている。
恐らく・・・アヤツではなく、“A-01[伊隅ヴァルキリーズ]”の結果に誘発されたと見たほうがいいだろう。
北ウイング、Cゲート近くのPXを利用している範囲がほぼ全域だ。」


言いながらアナスタシアがフラットディスプレイに基地全域のマップを映してくれた。
そこには、以前マーキングした要注意人物の動きと共に、新たに現段階で行動が怪しい人物がオレンジの輝点で示される。
それは北部PXを中心に、無数に散らばっていた。
取り敢えず―――戦術機はヤバいわね!

反射的にインカムを引っ掴む。


「ラダビノッド司令―――、香月です。
テロ組織[●●●●]による内部煽動の可能性が在ります!
即時、警備部隊戦術機及び機械化歩兵の火器管制を上位権限でロックして下さい!
同じく戦術機・機械化歩兵ハンガーの閉鎖を!
可能なら、データリンクで基地エリアの噴射跳躍制限、招待部隊には安全のためハンガー内待機指令が必要です!」

『―――警備部隊が命令を逸脱している。
・・・Um、了解した。』


インカムを切り替えながら訊く。


「アナスタシア?」

「・・・今のところ空母に動きはない。
司令の言うとおり、警備に当たっていた第6戦術機甲大隊[06bat]・・・オーガ隊(F-15J 陽炎)、ゴブリン隊(F-4J 撃震)、グレムリン隊(F-4J 撃震)は機密演習エリアに侵入しようとしている。
担当CP[オフィサー]が何度も帰投を命令しているが、―――応えはない。」

「予想目標は?」

「・・・恐らくはエリア51―――US割り当ての外部ハンガー。」

「!!、最悪ね・・・。
ったく、あの国はBETA被害諸国からどんだけヘイト稼いでんのよッ!
白銀ッ、“A-00[ヴァルハラ]”は出られる?」

『―――火器は演習[トライアル]用の空砲やペイント弾のまま換装していませんが、相手も火器管制下なら長刀で十分です。』

「スクランブルよ、基地第6機甲大隊を抑えて。
出し惜しみなし、エクステンデッド・モードで構わない。
命令に従わない場合は、威力に依る無力化も許可するわ。」

『Yes, Ma’am―――!、A-00、出撃する。
ん?・・・この位置ならアレ[●●]が使えるか―――。
OK、なら〈Thor-04〉[たま]〈Garm-02〉[委員長]は、念のため36mm装備後、追従してくれ。』

『『 了解(です)(したわ)! 』』

『行くぜッッ!』

『『『『『『『『 了解! 』』』』』』』』 

「・・・あと―――〈GhostHound-01〉[シルヴィオ]
今何処に居るわけ?」

『―――、メインゲートから、北ウィングに移動中。
隔離した一般区画に仕掛けるとは、な・・・無差別な拡散手段を得ている、と言うことか。』

「・・・伊隅ッ!」

『はっ!』

「“A-01[伊隅ヴァルキリーズ]”は全機実弾装備、 Valkyrie-04[宗像]を除いて可及的速やかに東側[●●]の警備に当たりなさい。」

『東側・・・港ですか。』

「そうよ、・・・空母には護衛戦力として2中隊残っている。
―――そこまで馬鹿じゃないことを望むわ。
Valkyrie-04[宗像]は至急GhostHound-01[シルヴィオ]と合流、“発症者”の状況を把握して。」

『『Roger、Mam。』』

「アナスタシア、一般“発症者”集団の対処は?」

「・・・レポートを信じるなら、意識を刈れば沈静化するらしい。
尤も中途半端な攻撃は、ヘイトを稼ぐコトにもなる。
大規模集団催眠の疑い在りと情報は伝えたから本部では、正常な第116機械化歩兵連隊の一部に、スタン・グレネード装備で既に展開中、・・・だが、数がな―――。
推定 “発症者”は・・・約2000―――。
機械化歩兵も101は非番で未稼働・緊急招集中、北ウイング配備の108連隊は・・・ダメだ、“発症者”側だ。」

「―――そう。」



極秘部隊を除く戦術機甲大隊だけで7大隊、支援戦車大隊や航空機、機械化含め歩兵連隊合わせれば、戦闘要員だけでも3000人に届こうかという国連太平洋方面第11軍。
整備や兵站等後方支援、つまり間接戦闘要員がほぼその倍の人数、更に通常軍属と呼ばれる戦闘には関与しない生活そのものを支える職員・関連業者を含めれば、15000人近い人員を抱える東アジア最大級の基地である。
その戦力は本来、佐渡からの脅威にさらされる此処横浜基地の防衛―――だと言うのに、春先に漸く揃えた部隊の初戦が“内戦”とは、皮肉ね。
基地の主な施設は、H-22のメインシャフトを利用した巨大な六角形のリフター群を中心に、北にCシャフトゲートを含む北ウィング、南東にBシャフトゲートを抱える南ウィング、そして南西に両翼とAシャフトゲートに通じる中央集積場が配される。
それだけでも奥行きで1km、幅で600m近い面積を有する。
外部に通じるのは、中央集積場の3方に存在するAゲート、Bゲート、メインゲートの3箇所。

因みに第4計画の専有区画はBゲートとメインゲートの間に別棟で存在し、そこからは斜坑リフターで90番ハンガーまで通じている。
90番ハンガーはH-22の最大横抗を利用しており、長い辺が1400m,短い辺でも800mあるL字型をしていた。
実際にはメインシャフトも90番ハンガーから更に深く33層まで通じているが、超大型のXG-70搬入出などの特殊な場合を除いては各層が隔壁で厳重に閉鎖されており、一般区画である第4層以下はその存在すら秘匿され極めて限られた者しか知らない。
一般区画は、北ウィングに基地戦術機関連のハンガーが集まり、南ウィングは自走砲や戦車、支援航空機等のピットが多い。
今回招致した部隊のハンガーは米軍や富士教導隊を除き、中央集積場に位置する。

当然これだけの人員を擁する広大な基地である。
PXは大小合わせ8箇所存在するが、中央集積場上部・Aゲート近くが本館であり、他に南北ウイングにも一回の食事で2000人前後が利用する大型PXがそれぞれ存在している。
今回、狙われたのは基地部隊の戦術機ハンガーに近く、当然衛士利用が多い北部PXだった。


―――ったく、タイミングが悪いわねッ!



昨日、舞い込んだ匿名[アノニマス]のリーク情報が、驚いたことにその後の調査で“本物”と判断され、彼方がH-1[オリジナル・ハイヴ]データの最終調整に集中する、と言う名目で潜入ミッションに出向いていた。
図らずも第5計画派絡みの施設で在る裏が取れたからだ。
尤も、それだけなら放置しても構わなかったのだが、ほぼ同時にユーコンと、そしてユーロファイタス社からもXM3LITEの不具合を知らせてきた。
ボード毎交換する正規版なら兎も角、既存CPUを使用するLITEではCPUのBIOS側にセキュリティホールが存在する可能性も皆無ではない。
余りのタイミングの良さにコチラの戦力を分散する策略である可能性が極めて高い、と言うか確定だが、不調の原因は不明であり、万が一ウィルスによる物であった場合データリンクを介して爆発的に感染する可能性もあるため、看過できる事態ではない。
横浜は残るメンバーで対処は可能と思われるが、XM3の対処は勿論、残念なことに潜入のような非合法[ダーク]工作が可能で、且つ自由に即応出来るメンバーが他に居ない。
選択肢の無い、嫌らしい手段だった。

・・・この辺が要員の少ないAL4[ウチ]の弱点―――ね。
それこそずっとβブリッド研究所を調べてきた“裏”にも使るシルヴィオは動かせないし、先刻用事を頼んだ鎧衣も今は帝都の闇から離れることが難しい。
そろそろ公開す[ブッちゃけ]ることだし、涼しい顔して鎧衣とも張れそうな斑鳩閣下でも引きこもうかしら―――?


・・・っと、思考が逸れたけど、先刻その彼方から届いた報告では、リークされた場所は本当に絶賛稼働中の第5計画派のβブリッド研究施設だった[●●●]とか。
処理[●●]含め、いろいろ突込みどころ満載な報告内容だけど、問題は最近そこから“出荷”された “フィトンチッド様指向性蛋白[ABS]”を放出する観葉植物の鉢植え[プラント]だった―――。


フィトンチッド―――植物が細菌殲滅や自己活性化の為に放出する一種の環境ホルモン物質である。
森林浴などで摂取することで、人間に対しても鎮静や免疫を高める効果が確認されている。
対して、細胞改変された観葉植物が指向性蛋白[ABS]として放出する反フィトンチッドは、その効果をそのまま反転して強化する向精神物質だった。
つまり不安・不満の増大を引き起こす効果を発揮し、そのまま蓄積された後4、5日で“点火”される、との事。
丁度、シルヴィオの性的興奮による精神波が、指向性蛋白[ABS]を投与されたキャリアーの脳内物質分泌バランスを崩し、極度の異常昂奮を引き起こすのと似ている。
ここで問題なのは、その作用が全方位的な感情爆発による“錯乱”ではなく、意識的無意識的に拘らず嫌悪や敵視している存在に対する明確で高い攻撃性を有するコト。
さながら白銀語でいう“ブチギレ”状態、条件付きの後催眠暗示の様に戦術機を初めとする既知兵器の操作が可能である。
蓄積が“臨界”に達していれば、本人の意識に基づいた指示なき半条件的暗示なので、シルヴィオの精神波に引っかかるけど、それは即ち“点火”。
そして“点火”された狂気は“伝播”により拡散するという、正にシルヴィオの能力に対する“[カウンター・トラップ]”に他ならない。

効果検証が行われた難民収容所の結果も添付にあり、食料の分配をめぐってで内部対立していた派閥同士が、最後の一人まで互いに殺しあったとか。
直後にBETA侵攻に飲み込まれたから、公式には避難指示遅れによる全滅となっているけど。

今回はこの“点火”が精神波だけで起きる訳ではなく、異常昂奮から“自着火”することもある、と言うわけね。
A-00[ヴァルハラ]”、そして“A-01[伊隅ヴァルキリーズ]”の披露が変な所で裏目に出た。

こんな剣呑なプラントは至極迷惑だから、徹底的に潰したらしいけど。
そして、事態の情報は得たけど発動してしまった以上、後塵を拝している―――今のところ、良いように振り回されている感があるわね。
彼方の報告を受けて、アナスタシアが調べてくれた基地のプラント交換は北地区のPX含め2日前の早朝。
一般区画への工作対策に隔離していたのに・・・プラントを交換した業者とその裏について鎧衣に依頼したけど、流石に元凶に繋がる証拠など残さないでしょう。
報告によれば“臨界”までの蓄積は4,5日との事だったから、発動にはまだ時間的余裕が有ると踏んでいただけに、後手に回った。

けど、これは横浜特有の事象を見落としたアタシのミス。
此処は、G弾の影響が残る重力異常地帯―――植物には過酷なエリア。
普通のプラントは1週間でだめになる。
そして件のフィトンチッドは、通常植物自身が自己調整の為に生成する物質であって、周囲が危機的状況に陥るほど放出されるものだから、基地に設置されたプラントはそれはもう盛大に有害物質を放出してくれたって訳。

けれど、このタイミングの“点火”は第5計画派にとっても想定外の筈・・・。
恐らくは、空母の停泊期限内に、“点火”による国連軍一般兵士の“暴動”を空母の兵力で鎮圧し、そのまま国連横浜基地に居座る算段―――。
問答無用と殲滅に来るか50/50と思っていたけど、ここはBETA鹵獲技術の奪取を目論んだ、と見たほうがいいわね。
―――だとすればCIAの外道[MOB]が考えそうな作戦[下策]だわ。

さて、この後はどう出てくるのかしら?



「―――夕呼、米軍部隊がハンガーを出た。」

「―――!」

「・・・トライアルが終了した今、国連軍の指揮下には無い、とさ。
―――空母に戻るらしい。
・・・基地内は噴射跳躍による飛行制限下にあるから、主脚走行機動でエリア外を目指している。
実弾の持ち込みは許可しなかったからな、丸腰は怖いんだろ。
即刻装備に戻るとは流石銃依存の国だ。」

「・・・ちょっとまって、第6戦術機甲大隊は?」

「同じく主脚走行機動で接近中―――米軍が動いたから、接触[エンゲージ]は3分後。」


―――想定より米軍側の対処が早い。
今の基地の状況を的確に把握している、と言うこと?


「・・・警備部隊の接近が解っていて突破しようと言うの?」

「当人たちは自分たちが攻撃対象と考えていないな。
待機命令違反の威力阻止程度・・・ならば、所詮警備部隊は“陽炎”と“撃震”―――、逃げるだけなら十分突破できると踏むさ。
・・・まあXM3を搭載したF-22A以下第3世代新鋭機なら、あながち間違いじゃない。」

「・・・“A-00[ヴァルハラ]”は?」

「無茶言うな、90番ハンガーだとリフターだけで10分かかる―――?
・・・ま、警備部隊は火器管制しているから、米軍が逃げ切れない事はない。」

「!!・・・・・・。」


そうだった・・・。
鑑や社の安全性も考え、“A-00[ヴァルハラ]”は90番ハンガーに居たんだ―――。

それにしても・・・想定外が多い。
なァーんとなく、嫌な予感がする―――。



「・・・基地内に居た米参加部隊の司令官(仮)は?」

「CPの混乱に何かを感じた様だ。
ヘリで空母に戻るらしい。」


そっか・・・やっぱりコイツ[●●●]、か。
最初の“走査”では、判別不明の“緑”だったけど、スパイフィルタ対策、と言うわけね。
他にも“緑”は米戦術機部隊内に3、一般整備職員にも3存在する。





ズンッッ!―――ズズ、ズズズ、ズンッ!!


それは音というよりは建物全体を揺らすような遠い振動、と共にフラットディスプレイの輝点が揺らぐ。
表示されていた一部が消えた。
この大深度地下にある執務室を揺らすって・・・?


「・・・・・・今度は?」

「・・・中々にやってくれる―――基地のアンテナ塔が一斉に爆破された。
爆発物は不明だが、結構な威力―――複数の通信塔、・・・管制塔上部含め軒並み破壊された模様。
フェイズドアレイレーダードームは無事だから、有線か建物内部通信であれば位置確認は可能だが、受送信端末を根こそぎ持って行かれた。
基地要員トレースも、通信に頼っていたセンサー群信号消失・・・追跡可能範囲は62%。
―――戦術機や本館周囲施設は追尾可能だが、離れた施設・・・外部ハンガーは監視が外れた。
横浜基地発のデータリンク消失・・・戦術機との通信が途絶。
基地戦術機の火器管制は有効だが、データリンク縛りの噴射跳躍制限は外れた。」

「・・・アンテナに爆発物?、それも複数って・・・。」

「―――少なくとも今回私がトレースを開始してから、そんな所に登った者は皆無。
今の爆発時に、飛翔体も確認されていない。
・・・それ以前に停滞工作員を使って仕掛けさせたにしては、・・・やたら数が多いな・・・。」

「そう・・・、当面原因追及は後回し、問題は影響ね・・・。」


・・・不味い。
後手後手で想定外の要素が多重に絡んだ。

―――どうする?


・・・・・・発症者の戦術機は“A-00[ヴァルハラ]”が出さえすればなんとかなる。
その前に米軍は2大隊の最新鋭機―――油断していたとしても発症者が襲いかかれば当然応戦する。
まさか火器管制された旧型に退けを取るとは思えない・・・。
潜入工作員や停滞工作員がネックだけど・・・、緑黄赤合わせても5、その寡数が残り67騎全機を相手に小細工を仕掛けることは出来ないだろう。
その上で帰投を強行するなら―――許可するしか無い。


問題は・・・、一般“発症者”集団が暴徒化したら、今の基地対応戦力では抑えきれない。
通信途絶じゃ帝国への支援要請も困難、距離的にも後手ね・・・。
と言って米軍に介入の機会を与えてしまえば、“A-01[伊隅ヴァルキリーズ]”との衝突は必至、敗けることは無いだけに逆にそれが問題―――。

米国に基地に介入する口実を与えないためには、米軍に損害を与えること無く可及的速やかな発症者鎮圧が絶対条件―――となればリミットは米2大隊が空母に帰投するまで・・・。
となると一般“発症者”集団は-――最悪、戦術機に依る殲滅[●●]も止む無し・・・ね・・・。
血塗れの聖母[Bloody Mary]・・・ま、今更だわ―――。

何れにしろ機械化歩兵の掌握は必須、A-0との連携も含め、通信回線の確保は最優先―――。


インカムを切り替える。


“Valkyrie Mam”[若宮(姉)]、状況は?」

『ハイッ、基地内主要な送受信アンテナが全て破壊された模様。
CP内、レーダー以外全ての外部との通信が途絶しています。
現在緊急用の簡易設置アンテナ設営を推進中、但し全チャンネル回復までは、30分以上掛かる見込み。
戦術機同士の通信は使えている様子ですが、残っている屋内用の無線LAN程度では出力不足でまともにつながりません。
あと、暫定的に移動戦略指令室の稼働も検討していますが、これは搬出するBゲートが東地区に在り、周囲に抗命者が多いため対応に苦慮しています。』

「!・・・アナスタシア。」

「・・・在るよ。
専用機密区画にもA-0大隊所属の移動戦略指令車両が。
メインシャフトのリフトで地上まで出し、光ケーブルでも結線すれば戦域内の通信はほぼ回復する。
ただ・・・」

「ただ?」

「A-0部隊の機密保持を考えると、稼働要員が居ない。」

「それは・・・、アンタなら?」

「―――ああ、FBWだから操縦も出来るし、全管制制御も可能だが、彼方が居ない以上、私が夕呼から離れるわけにはいかんぞ?
・・・まさか夕呼が此処[B19]から出るつもりか?」

「色々と状況が錯綜しているから、中継だけってワケに行かないわね。
リスクは承知、少なくともA-0大隊に関しては状況に即した指示が必要よ―――。」

「・・・・・・よかろう、ならば行こう。」


前線指揮なんてガラじゃないんだけど・・・ま、仕方ないわね―――。


Sideout



Side アルフレッド・ウォーケン(米国陸軍第66戦術機甲大隊指揮官・少佐)

国連横浜基地 演習エリア 17:45


ドンッッ!―――ドド、ドドド、ドンッ!!


基地司令の命に抗してハンガーと飛び出した。
周囲は既に日も暮れ、東の空に膨らんだ月が浮かぶ演習エリアを東進していた時、突如響いた連続的な爆破音。
一瞬遅れて届いた衝撃波に、機体がビリビリと震える。
見れば横浜基地本館の方角で幾つかの火が見えていた。


「―――CP、〈Hunter-01〉、・・・何だ今の爆発は?」


反射的に基地HQに居るCPに尋ねたが、応えはない。
網膜投影から映像が消え、missingの文字。


『〈Hunter-01〉、〈Hunter-02〉、メインデータリンクも通信途絶です。
国連太平洋方面第11軍HQ、乃至、あの炎の位置だと通信施設に致命的な損害が発生している模様―――、over。』

「・・・通信途絶か・・・。」


“事”が起きた際―――あの工作員はそう言っていた。
先刻の“異変”と言い、これが“事”ならば状況の撹乱とは?


『〈Hunter-01〉、〈Hunter-02〉、11時の方向に国連太平洋方面第11軍第6戦術機甲大隊[06bat]接近中―――。
勝手に家に帰るのを止めに来たかな・・・?』


チャンネルをオープンに切り替える。


「―――此方米国陸軍トライアル参加部隊、指揮官アルフレッド・ウォーケンだ。
どうも、この基地が騒がしいのでなるべく手を煩わさぬ様、我々は空母に帰投する事をHQに通告した。
貴隊は速やかに停止し、道を譲ってくれることを望む。」


しばし待つが―――応えは、無い。
そして停止するどころか寧ろ接近速度を上げ、帝国特有装備の74式近接戦闘長刀に手を掛けた事が解る。

再び、部隊内通信に戻す。


「ハンター隊、スパイク隊、お相手して差し上げろ。
どうやら色々と鬱憤が溜まっているらしい。
相手は長刀だが、横浜基地のデータリンクが切れている今、ステルスは有効だ。
一応、国際問題に成り兼ねないので、可能なかぎり穏便にあしらうだけにしろ。
イーグルやファントム相手に出来んとは言わさんぞ。」

『『『『『『『『 Roger That! 』』』』』』』』


どんな謀略が進んでいるのか知らん。
横浜で騒動を起こすのが第5計画派の狙いだとすれば、それに乗る気はない。


「残りの各中隊は、ハンター大隊が接敵、抑えている間に、噴射跳躍飛行で空母に帰投せよ。
これもデータリンク途絶に伴い、飛行制限は解除されている。
・・・誰が起こしたテロだが知らんが、制圧するにも弾が要るからな。」

『『『『『『『『『『『『『『『『 Roger That! 』』』』』』』』』』』』』』』』



相手は集まってくる1大隊分、36騎。
その動きからXM3装備はしている様だが、機体は第2世代:F-15Jと第1世代:F-4J。
しかも、どうやら火器管制が掛かっているらしく、突撃砲は担架にロックされたままだ。
それに気づいて余裕が出来た。
2大隊で一気に掛かれば殲滅も十分可能だろう。
だが、ここで無駄な軋轢を生じる必要はない。
同時に飛んでしまうのも在りだが、追跡されても困る。
なにかと堕ちてはいるが腐ってもF-22A、同じXM3搭載となった今、第2世代機に負ける要素は無い。
練度としては少しだけ向こうのほうが高いようだが、戦術機の応答が違いすぎる。
相手の数に1.5倍程度差があっても、余裕を持って抑制できる。
ましてスーパークルーズが可能なF-22Aなら追従は出来ない。

後方からは、F-18D“ホーネット”やF-18E/F“スーパー・ホーネット”の非ステルス機を先行して跳躍させ、A-12“アヴェンジャー”、F-35EMD“ライトニング”が続く。
ここから停泊している空母までは直線で10km弱、5分も掛からない。


そろそろいいか―――。

距離を取って一気に跳躍すれば、推進器の地力が違う。
火器が無い上にステルスも有効、飛んでしまえば悠々と振りきれる。


「スパイク中隊避退!、先に行けッ!」

『『『『『『『『 Roger That! 』』』』』』』』


残っていた半分、12騎が次々と離脱していく。
僅か数分の接敵。
それでも、相手の1/4は擱座しているし、噴射跳躍で追うものも居ない。

怪我くらいはしているかも知れないが、死んだ者は居ないだろう。
無言で襲って来たのはそちらなのだから、この程度で済んだことに感謝してほしい。


「―――Hunter各機、距離を取れッ!」


潮時だ。


「Hunter中隊、噴射跳躍、帰t」

『ぐわァァッ、』

『げッッ、き、貴様なにをする!?』

「?!、〈Hunter-08〉ッ、〈Hunter-11〉ッッ!」


跳躍に備え、後ろに退いた2騎が崩れた。


「〈Hunter-09〉ッ、〈Hunter-12〉ッ、貴様ら気が狂ったかッッ!?」


崩れたその影に、短刀[CIWS-1B]を持った2騎が幽霊のように立っていた。


『『  ・・・・[くぁswでfrtgyふじこlp;@あzsxdcfvgbhんjmk,l.;・:]  』』


チャンネルを開けば、低く聞こえて来たのは、東洋のマントラのような低く抑揚のない意味不明の音韻。


「!、―――後催眠暗示キー?」


そう呟いた瞬間、立ち尽くす〈Hunter-09〉と〈Hunter-12〉に近づいた機影。
気付いた時には、2機の動力部に突き立てられた短刀[CIWS-1B]―――。
舐めるようにスパークが、疾る。


『―――え?、あ、うあ、ウワァァァァ!』

『な、なにが、―――ヒッ!?』

「!!、〈Hunter-09〉[ジャン]ッ!、〈Hunter-12〉[テッド]ッ!、パージしろォォォォッッッッ!!」



―――Baganッ!!!!


2機がほぼ同時に爆炎に包まれた。
短刀[CIWS-1B]の突き立てられた位置は的確にロケット燃料と酸化剤の混合部、―――スパークが機体内部のロケット燃料に引火してしまった。
内側からの爆裂―――これでは遺体も残らない。



「〈Hunter-05〉ッッ!、貴様アァァァッッ!!」

『・・・悪いな、隊長。
〈Hunter-08〉と〈Hunter-11〉は細工[●●]が間に合わなくてな―――どうしても通信を先に殺す必要があったんだ。』

「―――ならば何故〈Hunter-09〉[ジャン]〈Hunter-12〉[テッド]を何故殺したァッ!?」

『仕方ないだろ、旧型の指向性蛋白[ABS]は、後催眠暗示が解けた後も残留しちまうんだ・・・遺体が残ればそれがバレるからな。』

「何、だと―――?」

『“発動”が想定外に早かったから、まだまだ機会は無いと見ていたが、―――まさかこんな所でお人好しの隊長が人道主義を発揮して、逐次帰投なんて千載一遇の好機を齎してくれるとはな。』

「・・・まさかッ!?、この襲撃までも“謀略”ッッ!!」

『―――もういいでしょう〈Hunter-05〉、あとは“彼ら”に任せましょう。』

『・・・だな。』


見れば、当然内紛を察したのか、残りの第6戦術機動大隊が間近まで迫っている。


「―――クッ!!、貴様もか、〈Hunter-10〉」

『ま、そういう事です―――、隊長、お世話になりました。
隊長の栄えある散り様は忘れません。』


工作員を尋問していながら、ここまで部隊内の侵蝕に気付かぬとは・・・。
白銀少佐に“御守”まで貰ったと言うのに・・・。
今思えば、根拠の無い指摘が出来ない故に、この事態を“警告”されていたのだろう。

先刻から試みているが、全チャンネルの通信が利かない。
横浜基地の施設が破壊されていても、10km先には空母が居る。
この距離で繋がらない訳がない。
少なくとも基地のデータリンク途絶後も、空母からのデータリンクは生きていた。
それさえ今は途絶―――、ハンター中隊のみの部隊内通信しか生きていない。

しかも、隙を見て飛びかかろうとしていたのだが、機体の応答がやけに鈍い。
通信と同じく、機動系の制御も侵蝕されているらしい。
〈Hunter-02〉以下、残された機もおかしな動きをしているから全て状況は同じなのだろう。
否、声がないところを見ると、部隊内通信も切れているのか。


―――コレがCIA[ラングレー]の、否、第5計画[“急進派”]のやり口かッ!
空母の整備兵を汚染したのは、通信と機動を阻害するウィルスを仕込むためッ!
既に工作は進行していたというコト!
つまりXM3の機能を再現できなかったソフトウェアメーカーに、その阻害方法を探らせていた訳か!

そしてトライアルに参加した“米兵”が、横浜国連軍の戦術機に襲われ、死者が出たとなれば米国の世論は炎上する。
米国を動かす最大のきっかけ―――それは米国人の犠牲!
暴動の鎮圧をする事ではなく、その鎮圧に当たった米兵を犠牲にする・・・それが“目標”。
そうなればもう急進派も穏健派もなく、国連上層部も到底抗しきれない。
暴動に依る国連内の内紛ではなく、米国そのものを動かすためかッ!



噴射跳躍の姿勢を取った2機に、鈍い動きで漸く突撃砲[AMWS-21]を向ける。

コイツラが戻れば、死者は良いように冒涜され、汚れた陰謀のイグニッションにされる。
平然と同胞を手に掛ける―――コイツ等だけは、逃がすわけに行かない。
その罪を白日のもとに晒したいが、叶わぬ願い。


『ペイント弾か?、ハハハ、今更何のマークにもならんがな。』


嘲笑を、凌ぐ。

横薙ぎの36mm砲掃射が、2騎の噴射跳躍装置を穿ち、両下肢を引き裂く。
昨日情報を受け取った際“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”に“御守”として一連装100発だけ貰った36mm弾。

地面でのたうち、喚き叫ぶ下衆を無視してチャンネルを切った。
既に残弾は0、無言のままの国連部隊に囲まれている。


―――スマン、マリア・・・ブライアン・・・。


振り上げられた74式近接戦闘長刀に、晩秋の月が映えた。


Sideout



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