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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/14 13:10
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'16,05,14 誤字修正



Side 武


それは・・・何と言う異容[●●]―――。


網膜投影に広がる広大な天地―――。
その眼下に見えるのは、平坦に均された凡そ直径10kmにも及ぶだろうクレータ状の窪み。
所々刺々しい破片状の岩が散るだけの荒涼とした乾いた大地の中央に、それは唐突に存在していた。
物理法則をねじ曲げて積み上げたような巨大な地上構造物[モニュメント]―――地上高にして1000mを優に越える違和感の塊、これこそが正にBETAの巣窟・ハイヴの象徴。
上から俯瞰して尚その巨大さが覗える程の巨塔が空を侵すように聳え立っている地下には、更に膨大な存在――。

まるで周囲の空間さえ禍々しく歪めているような、これが・・・オリジナルハイヴ―――。



1973年に落着した地球上唯一の外来起源ハイヴであり、その刻まで[ほしいまま]に文明を謳歌していた人類に対し、ここまで急速な衰退を強いた全ての元凶でもある。

今や宇宙からも視認できる地球最大のフェイズ6である喀什[H-1]ハイヴ、無論衛星写真や、小さな遠景では何度も見たことがある。
しかし、一方で此処迄細部に渡り鮮明な俯瞰映像は、繰り返して来たオレの傍系記憶に照らしても未だ嘗て見たことがない。
それもそのはず、1周目の世界では幾度繰り返してもオリジナルハイヴなど見える位置に辿りつくことすら叶わなかった。
恐らくは唯一の機会だった前回2周目の軌道降下でも、地上から間断なく晒されるレーザー照射が激しすぎて、まともな視界が確保出来ていなかった。
唯一帰還時の脱出用SSTで、遠く離れていく崩れかけのモニュメントを網膜投影の片隅で垣間見た気がするが、その時も意識は喪った仲間たちのコトで頭がいっぱい、まともに認識もして居なかった。


・・・抑々がこの視点でオリジナルハイヴ全景を見ることなどありえない。
なにせ、この画角が取れる高度を飛行しようものなら、即座に高出力レーザーで蒸散されて仕舞うのだから・・・。



―――XM3トライアル、その3日目。
V-JIVESの起動と共に、いきなり参加全機が喀什上空に放り出されたわけで、最初はざわめいたものの、眼下の異容に誰もが気を呑まれ、やがて言葉も出なくなっていた。






オレ自身、今日のトライアルがオリジナルハイヴ・アタックであることは知っていたが、この段取りは知らされていなかったので度肝を抜かれた。
これがV-JIVESであることを思い出し、網膜投影に説明を付記しその規模を示してみれば、透視画像がオーバーレイされる。
この位置からでも末端のスタブは地平線の向こうまで至り、その半径は100km超、実効支配体積は実に42000立方kmに及び、そこに存在するBETA数は詳細が明らかになるに連れて増え、今では推定300万を超えると見られている。
フェイズ5に近いフェイズ4ハイヴである佐渡ヶ島[ H-21]の実効支配体積がおよそ2000立方kmだったはずだから、その約20余個分―――要するに地球上に点在する他のハイヴを全てまとめただけの規模が、此処一箇所に存在することになる。
―――文字通り桁の違うハイヴであった。


『―――本当に・・・コレに挑むのか・・・。』


初めて目にした敵の本拠。
オープンチャンネルには、その余りの巨大さに気圧されたどこかの衛士の呻くような呟きが空虚に響く。
BETAと戦っている最前線の衛士でも、オリジナルハイヴを生に近い視界で見た者など皆無。
その途轍もない規模に全員が圧倒されるのは仕方ないコトだろう。

考えて見れば、BEATに荒らされていない元の世界にだって、地上高1,000mを越える建築物は、まだ存在していなかった。
つまりは地上構造物[モニュメント]ですら、人類を遥かに凌駕している。
ましてや、全地下茎構造の規模と言えば、BETAの脅威にさらされる以前の世界最大都市の規模をも越えている訳だ。



だが、オリジナルハイヴがどれほど巨大であろうと、この異容の向こう側にしか、人類の未来は無い―――。




勿論、今俯瞰しているのは現実を極めて忠実に再現したV-JIVESモデル―――。
謂わば第4計画の粋を集めて作成されたオリジナルハイヴのフルモデル[●●●●●]、これが今回のXM3トライアル最終日の攻略対象でもある。

実際この情報だけでも、今までのループと比べれば篦棒なアドバンテージだ。
純夏が00ユニットとして蘇った2周目の世界では、人類の戦略と引換に地下茎構造の詳細を手に入れたのが精一杯。
こんな3次元の超精密データや、それをシミュレータに組み込むなど考えることもしなかった。
だが、今回の世界・・・純夏が蘇生され、“森羅”によってODLの劣化制限を気にすることもなく稼働できる00ユニットにより、ループ世界の記録までが再現された。
そこにオレの持つ桜花作戦の記憶を重ね、そして更にXSSTやその他大量の無人観測機器によるデータの収集から、細部を煮詰めをずっと行なってきた。
そして今日、遂にこの規模のV-JIVESモデルを完成、披露したと言うわけだ。

最初にオリジナルハイヴの異容に圧倒され、次にそれをシミュレーターレベルで正確に再現している重要性に気付いた一部の目敏い者たちが、別の意味で顔を引き攣らせているのは仕方ないことだろう。
この一連のトライアルは、当然夕呼先生の緊急動議に向けた一種のデモンストレーションとしての側面もあるのだ。




『XM3トライアル参加の皆様―――』


そこで漸く事務局側ピアティフ中尉のナレーションが入る―――と、言っても内容は知っている。

―――曰く。
攻め方は自由、戦術機のみの攻略。
目標は反応炉:あ号標的、制限時間は17:00までで、基本中隊単位の侵攻だが、他の中隊との共闘も可能。
無論本来オリジナルハイヴの攻略には軌道降下というプロセスが必要となるが、いかなXM3とて降下中のレーザー照射に関しては全くの無力。
今回はXM3の機動を体験してもらうトライアルなので、敢えてそこは省略し、スタートであるこの俯瞰位置から指定した開口“門”に突入し侵攻を開始する。
途中中隊機が全滅したらその隊は攻略をリセットされリスタート、―――と言うわけだ。
またハイヴ内から全ての戦術機が排除さた時点で、BETAの配置も初期化されるが、それ以外は継続的に攻略、となる。
つまりは時間内なら、何度でも挑戦出来、その際のデスペナも無い親切[鬼畜]設定・・・。


―――無論そんな甘いもんじゃない。

先の理由で地表におけるレーザー照射は存在しないが、実はこのミッションには難易度設定が無い。
言うなれば観測されたありのまま[●●●●●]、と言う単一難易度―――つまり現実の喀什をマジ嫌味なほど正確に再現した御子神彼方渾身のMAPである。
その内容は推して知るべし、なのだ。
今までのヴォールクを模したシミュレーションとは、比べる事すら意味のない、異次元の難易度であることなど当然の帰結でしかない。
それはマジで参加者にPTSDを発症しかねないレベル―――しかし人類が置かれた“現実”を認識してもらうためにも必要なこと。


そして今回、A-00も機体はXFJ-01、Evo4とはいえG-コアは封印しバラストを設定したノーマルモードのまま挑む。
本来必要のないダミーの増槽まで付けた[さなが]ら“縛りプレイ仕様”。
故に燃料消費は既存の戦術機よりも若干向上した試製XFJ-01相当に設定されているから、全力機動をすれば1時間程度、背面に増槽を装備しても2時間半が限界。
実際のスタブ内侵攻であれば、熾烈なオリジナルハイヴのこと、保っても3時間前後だろう。

以前207Bの皆に追体験して貰った架空の銀河作戦[Op.MilkyWay]では、反応炉到達までが約2時間、その後オレは単騎で脱出・帰還した事になっている。
実際は、前回の桜花作戦を基本にそれなり[●●●●]に再構成したものであるのだが、何よりも凄乃皇四型が存在しない条件でも、現実と齟齬の無い様に完璧に造り込んだ彼方はやっぱりマニアック。
当時の不知火にXM3を組んだだけの性能でありながら、反応炉到達だけならギリギリ生還可能な設定がきちんと組まれていた。
その後207Bに頼まれてVRSによるシミュレータにした後も、一切破綻が無いほどの完成度らしい。

尤も、あの堅い反応炉:上位存在を殲滅するコトが、H-1攻略上の最大の難関とも言える。
前回体験した桜花作戦に於いて、凄乃皇四型の役割は正にそれ、荷電粒子砲による問答無用の反応炉殲滅であった。
他にも侵攻途上、軌道降下時のレーザー防御、S-11による密集BETA殲滅時のバリア、随伴する戦術機の増槽・弾薬庫も兼ねてはいたが、引き換えに一方では図体がでかくてルートが限定され、侵攻速度が稼げず、過度に密集してくるBETAに手間取ったのも確か。
最後まで対反応炉攻撃手段であった凄乃皇四型を守りぬいた皆の献身と、不安定な情緒の純夏が頑張ったからこそ届いた成果でもあった。

・・・だが、やはり犠牲などは認められない―――ッ!!



実は、リアルな喀什攻略の布陣はまだ決まっていない。
少なくともオレはA-00・A-01誰一人も欠かさずに喀什[H-1]に至るつもりであり、今後のG-6[グレイ・シックス]確保量次第で、布陣も戦略も変更される。
G-コアの恩恵により継戦能力や侵攻火力に不足はないから、本番では寧ろ楽に出来るだろう・・・。

・・・とは思うが、その慢心こそがフラグ[●●●]であることも重々承知している。
未だ支配因果律が人類に傾いているとは言い難い状況、常に最悪を想定する必要がある。
だからこその“縛りプレイ”、即ち“A-00中隊による試製XFJ-01モードでのオリジナルハイヴ反応炉破壊”だった。





『―――それでは、トライアル開始してください。』


ピアティフ中尉の開始の合図に、思考が現実に引き戻された。

参加は、16中隊―――。
その半分は、取りあえずの小手調べとばかりに即座に吶喊を敢行する。
オリジナルハイヴ攻略などそうそう経験できるものではない。
我先に突入するのは、連携の取りにくい寄せ集め部隊だからか。
残りは、データに示される詳細を確認しながら戦術の構築、と言ったところ。

尚、G-コアに依存しない試製S-11X炸裂弾と試製74式“改”近接戦闘長刀は使用可能。
これは不公平の無い様、他の中隊でもV-JIVES内で選べるサービス・オプションとして提供してある。
富士教導隊から参加の3中隊は勿論早速装備していた。

一方の米軍は数の利を活かして共闘らしい。



『・・・さて、A-00はどうする?』


A-00中隊の参加は、実質的に8騎10名。
本来A-00中隊所属となっているフレイヤ小隊は、実質冥夜の警護、つまりV-JIVES中無防備となる現実の戦術機周辺警護に当たる為、トライアルには参加していない。
結果オレが小隊長を兼任するトール小隊は〈Thor-01〉[オレ・純夏]〈Thor-02〉[冥夜]〈Thor-04〉[たま]に、単騎の〈Fenrir-01〉[篁大尉]が編入された4騎5名となる。
一方、ガルム隊は、〈Garm-01〉[まりもちゃん・霞]が複座と成り、〈Garm-02〉[委員長]〈Garm-03〉[あやみね] 〈Garm-04〉[美琴]の同じく4騎5名となった。
無論純夏は“森羅”、霞は“天地”装備であり、これらもG-コアに依存しないアドバンテージであった。


―――因みに大隊顧問である彼方は参加していない。
篁大尉の言に拠れば、流石の彼方もこの超大規模V-JIVESとなるMAP“オリジナルハイヴ”の最後の調整にギリギリだったらしい。
とは言え、恐らくは本番でも、彼方はRes-G弾の管制に回る事になるだろう。
永きにわたるループ、上位存在[因縁]とはA-00で決着[ケリ]をつけたいオレの我侭でもあるのだが・・・。


『―――SW-115を具申します。』


声を上げた委員長の希望は、その史実[ループ]通り、・・・か。
細部の精細データを必要としないVRSでは、既にオリジナルハイヴのシミュレーションは可能だったから207Bの皆で相当数の試行錯誤を繰り返していたはず―――。
それなりに練った戦術を検討してきたと見られる。


『・・・まずは正攻法[セオリー]、か。
・・・なら各自の案を順番に試してみるのもいいかもな・・・。

OK―――、許可する。

・・・じゃ、行くぜッ!
―――A-00中隊、陣形ウェッジⅠ、突入するッ!』

『『『『『『『 Yes,Sirッッ! 』』』』』』』


Sideout




Side XXX(とあるXM3トライアル参加衛士)

国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES 10:00


コレは―――、悪魔の巣窟・・・否、神の怒りか・・・。


我々だって、祖国ではTOP-GUNと言われる部隊、その選り抜きである。
装備は最新とは言い難いが、それでもヴォールクシミュレーションでも上層突破を確実にこなしていた精鋭、でなければこのXM3トライアルに参加など出来ない。
この2日間のトライアルでXM3を確保し、教導によりその機動が格段に向上したことも認識できた。
これなら中層下部まで行ける―――、そう言う自負も在った。


だが、その希望は無残にも打ち砕かれ、持っていた矜持は微塵に粉砕された。




―――何と言うハイヴ、何と言う規模。


ヴォールクシミュレーションに設定された総BETA数は10万。
しかしこのオリジナルハイヴでは、大広間一つに10万のBETAが存在することすら起こるのだ。
そう・・・広大な大広間を埋めるBETAの“壁”など初めて見た。
厚みも判らないその壁は、120mm砲程度では抜けもせず、気がつけば天井に張り付いていた要撃級が視界を埋め尽くすまでに降り落ちてくる。

突入から僅か15分で、中隊は全滅した。


コレがシミュレーションではなく現実のオリジナルハイヴそのものだと言うなら、最早人類に勝機は無いのではないか・・・?
のしかかる圧倒的な敗北感。

XM3による機動性向上の高揚が大きかっただけに、そのXM3を以てしても全く攻略の糸口すら掴めない超巨大ハイヴに底知れない絶望感がひろがっていた。




時間的に多少の前後はあったものの、16中隊・合計188騎、戦術機甲部隊2連隊近い規模で様々な開口“門”から同時侵攻しているのである。
今回はXM3トライアルと言う事で、軌道降下は端折ったが、現実の戦術ではレーザー照射との戦いである。
有効な降下軌道の確保、予測される損耗率から鑑みて、オリジナルハイヴ侵攻時、結果的にスタブ侵入出来る戦術機は最大数でも2連隊規模しか残らないだろうとの予測がある。
恐らくは、その結果も踏まえ、こんなシミュレーションを実施しているに違いない。

それでも統制の取れた16中隊が侵入すれば、内部のBETAもそれなりに分散する、との見込みもあった。。



だが・・・。

そんな希望的観測は、一瞬で霧散。



それは、押し寄せるBETAの“津波”―――。
その途方も無い圧力にたかが12騎の中隊が抗えるわけも無かった。

津波は、一山越えればそれで済む一過性の“波”ではない。
謂わば“段差”であり、延々と押し寄せる果てしない“壁”なのだ。

その津波が、一度[ひとたび]狭いスタブに注がれれば、チューブから押し出される充填剤そのもの、迫り来る“壁”にもはや隙間など無い。
1個中隊が一瞬でBETAに沈む程の氾濫―――。
・・・スタブを満たすBETAに、反撃など何の意味も無かった。


火山の大爆発や巨大津波・・・時に世界で起きてきた大規模災害。
伝えられる言葉では理解しているし、状況を想像出来ない訳でもない。
―――だが、現実にそのモノを目前にしたときに覚える、身体の芯・魂の奥底から震えるような、絶対的・圧倒的な畏怖は、実は自ら体験したものにしか判らない、と言うコトを唐突に理解した。
人間の余りの矮小さと、正しく“神”さえ感じる大自然の脅威には、余りにも隔絶した“差”が厳然と存在することをその“瞬間”、初めて理解できるのだ。


―――そして、今、そのコトを理解した・・・理解してしまった。
これがシミュレーションで在ることすら意識から吹っ飛んでいた。
BETAの渦に呑まれ、絶望に沈み―――気がついたときは、ハイヴ上空―――スタート地点に居た。



カチカチと耳障りな音がする。
歯の根が合っていない。
と言うか・・・。
何時までも身体の震えが抑えられない―――。
部隊内回線からは、同じような音が聞こえ、同じ中隊の誰もが声を発せない―――。

漸く、今の体験がV-JIVESという“仮想現実”であることを認識できても、あの恐怖を拭い去ることが出来ない―――。


そう、このシミュレーションが正真オリジナルハイヴの“現実”であるのなら、BETA禍は正しく“自然の脅威”=“神の怒り”にも等しい。

コレに抗うことは―――反逆とまでは言わないが、つまりは“神”への“抗命”ではないか!?




震える手で漸くデータリンクを拾えば、その状況は、どの中隊も変りない。

広域のエリア通信から絶え間ない絶叫や悲鳴に混じって聞こえるのは、贖罪であり、祈りであり、慈悲を請う哀願ですらあった。
モニターに示されるデータでは、最新鋭機を数ダース単位で持ち込み、XM3に換装されたことでその戦闘力を大幅に向上させたはずの米軍“2大隊”規模が為す術もなく削り取られて行くのだ。

―――そのまま魂さえ磨り潰されるような、絶対的な恐怖。





トライアルの開始から未だ、たった1時間・・・。
いきなり突入して10分で戻ってきた中隊も、そして最初の30分で侵入経路を模索して挑んでいった最大規模の米軍も、今や全てがハイヴを俯瞰する位置に戻っていた。

―――だが、2度目の侵攻を開始する隊は未だなく、デブリの検討を促す言葉すら出ない。



気がつけば・・・、どうも思考が何度もループしている。

あの“壁”を打ち壊すイメージが、全く出来ない。
解く[いとぐち]が見えない、と言うか、その緒を探す気にすらなれない―――。


完膚なき諦念―――。

自分の心がたった一度の侵攻[トライアル]で、ポッキリとへし折られたことを、漠然とだが理解していた。
















『・・・おい、スゲーぞッ!』

A-00[ヴァルハラ]中隊だよ、横浜基地の!
白銀の雷閃[シルバーライトニング]”だッ!』


唐突に入ってきた音は、エリア通信に繋がれているオープンチャンネル、モニタールームの音声。
トライアルで開放されているモニタールームでは、全部隊のモニタリングが出来るようになっていた。
また、V-JIVES参加機の場合この上空待機状態ならデータリンクで各中隊の進行具合を確認することも出来た。

V-JIVESに示される他隊の情報・・・突入した全ゲスト[●●●]隊は既にリスタート位置に戻されていたが、ハイヴのカウントが止まっていない―――つまりまだあのオリジナルハイヴで戦っている者がいると言う事―――。

V-JIVESのモニターモードでは、全部隊を俯瞰することは出来ないが、メインカメラ画像と通常音声のみであれば参加している他隊機体のクローニングをすることが可能だった。
参加リストをスクロールすれば、確かにA-00中隊8騎に、“継続中”、の標記。
A-00中隊―――単騎世界最高戦力である“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”を隊長とし、新潟防衛戦で A-01[ヴァルキリーズ]と共にその名を馳せた国連横浜基地所属の中隊でありこのトライアルでも模擬戦や教導も行ってくれている。
既に一部では知られた存在であったヴァルキリーズが招く戦士の館としてこのトライアルに参加した衛士から“ヴァルハラ”中隊と呼称されていた。


・・・現在位置は―――N層ォッッ!!??

2大隊の米軍がC層にも届かなかったと言うのに??

最深部Z層まであるこの超弩級サイズを有するオリジナルハイヴで、いきなり中層以下に侵攻していると言うのかッ!?


更にリストから選んでクローニングを繋げた先は、―――確か全体を俯瞰できる後衛の砲撃支援[インパクト・ガード]ポジションだったはず・・・。




「―――ヒィィッッ!!」


視界いっぱいに拡がった光景に、自分の喉から情けない悲鳴が漏れた。
発信がクローズで恥ずかしい想いはせずに済んだが、同じような者が多く居たのだろう、オープン回線からは小さな悲鳴や息を呑む気配が伝わってくる。

それは、先に体験したBETAの壁―――仄蒼い広間全体を埋め尽くし、蠢き、立体的な津波となって迫り来る“絶壁”。
―――そのまま呑まれて、蹂躙されたトラウマが甦る。


だが―――。


『距離残200!
目標8の10―――ッ!!』


誰かの指示が飛んだ刹那、“壁”の一部に全機からの砲撃が集中する。
その集中された射撃に崩れかけ、僅かに向こう側の蒼い壁面が透けた時には、白とオレンジの武御雷[ Type-00]が何の外連なく吶喊していた。

瞬時に切り崩され、穿孔された壁の一角―――無論他のBETAが穿たれた“穴”を埋めるべく表面がさざめく。
が、そのタイミングを熟知していたかの様に、残りの6騎が交差しつつ抜けていった。
それすら昔のアクション映画を見ているような鮮やかさ―――。


―――これは・・・作られた映像でも見せられているのか?


BETAの壁を抜けて広がる視界、迫るスタブ壁面をロールで躱すと、そのまま信じられない速度で目に見えた挟路に突入する、―――その直後、背後で閃光が生じた。


「な・・・・・・10万の群れを、一撃・・・だとッ!?」









瞠目―――。


その後我知らず息を潜めるまま10分も見続け、A-00[ヴァルハラ]中隊が何をどうして此処迄達しているのか、漸く理解が出来た。
A-00[ヴァルハラ]の戦術は、敢えて広めの経路を選択し、広間毎に内部のBETAを誘引しては、僅かに出来る隙間や、壁の薄い部分を強引に突破、一方向に固めたBETAをS-11やS-11X炸薬弾で殲滅、後続のBETAが追従できないように挟路は折に封鎖しながら奥へ奥へと侵攻しているのだ。

その速度は、BETAの圧力に脚を止めざるを得ない我々の比ではない。
音に聞いた“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”の超絶的な突破力―――しかし追従する中隊の誰もがそれに呼応するだけの資質を有している。
正しくあの“プラチナ・コード”を髣髴とさせる機動―――無論、その技量は遥かに高いにしても、XM3の機動を知った今、理解できないことはなかった。
最大の差は―――何よりも、あの膨大な質量で立ちふさがるBETAに一切臆することなく、果敢に吶喊する強靭な精神―――。


先程のナレーションでは、このオリジナルハイヴMAPは昨日完成したばかり、横浜基地要員でも初挑戦ということだ。
当然、開発途上の試行くらいはしていそうだから完全な同一条件とは言えないだろうが、此処まで至れると言うのか・・・。



侵攻が速い。

速いが故に周辺から集まってくるBETAが少ない。

だが、その侵攻を阻んだのは、これまで見たこともない巨大な隔壁であった。



このシミュレーションモデルを構築したのが、謎の“第4計画”で在ることくらいは、知っている。
XM3、新潟防衛戦で出現した“Amazing5”、全てがその“第4計画”から齎されているコトも。


その巨大隔壁を前にした時、網膜投影にAR表示がポップアップする。
それは、隔壁の開閉手法であり、一種のハッキングによるハイヴ機能の誤作動を生じさせるギミック。


―――こんなコトまでをも第4計画は把握しているのか・・・?


但し、ハッキング作業時間、そして解放に必要な時間は10分前後―――。

集中&殲滅で尽く追撃を減らし、狭路の爆破で周辺BETAの集結を阻んできたA-00[ヴァルハラ]、その時間は十分に確保できている筈だった。


―――もしかして・・・、―――イケるのか・・・?
シミュレーションとはいえ、初挑戦で届くと言うのか・・・?

この戦術は、XM3慣熟の必要性は在れ、自分たちでも可能・・・ならば・・・?




だが、やはり万魔殿たるオリジナルハイヴ―――。
芽生えたその淡い期待も、次の瞬間、儚く消えた。



『!!、追撃BETA、上部R層に集結ッ!!
・・・後方から迂回した模様、体積からの予想総数―――30万!
―――層を抜こう[●●●●●]としていますッッ!!!』

『な―――ッ!!』


悲鳴のような報告に、流石の“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”ですら絶句。


『―――クッソ!・・・追撃路を念入りに潰しすぎたって訳か―――。
床貫き[●●●]とは、遣ってくれるぜ―――。』


・・・そう、最大限持てるS-11を有効に使い、堅実に封鎖してきたルート。
だが、その確実性が裏目に出た。
ルートに沿った再掘が困難と判断したBETAは、大群を迂回させたのだ。
BETA個体にその様な“戦術”が可能なのか疑問だが、何しろオリジナルハイヴ内のBETAのである。
反応炉が噂される様な“頭脳”級なら、オリジナルハイヴのそれはつまり親玉、その位の指示は出しそうだ。

しかも横から侵攻して来るならまだ対処の方法はある。
だが、30万のBETAが降ってくるその圧力は、防ぎようがない。


『“門”級を爆破―――っても数が足りない、か―――。』


計画的に使ってきたのだろう、想定外の事態に対処できるだけのS-11は既に手元に無い。




結果、A-00[ヴァルハラ]は最後の最後まで粘ったが、30万の圧力は如何ともしがたく、降り頻るBETA群に沈んだ・・・。









モニタールームの観戦者含め、場を沈黙が支配する。


あの、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”麾下A-00[ヴァルハラ]中隊でも攻略は不可能なのか―――。







『―――次は、SE-89から侵攻する。』


な―――!?


モニターしている全員を驚愕させる、凛々しい宣言が為された。
重い沈黙をあっさりと破り、間髪入れずに告げたのもまたA-00[ヴァルハラ]中隊。


―――――ッッ!、コイツ等全く折れてないし、一切諦めてないッ!?


それを証明するように、復帰したスタート地点、殆ど間髪も入れず、只の一騎も遅れることなく、SE-89に吶喊するA-00[ヴァルハラ]中隊の姿があった。

















―――静まり返ったモニタールーム。

響くのは、A-00[ヴァルハラ]中隊メンバーの荒い息遣いのみ。


今三度、オリジナルハイヴを俯瞰するスタート地点に浮かぶA-00[ヴァルハラ]中隊―――。


彼らはあれから2回・・・計3度の侵攻を試みた。


隔壁まで至った最初の侵攻に続き、2度目の挑戦では殆どルート取りのみで見事にBETAを引き離すを侵攻をしてみせた。
十分な距離を稼いで辿り着いた隔壁前には、しかし、巨大な新種のBETAが立ちふさがっていたのだ。

母艦[キャリア]級―――。
各地の防衛戦で大量のBETAを地下から運ぶと言われる姿なき運搬者―――それがシミュレーションの中とはいえ初めて姿を見せた。
それは直径だけで150mを超え、長さに至っては2000m近い超大型ワーム型BETA。
細かいルート取りから時間を要し、隔壁に到着したときには開始から2時間が経過していたことで、隔壁前大広間に出現[ポップ]していたらしい。

その巨体に一瞬も怯むことなく攻撃を開始したA-00[ヴァルハラ]は、S-11Xの多用によりその母艦級さえ撃破した。
しかし、そこで予定外の時間を必要としたため、結局後続BETA群の集結を許し、再び隔壁解放にまで至らずに終わった。



一山10万を超えるBETA群の無限湧き、立ち塞がる強固な隔壁、―――そして時限式で出現する超巨大新種BETA―――。

余りに高いハードル、超えられない壁。

A-00[ヴァルハラ]の侵攻でどうすれば切り込めるのか、それは理解している。
ほぼ観戦するに留まっていた中にも、自ら試そうと言う剛の中隊が在る。

だが、昨日からXM3慣熟を始めたビギナーと、A-00[ヴァルハラ]との練度の差は歴然―――。
思い知ったのは、まだまだオリジナルハイヴに挑む、その最低限のレベルにすら達せて居ない現実。

否、あのA-00[ヴァルハラ]ですら、反応炉にすら達していない。
オリジナルハイヴ攻略には、どれだけの時間が掛かるのか、・・・そもそも、それが可能なのか―――?

そんな疑念が支配する。




・・・それでも彼らは諦めなかった。


他の中隊が全滅しリセットの掛かった3度目、今度はNW-57から侵入すると、ガルム小隊が完全先行を始める。
多数のBETAを誘引して囮となり、侵攻路を確保するすることでソール小隊を迅速に隔壁のある大広間まで至らしめた。
無論それぞれが10万を超えるBETAを誘引したガルム小隊員は、その殆どを道連れにS-11の閃光に飲まれている。

その犠牲在ってか、遂には隔壁の突破にも成功し、初めて見る反応炉:あ号標的まで辿り着いた。


だが、しかし、そこに待ち受けていたのは更なる絶望―――あ号標的と呼称される反応炉。
最後にして最大の試練[ラスボス]―――重頭脳級であった。
それは今まで知られている攻撃力を持たないと言われていた反応炉とは、完全にモノが違う。
反則なまでに堅い、無数の触手衝角、その突破力。

それでも2騎の武御雷[ Type-00]が、その超絶した剣技で乱れ飛ぶ触手の攻撃を防いでいたが、いかんせん残るのは1小隊たったの4騎―――。
囮となり自爆したガルム隊の分、完全に火力が不足―――。

3度目の作戦中、白銀少佐が機嫌悪そうに何も言わなかった理由もなんとなく理解した。
自己犠牲による突破では、“足りない”コトを知っている、―――と言うことか。

そしてその危惧通り、―――結果、押しきれずに消耗して終了した。




中隊以上の規模では、迫るBETA群からの回避行動を行う空間的・時間的猶予が取れず崩壊必至。
と言って中隊規模では部隊の半分を犠牲としなければ、目標に届かず―――。
そしてその半分の火力では殲滅しきれない存在・・・。

完全に攻略など不可能な設定[ムリゲー]だとしか、思えなかった。

これがありのまま[●●●●●]のオリジナルハイヴだというなら・・・。
余りにも重い現実―――。

オリジナルハイヴの反応炉到達という快挙、あとはイケる―――と見ているものの期待も勝手に膨れ上がっていただけに、その厳しい現実を突きつけられ、消沈も一際激しかった。


オープンチャンネルのそこここでは、神に祈る声、或いは神への怨嗟、そして押し殺した嗚咽すら聞こえていた。




・・・・・・やはり、オリジナルハイヴは不落の要塞、人類には陥とせないのか―――?

既に時間は16:00―――。

9:00に始まり、最初の侵攻が1時間半。
続く2度目は2時間半の長丁場。
―――それだけでも驚愕の体力と気力。
1時間の喫食・デブリを挟み、今の3度目が2時間―――。
V-JIVESとはいえ、合計で6時間の全力全開機動、疲れていないわけがない。
荒い息が尚も収まらない。
そこには、A-00[ヴァルハラ]のメンバーにさえ諦念に似た無力感を感じ始めているように思えた。
・・・もう、体力も気力も尽きていよう―――。


今や衛士全員が、既にXM3“レベル5er[ファイヴァー]”に達していると言う、“奇跡の中隊”でもあるA-00[ヴァルハラ]

そのA-00[ヴァルハラ]中隊を持ってして、余りに遠い地下要塞陥落―――。

人類最高の中隊が挑んで無理なら、オリジナルハイヴが攻略されることはなく・・・。
そして人類は滅亡の途を辿るしかない―――。




忍び寄る絶望が色濃い。

刻限まで1時間―――。

もう―――無理・・・・・・・・・・・・。








『―――さて、じゃラスト行こうか。』

『『『『『『『 !!ッッ、 Yes,Sir―――!! 』』』』』』』

『ガルムは、NE-73、ソールはSE-59な。』

『『『『『『『 Yes,Sir―――!! 』』』』』』』



それは、余りにもあっけらかんと発せられた言葉。
だが、軽い言い方の中に込められた、不屈の意志―――。

これが・・・“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”―――。

間髪入れず呼応する返答、即座に動き出す視界。




「・・・な・・・・・・コイツら・・・あれだけ[]って・・・まだ諦めてないのか―――。」


しかもなんと2小隊しか居ない中隊を更に2つに分け、別々の開口門から突入するという、戦術的には狂気の沙汰。
先程の3回目で、囮戦法では火力が不足すると理解したばかり。
最初から小隊単位での侵攻など、各個、包囲されて終了ではないのか・・・?

というのもハイヴ内は、ある程度以上離れると通信が途絶する。
データリンクも機能しない。
このシミュレーションに於いても、上空からの俯瞰ならどんなに深くても一方的にデータ取得ができる設定とされているが、一旦中に入れば近くに居る僚機以外との通信は途絶していた。
少なくとも、2小隊が突入した開口“門”間の通信は出来ない。

個別の侵攻で一体何が出来るというのか・・・・?






そんな疑問にもかかわらず、2つに分かれた小隊はまるでお互いの位置が判っているが如く、絶妙な距離感を維持しつつ侵攻していく。

そして片方の小隊が暴れ、派手にBETAを蹴散らせば、もう片方の小隊周辺のBETAさえが誘引されていく。
当然その薄くなった隙に滑りこむように進行、先行したその先で、次は進んだ小隊が暴れだし、新たに周辺BETAを掻き集めるどころか、先に誘引されていたBETAすら掻き集めていく。

―――その繰り返し。


いい加減BETA群が大きくなりすぎた辺りで、今度は先行する小隊が大広間にS-11をセットする。
そして誘引―――起爆・・・。

通信は途絶しているはずなのに、追従する小隊はその爆発圏には入らず、躱すように先に行く。


離れていながら、相手の小隊、そしてハイヴ内の全てのBETAの動きまでをも完全に把握し、行動さえ読みきっているかのような、見事な連携―――。
絶妙なリズムとタイミング
まるで華麗なラリーを繰り返すテニスでもしているかの様に交互にBETAを惹きつけつつ、大広間に終結するタイミングでS-11で一気に殲滅・・・。
それはハイヴ内のBETAの群れを手玉に取る様な、鮮やかな戦術。

こんなことは片方の小隊が主導、では出来ないのだ。
双方の小隊が、同じ未来を予測し、同じ意図を持って動かないかぎり、不可能―――。



これは・・・・・・。
背筋が、沸々と泡立つ。
全身の毛穴がゾワッと逆立つ。


―――人は、極めればこんな境地に至ることすら可能だとでも言うのか?



このオリジナルハイヴに於いて、まるで野を往くが如く・・・。
その侵攻速度が今までに無く異常なまでに速い―――。





その神がかり的な連携は、終ぞ破綻することなく、その結果、僅か40分で達した巨大隔壁。
無論、動きの遅い母艦級が出現する遥か前に突破を果たし、早々に重頭脳級との決戦に持ち込んでいた。


あ号標的:重頭脳級―――その恐るべき攻撃力は、先程も垣間見た。
殺到する触手衝角の下で、悠長にS-11など敷設する暇は無い。

極めて精緻な相互誘引戦術を使っていたとはいえ、BETAとの接敵が皆無で乗りきれるハイヴではない。
どの機体も大なり小なりの攻撃は喰らっており、瑕疵のない機はない。
それでも、先程と異なり中隊8騎、その全てが揃っている―――。
・・・であれば、取れる戦術は無限、手数は十分、火力も十二分に温存してある。



『・・・さあ、往くぜッ―――!!』


白銀の雷閃[シルバーライトニング]”の号令とともに〈Thor-02〉[御剣少尉]〈Fenrir-01〉[篁大尉]突撃前衛[ストーム・バンガード]が飛び込む。
その2枚は同じだが、そこに前回は居なかった強襲前衛[ストライク・バンガード]である〈Garm-01〉[神宮司大尉]〈Garm-03〉[彩峰少尉]が加わり、明らかに厚みを増した。

更に強襲掃討[ガン・スイーパー]〈Garm-02〉[榊少尉]や、迎撃後衛[ガン・インターセプタ]のポジションでずっと全体指揮を取っている〈Thor-01〉[白銀少佐]が更に補佐と攻撃の二役をこなしている。


コレが・・・本来のA-00[ヴァルハラ]中隊の力―――ッッ!!


激しい剣戟を繰り広げる触手の隙を上手く突き、制圧支援[ブラスト・ガード]である〈Garm-04〉[鎧衣少尉]の放ったS-11X炸裂弾は、触手の防御を掻い潜り、炸裂する。
爆発範囲も指向性を持たせて前衛4人にギリギリ届かない絶妙の設定、一方の前衛はフレンドリィファイアなど在り得ないとの如く、一顧だにしない。

その一撃が触手の一部と共に、基幹である制御部を穿ったのか、触手の反応が目に見えて落ちる。
生まれた隙は、砲撃支援[インパクト・ガード] 〈Thor-04〉[玉瀬少尉]の狙いすましたS-11X[一弾]を通すのに十分だった。


その閃光が消えた時、どう考えても男性のアレ[●●]を思わせる形状が、半分抉り取られていた。



これは・・・・・・ッ!

-――遂に届いた・・・決定的な―――致命的な一弾―――ッッッ!!。



動きを止めた触手に、一斉に前衛が引く―――。
引きながらも、機能するだけの副椀が展開し、背面担架から回ったガンブレードがその銃口を向ける。

それらを含め、畳み掛けるように全員から、立て続けに残るありったけのS-11Xが放たれる―――。



そして・・・・・・。

―――それが、トライアル終了のブザービーターと成った。



直後、オリジナルハイヴの最深部を満たす閃光――――――。

















『『『『『『う・・・うぉぉぉぉぁぁぁッッ!!』』』』』』

『『『『『『キャァァァァァ!!、遣った、遣ったわぁあぁァァァァ!!』』』』』』

『『『『『『―――や・・・やりやがったぁぁぁぁッッッッッ!!!』』』』』』


オープンチャンネルが、絶叫や、雄叫びや、―――歓喜の悲鳴で満たされた。


Sideout




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