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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/05/15 12:14
'15,12,26 upload
'16,05,15 誤字修正

※折角100話に届いたというのに、急な仕事で時間が取れず、またも間が空いてしまいごめんなさい。
 駄文に付き合って頂いている読者様には申し訳ない限りです。
 年の瀬・年初もどうなるかわからずこのままではまた休眠しかねないため、書いた分だけでも投下します。
 なんとか週1頻度くらいに戻したいのですが・・・今しばらくご容赦ください。




Side アルフレッド・ウォーケン(米国陸軍第66戦術機甲大隊指揮官・少佐)


モニタールームの大きな画面には、互いに対峙する試製XFJ-01[Prototype-01]が映っていた。


片方はソ連軍迷彩仕様だが、こうして同じ画面でみればオリジナルの機体と、横浜仕様にチューンされた“Evolution4”の違いも目に付く。
あの“XM3”搭載を考慮して調整された試製XFJ-01[Prototype-01]が“第4世代機”と言われ、既存機と一線を画す事は紛れもない事実、その完成度は極めて高いと言わざるを得ない。
OBLが第3世代機の要件で在ったように、第4世代機の要件とまで言われる“XM3”―――無論現時点で公式にはまだ米軍への供与は開始されていないが、ユーコンを通して前線にはそれなりの数が出ている為、“回収品”の名目で開発関係部署には既に存在しているのも事実。
そこで比較検討されている性能が言われているように“革命的”であることも、また米国のソフトウェア開発会社がボーニングが入手した仕様書を元に複製しようとして匙を投げたことも、聞き及んでいた。

何しろ仕様書を手にする僅か数日前には機密漏洩疑惑が取り沙汰され、日米の共同開発計画は疎か、国連の大規模計画であるプロミネンスまでもが、あわや破綻の瀬戸際に在ったのだから・・・。

そのオリジナルの姿にYF-23の片鱗が見てとれる事は否定しない。
だがユーコンで共同開発を行っていた米国側アドバイザーがYF-23の開発者である以上、形状が似るのも仕方のないこととも言える。
それを言い掛かりの発端として、あるいはG弾に反対する欧州を黙らせる意図により、本気でプロミネンスの瓦解を狙ったのかも知れないが、G弾=人類自決兵器との説が理論的に裏付けられたことにより裏工作を仕掛けていた組織が退かざるを得なくなった。
その後、帝国は国内で極秘裏に開発していたXM3をXFJに搭載することで最終仕様とし、ラプターショックまで起こし機密漏洩疑惑そのものを蹴散らしてしまった。
XM3に付随する拡張機能により域内全てのレーダーを統合するマルチスタティックレーダー網構築はF-22のステルスを無効化し、米国特許に依らないOSはYF-23に搭載されていたアクティブ・ステルスにも対処出来るとされている今、過去の技術に固執する意味は皆無なのだ。

今や、米軍上層部は混乱の渦中にある。
G弾ドクトリンの崩壊、ATSFの根幹を成すステルス技術の無効化―――。
G弾による世界戦略を推し進めていた急進派は恐慌状態に陥り、逆にその強引な世界戦略を苦々しく見ていた良識派はその攻勢を強めている。
今や様々な選択肢[オプション]を求めて全米軍が展開している、と言っても過言ではない。

・・・硬軟取り混ぜて様々な計画は在るだろうが今は一介の戦術機甲大隊指揮官として、帝国との溝を深める余計な陰謀を企てるよりも、共同開発[●●●●]で培った技術を、即座に我が国の戦術機にも活かして欲しいものである。




流れる画面は、極めて緻密な殺陣でも見ているような、縦横無尽に暴れ回るもう一方の機体・国連ブルーは、横浜仕様である“Evolution4”を映している。

より洗練された空力、高レスポンスを示す謎の跳躍ユニット、装備兵装・・・その更なる進化は外から見える範囲でも枚挙にいとまがない。
技術の進歩は得てして抜きつ抜かれつつを繰り返すものではあるが、現状完全に頭一つ以上出し抜かれている試製XFJ-01[ Prototype-01]から、更に一歩先に在るコトは否定しようのない事実であろう。
最も生存競争が厳しい時にこそ最も劇的な進化を遂げるのも一つの真理、その意味では後方国家として安穏とする我が国の研究者と、既に後のない国家存続の危機に瀕しながら今尚抗うこの国の研究者では、有する覚悟に於いて隔絶していると言っても過言ではあるまい。

我が国は、言ってしまえば建国以来ずっと世界の先頭にいて、他ならぬBETAの侵攻によりソ連が壊滅状態に陥って以降で言えば肩を並べるライバルさえ居ない独り勝ち状態。
だが、その奢りから他国を見下し、自国の技術に拘泥し囲い込むことばかりに注力してきた結果、新しい技術に取り残されるという愚を冒すわけには行かない。
今回のトライアル参加も、主たる目的はその評価にあるとも言えよう。


XM3の発案者として、その機動に於いて燦然と輝く存在―――それが単騎世界最高戦力と言われる“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”―――。



実際に戦ってみても現段階に於けるその差は歴然。
最強と謳われたF-22A中隊が、掠り傷一つ付けることも出来ずに20分足らずで全機撃墜―――。
ラプターショックで明らかにされた様に、近接格闘戦に持ち込まれると試製XFJ-01[相手]に利があることは理解していたし、加えて衛士が規格外であることも否めないにしろ、指揮官としては忸怩たるモノがある。

―――が、飽くまで模擬戦、その勝敗に拘る気はない。
今の状況を、今後の戦術や部隊編成・兵器開発に如何に反映させるかが重要であろう。




・・・だが、これは・・・!

先刻からずっと感じていた違和感、展開される画面に目を見開く。


背筋が寒い・・・。

戦慄―――していると言うのか?、この私が・・・!







画面には、帝国軍アグレッサー部隊を一方的に蹂躙していく“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”の姿。
今の相手は、先程までのXM3未換装者とは違う。
そろそろレベル3に達し様という帝国軍きっての衛士、帝国陸軍富士教導団富士教導隊。

その歴戦の猛者達を相手にしても、今以て無双を続ける。

既に同じ富士教導隊の不知火[Type-94]で編成された2中隊を下し、最後、先行配備されている試製XFJ-01[Prototype-01]を駆る第12中隊と対戦しているが、それをも圧倒している。


―――しかし、それ自体は大きな問題ではないのだ。


白銀少佐の機動が常軌を逸しているのは、様々なデータからも解っている。
この横浜に来て、独自に持ち込んだ高精度で撮影出来る高速度カメラによって、彼の応答速度が今まで言われていた観測結果より更に数%速い事も判明した。
それは過去公開された白銀少佐の映像に於ける映像の初動部分が、微妙にモジュレーションしているらしい、との報告だった。
解析した技術士官の説明では、本来ほぼ1/30秒毎に記録される動画映像が、動きの速い所だけその時間間隔が数%程度縮まり、その後徐々に伸びることで全体としては正確な時間に収まっているのではないか、とのこと。
それが意図的に行われた映像加工なのか、或いは余りに疾い変化に対応出来ない映像記録機器の性能限界なのかは不明である。
この速度域であれば通常の動画に於ける静止画像の一枚一枚は動きがブレて映るため、数%の誤差等取り方によってどうとでもなるレベル。
今回の高速度撮影によってその誤差範囲が狭まり、本来の実力が明らかになったと思えばいい。
画像操作が仮に意図的であったとしても膨大な映像記録から速度に比して時間軸をずらして補間し、それをリアルタイムで記録する演算技術など、少なくとも現在の我が国には無いとも聞いた。

いずれにしても白銀少佐が数値上規格外なのは折り込み済の確定事項、さしたる問題はなかった。


そして同じXM3正規版を換装した基本同じ機体であっても、“Evolution4”もまた隔絶した別物[●●]と言うことも、また事実。
新潟防衛戦で“Amazing5”が見せたあの機動は、このトライアルでも未だ封印されている。
つまりはXM3ではない別の要素が既に存在しているわけだ。
あの時の動きを封印していて、それでも尚その機動は既存の戦術機を遥かに凌ぐ。



その2要素が複合しているのである。
例え試製XFJ-01[Prototype-01]が相手でも一方的な展開になること自体は当然の帰結であった。



それでも、いずれ技術の差は埋まる。
そして白銀少佐自身の技量がどれほど高かろうと所詮彼は一個人に過ぎない。
例え1個中隊では相手に成らなくても軍に於いて“個”を“量”で封殺するやり方は幾らでも在る。
“軍”と言う物量の組織に対して、その技量がどれほど高くても“個”の力などさしたる脅威には成らない。
現状に於ける白銀少佐の存在は、広大な戦域に於ける“特異点”でしか無い。
一例を上げれば、白銀少佐と“Evolution4”とて補給は必要なのだ。
中隊毎の模擬戦というのは、実はデモンストレーションとして横浜側が用意した彼が最大限のパフォーマンスを発揮し、勝ち続けられる特殊なルール、と解釈することも出来る。
それが様々な要素が複雑に絡みあう現実の戦場に於いては、必ずしもイコールではないのだ。





ならば私のこの戦慄は何か―――?

問題は―――そう相手方、帝国陸軍富士教導団富士教導隊の機動にこそ在った。






実際に白銀少佐と対峙したからこそ解る。
公式には唯一の“限定解除者[アンリミッター]”であり、次世代戦術機性能とも相まって、とてつもなく疾いのも体感した。
しかし、彼の機動は疾さだけではない。
画角の広い記録映像では決して伝わらないその機動の特異性・・・。
彼を彼たらしめるオリジナリティ―――即ち、3次元機動にある。



そもそも人間の感覚にある行動は基本全て平面なのだ。
種としての誕生以来地球の重力に縛られていると言っても良い。
それは肉体のみの格闘戦から、船であれ戦車であれ、ヘリや潜水艦でも常に水平を保ち、それを軸として行動するコトからも言える。
例え狙う先が3次元空間であっても、その基準は常に自身を中心とした鉛直軸と平面である。
潜水艦が直立して魚雷を発射したり、攻撃ヘリが背面飛行で射撃したりすることは、緊急時を除けば、まず無い。

人間は地球上の地表面に順応してきた。
外部情報の90%以上を占める視覚に於いて、水平方向の視野は180度を越えているのに対し、垂直方向はせいぜい90度しかないのもその為だろう。

同じ理由で人体の運動機能も水平方向の動作に比べ、垂直方向の動作は苦手であることが多い。
地上に暮らす以上必要性が薄かった訳で、つまりは進化の過程上、人間は縦方向の知覚や動作に適応していない、とも言える。

人間は体幹を鉛直軸から外すことを、本能的に忌避する。
スポーツの世界でも軸を外す様な空中機動をするのは、体操やエアリアルと呼ばれる種の演技種目だけで、それらですら慣性と重力の支配を受けている。
戦闘機動を突き詰めた現代のCQC/CQBに於いては跳躍することすら忌避する。
それは脚を地から離すことにより機動力を喪い、一度跳躍すると着地するまでの予測を容易にし、その間無防備を晒すことになるからだ。

人類の誕生以来、生活中の経験に於いて、空中の運動とは慣性と重力に縛られたものであり、辛うじて鳥や虫の飛翔から空力による運動を眺めていたにすぎない。

現代の戦闘機動に於いても、唯一積極的にその基軸を外し3次元に拡げたのは、戦闘機のドッグファイト位とも言える。
戦闘機や戦術機のドッグファイトを現実に、或いはシミュレーションでも体験した者なら解るはず。
ドッグファイトでは、天地の軸など容易に喪われ、そして低空でのその状態が如何に危険であると言うコトを・・・。



それが今、戦術機に於いてはもはや空力と言うよりはスラスターそのものによる暴力的な加速によって空中機動を行うことが可能となっていた。
しかし例え戦術機にそのポテンシャルが在ったとしても、こんな機動をした衛士は今まで居ない。
3次元空間に於ける自由機動の経験など皆無の人類は、誰も積極的にそんな操作をしなかった。

戦術機と言えど、地表では主脚機動か噴射跳躍装置を使ったサーフェシングであり、飛行に於いては少なくとも第1・第2世代機では空力的にアクロバティックな機動など望むべくもなく、匍匐飛行を主とした単なる移動手段でしか無かった。
戦術機で戦闘機の様な空中戦が行われるようになったのさえ、第3世代が成熟したここ1,2年のことだろう。


その状況に現れた“特異点”、それが“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”:白銀武―――。
彼が此処迄他者を凌駕しているのは、その在り得ない速度で駆使する余りにナチュラルな3次元機動にある。
XM3が出来たからこの機動が生まれたのではなく、彼の3次元機動を実現するためにXM3が創出された、と迄言われるほどに隔絶した存在。
自己の3次元機動を空間の慣性制御機動概念MCLIC:Maneuver Concept of Linked Inertia Controlの概念化までしてしまったいわば“開祖”・・・彼は一人、別次元にいる。


彼に依って実現される空中で立体的にダンスを踊るような素早く激しい機動は、今までの戦術機機動の範疇を軽々と超越していた。
その機動を前にしたとき、通常の衛士は自身で実行した経験も対峙した経験も無いから、まるで予測が付かない。
それをあの速度で行使されたら、対処のしようも無い。




そして、今目の前にある問題―――。

それは、富士教導団富士教導隊のメンバーが、その白銀少佐の3次元機動に対応し追従し始めている[●●●●●●●●●●●]、と言う事実だった。




試製XFJ-01[Prototype-01]が配備された第12中隊のみ成らず、先程から違和感は在った。
不知火[Type-94]で挑んだ第10・11中隊も同じ、対戦時間が長い。
時間稼ぎに戦闘を避けている訳ではなく、寧ろ積極的に接敵しているのに、第10中隊で23分、第11中隊では25分―――。
そして今第12中隊は、25分を経過して3騎残っている。
コレは単にXM3を導入されているだけではないのは、その動作からも解る―――。

要は白銀少佐オリジナルだったその機動が、XM3と言うOSと彼の構築した機動モデルによって、帝国軍では既に普遍化し始めている[●●●●●●●●●]、と言う事に他ならない・・・!!

このことは反応速度を指標とした応答レベルの問題ではない。
3次元機動に適応したミニ“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”化、それが帝国では、着々と進められている・・・!


一人でも手が付けられず放置するしか無い存在が、無限に増殖するのである。
対峙する相手が、全て“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”級―――想像もしたくない。




突出した“力”とはいえ、それが“個”で在る以上、どうにでもなるし、いつかは消える。
だが、その“力”が継承され演繹され、拡散するとなると話は全く違う。

通常技術の進歩に伴い新たなハードが生み出されても、その使い方が確立され、そして定着するまでには幾多の試行錯誤と経験の積み重ね、そして継承手法の整備が必要となる。
ハードの出現に対し、人の対応たるソフトの成熟には時間が掛かるのが常だ。
戦術機のような革新的なハードに於いては、その成熟は未だ発展途上と言うのが実情であろう。
明確に3次元機動を可能とするXM3適合機―――つまり“第4世代機”はその試製XFJ-01[Prototype-01]が漸く検証に入ったばかりなのだ。
故に“特異点”の早急な拡散は無いし、その進化に追従、OSの模倣が成されれば逆転も出来る、と言うのが我が国の国防高等研究計画局[DARPA]所の見解だった。


―――にも拘らず、突然変異の如く唐突に出現した3次元機動に、こともあろうか、教導部隊が適応し始めている。
つまりは帝国に於いて既にその継承ノウハウまでもが整備されている、と言うコトになる!
そして教導隊がそれを会得すれば、拡散速度は飛躍的に向上する。
戦術機[ハード]のみならず、継承・拡散するための教導手法[ソフト]までもが存在する、・・・だと!?

XM3が後から導入された帝国軍でコレならば、白銀少佐の麾下である国連横浜軍A-0大隊や、斯衛軍は更に適応している可能性が高い。
今回の日程に白銀少佐以外との模擬戦が組まれていないのは、敢えてその事実を知らしめない作為であるとも覗える。
解る人しか判らない・・・気付く者しか知りえない―――。
ある種広告塔となっている“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”に比してA-0大隊や斯衛軍の公開映像が極端に少ないのも、そう言うコトか!!


―――何と言う由々しき事態。












―――フッ・・・・。


画面に映る、まるで無重力空間で展開されるキャットファイトの様な、目まぐるしい近接戦闘にため息をついた。


コレが日本帝国―――。

有史以前・・・遥か“縄文”と呼ばれた時代に世界最古級の文明さえあったという説まで在る国。
まあ、独自文明説が行き過ぎな解釈であったとしても、そのルーツ以降数多の国と交錯しながらも、淘汰されることなく隷属することもなく、有史以降連綿と一系の皇帝を頂点に単一民族を繋いで来た国・・・。
世界に現存する国家でそんな国は他に無い。
その3000年とも4000年とも言われる歴史の底力だとでも言うのか―――。

・・・まったく、日本帝国と云う国は・・・。


このところ一方では内在的な政情不安・・・クーデターを含む内乱の予兆さえ報告され、我が第66戦術機甲大隊にも暗に治安出動の可能性すら示唆されていたというのに、それから僅か半月―――。
先の新潟では27,000のBETA大侵攻を危なげ無く殲滅し、その勢いに乗じ国内権力の再統合と不穏分子の排除を一気にやってのけた。
そこには我が国CIAの陰謀も絡んでいたと言う裏情報もあるが、他国への内政干渉などいい加減にして欲しい。
更には帝国として起死回生の隠し玉でもあろう高天原も公開され、国土を喪った前線各国からは大きな注目を集めている。
尤も中心核となる動力炉の製作拠点が既にBETAに破壊され、その再建に10年掛かると言う事で、当面我が国の政府を含め一先ず落ち着いたが逆に言えば僅か10年後には、次なるギガ・フロートが作成出来る、ということでもある。

先進国と言われる中で唯一大規模なBETA被害を受けていない我が国が今や国際社会で圧倒的な優位にあることは確かであるが、欧州が良いように蹂躙され、当時世界第2位の防衛力を有していた日本帝国が僅か1週間で国土の半分を喪い、3600万人―――総人口の4割近くを喪失したように、BETAの物量と侵攻速度は我が国とで決して侮れるものでは無い。
その意味でも、最前線である各国との連携強化は決して失ってはならない。


そう・・・この国は国土も人も、軍隊で言えば全滅(30%損耗)を超え壊滅(50%損耗)に近い規模で喪った。
経済的に見ても今は生産拠点のみ成らず、国内消費をも半分以上がBETAに喰われた。
本来ならば組織だった管理や戦闘の継続そのものが困難と見做される状態なのだ。

かつて単独国として世界第2位のGDPも半分以下に落ち込み、辛うじて海外に移した生産拠点をフル活動することで繋いでいるに過ぎない。
国家は人なり―――生産も消費も全て人の営み。
高度な循環と精緻なバランスによって成り立つ現代国家に於ける4割近い人口の喪失は、その完成された国家基盤の崩壊にも等しい。
いっそ欧州の様に守るべき国土そのものを喪えば、防衛に掛かる多大な負担が不要になるため、1から再構築しやすい、とも言える。

帝国は、その半分齧られた国土に6割の国民が残っているし、その20%が非生産民という極めてバランスを欠いた状態。
・・・率直に言えば、今の体勢を保っていられる事自体が奇跡的だ。


―――その絶体絶命状況から、此処に来てコレか!



“レイジング・ジャパン”―――。

最近耳にする言葉であり、その筆頭で象徴が“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”。
建前上国連軍であれ横浜の内情は、米国主導の国連本部とは隔絶し、帝国独自のものであることは明白なのだ。




今、私に課せられた使命は重い。

横浜に来て、現実を見て、真実を知って、その比重は尚増した。


もはや次世代の戦術機開発―――などという悠長な問題ではない。

今後のBETA戦線を維持・反攻を視野に、国家の安全を保証する新たな軍事ドクトリンの創出、その為の戦略と展開計画の策定は、我が国の最優先急務であり、状況はそこに直接関わってくる。

確かに取り得る選択肢[オプション]は幾つもある。
だが何れにしても帝国との関係性が、その重要な“鍵”となるのは疑いもない。

間違いなく今後のBETA決戦に於いて枢軸となる戦術機、装備、機動、その教導ノウハウ―――我が国が是が非に[●●●●]でも手に入れなければ成らない項目は多い。


・・・さて、我が国にとって最良のオプションは何か―――?


それを見極めるべく、画面を注視した。



Sideout





Side ロア・ヴォーゼル(国連太平洋方面第2軍臨時准将相当官 [CIA Dept.D])

横浜基地 本館地上層5F 特別応接室 17:20


チッ―――
コイツ、ほとほと狂ってやがる・・・。

画面で帝国軍教導隊を淡々と殲滅していく国連ブルーの機体を穏やかに見ながら、内心で毒付づく。
アレで未だ新潟で見せた機動には至っていないと言うのだから、この衛士は掛け値なしのバケモノ。
あの部隊[富士教導隊]にもキャリア[パペット]が少数存在していると報告は受けているが、今は使いようもない―――。
動かしたところであっさり殲滅されて終わり、余計な警戒を招くだけだ。



此方だってF-22Aを始め、最新鋭であるA-12からF-35まで中隊規模で用意したと言うのに、まるで話に成らない。
今までのステルス任せの無双が完全に逆の立場だった。

・・・正面から当たりたくないし、当たる気もないがな―――。


XM3だ3次元機動だと言ったところで、所詮ついて来られる機体があればこそ、つまりその本質は言ってしまえばBETA鹵獲技術に基礎を置く戦術機の先鋭化にある、と第5計画の技術者達は断言している。
そんな戦術機程度の些末性能はどうでも良いが、今後目論見通りこの横浜基地を接収出来れば、それら超技術、そして“生きている反応炉”を含め、既に完成したと思われる“00ユニット”をも略取できるだろう。
対抗勢力を態と[●●]誘ったと思われるこのオープン・トライアルは、第5計画派[我々]にとっても千載一遇のチャンスに他ならないコトだけは、確かだった。

―――だからこそ、態々本局勤務のこの私がこんな極東の、BETAに齧られたちっぽけな島国に来たのだ。




此処は国連横浜基地―――その特別応接室。
壁一面に設置された大型モニターで模擬戦の様子を見ているだけの、実に下らないシゴト。


VIP用観戦ルームとなったこの応接室、他には大東亜の高官とオセアニア連合や南米連合の将官が居るが、横浜基地の関係者は連絡用の補佐官が控えるだけ。
我が国の太平洋大7艦隊司令も昨夜空母に戻ったままで、日参する気はないらしい。
彼は第5計画派[コチラ側]の人間ではなく、空母に残る腑抜けた部隊には工作班が“パペット”を増やしている最中。
此方もその動きも知られたくないし、彼からしても突然押し付けられた“怪しい”私は空母に居ないほうがいいのだ。
加え、状況の変化に適切に対応するには、退屈でも日参はやむを得ない。

勿論横浜基地[ココ]に相手の思考がある程度読めるという“スパイフィルター”が存在することは判っている。
但し少なくともその行動が示すように基地全体を走査出来るほどの遠隔感応能力はない、と確認されている。
もしそれだけの能力が在れば危険を伴う移動の必要性もない筈で、逆に言えば具体的な距離は不明だが、接近を許さなければ読まれる心配はない。
潜入出来ない地下での行動までは把握できないが、一般エリアに出てきたかどうか位は観測できている。
動向を把握し接近さえ許さなければ“スパイフィルター”もどうと言うことはなかった。






“第4計画”―――。


苦々しい思いを押し殺して画面を見る。

その第4計画で運用され、反応炉殲滅を狙うハイヴ潜行仕様と謳うのがこの機体“Evolution4”―――。




残念だが、今の状況でG弾強行使用が難しいコトはアノ方を始め業突く張りなお偉方も理解している。
一部“大海崩”を戯言と決めつけ、強硬に使用を主張する者も少数存在したが、流石に自国を水没させるわけには行かない。
我が国が滅べば人類の滅亡は決定的になる。


本来バビロン作戦はユーラシア大陸に蔓延るBETA殲滅と同時に、それに乗じてソ連・欧州・中国の再興を挫き、全世界の米国一統支配を確実なモノとする大規模で磐石な布石だった。
その手段としてG弾がてっとり早かっただけの話。

その初手として“明星作戦[Op. Lucifer]”でG弾が投入されたとき、最低でも反応炉を含む横浜一帯、あわよくば東京を含む関東一円を削りとって、邪魔な第4計画と日本帝国に止めを刺す目論見だった。
西日本の壊滅に端を発する日米安保の破棄により当時米軍上層部は、日本に対し大陸全滅までの防波堤と橋頭堡としての価値しか認めていなかった。
生産基盤や国民という国家の最重要構成要素を壊滅レベルで喪った日本帝国に明日はないと予測、残る仙台に傀儡政権を樹立する準備は当時既に出来ていたのだ。


しかし、念を入れて2発も落としたG弾の威力は完全に想定外―――。
当初の我々の予測よりも、そして控えめに公表された最低想定値よりも更に低いもので、図らずもBETA技術鹵獲の鍵となる“生きている反応炉”を帝国国内に与える結果となったのは運命の皮肉としか言い様がない。
表向き帝国の安定、裏では第4計画の為の反応炉奪取を目的としていた明星作戦で、通常戦闘は想定外のハイヴサイズにより劣勢が色濃く、あのまま放置すれば完全な失敗に終わったのは確実。
しかし我が国の参謀本部も太平洋への肉盾である日本のBETA占拠を危険視したため、第4計画の目論見破壊、あわよくば帝国の属国化という余録を見込んでG弾の実戦証明という強行投下に踏み切った。
その結果がアレだ。
―――勿論今でも強行した第5計画派の真の狙いなど、口が裂けても言えないが、な。

結果としてハイヴ制圧には成功したものの、想定威力すら偽ったG弾を事前協議も通告もなく強行使用した事が裏目に出て以降、横浜に於ける米軍関与が完全に断たれ、辛うじてG元素の折半を引き出すことしか出来なかった。
何よりも“生きている反応炉”を第4計画に占有されてしまったのが最大の失策なのだ。

おまけに当のG弾は、実効威力範囲は小さかった癖に、永久的に植生回復が見込めない等の深刻な環境汚染が明らかになり、バビロン計画の対象であるユーラシア各国や、米国内の穏健派からも忌避論が噴出する始末。
まあ―――今後の大量使用は挙句の果て、全世界を巻き込む“重力津波”を引き起こすと言うのだから、最悪の欠陥兵器だった、という事である。
今にして思えば、訳の判らないG元素になんぞにドクトリンを傾けた判断[●●]が全てのケチの付き始め、と言うことなのだ。





そして・・・。

その“生きている反応炉”を独占した第4計画は、今の今まで成果が何も無いように見せかけて、その実ここまでその内容を隠蔽してきたのだ。
余りの進展の無さに最後通牒が行われるというこの瀬戸際に来て、驚くような技術を次々に公開。
しかもそれらがBETA鹵獲技術である可能性が指摘された―――。

G弾が無用の長物と化した今、採り得る手段はひとつしかない。
BETA技術鹵獲に成功し実現させた第4計画を協力という接収の下、実効支配してしまえばイイと言うのが第5計画派[我々]の結論でもあった。

幸い第5計画[コチラ]には移民計画で推進している宇宙設備が在る。
最終的には月から火星のBETAすら殲滅対象と想定していると見込まれる第4計画には当然今後必須となる設備だろう。
第4計画が緊急動議を行う30日の安保理事会で、表向きその様な申し出が為されることはオプションの一つに入っている。
公に国連での協力関係を結べれば、以降徐々に乗っ取るだけだ。


実際“第5計画”という “名”が生き残る必要は全くない。
看板などなんでもいい、要は世界を左右する“実”を、我が国が確実に握っていることこそが肝要なのだ。



そして、その為の準備工作も着々と進んでいる―――。





―――尤も、流石に狙われるのを覚悟でオープントライアルを行うだけのコトはある。

今回の派遣された米軍部隊の衛士にも末端の工作員が何人か紛れて居るが、設備の不足を理由に基地内の宿泊は断られ、夜間滞在が出来ない状況。
更にはトライアル中の行動エリアも制限され、果てはPXすら隔てられている始末、基地の一般職員・一般衛士との接触は一切出来ないと言う念の入れよう。
当然、最近の常道であるABSによる洗脳を警戒しての措置であることは、間違いないだろう。

今回準備した工作に於いては、寧ろ不必要な拡散をしない、という意味で此方にとっても好都合ではあるから一向に構わないのだが・・・。
まあ全体の“流れ”をコントロールするために、基地の一般衛士も数名“キャリア[パペット]化”したかったのが本音だが、残念ながらそれは諦めるしかない。

おそらくは、既にスパイフィルターによる篩い分けが行われているだろう。
接近されたときに思考を隠蔽する訓練はしてきたから思考内容は漏れていないが、当然私も“クロ”判定されていよう。
例えそうであっても所属が違うビジターである以上、基地内で制限行為に及ばない限り捕縛はない。
無論“キャリア・バスター”である“フェニーチェ”が派遣されているとの情報もある、―――と言うか、それを見越し、前提とした破壊工作でもある。
ヤツには引金を引いてもらうのだがら、居てもらわないと困る。


そう―――催眠導入を容易にし後催眠暗示を強化するだけがABSではない、と言うことなのだよ。






元はこの横浜[Ground Zero]からハイヴ制圧当時にサンプルとして1体だけ極秘裏に運びだされたBETAの被験体・・・今ではβブリッドの研究所で“聖骸”とも呼ばれる変態した人類?と思しき遺体・・・にはBETAが遺伝情報を駆使して人体に与えた様々な実験の残滓が残されていた。
細胞の分化や変質、神経の制御、意志或いは意識の支配等々、明らかにされた施術は多岐に渡る。
その行為の理由は、人体組織の解明だの、BETAへの変態を目論んだのではないかなど様々に憶測されているが、キリスト教恭順派でもBETA崇拝に近い狂信派職員がBETA[使徒]に最も近付いた人類と言う事で“聖骸”と呼び始めたのである。
ハイヴ制圧当時にはその様な遺体が数100体在ったと言われるが、秘密裏に搬出された遺体以降、持ち出されたサンプルはない。
当然横浜住民の遺体として調査後はその殆どが日本政府により荼毘にふされた為である。

“聖骸”がβブリッドの先例資料として極めて重要であることが判明したのはその後であり、貴重品となったサンプルは、幾つかの部位に分けられ各々の地下研究所で解析が行われている。
勿論BETA技術の全てが解明できる訳も無く、当面の成果として様々な作用を促す人工生化学物質:ABSである。
その形態はベクターレベルの複雑な準レトロウィルスから所謂酵素や酵素に作用するアルカロイド、さらには環境ホルモンに準じる様な多様なカテゴリーに渡っていた。
そこから応用され既に実用化されているものとしては諜報や工作、そして衛士のストレス対処にも使用される使いやすい向精神系統の蛋白酵素型ABSが先行している訳だが、それ以外が無いわけではない。
更にその先には、今の人類には扱い方の判らないナノマシンやピコマシンと思われるものも発見されている。

故に、単に拠点殲滅するだけなら“スパイフィルター”にも“フェニーチェ”にも引っかからない手段が複数あるし、他方傀儡化するにしても後催眠暗示を繰り返す様なあやふやで面倒な洗脳以外にもある。
―――女だけに有効である超危険な手段だ。

それは使用1回でA-10神経に極めて強く作用し感覚を狂わせて、不可逆なまでに精神を汚染、結果マーキングされた相手“主”の言いなりになるまで傾倒させてしまう超強烈な媚薬、“アムリタ”―――。
今までの覚醒剤が子供の玩具に思えるほどの効果を発揮する劇媚薬。
実際“聖骸”と成り果てたBETAの贄は女性だったらしく、男性用は抽出されていない。
が、今や帝国は8割方が女性だし第4計画も総責任者や“スパイフィルター”を始め、獲物[ターゲット]は“Amazing5”―――、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”を除けば殆どが女性だから実用上問題ない。
一旦使用されても、通常時は飽くまで“理性的”で“自主的”な平素の自我を保つため、細かな心理検査でも“キャリア”とは診断されないし、催眠もトリガー設定も存在しない為、“フェニーチェ”でも異常励起できない。
だがその価値基準・判断だけが完全に狂気のレベルまで変容し、常識も法律も関係なく“主”の為だけに表向き理性的に行動する。
尤もその依存作用が強すぎるため、“主”と長く離れると理性を喪失して色情狂[ニンフォマニア]化し、更に自我崩壊して果ては発狂する、なんともアレ[エロゲ的]な鬼畜仕様。
過去の被験者3体は検証による理性の失墜後慰安用に廃棄されたが、2度と正気に戻ることはなかった。
こんな物質を造ってBETAは人類の苗床化でも企んでいるとでもいうのか、と研究者も首をかしげたBETA謹製の危険物質である。
唯一甚だ残念ながら、その入手方法は“聖骸”からの抽出のみであり、未だ構造解析も出来ず、当然精製手法も解明されていない。
既に被験に使われた分や解析・精製研究用を除けば実用分は残り2体しかなく厳重に封印されてきたが、第4計画を堕とすとなれば必要との判断が下され、1体分の使用が許可されていた。

・・・当然投与対象は、第4計画総責任者―――。




今までの調査の結果、その“牝狐”は極めて用心深く、それだけに腹心すら居ないワンマン指揮官であり、これまでの研究成果も国連は疎か宿主である帝国にすら出し渋っている様子。
XM3こそ何故か例外的に頒布したが、その他の装備を未だ公表していないのは周知の事実。
それだけに、天辺さえ抑えてしまえば、第4計画の掌握など出来たも同然と言えよう。

と言っても、今のところ昨夜バーラウンジで見かけただけで接点は無いが、まあ、焦ることもない。


・・・何れあの我侭な肢体が無様に這い蹲る姿が見られる―――。




陽動となる工作[●●]は済んでいるが、その“起爆”が何時になるのか、それは此方にも判らない。


実際効果検証が行われた難民収容所では、“工作”から“起爆”まで4日掛かった。
その直後BETA侵攻に飲み込まれた為、公式上は避難指示が間に合わなかった事になっているが、実際には全住民が互いに殺しあったと報告されていた。

4日と言えばトライアルは終わっているが、許可された空母の停泊期限は過ぎていない。
この工作で使われるABSで増幅された殺意は、ストレスを与える対象に向くと言うからこの横浜基地に在っては何処にその矛先が向くのか予測ができない。
何れにしろその“起爆”が為された時―――国連太平洋方面第11軍横浜基地が甚大な被害を発生するのは確定事項。
例え第4計画が帝国政府や斯衛軍と連携があろうと、此処は建前上国連軍、基地内で騒動が起きても外部に影響しない場合、帝国軍は許可無く介入できない。
一方でその国連軍の代行権を取り付けている“私”の要請の下、第7艦隊による沈静化であれば、帝国政府とて受け入れざるを得ないのだ。
国連基地内で大規模な武力衝突が発生すれば、この基地の副司令でもある“牝狐”を被疑者として尋問する機会は幾らでも得られる。

―――高慢な女を煉獄に堕としめるのは、それからで十分だった。






目の前のスクリーンでは、今また“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”が試製XFJ-01[Prototype-01]を墜した。


・・・そう考えれば、やがてはコレ[●●]すら手駒、か。

―――悪くない。


噂されるオリジナルハイヴ攻略が目的なら、その栄誉くらいは与えてもイイ。
あんな所に我が国の兵士を送りたくない。
反応炉だけ破壊して、華々しく散ってくれるなら言うことはない。


そう思うと、目の前で宙を舞うその姿すら滑稽に見えた。



Sideout





Side ???

横浜基地 本館地上層 PX 17:30


え・・・あ・・・?


カクンと肘が落ちて、唐突に覚醒した。
驚いて見回せば、周囲は見慣れたPX、その自販機コーナーに近い角の席に頬杖付いて座っていた。

ッ!、涎はッ!?―――よしッ。

反射的に身だしなみを確認したが隙は無いし、周囲も人はまばらで私の傍は空いている。
そこに、ざわざわとトライアル参加者達が流れてくる・・・。

時間を見れば、17:30―――、白銀の無双が終わった頃か・・・。


・・・まて。
私は・・・何故こんな所で?・・・居眠りを・・・?
自販機に来た様な記憶は・・・ある。


だが、いつの間に席に座り、眠り込n・・・む!、17:30ッ?、不味いッ!

―――時間ッ!!


私は約束を思い出し直ぐに席を立つ。
ゲストの流れを避けて足早に待ち合わせ場所に向かった。

だが、PXを抜ける頃には、知らぬ間に居眠りをしていて、それを疑問に感じたことすらいつの間にか意識から抜け落ちていることに、その時は気付きもしなかった。


Sideout



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