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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/06/04 14:06
'15,10,09 upload    ※数話でサクっと流す予定がががががg・・・orz
'16,06,04 誤字修正


Side 美冴

午後になると、滑走路には戦術機を載せたムリーヤやHSSTが次々と到着し、衛士を始め戦術機機体とその整備員等が続々と降りてくる。
士官である衛士は本館[メインブロック]に宿泊となるが、機体及び整備員については、北地区[ノース・ブロック]の格納庫と付随する施設での宿泊となる。
私とシルヴィオは、その北格納庫管制制御室にて、入庫してくる戦術機に随伴する整備要員のスクリーニングを行っていた。

来日した衛士との接触は今後も機会があるが、整備要員に関しては北地区[ノース・ブロック]を離れることは少ない。
此処に引き篭もられると逆に表立った査察が為難くなるため、今のタイミングになる。
例によってシルヴィオの性的劣情を煽るためにイチャイチャ・・・しているわけではなかった。

シルヴィオは私と少し距離を置いて座り、視線はミラーガラスの向こうに向けている。
前回それなりに際どい接触ばかり仕掛けたため、今の状況は肩透かしと言えば肩透かし。


「・・・シルヴィオ、一つ確認させてくれないか?」

「Si、Prego・・・なんなりと。」


ブリーフィング以降昼飯も共に喫食したが、衆人が居るPXで任務や機密の話をするわけにも行かず、ここまで持ち越した。
北地区[ノース・ブロック]は機密レベル1のゲスト・ハンガーだが、この管制制御室は機密レベルが1つ上がり、基本一般衛士や整備士、そしてゲストは入室出来ない。
一応、CPの遥に連絡して、サポートだというアナスタシアに盗聴の確認を取ってもらうと、問題ないとの応えが即座に返ってきた。
人の波が切れたのを見計らって、尋ねてみる。


「その・・・、貴様のABSキャリアを触発する例の能力は、本人が自覚したら使えないのではなかったのか?」

「―――ああ、そのことか。
ドクターはそう説明したらしいが、そもそもこんな能力が確認できたのはオレだけらしいからな、自覚による能力の喪失も断言されていた訳ではない。
まあ、この手の能力の場合、自覚するとどうしても自意識過剰になって機能しなくなる場合が多い、というのは確かで、その可能性を考慮して俺自身には伏せられていた、と言うのが正しい。」

「・・・それは・・・今も使えていると言うことなのか?」

「―――あの後、任務で何箇所か行ったが当面使うコトも無かったし、確認する暇もなかった。
情報部に戻った折、自ら使えないことを想定して“それ”を目的とした任務は断ったからな。
実際に能力を喪失していた場合、コトが上司にバレれば、そのまま上層部に癒着している恭順派にも漏れる可能性が大きい。
今も俺が能力を使えると思っていれば、存在するだけでABS拡散の抑止力にはなる。」

「・・・つまり、実際は確認していない・・・と?」

「確認手法が問題だったからだが・・・、実は、10日程前に香月博士[ドクター]からプレゼントが届いたんだ。」

「プレゼント?」

「残念ながら色っぽいものではなく、思考波を電気信号として捉えることの出来る簡易測定器と、俺が横浜で、件のABS撹乱思考波を出していたときの測定パターンのデータ。
―――つまり、自分の意志で同じパターン放出が再現できるか、試せとさ。
ついでに美冴の言っていた、ヨーガや禅の瞑想方法も添えて・・・頭で倒立して坐禅を組むとか、超難しかったけどな。」

「!!ッ―――まさかそれ・・・遣ったのか?」

「―――ああ。」

「・・・ヨガとか禅なんて、出任せだぞ。
そもそも前回は全てが計画だったんだから、本来私が思考を隠す必要もない。」

「―――な!?」

「・・・それに、ヨガのポーズに頭倒立坐禅なんて聞いたことない。
そんなことしてたら、・・・禿げるな。
―――完全に副司令の悪戯だ。」

「ぐむむ・・・ッッッ!」


固まってるシルヴィオに近付くと、柔らかそうな金髪をワシワシと確認する。
頭倒立するその姿を想像して、笑うよりも先に頭頂部が心配になった。
そうしている裡に劇画調の顔と背景でショックを受けていたシルヴィオが還って来る。
誤魔化すようによしよしと頭を撫でて慰めた。


「・・・で?、肝心の思考波はどうだったんだ?」

「ああ―――。
基地の女性に協力してもらって試したんだけど、結局同じパターンの思考波は再現できなかった。」

「それは―――デートしてエロエロしてただけって訳か。」


状況を想像して声が冷えこむ・・・コイツ、やっぱりサイテー。
他の女と試して、結局効果なかったのにこうしてやって来て私を指名した。
能力喪失して抑止力以外任務にならないなら、私は必要ない。
こんな役はさっさと降りる―――そう冷たい視線を向けたはずなのに、彼は嬉しそうに苦笑する。


「妬いてくれるなら嬉しいが―――まずは最後まで聞いてくれ。
誰に頼んでも・・・と言っても2,3人だけだが・・・思考波を出す前に、その気にならないことに気付いたんだ。
・・・つまり、その相手に性的劣情を抱けないんだな、これが。
相手はダイナマイト級の我儘バディもいたんで、レンツォなら大いに盛り上がったはずなのに、な。
最後にはその気が無いならバカにしないでと、怒られる始末。
仕方ないから女性に頼らず、いろいろ他の方法を試しても結局ダメ、確かに自覚すると意識してしまい発現しないのかもと思った。」

「・・・能力発現以前にその齢で不能[ED]とか、枯れるの早すぎないか?」

「ああ、―――ところがだ、俺の画像ホルダーに秘匿されたとある画像を見て妄想をふくらませた時だけは、猛烈に劣情を抱いて、そして、その時にはキャリアの撹乱思考波と同じパターンの波形を記録することができた。」

「・・・え?」

「・・・先刻言っただろ、君じゃなければ任務に支障をきたすって。
俺の我儘なジュニアは、前回撮った美冴の画像[●●●●●]にだけ、反応したんだ。」


―――なん、だ・・と?

私の画像?

状況を思い出すと赤面してしまう位なのに・・・。
それをおかずにしていただと?

・・・クッ!
そんなオチだったとは!


「・・・それは、この距離でさえ発情している・・・とでも?」

「刺激が強すぎると与える影響も過大になるらしい。
この位で、十分判別できる。」

「・・・私に取って、今の二人きりの状況は危険過ぎる、と言う事に他ならないか?」

「・・・確かに焦がれる相手と居るんだ、それだけでも俺は思考波ダダ漏れ状態になる。
でも、信用してほしいな。
―――俺が君の嫌がることをするわけがない。
前にも言ったとおり、美冴がその気になってくれるのを待つさ。」


―――ヤバイ。
オアズケをされた子犬のような切なそうな顔で言われると、こっちもそそられる。
トライアルは明日から3日間―――その間この無駄にイケメンなワンコとずっと組むのか?
確かにキャリア撹乱思考波が出せるなら任務の遂行には支障がない。
しかし、他の女ではED[ダメ]とか本当に私なんかに本気[ぞっこん]なのか、コイツ?!




「―――そら、ちょい待ちぃな。」


唐突に、ドアが開いて背後から声がかけられた。
その久しく忘れていたが聞き覚えのある声に、浮いていた心がザワリと波立つ。

反射的に拳銃を抜きながら迎撃体勢をとる。
ドアの所にば、スーツを少し崩して軽妙に着こなした若い男と、秘書風のお堅いパンツスーツの若い女。
肩口から斜めに切りそろえたストレートヘアが鋭い理知的なすまし顔の女に比して、屈託のない眩しい笑顔を向けてくる男の、懐かしい面影。


「何者d・・・・・・た、鷹兄!?」

「ああ―――、久しぶりやな美冴、・・・けど積もる話は後で、な。
任務を邪魔しはる気はあらへんが、コレやけは言わせ。
漸く還って来れたって言うに、我が愛し従妹は他ん男に陥落寸前とか、ホンマに危機一髪やわ。
―――つーわけで、そない簡単に美冴[コイツ]は譲れへんで。」


鷹兄が私への言葉などそこそこに、挑戦的な視線をシルヴィオに向けた。

は?
なんだこの状況は?

突然現れて、しかもそんな行動―――、鷹兄らしくないとも思えたが、その一方でそういった激しい面を持っていたことも知っている。
だが、かつて私に対してその激情を向けたことは無い。

―――いやいやいや!、そもそもその前に、鷹兄・・・八雲鷹徳斯衛軍少尉は、京都の帝都防衛戦で、MIAだったではないかッ!?
漸く還って来た?
本物!?
まさか、クローン・・・有り得ないか。
生きているなら、斯衛復隊は?
何故、今横浜基地に?
どうしてこの機密区画にまで入れる?


「・・・それは、宣戦布告という認識で構わないのか?」


私の混乱をよそにシルヴィオが低い声で確認する。
けど、そっちかッ!?


「当然やな!
―――半端な男になんや、絶対渡さへん。
シルヴィオ・オルランディ・・・肩書きや面なんかや納得せーへんで?」

「・・・コチラのコトは知っている様だが、そう云う君は?」

「八雲鷹徳・・・今はシャノア病院船“ミーミル”の医局員や。」

「!!、君があのβブリッド-HIVワクチンの作成者!?」

「・・・モノ[●●]βブリッド[モノ]やから世間には知られてへん筈やけど、やっぱ知っとったか。」

「馬鹿な!、開発者はまだハーバード・メディカルスクールの学生だったはず・・・。」

「お陰さんで、研究テーマで取ったそのワクチンでスキップが認められたんや。
7月にUSMLEも合格したさかい米国ならお医者はんな。
たまたま広義の意味ではβブリッドやけど、武器転用の可能性があらへん極めて平和的な利用やさかいな。
機密の縛りも無く9月から晴れて病院船勤務、尤も同じワクチンの件で、横浜[ココ]に呼ばれたってことや。」

「・・・βブリッド・・・美登里川博士か・・・!
それで北地区のセキュリティパスを・・・。」


混乱中の私を置いて、勝手に会話が進む。
βブリッド?
美登里川博士?


「ま、そやな。
―――美冴、任務中すまへんかったな。
詳しい話は、整備の受け入れが仕舞うてから・・・ウェルカムパーティん後にでも話す時間、貰ろてもええか?」

「あ、・・・ああ、勿論―――医局だとか、βブリッドだとか・・・、今まで連絡もなくさんざん人に心配させて置きながら、何処で何をしてきたのか、じっ~~くり聞かせてもらおう。」

「あ~~~手加減しいや、・・・ほなな。」


額に油汗を滲ませた鷹兄が退出する。
・・・混乱しまくったが、どうも“本物”らしい。
京都弁はどことなく女っぽいからと普段は標準語なのに、興奮したり相手が身内であったりすると京都弁が混じるから余計変な言葉になる。
態々鷹兄のクローンを造る意味など無いし、ましてや京都弁を教え込む事など有り得ない。
何よりも私の直観が認めている。
警戒した拳銃さえ完全にスルーして自分の言いたいことだけ言うのも鷹兄らしい。
そして随伴していた女性秘書?はその状況にも結局一言もしゃべらず、ただ一礼して去った。
しかも、あのはんなりとした礼は情の強い京女と見た。

だが・・・!、そう・・・ッ!!
―――生きていた・・・生きていて呉れた・・・!!

思い立って過去にケリを付けるため、消息を探し始めて2ヶ月・・・情報は行き詰っていたから九分九厘諦めていたのだが・・・ッ!
温かいものが湧き上がるのは、止めようもない。


「・・・アレが美冴の心を占めている相手か・・・。」

「・・・従兄でな、―――寧ろ幼馴染に近い。
帝都が陥ちる前に逢ったきりだった。
嵐山の景色を護る・・・そう言ってくれたのだが・・・な―――。」

「・・・・・・。」


こっちも聞きたいことはいくらでもある。
何が在ったのか・・・随分印象が変わった。
少なくとも私の所有権をストレートに主張したことなど一度もない。
そして・・・医者だと?

鷹兄は私の一つ上・・・つまり徴兵制前の学年で言っても大学3年相当・・・伊隅大尉と同じ筈だ。
確かに訓練校に入る直前までは望めば兵役免除も受けられる程の、全国一桁の成績ではあったが、故郷を護ることを希望して衛士訓練校に行った。
そこを無事終了し任官した直後の西日本侵攻、そして帝都防衛戦・・・。
MIA・・・そう、MIAなのだ。
あれから3年しか経っていないのに?
しかもハーバードだと?
極めつけにシルヴィオがずっと追ってきたβブリッド―――平和利用とは言え、それにも絡んでいるらしい。


―――しかし、今は任務を全うしなければならない。

また何処かの参加者が到着したのだろう、人波が近づいてくる。
鷹兄もそれを察知して退いたのだ。
先刻まで傍に居るだけでよかったのに、流石に今の乱入ですっかりシルヴィオのジュニアも鎮まってしまったらしい。
人波は管制室の向こうに、そろそろ達する。

私は、苦虫を噛み潰したようなシルヴィオの首にスルリと腕を絡みつかせ、その首筋に顔を埋めた。
そのまま身を寄せ、ニーハイブーツの膝を片方滑り込ませる。
シルヴィオがピクンと反応してくれた―――。

・・・この位は乱入し任務遂行を邪魔した“身内”のお詫び・・・仕方ないじゃないか、任務だよ?任務。



「・・・美冴。」

「・・・ズルイ言い方だが、[]は気にしないで欲しい。
前にも言ったが、ちゃんと答えは出す・・・中途半端は、しない。」

「・・・判った、美冴の出す答えを待とう。」


Sideout




Side 武

横浜基地 GF[グランドフロア] メインバンケット 17:00

横浜基地の本館[メインブロック]、メインゲートとAゲートの間にあるこのメインバンケット、正面の大きな一枚ガラスの向こうは戦術機の観閲式等で使用する広場となっている。
そこに、18:00からのウェルカム・パーティに向け、続々と戦術機が集まって来るのを傍に控えた純夏と眺めていた。
この集合も、一種儀礼的示威行為、かな。
名称こそトライアルだが、内容的にはXM3LITEの供与と教導である。
多様な試験小隊が居ない分、ユーコンのそれよりは若干少ないとは言え、ゲストだけで5大隊、見上げる様に林立する180機の戦術機群は、はやり圧巻としか言えない。



今回のトライアル参加は、国内から1大隊分、中華連合2中隊、大東亜連合2中隊、オセアニア連合1中隊、南米連合1中隊、そして米軍からはなんと2大隊分の、全15中隊と言う構成だった。
その一方で本土防衛軍や横浜基地の一般衛士の参加はない。
戦術機だけで7大隊を擁する横浜基地は、国連基地として極東最大規模。
それを同時に行うわけには行かず、既に順次内部トライアルを実施しているし、少なくともXM3LITEへの換装は完了している。
今回基地からは、デモンストレーター或いは教導側としてA-00中隊の一部が参加するくらい。
寧ろ基地の一般衛士は有事の際の防衛戦力として極秘裏にスクランブルの待機状態にある。

受け入れに関しても、外部からの駐留を前提としたユーコン基地に比べ、国連の1方面基地として機能している横浜基地にはそれほど大量の戦術機を滞在させる施設はない。
故に基地内に貸与ハンガーを持つのは、国内及び米国を除く6中隊分のみである。
国内富士第一基地から参加する富士教導団富士教導隊の第10・11・12中隊は帝国軍厚木基地に間借り逗留するし、今回最大規模となる米軍に関しては、横浜港に停泊した2隻のニミッツ級戦術機母艦“セオドア・ルーズベルト”“ジョージ・ワシントン”を一時的な駐留基地とすることに成っていた。
簡易整備を除く重整備は、それぞれの基地で行う為、整備要員も絞り込める。

前回との違いはまだ在る。
それはユーコン・トライアルが、BETA最前線基地の実働部隊中心とした構成だったのに対し、横浜トライアルは参加国毎に完全にその目的が異なっていることだ。
例えば、国内からの参加は富士教導団―――、XM3の理解を高め、より高度な教導を行うためのスキルアップが主目的である。
と言うのも他の本土防衛軍は既にXM3LITEで習熟を始めて居るし、最近V-JIVESやシミュレーターモードをXM3LITEで実施するための“コプロ” と呼ばれるアダプターと、それを制御するターミナル・サーバーが各基地に配備され始めていた。
勿論彼方と篁大尉、巌谷中佐含む帝国技術廠の仕事である。
正規版に劣る演算能力を補完し特定エリア内での訓練を補助するもので、当然連隊規模のV-JIVESや、“たけるちゃん”“まりもちゃん”による対戦・教導も出来るのだから、更に上を求める教導隊以外は参加数が限られるトライアルに来る意味が無くなっていた。

一方で中華連合・大東亜連合に関しては、前線を抱えるだけに最前線衛士中心のレベル向上を目的としていて、ここはユーコンと同じ、XM3導入による早急な底上げを狙う。
対して、オセアニア連合や南米連合は、寧ろテスト・開発部隊によるXM3の様子見と今後の方向性判断と言った雰囲気に近い。
各国の置かれた状況を如実に反映していたりする。

そして、残る米国は強烈だった―――。
流石彼方の言うガキ大将[ジャイ◯ン]としか言えない。
今目の前にズラリと並ぶ2個大隊分の戦術機―――米国本国でも、これだけの機体が揃ったことは無いのでは?と思うほどの陣容である。
参加はグアム準州・アンダーセン基地から米国陸軍第66戦術機甲大隊のハンター中隊とスパイク中隊、機体は全てF-22A“ラプター”。
それだけでも、24機が並ぶ。
キルレートをそのまま鵜呑みにすれば、師団規模の戦術機甲部隊を軽々と凌駕するわけで、中華連合や大東亜連合の衛士が引き攣った顔をしていた。
そこに海軍からは、同じグアム準州・アプラ海軍基地から仮宿とするニミッツ級戦術機母艦“セオドア・ルーズベルト”と共に、第102戦術歩行戦闘隊アンボニー中隊・F-18D“ホーネット”に加え、海軍特殊部隊“SEALS”から特務戦術機部隊であるスープリーム中隊は、なんと先行量産の配備が始まったばかりのF-35EMD“ライトニング”で参加。
更に同じニミッツ級戦術機母艦“ジョージ・ワシントン”を擁した海兵隊まで動員して、ブラックパール中隊・F-18E/F“スーパー・ホーネット”、トドメとして強襲揚陸戦術機甲部隊から、エル・ドラコ中隊に至っては、A-12“アヴェンジャー”まで引っ張り出してきたのだ。

何処の国と戦争をするというのか。

要するにG弾が封殺される中、戦術機による今後の戦略再構築に向け、今米軍が有する最新鋭機を全部ぶつけてきた、という布陣そのもの。
トライアルの内容も伝えてあるため、現在配備を進める最新鋭戦術機が、新たに第4世代と定義されたXFJ-01に対し、対人、そして対BETA戦闘でどう違うのか、またXM3の導入は、それらの機体に対して何処まで寄与できるのか。
それは今後の米国の軍事ドクトリン再構築にも多大な影響を与えかねない大規模な実証実験でもあるわけだ。
米国で最前線といえば、ソビエト租借地をクッションにしたアラスカと、大東亜そして日本を睨むグアムがそれに当たるわけで、最新鋭機がそこに集中するのも理解は出来るが、原子力戦術機空母2隻と2/3が最新鋭ステルス機で構成された3大隊分の戦力―――普通に考えて日本帝国を乗っ取れそうな布陣を平然と横浜に招くとか、夕呼先生も認可した殿下も肝が据わっている。
勿論、第5計画派そのものが割れている状況だから当面、そこまで強硬手段に出るだけの暴挙は無いと踏んでいたが、横須賀や横浜を含む首都圏のマルチ・スタティックス・レーダー網が完成していて、戦術機に関しては何が起こっても対処できるだけの備えはしていた。

そうなると寧ろ警戒するのは第4計画中心人物の暗殺。
当然夕呼先生の護衛には彼方が着くし、00ユニットであることを隠している純夏も常にオレと一緒、そしてスパイフィルターとして一部には知られている霞にも篁大尉とまりもちゃんがさり気無く付いていた。
逆に、Amazing5と言われる中心戦力のオレや篁大尉・まりもちゃんも暗殺対象にされておかしくないが、そこは逆に純夏や霞が“森羅”“天地”装備で警戒もしていた。

彼方?

・・・心配するだけ無駄だろうな。
アイツを本気で殺すには、生身でBETA犇めくハイヴにでも放りこまなきゃならないんじゃないか?
・・・それでも生還しそうな気もするが・・・。



―――ふぅ。

180機の戦術機が聳える威容を眺め、改めて息をつく。

このトライアルで、夕呼先生が狙っているコトも大体予想できている。
そこでの、オレの役割も解っていた。


この威圧されそうな戦術機群を前にして尚、圧倒的な存在であること―――。


それを知らしめるトライアルの日程は3日。

初日は、例によってJIVESによる中隊毎の対人戦―――相手はXM3未装備であり既存OSとの違いを理解してもらう為、例によって単騎で相手する事になる。
A-00小隊戦も検討されたが、ゲスト、特に米国側からの希望というコトで変更はない。
時間に余裕はあるので、様々なCASEの対BETA戦も並行して実施できるようにした。
その後、夜には全ての戦術機に対しXM3LITEを導入、機動データを取られたくない場合は設定でリンクしない様にも出来る仕様と成っているため、既に参加国の了承は取っている。
勿論機動データを出さない場合は、自機のデータ更新も行われない仕様になる。

2日目は全日、そのXM3を使った教導に充てる。
それに合わせて、“コプロ”も戦術機台数分用意されていた。

そして3日目、今度はV-JIVESを使った大規模な対BETA戦となる予定だ。
平面制圧からのハイヴ潜行戦、しかもヴォールクではなく喀什[オリジナル]ハイヴのデータを使った一種の無理ゲー。
オレもA-00、と言うよりは霞を除き2週目のループで共に征ったメンバーと挑むことになっている。
使用機体は、エボ4だが試製XFJ-01相当モード、G-コア装備不使用では正直攻略が超難しいルートである。
それでも考えて見れば、前のループでは性能的にさほど差がない武御雷と凄乃皇四型だけで反応炉破壊に漕ぎ着けた。
凄乃皇四型は軌道降下時のレーザー防御には必須だったにしろ、ハイヴ内で凄乃皇は寧ろ侵攻速度を遅くする原因でもあったことを考えると、その枷が外れ戦術機が1機増えることになるから、今のメンバーなら出来ないコトでもない様に思える。
存在をG-コアに依存しない試製S-11X炸裂弾と試製74式“改”近接戦闘長刀は使用可能なのだから、攻略上凄乃皇が行ったS-11による範囲殲滅や、重頭脳級を吹き飛ばした荷電粒子砲の替わりにもなるだろう。

―――そう、夕呼先生から貰った宿題は、“15中隊単独撃破”だったが、オレが自分に課したクリア条件は、“A-00小隊による試製XFJ-01モードでのオリジナルハイヴ反応炉破壊”―――これだった。




「白銀少佐―――、少し宜しいですか?」


声を掛けられ振り向けば、お澄ましモードのA-00中隊相原少尉。
後ろにはビデオカメラを構えた男と、そこに伊隅大尉、遠乃少尉が付き添っている。
傍に居た純夏がさり気無くカメラの画角を外していた。

!!・・・ってその服装は伝説[●●]のA型軍装!
しかも七分袖の冬仕様、新作ではないかッ!!
幾つかの傍系記憶の世界では、極秘の筈の横浜基地で僅か数日着用されただけなのに、その1ヶ月後には池袋や秋葉原の裏路地でパチ物がディスプレイされたとも噂されたッ!
オタクな日本人気質はこんな世界でもアングラに存在しているのかと嬉しくなったものだ。

うむむ・・・、相原少尉はもとより、遠乃少尉も、伊隅大尉だってよく似合っている!
A-00の柏木にはあとで見せて貰うのは決定事項として、ここは夕呼先生に頼んでA-01中隊だけでなく、A-00中隊の分も確保すべきか?
純夏や冥夜にも、是非おねがいします。
委員長や彩峰も似合うでしょう。
美琴にたま、霞だって、絶対可愛い筈。
もう、それだけで10[かい]はイけます。

・・・けどまりもちゃんは既に夕呼先生の犠牲になってるとして、A-00に抵抗勢力はあるか?

篁大尉は・・・うん、きっと彼方に勧められれば多分着るだろう。
彼方なら確実に賛同してくれる!
年齢的にも同い年だしビジュアル的に全く問題ない。
ユーコンの整備要員連中に送ったら、狂喜乱舞しそうだ。

ん?―――なんだろう?、最大のネックを忘れている様な・・・。

[ピキーン]!・・・月詠中尉かッ!!

・・・マズイ・・・。
あの人が着るなら、確かにこの色では軽すぎる!、―――恐らく・・・いや、絶対浮く!

―――ならばどうする?
・・・例えば、明るい国連ブルーをもっとダークにして、ニーハイ―――それも編み上げ仕様のブーツ、そこにウィップを持たせれば・・・、どうだ?
・・・・・・イケル!、これはこれで有りだ!
・・・新しい世界が拓けるかもしれないが、オレ的にはただ見るだけなのでそこはスルーってことで!

いや!、しかし!
その仕様なら、いっそ夕呼先生だってOKじゃないかッ!?
夕呼先生だって、酔えばミニスカサンタも着るんだし・・・。



「・・・少佐?」

「―――あ、スマン。」


つい視覚に幻惑されて、トリップしてしまった・・・。
3人をガン見していたわけではないので、そっちはセーフだが、見れば純夏のジト目に冷や汗が流れた。
此処でDMPは勘弁してくれ!


「・・・もうしっかりしてよね!
じゃあ気を取り直して・・・、ではXM3の発案者の白銀少佐に、今回のトライアルに期する、抱負を伺いたいと思います。」


げ、無茶振り!
そう云うコトは事前に伝えて欲しいぜ。


「・・・そうですね、先週のユーコン・トライアルに続き、ここ横浜でもこれほど大規模なトライアルが敢行できて、とても嬉しく思っています。
XM3の発案者としては、このOSに直に触れてもらい、少しでも“希望”を感じてもらえたらそれに勝る喜びは無いでしょう。」

「“希望”・・・ですか?」

「はい。
元々、戦術機でこんな挙動ができたら良いのに、というホンの小さな願いから、このOSは誕生しました。
こんな風に動けたら、こんな事が可能なら・・・XM3は、そう言った操縦者一人ひとりの“希望”を叶え、戦術機を思い通りに動かせるコトを目指しています。
そしてなにか一つ出来るように成れば、また次の要望が生まれる。
そんな風に、操縦者と共に成長していくOSでもあります。

このXM3の可能性[ポテンシャル]をこのトライアルで、来て、触れて、感じてもらいたいと思います。」

「では、そんなXM3のトライアルに関する注意点は、何ですか?」

「今言ったように、XM3は只のOSです。
BETAを殲滅してくれる剣ではなく、黙っていて守ってくれる盾でも在りません。
戦術機と操縦者を繋ぐ、カタチさえないソフトウェアに過ぎないのです。
こうしたい、ああしたい―――、こんなのはどうだ、あんなのはイケルか―――、そういった操縦者の試行錯誤がなければ戦術機が動くことすら無いのです。
そして、それがどんなに性能のよい戦術機でも、どんなに強力な兵器であっても、使用者の思い通りに動かないものでは、害悪でしかありません。
XM3の可能性を広げるのは、全て操縦者の意志に依存します。
その為には、戦術機という型に嵌っていた今までの動作を一旦忘れ、どう動きたいのか、自らの理想とする動きとはなんなのか、それを明確に創造していくことが最も重要なことです。

もう一度言います。
XM3は希望です。
より正確には、操縦者の希望する動きを戦術機に伝え、操縦者と共に成長するソフトウェアです。

これら、操縦者の希望とする動作は、何れ必ずBETAを凌駕するでしょう。
弛まない積み重ねが、やがては地球を、そして太陽系を人類の手に取り戻すでしょう。

その[きざはし]を感じてください―――。」

「・・・正しくXM3の発案者に相応しいお言葉を頂きました。
ありがとうございました。」




「・・・・・・フぅ。」


相原少尉のMCと共に、ビデオカメラの録画ランプが消えるのを見て、息を付く。


「・・・突然済まないな・・・。」

「けど、お蔭で良い画が撮れました。
ありがとうございます―――。」


苦笑いの伊隅大尉とカメラを下ろした見知らぬ男性。
服装は、帝国軍のBDUだ。


「伊隅大尉はPRに回ったんですね―――彼は?」

「ああ、今回のトライアルをPRするカメラマンを務めてくれる、前島少尉だ。」

「本土防衛軍戦術機甲戦闘団特殊戦第5戦術機甲戦隊所属―――前島正樹です。
よろしくお願いします。」

「!!―――、国連太平洋方面第11軍A-0大隊長、白銀武だ。
こちらこそ宜しく・・・。」


なるほど、な・・・。
この人が、伊隅大尉の“温泉作戦”対象者―――か。
傍系記憶でも話は良く聞いたが、直に会った記憶は・・・無いみたいだ。
2週目はアレだし、1週目も第4計画瓦解後部隊は散り散りだったからなァ。

・・・なんとなく、覇気を感じないがそれを此処でオレがツッコむ事でもないだろう。

そういえば美琴と慧が見つけた温泉の件は、既に夕呼先生には伝えたし早めに確認もするというから、近々B-15層を行き来出来るA-0隊員には公開される可能性が高いんだっけ。
トライアルにトラブルがなければ、伊隅大尉が温泉作戦を決行出来るチャンスくらいはあるかもしれない。
A-0メンバーの私室があるB-15なら、大尉権限で彼の入室許可も取れるだろう。

尤も、今でさえ肉食系女子に囲まれてる感が半端ないから、伊隅大尉が抜け駆け出来るかは、定かではない。
大人しそうだった遠乃少尉ですら、負けじと主張している様子が見て取れる。
どうせPR班をこんなチームにしたのは、夕呼先生だろうから。
A-0大隊長と言う立場上、オレが伊隅大尉にだけ贔屓ってわけには行かないし、心情的には寧ろ近しいものを感じる前島少尉に加担したいところだったりするなァ。


「この後、白銀はレセプションか?」

「ええ。
一応“顔”だそうで。」

「それもそうか。
“XM3発案者[オリジン]”、“プラチナ・コード1”、“単騎世界最高戦力[ザ・ハイエスト]”、“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”。
この前のユーコンで付いた二つ名が、“天空の魔術師[アンリミテッドソーサラー]”・・・だったか?」

「・・・・・・勘弁して下さい、イヤ、マジで・・・。」


orz・・・一撃でHPが0になる。


「そうか?、まあ、今夜のレセプションは、珍しくA-01メンバーも参加するからな。
一応、PR対応とナレーターという肩書きだが宜しく頼む。

・・・ところで、随分豪勢な食事が並んでいる様だが・・・あの副司令が奮発したのか?
2ヶ月前は国連のお偉方相手だから仕方ない、と零していたが・・・。」

「あ、いえ・・・。
アレも一種のデモンストレーションですね。
食材は“高天原”に建設中の合成食料製造プラントの先行試作品です。」

「先行試作品?」

「彼方が遺伝子技術使って、合成時に肉や魚、野菜の組織を擬似的に再現できるようにしたんですよ。
まあコストは限られるんで素材としては、最高級の天然モノには及びませんが、今までの合成食料とは雲泥だし、横浜基地はメインシェフが京塚のおばちゃんだから、どれも絶品の仕上がりです。
物資に余裕が有ると取られると困りますが、歓待の意味を込めるのに貧相なのものマズイので、落とし所としては丁度良いってことで。
個人の好みの範囲でランダム性も有しているから、画一的な味にならないとか。」

「―――そんな事まで可能なのッ!?」

「まあ、彼方だし・・・。
今までは、合成食料を敢えて不味く作ることで心理的に摂取量を控えさせ、国全体としての食料消費を抑える様にしていたみたいで、彼方も手出し[飯テロ]を控えていたんですけど、高天原が機能し始めれば食料事情もかなり改善されるから、国威発揚の意味でも公表するんじゃないかな。」


頷く面々。
喰いついた相原少尉が一番食いしんぼらしく、会場に用意された様々な皿にジュルリと唇を舐める。
けど、やっぱり、食事は基本だよな。
旨い飯が喰えると思えば頑張ることもできる。


当面の人類の勝利に対し、最大にして最後の難敵、“支配因果律”―――。
こうして少しずつ、様々なことから人類の“希望”を積み重ねていくしか無い。

―――その為にもオレは、オレにしか出来ないことをやるだけだ。


Sideout




 ※御承知の事とは思いますが、本作中の前島正樹・八雲鷹徳も名前だけ借りた別のナニカ[●●●]です。ツッコミは無しでお願いします^^;


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