<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.33455の一覧
[0] ダークブリングマスターの憂鬱(RAVE二次創作) 【完結 後日談追加】[闘牙王](2017/06/07 17:15)
[1] 第一話 「最悪の出会い」[闘牙王](2013/01/24 05:02)
[2] 第二話 「最悪の契約」[闘牙王](2013/01/24 05:03)
[3] 第三話 「運命の出会い」[闘牙王](2012/06/19 23:42)
[4] 第四話 「儚い平穏」[闘牙王](2012/07/09 01:08)
[5] 第五話 「夢の終わり」[闘牙王](2012/07/12 08:16)
[6] 第六話 「ダークブリングマスターの憂鬱」[闘牙王](2012/12/06 17:22)
[7] 第七話 「エンドレスワルツ」[闘牙王](2012/08/08 02:00)
[11] 第八話 「運命の出会い(その2)」[闘牙王](2012/08/10 20:04)
[12] 第九話 「魔石使いと記憶喪失の少女」[闘牙王](2012/08/10 20:08)
[13] 番外編 「アキと愉快な仲間達」[闘牙王](2013/01/24 05:06)
[14] 第十話 「将軍たちの集い」前編[闘牙王](2012/08/11 06:42)
[15] 第十一話 「将軍たちの集い」後編[闘牙王](2012/08/14 15:02)
[16] 第十二話 「ダークブリングマスターの絶望」前編[闘牙王](2012/08/27 09:01)
[17] 第十三話 「ダークブリングマスターの絶望」中編[闘牙王](2012/09/01 10:48)
[18] 第十四話 「ダークブリングマスターの絶望」後編[闘牙王](2012/09/04 20:02)
[19] 第十五話 「魔石使いと絶望」[闘牙王](2012/09/05 22:07)
[20] 第十六話 「始まりの日」 前編[闘牙王](2012/09/24 01:51)
[21] 第十七話 「始まりの日」 中編[闘牙王](2012/12/06 17:25)
[22] 第十八話 「始まりの日」 後編[闘牙王](2012/09/28 07:54)
[23] 第十九話 「旅立ちの時」 前編[闘牙王](2012/09/30 05:13)
[24] 第二十話 「旅立ちの時」 後編[闘牙王](2012/09/30 23:13)
[26] 第二十一話 「それぞれの事情」[闘牙王](2012/10/05 21:05)
[27] 第二十二話 「時の番人」 前編[闘牙王](2012/10/10 23:43)
[28] 第二十三話 「時の番人」 後編[闘牙王](2012/10/13 17:13)
[29] 第二十四話 「彼と彼女の事情」[闘牙王](2012/10/14 05:47)
[30] 第二十五話 「嵐の前」[闘牙王](2012/10/16 11:12)
[31] 第二十六話 「イレギュラー」[闘牙王](2012/10/19 08:22)
[32] 第二十七話 「閃光」[闘牙王](2012/10/21 18:58)
[33] 第二十八話 「油断」[闘牙王](2012/10/22 21:39)
[35] 第二十九話 「乱入」[闘牙王](2012/10/25 17:09)
[36] 第三十話 「覚醒」[闘牙王](2012/10/28 11:06)
[37] 第三十一話 「壁」[闘牙王](2012/10/30 06:43)
[38] 第三十二話 「嵐の後」[闘牙王](2012/10/31 20:31)
[39] 第三十三話 「違和感」[闘牙王](2012/11/04 10:18)
[40] 第三十四話 「伝言」[闘牙王](2012/11/06 19:18)
[41] 第三十五話 「変化」[闘牙王](2012/11/08 03:51)
[44] 第三十六話 「金髪の悪魔」[闘牙王](2012/11/20 16:23)
[45] 第三十七話 「鎮魂」[闘牙王](2012/11/20 16:22)
[46] 第三十八話 「始動」[闘牙王](2012/11/20 18:07)
[47] 第三十九話 「継承」[闘牙王](2012/11/27 22:20)
[48] 第四十話 「開幕」[闘牙王](2012/12/03 00:04)
[49] 第四十一話 「兆候」[闘牙王](2012/12/02 05:37)
[50] 第四十二話 「出陣」[闘牙王](2012/12/09 01:40)
[51] 第四十三話 「開戦」[闘牙王](2012/12/09 10:44)
[52] 第四十四話 「侵入」[闘牙王](2012/12/14 21:19)
[53] 第四十五話 「龍使い」[闘牙王](2012/12/19 00:04)
[54] 第四十六話 「銀術師」[闘牙王](2012/12/23 12:42)
[55] 第四十七話 「騎士」[闘牙王](2012/12/24 19:27)
[56] 第四十八話 「六つの盾」[闘牙王](2012/12/28 13:55)
[57] 第四十九話 「再戦」[闘牙王](2013/01/02 23:09)
[58] 第五十話 「母なる闇の使者」[闘牙王](2013/01/06 22:31)
[59] 第五十一話 「処刑人」[闘牙王](2013/01/10 00:15)
[60] 第五十二話 「魔石使い」[闘牙王](2013/01/15 01:22)
[61] 第五十三話 「終戦」[闘牙王](2013/01/24 09:56)
[62] DB設定集 (五十三話時点)[闘牙王](2013/01/27 23:29)
[63] 第五十四話 「悪夢」 前編[闘牙王](2013/02/17 20:17)
[64] 第五十五話 「悪夢」 中編[闘牙王](2013/02/19 03:05)
[65] 第五十六話 「悪夢」 後編[闘牙王](2013/02/25 22:26)
[66] 第五十七話 「下準備」[闘牙王](2013/03/03 09:58)
[67] 第五十八話 「再会」[闘牙王](2013/03/06 11:02)
[68] 第五十九話 「誤算」[闘牙王](2013/03/09 15:48)
[69] 第六十話 「理由」[闘牙王](2013/03/23 02:25)
[70] 第六十一話 「混迷」[闘牙王](2013/03/25 23:19)
[71] 第六十二話 「未知」[闘牙王](2013/03/31 11:43)
[72] 第六十三話 「誓い」[闘牙王](2013/04/02 19:00)
[73] 第六十四話 「帝都崩壊」 前編[闘牙王](2013/04/06 07:44)
[74] 第六十五話 「帝都崩壊」 後編[闘牙王](2013/04/11 12:45)
[75] 第六十六話 「銀」[闘牙王](2013/04/16 15:31)
[76] 第六十七話 「四面楚歌」[闘牙王](2013/04/16 17:16)
[77] 第六十八話 「決意」[闘牙王](2013/04/21 05:53)
[78] 第六十九話 「深雪」[闘牙王](2013/04/24 22:52)
[79] 第七十話 「破壊」[闘牙王](2013/04/26 20:40)
[80] 第七十一話 「降臨」[闘牙王](2013/04/27 11:44)
[81] 第七十二話 「絶望」[闘牙王](2013/05/02 07:27)
[82] 第七十三話 「召喚」[闘牙王](2013/05/08 10:43)
[83] 番外編 「絶望と母なる闇の使者」[闘牙王](2013/05/15 23:10)
[84] 第七十四話 「四天魔王」[闘牙王](2013/05/24 19:49)
[85] 第七十五話 「戦王」[闘牙王](2013/05/28 18:19)
[86] 第七十六話 「大魔王」[闘牙王](2013/06/09 06:42)
[87] 第七十七話 「鬼」[闘牙王](2013/06/13 22:04)
[88] 設定集② (七十七話時点)[闘牙王](2013/06/14 15:15)
[89] 第七十八話 「争奪」[闘牙王](2013/06/19 01:22)
[90] 第七十九話 「魔導士」[闘牙王](2013/06/24 20:52)
[91] 第八十話 「交差」[闘牙王](2013/06/26 07:01)
[92] 第八十一話 「六祈将軍」[闘牙王](2013/06/29 11:41)
[93] 第八十二話 「集結」[闘牙王](2013/07/03 19:57)
[94] 第八十三話 「真実」[闘牙王](2013/07/12 06:17)
[95] 第八十四話 「超魔導」[闘牙王](2013/07/12 12:29)
[96] 第八十五話 「癒しと絶望」 前編[闘牙王](2013/07/31 16:35)
[97] 第八十六話 「癒しと絶望」 後編[闘牙王](2013/08/14 11:37)
[98] 第八十七話 「帰還」[闘牙王](2013/08/29 10:57)
[99] 第八十八話 「布石」[闘牙王](2013/08/29 21:30)
[100] 第八十九話 「星跡」[闘牙王](2013/08/31 01:42)
[101] 第九十話 「集束」[闘牙王](2013/09/07 23:06)
[102] 第九十一話 「差異」[闘牙王](2013/09/12 06:36)
[103] 第九十二話 「時と絶望」[闘牙王](2013/09/18 19:20)
[104] 第九十三話 「両断」[闘牙王](2013/09/18 21:49)
[105] 第九十四話 「本音」[闘牙王](2013/09/21 21:04)
[106] 第九十五話 「消失」[闘牙王](2013/09/25 00:15)
[107] 第九十六話 「別れ」[闘牙王](2013/09/29 22:19)
[108] 第九十七話 「喜劇」[闘牙王](2013/10/07 22:59)
[109] 第九十八話 「マザー」[闘牙王](2013/10/11 12:24)
[110] 第九十九話 「崩壊」[闘牙王](2013/10/13 18:05)
[111] 第百話 「目前」[闘牙王](2013/10/22 19:14)
[112] 第百一話 「完成」[闘牙王](2013/10/25 22:52)
[113] 第百二話 「永遠の誓い」[闘牙王](2013/10/29 00:07)
[114] 第百三話 「前夜」[闘牙王](2013/11/05 12:16)
[115] 第百四話 「抵抗」[闘牙王](2013/11/08 20:48)
[116] 第百五話 「ハル」[闘牙王](2013/11/12 21:19)
[117] 第百六話 「アキ」[闘牙王](2013/11/18 21:23)
[118] 最終話 「終わらない旅」[闘牙王](2013/11/23 08:51)
[119] あとがき[闘牙王](2013/11/23 08:51)
[120] 後日談 「大魔王の憂鬱」[闘牙王](2013/11/25 08:08)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[33455] 第二十八話 「油断」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/22 21:39
魔石使いと閃光。アキとルナールは互いに武器を持ちながら向かい合う。その間には大きな距離がある。ビルとビルの間。とても飛び越えることができないような狭間。だが両者にとってはそれはあってないようなもの。特に閃光のルナールにとっては。

先に動いたのはルナールだった。速さこそが全ての彼女にとって先制することは当然のこと。常に先に動き相手を翻弄し一撃で相手の息の根を止める。単純にして明快な戦術。それが故に対処が困難な鉄壁の戦術。ルナールは光を纏いながら光速で自分がいるビルからアキがいる建設中のビルに向かって疾走する。その手に持つ戦斧に力を込めながら。瞳は確実にアキの姿を捉えている。だがアキはそんな近づいてくるルナールを見ながらもその場から動こうとしない。ルナールは一瞬、アキが何を狙っているのか思考するもすぐに切り捨てる。どんな小細工を弄しているかは分からないがそれでもルナールは自らの速さに絶対の自信を持っている。故にいかな策があろうともそれもろとも蹴散らさんとルナールは一気にアキとの距離を縮めて行く。

だがその瞬間、アキに変化が起きる。いや、正確にはアキが持つ剣が大きく姿を変えて行く。それは巨大な剣。鎖が巻きつけられている見るからに無骨な大剣。


(新たな形態……TCMの能力か……)


ルナールは瞬時にそれがTCMの十剣の一つだと見抜く。それぞれが異なる能力を有しているという剣。ならばあれも先の速度の剣や爆発の剣同様何らかの力があるはず。だがその大きさからどう見ても取り回しは悪いであろうと伺える。どんな力があるかは分からないがあんな大きな重量のあるであろう剣でカウンターを取られるほど自分は甘くは無い。ルナールはそのまま一瞬でアキの背後を取る。アキはその速度に着いて行けず目ですらルナールの姿を捉えられていない。ルナールがそのまま先の焼き回しのように完璧なタイミングでその戦斧を振り下ろさんとした瞬間、アキはその大剣を振り下ろした。

そう、ルナールに向かってではなく自らの足元、ビルに向かって。


「――――何っ!?」


ルナールは驚愕の声を上げる。それは二つの驚き。

一つはアキがいきなり自分にではなく足元、床に向かって剣を振り下ろしたこと。この状況でそんなことをするなど一体誰が想像できるだろうか。まるで気が触れてしまったと思わざるを得ないような行動。だがそれは決して気が触れたわけでも自暴自棄になったわけでもない。それをすぐにルナールは悟る。

それが二つ目の驚き。それはアキの振り下ろした剣の一撃によってあろうことかビルはまるでヒビが入って行くかのように崩壊を始めてしまう。あり得ないような規模の、破壊力を持った一撃。建設中とはいえビルを崩壊させてしまうほどの力を持った剣。それが重力の剣グラビティ・コアの力。第七の剣、凄まじい重量と十剣中でも最高の物理破壊力持った剣。その力によってビル倒壊し、天井が崩れその瓦礫が雪崩のようにルナールに襲いかかって行く。それはルナールだけ。既にアキはその場にはいない。

ルナールは悟る。先の一瞬、重力の剣グラビティ・コアの一撃に気を取られてしまった間にアキが消えてしまったことに。恐らくは先程見た瞬間移動の能力。ルナールはこのビルの倒壊に自分を巻き込み倒すことがアキの狙いだったのだと見抜く。


(なるほど……確かに頭は回るようだ。しかし……)


倒壊し、今にも生き埋めにされそうな状況においてもルナールは全く焦る様子を見せない。むしろ冷静さが増しているのではなないかと思えるほど。それは歴戦の戦士が持てるもの。どんな状況においても焦ることなく対処できる経験とそれに伴う実力を持っている証。それを証明するかのようにルナールは再び閃光となりながら凄まじい速度で動き始める。崩壊を始めたビルの中を縫うように瓦礫を避けながら。避けれないと判断したものはその斧による一撃によって粉砕しながらビルから一瞬で脱出する。それは数秒にも満たない時間。まさに閃光の二つ名に相応しい絶技。そしてそんなルナールの動きにようやく追いついたかのようにビルが倒壊し跡形もなく崩れ去って行く。凄まじい衝撃と粉塵を撒き散らしながら。幸いにもここは無人街。一般人が巻き込まれる心配もない。もっともそれも計算に入れてルナールはこの場を戦場に選んでいたのだが。

そして煙が晴れるのと同時にルナールはアキの姿を捉える。それは先程のビルの屋上。その位置も先と変わらない。ルナールは恐らくは決められた場所にしか移動できない制約がアキの持つ能力にはあるのだと見抜きながらも再び疾走する。ビルの屋上という見晴らしのいい場所。もう先のような小細工は通用しない。文字通り最後の一撃を以て勝負を決する。


(――――もらった!)


瞬間移動したかのような動きを見せながらルナールはアキの背後を取ると同時にその斧を振り払う。その風圧のみで身体を切断できるのではないと思えるほどの暴風、暴力によって。ルナールは確信する。自らの勝利を。だが


「――――っ!?」


その一閃はまるで空を切るかのように手ごたえがなかった。まるで幻を斬ってしまったかのように。同時に切り捨てたアキの姿が消え去っていく。まるで蜃気楼のように。ルナールは悟る。これが罠だったのだと。恐らくは先のビルの倒壊もこれを準備するための布石。なによりも自分自身の甘さ。TCMと瞬間移動の能力。それが相手の手札だと思い込んでしまったが故の間違い。だがそれは無理のないこと。複数のDBを扱うことができる存在など世界に片手を数えるほどしかいないのだから。そしてその内の一人がアキ。DBマスターと呼ばれる所以。

ルナールがイリュージョンによる幻を切り払った瞬間にまるで突然現れたかのようにアキが姿を見せる。それはイリュージョンによる透化。自分の幻を配置することでルナールの意識をそちらに向けさせその隙を狙うためのもの。初見であればいかにルナールといえども対処できない罠。

アキはそのまま片手でデカログスを振り下ろす。それは爆発の剣エクスプロージョン。相手を殺すことなく制することができる剣。それがそのままルナールに向かって振り下ろされる。閃光の速さを持つルナールならそれを躱すことは造作もないこと。だがこの瞬間だけは違っていた。完璧に虚を突いた、そして攻撃の直後という絶対の隙。躱すことができない、許されない一撃。故にここに決着がついた――――はずだった。


「―――――」


それはどちらの声だったのか。それとも息遣いだったのか。それすらも分からない刹那。だがそれは起こった。あり得ない事態。それはアキの攻撃。それは間違いなくルナールに当たった。あれを避けることなど閃光でも不可能。だがその不可能を可能にする力をルナールは持っていた。

アキはその瞳に捉える。その光景を。デカログスがまるで光のように粒子になっているルナールの身体を貫いていることを。まったく手応えがない、にも関わらず間違いなくそこに存在しているルナールの姿に。

『閃光化』

それがルナールの切り札。閃光のDB『ライトニング』を極めた者だけが扱うことができる奥義。

自らを閃光、光に変化することでいかなる攻撃も文字通りすり抜け、無効化してしまう反則に近い能力。だがそれ故に弱点も存在する。限られた一定時間しか使えないこと、そして使用後は一定時間光速の移動速度が半減してしまうこと。ルナールにとってそれは諸刃の剣。故にこれを使った際には必殺。その証拠に今までこれを使われた相手で生きている者はいない。


「終わりだ」


ルナールは崩れた体勢を立て直しながらも斧を振りかぶりながら最後の一撃を振るわんとする。そこには絶対の自信と相手に対する称賛があった。自らの切り札である閃光化を使わせたのだから。だがそこまで。この切り札の恐ろしさ。それは相打ちであってもルナールの勝利となること。そして自らの攻撃が無効化される事態を前にして相手に隙が生じること。それはまさに先の幻に騙されたルナールの焼き回し。だが違うことがあるとすれば。

アキには全くその隙が見られなかったこと。


「なっ!?」


ルナールはその光景に驚愕するしかない。それはアキの姿。そこには全く焦りも動揺も見られない。自分の攻撃が無力化されてしまったにも関わらず。どんな人間でも攻撃の際には隙が生じる。ましてや先の一撃は勝利を確信する一撃だったはず。ルナールは知らなかった。先の爆発の剣エクスプロージョンはアキにとって布石、保険であり切り札ではなかったことを。

それは左手。デカログスを持っていないアキの手。それが伸ばされる。ルナールはそれを見ながらも恐れは無い。今の自分は閃光化している。どんな攻撃も今の自分には通用しない。ルナールはそのまま斧による一撃をアキに向かって振るわんとする。だがそれよりも早くアキの手が動く。それは初動の差。閃光化によるルナールの初動の遅れとアキの隙がない動き。それは刹那に満たない差。だがそれは覆せない大きな紙一重の差だった。

アキの手が触れる。それはルナールの体ではなく、その戦斧。そしてその瞬間、勝負は決した―――――




瞬間、世界が変わった。


「っ!?」


ルナールは突然の事態に思わず動きを止めてしまう。だがそれは無理のないこと。何故ならルナールの視界には先程までとは全く違う光景が映っていたのだから。そこはまるでどこかの部屋。見たこともない薄暗い場所。先程まで自分はビルの屋上で戦闘をしていたはず。なのに何故こんなところに。

ルナールは混乱しながらもすぐさま自らの手にある戦斧に力を込める。何が起こったのかは理解できないもののまだ戦闘中。その証拠に目の前にはまだアキが存在している。だがアキはルナールの混乱の隙を突き大きくルナールから距離を取っていた。それが何を意味するか直感で感じ取ったルナールはそのまま閃光となりながらその一閃でアキを切り払わんとするもそれよりも早くアキはその場から消え去ってしまう。それは先の幻ではなく間違いなく瞬間移動の類。


(……! 逃がしたか……!)


ルナールは自らの失態を悟りながらもすぐにその場から、部屋から脱出する。そこが敵の罠である可能性、そして今の状況の確認のために。窓から脱出しながらもルナールは外の状況を確認する。そこには静かな街並みがある。だがそこはエクスペリメントではない。見たことのない街だった。


(ここは……そうか。さっきの奴の狙いはこれか……)


ルナールは高速で街の建物の上に移動しながらも理解する。今の自分の状況、そしてアキが何を行ったのか。

瞬間移動による自分の強制移動。それがアキの狙いだったのだとルナールは気づく。先の攻防で剣ではなく手を伸ばしてきたのもそれが理由。自分に触れることで瞬間移動に巻き込むためのもの。閃光化によって自分の身体には触れられないと瞬時に判断し斧にその対象を切り替えたのはまさに驚嘆に値する。ここまで見事にやられればむしろ清々しさすら感じるほど。もっともあのまま戦闘を続けていれば危うかったのは自分かもしれない。すでに閃光化は解け、速度は半減している。それでも音速の剣シルファリオン程の速度はあるのだがルナールにとってはそれは致命的な隙。ましてやあれほどの力、自分と同格の力を持つであろう相手に対してそれはあまりにも大きな差となりうる。

ルナールはひとまず敵の追撃と仲間などが存在しないことを確認する。どうやら本当に自分を強制移動させることが相手の目的だったらしい。しかしその瞬間、ルナールはある疑問に行きつく。それは


(奴は何故私を移動させる必要があった……?)


どうしてアキが自分を移動させたのかということ。自分にとって有利な場所や状況に持って行くために移動させたのなら納得がいく。だがアキは自分に追撃を加えることなく去って行ってしまった。そしてもし自分から逃亡したいならそのチャンスはいくらでもあったはず。瞬間移動の能力でここに一人で逃げればいいのだから。だとすれば考えられる理由はたった一つ。

自分をそうまでしてエクスペリメントから遠ざけたい理由があの男にはあったということ。

ルナールはそのまま服から小さな石を取り出す。それは通信のDB『レジオ・ウェイブ』同じDBを持つ者と通信し会話ができる能力を持つDB。


『聞こえるか、私だ』
『ウン、聞こえるよ。ルナール様どうしたの? 最近連絡がなかったけど、ウン』
『色々あってな。それよりもお前達はまだ船には戻っていないな?』
『ああ、まだ何とかって魔力を探してる最中だよ。いい加減帰りてえなあ』
『そうか、ならちょうどいい。至急エクスペリメントに向かってくれ。時間はかかるかもしれんが私も後で合流する』
『エクスペリメント? 分かったよ、ウン。でも何をすればいいの?』
六祈将軍オラシオンセイスの監視と調査だ。だが戦闘に参加する必要は無い。特にレイヴマスター……いや、ローブを被った剣を持つ男には手を出すな。お前たちでは荷が重い』
『なんでえ、そんなに強い奴がいるのに戦っちゃいけねえのかよ』
『分かった、じゃあ先にエクスペリメントで待ってるよ、ウン』


子供と大男のような声が騒がしくしゃべり続けているのを強引に切りながらルナールは再び動き始める。まずは自らの位置の把握とエクスペリメントへ戻るために。恐らくそのころにはあの男もいなくなっているだろうが命令した二人ならその様子を監視することはできるはず。

そしてルナールはある疑念を抱いていた。それは先のローブの男。その剣からレイヴマスターかと思っていたがそうではない可能性が強まった。それは先の瞬間移動。その際ルナールは感じ取った、それがDBの力であると。そしてもう一つ。それとはまた違う異質な力。


(シンクレア……か……まさかとは思うが、用心するに越したことは無い……)


ルナールはそのまま様々な疑念と思惑を胸に動き始めるのだった―――――



「はあ……何とかなったか……」


ビルの屋上で座りこんでいるローブの男、アキはすでに疲労困憊といった風に大きな溜息を吐く。だが当たり前。先程までBGの副船長と戦闘を行っていたのだから。いかに実力をつけてきたアキといえども簡単にいく相手ではなかった。むしろよく対処できたといったほうが良いだろう。


『まったく……もう少し余裕を見せたらどうだ? いつもいつもギリギリの戦いをしおって……そんな趣味があるのか?』
『やかましいっ! 誰がそんな趣味もつか! 大体何もしてねえお前が偉そうなこと言うんじゃねえ!』
『失礼な。手を貸してやろうと言ったのに断ったのはお主だろう』
『ぐっ……そ、それは……』
『まあいい……一応閃光の主は追い払えたのだからな。だがどういうつもりだ。あのまま続けていれば勝機はあったろうに』
『い、いいんだよ……こっちも一杯一杯だったし……レイナに近づかせないっていう目的は達成したんだからな……』
『ふむ……相変わらず過保護な奴だ。そんなに六祈将軍オラシオンセイスを自分の配下にしたいのか? そんなことをせずともジェロを呼び出せばよかろうに……』 
『っ!? い、いや……ジェロはその……き、切り札みたいなもんだからな! ほいほい呼び出せるようなもんじゃねえんだよ!』
『くく……まあそういうことにしておこうか』


マザーはからかうような笑いを漏らしながらアキを挑発するもアキはもはや相手にするだけ無駄だとあきらめる。そんな余裕は今のアキにはなかった。それほどに先程の攻防はアキにとっては綱渡り、命がけのものだった。


はあ……何とかなったけどマジで死ぬかと思ったわ……何で俺、こんなギリギリの戦いばっかしてんの? ちょっとは楽勝の展開があってもいいと思うんだけど。やっぱこの世界はハードモードに違いない……っていうかあのルナールの力は何!? 光になってすり抜けるとか反則にも程があんだろう!? 


アキは思い返しながらも戦慄する。それはルナールの切り札。あんな力があるとは思っていなかったアキはまさに九死に一生を得たに等しかった。もし何の策もなしに飛び込んでいれば間違いなく首が飛んでいたところだったろう。

イリュージョンとワープロードを使った戦法。それによりルナールをこの街から違う離れた街へと移動させること。それはアキのたてた策だった。イリュージョンの発動を直にみられないためにビルの崩壊という目くらましを行い、ルナールの身体に触れることで強制的に一緒に瞬間移動をするというもの。だが直前でアキは作戦を変更した。

それはデカログスによる攻撃を加えること。当初はイリュージョンによって隙が生まれたルナールに向かってすぐに手を伸ばす予定だったのだがそれをアキは変更した。いうならばそれは直感。今まで上手く行く思った瞬間に予想外の事態が起こるという理不尽を何度も経験してきたアキだからこそ持てる危機察知。石橋を叩いて渡る、もといチキン、臆病者の為せる技。もっともそれによってアキは命を取り留めた。もし最初から手を伸ばしていればその瞬間、閃光化によってそれは失敗に終わり次善策を用意していなかったアキはそのまま切り裂かれていたのだから。

そして作戦が成功したのはDBたちの協力のおかげ。いかにアキといえども複数のDBを同時にあれだけの刹那の時間に扱うことはできない。故にその発動のタイミングは全てDBに任せアキは自らの動きだけに意識を集中することができた。でなければあの作戦は成功しなかっただろう。


ふう……ほんとに走馬灯が見えた気分だった。何か時間が凝縮されるっている感覚を初めて味わったわ……もう二度と御免だけど……とにかくこれでイレギュラーは排除できたし後はレイナに会いにいくだ……け……?


瞬間、アキは感じ取る。それはレイナの持つDB、ホワイトキスの気配。それがまさに戦闘中であることが分かる。アキはそれに驚くことしかできない。一体レイナは誰と戦っているというのか。そしてもう一つ。

それは光と音。レイナが戦闘を行っていると思われる場所から離れた場所。そこから光と音が鳴り響く。そう、まるで雷が落ちたかのように。

アキは悟る。既に魔導精霊力エーテリオン編が始まっていることに。しかも恐らくは自分が想像している以上に厄介な状況で。知らずその顔は蒼白になり、背中には冷や汗で濡れてしまう。

エリーはマジックディフェンダーを付けているためジークに補足されるはずはない。ならばエリーは原作とは異なりジークには見つからず、ジークはハルを狙う形で同時にエリーに接触するはず。それがアキの見通しだった。

だがレイナが戦っている相手はDBを持っていない。それはすなわち戦っているのはハル達の誰かということ。レイナにエリーを狙う理由は無い。ならジークに狙われているのは誰なのか。


『……? どうした、そんなに慌てて……どこに行く気だ?』
「うるせえ! ちょっと黙ってろ!」


アキは弾けるように動き出す。その手に音速の剣シルファリオンを持ちながら。恐らくは最悪に近い展開になるつつある状況を打破するために―――――


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.046302080154419