人気が全くないガラージュ島の森の奥深く。そこには一つの洞窟があった。だが島民は誰ひとりその存在を知らない。何故ならそこは一人の少年が根城にしていた場所だったから。
「はあ……」
どこか憂鬱気な溜息を吐きながらもローブを身に纏った人物が洞窟の中にある松明に火を灯す。だがそこには全く違和感がない。まるで住み慣れた家に帰ってきたかのよう。当たり前だ。何故ならローブの人物にとってこの場所はもう一つの故郷、隠れ家であったのだから。
少年はそのままローブを頭から脱ぐ。そこには黒い短髪、そして全身黒い服を纏っている少年、アキの姿があった。だがアキにとっては久しぶり、嬉しい帰郷のはずにも関わらずその表情には全く喜びも見られない。仕事帰りのサラリーマンのような疲れ切った雰囲気がそこにはあった。
(ちくしょう……マザーの奴……帰ったら覚えてろよ……!)
アキは苦虫をかみつぶしたかのような表情を見せながらこの場にはいないマザーに悪態をつく。それは数時間前。アキはマザー達と共にパンクストリートからヒップホップタウンへと戻ってきた。アキとしてはまさに九死に一生を得た、死地から帰還を果たしたに等しい気分。何故なら四天魔王であるジェロと模擬戦と言う名の殺し合いを行い、何とかそれを乗り切ったばかりだったのだから。とにもかくにも生還を果たし、パンクストリートに拠点を作るという当初の目的も達成できたアキは安堵していた。あとは一旦マザーをエリーに預けた後ガラージュ島の様子を見に行くだけ。そろそろ原作が始まる時期。正確な日時が分からない以上見張る必要があったからだ。だがアキは想像もしなかった事態に狼狽することしかできなかった。
それは自分を出迎えたエリー。だがその姿はいつもと違っていた。何故かこれ以上にないくらい不機嫌、もとい怒っていたのだ。だがアキにはその理由も見当がつかず焦るしかない。一体何に怒っているのか。だがそれはエリーの言葉によって明らかになる。
『もう、遅くなるならちゃんとそう言ってよね! 昨日は夜までずっとここで待ってたんだから!』
アキは一瞬エリーが何を言っているのか分からなかった。だがすぐにその理由に気づき慌てて自分の腕時計に目を向ける。それは時刻と共に日付も記されているもの。アキはその事実に顔を真っ青に、額と背中に嫌な汗を流すしかなかった。何故なら自分がパンクストリートに向かった日から既に一日経過してしまっていたのだから。だがどうしてこんなことになっているのか。自分はその日の内にここに戻ってくるはずだった。それなのに一日も時間が経っているというあり得ないような事態。そしてようやくアキは悟る。そう、自分にはパンクストリートにいた時間で意識を失っていた時間があったことに。
それはジェロによって氷漬けにされている時間。つまりすぐに自分は目覚めたと思っていたのは間違いで実は一日以上アキは氷漬けにされていたのだった。
アキはそのあまりに非情な、というか無慈悲な仕打ちにマザーに向かって食ってかかって行く。当たり前だ。死にはしないと言っても自分が知らない内に一日以上氷漬けのまま放置されていたのだから。だがマザーは全く気にした様子も反省した気配も見せないまま。ある意味いつも通りのドSっぷり。マザーも別に悪意があったわけではなく久しぶりに会った友人とでもいうべきジェロとの会話に夢中になってしまっただけ。アキとエリーを除けば自分と対等に話してくれる存在はマザーにはおらず貴重な友人。もっともその内容はアキに関するもの。一言でいえば惚気に近いもの。ジェロがアキのことを認めたのは強さもあったのだがそれ以上にマザーがそこまで入れ込んでいる存在に興味が引かれたのが大きな理由。だがアキは自分が知らない間に恐ろしいフラグを立てていることなど知る由もない。
そんなこんなで慌てながらアキはガラージュ島へと出発することになった。息つく暇もなく。もちろんマザーを置き去り、もといエリーに強引に預けたまま。マザーとエリーからの抗議の声を一身に受けながらも。マザーについては自業自得で気にかける必要もない(というか連れていけるわけもない)がエリーに関しては後でフォローしなくてはと思いながらもアキはただ必死だった。一日経過している間に原作が開始してしまっていたら。ただ開始されるだけならいいがもし不測の事態でも起ころうものなら全てがおしまいになってしまいかねない。
だが結果からいえば問題はなかった。既に最初の敵、フェーベルというDCの下っ端との戦闘は終わってしまっていたものの特に大きな違いはなかったらしい。微妙に差異はあるものの気にしなくてもいいレベル。そうアキは思っていた。先程のハル達のやりとりを聞く、いや盗み聞きするまでは。
はあ……どうも、アキです。ダークブリングマスターです。今は懐かしい洞窟の中で休憩しています。何というかやっぱここは落ち着くわ。何だかんだで島にいた時の半分以上はここで暮らしてたわけだしな……あんまり思い出したくない記憶も多々あるのだがそれはまあ置いておいて。
ようやく始まりました。原作が。どれだけこの時を待っていたか。この世界に来た時から数えれば約十年か? 本当に長かった……なんか感無量だがまだ気を抜くわけにはいかない。むしろこれからが本番だと言えるだろう。
さっきまで俺はハルの部屋に忍び込んでいた。もちろんイリュージョンとハイドの力を借りながら。この二つを併用すれば透明人間(気配もなし)になれるようなもの。チートにも程があると改めて実感するな……なんかスパイとか暗殺に使えば好き放題できるような気がする。まあ戦闘には使えない制約があるので万能と言うわけでもないのだが……っとそういえば驚いたのがプルーだ。一目見ただけでそれがプルーだと分かりました。ひたすらに不思議な生き物でした。まあナカジマに比べたらもう驚くものなんてあるわけもないのだが。ちょっと触ってみようとしたのだが何故か逃げられてしまった。しかもめちゃくちゃ怯えながら。俺の存在がバレてしまったかのよう。流石はレイヴの使いといったところかもしれん……ただのマスコットキャラではないということか。というかそのビビり方が尋常じゃなかった。マザーを持ってるわけでもないのに。あれか。マザー持ってなくても何かヤバい力が俺から滲み出てるのかもしれん。ダークブリングマスター的な何かが……俺、ほんとに大丈夫か? もしかして知らない間に人間やめて行ってるんじゃ……き、気のせいだよな? うん、きっとそうだ。あまり深く考えないようにしよう……あ、それと後で気づいたんだがプルーには近づかない方がいいかもしれん。プルーの鼻にはレイヴ同様DBを壊す力がある。もし何かの弾みで俺の持ってるDBが壊されたら洒落にならんからな……とそういえばさっさとやっとくか。
アキは思い出したかのように服の中から布に包まれた小さな何かを取り出す。そしてそれを地面に広げる。そこには粉々に砕け散ってしまっているDBがあった。
ごめんな、フルメタル……俺がもうちょっと早く来れればこんなことには……
アキは申し訳なさそうな表情を見せながら粉々になってしまったフルメタルを洞窟の中に埋葬していく。それがアキが一度この洞窟に戻ってきた理由だった。
当初の計画ではアキはフルメタルがハルによって破壊される前に救い出すはずだった。イリュージョンの力によって破壊されてしまった風に見せかけて、だ。それはあまりにもフルメタルが不憫だったため。四年前は馬鹿な主のせいでマザーに喧嘩を売ってガグブル状態になり、つい最近にはまたシュダによってまたマザーに喧嘩を売って失神し、そして極めつけはハルによって破壊されてしまうという結末。はっきりいって呪われているとしか思えないような運命。ある意味自分以上に過酷な定め。それに感じ入るところがあったアキはフルメタルを助けようとしたのだが結局間に合わなかった。アキにできることはせめて供養してやることだけだった。
安らかに眠ってくれ、フルメタル……成仏しろよ……。ふう……とりあえずこんなもんでいいか。今度また花でも持ってくるからな……ん? イリュージョン? 大丈夫だって泣いたりしてないっつーの……師匠も心配しないでください……よし! いつまでも落ち込んでても仕方ないしな、気持ちを切り替えて行こう!
アキは一度大きく深呼吸しながら今の状況を整理することにする。思い出すのは先程までのハル達のやりとり。アキにとっては思ったよりも予想外の出来事が起きていた。
それは自分、アキという存在の影響の大きさ。
確かにアキはある程度ハルが自分のことを気にかけているであろうことは想像していたがまさかあそこまでとは思っていなかった。それほどハルにとってのアキという存在は大きなものだったらしい。アキもレイヴやシバと出会うことでハルが自分の存在に気づけるようにいくつか手掛かりを残していた。デカログスの力を見せたこと。フルメタルを回収したこと。全てが全て狙ってやったことではないが気づいてくれればラッキー程度のもの。だが事態はアキの想像をはるかに超える展開を見せていた。
まずはアキがDCに属していることを既に知られてしまったこと。まさかこの段階でそれがバレるとは思っていなかった。それは先の出来事、六祈将軍の選抜が原因。何とかアキは六祈将軍になるという最悪の事態を避けることはできたものの結局DCの幹部になることを避けることはできなかった。そのためアキの存在はかなり広まってしまっている。しかもお決まりの二つ名までついているらしい。もっともそれがどんな二つ名なのかアキ自身は知らない。何度かDCの構成員に尋ねたことがあるのだが結局教えてもらえなかったからだ。その理由をアキはもうすぐ知ることになるのだがそれは割愛。
もう一つが偶然ではあるがハルがほぼ正解に近い形でアキの状態を知ってくれたこと。つまりはアキがDBによって操られているということに。その瞬間、アキはまさに歓喜の声を上げそうになってしまった。もっともデカログス達の手前そんなことはできず心の中でガッツポーズをするのにとどめておいたのだが。だがアキはある不安に襲われていた。それは
あれ……? なんかハルが旅立とうとする理由が変わってきてない? ということ。
それはアキにとっては別段問題ないこと。むしろばっちこいなのだが一抹の不安を感じずにはいられなかった。全てが原作通りに行くとは思ってはいないもののそれでいいのだろうかと。確かに旅立つだけならその理由でいいかもしれない。だがレイヴマスターとしてはそれはどうなのか。だがアキもどうしたらいいのかも分からずお手上げ状態。そして何よりもアキは罪悪感に襲われていた。
それはカトレアのこと。先程の感情的になり家から出て行ってしまった姿。その原因が自分にあることにアキは申し訳なさで一杯だった。確かに原作でもカトレアはレイヴの話を聞いた瞬間、ハルに感情的に怒っていたがあれほどではなかった。間違いなくその理由の一端は自分にある。同時にそこまで自分のことを心配してくれるカトレアとハルに感謝せずにはいられなかった。本当なら姿を見せて自分が無事だと知らせたいのだが色々な理由でそれもできない。
すみません……カトレア姉さん。ごめんな……ハル。こんな俺のために……何だろう、心が痛むわ。なんか自分勝手に動いてる自分の浅ましさが恥ずかしくなってくる……だが今更やめることもできん……よし! ちゃんと全部終わったらここに帰ってこよう! それでその時に謝ろう! そのためにやることはちゃんとやっておかねば……!
アキは決意を新たにこれからのことを考える。もっともほとんどやることなどないのだが。今回のアキの目的はハルがレイヴマスターになり島を旅立つことを確認すること。ただそれだけ。先程のように姿と気配を消しつつハルの動向を観察すると言う簡単な、悪く言えばストーカー行為をするのが目的。直接手を出したり姿を現す必要もない。もし自分が介入することでハルが旅立たなかったりすれば全てが台無しだからだ。だが現状はあまり芳しくない。
ハルは家に残ったまま。カトレアは街の方へ出て行ってしまいシバはプルーと共に海に向かって行ってしまった。原作とはタイミングや行動が異なっている。恐らくはアキという異物が紛れ込んでしまった影響だろう。
だがアキは最初こそどうするべきか狼狽していたがすぐにそこまで致命的な差異はないことに気づく。何故ならまだ大きな出来事、イベントが残っているのだから。シュダとの出会い、そして戦闘という物語にとって大きな意味を持つもの。序盤のハルの因縁の相手と言っても過言ではないシュダとの邂逅がこの後起こるはず。原作でもその戦いがハルが島から旅立つきっかけ、決意に繋がっていた。なら自分はそれを見守ればいいだけ。何よりもこの場にいるだけでも、ハルを監視しているだけでもアキにとってはとてつもないリスクを背負っている。
それはアキが持つDBたちの存在。いくらマザーがいないにしても、アキに忠誠を誓ってくれているとしても必要以上にハルの力に、レイヴマスターに協力すればいつマザーに伝わるかは分からない。今回の島への潜入もDCがガラージュ島を襲撃すると言う情報を手に入れアキはそれを防ぐためにやってきたということにしている。その際に偶然ハルがレイヴマスターになり、自分にとっては弟同然のハルには手を出すことができずひとまずは見逃すというかなり、というか無理がある言い訳をしたところ。それでも自分を信じてくれるDBたちを裏切っている事実に罪悪感を覚えながらもアキは己を鼓舞する。とにかくこの場を乗り切ればいいと。ここさえ乗り切ればあとはエリーとハルを引き合わせるだけ。当初の予定では獣剣のランスまでは監視する予定だったがあきらめるしかない。思った以上に自分にかかるリスクが大きすぎる。そこまでマザーを、DBたちを誤魔化しきるのは難しそうだ。何よりもそこを突破できないようならハルたちもそれから先を乗り切ることができるはずもない。あくまでこの物語の主人公はハルたち。自分はラスボス……ではなくサブキャラでしかないのだから。
アキは大きく背伸びをしながら洞窟を後にする。自分が介入することなど、出張ることなどないとないだろうと安心しきったまま。
そんな甘い展開が自分に許されるわけがないことをアキはすぐに身を以て味わうことになるのだった――――
「ごめんなさいゲンマ。突然おしかけちゃって……」
「でひゃひゃひゃ! 今更なに言ってやがる。いつもお前には世話になってるからな。気にするなって」
店の主であるゲンマはいつものように癖のある笑い方をしながら目の前の店のカウンターに座っているカトレアに向かって告げる。だがそんなゲンマとは対照的にカトレアはどこか沈みこんだ表情で座りこんでしまっている。いつものカトレアからは想像ができない姿。何とかそれを元気づけようと笑い続けるものの流石に無理があると悟ったのかゲンマは一度大きな溜息を吐いた後再びカトレアに目を向ける。
カトレアが突然店にやってきたのは一時間ほど前。初めはハルと喧嘩でもしたのかと思っていたのだがどうやらそんな簡単な事情ではないことを悟ったゲンマはそのままカトレアの相談を受けることになった。今はおおよその事情をカトレアから聞き終わったところ。だがゲンマもカトレアの事情については知ってるためどうアドバイスするべきか悩んでいたものの、いつまでも誤魔化してはいられないと腹をくくり話を進めていくことにする。
「しっかし今になってレイヴとはな……これも運命って奴なのかもな……」
「………」
ゲンマの言葉。レイヴと言う単語にカトレアは一瞬反応を示すもののやはり黙りこんだまま。何故ならそれはカトレアにとっては禁句、トラウマに近いものだったから。
「だけどいい機会なんじゃねえか……? お前だって分かってたんだろ? ハルがいつかこの島から出ていくだろうってことは……」
「……ええ。四年前にアキがいなくなった時からそうなることは私も何となく分かってたわ……」
カトレアはゲンマの言葉に頷きながらも思い出す。突然いなくなってしまったアキ。直接その現場をカトレアは見たわけではなかった。だがそれを見ていたハルの言葉と様子からそれが嘘ではないことは明らかだった。あの時のハルの様子は今でも目に焼き付いている。
島中を何日も探し続ける姿。いくら言ってもそれをやめようとはしなかったハル。ようやくそれが収まったもののハルがアキをずっと気にしていたのは分かっていた。そして恐らくは島の外に探しに行こうとしていることも。ナカジマに外の世界のことを聞いたり、図書館に行って慣れない本を開いてみたり。それでもハルはカトレアにバレないようにしていた。それはカトレアに知られれば怒られると思ったこと、そして何よりも島にカトレアを置いて行くことになってしまうことにハル自身が罪悪感をもっていたから。そのためハルは一度もそのことをカトレアに明かしたことはなった。
だがカトレアには分かっていた。ハルがアキを探しに行きたがっていることを。恐らくアキだけではなく心のどこかでは父であるゲイルもその中に含まれているのだろう。カトレアもそれを考えたことがないわけではない。アキはどこか大人びた子どもだった。きっと今もどこかで元気にやっているに違いない。それでも心配が尽きないが。もしアキが、父が帰ってきてくれれば。きっと四年前以上に楽しい毎日が送れるに違いない。そうなってくれればどんなにいいか。
「私、ハルが島を出ることは仕方ないって思ってる。きっとそれは止められることじゃない。あの子も男の子だしね……でも……」
「……レイヴ……か……」
ゲンマはどこか頭をかきながらカトレアの言葉の先を口にする。レイヴ。それがカトレアがハルが島を出ることに反対している理由。もしレイヴに関係なく島を出て行こうとしているのならカトレアもここまで反対することはなかっただろう。何故ならかつて同じ理由で島を出て行き、帰ってきていない人がいるのだから。
「カトレア……そろそろゲイルのこと、ハルにも話した方がいいんじゃねえか?」
「………」
『ゲイル・グローリー』
ハルとカトレアの父であり、ハルが生まれてすぐに島を出て行ってしまった人物。生きているのかどうかも分からない。だがその別れ際の言葉は今もカトレアの脳裏に残っている。
レイヴを探しに行く。
それが父の残した言葉。そして帰ってこない理由でもあった。そして奇しくもそれが今この島にある。しかもハルもそれに巻き込まれている。アキを探しに行くだけならまだいい。だがあの石に、レイヴに関わればハルも父のように帰ってこないのではないか。そんな不安と恐怖がカトレアにはあった。そのためあんなに感情的にハルに接してしまった。大けがを負っているシバに対しても。そのことに大きな自己嫌悪を感じながらもカトレアはそのまま沈み込んでしまいゲンマも肩を落とすしかない。ゲンマとしてはハルとカトレア。どちらの気持ちも分かる。そして何よりもゲンマはゲイルが生きていると信じていた。それは友人として。ゲイルが家族を捨てるような男ではないことを誰よりも知っているから。もしこの場にアキがいればカトレアにどんな言葉をかけるだろうか。そんなことを考えていると
「……? 何だ?」
「……?」
まるで何か騒ぎがあったかのような声が店の外から聞こえてくる。こんな昼間から何事なのか。特に今日は祭りのような行事があるとは聞いていない。ゲンマとカトレアが突然の、不自然な事態に顔を見合わせた瞬間突然店のドアが開けられる。まるで客が訪れたかのように。だがそれは客ではなかった。一目でその人物が只者ではないと二人は悟る。
その男は村の者ではなかった。この島の暑さの中にも関わらず不釣り合いなコートを羽織っている。そしてその腕には大きなブレスレッド。何よりも目を引くのがその瞳。まるで獲物を探しているかのような光がそこにはある。危険な空気を纏った男。
「この島にレイヴがあると聞いたんだが……知っているか……?」
DC最高幹部六祈将軍の一人
『爆炎のシュダ』
それがその男の名だった――――