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No.33132の一覧
[0] 【無印完結・チラ裏から】もしも海鳴市にキュゥべえもやってきたら?【リリカルなのは×まどか☆マギカ】[mimizu](2014/10/15 23:22)
[1] 【無印編】第1話 それは不思議な出会いなの? その1[mimizu](2014/08/15 03:40)
[2] 第1話 それは不思議な出会いなの? その2[mimizu](2012/05/19 14:49)
[3] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その1[mimizu](2012/06/24 03:48)
[4] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その2[mimizu](2012/05/15 19:24)
[5] 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? マギカなの? その3[mimizu](2012/05/19 14:52)
[6] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その1[mimizu](2012/05/23 19:04)
[7] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その2[mimizu](2012/06/02 12:21)
[8] 第2.5話 見滝原は危険がいっぱいなの? その3[mimizu](2012/12/25 18:08)
[9] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その1[mimizu](2012/06/02 12:52)
[10] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その2[mimizu](2012/12/25 18:39)
[11] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その3[mimizu](2012/06/12 23:06)
[12] 第3話 ライバル!? 新たな魔法少女なの! その4 [mimizu](2012/06/12 23:23)
[13] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その1[mimizu](2012/06/17 10:41)
[14] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その2[mimizu](2012/12/25 18:59)
[15] 第4話 激突! 魔導師vs魔法少女なの! その3[mimizu](2012/06/24 03:38)
[16] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その1[mimizu](2012/06/26 21:41)
[17] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その2[mimizu](2012/06/30 23:40)
[18] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その3[mimizu](2012/07/04 20:11)
[19] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その4[mimizu](2012/07/07 16:14)
[20] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その5[mimizu](2012/07/10 21:56)
[21] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その6[mimizu](2012/07/15 00:37)
[22] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その7[mimizu](2012/08/02 20:10)
[23] 第5話 海鳴温泉で大遭遇なの! その8[mimizu](2012/08/02 20:51)
[24] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その1[mimizu](2012/08/05 00:30)
[25] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その2[mimizu](2012/08/15 02:24)
[26] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その3[mimizu](2012/08/15 19:17)
[27] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その4[mimizu](2012/08/28 18:17)
[28] 第6話 錯綜し合う気持ちなの その5[mimizu](2012/09/18 21:51)
[29] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その1[mimizu](2012/09/05 01:46)
[30] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その2[mimizu](2012/09/09 03:02)
[31] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その3[mimizu](2012/09/15 05:08)
[32] 第6.5話 見滝原に現れた新たな魔法少女なの その4[mimizu](2012/09/22 22:53)
[33] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その1[mimizu](2012/10/17 19:15)
[34] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その2[mimizu](2012/10/31 20:01)
[35] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その3[mimizu](2012/10/31 20:13)
[36] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その4[mimizu](2012/11/23 00:10)
[37] 第7話 少しずつ変わりゆく時の中なの その5[mimizu](2012/11/23 01:47)
[38] 第8話 なまえをよんで…… その1[mimizu](2013/01/07 00:25)
[39] 第8話 なまえをよんで…… その2[mimizu](2013/01/07 00:33)
[40] 第8話 なまえをよんで…… その3[mimizu](2013/03/23 19:15)
[41] 第8話 なまえをよんで…… その4[mimizu](2013/03/29 19:56)
[42] 第8話 なまえをよんで…… その5[mimizu](2013/03/29 19:57)
[43] 第8話 なまえをよんで…… その6[mimizu](2013/04/06 18:46)
[44] 第8話 なまえをよんで…… その7[mimizu](2013/04/06 19:30)
[45] 第8話 なまえをよんで…… その8[mimizu](2013/04/06 19:31)
[46] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その1[mimizu](2013/05/12 00:16)
[47] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その2[mimizu](2013/05/12 01:08)
[48] 第9話 キミが望めばどんな願いだって その3[mimizu](2013/05/28 20:13)
[49] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その1[mimizu](2013/09/22 23:21)
[50] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その2[mimizu](2013/09/22 23:22)
[51] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その3[mimizu](2013/09/22 23:24)
[52] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その4[mimizu](2013/09/22 23:25)
[53] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その5[mimizu](2013/09/22 23:26)
[54] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その6[mimizu](2013/09/22 23:28)
[55] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その7[mimizu](2013/09/22 23:28)
[56] 第10話 ごめんね。……そして、さようなら その8[mimizu](2013/09/22 23:29)
[57] 第11話 わたしはアリシア その1[mimizu](2013/10/06 18:04)
[58] 第11話 わたしはアリシア その2[mimizu](2013/10/06 18:21)
[59] 第11話 わたしはアリシア その3[mimizu](2013/10/20 23:56)
[60] 第11話 わたしはアリシア その4[mimizu](2013/11/24 18:21)
[61] 第11話 わたしはアリシア その5[mimizu](2013/12/07 17:17)
[62] 第11話 わたしはアリシア その6[mimizu](2013/12/13 22:52)
[63] 第12話 これが私の望んだ結末だから その1[mimizu](2014/04/01 17:34)
[64] 第12話 これが私の望んだ結末だから その2[mimizu](2014/04/01 17:34)
[65] 第12話 これが私の望んだ結末だから その3[mimizu](2014/04/01 17:35)
[66] 第12話 これが私の望んだ結末だから その4[mimizu](2014/04/01 17:36)
[67] 第12話 これが私の望んだ結末だから その5[mimizu](2014/04/01 17:41)
[68] 第12話 これが私の望んだ結末だから その6[mimizu](2014/04/12 02:18)
[69] 第12話 これが私の望んだ結末だから その7[mimizu](2014/04/24 19:20)
[70] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その1[mimizu](2014/05/04 02:13)
[71] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その2[mimizu](2014/05/19 00:31)
[72] 第13話 それぞれの旅立ち、そして世界の終わり その3[mimizu](2014/07/31 22:10)
[73] 第一部 あとがき[mimizu](2014/07/31 17:05)
[74] 第二部 次回予告[mimizu](2014/07/31 17:07)
[82] 番外編1 魔法少女さやかちゃんの日常 前編[mimizu](2014/09/16 20:40)
[83] 番外編1 魔法少女さやかちゃんの日常 中編[mimizu](2014/09/16 20:40)
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[33132] 番外編1 魔法少女さやかちゃんの日常 中編
Name: mimizu◆6de110c4 ID:ab282c86 前を表示する
Date: 2014/09/16 20:40
 それは突然の出来事だった。周囲に立ち込める濃厚な魔女の気配。それが一気にさやかたち三人を包み込んでいく。同時に辺りの景色は街灯に照らされた人気のない住宅街から魔女の結界特有の不可思議な空間へと変わっていく。そんな光景を目の当たりにしてはやては驚き、まどかは困惑し、そしてさやかは気を引き締めた。

「さやかちゃん、これって……」

「うん、魔女の結界だ」

 言いながらさやかは自身の油断を恥じる。見滝原ではさやかがキュゥべえと契約したのと同じ頃からその数は激減し、一ヶ月ほどの間、使い魔一匹すら発見できない状態が続いていた。その理由はマミにもほむらにもわからないようであったが、魔女が現れないということは、すなわち平和ということであり、魔法少女たちはさやかの戦闘訓練を行いつつも束の間の休息を味わっていた。

 だがここ一、二週間ほど前から再び使い魔が姿を見せるようになり、つい先日にはさやかも魔女と交戦した。魔女が見滝原に戻ってきている。その事実をきちんと受け止めてさえいれば、まどかとはやてをこのような事態に巻き込むことはなかっただろう。

「これが魔女の結界かあ。話で聞いていた通り不思議な場所やなあ」

 そんなことを考えているさやかを尻目に、はやてはそう呟きながら興味深そうに周囲を見回す。今、彼女たちが立っているのは広大に広がる砂漠の中心だ。四方三六〇度、見渡す限りの地平線。砂漠特有の熱気に、遠くの方はぼやけた蜃気楼のように見える。それだけならば現実世界の砂漠と同じと言えるが、ここは魔女の結界。現実との明確な差異として頭上には大小の違いはあれど燦々と輝く太陽が五つもあり、足元に広がる砂もその色を赤、青、黄など千差万別であり、それらはまるで小さな虫のように蠢いていた。

「はやてちゃん、大丈夫? 暑くない?」

「平気ですよ。それにしても魔女の結界がこんなに暑いとは思わんかったなあ」

「いや、ここまで暑いのはあたしも初めてだよ。……ってそんな雑談してる場合でもないか」

 その言葉とともに魔法少女姿になるさやか。その手にはサーベルが握られており、表情を強張らせていた。思い起こすのはかつてさやかが魔法少女になる前に行われていた『魔法少女体験ツアー』。魔法少女としての素養があるまどかとさやかに、マミが発案して行われた魔法少女がどのようなものかを教えるために行われていた魔女との戦いの見学会。今のさやかの目から見てもマミは強く、憧れを抱く対象だ。けれどそんな彼女ですら、さやかたちの目の前で殺されかけた。幸いにしてその時は事なきを得たが、あのマミでさえ油断があれば魔女に敗れることもあり得るのだ。

 そんなマミと比べて今のさやかは魔法少女としての実戦経験が乏しく、戦闘技術も拙い。さらに言えば目に見える範囲には一切の遮蔽物がなく、足場も悪い。このような場所で二人を守りながら戦うというのは、今のさやかには非常に辛いものがあった。

「……まどか、情けない話なんだけどさ、あたしの実力じゃ二人を守りながら魔女と戦うのは難しいと思う。かといって結界の出口を探すってのも現実的じゃない。だから危険だけど、ここはあたし自身を囮にして魔女をこの場に引き摺り出して一気にやっつけようと思う。だからまどかははやてと一緒に少し離れた場所でじっとしていて欲しいんだ」

 二人を守りながら戦うことができないのなら、さやか一人で魔女と対峙すればいい。それがこの状況でさやかが導き出した答えだった。

「それでね、あたしが魔女との戦いで手間取っている間にまどかたちが使い魔に襲われたとしたら、あたしは助けに入れない。もちろんそんな状況にならないようにするつもりだけど、でも万が一ってことがある。だからまどかにはこれで自分の身を守って欲しいんだ」

 そう言ってさやかは自身の手にしたサーベルをまどかに差し出す。もちろんさやかはまどかがそれを使うな状況にするつもりはない。だがそれでも万が一の時の自衛の手段は必要だ。幸いなことにさやかが創り出したサーベルは、本物の金属ほど重くはない。華奢な女子中学生であるまどかでも、振り回すことぐらいはできるだろう。

「む、無理だよ、さやかちゃん。わたしにはそんなこと……」

 だがいきなりそんなことを言われて二の句もなく頷けるほど、まどかは図太くない。確かにまどかには魔法少女としての絶大な素養がある。しかしその才能が活かせるのは、あくまで魔法少女として開花した場合に限る。今のまどかはどこにでもいるごく一般的な女子中学生に過ぎない。そんな彼女には例え使い魔とはいえ、自分を守るために他者を殺すという行動に抵抗があった。 

「大丈夫だって。あくまでそれは念のためだ。あたしだって魔法少女としての戦闘訓練を一ヶ月も積んできたんだ。そう簡単に二人を危険な目に遭わせるつもりはないさ」

 さやかは言いながら笑う。だがその目は真剣そのものだ。それを見てまどかは自分の考えを改める。さやかは冗談や酔狂でこのような提案をしているのではない。自分の実力不足を恥じ、大切な友達をこのような場所に招き入れてしまった責任。それを精一杯とろうとしているのだ。

 そんなさやかの考えを感じ取ったまどかは意を決して頷く。まどかは本来、引っ込み思案で喧嘩などほとんどしない。それは彼女が優しく、他者を傷つけることを由としないからだ。

 それでも今はさやかの指示通りに動くしかないと思う。この場でのまどかはさやかに守られるものだが、それと同時にはやてを守るものでもあるのだ。はやては一人で戦うことはもちろん、逃げることすらできない。そんな彼女と共に振るえていることはできるだろう。だが少なくともまどかにはあらがうことができる。それが例え僅かな力だとしても、ほんの少しでも時間を稼ぐことができれば必ずさやかが助けてくれる。そう信じてまどかはさやかのサーベルを手に取った。

「……二人ともごめんな。怖い目に遭わせて。この埋め合わせは必ずするから。だから二人とも無事に結界から抜け出そう」

「ならさやかちゃんには今度、この前できた美味しいケーキ屋さんで奢ってもらうよ」

「おっ、そりゃいいな。わたしも楽しみや」

「ははっ、それぐらいで済むならお安いご用だよ」

 三人は笑う。魔女の結界の中なのにも関わらず、平和な日常を思い描き、楽しげに笑い合う。

「さぁて、それじゃあそろそろ魔女の出迎えだ。二人とも手筈通りに頼むよ」

 だが次の瞬間、その表情を真剣なものへと引き締め直し、さやかは正面に集まり始めた使い魔の群に向かって掛け出していった。



     ☆ ☆ ☆



「巴さん、片付けはこのくらいで大丈夫かしら?」

 マミの家で片付けを一通り終えたほむらはマミに確認を入れる。

「ええ、ありがとう、暁美さん。このまま帰すのも悪いし、紅茶を入れるわね」

「いえ、もう時間も遅いですし、今日はこのままお暇します」

「別に遠慮しなくてもいいのに」 

 どこか寂しげにそう呟くマミ。その姿にほむらはため息を付きながらその場に腰を下ろした。

「巴さん、一杯だけよ」

 その言葉を聞いてマミの顔がパッと明るくなる。そして迅速にキッチンに戻り、ティーカップとポットを持ってやってきた。そして慣れた手つきでカップに注ぎ、ほむらの前に差し出す。

「……それで?」

「それでって?」

「ここまで強引に引き留めたということは、まだ私に話すことがあるのでしょう。魔法少女になることについてはさっき十分に話したと思うけど?」

 ほむらとしては片付けしている間にマミとの会話は十分に済ませたと思っていた。目の前にいるマミのことを信用していないわけではない。しかしまだ話せない。ほむらは過去の周回で真実を知ったマミがどのような行動をしたのかを身を持って知っている。この先、今以上にほむらがマミに信頼を寄せたとしても、話すことはないだろう。

「ああ、勘違いしないでちょうだい。そのことも確かに気になるけど、今から話すのははやてさんの脚のことよ」

 そう前置きしたマミは神妙な面持ちで話を始める。

「さやかさんの治癒魔法を受け付けない怪我でも病気でもない呪い。それっていったいどういうものなのかしら? キュゥべえも迂闊に近づけないって言うし」

「……流石に情報が無さ過ぎて何とも言えないわね。ただ少なくとも、近づけないというのが嘘だと私は思っているけれど……」

「心外だな、暁美ほむら。ボクはその程度のことで嘘は言わないよ」

 ほむらの言葉にそう返したのはキュゥべえだった。突然現れたキュゥべえにほむらは厳しい目を向け、マミはどこからともなく新しいカップを取り出す。

「あら? キュゥべえ、久しぶりね。今までどこに行ってたの?」

「少し興味深い対象がいてね。……それはともかくボクがはやてに近づけないのは本当だよ」

「……信じられないわね」

 キュゥべえの言葉に訝しげな目を向けるほむら。そんな視線に晒されながらキュゥべえは自分に宛がわれたカップを器用に扱い口を付ける。

「信じられないのは無理もない。ボクとしてもこのようなことは初めてなんだ。いや、正確に言えば二度目、かな? 尤も一度目の彼女の場合は厳密に言えば近づくこと自体は可能だったから違うんだけどね。ただはやてとその子には大きな共通点がある」

「共通点?」

「そう、ボク以外の存在と契約した魔法の使い手という意味での共通点さ」

 その言葉は衝撃的なものだった。魔法少女というものはキュゥべえと契約して、はじめてなれる存在だ。それ以外の可能性を魔法少女を生み出すキュゥべえ自身に示唆されれば、驚くのは当然のことだろう。

 だがすぐに二人は思い出す。キュゥべえと契約したわけでもないのに魔法を行使していた一人の少女のことを。異世界の魔導師、フェイト・テスタロッサ。マミにとっては命の恩人、ほむらにとっては最初のイレギュラー。二人にとって彼女との出会いは忘れたくとも忘れられないほどに印象深いものだった。

「……それはフェイト・テスタロッサのことを言っているのかしら?」

 一拍早く彼女の存在に思い至ったほむらがキュゥべえに尋ねる。しかしその言葉にキュゥべえは首を横に振った。

「残念ながら彼女とは違うよ。彼女は決して魔導師になるために誰かと契約したわけではないはずだからね。それに正確に言えば、はやてが本当に誰かと契約しているかどうかもわからない」

「……どういうこと?」

「はやてに魔法少女としての素養があることは間違いない。そしてボクが彼女に近づけないということも本当だ。それじゃあどうしてボクがはやてに近づけないか。それは第三者がはやての周りにいて、彼女のことを見張っているからさ。そして少しでもボクが近づこうとすると、必ずその動向が察知され始末されてしまうんだ」

「始末って……大丈夫なの、キュゥべえ?」

「ああ、マミには言ってなかったね。ここにいるボクは数ある端末の一つでしかないんだ。ボクたちキュゥべえは個体ごとの違いはなく、全ての個体が意志を共有しているからね」

「えっ……?」

 初めて聞く話に困惑の表情を浮かべるマミ。だがそんなマミを尻目にほむらは自身の疑問をぶつける。

「キュゥべえ、一つ聞かせなさい。はやてに近づくと始末されるって言っていたけど、それはどのように殺られるのかしら?」

「それがボクにもわからないんだ。はやてを視認できる距離まで近づくと、気付いた時には殺される。後でその現場にいっても死体すら残っていないから、どうやって殺されるのかボクには見当もつかないよ」

「……そう」

 その言葉を聞いてほむらは短く呟き、思考を纏め始める。キュゥべえを始末することができるということは、相手は魔法関係者であることは間違いないだろう。なおかつキュゥべえが察知できない相手ということは、それは魔法少女というより魔導師である可能性が高い。

 ほむらとてそこまで魔導師に詳しいわけではない。だが少なくとも魔法を使えばその残滓はその場に残るはずだ。しかしほむらが見滝原の内部で感じる魔力反応は彼女の知る魔法少女と魔女のものだけだ。それは相手がキュゥべえを察知するのに魔法を使っていないか、もしくはこちらの探査魔法を遥かに上回る隠蔽魔法を使っているのを意味する。

「それでキミたちに一つ頼みたいんだけど、今度はやてと会う時、ボクも同席させてもらってもいいかな?」

「それぐらい別に構わな……」

「それは早計よ、巴マミ」

 キュゥべえの頼みに二つ返事で引き受けようとするマミの言葉を遮り、ほむらが告げる。

「どういうこと、暁美さん?」

「別に私もキュゥべえが八神はやてに接触することそのものを止めるつもりはないわ。だけどもし、私たちがはやてとキュゥべえを結び付けようとすれば、必ず妨害が入るはずよ。キュゥべえの言う、第三者にね」

「あっ……?」

 その指摘にマミは気付く。相手は頑なにはやてとキュゥべえの接触を防ごうとしている。それはキュゥべえの話からも明らかだ。そんなキュゥべえを引き合わせようとすればどうなるかは明白だった。

「話を聞く限り、相手は私たち魔法少女ではなく、フェイト・テスタロッサのような魔導師である可能性が高い。それもキュゥべえや私たちに気配を悟らせないほどのね。そんな相手と事を構える必要はこちらにはないわ」

「でも暁美さん、そのような人たちがはやてさんの周りにいるということ自体、私には不安だわ」

 ほむらの言にマミが反論する。はやてには魔法少女としての素養はあるが、間違いなく一般人である。そんなはやての周りに存在する正体不明の魔導師。その目的が何であれ、そこにははやてが関わっているはずだ。あんな少女がこれ以上、何かに巻き込まれるのを見過ごすことなどマミにはできるはずもない。

「そうね。でもだからといっていきなりキュゥべえを引き合わせようとする必要はないはずよ。まずは向こうの正体と目的を探るところから始めるべきね」

「それは……確かにそうかもね」

「……というわけでキュゥべえ、あなたの頼みを引き受けるつもりはないわ。少なくとも今のところはね」

「そういうことなら構わないよ。ボクとしてもこれが危険な頼みであることは理解していたしね。だけど二人とも覚悟した方がいい。ボクははやてと対面していないけど、キミたちは知り合ってしまった。はやてを守護する存在がボクだけでなくキミたちに牙を向く可能性もないと言いきれないからね」

 そう言ってキュゥべえはマミの部屋から去っていく。その後ろ姿を見送った後、ほむらは今の話を思案する。

 ほむらは今日、初めてはやてと対面した。話した感じでは年相応の子供らしい無邪気さを持ち合わせつつも、境遇からかどことなく年齢に不釣り合いなほどの大人びた印象を受けた。だが少なくとも彼女自身が魔法に精通しているということはなく、そういった意味では一般人と遜色がないように感じられた。

 だがそんな彼女から感じられる魔法少女としての素養は、ほむらやマミを遥かに上回るものだ。幸いなことに彼女自身に魔法少女になる意志はないようだが、それでも奇跡を祈るに足る願いを彼女が持ち合わせているのは間違いなく、キュゥべえが勧誘したいと考えるのも無理もない相手だった。

 だからこそ解せない部分がある。それははやてが昔から見滝原に住んでいたということだ。ほむらはまどかを救うために何度も同じ日々を繰り返してきた。その中で『八神はやて』なる少女と出会ったことはもちろん、名前を聞いたことも一度もない。もし彼女が過去の周回にも見滝原に住んでいたとしたら、必ずキュゥべえは彼女と契約するために動いていただろう。けれどそんな素振りは一切なかった。

 そこから導かれる答え、それは彼女もまたこの周回特有のイレギュラーということだ。異世界の魔導師であるフェイト・テスタロッサとの遭遇やキュゥべえと契約していない千歳ゆま。そして統計上、初めてXデーに現れなかったワルプルギスの夜。佐倉杏子が見滝原に現れなかったという点を含めるとこれで五つ目のイレギュラー。これは異常な事態と言ってもいいだろう。

 そう考えたほむらだったが、すぐにそれが間違いであることに気付く。今日は六月四日。ほむらがこうして六月を迎えたのは、彼女がキュゥべえと契約し魔法少女になってから初めてのことなのだ。

 キュゥべえと契約し、そしてワルプルギスの夜が現れるまでの一ヶ月を永遠に繰り返し、まどかを救おうと奮闘してきたほむら。そうして同じ毎日を繰り返すことで、ほむらはどの日にどの魔女がどの場所に現れのかという情報を全て得ていた。しかしここから先の出来事は全てがイレギュラー。何が起こるかわからず、その中でまどかを護りきらなければならない。

「暁美さん、大丈夫? なんだか怖い顔をしているけど……」

 そこまで考えたところでマミがほむらのカップに新しい紅茶を注ぎながら声を掛ける。

「……ごめんなさい。少し考えごとをね」

「やっぱりはやてさんのこと?」

 マミの問いかけにほむらは黙って頷く。実際にはそうではないのだが、余計な説明を省く意味でもほむらは肯定した。そんなほむらにマミは一瞬、悩むような表情を見せ、そして意を決したように尋ねる。

「……ねぇ、暁美さん、さっきのキュゥべえの話なんだけど、おかしいと思わない?」

「おかしいって?」

「話を聞く限り、キュゥべえを近づけないのははやてさんを護るためなんでしょ? でもそれなら、キュゥべえを遠ざけるより前に前にはやてさんの脚を診るべきだとは思わない?」

「……確かにそうね」

 マミの指摘にほむらは頷く。さやかの治癒魔法すら受け付けないはやての両脚。キュゥべえはそれを『病気や怪我ではなく呪い』と言った。

「もしかしたらだけど、そもそもはやてさんの脚を動かなくしているのが、そいつらなのかもしれない。彼、ないし彼らは何らかの方法ではやての脚を動かなくさせた。そして脚が動くようになって困ることがあるからキュゥべえをはやてに近づけないようにした。…………自分で言ってて思ったけど、いくらなんでも荒唐無稽過ぎるわね」

 ほむらは自分の考えの最後にそう付け加える。そもそもはやての脚が動かなくなることに何のメリットもありはしないだろう。

「……どちらにしても私たちはあの子のことを知らな過ぎる。さっきも言ったけれど、はやてを監視している第三者の存在も含めて、彼女について調べるところから始めた方がいいと思うわ」

「…………えぇ、そうね」

 ほむらの言にマミはそう返す。しかし言葉とは裏腹に、その表情はどこか納得いかない感情を押し殺しているようなものだった。



     ☆ ☆ ☆



 さやかは群がる使い魔を相手に戦い続けていた。身体のほとんどが砂でできた色とりどりな使い魔。その形は個体ごとに異なるが、共通して目玉が弱点のようでサーベルで刺す、斬る、叩きつける等して次々と薙ぎ払っていく。多勢に無勢な現状だが、それでも使い魔程度にやられるようなことはなく、まどかたちに注意を払いながら一匹一匹確実に葬っていた。

(それにしても、いつになったら魔女が出てくるんだ!?)

 使い魔を串刺しにしながら、さやかはまだ見ぬ魔女への警戒心を強める。当初は早々に魔女がこの場に現れると思っていた。しかしすでに彼女たちが結界に囚われてから三十分近く経つにも関わらず、一向に姿を現す気配がない。そしてそれは彼女たちにとって都合の悪い展開だった。

「はぁ……はぁ……」

 頭上に輝き続ける五つの太陽。そこから放たれる熱気が徐々に、だが確実に彼女たちの体力を奪っていく。もちろん魔法少女であるさやかにはある程度の耐性はある。しかしそうではないまどかとはやてには別である。

 さやかが戦い始めた時からはやては車椅子から降り、まどかと共に魔女や使い魔に見つからないように姿勢を低くして身を潜めている。普通の環境ならばそれは大した苦ではないだろう。しかしこの場の温度は軽く五十℃を越え、さらに様々な角度から照りつける日差しによって物影一つない。ただそこにじっとしているだけで、確実に二人の体力を奪っていた。

「大丈夫、はやてちゃん?」

「正直に言えば少し辛いかな。だけどさやかさんが何とかしてくれるって思うから、このぐらいの暑さでヘコタレてられなんかいられないよ」

 汗だくになっているはやてに対し、心配げに声を掛けるまどか。そんなまどかに対し、はやては精一杯強がって笑顔を見せる。

 さやかが魔法少女であるという事は事前に聞かされていた。しかしこうして戦う姿を見るのは初めてのことである。群がる使い魔を一瞬で倒し、時折りこちらに気遣うように視線を向けてくるさやか。そんなさやかの姿にはやては尊敬の念を抱いていた。

「そうだね。きっとさやかちゃんならここからわたしたちを救い出してくれる」

 まどかもまた、そんなはやてに同調する。まどかにとってさやかが戦う姿を見るのはこれで二度目である。尤も、一度目の時、彼女はまどかを逃がすことを優先したため、このように前にでて戦うようなことはしなかった。だがそれでもまどかの目には今と前とでさやかの動きが格段に良くなっているということが理解できた。それこそほむらやマミに遜色がないほどに、さやかは魔法少女として戦えていた。

 だがまどかは知っている。かつてマミが魔女に殺され掛けたことを。あの時は間一髪のところでほむらとフェイトに助けられたが、そう都合の良いことが何度も起きるとは思えない。さやかのことを信頼しているというのは事実だが、それでも彼女の身の安否が心配で、内心ではハラハラしながらさやかの戦う姿を眺めていた。

 だからこそ、最初にその違和感に気付いたのはまどかだった。そんな彼女が何気なく頭上に視線を向けると、そこにあったはずの太陽の数が一つ減っていた。その変化を目の当たりにしたまどかはすぐに視線を逸らし、恐る恐るさやかから渡されたサーベルを手に取る。そして周囲を探り、減った太陽がどこにいったのかを探る。

 それはすぐに見つかった。砂に紛れながらゆっくりと転がっている黒い球体。頭上にあった時ほどの大きさはなく、熱気も感じられない。だがそれでもこの砂漠の中でそれは明らかに異物だった。

「ヒッ……」

 まどかはその動向をしばらく見ていると、その黒い球体と視線が合う。それは目玉だった。どす黒い眼球。それと視線があった瞬間、まどかの全身に寒気が襲う。先ほどまではただひたすらに暑いだけだったのに、今はむしろ凍えるほどの寒さを感じる。そんなまどかを尻目にその目玉はにやりと笑い、そして砂の中に潜っていく。その一連の光景を目の当たりにして、まどかは確信する。あれこそがこの結界を作り出した魔女なのだと。

「まどか、さん?」

 そんなまどかの様子に不思議そうに声を掛けるはやて。だが彼女もまた気付く。突如として足元から感じる圧迫感。息苦しいと言い換えてもいい。最初はそれがなんだかわからなかったが、次第にそれがどこからきているのか気付く。それは彼女の下にある無数の砂の一つひとつから感じられる視線だった。そう、彼女たちが砂漠の砂だと思っていたそれらは全て、小さな眼球だったのだ。もちろん一つひとつが与える影響は少ない。しかしこの場にある砂の数はどれほどのものだろうか。その無限とも思える数の視線に晒されたはやての身体は自然と震え、自由が効かなくなっていく。

 他人に見られるということ。それは時としてそれだけで恐怖に変わる。特に脚が不自由なはやては、そういった蔑むような視線に晒された経験も多く、否応なくその記憶を思い起こされる。次第に呼吸が荒くなり、胸が痛くなってくる。

「はやてちゃん、大丈夫だから。大丈夫だから、ね?」

 そんなはやての様子に気付いたのだろう。まどかはとっさにその身体を優しく抱きしめる。熱帯の暑さとは違う人肌の温かな感触。それに触れたことで徐々に呼吸が整い、震えも止まる。

「あ、ありがとう。まどかさん」

「ううん、わたしも怖かったから、お互い様だよ」

 それは抱きしめたまどかも同じだった。はやてが恐怖にもがき苦しむ姿を目の当たりにしたことで自身の恐怖心を黙殺することができた。冷静さを取り戻し、さやかがこの場にやってくるまでの数秒の時間稼ぎをする覚悟を決めることができた。

「はやてちゃん、怖いかもしれないけど、でもじっとしててね。きっとさやかちゃんが助けてくれるはずだから」

「まどかさん、何を……」

 はやてがそれを言い終わる前に、まどかは立ち上がる。さやかから渡されたサーベルを両手で握り絞め、震える身体に鞭を打ち、一気に駆け出す。向かう先は先ほどまどかが魔女を目撃した地点。足元に広がる砂に足を取られながらただひたすらに、我武者羅に、一心不乱で走り続ける。

 そんなまどかに釣られるように、この場の全ての視線がまどかに集中する。はやてはまどかのことを心配そうに見つめ、さやかは突然走り出したまどかの姿に危険が迫っていることを感じ取り、そして魔女は極上の得物が自らこちらに近づいてくることを察した。

「まどか!? クソッ、どけ!!」

 その段になってようやくさやかはまどかたちに危機が迫っていることに気付く。そして一気に二人の元へと向かおうとする。だがその時、突如として頭上で輝き続けていた残り四つの太陽がさやかの元に押し寄せる。そして囲むようにさやかを包囲すると、一気にその輝きを強める。あまりに突然のことだったため、さやかは対処が遅れ、瞳に燃えるような痛みが奔る。それでもさやかは視覚以外の情報を頼りに、自分に群がってくる使い魔と太陽を蹴散らし、まどかの元へと急ごうとする。

 だがその頃にはすでにまどかは魔女の目と鼻の先まで辿りついていた。実際のところ、まどかは自分が魔女を倒せるなどとは思っていない。ただ魔女や使い魔の注意をはやてから引き離し、さやかがこちらの状況に気付いてくれればいい。そう思って駆け出したに過ぎない。けれどその思惑は必要以上に功を成した。自分に近づいてくるまどかに向かって、魔女もまた一目散に動きだした。そして使い魔にさやかの動きを封じるように命令した。結果的にさやかは一時的に視力を奪われ、魔女もまたまどかのすぐ目の前にその姿を現した。

「いや、いやぁぁ……」

 自分から近づいていったとはいえ、魔女の急接近に驚いたまどかはその場に尻もちをつき、無我夢中でサーベルを振りまわす。魔女はそれを軽く往なし、遠くに吹き飛ばす。自衛の手段を無くしたまどかは身体を震わし、恐怖に身を竦ませる。

 その一部始終の光景をはやてはただ黙って見ていることしかできなかった。まどかが自らの危険を顧みず魔女に向かっていったのは、脚の不自由なはやてのためだ。だから彼女は魔女の注意を自分に向けた。逃げ出すことすらままならないはやての元に向かわせないために。そんな彼女の意図がわかるからこそ、はやては堪らなく悔しかった。

「なんで、何で動かんのや!」

 自分の脚が動かないばかりにまどかが殺されようとしている。その事実を正面からまざまざと見せつけられたはやては、自分の脚を責める。もしはやてが自由に動くことができさえすれば、少なくともまどかは魔女の注意を惹きつけようとはしなかっただろう。言い換えれば、はやてこそがまどかを危機的状況に追い込んだ張本人なのだ。そのことが悲しく、それと同時に何もできない自分に対して腹を立てた。

(今だけでいい。今だけでいいから、動いて! わたしに友達を見殺しにさせないで!!)

 今更はやてがまどかのところに向かったところでできることなどたかが知れている。それでもはやては思わずにはいられなかった。はやてにとってまどかはすでに大切な友達の一人なのだ。そんな彼女に庇われ、そして見殺しにするなんてこと、許容できるはずがない。

 そんな彼女の強い感情、それに呼応するかのようにはやての足元に三角形の魔法陣が描かれる。そしてその魔法陣から四つの光が飛び出す。――それが後にはやてにとって掛け替えのない存在となり、そして彼女の人生を大きく変えていくことに、この時のはやてはまだ知る由もなかった。



2014/9/16 初投稿


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